(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】固形組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/225 20060101AFI20250130BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20250130BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20250130BHJP
A61K 33/08 20060101ALI20250130BHJP
A61K 33/10 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K31/225
A61K9/16
A61K9/20
A61K33/08
A61K33/10
A61K47/12
A61K47/22
A61P1/10
(21)【出願番号】P 2021024194
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020032009
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】石井 和寛
(72)【発明者】
【氏名】西島 正道
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-199894(JP,A)
【文献】特開2009-195158(JP,A)
【文献】特表2005-533101(JP,A)
【文献】Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2009年,Vol.49,p.295-303
【文献】岡山医学会雑誌,2008年,第120巻,223頁~226頁
【文献】マテリアルライフ,1991年,Vol.3, No.2,pp 104-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネート、及び(c)20℃の水に対する溶解度が1g/100mL以上である有機酸を含有することを特徴とする固形組成物。
【請求項2】
(c)有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸及びコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
(a)酸化マグネシウムが、重質酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項4】
(a)炭酸マグネシウムが、重質炭酸マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の固形組成物。
【請求項5】
(a)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種と(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネートを、それぞれ異なる顆粒に含有させることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の固形組成物。
【請求項6】
(a)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、及び(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネートを含有する固形組成物において、(c)20℃の水に対する溶解度が1g/100mL以上である有機酸を含有することを特徴とする、(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネートの含量低下を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、及びジオクチルソジウムスルホサクシネートを含有する固形組成物に関する。更に詳細には、ジオクチルソジウムスルホサクシネートの経時的な含量低下が抑制された固形医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムは塩類下剤の一種である。
【0003】
酸化マグネシウムは腸内で難吸収性の重炭酸塩又は炭酸塩となり、浸透圧維持のため水分を奪い腸管内容物を軟化することで緩下作用を表すため瀉下薬として用いられる(非特許文献1)。
【0004】
水酸化マグネシウムは胃内で中和反応により塩化マグネシウムとなった後、腸内の重炭酸ナトリウムと反応して可溶性、難吸収性の重炭酸マグネシウムまたは炭酸マグネシウムになる。腸管内腔液の浸透圧を等張に維持するため腸壁から水を奪うことにより、腸内容物は水分を保持して膨大、軟化し、大腸に到達して蠕動運動を更新し緩下作用を示す(非特許文献2)。
【0005】
炭酸マグネシウムは腸管内で炭酸水素塩又は炭酸塩を形成することによる塩類下剤効果を有する(非特許文献3)。
【0006】
ジオクチルソジウムスルホサクシネートは界面活性作用により便の表面張力を低下させ、便に水分を浸透させて軟らかくし、膨潤を起こすことで緩下作用を発揮することから膨潤性下剤と呼ばれ、瀉下薬として用いられる(非特許文献4)。
【0007】
特許文献1には、酸化マグネシウムとジオクチルソジウムスルホサクシネートを含有した散剤が記載されているが、製剤調製後、直ちに試験に使用しており、経時的変化を確認していない。したがって、ジオクチルソジウムスルホサクシネートの含量低下は確認されていないし、経時的変化が生じているか不明である。
【0008】
これまでに酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、並びにジオクチルソジウムスルホサクシネートを配合した製剤は市販されていない。本発明者らは、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、並びにジオクチルソジウムスルホサクシネートを含む組成物を製造したところ、ジオクチルソジウムスルホサクシネートの含量が経時的に低下するという課題に直面した。
また、ジオクチルソジウムスルホサクシネートの安定性に関する技術は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】第17局改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C-1982頁
【文献】医薬品インタビューフォーム ミルマグ、ミルマグ錠
【文献】第17局改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C-3007頁
【文献】OTCハンドブック2002-03 380頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、及びジオクチルソジウムスルホサクシネートを含有する組成物において、ジオクチルソジウムスルホサクシネートの経時的な含量の低下を抑制し、安定な固形組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、20℃の水に対する溶解度が1g/100mL以上である有機酸を配合することで、ジオクチルソジウムスルホサクシネートの経時的な低下が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)(a)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネート、及び(c)20℃の水に対する溶解度が1g/100mL以上である有機酸を含有することを特徴とする固形組成物、
