(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】チザニジン液体製剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/433 20060101AFI20250129BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250129BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250129BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20250129BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250129BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20250129BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20250129BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250129BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250129BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250129BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20250129BHJP
A61P 25/08 20060101ALN20250129BHJP
【FI】
A61K31/433
A61K47/18
A61K9/08
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/40
A61P25/08
(21)【出願番号】P 2023548842
(86)(22)【出願日】2022-05-07
(86)【国際出願番号】 CN2022091371
(87)【国際公開番号】W WO2022247609
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】202110577512.4
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523306151
【氏名又は名称】四川科瑞徳製薬股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN CREDIT PHARMACEUTICAL CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】陳 剛
(72)【発明者】
【氏名】陳 功政
(72)【発明者】
【氏名】林 松
(72)【発明者】
【氏名】プラサデ,ラシュミ ロヒト
(72)【発明者】
【氏名】チャバン パティル,ガネーシュ ダッタトレイ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02338473(EP,A1)
【文献】国際公開第2020/202192(WO,A1)
【文献】AAPS PharmSciTech,2020年,Vol.21, Article No.210,pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分、EDTA二ナトリウム塩及び他の医薬品賦形剤を含むチザニジン液体製剤であって、
前記有効成分は、チザニジン又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物の1種又は複数種であ
り;
前記液体製剤のpH値は、4.0~6.1である、
ことを特徴とするチザニジン液体製剤。
【請求項2】
前記液体製剤は、水である溶媒を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項3】
前記他の医薬品賦形剤は、pH調整剤、防腐剤、溶解補助剤、増粘剤、芳香剤、甘味料及び着色剤の1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項4】
前記pH調整剤は、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、塩酸、水酸化ナトリウムの1種又は複数種であり;
前記溶解補助剤は、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イソマルトース、キシリトール、グルコース、フルクトースの1種又は複数種であり;
前記防腐剤は、安息香酸ナトリウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベンナトリウム、エチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸、フェニルプロピオン酸カリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、二酢酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウムの1種又は複数種であり;
前記増粘剤は、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリンの1種又は複数種であり;
前記芳香剤は、ストロベリー芳香剤、オレンジ芳香剤、バナナ芳香剤、チェリー芳香剤、レモン芳香剤、カルダモン芳香剤、フェンネル芳香剤、ミント芳香剤、メントール芳香剤、バニリン芳香剤の1種又は複数種であり;
前記甘味料は、スクラロース、グリセリン、サッカリンナトリウム、グルコース、ステビア、ステビアシド、アスパルテーム、サイクラミン酸ナトリウム、アセスルファムK、アリテーム、ネオテームの1種又は複数種であり;
前記着色剤は、アマランス、カーマイン、エリスロシン、ニューレッド、レモンイエロー、サンセットイエロー、インディゴ、ビートレッド、シェラックレッド、ビルベリーレッド、トウガラシレッド、レッドライスレッドの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項
3に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項5】
前記pH調整剤は、クエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物であり;
前記防腐剤は、メチルパラベンナトリウムとプロピルパラベンナトリウムの混合物、又は安息香酸ナトリウムであり;
前記溶解補助剤は、ソルビトールであり;
前記増粘剤は、ヒドロキシプロピルセルロースとコロイド状二酸化ケイ素の混合物、又はヒドロキシプロピルセルロースであり;
前記芳香剤は、ストロベリー芳香剤であり;
前記甘味料は、スクラロースである、ことを特徴とする請求項
3に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項6】
液体製剤100mLあたり、有効成分0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0~0.2g(ただし、EDTA二ナトリウム塩の含有量は、0ではない)を含む、ことを特徴とする請求項
4に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項7】
液体製剤100mLあたり、チザニジン0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0.005~0.2gを含む、ことを特徴とする請求項
4に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項8】
液体製剤100mLあたり、チザニジン0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0.005~0.2g、クエン酸0.01~0.2g、クエン酸ナトリウム0.01~0.1gを含む、ことを特徴とする請求項
4に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項9】
液体製剤100mLあたり、チザニジン0.04~0.09g、EDTA二ナトリウム塩0.008~0.12g、クエン酸0.06~0.14g、クエン酸ナトリウム0.02~0.06gを含む、ことを特徴とする請求項
4に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項10】
前記液体製剤は、以下の成分を含む、ことを特徴とする請求項
4に記載のチザニジン液体製剤。
チザニジン、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水;
又は、チザニジン、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水、
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水、
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水、
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、安息香酸ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、ストロベリー芳香剤、及び水。
【請求項11】
前記液体製剤100mLあたり、以下の成分を含む、ことを特徴とする請求項
10に記載のチザニジン液体製剤。
チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.083g、クエン酸ナトリウム0.042g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水、
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.035g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水、
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.046g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水、
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、コロイド状二酸化ケイ素0.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.04g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水、
