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特許7627391パワーユニットおよびパワーユニットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-28
(45)【発行日】2025-02-05
(54)【発明の名称】パワーユニットおよびパワーユニットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20250129BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250129BHJP
【FI】
H02J7/02 G
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024551516
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2022048134
(87)【国際公開番号】W WO2024142216
(87)【国際公開日】2024-07-04
【審査請求日】2024-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】森岡 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】野中 建吾
(72)【発明者】
【氏名】谷添 一登
(72)【発明者】
【氏名】甫喜本 陸登
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-028316(JP,A)
【文献】特開2021-080703(JP,A)
【文献】特開2017-184590(JP,A)
【文献】特開2012-149714(JP,A)
【文献】特開2012-124071(JP,A)
【文献】特開2013-152356(JP,A)
【文献】特開2008-69517(JP,A)
【文献】特開平10-317429(JP,A)
【文献】特開2002-56832(JP,A)
【文献】特開平11-100861(JP,A)
【文献】特開平6-171378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に動力を供給するパワーユニットであって、
作動油タンクと、
前記作動油タンク内の作動油を前記建設機械に供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、
バッテリー管理コントローラを有する複数のバッテリーパックを並列に接続すると共に、前記バッテリー管理コントローラを通じて前記バッテリーパックの充放電の制御および充電残量の管理を行うマスターバッテリー管理システムを備えたバッテリーシステムと、
を備え、
前記バッテリーパックは複数のバッテリーモジュールを有し、
前記バッテリーモジュールを液冷するクーラーと、
前記作動油タンクを空冷するファンクーラーと、
を備え、
前記パワーユニットには、空気を取り込む吸入口がある側とは反対側に排気口が形成されており、
前記排気口に隣接して前記液冷するクーラーおよび前記ファンクーラーが並べて配置されているパワーユニット。
【請求項2】
建設機械に動力を供給するパワーユニットであって、
ベース部材と、ベース部材に立設された支柱と、前記支柱を挟むように設けられたボンネットとを有する筐体と、
作動油タンクと、
前記作動油タンク内の作動油を前記建設機械に供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、
バッテリー管理コントローラを有する複数のバッテリーパックを並列に接続すると共に、前記バッテリー管理コントローラを通じて前記バッテリーパックの充放電の制御および充電残量の管理を行うマスターバッテリー管理システムを備えたバッテリーシステムと、
前記バッテリーシステムを搭載したバッテリー搭載用フレームと、
を備え、
前記バッテリー搭載用フレームに搭載された前記バッテリーシステムのバッテリーパックは前記パワーユニットの筐体の上面に対向し、
前記支柱は前記バッテリー搭載用フレームの高さで上下に分割可能であり、前記ボンネットと前記支柱の上側を取り外すことにより、前記バッテリーシステムを上方に取り出すことが可能なパワーユニット。
【請求項3】
前記バッテリーパックは、直列接続と並列接続を併用して接続された複数のバッテリーモジュールを有する請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項4】
