(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】水素及び炭化水素燃料を製造するためのメタン改質装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/40 20060101AFI20250129BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20250129BHJP
【FI】
C01B3/40
B01J35/39
(21)【出願番号】P 2023503170
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 US2021042448
(87)【国際公開番号】W WO2022020400
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520000216
【氏名又は名称】シジジー プラズモニクス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カハティワダ,スマン
(72)【発明者】
【氏名】ベスト,トレバー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】シャー,シュレヤ
(72)【発明者】
【氏名】ガーデジ,サイド アリ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-519441(JP,A)
【文献】国際公開第2019/005779(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0287981(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0246337(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0031922(US,A1)
【文献】Hong WANG et al.,Optimal Design and Energy-Saving Investigation of the Triple CO2 Feeds for Methanol Production System by Combining Steam and Dry Methane Reforming,Ind. Eng. Chem. Res.,2020年01月03日,Vol.59,p.1596-1606
【文献】Yu YANG et al.,High-efficiency utilization of CO2 in the methanol production by a novel parallel-series system combining steam and dry methane reforming,Energy,2018年06月11日,Vol.158,p.820-829
【文献】Katsuya SHIMURA et al.,Semiconductor Photocatalysts for Non-oxidative Coupling, Dry Reforming and Steam Reforming of Methane,Catal. Surv. Asia,2014年,Vol.18,p.24-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/40
B01J 35/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン供給材料から合成ガスを回収するためのシステムであって:
前記メタン供給材料を蒸気と接触させて、水素及び一酸化炭素を含む第1の反応生成物流を形成するために構成される光触媒水蒸気メタン改質装置と、前記第1の反応生成物流を水と接触させて、水素及び二酸化炭素を含む水性ガスシフト流を形成するために構成される水性ガスシフト反応器と、前記水性ガスシフト流から二酸化炭素を分離して、二酸化炭素流及び水素流を得るために構成される分離ユニットと、を含む第1ステージと;
前記第1ステージに隣接して下流にある第2ステージであって、第2のメタン供給材料と、前記第1ステージで生成した前記二酸化炭素流とから前記合成ガスを製造するように構成される光触媒乾式メタン改質装置を含む第2ステージと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記光触媒水蒸気メタン改質装置が、第1のプラズモン光触媒の存在下で前記メタン供給材料を蒸気と接触させるために更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のプラズモン光触媒が、プラズモン材料に結合する第1の触媒を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の触媒が、鉄、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、ロジウム、又はルテニウムを含み、前記プラズモン材料が、アルミニウム、銅、銀、又は金である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記光触媒水蒸気メタン改質装置が:
ハウジングと;
前記ハウジングの内部に配置される少なくとも1つの反応器セルであって、エンクロージャと、前記少なくとも1つのエンクロージャの中に配置される第1の触媒担体上の前記第1のプラズモン光触媒とを含み、前記エンクロージャが、光学的に透明であり、前記メタン供給材料が前記少なくとも1つのセルに入るための少なくとも1つの入力部と、前記第1の反応生成物流が前記少なくとも1つのセルを出るための少なくとも1つの出力部とを含む、少なくとも1つの反応器セルと;
