(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
A01D34/64 Z
A01D34/64 A
(21)【出願番号】P 2021084705
(22)【出願日】2021-05-19
【審査請求日】2024-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】池田 智治
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-236724(JP,A)
【文献】特開2014-236675(JP,A)
【文献】特開2009-254343(JP,A)
【文献】特開2004-089034(JP,A)
【文献】特開2008-148589(JP,A)
【文献】特開2019-017269(JP,A)
【文献】特開2016-067229(JP,A)
【文献】特開2009-165397(JP,A)
【文献】実開昭59-047403(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0077859(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪(1),(1)及び後輪(2),(2)を懸架する車体(3)腹部に、略水平回転する刈刃(4)を備えた刈取装置(K)を上下昇降自在に設け、車体(3)後部に設けた原動機(5)により、刈取装置(K)や前輪(1),(1)及び後輪(2),(2)を駆動可能な四輪駆動形態の草刈機において、前輪(1),(1)は、車体(3)にセンターピボット形態で揺動自在に支持したアクスルユニット(U)により伝動され、このアクスルユニット(U)左右両端部の伝動ケース(6)から下方へ向け延設の下部嵌合部(6a)を挿通させるシール部材(S)を取着した操向ケース(7)を下部嵌合部(6a)に嵌合枢支し、アクスルユニット(U)前側に、左右前輪(1),(1)間に亘り地面近傍まで垂下延設した弾性フロントカバー(F)を設け、刈刃(4)を覆う刈刃カバー(8)の前端部には、平面視、刈刃(4)の回転軌跡外周縁(R)に略沿う位置、及び、前輪(1),(1)後方部位置で垂下する弾性外周カバー(9)を設け、回転する刈刃(4)の最前端位置から回転する方向側の操向ケース(7)の左右内側、且つ、前記弾性フロントカバー(F)と弾性外周カバー(9)との間に、最下降させた刈刃(4)と略同高さ位置まで垂下延設した前後方向の飛散防止板(10)を設け
、前記刈取装置(K)を昇降する前後一対のリンクアーム(11),(12)を左右に配置し、該リンクアーム(11),(12)上部前端を車体(3)側に、下部後端を刈刃カバー(8)側に枢支するリンク機構を設けることにより、該刈取装置(K)を略水平状態のまま昇降させるよう構成し、飛散防止板(10)をアクスルユニット(U)下側へ取着するとともに、飛散防止板(10)の後下部を後方上方へ向け切断したことを特徴とする草刈機。
【請求項2】
飛散防止板(10)を、平面視、後方外方へ向け傾
斜(α)させたことを特徴とする請求項1記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪駆動形態の草刈機において、左右前輪間のアクスルユニットからのオイル漏れ不具合を防止するとともに、前輪後側と刈取装置前側との開口部から刈草が飛散することを防止できる草刈機の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体に対し前後方向のピボット軸を中心に左右揺動可能なセンターピボット形態で取着したフロントアクスルユニットにより前輪への駆動を行う四輪駆動形態の草刈機、例えば特許文献1が知られている。これらのアクスルユニットは、左右両端部の伝動ケースから下方へ向け延設の下部嵌合部に操向ケースを嵌合枢支する形態が採用されていて、伝動ケースの下部嵌合部を、操向ケースに取着のオイルシール、又は、ダストシール等のシール部材内に挿通させて、操向ケース内のベアリングで支持している。