前記複数のバッテリーパックは、並列接続に加え、直列接続されている請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項5】
前記マスターバッテリー管理システムは、一部の前記バッテリーパックを回路上分離した状態で、残りの前記バッテリーパックからの放電が可能である請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項6】
前記マスターバッテリー管理システムは、一部の前記バッテリーパックを取り外した状態で、残りの前記バッテリーパックからの放電が可能である請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項7】
前記バッテリーシステムの外装が前記パワーユニットの外装の一部を構成する請求項に記載のパワーユニット。
【請求項8】
前記バッテリーパックは複数のバッテリーモジュールを有し、
前記バッテリーモジュールは階層状に積み重ねて配置され、
下層のバッテリーモジュールを載置した後に載置用のテーブルを被せ、その上にバッテリーモジュールを載置することにより、バッテリーモジュールを積み重ねた構成を備える請求項1に記載のパワーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事の現場で建設機械に動力を供給するパワーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工事の現場で用いられるパワーユニットが知られている。例えば、特開2002-285856は、本出願人の出願にかかる発動ユニットの特許公開公報である。この特許文献に記載されたパワーユニット(発動ユニット)では、油圧ポンプは、エンジンの駆動によって油圧を発生する。ここでは一例を示したように、従来のパワーユニットは、エンジンの動力として燃料を用いていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、脱炭素社会の実現に向け、全世界的に、化石燃料の使用の削減が求められている。こうした社会的要請に鑑み、温室効果ガスの排出を抑制したパワーユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のパワーユニットは、建設機械に動力を供給するパワーユニットであって、作動油タンクと、前記作動油タンク内の作動油を前記建設機械に供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、バッテリー管理コントローラを有する複数のバッテリーパックを並列に接続すると共に、前記バッテリー管理コントローラを通じて前記バッテリーパックの充放電の制御および充電残量の管理を行うマスターバッテリー管理システムを備えたバッテリーシステムとを備え、前記マスターバッテリー管理システムは、放電を行う際に、残量が最も多い前記バッテリーパックを最初に前記電動モータに接続し、充電を行う際に、残量が最も少ない前記バッテリーパックを最初に電源に接続するように制御する。
【0005】
このように複数のバッテリーパックを並列に接続することでバッテリーの容量を確保しつつ、マスターバッテリー管理システムが各バッテリーパックを統括して制御することにより、充電量と放電量を状況に応じて最適化することができ、少ない容量のバッテリーでの運用が可能となり、バッテリーの小型化と重量の軽減を実現することができる。
【0006】
本発明のパワーユニットにおいて、前記バッテリーパックは、直列接続と並列接続を併用して接続された複数のバッテリーモジュールを有してもよい。この構成により、バッテリーシステムのピークパワーを高くすることができると共に、持続力を得ることができる。
【0007】
本発明のパワーユニットにおいて、前記複数のバッテリーパックは、並列接続に加え、直列接続されていてもよい。この構成により、バッテリーシステムのピークパワーを高くすることができると共に、持続力を得ることができる。
【0008】
本発明のパワーユニットにおいて、前記マスターバッテリー管理システムは、一部の前記バッテリーパックを回路上分離した状態で、残りの前記バッテリーパックからの放電が可能であってもよい。この構成により、回路上分離された一部のバッテリーパックを除く残りのバッテリーパックから放電することにより、充電残量を調整できる。また、一部のバッテリーパックが故障した場合に、故障していない他のバッテリーパックから放電することが可能となり、建設機械の稼働を確保することができる。