少なくとも1つの光源であって、前記少なくとも1つの光源を使用すると、前記反応器セルが前記メタン供給材料から前記第1の反応生成物流を形成するように構成される、少なくとも1つの光源と;
その場発電のための前記光触媒水蒸気メタン改質装置から熱を除去するために構成された冷却システムと;
を含む、請求項2
~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記分離ユニットが、圧力スイング吸着(PSA)水素精製ユニットを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
第1のシステムが、有機ランキンサイクルを利用して、前記システム内でプロセス廃熱を用いて発電することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
有機ランキンサイクルを利用して発電することが、冷却システムによって発生した廃熱を供給することを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記光触媒乾式メタン改質装置が:
ハウジングと;
前記ハウジングの内部に配置される少なくとも1つの反応器セルであって、エンクロージャと、前記少なくとも1つのエンクロージャ内に配置される第2の触媒担体上の第2のプラズモン光触媒とを含み、前記エンクロージャが、光学的に透明であり、前記第2のメタン供給材料及び前記二酸化炭素流が前記少なくとも1つのセルに入るための1つ以上の入力部と、前記合成ガスが前記少なくとも1つのセルを出るための少なくとも1つの出力部とを含む、少なくとも1つの反応器セルと;
少なくとも1つの光源であって、前記少なくとも1つの光源を使用すると、前記反応器セルが前記第2のメタン供給材料及び前記二酸化炭素流から前記合成ガスを形成するように構成される、少なくとも1つの光源と、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2のプラズモン光触媒が、プラズモン材料に結合する第2の触媒を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の触媒が、鉄、ニッケル、コバルト、白金、ロジウム、又はルテニウムを含み、前記プラズモン材料が、アルミニウム、銅、銀又は金である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2ステージに隣接して下流にある第3ステージであって、前記第2ステージで製造した前記合成ガスからメタノール又はジメチルエーテルを製造するように構成される合成反応器を含む第3ステージをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記合成反応器中の一酸化炭素及び水素のモル比が1:2となるように前記第3ステージ中の前記合成反応器に水素流が供給される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記水素流が前記第1ステージで得られる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2ステージが、前記光触媒乾式メタン改質装置に隣接して下流にシフト反応器を含み、前記シフト反応器が前記水素流を生成するように構成され、前記第2ステージで得られた前記水素流が、前記合成反応器中の一酸化炭素及び水素のモル比が1:2となるように前記第3ステージ中の前記合成反応器に供給される、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2ステージが、前記光触媒乾式メタン改質装置に隣接して下流に水素分離膜を含み、前記水素分離膜が前記水素流を生成するように構成され、前記第2ステージで得られた前記水素流が、前記合成反応器中の一酸化炭素及び水素のモル比が1:2となるように前記第3ステージ中の前記合成反応器に供給される、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
メタン供給材料を合成ガスに変換する方法であって、
前記メタン供給材料を、光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第1ステージに供給して、水素及び一酸化炭素を含む第1の反応生成物流を形成することと;
前記第1の反応生成物流及び水を水性ガスシフト反応器に供給して、水素及び二酸化炭素を含む水性ガスシフト流を形成することと;
前記水性ガスシフト流を分離ユニットに供給して、少なくとも二酸化炭素流及び水素流を得ることと;
前記二酸化炭素流を、光触媒乾式メタン改質装置を含む第2ステージに供給して、前記合成ガスを製造することと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記方法が:
前記光触媒水蒸気メタン改質装置中、前記メタン供給材料を、光触媒水蒸気メタン改質装置のハウジング内に配置される複数の反応器セル中に分配することであって、それぞれの反応器セルが、光学的に透明なエンクロージャと、前記光学的に透明なエンクロージャ内に配置される第1の触媒担体上の第1のプラズモン光触媒とを含むことと;
少なくとも1つの光源によって、前記複数の反応器セルのそれぞれの前記第1の触媒担体上の前記第1のプラズモン光触媒に光を当てて、前記複数の反応器セルで前記メタン供給材料を、水素及び一酸化炭素を含む前記第1の反応生成物流に変換することと;
前記複数の反応器セルから前記第1の反応生成物流を蓄積することと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分離ユニットが、圧力スイング吸着(PSA)水素精製ユニットを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記光触媒乾式メタン改質装置中、前記二酸化炭素流及び第2のメタン供給材料を、光触媒乾式メタン改質装置のハウジング内に配置される複数の反応器セル中に分配することであって、それぞれの反応器セルが、光学的に透明なエンクロージャと、前記光学的に透明なエンクロージャ内に配置される第2の触媒担体上の第2のプラズモン光触媒とを含むことと;