刈刃の回転によって飛散した泥土がシール部材に付着した状態で操縦者が操向操作を行うと、下部嵌合部を軸心に操向ケースが回動し、シール部材内側リップ部と下部嵌合部が摺動し、付着した泥土が研磨材の役割をしてシール部材のシール効果がなくなる。特にアルミ系の材質で製作された伝動ケースの下部嵌合部は短時間で摩耗し、操向ケース内のオイルが漏れるという問題がある。又、四輪駆動形態の前輪は操向操作時の稼働範囲が広く、刈取装置との間隔を広くする必要があり、この部分から刈草や泥土、小石等が飛散し易く、周囲の果樹を傷付けたり、地面や土中の菌が実や葉に付着することにより果樹が病気になり易いという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡素で安価な構成で、アクスルユニットのシール部摩耗によるオイル漏れ不具合を防止するとともに、刈草や泥土、小石等が前輪と刈取装置との間隔部から飛散しない四輪駆動形態の草刈機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2を懸架する車体3腹部に、略水平回転する刈刃4を備えた刈取装置Kを上下昇降自在に設け、車体3後部に設けた原動機5により、刈取装置Kや前輪1,1及び後輪2,2を駆動可能な四輪駆動形態の草刈機において、前輪1,1は、車体3にセンターピボット形態で揺動自在に支持したアクスルユニットUにより伝動され、このアクスルユニットU左右両端部の伝動ケース6から下方へ向け延設の下部嵌合部6aを挿通させるシール部材Sを取着した操向ケース7を下部嵌合部6aに嵌合枢支し、アクスルユニットU前側に、左右前輪1,1間に亘り地面近傍まで垂下延設した弾性フロントカバーFを設け、刈刃4を覆う刈刃カバー8の前端部には、平面視、刈刃4の回転軌跡外周縁Rに略沿う位置、及び、前輪1,1後方部位置で垂下する弾性外周カバー9を設け、回転する刈刃4の最前端位置から回転する方向側の操向ケース7の左右内側、且つ、前記弾性フロントカバーFと弾性外周カバー9との間に、最下降させた刈刃4と略同高さ位置まで垂下延設した前後方向の飛散防止板10を設け、前記刈取装置Kを昇降する前後一対のリンクアーム11,12を左右に配置し、該リンクアーム11,12上部前端を車体3側に、下部後端を刈刃カバー8側に枢支するリンク機構を設けることにより、該刈取装置Kを略水平状態のまま昇降させるよう構成し、飛散防止板10を、平面視、後方外方へ向け傾けてアクスルユニットU下側へ取着するとともに、飛散防止板10の後下部を後方上方へ向け切断した草刈機の構成とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、飛散防止板10を、平面視、後方外方へ向け傾斜αさせた草刈機の構成とする。
【0007】
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2を懸架する車体3腹部に、略水平回転する刈刃4を備えた刈取装置Kを上下昇降自在に設け、車体3後部に設けた原動機5により、刈取装置Kや前輪1,1及び後輪2,2を駆動可能な四輪駆動形態の草刈機において、前輪1,1は、車体3にセンターピボット形態で揺動自在に支持したアクスルユニットUにより伝動され、このアクスルユニットU左右両端部の伝動ケース6から下方へ向け延設の下部嵌合部6aを挿通させるシール部材Sを取着した操向ケース7を下部嵌合部6aに嵌合枢支し、アクスルユニットU前側に、左右前輪1,1間に亘り地面近傍まで垂下延設した弾性フロントカバーFを設け、刈刃4を覆う刈刃カバー8の前端部には、平面視、刈刃4の回転軌跡外周縁Rに略沿う位置、及び、前輪1,1後方部位置で垂下する弾性外周カバー9を設けているので、回転する刈刃4により飛散する刈草や泥土が、前輪1,1間に亘る弾性フロントカバーFにより遮られ、車体3前方へ飛散することがなく、刈刃カバー8前端部の刈刃4の回転軌跡外周縁Rに略沿う位置、及び、前輪1,1後方部位置で垂下する弾性外周カバー9が、刈刃4の回転により巻き上げられた土埃を刈刃カバー8内から前方、又は側方へ排出されることを抑制できる。