【0009】
本発明のパワーユニットにおいて、前記マスターバッテリー管理システムは、一部の前記バッテリーパックを取り外した状態で、残りの前記バッテリーパックからの放電が可能であってもよい。この構成により、建設機械の稼働中に、バッテリーパックを順次交換可能となり、建設機械の連続稼働が可能となる。
【0010】
本発明のパワーユニットは、前記バッテリーパックが複数のバッテリーモジュールを有し、前記バッテリーモジュールを液冷するクーラーと、前記作動油タンクを空冷するファンクーラーとを備えてもよい。この構成により、液冷によりバッテリーパックの温度を維持して充放電の効率を保持できると共に、空冷により作動油タンクを低コストで冷やすことができる。
【0011】
本発明のパワーユニットには、空気を取り込む吸入口がある側とは反対側に排気口が形成されており、前記排気口に隣接して前記クーラーおよび前記ファンクーラーが並べて配置されていてもよい。この構成により、クーラーの冷却液を冷やすための空気を作動油タンクの冷却にも用いることができる。
【0012】
本発明のパワーユニットにおいて、前記バッテリーパックは、前記パワーユニットの筐体の上面に対向して配置されていてもよい。この構成により、バッテリーパックを容易に交換することができる。
【0013】
本発明のパワーユニットは、前記バッテリーシステムの外装が前記パワーユニットの外装の一部を構成してもよい。この構成により、バッテリーシステムを容易にパワーユニットから分離できるとともに、バッテリーシステム内のバッテリーモジュール等の精密機器を露出させることなく外装ごと交換できるため、悪天候時でも安全にバッテリー交換が可能となる。
【0014】
本発明のパワーユニットにおいて、前記バッテリーパックは複数のバッテリーモジュールを有し、前記バッテリーモジュールは階層状に積み重ねて配置され、下層のバッテリーモジュールを載置した後に載置用のテーブルを被せ、その上にバッテリーモジュールを載置することにより、バッテリーモジュールを積み重ねた構成を備えてもよい。この構成により、上下のバッテリーモジュール間の隙間を狭くして、バッテリーパックの占有体積を小さくできる。
【0015】
本発明のパワーユニットは、前記バッテリーパックを液冷するクーラーを備えてもよい。このようにバッテリーパックを液冷する構成により、バッテリーモジュール間の隙間の狭い構成においても、バッテリーパックの温度上昇を効率よく抑制できる。
【0016】
本発明のパワーユニットは、前記パワーユニットの筐体の下にパワーユニット自走用駆動装置を備え、前記バッテリーパックの電力を前記パワーユニット自走用駆動装置に供給するように構成してもよい。この構成により、パワーユニットが備えるバッテリーシステムを利用して、パワーユニット自体を自走させることができる。
【0017】
本発明のパワーユニットにおいて、パワーユニット自走用駆動装置は、前記パワーユニットの筐体に対して着脱可能であってもよい。この構成により、パワーユニットが備えるバッテリーシステムを利用して、パワーユニット自体を自走させることができる。
【0018】
本発明のパワーユニットの制御方法は、前記建設機械に対して電力を供給しているか否かを判定し、前記建設機械に対して電力を供給していないと判定された時間に前記バッテリーパックの充電を行う。この構成により、作業工程内における細切れの時間を利用してバッテリーモジュールを充電し、パワーユニットの連続稼働時間を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態のパワーユニットの全体構成を示す図である。
図2】パワーユニットの内部構造を示す図である。
図3】パワーユニットの内部構造を示す図である。
図4】パワーユニットの内部構造を示す図である。
図5】バッテリーモジュールとBMCとの接続関係を示す図である。
図6】バッテリーシステムの構成を示す図である。
図7】バッテリーシステムの部分断面図である。
図8】バッテリーシステムの動作について説明するための図である。
図9】バッテリーシステムの取り外しの方法を示す図である。
図10】バッテリーシステムの取り外しの方法を示す図である。
図11】バッテリーシステムの取り外しの方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施の形態のパワーユニットについて図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも好ましい態様の一例を示したものであり、特許請求の範囲に記載された発明を限定する意図ではない。