少なくとも1つの光源によって、前記複数の反応器セルのそれぞれの前記第2の触媒担体上の前記第2のプラズモン光触媒に光を当てて、前記複数の反応器セルで前記二酸化炭素流からの二酸化炭素及びメタンを前記合成ガスに変換することと;
前記複数の反応器セルから前記合成ガスを蓄積することと、
をさらに含む、請求項
17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
メタン供給材料からメタノール又はジメチルエーテルを調製する方法であって:
前記メタン供給材料を、光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第1ステージに供給して、少なくとも二酸化炭素流及び水素流を得ることと;
前記二酸化炭素流を、光触媒乾式メタン改質装置を含む第2ステージに供給して、合成ガスを製造することと;
前記合成ガス及び前記水素流を、合成反応器を含む第3ステージに供給して、メタノール又はジメチルエーテルを得ることと、
を含む、方法。
【請求項22】
前記反応器中の一酸化炭素及び水素のモル比が1:2となるように前記第3ステージ中の前記合成反応器に水素流を供給する、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年7月20日に出願された米国仮特許出願第63/054,163号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
開示の背景
開示の分野
[0002] 本開示は、メタンを水素及び炭化水素燃料に改質するためのシステム及び方法を対象とする。例の実施形態では、メタン改質装置は、光触媒水蒸気メタン改質(photocatalytic steam methane reforming)(P-SMR)システムを、引き続く光触媒乾式メタン改質(photocatalytic dry methane reforming)(P-DMR)システムと統合している。
【背景技術】
【0003】
技術的背景
[0003]
図1中に示されるような従来の水蒸気メタン改質(Steam Methane Reforming)(SMR)システムは、例えばメタン(天然ガス)から、以下の平衡により合成ガス(水素及び一酸化炭素)を製造するために用いることができる:
CH
4+H
2O⇔CO+3H
2 (式1)
従来のSMRは幾つかの短所を有する。例えば、SMRは、パイプライン品質ガス中に存在しうる硫黄の影響を受けやすく、脱硫(すなわち、水素化脱硫(hydrodesulfurization)(HDS)触媒及びZnO吸着床の組み合わせ)を必要とする。さらに、従来のSMRは、熱集約的な吸熱反応器であり、クラッキング温度付近に関連する変換の制限のため水素製造は限定される。この制限は、直列で設置された高温及び低温水性ガスシフト反応器(water gas shift reactor)(WGS)によって克服される。さらに、SMRの高温操作によって、かなりの量の温室効果一酸化炭素(CO)が生成し、このためWGS反応器の設置が必要となる。
【0004】
[0004] さらに、従来のSMRは、一般に2つの二酸化炭素(CO2)排気流を有し、これらはCO2の除去が必要である。第1のCO2排気流は、天然ガスから得られ、SMR反応器にエネルギーを供給するための燃料として空気が用いられる。これによって、希薄CO2と、酸化窒素(NOX)及び酸化硫黄(SOX)などの別のガスとを有する「煙道ガス」流が得られる。煙道ガス流からCO2を捕捉して利用する方法は複雑であり、費用がかかる。第2のCO2排気流は、プロセスガスの一部として生成され、捕捉又は利用がより容易な濃縮されたCO2を含む。これら両方の流れから大気に放出されるCO2の量のため、従来のSMRは温室効果ガスの大きな放出源となる。これらの流れからCO2を捕捉するための装置を含むプラントでは、このような装置のための資本支出は、プラント全体のコストのかなりの部分となる。
【0005】
[0005] CO2を除去するために用いられる従来方法の1つは、高温カリ又はアミン系液体吸収剤、例えばモノエタノールアミン(MEA)又は活性化メチルジエタノールアミン(aMDEA)を用いた複合吸収装置-再生器設備である。このシステムは、高圧(液体が吸収装置に入る場合、400psi(g)付近、)及び高温(再生器リボイラーにおいて200℃付近)を必要とするだけでなく、システムに用いられるアミン系液体は本質的に腐食性となりうる。これらの制限のため、高級で費用のかかる材料が必要となり、すなわち、塔全体がステンレス鋼でできている必要がある、又は五酸化バナジウム(V2O5)などの不動態化剤の注入と、連続的な鉄の監視とが必要となる。発泡は、別の一般的な問題である。過度の発泡は、下流システムまで持ち越され、悪影響が生じることがある。最後に、必要な吸収速度を維持しシステム損失に対処するために、溶液化学を定期的な頻度で分析する必要がある。
【0006】