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース5g、安息香酸ナトリウム0.1g、グリセリン15g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水。
【請求項12】
前記液体製剤において、チザニジン塩酸塩の含有量が0.046g/100mLであり、EDTA二ナトリウム塩を含み、且つ、前記液体製剤は、室温下で
6か月間保存される時にその関連物質不純物の総量が0.2%以下であり、及び/又は、前記液体製剤は、投与後のチザニジンC
max平均値、AUC
0-t平均値及び/又はAUC
0-∞平均値がそれぞれ以下の液体製剤のチザニジンと同用量で投与後のチザニジンC
max平均値、AUC
0-t平均値及び/又はAUC
0-∞平均値の80%~120%の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
(1)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.083g、クエン酸ナトリウム0.042g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(2)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.035g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(3)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.046g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(4)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、コロイド状二酸化ケイ素0.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.04g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(5)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース5g、安息香酸ナトリウム0.1g、グリセリン15g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含む。
【請求項13】
前記液体製剤は、40℃/75%RHの条件下で0~3か月間密閉して保管される場合に、その関連物質不純物の総量が0.2%以下であり、
及び/又は、前記液体製剤は、25℃/60%RHの条件下で0~6か月間密閉して保管される場合に、その関連物質不純物の総量が0.2%以下である、ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項14】
前記液体製剤は、Zanaflex(登録商標)チザニジン錠剤の食前、食後のバイオアベイラビリティと同等であり、
及び/又は、前記液体製剤は、Zanaflex(登録商標)チザニジンカプセルの食前、食後のバイオアベイラビリティと同等であ
り;ここで、
食後条件下での前記のバイオアベイラビリティが同等である評価基準は、
C
max
の片側95%信頼区間上限は、0以下であり、
AUC
0-t
的90%信頼区間は、80%~125%であり、
AUC
0-∞
的90%信頼区間は、80%~125%である、
ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項15】
前記液体製剤は、食後条件下でのT
max平均値がチザニジン錠剤/カプセルの食後条件下でのT
max平均値よりも小さい、ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項16】
チザニジンとして同用量で投与条件下、
前記液体製剤の有害反応の発生率は、チザニジン錠剤/カプセルの有害反応の発生率よりも小さい、ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項17】
チザニジンとして同用量で投与条件下、
前記液体製剤は、食前の有害反応項目-眠気の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも小さく、
及び/又は、前記液体製剤は、食後の有害反応項目-眠気の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも小さく、
及び/又は、前記液体製剤は、食後の有害反応項目-頭痛の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも小さく、
及び/又は、前記液体製剤は、食後の有害反応項目-嘔吐の発生率がチザニジンカプセルよりも小さい、ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
【請求項18】
筋痙攣を治療するための医薬であって、請求項1~
11のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤を含む医薬。
【請求項19】
筋痙攣を治療するための医薬であって、請求項
12に記載のチザニジン液体製剤を含む医薬。
【請求項20】
筋痙攣を治療するための医薬であって、請求項
13に記載のチザニジン液体製剤を含む医薬。
【請求項21】
筋痙攣を治療するための医薬であって、請求項
14に記載のチザニジン液体製剤を含む医薬。
【請求項22】
筋痙攣を治療するための医薬であって、請求項
15に記載のチザニジン液体製剤を含む医薬。
【請求項23】
筋痙攣を治療するための医薬であって、請求項
16に記載のチザニジン液体製剤を含む医薬。
【請求項24】
筋痙攣を治療するための医薬であって、請求項
17に記載のチザニジン液体製剤を含む医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年5月26日に、中国国家知識産権局に出願された出願番号が202110577512.4、発明名称が「チザニジン液体製剤及びその用途」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容は援用により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬技術分野に関し、より具体的には、チザニジン液体製剤及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
チザニジンは、筋痙攣の治療に使用される中枢α2アドレナリン作動薬である。
【0004】
チザニジンの化学構造は、下式で示される。
【化1】
チザニジンは、現在、脊髄損傷または多発性硬化症によって引き起こされる筋痙攣の治療用にZanaflex(登録商標)というブランド名で販売されている。
【0005】
チザニジンを処方した人の中で最も大きな割合を占めたのは高齢者である。米国医療研究品質庁(AHRQ)の医療費支出パネル調査(MEPS)によると、チザニジンを処方した人の数は約206万人である。米国MEDICAREDの処方薬使用データの一部によると、2018年に約146万人の高齢者/障害者/重病患者にチザニジンが処方された。それにより、高齢者が60%を超えたと推定される。
神経疾患を患っている高齢者は、嚥下障害に苦しむ可能性がさらに高くなる。嚥下障害は、一般的な臨床症状であり、中枢神経系の疾患が嚥下障害を引き起こす一般的な疾患である。外国では、急性脳卒中患者の嚥下困難の発生率は37%~78%であり、中国では、嚥下困難の発生率は51%~73%である。ほとんどの患者は、脳卒中後1か月で嚥下機能を回復してきるが、一部の患者は、脳卒中後6か月経っても嚥下困難が残ることもある。MS患者における嚥下困難の全体的な有病率は約33~43%であり、急性頸髄損傷における嚥下困難の発生率は約30.9%であり、脳損傷における嚥下困難の発生率は、27~30%である。
【0006】
固体経口剤形は、医薬製剤全体において最大かつ最も重要な役割を果たす。現在、チザニジンの市販されている剤形は、普通の錠剤であることが多く、カプセル剤もあるが、普通の錠剤/カプセル剤の医薬品は、一般に服用際に嚥下を助けるように水で飲み込む必要があるため、チザニジン塩酸塩の普通の錠剤/カプセル剤は、一部の特殊な集団、例えば、乳児、高齢者、嚥下困難のある患者、ある精神疾患を有する患者、及び臥床による体位変換が難しい患者に対するコンプライアンスが悪く、臨床投薬のニーズを満たすことができない。臨床実践には、嚥下困難のある患者に錠剤を砕いたり、カプセルを開いたりして投与することが多くなるが、砕いたり、開けたり、他の薬剤と混ぜて投与したりすることは、有害反応や医療過誤を引き起こす危険性がある。固形の経口剤形を飲み込むことが困難な患者が多いため、口腔錠、舌下錠、発泡錠、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、水溶性崩壊錠などの固形の様々な経口薬が医学的に開発されている。
経口固形製剤は、滴定投与中に一定の制限があり、即ち、1)不正確な用量分割、2)複数の仕様を開発する必要があり、企業の製剤開発コストが増加すること、3)患者の病態の変化に応じて滴定投与を行う期間では、要求仕様の変更により無駄が発生しやすくな
ることである。しかしながら、液体製剤は滴定投与中に上記の問題が存在しない。
【0007】
以上より、経口固形製剤と比較して、チザニジン液体製剤の開発は、滴定投与での調整がより便利である利点があるとともに、例えば、乳児、高齢者、嚥下困難の患者、ある精神疾患を有する患者、及び臥床による体位変換が困難である患者の服薬コンプライアンスを高めやすく、臨床的なニーズを満たす。
液体状の活性医薬製剤は、固体状の活性医薬製剤よりも化学的不安定性の影響を受けやすいことはよく知られている。液体の活性薬剤製剤は明らかに良好な臨床上の優位性を持っているが、安定性の問題で製剤開発者を退却させることが多い。
【0008】
医薬品関連不純物の検出は、医薬品の化学的安定性を測る重要な指標になり、関連物質不純物の含有量高いほど、化学的安定性が劣る。液体製剤の化学的安定性はその臨床上の普及使用に大きく影響し、同時に関連物質不純物の含有量は薬品使用の安全性に影響し、不純物が多ければ多いほど、出現する可能性のある薬品使用リスクは大きくなる。
現在、市場にはチザニジン液体製剤の収載品がなく、薬局方ではチザニジン液体製剤の関連物質に対して関連規定をしていないため、チザニジン液体製剤の関連物質は、中国薬局方でのチザニジン錠の関連物質に関する関連規定を参照すべきであり、即ち、チザニジン錠の関連物質不純物の総量は0.5%を超えてはならない。
【0009】
