(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】RF電力増幅器用伝送線の分離方法及び伝送構造
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20250130BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20250130BHJP
H01P 3/10 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/02 P
H01P11/00 102
H01P3/10
(21)【出願番号】P 2023536511
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(86)【国際出願番号】 CN2022090601
(87)【国際公開番号】W WO2023134081
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202210053366.X
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521079271
【氏名又は名称】深▲せん▼▲飛▼▲驤▼科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 煥
(72)【発明者】
【氏名】郭 嘉▲帥▼
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-275862(JP,A)
【文献】特開平03-120890(JP,A)
【文献】特開2003-249731(JP,A)
【文献】特開2019-009396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 - 1/02
H05K 3/46
H05K 9/00
H01P 3/10
H01P 11/00
B32B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF電力増幅器用伝送線の分離方法であって、
基板上の隣接する2つの伝送線間の距離を前記伝送線の幅の2.5倍よりも大きく設定し、前記伝送線の互いに対応する内側及び
前記伝送線の両外側にシールド線を設けるステップと、
前記伝送線の外壁をパーマロイ皮膜で被覆するステップと、
前記パーマロイ皮膜の外壁をアルミニウム皮膜で被覆し、前記アルミニウム皮膜の外壁に、内側に凹んで逆三角形構造を呈する複数の凹溝を間隔を空けて設けるステップと、を含むことを特徴とするRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項2】
複数の前記凹溝の深さは等しく、且ついずれも前記アルミニウム皮膜の厚さよりも小さく、複数の前記凹溝は前記アルミニウム皮膜の外壁に等間隔で設けられることを特徴とする請求項1に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項3】
伝送線の外壁をパーマロイ皮膜で被覆するステップは、具体的には、
前記伝送線の長さを測定し、それを前記パーマロイ皮膜の長さとするサブステップと、
前記伝送線の周長を測定し、それを前記パーマロイ皮膜の幅とするサブステップと、
前記パーマロイ皮膜の長さ及び幅に基づいて、パーマロイ材から前記伝送線に対応する前記パーマロイ皮膜を裁断するサブステップと、
前記パーマロイ皮膜の一方の側に絶縁性接着剤を均一に塗布し、前記パーマロイ皮膜の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記伝送線の外壁に被覆して固定するサブステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項4】
前記絶縁性接着剤の材料は2025DSIであり、前記パーマロイ皮膜の厚さが40μm~50μmであることを特徴とする請求項3に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項5】
前記パーマロイ皮膜の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記伝送線の外壁に被覆して固定するステップの後、
前記パーマロイ皮膜を被覆して固定した前記伝送線を高温オーブンに入れて150℃まで加熱した後に取り出すステップをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項6】
前記パーマロイ皮膜の外壁をアルミニウム皮膜で被覆するステップは、具体的には、
前記伝送線の長さを測定し、それを前記アルミニウム皮膜の長さとするサブステップと、