[0006] 従来のSMR設計には、ガス/液体燃料で操作されるバーナーの安全な点火及び着火を保証するための十分に機能的なバーナー管理システム(BMS)も必要である。BMSシステムは、バーナーの点火のための許容が問題となる前に重要なステップを有する。このシーケンスは、従来、ブロワー又はIDファンを最高速度付近で作動させることによって、可燃物の燃焼(存在する場合)を排除するために炉をパージすることを含む。このパージシーケンスの完了後、気密試験によって燃料回路に漏れが生じないことを確認し、その後試験的点火を行い、次にあらかじめ決定されるか又は操作上必要なシーケンスに基づいて、主要バーナーに点火し、システムを加圧する。明らかなように、これは、過大なブートストラッピングを有する複雑なシステムである。さらに、燃料システムのいずれかの漏れによって、全体のシーケンスが無駄になる。さらに、炉の上昇又は低下は、多くの時間及び労力を必要とする。ほぼ100のバーナーを有する市販の改質装置は、圧力の増加又は低下のたびに手動操作が必要である。締め切り弁及び調整弁(すなわち、制御弁)の組み合わせによって、精密な制御が保証され、必要であれば、フェイルセーフ運転停止が保証されるが、制御盤及び現場の作業者の絶え間ない警戒が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] したがって、現在使用されている従来のSMRシステムの欠点を有しないメタン改質のための有効なシステムが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の概要
[0008] 本開示の一態様は、メタン供給材料から合成ガス(すなわち、水素及び一酸化炭素)を回収するためのシステムを提供する。このようなシステムは:
光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第1ステージであって、メタン供給材料から少なくとも二酸化炭素流及び水素流を生成するように構成される第1ステージと;
第1ステージに隣接して下流にある第2ステージであって、第2のメタン供給材料と、第1ステージで生成した二酸化炭素流とから合成ガスを製造するように構成される光触媒乾式メタン改質装置を含む第2ステージと、
を含む。
【0009】
[0009] 本開示のシステムは、ゼロエミッションの水素を、メタノール又はジメチルエーテル(DME)などの低エミッション又はゼロエミッションの生成物に加えて調製する方法に用いることができる。したがって、本開示の別の一態様は、メタン供給材料を合成ガスに変換する方法を提供する。このような方法は:
メタン供給材料を、本明細書に記載の光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第1ステージに供給して、少なくとも二酸化炭素流及び水素流を得ることと;
上記二酸化炭素流を、本明細書に記載の光触媒乾式メタン改質装置を含む第2ステージに供給して、合成ガスを製造することと、
を含む。
【0010】
[0010] 本開示の別の一態様は、メタン供給材料からメタノール又はジメチルエーテルなどの炭化水素燃料を調製する方法を提供する。このような方法は:
メタン供給材料を、本明細書に記載の光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第1ステージに供給して、少なくとも二酸化炭素流及び水素流を得ることと;
上記二酸化炭素流を、本明細書に記載の光触媒乾式メタン改質装置を含む第2ステージに供給して、合成ガスを製造することと;
合成ガスを、反応器を含む第3ステージに供給して、メタノール又はジメチルエーテルを得ることと、
を含む。
【0011】
[0011] 本開示の別の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、本発明の意図及び範囲内の種々の変更及び修正は、この詳細な説明から当業者には明らかとなるであろうから、詳細な説明及び実施例は、本開示の特定の実施形態を示しながら、単に例として提供されるものであることを理解すべきである。
【0012】
図面の簡単な説明
[0012] 添付の図面は、本開示のシステム及び方法のさらなる理解を得るために含まれ、本明細書中に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示の1つ以上の実施形態を示しており、説明とともに、本開示の原理及び操作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】[0013]従来のSMRシステムを示すプロセスフロー図である。
【
図2】[0014]第1の例の実施形態による、合成ガスを製造するためのメタン改質装置システムを示すプロセスフロー図である。
【
図3】[0015]第2の例の実施形態による、合成ガスを製造するためのメタン改質装置システムを示すプロセスフロー図である。
【
図4】[0016]例の実施形態による合成ガスの製造方法を示す概略図である。
【
図5】[0017]第3の例の実施形態による水素及びメタノールを製造するためのメタン改質装置システムを示すプロセスフロー図である。
【
図6】[0018]第4の例の実施形態による水素及びメタノールを製造するための有機ランキンサイクル(Organic Rankin Cycle)(ORC)ユニットを有するメタン改質装置システムを示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
[0019] 例の方法及びシステムが本明細書に記載される。本明細書に記載のあらゆる例の実施形態又は特徴は、必ずしも、別の実施形態又は特徴よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。本明細書に記載の例の実施形態は、限定を意味するものではない。開示されるシステム及び方法のある態様は、多種多様な異なる構成で配列及び組み合わせが可能であり、これらすべてが本明細書において考慮されることは容易に理解されるであろう。
【0015】