現在、市販されているチザニジンの普通の錠剤及びカプセル剤は、ヒト投与後に有害反応が発生する確率が高く、Zanaflex(登録商標)(チザニジン塩酸塩)錠剤及びカプセルを例として、その説明書には、単回投与する場合に、患者における有害反応のうち、「傾眠(somnolence)」という有害反応の発生率だけでも78%(単回投与量8mg)/92%(単回投与量16mg)と高くなる。薬物有害反応とは、薬の副作用だけでなく、薬物の通常の用法及び用量での使用中に発生した投与目的と関係がないか、又は集団に有害な反応を指す。薬物の質量、剤形、不純物、添加剤、含有量などはいずれも医薬品の有害反応を引き起こす要因である。チザニジンの一般的な錠剤及びカプセル剤の有害反応は、チザニジンの薬物使用の安全性に大きな影響を及ぼし、それに伴い、その有害反応のうちの傾眠の高発生率は、医薬品を服用している患者の通常の生活にもある程度影響を及ぼし、患者の服薬コンプライアンスを大きく低下させる。従って、通常の使用下でチザニジンの薬物有害反応の発生率を如何に減らすかは、薬物使用の安全性及び患者の服薬コンプライアンスを高める上で非常に重要である。
同時に、筋痙攣は、薬効発現が速ければ速いほど、患者の痛みをより早く軽減できる。経口薬の場合、食べ物が薬効発現速度に大きく影響することは多く、既存のチザニジンの一般的な錠剤及びカプセル剤は、食後の薬物のピークに達する時間が顕著に延長され、患者の苦痛を迅速に軽減するのに不利である。従って、如何に薬物のピークに達する時間に対する食べ物の影響を軽減し、食後条件下でチザニジン医薬品の薬効発現速度を高めるかも解決すべき課題の一つである。
【0010】
チザニジン液体製剤の新たな剤形の開発では、安定性、有害反応、及び薬効発現速度などの要素に加えて、剤形の変更が薬効に与える影響も考慮する必要がある。医薬品の剤形は、投与経路及び方法を決定し、薬物の吸収程度に直接影響を及ぼすため、薬効に影響を与え、薬物の物理的および化学的特性は、薬物の放出に直接影響するため、薬物の治療効果に影響を与えており、医薬品製剤における賦形剤の選択は、製造プロセス、製剤の外観および物理的特性に影響を与えるだけでなく、製剤の生物学的利用能を変化させ、それによって製剤の有効性に影響を与える。
従って、不純物含有量が少なく、安定性が高く、有害反応率が低く、薬効発現速度への食べ物の影響が少なく、食後条件下での薬効発現速度が速く、かつ固形製剤と同等のバイオアベイラビリティを備えたチザニジン液体製剤を開発して臨床的なニーズを満たすことは、早急に解決すべき問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の状況に鑑み、本発明は、不純物の含有量が少なく、安定性が強く、チザニジン固形製剤に比べて、有害反応率が少なく、薬効発現速度への食べ物の影響が少なく、食後条件下での薬効発現速度が速く、かつチザニジン固形製剤のバイオアベイラビリティと同等であるチザニジン液体製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、チザニジン液体製剤は、有効成分、EDTA二ナトリウム塩及び他の医薬品賦形剤を含み、中でも、有効成分は、チザニジン又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物の1種又は複数種である。
好ましくは、チザニジン液体製剤のpH値は、3.5超え6.5未満である。
好ましくは、チザニジン液体製剤のpH値は、4.0~6.1である。
好ましくは、チザニジン液体製剤は、水である溶媒を含む。
好ましくは、他の医薬品賦形剤は、pH調整剤、防腐剤、溶解補助剤、増粘剤、芳香剤、甘味料、及び着色剤の1種又は複数種であり、
好ましくは、pH調整剤は、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、塩酸、水酸化ナトリウムの1種又は複数種であり、
【0013】
溶解補助剤は、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イソマルトース、キシリトール、グルコース、フルクトースの1種又は複数種であり、
防腐剤は、安息香酸ナトリウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベンナトリウム、エチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸、フェニルプロピオン酸カリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、二酢酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウムの1種又は複数種であり、
増粘剤は、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリンの1種又は複数種であり、
【0014】
芳香剤は、ストロベリー芳香剤、オレンジ芳香剤、バナナ芳香剤、チェリー芳香剤、レモン芳香剤、カルダモン芳香剤、フェンネル芳香剤、ミント芳香剤、メントール芳香剤、バニリン芳香剤の1種又は複数種であり、
甘味料は、スクラロース、グリセリン、サッカリンナトリウム、グルコース、ステビア、ステビアシド、アスパルテーム、サイクラミン酸ナトリウム、アセスルファムK、アリテーム、ネオテームの1種又は複数種;
着色剤は、アマランス、カーマイン、エリスロシン、ニューレッド、レモンイエロー、サンセットイエロー、インディゴ、ビートレッド、シェラックレッド、ビルベリーレッド、トウガラシレッド、レッドライスレッドの1種又は複数種である。
【0015】
好ましくは、pH調整剤は、クエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物であり、
防腐剤は、メチルパラベンナトリウムとプロピルパラベンナトリウムの混合物、又は安息香酸ナトリウムであり、
溶解補助剤は、ソルビトールであり、
増粘剤は、ヒドロキシプロピルセルロースとコロイド状二酸化ケイ素の混合物、又はヒドロキシプロピルセルロースであり、
芳香剤は、ストロベリー芳香剤であり、
甘味料は、スクラロースである。
【0016】
好ましくは、液体製剤100mLあたり、有効成分0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0~0.2g(ただし、EDTA二ナトリウム塩の含有量は、0ではない。)を含む。
好ましくは、液体製剤100mLあたり、チザニジン0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0.005~0.2gを含む。
好ましくは、液体製剤100mLあたり、チザニジン0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0.005~0.2g、クエン酸0.01~0.2g、クエン酸ナトリウム0.01~0.1gを含む。
好ましくは、液体製剤100mLあたり、チザニジン0.04~0.09g、EDTA二ナトリウム塩0.008~0.12g、クエン酸0.06~0.14g、クエン酸ナトリウム0.02~0.06gを含む。
【0017】
好ましくは、チザニジン液体製剤は、以下の成分を含む。
チザニジン、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水;
又は、チザニジン、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水;
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水;
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水;
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、安息香酸ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、ストロベリー芳香剤、及び水。
【0018】
好ましくは、液体製剤100mLあたり、以下の成分を含む。
チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.083g、クエン酸ナトリウム0.042g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水;
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.035g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水;
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.046g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水;
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、コロイド状二酸化ケイ素0.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.04g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水;
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース5g、安息香酸ナトリウム0.1g、グリセリン15g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水。
【0019】
本発明に係るチザニジン液体製剤において、医薬品の有効成分は、チザニジン塩酸塩であることが好ましく、その医薬品有効成分チザニジン塩酸塩の含有量は、0.046g/100mLであり、かつ本発明に係る液体製剤は、さらに、EDTA二ナトリウム塩を含み、前記液体製剤は、室温で保存される時にその関連物質不純物の総量が0.2%以下であり、及び/又は、前記液体製剤は、投与後のそのチザニジンCmax平均値、AUC0-t平均値及び/又はAUC0-∞平均値が、それぞれ以下の液体製剤のチザニジンとして同用量で投与後のチザニジンCmax平均値、AUC0-t平均値及び/又はAUC0-∞平均値の80%~120%の範囲内にある。即ち、
(1)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.083g、クエン酸ナトリウム0.042g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(2)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.035g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は、
(3)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.046g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は、