又、回転する刈刃4の最前端位置から回転する方向側の操向ケース7の左右内側、且つ、前記弾性フロントカバーFと弾性外周カバー9との間に、最下降させた刈刃4と略同高さ位置まで垂下延設した前後方向の飛散防止板10を設けているので、まず弾性外周カバー9で刈刃カバー8内方から土埃が前方又は側方へ飛散排出されることを抑制し、刈草の塊や泥土、小石等が車体3前方へ飛散排出されることを弾性フロントカバーFが防ぎ、前後方向の飛散防止板10により、操向ケース7方向や前輪1と刈取装置Kとの間隔部から外方へ泥土や刈草、土埃等が飛散することを防止可能で、泥土付着によるアクスルユニットUの故障が防止できるとともに、飛散物の果樹等への付着も防止できる。
【0009】
更に、前記刈取装置Kを昇降する前後一対のリンクアーム11,12を左右に配置し、該リンクアーム11,12上部前端を車体3側に、下部後端を刈刃カバー8側に枢支するリンク機構を設けることにより、該刈取装置Kを略水平状態のまま昇降させるよう構成し、飛散防止板10をアクスルユニットU下側へ取着しているので、アクスルユニットU側に取着した飛散防止板10は、昇降する刈刃カバー8側に設けるよりも上下移動が少なく、又、飛散防止板10の後下部を後方上方へ向け切断してあるので、後進走行時に飛散防止板10が草や地面に引っ掛かることがなく安定した泥土や刈草の飛散防止ができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、飛散防止版10を平面視において後方外方へ傾斜αさせて設けてあるので、後進走行時には飛散防止板10の下部が確実に外方へ向け湾曲し、泥土や刈草の飛散防止を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】アクスルユニット及び刈取装置部を示す斜視図。
【
図3】車輪伝動機構及び飛散防止構成を示す平面配置図。
【
図4】刈取装置の昇降及び飛散防止構成を示す全体側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
車体3中央部に操縦者が着座するシート15を設け、シート15下側腹部には昇降自在の刈取装置Kを備え、シート15前方には、車体3に対し前後方向のピボット軸Pを中心に左右揺動可能なセンターピボット形態で取着したアクスルユニットUと、アクスルユニットUの左右に設けた前輪1,1と、該前輪1,1をシート15に着座する操縦者が操向可能のハンドル16を設けてある。ハンドル16はハンドルポスト14で支持し、ハンドルポスト14下端部とシート15との間にはステップ13を設けている。該ハンドルポスト14には、原動機5始動用のキースイッチや手動操作用のアクセルレバー、走行チェンジレバー、チョークレバー、アワーメータ等を設けている。(図示せず)シート15後方には原動機5を設け、この原動機5の動力を刈取装置Kに伝動し刈刃4を回転させて草を刈取ることができる。原動機5の動力は、原動機5下部に設けた走行用のHST(油圧無段変速装置)18にも伝動され、ミッションケース17を介して後輪2,2を駆動している。又、HST18の油圧力は油圧ホース19によりフロントのアクスルユニットUを駆動して四輪駆動形態での走行が可能である。原動機5は下方に向け出力軸20を突出し、出力軸20には刈取装置KとHST18を駆動するための刈刃Vベルト21、及び走行Vベルト22を巻回するエンジンプーリ23を取着している。刈刃Vベルト21は、エンジンプーリ23と刈取装置Kのブレード軸24上端部に取着の刈刃プーリ25との間に巻回し、テンションプーリ26により刈刃Vベルト21を張ったり緩めたりすることで、刈刃プーリ25への伝動を入、切操作することができる。ブレード軸24の下端部には刈刃ブレード31を取着し、刈刃ブレード31の両先端部に刈刃4を枢支してある。