[0020] 本開示を考慮すれば、本明細書に記載のシステム及び方法は、所望の要求に適合させるために当業者によって構成することができる。一般に、開示されるシステム、方法、及び装置によって、光触媒反応システム及びプロセスが改善される。特に、本発明は、炭化水素燃料を燃焼させず、代わりに電気を使用して水素及びCO2(プロセス副生成物として)を製造する、改善された電力が供給されるSMR反応器の光触媒水蒸気メタン改質装置(P-SMR)を提供する。このCO2は次に第2の電力が供給される反応器の光触媒乾式メタン改質装置(P-DMR)に利用されて、合成のガス(又は合成ガス)が形成される。この合成ガスを、合成反応器に送って、メタノール又はジメチルエーテルなどの液体燃料を製造することができる。結果として、ある実施形態では、このシステムは、従来方法よりも使用する天然ガス少なく、CO2を環境に放出せず、操作に再生可能電気を用いることができる。ある実施形態では、本開示のシステム及び方法は、メタノール又はジメチルエーテルなどの別の商業的に有利な材料の製造に有利に用いることができる。本開示のシステム及び方法は、ある実施形態では、従来のプラント中のBMS及びCO2捕捉装置に関連する資本コスト及び操作の複雑さがなくなる。ある実施形態では、システムの一部(例えば、反応器冷却ジャケット中)で発生する廃熱は、システム全体の運転効率を高めるために、システム中の別の場所で有利に利用することができる。
【0016】
[0021] 前述のように、本開示は、メタン供給材料から合成ガス(すなわち、水素及び一酸化炭素)を回収するためのシステムを提供する。特に、
図2中に示されるように、本開示のシステムは、メタン供給材料から少なくとも二酸化炭素流及び水素流を生成するために構成される第1ステージ(30)を含む。第1ステージは、光触媒水蒸気メタン改質装置(P-SMR)(37)を含む。P-SMR(37)は、第1のプラズモン光触媒の存在下でメタン供給材料を蒸気と接触させて、水素及び一酸化炭素を含む第1の反応生成物流を形成するように構成される。
【0017】
[0022] ある実施形態では、
図3中に示されるように、第1ステージ(30)は、光触媒水蒸気メタン改質装置(37)及び水性ガスシフト(WGS)反応器(42)を含む。WSG反応器(42)は、第1の反応生成物流を水と接触させて、水素及び二酸化炭素を含む水性ガスシフト流を形成するために構成される。
【0018】
[0023] ある実施形態では、第1ステージ(30)は、水性ガスシフト流から二酸化炭素を分離して二酸化炭素流及び水素流を得るために構成される分離ユニットをさらに含むことができる。
図2及び3中に示されるように、ある実施形態では、分離ユニットは、圧力スイング吸着(pressure swing adsorption)(PSA)水素精製ユニット(40)及び/又はCO
2吸収ユニット(41)を含むことができる。
図2及び3は、CO
2吸収ユニット(41)からのフィードバックCO
2流を示しているが、このような流れは任意であり、幾つかの実施形態では利用される必要はないことに留意されたい。同様に、特定の用途及び/又は実施されるシステムの規模によっては、示される別の構成要素及び流れは、幾つかの実施形態では省くことができる。
【0019】
[0024]
図2及び
図3中に示されるように、ある実施形態では、第1ステージ(30)は、水/スラッジノックアウト容器(31)、供給排出物H.X-1及び/又はH.X.-2(32及び/又は33)、トリムヒーター・クーラー(例えば、電気的なもの)(34)、脱硫器(35)、蒸気発生器(36)、給湯器(38)、及び冷却機(39)の1つ以上を場合により含むことができる。
【0020】
[0025] 従来方法の欠点の1つは、SMRからの熱損失である。従来のSMRプロセスは、わずか約50%の効率であり、これは供給される電力の半分が、SMRの壁を通って排出される熱として失われる。さらに、従来の設計では、ガスの凝縮中にかなりの量の熱が失われる。本発明者らは、有機ランキンサイクル(ORC)を用いて熱を回収できることを確認した。適切な規模では、ORCサイクルは40%の高さまでのエネルギー効率を得ることができ、したがってこれは、プロセスのエネルギー効率を45%から約70%の高さまで高めるための魅力的な選択肢となる。したがって、ある実施形態では、本開示の第1のシステム(30)は、プロセス廃熱を用いてシステム内で電気を発生させるように構成される有機ランキンサイクル(ORC)をさらに含むことができる。より大きなシステムでは、利用可能な熱はさらに高いグレードとなる。例えば、ある実施形態では、システムは、電力をその場で発生させるように構成される蒸気タービンをさらに含むことができる。
【0021】
[0026] その場発電のためにORCユニットを利用する一実施形態のより詳細な説明を
図6のプロセスフロー図中に示す。
図6のシステムによって、水素及びメタノールが製造され、効率改善のためにORCユニットが利用される。図示されるように、このシステムは、ORCユニット及びその蒸発器をP-SMR反応器と並列して含む。特に、ORCユニットは、P-SMR反応器に関連する流体冷却システム(例えば、冷却ジャケット又はリザーバー)からの廃熱を利用して発電する。次にこのような電気は、制御エレクトロニクス、ポンプ、センサー、又はその他の電気が供給される部品などのシステムに関連する補助的な電気部品への電力供給に用いることができる。これによって、従来のグリッド発電又は局所的若しくは遠隔的に行われる再生可能(例えば、太陽又は風)発電などの別の外部手段によって得られるべき必要な電気入力を減少させることができる。
【0022】
[0027] 言及されるように、その場発電のための前述の流体冷却システムは、P-SMR反応器に関連する冷却ジャケット又はリザーバーの形態であってよい。例えば、それぞれの個別の反応器セルは、冷却液(例えば、水)が中を移動する流体ジャケットによって取り囲むことができる。例えば、冷却液は、冷却ジャケット内に圧送又は別の方法で移動させることで、冷却ジャケットによって取り囲まれた反応器セルが発生する熱を除去することができる。環状形態の反応器セルの場合、流体冷却システムは、これに加えて、又はこれとは別に反応器セルの中央部分に内部冷却ジャケット又はリザーバーを含むことができ、このため内部冷却ジャケット自体は環状形態の反応器セルによって取り囲まれる。ORCにより使用するための流体冷却システムの別の構成も可能であり、本開示の範囲内となることが意図される。例えば、これに加えて、又はこれとは別に、2つ以上の反応器セルから熱を除去する冷却システム又はマルチセル反応器(又はマルチ反応器改質装置)に関連する冷却システムが、ORCユニットによるその場発電のための廃熱を供給することができる。