(4)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、コロイド状二酸化ケイ素0.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.04g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は、
(5)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース5g、安息香酸ナトリウム0.1g、グリセリン15g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含む。
【0020】
本発明に係るチザニジン液体製剤は、40℃/75%RHの条件下で0~3か月間密閉して保管される場合に、その関連物質不純物の総量が0.2%以下であり、及び/又は、本発明に係るチザニジン液体製剤は、25℃/60%RHの条件下で0~6か月間密閉して保管される場合に、その関連物質不純物の総量が0.2%以下である。
本発明に係る液体製剤は、Zanaflex(登録商標)チザニジン錠剤の食前、食後のバイオアベイラビリティと同等であり、及び/又は、本発明に係る液体製剤は、Zanaflex(登録商標)チザニジンカプセルの食前、食後のバイオアベイラビリティと同等である。
【0021】
本発明に係る液体製剤とチザニジン錠剤/カプセルの食後条件下でのバイオアベイラビリティが同等である評価基準は、以下の通りである。
Cmaxの片側95%信頼区間の上限は、0以下であり;
AUC0-tの90%信頼区間は、80%~125%にあり;
AUC0-∞の90%信頼区間は、80%~125%にある。
本発明に係るチザニジン液体製剤の食後条件下でのTmax平均値は、チザニジン錠剤/カプセルの食後条件下でのTmax平均値よりも小さい。
本発明に係るチザニジン液体製剤は、チザニジンとして同用量で投与条件下で、本発明の有害反応の発生率がチザニジン錠剤/カプセルの有害反応の発生率よりも低い。
【0022】
より具体的には、本発明に係るチザニジン液体製剤は、チザニジンとして同用量で投与条件下、本発明に係る液体製剤の食前有害反応項目-眠気の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも低く;
及び/又は、本発明液体製剤の食後有害反応項目-眠気の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも低く;
及び/又は、本発明液体製剤の食後有害反応項目-頭痛の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも低く;
及び/又は、本発明液体製剤の食後有害反応項目-嘔吐の発生率がチザニジンカプセルよりも低い。
筋痙攣を治療する医薬品の調製におけるチザニジン液体製剤の使用。
【0023】
医薬品の化学的安定性に影響を与える要因は、数多くあるが、それらのうちでも温度は医薬品製剤の安定性に影響を与える要因の1つであり、一般的には、温度が上昇すると、分解反応速度が速くなり、光も医薬品製剤の安定性に影響を与える可能な原因になり、光は連鎖反応を引き起こし、分解速度を速める可能性があり、また、酸素の存在も酸化反応を加速し、医薬品の安定性に影響を与える可能性があり、その他、例えば、環境湿度、包装材、pH値、添加剤なども医薬品の化学的安定性に影響を与える可能な原因になる。医薬品が異なれば、それらの安定性に影響を与える要因も異なる。
本発明の製剤研究者は、研究過程中に溶液中の金属イオンがチザニジン溶液の化学的安定性に影響を及ぼし、金属イオンの存在がチザニジン関連物質の分解を促進する作用があることを発見した。本発明は、チザニジン溶液中の金属イオンと結合し、化学的安定性が強くかつ薬局方の規定に適合する関連物質不純物の含有量を有するチザニジン液体製剤を調製することができる、EDTA二ナトリウム塩をキレート剤として使用する。EDTA二ナトリウム塩は、水に溶解した後、クロム、鉄、鉛、水銀、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、コバルト、マンガン及ぼしマグネシウムなどの鉱物及び金属イオンと結合して維持されることができ、これらの鉱物及び金属イオンが結合されると、それらはチザニジン溶液の化学的安定性に影響を与えなくなり、本発明に係るチザニジン液体製剤の化学的安定性を最大限に保証する。
【0024】
本発明に係るチザニジン液体製剤は、液状医薬品の通常の保存容器であるガラス瓶及びポリエステル瓶において良好な化学的安定性を有し、それにより見られるように、本発明は、保存容器に対する要求が厳しくなく、儲存及び輸送中に実際のニーズに応じて保管容器を選択できる。本発明に係る薬液は、常温で保存でき、保管コスト及び輸送コストの削減に有利である。
本発明に係るチザニジン液体製剤は、外観が透明であり、長期放置後も沈殿、濁り等の現象は見られず、物理的安定性が強く、その関連物質不純物の含有量が薬局方のチザニジン製品の関連物質不純物の含有量に対する制限よりもはるかに低く、医薬品申告の要件を満たしており、臨床的に普及して応用することができる。
【0025】
本発明で調製されるチザニジン液体製剤は、市販されている既存のチザニジン固形製剤と比較して、人体への有害反応が低下し、チザニジン医薬品使用の安全性及び患者の服薬コンプライアンスを向上させている。
本発明に係る液体製剤は、口腔投与、好ましくは経口投与によって投与される。滴定投与が正確であり、乳児、高齢者、嚥下困難の患者、ある精神疾患を有する患者、及び臥床による体位変換が困難である患者の服薬に便利である利点を有する。
【0026】
同時に、本発明で調製されるチザニジン液体製剤は、既存の錠剤及びカプセルと比較して、ヒトのバイオアベイラビリティの点で、いずれも食前と食後の同等性を達成しており、既存の固形製剤と同等以上の薬効を持つ。しかも、本発明に係る液体製剤は、既存の固形製剤に比べて、薬効発現速度に対する食べ物の影響が小さく、本発明は、既存の固形製剤と比較して、食後条件下で薬効発現の効果が速く、患者の苦痛をより迅速に緩和することができる。
以上より、本発明では、不純物が少なく、化学的及び物理的安定性が強いチザニジン液体製剤を得て、その有害反応は少なく、かつそのバイオアベイラビリティは、既存のチザニジン固形製剤の食前/食後と同等であり、同時に、本発明に係る液体製剤は、既存のチザニジン固形製剤と比較して、その薬効発現が食後条件下でより速く、市場でチザニジン経口薬剤形に対する需要を満たし、臨床的ニーズを満たす。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施例と組み合わせて本発明の技術的方案を明確かつ完全に説明する。前記実施例は、本発明の好ましい実施例の一部に過ぎず、実施例のすべてではないことが明らかになる。本発明に係る実施例に基づいて、創造的な労働を行うことなく当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0028】
本発明は、医薬品有効成分がチザニジン又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物の1種又は複数種である安定なチザニジン液体製剤を提供する。本発明では前記の「安定」という用語とは、化学的及び/又は物理的安定性を意味する。
本発明に係る医薬品有効成分は、どのような存在形態であっても、溶解後、薬効作用を生じるのは薬液に溶解したチザニジンである。データ比較の便宜上、本発明に係る実施例では、原薬としてチザニジン塩酸塩を使用し、様々な検討を行うことが好ましい。
【0029】
以下、チザニジン塩酸塩の原薬溶液のpH値範囲を調査した。
実験方法:
(1)チザニジン塩酸塩0.323gを秤量し、400mL精製水に溶解させ、
(2)前のステップによる溶液を4等分し、0.1N HCI及び0.1N NaOHでpHを3.5、4.5、5.5、6.5に調整し、
(3)凍結融解試験-4つのサンプル溶液を2~8℃、室温、40℃/75% RHのそれぞれの条件下で放置し24時間保存し、3回繰り返した。
チザニジン塩酸塩原薬溶液のpH及び外観、凍結融解試験の関連物質検出の変化を測定して下表に示した。
【表1】
【0030】
物理的観察により、pHが6.5になると、溶液の色が無色から淡黄色に変化することが分かった。
凍結融解試験前後の関連物質総不純物の変化が最も大きいのは、上表での1番号のサンプル溶液であり、その凍結融解試験前後の関連物質総不純物の変化は0.79%である。
チザニジン塩酸塩原薬溶液の外観変化及び凍結融解試験前後の関連物質総不純物の変化より、チザニジン塩酸塩の原薬溶液のpH値が3.5超え6.5未満の範囲でより優れた安定性を有することが分かった。
従って本発明のpH値は、3.5超え6.5未満であることが好ましい。
【0031】
次に、具体的な実施例により本発明に係るチザニジン液体製剤の安定性を調査した。
ガラス瓶/ポリエステル瓶は、固形錠剤や液剤の保存によく使われる内包材の一つである。ガラス瓶は、耐熱性が良く、吸着しにくいなどの優れた特性を持っているが、比較的脆く、破砕されやすく、押されることができないため、生産や輸送に不便があり、また、ガラスに含まれる微量の金属イオンが医薬品の安定性に影響を与える可能性がある。ポリエステル瓶は、破砕されにくく、破損率がゼロであり、価格が安く、生産コストや輸送コストも低いが、耐熱性が低く、製造過程で多くの添加剤が追加されるため、医薬品の質量に変化が発生し、同時に、ポリエステル瓶は、通気性があり、吸着しやすいなどの欠点もあり、この欠点は医薬品の酸化変質の速度を速くし、医薬品の変質を引き起こす可能性もある。
そこで、本発明は、安定性の調査中に、チザニジン液体製剤をガラス瓶及びポリエステル瓶の2つの通常の医薬品保管容器に保存し、関連物質の検出を行った。
【0032】
本発明の安定性調査の試験方法は、以下の通りである。
a 加速試験手順:
(1)安定性試験室の温度を40℃、相対湿度を75%に設定し;
(2)ガラス瓶及びポリエステル瓶に密封された液体製剤を取り出し、セットされた安定性試験室に放置し;
(3)放置後のサンプルを採取して関連物質の検出を行った。
b常温試験手順:
(1)安定性試験室の温度を25℃、相対湿度を60%に設定し;
(2)ガラス瓶及びポリエステル瓶に密封された液体製剤を取り出し、セットされた安定性試験室に放置し;
(3)放置後のサンプルを採取して関連物質の検出を行った。
本発明でのすべての実施例における加速試験及び常温試験の試験方法は、いずれもこの方法を使用した。
【実施例】
【0033】
実施例1
本発明に係る液体製剤は、チザニジン原薬に加えて、EDTA二ナトリウム塩及び他の1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤を含む。従って、関連添加剤を添加し、チザニジン塩酸塩の液体製剤を作製した後、その液体製剤の安定性及びpH値の範囲を研究した。
(一)実験処方:
【表2】
本願の処方表については、本願に開示された発明が特定の配合体積に限定されるものではなく、その液状製剤の各成分濃度が決定された場合、製造および試験の必要性により、その配合体積は変化することができることを理解すべきである。