【0021】
図1は、本実施の形態のパワーユニット1の全体構成を示す図である。本実施の形態のパワーユニット1は、バッテリーシステムによって動力を生成し、建設機械に供給する。本実施の形態では、建設機械として、鋼矢板を地中に圧入する圧入機を例として説明する。
【0022】
図1に示すようにパワーユニット1は、ベース部材10と、ベース部材10に立設されたコの字状の支柱11と、支柱11を挟むように設けられたボンネット13を備え、全体として箱状の構成を有している。以下の説明では、図1における左側を「前方」、右側を「後方」とする。パワーユニット1は、ベース部材10の下に、クローラー14が取り付けられている。クローラー14は、パワーユニット1を自走させるためのパワーユニット自走用駆動装置である。クローラー14の取り付けは、位置決めのガイドプレートをガイドとして位置決めをし、ベース部材10とクローラー14のフレームにボルトを通してナットで締結することにより固定する。この構成により、クローラー14を容易に着脱できる。
【0023】
ベース部材10と支柱11は、パワーユニット1の荷重を支える部材であり、ボンネット13よりも剛性が高い。支柱11は、その上部にシャックルボルトを係止するための2つの係止部12を有している。左右の係止部12にシャックルボルトをナットで固定し、シャックルボルトに対してワイヤを架け渡す。架け渡したワイヤにクレーンのフックを掛けて吊り上げることにより、パワーユニット1を持ち上げて運搬することができる。
【0024】
パワーユニット1は、ボンネット13の上面の前方に、ソーラーパネル15を有している。パワーユニット1は、ソーラーパネル15で発電した電気を充電しておき、後述するバッテリーモジュールを出力開始させるための駆動用電源として用いる。この構成により、駆動用電源はバッテリー切れの影響を受けない。
【0025】
ボンネット13は、複数のメンテナンス用扉16を有している。メンテナンス用扉16を開くことによりボンネット13の内部の構成にアクセスでき、メンテナンスを行うことができる。
【0026】
パワーユニット1の前面付近には、コントロールボックス20が配置されている。コントロールボックス20は、パワーユニット1全体を制御すると共に、パワーユニット1に接続される建設機械の動作も制御する。コントロールボックス20は、パワーユニット1の操作を行うためのコントロールパネル21を有している。コントロールボックス20の前面が開放されているので、パワーユニット1の外部からコントロールパネル21の操作を行うことができる。また、コントロールボックス20は、バッテリーシステム40を充電する際に用いる充電端子22を有している。また、パワーユニット1の前面側底面の一部には切り欠きが形成されており(図2参照)、この切り欠きがパワーユニット1の内部に空気を吸入するための吸入口34としての役割を有する。
【0027】
図2は、パワーユニット1の内部構造を示す図であり、ボンネット13を外した状態を示す。なお、図2では、後方の内部構成を一部省略している。図3及び図4は同じくパワーユニット1の内部構造を示す図であり、図2とは異なる方向から見た図である。以下、パワーユニット1の内部構造について、順に説明する。
【0028】
パワーユニット1は、複数のバッテリーモジュール41a~41lを含むバッテリーシステム40を有している。12個のバッテリーモジュール41a~41lの構成は同じである。バッテリーモジュール41a~41lを総称するときには「バッテリーモジュール41」という。バッテリーシステム40は、バッテリー搭載用フレーム23に搭載され、パワーユニット1の前方に配置されている。具体的には、バッテリーシステム40は、パワーユニット1の上面に対向するように配置されている。この配置により、ボンネット13を外してバッテリーシステム40を引き上げることができ、バッテリーシステム40を容易に取り外すことができる。
【0029】
バッテリーシステム40は、12個のバッテリーモジュール41a~41lと、バッテリーモジュール41の充放電を制御する3個のバッテリー管理コントローラ(Battery Management Controller。以下「BMC」という。)42a~42cと、バッテリー管理コントローラ42a~42cを制御するマスターバッテリー管理システム(Master Battery Management System。以下「MBMS」という。)43とを有している。3個のBMC42a~42cの構成は同じである。BMC42a~42cを総称するときには「BMC42」という。