【0023】
[0028] ある別の実施形態では、本開示のシステムにおいてその場発電は行われない。例えば、水性ガスシフト反応器は、本質的に発熱性であり、プロセス熱の統合によって、廃熱ボイラー中での蒸気発生のための水の加熱が促進される。主要蒸気発生器/廃熱ボイラーは、高温SMR出口流を使用し、プロセスガスを高温シフト変換器(high temperature shift converter)(HTSC)の入口温度まで冷却する。シフト変換によって、CO2に変換されることで、COは微量(1%未満、例えば、約0.2%)まで効率的に減少する。シフト反応器出口における流れは、乾燥され(過剰の水を除去するため)、10bar(145psi(g))まで圧縮される。ある例の実施形態では、本開示のP-SMRは約100psi(g)の最大入口圧力を有する。ある実施形態では、水素を分離するためのユニットに送られる前に、ガスが(約10bar(すなわち、145psi(g))までさらに加圧される。
【0024】
[0029]
図5は、第3の例の実施形態による、水素及びメタノールを製造するためのメタン改質装置システムを示すプロセスフロー図である。
図5のシステムがその場発電を行わないが、その代わりに、発生した熱を除去した後のP-SMR反応器の冷却ジャケット中に単に冷却液(例えば、水)を循環させることを除けば、
図5のシステムは
図6中に示されるものと類似している。図示されるように、冷却ジャケットに冷却液を循環させるために、1つ以上の冷却ファン、リザーバー、及び/又はポンプを用いることができる。
【0025】
[0030] 本開示のシステムは、第1ステージ(30)に隣接して下流にある第2ステージ(50)であって、第2のメタン供給材料と第1ステージ(30)で製造した二酸化炭素流とから合成ガスを製造するように構成される光触媒乾式メタン改質装置(P-DMR)(51)を含む第2ステージ(50)をも含む。
【0026】
[0031] ある実施形態では、
図4中に示されるように、本開示のシステムは、第2ステージ(50)に隣接して下流にある第3ステージであって、第2ステージで製造した合成ガスからメタノール又はジメチルエーテルを製造するように構成される合成反応器を含む第3ステージをさらに含む。
【0027】
[0032] 例えばメタノールを得るために第2及び第3ステージで行われる例の反応は以下の通りである:
ステップ1-乾式メタン改質(DMR):
3CO2+3CH4→6CO+6H2 (式2)
ステップ2-水性ガスシフト(WGS):
2CO+2H2O→2CO2+2H2 (式3)
ステップ1及び2の合計:
CO2+3CH4+2H2O→4CO+8H2 (式4)
ステップ3-メタノール合成:
4CO+8H2→4CH3OH (式5)
ステップ1、2、及び3の合計:
CO2+3CH4+2H2O→4CH3OH (式6)
【0028】
[0033] 式2(ステップ1)において前述したように、P-DMR反応器から得られるものは、CO及びH2の混合物である合成ガス又は合成のガスである。合成ガスは、メタノール及びジメチルエーテルなどの多くの炭化水素燃料の出発供給材料である。合成ガスを炭化水素燃料に変換する技術は成熟しており工業的なものであり、当業者には明らかであろう。
【0029】
[0034] 第2ステージ(50)からの合成ガスは、一般に、一酸化炭素及び水素を約1:1の比率で含む。ある実施形態では、合成反応器中の一酸化炭素及び水素の比率が約1:2となるように第3ステージ中の合成反応器に水素流が供給される(例えば、式5中に示される)。水素流は、合成反応器に直接供給することができるし、又は合成ガス流とあらかじめ混合した後、合成反応器に導入することができる。ある実施形態では、合成反応器中に導入される水素流は、PSA水素精製ユニット(40)などから第1ステージ(30)で得られる。
【0030】
[0035] ある別の実施形態では、第2ステージ(50)中、P-DMR(51)に隣接して下流にシフト反応器を加えることができ、このシフト反応器は、合成反応器に供給される水素流を生成するように構成される。このプロセスは式3及び式4によって示される。
【0031】
[0036] ある別の実施形態では、第2ステージ(50)は、P-DMR(51)に隣接して下流にある水素分離膜であって、合成反応器に供給される水素流を生成するように構成される水素分離膜を含む。
【0032】
[0037] 水素分離技術の選択は、その最終用途によって直接決定される。出現しつつあるガス分離技術としては、膜分離が挙げられ、これは自由度が高く単純な操作、小型の構造、少ないエネルギー消費、及び環境に優しいという利点を有する。膜材料の性能は、膜のH2分離及び精製効果を決定するための最も重要な要因である。一般に用いられる膜材料は、主として金属及びポリマー膜を含み、新しい膜材料、例えばナノ材料膜、CMSM、及びMOF膜は、好ましい分離性能を示すことができる。単一膜型のシステムでは99%+の純度を得ることはできない。さらに、膜システムは、水の凝縮の影響を非常に受けやすいが、その理由は、これによって膜の表面上にバリアが形成され、透過速度が低下するからである。膜に対するアミン蒸気の影響は無視できるが、発泡及びキャリーオーバーの可能性のため、ヒーター及び従来のSMRシステムにおける合体フィルターの利用などのさらなるユニット操作が必要となる。液体MEA/MDEAのキャリーオーバーの場合、唯一の選択は設備の閉鎖及び膜の交換となりうる。
【0033】