本願明細書で提供される液体製剤の体積に関する説明は、特定の実施形態または各成分の濃度を記述する目的でのみ提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0034】
(二)プロセス:
処方量に応じて原料を秤量して用意した。
(1)EDTA二ナトリウム塩を適量の水に溶解し、均一に撹拌し;
(2)スクラロースを適量の水に溶解させ、ステップ(1)で得られた溶液に加え、均一に撹拌し;
(3)メチルパラベンナトリウムを適量の水に溶解させ、ステップ(2)で得られた溶液に加え、均一に撹拌し;
(4)プロピルパラベンナトリウムを適量の水に溶解させ、ステップ(3)で得られた溶液に加え、均一に撹拌し;
(5)クエン酸を適量の水に溶解させ、ステップ(4)で得られた溶液に加え、均一に撹拌し;
(6)クエン酸ナトリウムを適量の水に溶解させ、ステップ(5)で得られた溶液に加え、均一に撹拌し;
(7)チザニジン塩酸塩を適量の水に溶解させ、ステップ(6)で得られた溶液に加え、均一に撹拌し;
(8)0.1N HCl又は0.1N NaOHでステップ(7)で得られた溶液のpH値を約4.0又は6.0に調整するか、又はpH値を調整していなく;
(9)ステップ(8)で得られた溶液にストロベリー芳香剤を撹拌しながら加え、均一に撹拌し;
(10)水を加え、体積を1000mLに調整し、ろ過し、チザニジン塩酸塩の液体製剤を得た。
(三)関連物質の検出方法:
高速液体クロマトグラフィーにより関連物質を測定した。
被験溶液:チザニジン塩酸塩液体製剤約10gを精密に秤量し(約チザニジン4mgに相当)、100mLメスフラスコに入れ、希釈剤[移動相Aと移動相Bを一定の割合で混合]を加えて目盛まで希釈し、よく振り混ぜ、ろ過し、濾液を採取した。
対照溶液:被験溶液1.0mLを正確に量り、100mLメスフラスコに入れ、希釈剤を加えて目盛まで希釈し、よく振り混ぜた。
クロマトグラフィーカラムは、オクタデシルシリル結合型シリカゲルカラムC18(4.6×250mm、5μm)を使用し、ペンタンスルホン酸ナトリウム溶液(ペンタンスルホン酸ナトリウム3.5gを1000mL水に溶解させ、リン酸溶液又は水酸化ナトリウム溶液でpH3.0に調整する。)を移動相Aとし、アセトニトリルを移動相Bとし、表3に従ってグラジエント溶出を行い、流速は1.0mL/minであり、検出波長は230nmであり、注入量は50μLであり、カラム温度は30℃である。
【表3】
【0035】
限度:被験溶液のクロマトグラムに不純物のピークがある場合、不純物ピーク面積の合計は、対照溶液の主ピーク面積の0.5倍を超えではない(即ち、関連物質不純物の総量は、0.5%を超えではない)。
この検出方法は、本明細書での全ての実施例における関連物質の検出に適用できるが、本発明に係る関連物質の検出方法は、この検出方法に限定されなく、当業者は、従来の手段により検出方法/検出パラメータを部分的に調整することにより、本発明の関連物質を検出することもできる。
【表4】
表4の結果より、加速条件下で、pHが4.0/5.0/6.1である場合、チザニジン液体製剤の0日、1か月、3か月の関連物質総不純物の含有量はいずれも0.2%未満であり、薬局方で規定される0.5%よりもはるかに少なく、同時に、異なるpH値の液体製剤は、いずれも沈殿、濁りなどの現象が見られないことを示した。本発明に係るチザニジン液体製剤のpHが4.0~6.1範囲内で変化する場合、pH値は、製剤の物理的及び化学的安定性に実質的影響を及ぼさず、医薬品の市販及び使用に影響を与えない。
本実施例の液体製剤の長期安定性をさらに検証するために、本実施例で調製されたチザニジン液体製剤を常温で試験した。資源節約のため、この調査では表2でのHCl又はNaOHを添加しない2番号の処方のみを調査した。
【表5】
【0036】
本実施例の液体製剤は、常温で6か月放置された関連物質総不純物が0.03%(ガラス瓶)、0.03%(ポリエステル瓶)であり、その関連物質総不純物の含有量がいずれも0.2%未満であり、薬局方で規定される0.5%という限度よりもはるかに小さく、良好な化学的安定性を有する。
本実施例の液体製剤はガラス瓶及びポリエステル瓶に保存された関連物質の検出結果の区別には大きな差はなく、それにより、本実施例の液体製剤は保存容器に対する厳しい要件が設けられていなく、保存及び輸送中に実際のニーズに応じて保存容器を選択できることが分かった。
それに伴い、加速試験でも常温試験でも、本実施例のチザニジン液体製剤は、いずれも沈殿、濁りなどの現象が見られず、本実施例の液体製剤が加速条件及び常温条件下での長期保存中にいずれも良好な物理的安定性を有することを示した。
以上より、本実施例の液体製剤は、不純物含有量が低いだけでなく、化学的・物理的安定性が良好であり、薬局方の規定を満たし、医薬品収載の要件を満たし、しかもそれは保存容器に対して耐久性が強く、臨床上で多種の保存選択を提供することができる。
【0037】
実施例2
本実施例は、処方に添加剤-溶解補助剤を添加し、安定性を調査した。
(一)実験処方
【表6】
(二)プロセス:
処方量に従って原料を秤量して用意し;
(1)EDTA二ナトリウム塩を適量の水に溶解し、均一に撹拌し;
(2)スクラロースを適量の水に溶解させ、ステップ(1)で得られた溶液に加え;
(3)ステップ(2)で得られた溶液に濃度が70%のソルビトールを撹拌しながら加え;
(4)メチルパラベンナトリウム及びプロピルパラベンナトリウムを水に溶解させ、撹拌しながらステップ(3)で得られた溶液に加え;
(5)ステップ(4)で得られた溶液にクエン酸及びクエン酸ナトリウムを撹拌しながら加え;
(6)チザニジン塩酸塩を水に単独して溶解させた後、撹拌を続けながらステップ(5)で得られた溶液に加え;
(7)ステップ(6)で得られた溶液にストロベリー芳香剤を撹拌しながら加え;
(8)水を加え、体積が1000mLになるように調整し、ろ過し、チザニジン塩酸塩液体製剤を得た。
【0038】
(三)安定性の調査
本実施例で調製された液体製剤について加速試験を行った。
【表7】
0日目に、本実施例の液体製剤のpH値を測定したところ、5.0であった。本発明に係るチザニジン液体製剤のpH値が4.0~6.1の範囲内で変化することは本発明に係る安定性に実質的な影響を与えないため、本実施例は、pH値を調査しなかった。
本実施例の液体製剤は、加速条件下で、0、1、3か月での関連物質総不純物の含有量がいずれも0.2%未満であり、薬局方で規定される0.5%という限度よりもはるかに小さく、良好な化学的安定性を有し、かつ薬局方の規定を満たした。
本実施例の液体製剤の長期安定性をさらに検証するために、本実施例で調製されたチザニジン液体製剤に対して常温試験を行った。
【表8】
【0039】
本実施例の液体製剤は、常温で6か月放置された関連物質総不純物が0.15%(ガラス瓶)、0.19%(ポリエステル瓶)であり、いずれも0.2%よりもはるかに小さく、薬局方で規定される0.5%という限度よりもはるかに小さく、良好な化学的安定性を有すし、かつ薬局方の規定を満たした。
本実施例の液体製剤はガラス瓶及びポリエステル瓶に保存された関連物質総不純物の検出結果の区別に大きな差はなく、それにより、本実施例の液体製剤は保存容器に対する厳しい要件が設けられていなく、保存及び輸送中に実際のニーズに応じて保存容器を選択できることが分かった。
それに伴い、加速試験でも常温試験でも、本実施例に係るチザニジン液体製剤は、外観にいずれも沈殿、濁りなどの現象が見られず、本実施例の液体製剤が加速条件及び常温条件下での長期保存中にいずれも良好な物理的安定性を有することを示した。
本実施例の液体製剤は、不純物含有量が低いだけでなく、化学的・物理的安定性が良好であり、薬局方の規定を満たし、医薬品収載の要件を満たした。
本実施例は実施例1と比較して、液体製剤の処方に溶解補助剤を増加しており、溶解補助剤の添加の有無は本発明液体製剤の物理的及び化学的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
【0040】
実施例3
本実施例の処方に添加剤-増粘剤を添加し、溶解補助剤の添加量を調整し、安定性について調査した。
(一)実験処方
【表9】
(二)プロセス
処方量に従って原料を秤量して用意した。
(1)ヒドロキシプロピルセルロースを適量の水に加えて分散させ、透明になるまで撹拌した。
(2)EDTA二ナトリウム塩を水に溶解させ、ステップ(1)で得られた溶液に撹拌しながら加えた。
(3)ステップ(2)で得られた溶液に濃度が70%のソルビトールを撹拌しながら加え、透明になるまで撹拌した。
(4)メチルパラベンナトリウム及びプロピルパラベンナトリウムを水に溶解させ、ステップ(3)で得られた溶液に撹拌しながら加えた。
(5)ステップ(4)で得られた溶液にクエン酸及びクエン酸ナトリウムを撹拌しながら加えた。
(6)スクラロースを水に溶解させ、ステップ(5)で得られた溶液に撹拌しながら加えた。
(7)チザニジン塩酸塩を水に単独して溶解させた後、撹拌を続けながらステップ(6)で得られた溶液に加えた。
(8)ストロベリー芳香剤を撹拌し続けながらステップ(7)で得られた溶液に加えた。
(9)水を加えて体積が1000mLになるように調整し、ろ過し、チザニジン塩酸塩液体製剤を得た。
【0041】
(三)安定性調査
本実施例で調製される液体製剤について加速試験を行った。
【表10】
0日目に、本実施例で調製された液体製剤のpH値を測定したところ、5.2であったが、本発明に係るチザニジン液体製剤のpH値が4.0~6.1の範囲内で変化することは本発明に係る安定性に実質的な影響を与えないため、本実施例は、pH値を調査しなかった。
本実施例の液体製剤は、加速条件下で、0、1、3か月での関連物質総不純物の含有量がいずれも0.2%よりも小さく、薬局方で規定される0.5%という限度よりもはるかに小さく、良好な化学的安定性を有すし、薬局方の規定を満たした。
本実施例の液体製剤の長期安定性をさらに検証するために、本実施例で調製されたチザニジン液体製剤に対して常温試験を行った。
【表11】
【0042】
本実施例の液体製剤は、常温で6か月放置された関連物質総不純物が0.06%(ガラス瓶)、0.06%(ポリエステル瓶)であり、いずれも0.2%よりも小さく、薬局方で規定される0.5%という限度よりもはるかに小さく、良好な化学的安定性を有し、かつ薬局方の規定を満たした。
本実施例の液体製剤のガラス瓶及びポリエステル瓶に保存された関連物質総不純物の検出結果の区別に大きな差はなく、それにより、本実施例の液体製剤は保存容器に対する厳しい要件が設けられていなく、保存及び輸送中に実際のニーズに応じて保存容器を選択できることが分かった。
それに伴い、加速試験でも常温試験でも、本実施例に係るチザニジン液体製剤は、外観にいずれも沈殿、濁りなどの現象が見られず、本実施例の液体製剤が加速条件及び常温条件下での長期保存中にいずれも良好な物理的安定性を有することを示した。
本実施例の液体製剤は、不純物含有量が低いだけでなく、化学的・物理的安定性が良好であり、薬局方の規定を満たし、医薬品収載の要件を満たした。