(2)(c)有機酸がクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸及びコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)に記載の固形組成物、
(3)(a)酸化マグネシウムが、重質酸化マグネシウムであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の固形組成物、
(4)(a)炭酸マグネシウムが、重質炭酸マグネシウムであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の固形組成物、
(5)(a)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種と(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネートを、それぞれ異なる顆粒に含有させることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の固形組成物、
(6)(a)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、及び(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネートを含有する固形組成物において、(c)20℃の水に対する溶解度が1g/100mL以上である有機酸を含有することを特徴とする、(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネートの含量低下を抑制する方法、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、並びにジオクチルソジウムスルホサクシネートを含有し、ジオクチルソジウムスルホサクシネートの含量低下を抑制した医薬品組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における(a)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種(以下、場合により「(a)成分」ともいう)は、それぞれ日本薬局方又は日本薬局方外医薬品規格に記載されているものであり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
【0016】
酸化マグネシウムは、一般的に、軽質酸化マグネシウムと重質酸化マグネシウムに分類され、医薬品の分野では、軽質酸化マグネシウムは賦形剤として、重質酸化マグネシウムは有効成分として使用されることが多い。重質酸化マグネシウムとは、酸化マグネシウム5gあたりの容積が30mL以下であるものを指し、例えば、日本薬局方酸化マグネシウム重質(協和化学工業製)、日本薬局方酸化マグネシウム細粒状(協和化学工業製)が挙げられる。軽質酸化マグネシウムとは、酸化マグネシウム5gあたりの容積が30mL以上であるものを指し、例えば、日本薬局方酸化マグネシウム軽質(協和化学工業製)が挙げられる。本発明における酸化マグネシウムは、酸化マグネシウムの5gあたりの容積が30mL以下、すなわち、重質酸化マグネシウムが好ましい。軽質酸化マグネシウムは、密度が軽く製造時に飛散しやすい等、取り扱いに注意を要するが、重質酸化マグネシウムは、製造時の取り扱いが容易であるためである。
【0017】
炭酸マグネシウムは、一般的に、軽質炭酸マグネシウムと重質炭酸マグネシウムに分類され、医薬品の分野では、軽質炭酸マグネシウムは賦形剤として、重質炭酸マグネシウムは有効成分として使用されることが多い。重質炭酸マグネシウムとは、第17局改正日本薬局方に記載の沈降試験を行うとき12.0mLの目盛り以下であるものを指し、例えば、日本薬局方炭酸マグネシウム重質(協和化学工業製)が挙げられる。軽質炭酸マグネシウムとは、第17局改正日本薬局方に記載の沈降試験を行うとき沈降試験を行うとき12.0mLの目盛り超過であるものを指し、例えば、日本薬局方炭酸マグネシウム軽質(協和化学工業製)が挙げられる。本発明における炭酸マグネシウムは、沈降試験を行うとき12.0mLの目盛り以下、すなわち、重質炭酸マグネシウムが好ましい。軽質炭酸マグネシウムは、密度が軽く製造時に飛散しやすい等、取り扱いに注意を要するが、重質炭酸マグネシウムは、製造時の取り扱いが容易であるためである。
【0018】
本発明の固形組成物中における(a)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種の含有量(複数の(a)成分を含む場合は、その合計量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、通常20~95質量%、好ましくは40~90質量%である。
【0019】
本発明における(b)ジオクチルソジウムスルホサクシネート(以下、場合により「DSS」又は「(b)成分」ともいう)は、市販品にて入手するか、公知の製造方法によって製造することができる。
【0020】
本発明の固形組成物中における(b)成分の含量はその薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、通常0.01~20質量%、好ましくは0.1~10質量%である。
【0021】
本発明における(c)20℃の水に対する溶解度が1g/100mL以上である有機酸(以下、場合により「(c)成分」ともいう)は、市販品にて入手するか、公知の製造方法によって製造することができる。本発明における(c)20℃の水に対する溶解度が1g/100mL以上である有機酸には、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸及びシュウ酸等が挙げられ、好ましくは、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸及びコハク酸である。20℃の水に対する溶解度は、第十七改正日本薬局方解説書通則の溶解性を示す用語に記載されている方法に従い測定し算出する。すなわち、20℃の水に対する溶解度とは、固形物を粉末とした後、溶媒中に入れ、20℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶ける度合のことをいう。
【0022】
本発明の固形組成物中における(c)成分の含有量(複数の(c)成分を含む場合は、その合計量、以下同じ)は特に限定されるものではないが、通常0.01~20質量%、好ましくは0.1~10質量%である。また、(c)成分の含有量はジオクチルソジウムスルホサクシネート1質量部に対して、通常、0.1~5質量部、好ましくは0.3~3質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部であり、(a)成分1質量部に対して、通常、0.0001~0.1質量部、好ましくは0.0005~0.07質量部、さらに好ましくは0.001~0.05質量部である。また、ジオクチルソジウムスルホサクシネートの含有量は(a)成分1質量部に対して、通常、0.0001~100質量部、好ましくは0.0003~10質量部、さらに好ましくは0.0005~5質量部であり、特に好ましくは0.001~1質量部である。