[0038] 従来のSMRシステムとは対照的に、本開示のシステムは、上記欠点が問題とならずに水素分離膜を利用することができる。例えば、ある実施形態では、本開示のシステム中に用いられる水素分離膜は、圧力スイング吸着(pressure swing adsorption)(PSA)水素ユニットである。PSA分離効果は、主として吸着剤の種類及び用いられる技術的プロセスによって決定される。静電容量に関してH2は、CO2、CO、及びCH4などのほとんどの気体分子と大きく異なるので、PSA分離及び精製に非常に適している。ある例では、99%の高さの純度を実現できる。
【0034】
[0039] 前述のように、本開示のシステムは光触媒水蒸気メタン改質装置(P-SMR)を含む。例えば、このようなP-SMRは:
ハウジングと;
ハウジング内部に配置される少なくとも1つの反応器セルであって、エンクロージャと、少なくとも1つのエンクロージャ内に配置される第1の触媒担体上の第1のプラズモン光触媒とを含み、エンクロージャは、光学的に透明であり、メタン供給材料が少なくとも1つのセルに入るための少なくとも1つの入力部と、第1の反応生成物流が少なくとも1つのセルを出るための少なくとも1つの出力部とを含む、少なくとも1つの反応器セルと;
少なくとも1つの光源であって、少なくとも1つの光源を使用すると、反応器セルがメタン供給材料から第1の反応生成物流を形成するように構成される、少なくとも1つの光源と、
を含むことができる。
【0035】
[0040] 同様に、本開示のシステムは光触媒乾式メタン改質装置(P-DMR)を含む。例えば、このようなP-DMRは:
ハウジングと;
ハウジングの内部に配置される少なくとも1つの反応器セルであって、エンクロージャと、少なくとも1つのエンクロージャ内に配置される第2の触媒担体上の第2のプラズモン光触媒とを含み、エンクロージャは、光学的に透明であり、第2のメタン供給材料及び二酸化炭素流が少なくとも1つのセルに入るための1つ以上の入力部と、合成ガスが少なくとも1つのセルを出るための少なくとも1つの出力部とを含む、少なくとも1つの反応器セルと;
少なくとも1つの光源であって、少なくとも1つの光源を使用すると、反応器セルが第2のメタン供給材料及び二酸化炭素流から合成ガスを形成するように構成される、少なくとも1つの光源と、
を含むことができる。
【0036】
[0041] 別の適切なP-SMR及びP-DMRの例は、国際公開2019/005777号、国際公開2019/005779号、国際公開2020/146799号、国際公開2020/146813号、及び国際公開2018/231398号に記載されており、それぞれが参照により本明細書に援用される。
【0037】
[0042] 本開示のP-SMR及びP-DMRの反応器セルには、物理的、電子的、熱的、又は光学的な結合になどによってプラズモン材料に結合する触媒を含む1つ以上のプラズモン光触媒が必要である。理論によって束縛しようとするものではないが、プラズモン材料は、光とプラズモン材料との独特の相互作用にために光を吸収することができる光学アンテナとして機能し、結果としてプラズモン材料上及びその付近に強い電界を発生させる(すなわち、プラズモン材料内の電子の集団振動の結果として)と考えられる。プラズモン材料上及びその付近のこの強い電界によって、触媒及びプラズモン材料が最長約20nm以上の距離だけ離れている場合でさえも、触媒とプラズモン材料との間の結合が可能となる。
【0038】
[0043] 一般に、プラズモン材料は、あらゆる金属、金属合金、半金属元素、又はその合金であってよい。幾つかの実施形態では、本開示のプラズモン材料は、金、金合金、銀、銀合金、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金から選択される。本開示では、「合金」という用語は、金属のあらゆる可能な組み合わせに及ぶことが意図される。例えば、合金は、AuAg、AuPd、AuCu、AgPd、AgCuなどの二元合金であってよいし、又は三元合金、若しくはさらには四元合金であってもよい。ある実施形態では、本開示のプラズモン材料は、アルミニウム、銅、銀、又は金である。
【0039】
[0044] 一般に、プラズモン材料に結合する触媒材料は、必要な反応を触媒することができるあらゆる化合物であってよい(すなわち、プラズモン材料に結合する第1の触媒は、(例えば、プラズモン材料に結合しないとしても)SMR反応を触媒することができるあらゆる化合物であってよい)。幾つかの実施形態では、本開示の触媒は、あらゆる金属又は半金属元素、並びに上記元素のあらゆる合金、酸化物、リン化物、窒化物、又はそれらの組み合わせであってよい。例えば、本開示の第1の触媒及び/又は第2の触媒は、独立して、触媒的に活性な鉄、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、又はそれらのあらゆる組み合わせを含むことができる。本開示の触媒は、触媒的に活性な鉄、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、ロジウム、又はルテニウムのあらゆる合金、酸化物、リン化物、又は窒化物を含むことができる。幾つかの実施形態では、本開示の触媒は、触媒的に活性な鉄又はニッケルを含む。
【0040】
[0045] 適切なプラズモン光触媒の例は、D. F. Swearer et al., ”Heterometallic antenna-reactor complexes for photocatalysis,” Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 113, 8916-8920, 2016;Linan Zhou et al. ”Quantifying hot carrier and thermal contributions in plasmonic photocatalysis,” Science, 69-72, 05 Oct 2018;Linan Zhou et al., ”Light-driven methane dry reforming with single atomic site antenna-reactor plasmonic photocatalysts,” Nature Energy, 5, 61-70, 2020に示されており、それぞれが参照により本明細書に援用される。