本実施例は、実施例2と比較して、増粘剤を添加し、溶解補助剤の添加量を低減させており、それにより、本発明において、液体製剤の粘度を変更し、溶解補助剤の添加量を調整するのは、本発明液体製剤の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
【0043】
実施例4
本実施例は、処方中の増粘剤の種類及び添加量を調整し、安定性について調査した。
(一)実験処方
【表12】
(二)プロセス
処方量に従って原料を秤量して用意した。
(1)ヒドロキシプロピルセルロースを適量の水に添加して分散させ、透明になるまで撹拌した。
(2)EDTA二ナトリウム塩を水に溶解させ、撹拌しながらステップ(1)で得られた溶液に加え、透明になるまで撹拌した。
(3)ステップ(2)で得られた溶液に濃度が70%のソルビトールを撹拌しながら加え、透明になるまで撹拌した。
(4)メチルパラベンナトリウム及びプロピルパラベンナトリウムを水に溶解させ、ステップ(3)で得られた溶液に加えた。
(5)クエン酸及びクエン酸ナトリウムを水に溶解させ、ステップ(4)で得られた溶液に撹拌しながら加えた。
(6)スクラロースを水に溶解させ、ステップ(5)で得られた溶液に加えた。
(7)コロイド状二酸化ケイ素を水に分散させ、ステップ(6)で得られた溶液に撹拌しながら加えた。
(8)チザニジン塩酸塩を水に単独して溶解させた後、撹拌し続けながらステップ(7)で得られた溶液に加えた。
(9)ステップ(8)で得られた溶液にストロベリー芳香剤を撹拌続けながら加えた。
(10)水を加えて体積が1000mLになるように調整し、ろ過し、チザニジン塩酸塩液体製剤を得た。
【0044】
(三)安定性の調査
本実施例で調製された液体製剤について加速試験を行った。
【表13】
0日目に、本実施例の液体製剤のpH値を測定したところ、5.1であったが、本発明に係るチザニジン液体製剤のpH値が4.0~6.1の範囲内で変化することは本発明に係る安定性に実質的な影響を与えないため、本実施例は、pH値を調査しなかった。
本実施例の液体製剤は、加速条件下で、0、1、3か月での関連物質総不純物の含有量がいずれも0.2%よりも小さく、薬局方で規定される0.5%という限度よりもはるかに小さく、良好な化学的安定性を有し、薬局方の規定を満たした。
【0045】
本実施例の処方は、実施例3に加えてコロイド状二酸化ケイ素を添加したものであり、増粘剤の配合を調整し、表10及び表13に示す関連物質総不純物の検出比較結果から、増粘剤による処方の変更は、本発明液体製剤の化学的安定性に実質的な影響を与えず、また、表7/表10と表13の比較結果から、本実施例のチザニジン液体製剤は実施例2/実施例3のチザニジン液体製剤よりも明らかに低くない化学的安定性を有し、その加速条件下で、0~3か月での関連物質不純物含有量が薬局方の規定に合致することが分かった。
本実施例の液体製剤はガラス瓶及びポリエステル瓶に保存された関連物質の検出結果の区別に大きな差はなく、それにより、本施例の液体製剤は保存容器に対する厳しい要件が設けられていなく、保存及び輸送中に実際のニーズに応じて保存容器を選択できることが分かった。
それに伴い、本実施例の液体製剤は、いずれも沈殿、濁りなどの現象が発生していなく、良好な物理的安定性を有した。
以上より、増粘剤の配合への調整は、本発明液体製剤の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
【0046】
実施例5
本実施例では、添加剤への調整程度を多くし、安定性について調査した。
(一)実験処方
【表14】
(二)プロセス
処方量に従って原料を秤量して用意した。
(1)ヒドロキシプロピルセルロースを適量の水に加えて分散させ、透明になるまで撹拌した。
(2)安息香酸ナトリウムを水に溶解させ、ステップ(1)で得られた溶液に加えた。
(3)次いで、EDTA二ナトリウム塩を水に溶解させ、ステップ(2)で得られた溶液に撹拌しながら加えた。
(4)スクラロースをステップ(3)で得られた溶液に加え、均一に撹拌した。
(5)グリセリンをステップ(4)で得られた溶液に加えた。
(6)ステップ(5)で得られた溶液に濃度が70%のソルビトールを撹拌しながら加えた。
(7)チザニジン塩酸塩を水に単独して溶解させた後、ステップ(6)で得られた溶液に撹拌続けながら加えた。
(8)ステップ(7)で得られた溶液にストロベリー芳香剤を撹拌し続けながら加えた。
(9)水を加えて体積が1000mLになるように調整し、ろ過し、チザニジン塩酸塩液体製剤を得た。
【0047】
(三)安定性の調査
本実施例で調製された薬液について加速試験を行った。
【表15】
本実施例では、加速条件下で、0、1、3か月での関連物質総不純物は、検出されず、総不純物の含有量は、いずれも0.2%未満であり、薬局方で規定される0.5%という限度よりもはるかに小さく、良好な化学的安定性を有し、薬局方の規定を満たした。
本実施例はガラス瓶及びポリエステル瓶に保存された関連物質の検出結果に区別がなく、それにより、本実施例は保存容器に対する厳しい要件が設けられていなく、保存及び輸送中に実際のニーズに応じて保存容器を選択できることが分かった。
それに伴い、本実施例のチザニジン液体製剤は、いずれも沈殿、濁りなどの現象が見られない。
【0048】
本実施例は、実施例2の処方と比較して、pH値調整剤が除去され、本実施例の薬液は、0日目にpH値4.9と測定され、pH値が4.0~6.1の範囲内である。本実施例と実施例2の加速試験での関連物質総不純物の比較結果(表15と表7との比較)から、pH値調整剤の除去は、本発明液体製剤の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
本実施例では、実施例2の処方中の防腐剤を安息香酸ナトリウムに変更し、本実施例と実施例2の加速試験での関連物質総不純物の比較結果(表15と表7との比較)から、防腐剤の変更は本発明液体製剤の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
本実施例は、実施例2の処方と比較して、甘味料としてグリセリンを添加し、本実施例と実施例2の加速試験での関連物質総不純物の比較結果(表15と表7との比較)より、甘味料による処方の変更は、本発明液体製剤の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
【0049】
本実施例は、実施例2の処方と比較して、増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加し、本実施例と実施例2の加速試験での関連物質総不純物の比較結果(表15と表7との比較)から、増粘剤の増加は本発明液体製剤の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
本実施例は、実施例2の処方と比較して、本実施例の処方にチザニジン塩酸塩の活性物質に加えて、添加剤であるソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、及び矯味作用のみを担うスクラロース、ストロベリー芳香剤のみを残り、その他の添加剤は、いずれも異なかった。以上より、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩に加えて、その他の添加剤が当業者の認知範囲内で相応する変更及び削除を行うことは、本発明液体製剤の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
それに伴い、実施例1と実施例2の比較より、溶解補助剤-ソルビトールの添加の有無は、本発明液体製剤の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えず、医薬品の発売及び使用に影響を与えないこと分かった。
【0050】
従って、本発明では、EDTA二ナトリウム塩以外の他の添加剤の変更及び削除は、本発明の化学的・物理的安定性に実質的な影響を与えることはなく、前記他の添加剤は、
pH調整剤(クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、塩酸、水酸化ナトリウムなど);
及び/又は、溶解補助剤(ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イソマルトース、キシリトール、グルコース、フルクトースなど);
及び/又は、防腐剤(安息香酸ナトリウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベンナトリウム、エチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸、フェニルプロピオン酸カリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、二酢酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウムなど);
及び/又は、増粘剤(ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリンなど);
及び/又は、芳香剤(ストロベリー芳香剤、オレンジ芳香剤、バナナ芳香剤、チェリー芳香剤、レモン芳香剤、カルダモン芳香剤、フェンネル芳香剤、ミント芳香剤、メントール芳香剤、バニリン芳香剤など);
及び/又は、甘味料(スクラロース、グリセリン、サッカリンナトリウム、グルコース、ステビア、ステビアシド、アスパルテーム、サイクラミン酸ナトリウム、アセスルファムK、アリテーム、ネオテームなど);
及び/又は、増色効果のみを果たす着色剤(アマランス、カーマイン、エリスロシン、ニューレッド、レモンイエロー、サンセットイエロー、インディゴ、ビートレッド、シェラックレッド、ビルベリーレッド、トウガラシレッド、レッドライスレッドなど)を含むが、これらに限定されない。
【0051】
本発明に係るチザニジン液体製剤の安定性研究設計の調査時間は、24か月又はそれ以上の時間であり、現在、本発明に係るチザニジン液体製剤の0~3か月加速試験及び0~6か月常温試験のデータは、40℃/75%RH、25℃/60%RHでのその関連物質不純物含有量はいずれも0.2%未満であり、薬局方で規定される0.5%という限度よりもはるかに小さいことを示した。これは、医薬品保存条件下での本発明液体製剤の安定性が上記の安定性試験で得られた安定性と同等であることが期待できることを示した。
本発明に係るチザニジン液体製剤は、防腐剤を添加し、防腐剤の效力調査を行い、また、24か月又はそれ以上の時間の安定性調査があり、本発明に係る液体製剤の微生物指標は医薬品の品質基準を満たすことが期待できる。
以下に、臨床的試験により、食前(即ち、空腹)と食後に分けて本発明の人体薬物動態試験を行い、同時に有害反応の発生率を調査した。
実験サンプル:
i 実施例1で調製されたチザニジン塩酸塩液体製剤;
ii 実施例2で調製されたチザニジン塩酸塩液体製剤;
iii Zanaflex(登録商標)(チザニジン塩酸塩)4mg錠剤(標準品1);
iv Zanaflex(登録商標)(チザニジン塩酸塩)4mgカプセル(標準品2)。