【0030】
図5は、バッテリーシステム40を構成するバッテリーモジュール41とBMC42との接続関係を示す図である。バッテリーモジュール41a~41dは直列に接続されており、直列接続された4個のバッテリーモジュール41a~41dに対してBMC42aが接続されている。バッテリーモジュール41a~41dとBMC42aのセットを「バッテリーパック」という。同様に、直列接続された4個のバッテリーモジュール41e~41hに対してBMC42bが接続されてバッテリーパックを構成し、直列接続された4個のバッテリーモジュール41i~41lに対してBMC42cが接続されてバッテリーパックを構成している。
【0031】
なお、各バッテリーモジュール41は、電池のセルを組み合わせて構成されたモジュールである。圧入機等の建設機械を一日稼働させるためには、多数のバッテリーモジュール41が必要となるため、バッテリーシステム40の重量と占有体積は、かなり大きいものとなる。
【0032】
バッテリーシステム40は、3個のバッテリーパックを並列に接続して構成されている。このように直列接続されたバッテリーモジュール41からなるバッテリーパックを並列に接続することにより、出力電流を高くすることができると共に、バッテリーシステム40の稼働時間を長く保つことができる。
【0033】
MBMS43は、バッテリー関連の制御を統括し、3個のバッテリーパックの充放電を制御する機能を有する。具体的には、MBMS43は、放電を行う際に、残量が最も多いバッテリーパックを最初に電動モータ27に接続し、充電を行う際に、残量が最も少ないバッテリーパックを最初に電源に接続する。このようにMBMS43が各バッテリーパックを統括して制御することにより、充電量と放電量を状況に応じて最適化することができる。なお、残りのバッテリーパックについては、MBMS43は、放電を行う際に、充電量が高いバッテリーパックから順次、電動モータ27に接続してもよい。また、MBMS43は、充電を行う場合、充電量が低いバッテリーパックから順次電源に接続してもよい。
【0034】
なお、バッテリーシステム40の充電を行う際には、バッテリーシステム40が充電に最適な温度になるように制御を行ってもよい。バッテリーシステム40が最適温度よりも高い場合には、ウォータークーラー29によってバッテリーシステム40の温度を最適温度まで低下させる。バッテリーシステム40が最適温度よりも低い場合には、電気ヒーターをバッテリー駆動し、ヒーターの熱とヒーターの通電による発熱により、バッテリーシステム40を温める。また、電気モータの運転中は、電気モータ自体の発熱もしくは作動油の熱を利用することで、機械エネルギーを再利用しつつ、バッテリー温度を充電に最適な温度まで温め、充電効率の最適化を図ってもよい。作動油の熱を利用するためには、作動油タンク26から作動油の一部を取り出す。また、電気モータと電気ヒーターを併用してバッテリーシステム40を温めてもよい。
【0035】
パワーユニット1は、交流(AC)を直流(DC)に変換するコンバータ24と、直流(DC)を交流(AC)に変換するインバータ25と、通電時にノイズを軽減する制御フィルタ35とを備えている。コンバータ24とインバータ25と制御フィルタ35とは、バッテリー搭載用フレーム23の下に配置されている。
【0036】
パワーユニット1は、支柱11を挟んで、バッテリーシステム40の隣りに作動油タンク26を備えている。また、作動油タンク26の下に、電動モータ27と油圧ポンプ28を備えている。油圧ポンプ28は、作動油タンク26内の作動油に圧力をかける機能を有する。パワーユニット1は、油圧ポンプ28で生成された圧油を油圧マニホールド31に接続された配管(図示せず)を経由して建設機械に供給する。電動モータ27は、バッテリーシステム40から電力の供給を受け、油圧ポンプ28を駆動する。なお、油圧ポンプ28は、作動油をクローラー14にも供給し、パワーユニット1によってクローラー14を駆動する。本実施の形態では、建設機械およびクローラー14を作動油によって駆動する例を挙げているが、建設機械およびクローラー14を電力によって直接駆動することとしてもよいし、電力と油圧のハイブリッドで駆動することとしてもよい。
【0037】
パワーユニット1は、後方にウォータークーラー29とファンクーラー30を有している。ファンクーラー30はパワーユニット1内の空気を外部に排気する機能を有する。ファンクーラー30を駆動すると、パワーユニット1の前面側の底面に形成された吸入口34から空気が流入し、後方から空気が排気される。ファンクーラー30により、パワーユニット1の内部に空気を通すことで、コンバータ24、インバータ25、作動油タンク26等を冷却する。