前記パーマロイ皮膜の周長を測定し、それを前記アルミニウム皮膜の幅とするサブステップと、
前記アルミニウム皮膜の長さ及び幅に基づいて、アルミニウム材から前記パーマロイ皮膜に対応する前記アルミニウム皮膜を裁断するサブステップと、
前記アルミニウム皮膜の一方の側に絶縁性接着剤を均一に塗布し、前記アルミニウム皮膜の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記パーマロイ皮膜の外壁に被覆するサブステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項7】
前記絶縁性接着剤の材料は2025DSIであり、前記アルミニウム皮膜の厚さが35μm~45μmであることを特徴とする請求項6に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項8】
前記アルミニウム皮膜の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記パーマロイ皮膜の外壁に被覆するステップの後、
前記アルミニウム皮膜を被覆して固定した前記伝送線を高温オーブンに入れて150℃まで加熱した後に取り出すステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法
【請求項9】
前記凹溝の深さが20μm~25μmであり、隣接する2つの前記凹溝間の距離が0.5mm~0.8mmであることを特徴とする請求項7に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項10】
前記シールド線は絶縁材質で製造され、前記シールド線の幅が50μm~55μmであり、その長さが前記伝送線の長さ以上であることを特徴とする請求項1に記載のRF電力増幅器用伝送線の分離方法。
【請求項11】
RF電力増幅器の伝送構造であって、
基板と、前
記基板に設けられた少なくとも2つの伝送線とを含み、
隣接する2つの前記伝送線間の距離が前記伝送線の幅の2.5倍よりも大きく、前記伝送線の互いに対応する内側及び
前記伝送線の両外側にシールド線が設けられ、伝送線の外壁にパーマロイ皮膜が被覆されており、前記パーマロイ皮膜の外壁にアルミニウム皮膜が被覆されており、前記アルミニウム皮膜の外壁に、内側に凹んで逆三角形構造を呈する複数の凹溝が間隔を空けて設けられていることを特徴とするRF電力増幅器の伝送構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の技術分野に関し、特にRF電力増幅器用伝送線の分離方法及び伝送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信とは、複数のノード間に導体やケーブルを介さずに伝送を行う長距離伝送通信であり、ラジオ受信機、ラジオ等のいずれも無線に利用可能である。無線通信において、RF電力増幅器は重要なデバイスの一つとし、主にRF信号を増幅する役割を果たし、これにより通信の品質を向上させる。
【0003】
しかしながら、従来のRF電力増幅器は、実際に動作する時に、そのチップ基板上の伝送線間の分離度が悪く、伝送線間にも干渉が発生しやすく、且つ、外部の電磁波も伝送線に干渉を発生し、これにより伝送線内部を伝送されたRF信号に干渉を引き起こし、さらに通信品質に影響を与える場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例の目的は、従来のチップ基板上のRF電力増幅器用伝送線の分離度が悪く、通信品質に影響を与えるという問題を解決するように、RF電力増幅器用伝送線の分離方法及び伝送構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様によれば、本発明の実施例は、
チップ基板上の隣接する2つの伝送線間の距離を前記伝送線の幅の2.5倍よりも大きく設定し、前記伝送線の互いに対応する内側及び外側にシールド線を設けるステップと、
前記伝送線の外壁をパーマロイ皮膜で被覆するステップと、
前記パーマロイ皮膜の外壁をアルミニウム皮膜で被覆し、前記アルミニウム皮膜の外壁に、内側に凹んで逆三角形構造を呈する複数の凹溝を間隔を空けて設けるステップと、を含むRF電力増幅器用伝送線の分離方法を提供する。
【0006】
好ましくは、複数の前記凹溝の深さは等しく、且ついずれも前記アルミニウム皮膜の厚さよりも小さく、複数の前記凹溝は前記アルミニウム皮膜の外壁に等間隔で設けられる。
【0007】
好ましくは、伝送線の外壁をパーマロイ皮膜で被覆するステップは、具体的には、
前記伝送線の長さを測定し、それを前記パーマロイ皮膜の長さとするサブステップと、