【0052】
食前(空腹)生物学的同等性試験方法及び試験結果:
本試験は、食前条件下での健康成人25人の被験者を対象に実施され、無作為、開放、交差、単回用量(チザニジンとして4mg)、5つ周期、5シーケンスの交差実験設計とし、周期洗浄時間は、2日間であり、被験者は投与前に少なくとも10時間絶食し、投与前1時間及び投与後1時間で水を飲むことを禁止し(投与期間での240mL水を除く)、投与後4h、8hで標準食を提供し;被験者は、各周期前の48h及び全試験期間中にカフェイン及び/又はキサンチンを含む食べ物又は飲料(例えば、コーヒー、茶、及びカフェインを含むソーダ水、コーラなど)の食事を禁止し、同時にグレープフルーツ及び/又はグレープフルーツ果汁、およびケシを含む食べ物の食事を禁止した。
【0053】
投与方法:
液体製剤の投与方法は、被験者に座位を保持させ、経口注射器を使用してi/ii 10mLを被験者の口に注入し、被験者はそれを水50mLと一緒に飲み込み、注射器を水10mLで洗浄し、被験者の口に注入し、3回繰り返し、次いで、被験者に水を与え、被験者の服薬中の総給水量が240mLになることを保証し、被験者は服薬後2時間以内に座ったままであった。
錠剤/カプセルの投与方法は、被験者に座位を保持させ、単回用量のiii/ivを被験者の口に入れ、水240mLを飲んで全体として飲み込み(被験者は錠剤/カプセルを噛んだり砕いたりしてはならない)、被験者は服薬後2時間以内に座ったままであった。
各周期では、被験者は投与前(0.00h)及び投与後0.08h、0.16 h、0.25 h、0.33 h、0.50 h、0.67 h、0.83 h、1.00 h、1.25 h、1.50 h、1.75 h、2.00 h、2.50 h、3.00 h、4.00 h、6.00 h、8.00 h、10.00 h及び12.00 hにそれぞれ血液サンプル2.5mLを採取した。関連薬物動態パラメータを算出した。
Tmaxは、薬物の最高血中濃度到達時間である。
Cmaxは、ピーク濃度、つまり、測定された最高血中濃度である。
AUC0-tは、線形台形法により計算された。
AUC0-∞ =AUC0-t+Ct/λz。tは、最後の1回に血中濃度を実測できるサンプリング時間であり、Ctは、最後の1回に測定可能な被験薬物濃度であり、λzは、終末相消失速度定数である。
【0054】
【表16】
結論:本発明で調製されたチザニジン液体製剤は、いずれも食前条件下で既存市販の標準品-Zanaflex(登録商標)(チザニジン塩酸塩)4mg錠剤/カプセルと生物学的に同等であることを実現できた。
食前(空腹)有害反応の調査試験及び試験結果:
食前生物学的同等性試験中において、被験者の全実験過程における有害反応を観察、取材及び自発的に報告することにより記録した。
【0055】
【表17】
上表の実験結果から、本発明の実施例1/実施例2の食前有害反応(眠気、頭痛、無力、眩暈)の発生率は0/12.00%であるが、錠剤/カプセルの有害反応(眠気、頭痛、無力、眩暈)の発生率は、40.00%/16.00%であり、それにより、食前条件下で、本発明に係るチザニジン液体製剤の有害反応(眠気、頭痛、無力、眩暈)の発生率が既存の固形製剤よりも小さいことが分かった。
食後の生物学的同等性試験方法及び試験結果:
本試験は、食後条件下での健康成人27人の被験者を対象に実施され、無作為、開放、交差、単回用量(チザニジン4mg)、6周期、3シーケンスの部分反復試験設計を使用した。周期洗浄時間は、2日間であり、被験者は投与前に少なくとも10時間絶食し、投与前1時間及び投与後1時間で水を飲むことを禁止し(投与期間での240mL水を除く)、投与前0.5hに高カロリー高脂肪非野菜標準食を提供し、被験者は、食後0.5h以内に投与し、投与後4h、8h、12hに高カロリー高脂肪非野菜標準食を提供し、被験者は、各周期前の48h及び全試験期間中にカフェイン及び/又はキサンチンを含む食べ物又は飲料(例えば、コーヒー、茶、及びカフェインを含むソーダ水、コーラなど)の食事を禁止し、同時にグレープフルーツ及び/又はグレープフルーツ果汁、およびケシを含む食べ物の食事を禁止した。
【0056】
投与方法:
液体製剤の投与方法は、被験者に座位を保持させ、経口注射器を使用してi/iii 10mLを被験者の口に注入し、被験者はそれを水50mLと一緒に飲み込み、注射器を水10mLで洗浄し、被験者の口に注入し、3回繰り返し、次いで、被験者に水を与え、被験者の服薬中の総給水量が240mLになることを保証し、被験者は服薬後2時間以内に座ったままであった。
錠剤/カプセルの投与方法は、単回用量のiii/ivを被験者の口に入れ、水240mLを飲んで全体として飲み込み(被験者は錠剤/カプセルを噛んだり砕いたりしてはならない)、被験者は服薬後2時間以内に座ったままであった。
【0057】
【表18】
上表では、本発明の実施例1/実施例2のチザニジン塩酸塩液体製剤のT
maxは、0.94/1.00時間であるが、既存の(チザニジン塩酸塩)錠剤/カプセルT
maxは、1.74/2.02時間であり、食後条件下で、本発明に係る液体製剤は、既存の固形製剤のT
maxより明らかに低下し、薬効発現は明らかに加速することが分かった。
表16と表22の比較結果から、本発明の実施例1/実施例2のチザニジン塩酸塩液体製剤は、食後条件下で、その食前条件下でのT
maxよりも0.14/0.29時間しか延長されなかったことがわかった。既存の錠剤/カプセルは、食後条件下で、その食前条件下でのT
maxよりも0.87/1.15時間延長し、食べ物が本発明液体製剤のT
maxに与える影響は既存の固形製剤に与える影響よりも小さいことが明らかになった。
【0058】
以上より、食べ物が本発明のチザニジン塩酸塩液体製剤の薬効発現速度に与える影響は、既存の固形製剤に与える影響よりも小さく、食後条件下で、本発明に係る液体製剤は、既存の固形製剤の薬効発現速度よりも速いことが分かった。
当業者に周知のように、食後生物学的同等性試験方法は、一部の繰り返し試験設計を採用しているため、SWR(個体内標準偏差)≧0.294(即ち、ISCV%≧30% )の場合には、RSABE方法により同等性評価を使用することができる(AUC0-t、AUC0-∞に応用し、Cmaxのいずれか1つ又はすべてに適用)。RSABE方法により被験製剤及び参照製剤の薬物動態学的パラメータ(AUC0-t又はAUC0-∞又はCmax)が生物学的同等性を有することを判定する基準は、パラメータ幾何平均値比を計算する点推定値(以下、点推定値と略称する)が80%~125%の範囲内であるとともに、その計算パラメータの片側95%信頼区間上限(95%信頼上限と略称する)≦0であればよい。SWR<0.294(即ち、ISCV%<30%)の場合には、ABE方法を用いて生物学的同等性を評価した。
【0059】
【表19】
【表20】
結論:本発明で調製されたチザニジン液体製剤は、食後条件下で既存市販の標準品-Zanaflex(登録商標)(チザニジン塩酸塩)4mg錠剤/カプセルと生物学的に同等であることを実現できた。
食後有害反応の調査試験及び試験結果:
食後生物学的同等性試験の過程中において、被験者の全実験過程における有害反応を観察、取材及び自発的に報告することにより記録した。
【0060】
【表21】
上表の実験結果から、本発明の実施例1/実施例2の食後有害反応(眠気、嘔吐、頭痛)の発生率は、3.70%/3.70%であるが、錠剤/カプセルの有害反応(眠気、嘔吐、頭痛)の発生率は、29.62%/25.92%であり、それにより、食後条件下で、本発明に係るチザニジン液体製剤の有害反応(眠気、嘔吐、頭痛)の発生率が既存の固形製剤よりも小さいことが分かった。
表21及び表27に示す有害反応及びその発生率への調査結果より、本発明に係るチザニジン液体製剤の食前/食後条件下での有害反応項目-眠気(Drowsiness)の発生率はいずれも固形製剤(即ち、錠剤及びカプセル剤)よりも小さく、その有害反応項目-頭痛(Headache)の発生率は、食後条件下での発生率が固形製剤(即ち、錠剤及びカプセル剤)よりも小さいが、その有害反応項目-嘔吐(Vomiting)の発生率が食後条件でカプセル剤よりも小さいことが分かった。
【0061】
それにより、本発明に係るチザニジン液体製剤は、食前でも食後条件下でも、その有害反応の発生率が既存の固形製剤よりも小さいことが分かった。本発明に係る液体製剤では、チザニジン薬物剤形及び関連添加剤を変更することにより、薬物有害反応を顕著に低減させているのは、当業者には予期せぬものである。本発明では、薬物有害反応率が低下するため、本発明に係る薬物使用の安全性及び患者の服薬コンプライアンスを向上させた。
以上より、本発明に係るチザニジン液体製剤は、不純物の含有量が少なく、安定性が強く、既存のチザニジン固形製剤と比較して、その有害反応率が小さく、食べ物が薬効発現速度に与える影響が小さく、食後条件下での薬効発現速度が速く、且つ既存の固形製剤バイオアベイラビリティと同等であり、臨床的需要を満たした。
開示された実施例への上記説明により、当業者は本発明を実現または使用することができる。これらの実施例への様々な変更は、当業者にとっては明らかになるものであり、本明細書で定義される一般的な原理が、本発明の精神または範囲を逸脱することなく他の実施形態において実施されことができる。したがって、本発明は、本明細書に示すこれらの実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示された原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲に適合する。
さらに、本願発明は次の態様を含む。
[態様1]
有効成分、EDTA二ナトリウム塩及び他の医薬品賦形剤を含むチザニジン液体製剤であって、
前記有効成分は、チザニジン又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物の1種又は複数種である、ことを特徴とするチザニジン液体製剤。
[態様2]
前記液体製剤のpH値は、3.5超え6.5未満である、ことを特徴とする態様1に記載のチザニジン液体製剤。
[態様3]
前記液体製剤のpH値は、4.0~6.1である、ことを特徴とする態様1に記載のチザニジン液体製剤。
[態様4]
前記液体製剤は、水である溶媒を含む、ことを特徴とする態様1に記載のチザニジン液体製剤。
[態様5]
前記他の医薬品賦形剤は、pH調整剤、防腐剤、溶解補助剤、増粘剤、芳香剤、甘味料及び着色剤の1種又は複数種である、ことを特徴とする態様1に記載のチザニジン液体製剤。
[態様6]
前記pH調整剤は、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、塩酸、水酸化ナトリウムの1種又は複数種であり;
前記溶解補助剤は、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、イソマルトース、キシリトール、グルコース、フルクトースの1種又は複数種であり;