【0023】
本発明の固形組成物とは、2成分以上の成分により構成される常温で固体状の組成物をいい、例えば、混合することにより得られる粉末、造粒により得られる造粒物、粉末や造粒物を打錠することにより得られる錠剤などを挙げることができるが、好ましくは経口投与固形組成物である。剤型としては、特に限定されるものではないが、錠剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、チュアブル錠剤、口腔内崩壊錠又はドライシロップ剤等を挙げることができ、好ましくは錠剤、顆粒剤、散剤である。
【0024】
本発明の医薬組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、香料、コーティング剤などを配合することができる。
【0025】
本発明の医薬組成物中に配合できる他の有効成分としては、例えば、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等があげられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0026】
本発明の医薬組成物に配合できる賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、ショ糖、糖アルコール、リン酸水素カルシウム等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム等、滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油等が挙げられる。崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。
【0027】
本発明における固形組成物の製造方法は、医薬品の製剤化における一般的な方法で製造することができ、本発明の効果を損なわない範囲で製剤製造時に一般的に配合される成分を適宜配合することができる。例えば、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を配合し、必要に応じて、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤等の他の公知の添加剤を混合して常法により製造することができる。
【0028】
また、製造時に造粒する場合、その造粒方法も特に限定されず、湿式造粒法、乾式造粒法又は溶融造粒法などにより製造できるが、好ましくは湿式造粒法である。得られた造粒粒子に適宜上記添加剤等を配合してもよく、このようにして得た混合物を打錠して錠剤とすることもできる。錠剤を製造する場合は、直接打錠法により製造してもよい。
【0029】
本発明の固形組成物は、どのような形態で(a)成分、(b)成分、並びに(c)成分が混合されていても良く、本発明の効果を発揮する。例えば、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分に、必要に応じてその他の賦形剤を加えて、全て同時に混合し、造粒又は打錠をしても良く、前記各成分をそれぞれ単独で含有する造粒粒子を混合しても良い。また、(a)成分と(b)成分を含有する造粒粒子と(c)成分を混合しても良く、(a)成分と(c)成分を含有する造粒粒子と(b)成分を混合しても良く、(b)成分と(c)成分を含有する造粒粒子と(a)成分を混合しても良い。このうち、好ましい形態としては、(b)成分及び(c)成分を含有する造粒粒子と(a)成分を含有する造粒粒子を含む固形組成物である。
【実施例】
【0030】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本説明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(対照例1、比較例1~7、実施例1~8)
表1に示す処方に従い散剤を調製した。ジオクチルソジウムスルホサクシネート及び有機酸を水とエタノールの混合溶液に溶解又は分散させ、溶液又は分散溶液とした。前記溶液又は分散溶液を結晶セルロース(造粒用)に添加し、乾燥させ顆粒とした。得られた造粒顆粒と酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム又は硫酸マグネシウム及び結晶セルロース(後末添加用)を混合し、固形組成物を調製した。
(試験例1)
対照例1、比較例1~7及び実施例1~8についてガラス瓶に入れて密閉し、65℃条件下で7日間保存した。保存後の固形組成物について、それぞれ組成物中のジオクチルソジウムスルホサクシネート含量を測定し残存率を(%)求めた。
【0031】
【0032】
表1より明らかなように、対照例1に比べて、酸化マグネシウムを配合した比較例1及び2ではDSSの含量が大幅に低下した。酸化マグネシウム、DSSにクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸又はコハク酸を添加することで、比較例1又は2と比較してDSSの残存率が向上した(実施例1~6)。一方、フマル酸(比較例3)を加えた場合には、DSSの残存率は、比較例1又は2より低下した。
水酸化マグネシウムを配合した比較例4ではDSS残存率が大幅に低下したが、クエン酸を添加することで比較例4と比較してDSSの残存率が向上した(実施例7)。
炭酸マグネシウムを配合した比較例5ではDSS残存率が大幅に低下したが、クエン酸を添加することで比較例5と比較してDSSの残存率が向上した(実施例8)。
硫酸マグネシウムを配合した比較例6ではDSS残存率が低下したが、クエン酸を添加することで比較例6よりもDSS残存率がさらに低下した(比較例7)。
【0033】
(製剤例1)
表2に示す処方に従い錠剤を調製した。ジオクチルソジウムスルホサクシネート及びクエン酸を水とエタノールの混合溶液に溶解させ、溶液とした。前記溶液をリン酸水素カルシウムに添加し、乾燥させ顆粒とした。得られた造粒顆粒とその他成分を混合し、ロータリー式打錠機にて成形することで錠剤を調製した。調製した錠剤はゼオライト含有乾燥剤(MS-タブレット-W、MS-セラムーW;東海化学工業所)、またはシリカゲル含有乾燥剤(シブレットAS-W、東海化学工業所)、または塩化カルシウム含有乾燥剤(アルプシート、東海化学工業所)等の乾燥剤と共にガラス瓶にて密閉保存し、PTP包装の場合は、PTP包装を施した錠剤を前記の乾燥剤とともにアルミピローまたはアルミパウチで包装し、保存した。また、前記の乾燥剤を使用しない場合は、水分を吸収・保持する性能を有するPTPシート、アルミピロー、アルミパウチ等に錠剤を充填・包装し、保存した。
【0034】
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種、及びジオクチルソジウムスルホサクシネートを同時に含有し、経時的なジオクチルソジウムスルホサクシネートの含量低下を抑制した、固形組成物の提供が可能となった。