前記伝送線の周長を測定し、それを前記パーマロイ皮膜の幅とするサブステップと、
前記パーマロイ皮膜の長さ及び幅に基づいて、パーマロイ材から前記伝送線に対応する前記パーマロイ皮膜を裁断するサブステップと、
前記パーマロイ皮膜の一方の側に絶縁性接着剤を均一に塗布し、前記パーマロイ皮膜の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記伝送線の外壁に被覆して固定するサブステップと、を含む。
【0008】
好ましくは、前記絶縁性接着剤の材料は2025DSIであり、前記パーマロイ皮膜の厚さは40μm~50μmである。
【0009】
好ましくは、前記パーマロイ皮膜の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記伝送線の外壁に被覆して固定するステップの後、
前記パーマロイ皮膜を被覆して固定した前記伝送線を高温オーブンに入れて150℃まで加熱した後に取り出すステップをさらに含む。
【0010】
好ましくは、前記パーマロイ皮膜の外壁をアルミニウム皮膜で被覆するステップは、具体的には、
前記伝送線の長さを測定し、それを前記アルミニウム皮膜の長さとするサブステップと、
前記パーマロイ皮膜の周長を測定し、それを前記アルミニウム皮膜の幅とするサブステップと、
前記アルミニウム皮膜の長さ及び幅に基づいて、アルミニウム材から前記パーマロイ皮膜に対応する前記アルミニウム皮膜を裁断するサブステップと、
前記アルミニウム皮膜の一方の側に絶縁性接着剤を均一に塗布し、前記アルミニウム皮膜の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記パーマロイ皮膜の外壁に被覆するサブステップと、を含む。
【0011】
好ましくは、前記絶縁性接着剤の材料は2025DSIであり、前記アルミニウム皮膜の厚さが35μm~45μmである。
【0012】
好ましくは、前記アルミニウム皮膜の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記パーマロイ皮膜の外壁に被覆するステップの後、前記アルミニウム皮膜を被覆して固定した前記伝送線を高温オーブンに入れて150℃まで加熱した後に取り出すステップをさらに含む。
【0013】
好ましくは、前記凹溝の深さが20μm~25μmであり、隣接する2つの前記凹溝間の距離が0.5mm~0.8mmである。
【0014】
好ましくは、前記シールド線は絶縁材質で製造され、前記シールド線の幅が50μm~55μmであり、その長さが前記伝送線の長さ以上である。
【0015】
第2態様によれば、本発明の実施例は、チップ基板と、前記チップ基板に設けられた少なくとも2つの伝送線とを含み、隣接する2つの前記伝送線間の距離が前記伝送線の幅の2.5倍よりも大きく、前記伝送線の互いに対応する内側及び外側にシールド線が設けられ、伝送線の外壁を前記パーマロイ皮膜で被覆し、前記パーマロイ皮膜の外壁をアルミニウム皮膜で被覆し、前記アルミニウム皮膜の外壁に、内側に凹んで逆三角形構造を呈する複数の凹溝を間隔を空けて設けるRF電力増幅器の伝送構造をさらに提供する。
【0016】
従来技術に比べ、本発明のRF電力増幅器用伝送線の分離方法は、チップ基板上の隣接する2つの伝送線間の距離を前記伝送線の幅の2.5倍よりも大きく設定し、伝送線の対向する両側にシールド線を設け、その後、伝送線の外壁をパーマロイ皮膜で被覆し、さらにパーマロイ皮膜の外壁をアルミニウム皮膜で被覆し、アルミニウム皮膜の外壁に、逆三角形構造の複数の凹溝を間隔を空けて設ける。これによって、隣接する2つの伝送線間の所定の距離及びシールド線の構成により、2つの伝送線間の分離度を強化し、伝送線によって伝送されたRF信号に対する伝送線間の寄生容量の影響を低減させる。パーマロイ皮膜を被覆することにより、隣接する2つの伝送線間に存在する誘導磁界の、伝送線内部を伝送されたRF信号に対する干渉を回避することができ、さらに2つの伝送線間の分離度を強化する。パーマロイ皮膜の被覆及び凹溝の設置により、伝送線内部を伝送されたRF信号に対する外部の電磁波の干渉を回避し、伝送線と外部との分離度を強化することができる。
【0017】
本発明の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下は実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明される図面は単に本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労働をせずにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例に係るRF電力増幅器用伝送線の分離方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例に係るステップS200のサブステップのフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例に係るステップS300のサブステップのフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例に係る第1RF電力増幅器の伝送構造の概略図である。