前記防腐剤は、安息香酸ナトリウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベンナトリウム、エチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸、フェニルプロピオン酸カリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、二酢酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウムの1種又は複数種であり;
前記増粘剤は、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリンの1種又は複数種であり;
前記芳香剤は、ストロベリー芳香剤、オレンジ芳香剤、バナナ芳香剤、チェリー芳香剤、レモン芳香剤、カルダモン芳香剤、フェンネル芳香剤、ミント芳香剤、メントール芳香剤、バニリン芳香剤の1種又は複数種であり;
前記甘味料は、スクラロース、グリセリン、サッカリンナトリウム、グルコース、ステビア、ステビアシド、アスパルテーム、サイクラミン酸ナトリウム、アセスルファムK、アリテーム、ネオテームの1種又は複数種であり;
前記着色剤は、アマランス、カーマイン、エリスロシン、ニューレッド、レモンイエロー、サンセットイエロー、インディゴ、ビートレッド、シェラックレッド、ビルベリーレッド、トウガラシレッド、レッドライスレッドの1種又は複数種である、ことを特徴とする態様5に記載のチザニジン液体製剤。
[態様7]
前記pH調整剤は、クエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物であり;
前記防腐剤は、メチルパラベンナトリウムとプロピルパラベンナトリウムの混合物、又は安息香酸ナトリウムであり;
前記溶解補助剤は、ソルビトールであり;
前記増粘剤は、ヒドロキシプロピルセルロースとコロイド状二酸化ケイ素の混合物、又はヒドロキシプロピルセルロースであり;
前記芳香剤は、ストロベリー芳香剤であり;
前記甘味料は、スクラロースである、ことを特徴とする態様5に記載のチザニジン液体製剤。
[態様8]
液体製剤100mLあたり、有効成分0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0~0.2g(ただし、EDTA二ナトリウム塩の含有量は、0ではない)を含む、ことを特徴とする態様6に記載のチザニジン液体製剤。
[態様9]
液体製剤100mLあたり、チザニジン0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0.005~0.2gを含む、ことを特徴とする態様6に記載のチザニジン液体製剤。
[態様10]
液体製剤100mLあたり、チザニジン0.02~1g、EDTA二ナトリウム塩0.005~0.2g、クエン酸0.01~0.2g、クエン酸ナトリウム0.01~0.1gを含む、ことを特徴とする態様6に記載のチザニジン液体製剤。
[態様11]
液体製剤100mLあたり、チザニジン0.04~0.09g、EDTA二ナトリウム塩0.008~0.12g、クエン酸0.06~0.14g、クエン酸ナトリウム0.02~0.06gを含む、ことを特徴とする態様6に記載のチザニジン液体製剤。
[態様12]
前記液体製剤は、以下の成分を含む、ことを特徴とする態様6に記載のチザニジン液体製剤。
チザニジン、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水;
又は、チザニジン、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水、
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水、
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ストロベリー芳香剤、及び水、
又は、チザニジン、ヒドロキシプロピルセルロース、安息香酸ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、EDTA二ナトリウム塩、スクラロース、ストロベリー芳香剤、及び水。
[態様13]
前記液体製剤100mLあたり、以下の成分を含む、ことを特徴とする態様12に記載のチザニジン液体製剤。
チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.083g、クエン酸ナトリウム0.042g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水、
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.035g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水、
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.046g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水、
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、コロイド状二酸化ケイ素0.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.04g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水、
又は、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース5g、安息香酸ナトリウム0.1g、グリセリン15g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水。
[態様14]
前記液体製剤において、チザニジン塩酸塩の含有量が0.046g/100mLであり、EDTA二ナトリウム塩を含み、且つ、前記液体製剤は、室温下で保存される時にその関連物質不純物の総量が0.2%以下であり、及び/又は、前記液体製剤は、投与後のチザニジンC
max
平均値、AUC
0-t
平均値及び/又はAUC
0-∞
平均値がそれぞれ以下の液体製剤のチザニジンと同用量で投与後のチザニジンC
max
平均値、AUC
0-t
平均値及び/又はAUC
0-∞
平均値の80%~120%の範囲内にある、ことを特徴とする態様1~13のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
(1)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.083g、クエン酸ナトリウム0.042g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(2)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.035g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(3)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.046g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(4)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース2.5g、コロイド状二酸化ケイ素0.5g、メチルパラベンナトリウム0.1g、プロピルパラベンナトリウム0.01g、70%ソルビトール溶液15g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、クエン酸0.09g、クエン酸ナトリウム0.04g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含むか、又は
(5)液体製剤100mLあたり、チザニジン塩酸塩0.046g、ヒドロキシプロピルセルロース5g、安息香酸ナトリウム0.1g、グリセリン15g、70%ソルビトール溶液25g、EDTA二ナトリウム塩0.1g、スクラロース0.05g、ストロベリー芳香剤0.05g、残部の水を含む。
[態様15]
前記液体製剤は、40℃/75%RHの条件下で0~3か月間密閉して保管される場合に、その関連物質不純物の総量が0.2%以下であり、
及び/又は、前記液体製剤は、25℃/60%RHの条件下で0~6か月間密閉して保管される場合に、その関連物質不純物の総量が0.2%以下である、ことを特徴とする態様1~13のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
[態様16]
前記液体製剤は、Zanaflex(登録商標)チザニジン錠剤の食前、食後のバイオアベイラビリティと同等であり、
及び/又は、前記液体製剤は、Zanaflex(登録商標)チザニジンカプセルの食前、食後のバイオアベイラビリティと同等である、ことを特徴とする態様1~13のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
[態様17]
食後条件下での前記のバイオアベイラビリティが同等である評価基準は、
C
max
の片側95%信頼区間上限は、0以下であり、
AUC
0-t
的90%信頼区間は、80%~125%であり、
AUC
0-∞
的90%信頼区間は、80%~125%である、ことを特徴とする態様16に記載のチザニジン液体製剤。
[態様18]
前記液体製剤は、食後条件下でのT
max
平均値がチザニジン錠剤/カプセルの食後条件下でのT
max
平均値よりも小さい、ことを特徴とする態様1~13のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
[態様19]
チザニジンとして同用量で投与条件下、
前記液体製剤の有害反応の発生率は、チザニジン錠剤/カプセルの有害反応の発生率よりも小さい、ことを特徴とする態様1~13のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
[態様20]
チザニジンとして同用量で投与条件下、
前記液体製剤は、食前の有害反応項目-眠気の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも小さく、
及び/又は、前記液体製剤は、食後の有害反応項目-眠気の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも小さく、
及び/又は、前記液体製剤は、食後の有害反応項目-頭痛の発生率がチザニジン錠剤/カプセルよりも小さく、
及び/又は、前記液体製剤は、食後の有害反応項目-嘔吐の発生率がチザニジンカプセルよりも小さい、ことを特徴とする態様1~13のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤。
[態様21]
筋痙攣を治療する医薬品の調製における、態様1~20のいずれか1項に記載のチザニジン液体製剤の使用。