【0038】
ウォータークーラー29は、冷却液であるクーラント液を冷却し、冷却したクーラント液を水冷ラインを通じて、バッテリーシステム40に循環させることで、バッテリーシステム40を冷却する。また、本実施の形態では、バッテリーシステム40への水冷ラインを分岐させ、コンバータ24、インバータ25、制御フィルタ35にクーラント液を供給し、冷却する。これにより、コンバータ24、インバータ25、制御フィルタ35の基板の発熱に対処し、制御不良を防ぐことができる。
【0039】
ウォータークーラー29は、空気との熱交換により水を冷却するが、熱交換に用いる空気の流れはファンクーラー30と同様に、パワーユニット1の前方から後方である。したがって、ウォータークーラー29による空気の流れによっても、パワーユニット1の前方から後方への空気の流れを作り、パワーユニット1内部を空冷することができる。
【0040】
本実施の形態のパワーユニット1は、ウォータークーラー29による空気の流れとファンクーラー30による空気の流れを一致させることによりパワーユニット1内に籠る排熱で暖められた空気を、積極的に外部に排出することができる。また、図2図4に示すように、ウォータークーラー29とファンクーラー30は共に、パワーユニット1後方の面の上側に配置されているので、排熱で暖められパワーユニット1内の上側に集まった暖かい空気を効率良く排出することができる。
【0041】
図6はバッテリーシステム40の構成を示す図、図7図6に示すバッテリーシステム40のA-A断面図である。バッテリーシステム40は、バッテリー搭載用フレーム23の上に搭載されている。バッテリー搭載用フレーム23の上に、3個のバッテリーモジュール41a,41e,41iが配置され、バッテリーモジュール41a,41e,41iにテーブル44が被せられ、さらにそのテーブル44の上に3個のバッテリーモジュール41b,41f,41jが配置されるといった具合に、バッテリーモジュール41とテーブル44を繰り返し配置した積層構造を有している。
【0042】
積層構造は、テーブル44によって構成されたラックに対してバッテリーモジュール41を挿入して構成されたものではなく、図7に示すように、最下段のバッテリーモジュール41a,41e,41iを載置した後にテーブル44を被せ、テーブル44を被せた後にその上にバッテリーモジュール41b,41f,41jを載置し、さらにテーブル44を被せるといった手順で構成されている。
【0043】
図6には、最下段のバッテリーモジュール41a,41e,41iの上面と下から二番目のバッテリーモジュール41b,41f,41jの載置面との隙間Gと、テーブル44の周囲の枠の高さHを示している。予め準備したラックにバッテリーモジュール41を入れる場合には、隙間Gを枠の高さHより狭くすることはできないが、本実施の形態によれば、隙間Gを枠の高さHよりも狭くでき、バッテリーシステム40を小型化できる。
【0044】
図8(a)~図8(c)は、バッテリーシステム40の動作について説明するための図である。図8(a)は、バッテリーシステム40の充電時の動作を示す図である。充電時には、パワーユニット1と電源とを接続し、電源50からの電気を受電部32で受電し、コンバータ24で交流から直流に変換し、バッテリーシステム40に充電を行う。なお、電源は、発電機または商用電源等である。図8(b)はバッテリーシステム40の放電時の動作を示す図である。放電時には、バッテリーモジュール41に蓄えられた電気をインバータ25で直流から交流に変換し、電動モータ(交流電動機)27に供給する。電動モータ27は、油圧ポンプ28を駆動させ、油圧バルブ33を介して作動油を圧入機60に供給する。
【0045】
図8(c)は、電源50のアシストを受けながら放電を行うアシスト放電時のバッテリーシステム40の動作を示す図である。アシスト放電時には、充電時には、パワーユニット1と電源50とを接続する。図8(b)で示す放電の動作に加え、電源50からの電気を受電部32、コンバータ24、インバータ25を介して電動モータ(交流電動機)27に供給する。すなわち、バッテリーシステム40からの放電に加え、電源50からの電気を用いて電動モータ27を駆動する。これにより、アシスト放電では、図8(b)に示す放電よりも高い駆動電圧で電動モータ27を駆動することが可能となる。
【0046】