【
図5】本発明の実施例に係る第2RF電力増幅器の伝送構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施例の技術的解決手段を明瞭にまた十分に説明するが、説明された実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づき、当業者が創造的な労働をせずに得られた全ての他の実施例はいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0020】
本発明の実施例はRF電力増幅器用伝送線2の分離方法を提供し、
図1及び
図4に示すように、S100~S300を含む。
【0021】
S100:チップ基板1上の隣接する2つの伝送線2間の距離を前記伝送線2の幅の2.5倍よりも大きく設定し、前記伝送線2の互いに対応する内側及び外側にシールド線3を設ける。
【0022】
ここで、前記伝送線2の横断面が矩形であると、その幅が矩形の長辺長さであり、前記伝送線2の横断面が円形であると、その幅が円形の直径であり、前記伝送線2の横断面が他の形状であると、その幅が最も近い2点の距離と最も遠い2点の距離との平均数である。
【0023】
設定する際には、前記チップ基板1において隣接する2つの前記伝送線2間の距離を設定し、その後、取り付ける時に、所定の距離で取り付ける。
【0024】
具体的には、隣接する2つの伝送線2間の距離の増加分が前記チップ基板1の工場の製版プロセスに基づいて設定される。好ましくは、隣接する2つの前記伝送線2間の距離が前記伝送線2の幅(線幅)の3倍に等しい。
【0025】
具体的には、前記伝送線2の互いに対応する内側及び外側は前記チップ基板1を基準とする。
【0026】
具体的には、前記チップ基板1上のRF電力増幅器の各伝送線2の互いに対応する内側及び外側のいずれにもシールド線3が設けられる。
【0027】
具体的には、前記チップ基板1のレイアウト及び空間のサイズに応じて、前記シールド線3は、伝送線2の外壁に設けてもよく、前記チップ基板1上の前記伝送線2の内側及び外側に対応する位置に設けてもよい。
【0028】
具体的には、前記シールド線3は絶縁材質で製造され、その長さが伝送線2の長さ以上である。
【0029】
具体的には、シールド線3の幅は50μm~55μmである。もちろん、実際のニーズに応じて、その幅は適宜調整することができる。
【0030】
ここで、前記シールド線3の横断面が矩形である場合、その幅が矩形の長辺長さであり、前記シールド線3の横断面が円形である場合、その幅が円形の直径であり、前記シールド線3の横断面が他の形状である場合、その幅が最も近い2点の距離と最も遠い2点の距離との平均数である。
【0031】
チップ基板1上の隣接する2つの伝送線2間の距離を前記伝送線2の幅の2.5倍よりも大きく設定し、前記伝送線2の互いに対応する内側及び外側に絶縁のシールド線3を設けることにより、隣接する2つの前記伝送線2を互いに分離し、2つの前記伝送線2間の分離度を強化し、前記伝送線2によって伝送されるRF信号に対する2つの前記伝送線2間の寄生容量の影響を低減する。
【0032】
S200:前記伝送線2の外壁にパーマロイ皮膜4を被覆する。
【0033】
具体的には、前記ステップS200では、各前記伝送線2の外壁に前記パーマロイ皮膜4を被覆することで、各前記伝送線2の外壁にはいずれも前記パーマロイ皮膜4が被覆される。
【0034】
具体的には、
図2に示すように、前記ステップS200は、
前記伝送線2の長さを測定し、それを前記パーマロイ皮膜4の長さとするサブステップS201と、
前記伝送線2の周長を測定し、それを前記パーマロイ皮膜4の幅とするサブステップS202と、
前記パーマロイ皮膜4の長さ及び幅に基づいて、パーマロイ材から前記伝送線2に対応する前記パーマロイ皮膜4を裁断するサブステップS203と、
前記パーマロイ皮膜4の一方の側に絶縁性接着剤を均一に塗布し、前記パーマロイ皮膜4の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記伝送線2の外壁に被覆して固定するサブステップS204と、を含む。
【0035】
ここで、前記ステップS201~前記ステップS204は、単一の前記伝送線2の外壁を前記パーマロイ皮膜4で被覆するステップである。