【0041】
[0046] 前述のように、本開示のシステムは、ゼロエミッションの水素をメタノール又はジメチルエーテル(DME)などの別の低エミッション又はゼロエミッションの生成物とともに調製する方法に用いることができる。
【0042】
[0047] 例えば、本開示の別の一態様は、メタン供給材料を合成ガスに変換する方法を提供する。このような方法は:
メタン供給材料を、本明細書に記載の光触媒水蒸気メタン改質装置を含む第1ステージに供給して、少なくとも二酸化炭素流及び水素流を得ることと;
上記二酸化炭素流を、本明細書に記載の光触媒乾式メタン改質装置を含む第2ステージに供給して、合成ガスを製造することと、
を含む。
【0043】
[0048] このような方法では、例えば第1ステージにおいて、メタン供給材料を、光触媒水蒸気メタン改質装置に供給することで、水素及び一酸化炭素を含む第1の反応生成物流が形成され;続いて、第1の反応生成物流及び水を水性ガスシフト反応器に供給することで、水素及び二酸化炭素を含む水性ガスシフト流が形成される。特に、光触媒水蒸気メタン改質装置中、メタン供給材料は、光触媒水蒸気メタン改質装置のハウジング内に配置される複数の反応器セル中に分配され、それぞれの反応器セルは、光学的に透明なエンクロージャと、光学的に透明なエンクロージャ内に配置される第1の触媒担体上の第1のプラズモン光触媒とを含む。これに続いて、少なくとも1つの光源によって、光触媒水蒸気メタン改質装置のハウジングの内部に光を当てることで、複数の反応器セルでメタン供給材料を、水素及び一酸化炭素を含む第1の反応生成物流に変換し;複数の反応器セルからの第1の反応生成物流を蓄積する。
【0044】
[0049] 本開示の方法のある実施形態では、水素及び二酸化炭素を含む水性ガスシフト流を分離ユニットに供給することで、二酸化炭素流及び水素流が得られる。
【0045】
[0050] 最後に、第2ステージにおいて、本開示の方法は:
光触媒乾式メタン改質装置中で、二酸化炭素流及び第2のメタン供給材料を、光触媒乾式メタン改質装置のハウジング内に配置された複数の反応器セルに分配することであって、それぞれの反応器セルが、光学的に透明なエンクロージャと、光学的に透明なエンクロージャ内に配置された第2の触媒担体上の第2のプラズモン光触媒とを含むことと;
少なくとも1つの光源によって、光触媒乾式メタン改質装置のハウジングの内部に光を当てることで、複数の反応器セルで二酸化炭素及びメタンを合成ガスに変換することと;
複数の反応器セルからの合成ガスを蓄積することと、
を含む。
【0046】
[0051] 本開示の別の一態様は、メタン供給材料からメタノール又はジメチルエーテルを調製する方法を含む。このような方法では、第2ステージで得られる合成ガスを、合成反応器を含む第3ステージに供給することで、メタノール又はジメチルエーテルが得られる。
【0047】
[0052] ある実施形態では、合成反応器中の一酸化炭素及び水素の比率が約1:2となるように第3ステージ中の合成反応器に水素流が供給される。
【0048】
[0053] 本明細書に記載の種々の例の実施形態は、排出物の少ない化学製造に関する利点などの1つ以上の利点が得られるように用いることができる。一例の使用事例では、酪農場、埋め立て地、又は油井現場のフレアガスガスから得られるメタンは、大気中への顕著な炭素放出なしに、そのメタンから低/ゼロエミッションの水素を製造するために用いることができる。P-DMR反応器にすぐ隣接して下流でP-SMRのCO2排出流を処理することによって、排出CO2及びメタン(どちらも強い温室効果ガス)を、例えばメタノール又はDMEなどの別の「グリーン」生成物に処理することができる。ある実施形態では、本開示の方法は、石油精製所の従来のSMRプラント、アンモニアプラント、及びメタノールプラントよりも低コストで、複雑でなく、環境に優しい代替となる。本開示のシステム及び方法は、例えば、燃料電池車用途での水素の分散した使用場所での製造のための水素燃料の供給源として用いることができる。
【0049】
[0054] 以上の詳細な説明は、添付の図を参照しながら開示されるシステム、装置、及び方法の種々の特徴及び機能を記載している。種々の態様及び実施形態を本明細書に開示してきたが、別の態様及び実施形態は明らかとなるであろう。本明細書に開示される種々の態様及び実施形態は、単に説明を目的としており、限定を意図したものではない。
【0050】
[0055] 本発明を実施するために本発明者らが知る最良の形態を含む本発明の幾つかの実施形態が本明細書に記載される。当然ながら、これらの記載の実施形態に対する変形形態は、以上の説明を読めば当業者には明らかとなるであろう。本発明者は、当業者がこのような変形形態を必要に応じて用いることを期待しており、本発明者らは、本明細書に明記されるもの以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって容認されるように本明細書に添付の請求項に記載の主題のすべての修正形態及び均等物を含む。さらに、本明細書に特に示されたり、状況によって明確に矛盾するのでなければ、すべての可能なそれらの修正形態中の前述の要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。
【0051】
[0056] 本明細書に記載の実施例及び実施形態は、単に説明を目的としており、それを考慮した種々の修正又は変形は、当業者によって提案されるであろうし、本出願の意図及び範囲、並びに添付の請求項の範囲の中に含まれるべきことを理解されたい。本明細書に引用されるあらゆる刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的で参照により本明細書に援用される。