図9図11は、バッテリーシステム40の取り外しの方法を示す図である。バッテリーシステム40を取り外す際には、図9に示すように、まず、支柱11の前側のボンネット13を取り外す。次に、図10に示すように支柱11の上側の部分を取り外す。支柱11は、バッテリー搭載用フレーム23の高さで上下に分割可能な構成であり、上側の部分を取り外す。その後、バッテリーシステム40と、コンバータ24及びインバータ25との接続を解除すると共に、ウォータークーラー29からの水冷ラインの接続を解除し、図11に示すようにバッテリーシステム40を上方に取り出す。バッテリーシステム40は、パワーユニット1の上面に面して配置されているため、図9図11で説明したとおり、容易に取り外すことができる。
【0047】
仮に、バッテリーシステム40がベース部材10に載置され、バッテリーシステム40の上にコンバータ24やインバータ25等がある構成だとすると、バッテリーシステム40の上にあるそれらの部材をどかすか、バッテリーシステム40を横に引き抜かなければならない。上述したとおり、バッテリーシステム40はかなりの重量物であるが、本実施の形態では、取り外しの利便性に鑑み、バッテリー搭載用フレーム23を用いて、バッテリーシステム40を敢えて持ち上げて、パワーユニット1の上面に対向するように配置している。
【0048】
次に、本実施の形態のパワーユニット1を用いた建設機械の運用について説明する。建設現場にパワーユニット1を持ち込んで、建設現場に駆動力を供給して工事を行う。本実施の形態の例では、圧入機によって鋼矢板を圧入する工事を行う。
【0049】
基本的には、夜間のうちにバッテリーシステム40をフル充電しておき、充電した電力で一日の作業を賄う。ただし、圧入機の作業工程においては、クレーンで鋼矢板をチャックに立て込む工程や立て込んだ鋼矢板の鉛直の確認(オペレータが鋼矢板に水準器を当てて目視で確認)をする工程において、圧入機が停止状態になる時間が生じる。この時間にバッテリーシステム40に充電を行うこととしてもよい。これにより、途中での充電を行わない場合に比べて、容量の小さいバッテリーシステム40で一日の作業を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態のパワーユニット1について説明したが、本発明のパワーユニットは、上記した構成に限定されるものではない。
上記した実施の形態では、3個のバッテリーパックを並列に接続してバッテリーシステムを構成する例を挙げたが、並列接続に加えてバッテリーパックを直列接続することによってバッテリーシステム40を構成することとしてもよい。また、バッテリーパックの数も3個に限られない。
【0051】
上記した実施の形態では、バッテリーパックは、4個のバッテリーモジュール41を直列に接続した構成を有するが、バッテリーパックは、直列接続と並列接続を併用してバッテリーモジュール41を接続した構成を有してもよい。また、各バッテリーパックに含まれるバッテリーモジュール41の数も4個に限られない。
【0052】
上記した実施の形態では、バッテリーシステム全体を取り外す例を挙げたが、一部のバッテリーパックのみを取り外して充電し、残りのバッテリーパックからの放電で電動モータを駆動させることとしてもよい。例えば、4直列3並列のうち1並列分のバッテリーパックを取り外して充電、残りの2並列分のバッテリーパックだけで駆動し、順次バッテリーパックを交換するといった運用が可能となる。また、4直列3並列のうちの1並列分のバッテリーパックを物理的に取り外すことなく、回路上分離した状態で、残りのバッテリーパックからの放電を行うこととしてもよいし、逆に、1並列分のバッテリーバックを残りのバッテリーバックから回路上分離した状態とし、1並列分のバッテリーパックを電源に接続して充電を行ってもよい。
【0053】
また、上記した4直列3並列のバッテリーシステムとは別の回路で接続されているバッテリーパックを予備バッテリーとして設けておき、予備バッテリーでの駆動中に4直列3並列のバッテリーシステムを取り外してもよい。
【0054】
また、バッテリーシステムの外装によってパワーユニットの外装の一部を構成することとしてもよい。上記した実施の形態では、ボンネットや支柱の上側の部分を外した後でバッテリーシステムを取り外す例を挙げたが、バッテリーシステムの外装がパワーユニットの外外装を構成することとすれば、ボンネットを外すという作業を行うことなく、バッテリーシステムを取り外すことができる。

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