【0036】
前記伝送線2の長さ及び周長は、測定ツールによって測定されるか、又は前記チップ基板1を製造する時のパラメータによって直接取得する。裁断する際には、該当する裁断ツールを用いて裁断することができる。
【0037】
具体的には、前記絶縁性接着剤の材料は2025DSIであり、前記パーマロイ皮膜4の厚さが40μm~50μmである。もちろん、実際のニーズに応じて、他の材料の絶縁性接着剤を選択してもよく、その厚さも適宜調整してもよい。
【0038】
具体的には、前記ステップS204の後、前記パーマロイ皮膜4を被覆して固定した前記伝送線2を高温オーブンに入れて150℃に加熱した後に取り出すステップをさらに含む。ここで、150℃まで加熱した後、前記絶縁性接着剤が完全に溶融して、前記パーマロイ皮膜4及び前記伝送線2と十分に融合しなければ、取り出さない。これにより、パーマロイ皮膜4と伝送線2との接続の安定性及び強固さを向上させることができる。
【0039】
具体的には、前記チップ基板1を高温オーブンに入れて加熱するステップは、各前記伝送線2の外壁を前記パーマロイ皮膜4で被覆した後に行われる。
【0040】
パーマロイ皮膜4は高透磁率材質であるため、前記伝送線2の外壁に前記パーマロイ皮膜4を追加することにより、2つの前記伝送線2の内部にRF信号が通過して誘導磁界が存在する場合、誘導磁界が発する磁力線が前記パーマロイ皮膜4の外表層に沿って移動し、前記伝送線2の内部に誘導電流を形成せず、これにより前記伝送線2の内部を伝送されたRF信号に干渉を与えず、2つの前記伝送線2間の分離度を向上させる。
【0041】
S300:前記パーマロイ皮膜4の外壁をアルミニウム皮膜5で被覆し、前記アルミニウム皮膜5の外壁に、内側に凹んで逆三角形構造を呈する複数の凹溝51を間隔を空けて設ける。
【0042】
具体的には、前記ステップS300では、各前記伝送線2の外壁を前記パーマロイ皮膜4で被覆することは、前記ステップS200における前記絶縁性接着剤が冷却凝固した後に行われる。
【0043】
具体的には、前記ステップ300では、各前記パーマロイ皮膜4の外壁を前記アルミニウム皮膜5で被覆することで、各前記伝送線2上に前記アルミニウム皮膜5が被覆される。
【0044】
具体的には、
図3に示すように、前記ステップ300は、
前記伝送線2の長さを測定し、それを前記アルミニウム皮膜5の長さとするサブステップS301と、
前記パーマロイ皮膜4の周長を測定し、それを前記アルミニウム皮膜5の幅とするサブステップS302と、
前記アルミニウム皮膜5の長さ及び幅に基づいて、アルミニウム材から前記パーマロイ皮膜4に対応する前記アルミニウム皮膜5を裁断するサブステップS303と、
前記アルミニウム皮膜5の一方の側に絶縁性接着剤を均一に塗布し、前記アルミニウム皮膜5の前記絶縁性接着剤が塗布された側を前記パーマロイ皮膜4の外壁に被覆するサブステップS304と、を含む。
【0045】
ここで、前記ステップ301~前記ステップ304は、単一の前記パーマロイ皮膜4の外壁を前記アルミニウム皮膜5で被覆するステップである。
【0046】
前記伝送線2の長さがステップS201で既に測定されているので、ここで測定することなく取得することができ、前記パーマロイ皮膜4の周長は前記パーマロイ皮膜4の幅であり、それはステップS202で既に測定されているので、ここで測定することなく取得することができる。
【0047】
具体的には、前記絶縁性接着剤の材料は2025DSIであり、前記アルミニウム皮膜5の厚さは35μm~45μmである。もちろん、実際のニーズに応じて、他の材料の絶縁性接着剤を選択してもよく、その厚さも適宜調整してもよい。
【0048】
具体的には、前記ステップS304の後、前記アルミニウム皮膜5を被覆して固定した前記伝送線2を高温オーブンに入れて150℃に加熱した後に取り出すステップをさらに含む。ここで、150℃まで加熱した後、前記絶縁性接着剤が完全に溶融して、前記パーマロイ皮膜4及び前記アルミニウム皮膜5と十分に融合しなければ、取り出さない。これにより、パーマロイ皮膜4とアルミニウム皮膜5との接続の安定性及び強固さを向上させることができる。
【0049】
具体的には、前記チップ基板1を高温オーブンに入れて加熱するステップは、各前記パーマロイ皮膜4の外壁を前記アルミニウム皮膜5で被覆する後に行われる。
【0050】
具体的には、前記凹溝51を設けることは、前記ステップS303で前記アルミニウム皮膜5を裁断した後に行われ、前記ステップS304は前記凹溝51を設けた後に行われる。
【0051】
具体的には、複数の前記凹溝51の深さは等しく、且ついずれも前記アルミニウム皮膜5の厚さよりも小さく、複数の前記凹溝51は前記アルミニウム皮膜5の外壁に等間隔で設けられる。
【0052】
具体的には、前記凹溝51の深さが20μm~25μmであり、隣接する2つの前記凹溝51間の距離が0.5mm~0.8mmである。
【0053】
前記パーマロイ皮膜4の外壁を前記アルミニウム皮膜5で被覆し、前記アルミニウム皮膜5の外面に、内側に凹んで逆三角形構造を呈する複数の凹溝51を設けることにより、前記アルミニウム皮膜5によって外部の電磁波を分離することができ、また、外部の電磁波が逆三角形構造を呈する前記凹溝51に入った場合、逆三角形構造の前記凹溝51の2つの斜面は電磁波を反射し、2つの斜面の電磁波が互いに相殺するようにし、外部の電磁波が伝送線2内部を伝送されたRF信号に干渉することを回避し、これにより、伝送線2と外部との分離度を向上させる。
【0054】
以上の実施例では、ステップS100~ステップS300が完了した後に前記伝送線2を前記チップ基板1上に取り付ける。この場合、前記伝送線2の最外層のアルミニウム皮膜5を接着や溶接等の方式により前記チップ基板1上に取り付ける。
【0055】
また、前記シールド線3を前記チップ基板1上に設ける必要がある場合、前記ステップS100は、前記ステップS200及び前記ステップS300が完了した後に行うことができる。このような場合、まず、前記パーマロイ皮膜4の外壁を前記アルミニウム皮膜5で被覆し、次に、前記伝送線2を前記パーマロイ皮膜4で被覆する。
【0056】
もちろん、実際のニーズに応じて、前記ステップS100が完了した後、
図5に示すように、まず、前記伝送線2及び前記シールド線3を前記チップ基板1に取り付け、次に前記伝送線2の長さを測定し、前記パーマロイ皮膜4と前記アルミニウム皮膜5の長さとし、その後、前記伝送線2のうち前記チップ基板1と接触しない部分の周長を測定し、前記パーマロイ皮膜4の幅とし、前記パーマロイ皮膜4の裁断及び被覆を行い、その後、前記パーマロイ皮膜4のうち前記チップ基板1と接触しない部分の周長を測定し、前記アルミニウム皮膜5の幅とし、前記アルミニウム皮膜5の裁断及び被覆を行い、これにより分離方法は完了する。この場合の前記伝送線2の外壁では、前記チップ基板1と接触していない部分のみが前記パーマロイ皮膜4と前記アルミニウム皮膜5の順に被覆されている。ここで、前記伝送線2は接着や溶接等の方式により前記チップ基板1に取り付けられる。
【0057】
従来技術に比べ、本発明のRF電力増幅器用伝送線2の分離方法は、隣接する2つの伝送線2間の距離を増加し、伝送線2の対向する両側にシールド線3を設け、その後、伝送線2の外壁をパーマロイ皮膜4で被覆し、さらにパーマロイ皮膜4の外壁をアルミニウム皮膜5で被覆し、アルミニウム皮膜5の外壁に、複数の逆三角形構造の凹溝51を間隔を空けて設ける。これによって、隣接する2つの伝送線2間の距離の増加及びシールド線3の構成により、2つの伝送線2間の分離度を強化し、伝送線2によって伝送されたRF信号に対する伝送線2間の寄生容量の影響を低減させる。パーマロイ皮膜4を被覆することにより、隣接する2つの伝送線2間に存在する誘導磁界の、伝送線2内部を伝送されたRF信号に対する干渉を回避することができ、さらに2つの伝送線2間の分離度を強化する。アルミニウム皮膜5の被覆及び凹溝51の設置により、伝送線2内部を伝送されたRF信号に対する外部の電磁波の干渉を回避し、伝送線2と外部との分離度を強化することができる。
【0058】
本発明はさらに別の実施例を提供し、該実施例はRF電力増幅器の伝送構造であって、
図4又は
図5に示すように、チップ基板1と、前記チップ基板1に設けられた少なくとも2つの伝送線2とを含み、隣接する2つの前記伝送線2間の距離が前記伝送線2の幅の2.5倍よりも大きく、前記伝送線2の互いに対応する内側及び外側にシールド線3が設けられ、前記伝送線2の外壁にパーマロイ皮膜4が被覆されており、前記パーマロイ皮膜4の外壁にはアルミニウム皮膜5が被覆されており、前記アルミニウム皮膜5の外壁に、複数の内側に凹んで逆三角形構造を呈する凹溝51が間隔を空けて設けられている。
【0059】
好ましくは、隣接する2つの前記伝送線2間の距離が前記伝送線2の幅の3倍よりも大きい。
【0060】
本実施例の前記シールド線3、前記パーマロイ皮膜4、前記アルミニウム皮膜5及び前記アルミニウム皮膜5における凹溝51は、いずれも上記RF電力増幅器用伝送線2の分離方法によって設置される。したがって、本実施例のRF電力増幅器の伝送構造も、上記実施例のRF電力増幅器用伝送線2の分離方法が達成する技術的効果を達成することができる。
【0061】
以上の記載は本発明の実施例に過ぎず、本発明の特許範囲を限定するものではなく、本発明の明細書及び図面を利用して行われる等価構造又はフローの等価変換、又は他の関連する技術分野への直接又は間接的な適用は、いずれも本発明の特許保護範囲内に含まれる。