【0013】
刈取装置Kは、車体3に吊着する前後一対のリンクアーム11,12に取着し、該リンクアーム11,12は左右にも設けて、リンクアーム11,12の上部前側を車体3側に、下部後側を刈取装置Kの刈刃カバー8側に枢支し、操縦者が昇降レバー27を上下操作することで、昇降リンク機構28を介して刈取装置Kを略水平状態で昇降させることができる。このリンクアーム11,12を左右に設けたリンク機構により、刈取装置Kは略水平状態を維持した状態で昇降させることができる。刈取装置Kの前端部には、刈刃カバー8の左右幅に亘って弾性外周カバー9を設けている。この弾性外周カバー9はゴム材、又は樹脂材等の弾性素材で形成し、左右中央部では平面視、刈刃4の回転軌跡外周縁Rに略沿った位置に垂下し、前輪1,1後方部では平面視、横方向の弾性外周カバー9を垂下し、その垂下長さ9hは刈刃カバー8側面高さ8hの略1/2の長さに設定してある。この刈刃カバー8上面から刈刃カバー8側面高さ8hの略1/2程度まで垂下した弾性外周カバー9は、前方からの草の掻き込み性能を阻害することなく、刈刃カバー8内で舞い上がる土埃等が刈刃カバー8周辺部、特に前方向へ放出されることを抑制している。
【0014】
アクスルユニットUは、左右中央部に油圧モータ33を備え、油圧モータ33からの出力はアクスル軸34から、伝動ケース6内のギヤ35、ギヤ36、伝動軸37からギヤ38、ギヤ39を経て、ホイル軸40、ホイルボス41に伝達され、前輪1を駆動する。アクスルユニットU左右両端の伝動ケース6は、下方へ向け延設した下部嵌合部6aを形成し、操向ケース7上端部のシール部材Sとベアリング42、及び、下端部のベアリング43に、前記下部嵌合部6aを嵌合し、下部嵌合部6aを中心に操向ケース7が回動自在に支持してある。操向ケース7は、操縦者がハンドル16を回動させることで操向ロッド44、及び、左右の操向ケース7,7を連結する連結ロッド48を介して前輪1,1の操向操作が可能である。伝動ケース6や操向ケース7、サイドケース45の内部にはオイルが充填されていて、このオイルはHST18の作動オイル経路とつながっていて、オイル量は操向ケース7上端部のエア抜きボルト46穴からエアが抜けるレベルの位置(オイルレベルL)まで入っているので、シール部材Sのシール部よりも高いレベルまでオイルが充填されていることになる。
【0015】
図3に示す通り、平面視右回転する刈刃4で刈取った草は、大部分が刈刃カバー8右側後部(右側後輪2の前方部)の排出口29や刈刃カバー8の後方中央部から排出される構成だが、一部の刈草は刈刃カバー8の前方や、右前輪1とその後方の刈刃カバー8との間隔部30から排出される場合もある。刈刃カバー8前方へ飛散排出される刈草は、アクスルユニットU前側の左右前輪1,1間に亘って地面Jに接近する位置まで垂下した弾性フロントカバーFにより遮蔽され、アクスルユニットUの伝動ケース6方向へ飛散する泥土や刈草は、弾性外周カバー9と弾性フロントカバーFとの間のアクスルユニットU側に取着の飛散防止板10により遮蔽される。該飛散防止板10は、ゴム材や樹脂材等の弾性部材で形成してあり、アクスルユニットU下側の保護カバー47に前後方向に向け取着し、最下降させた刈刃4、及び、弾性フロントカバーFと略同位置の高さまで垂下してある。又、弾性フロントカバーFと飛散防止板10の前端には隙間32を設け、前進走行時の草刈作業において、弾性フロントカバーFの後方への湾曲、又は、屈曲を阻害しないようにしてある。更に、飛散防止板10は、平面視において後方右外方へ向け傾斜αさせて設け、後下部は後方上方へ向け切断してあるので、後進走行時に飛散防止板10が地面Jや草等に引っ掛からず、後進走行時には飛散防止板10の下部が確実に右外方へ向け湾曲し、泥土や刈草の飛散防止を安定して維持できる。刈取装置Kを昇降させるリンクアーム11,12からなるリンク機構により、刈取装置Kは、上昇させる際には後方へ移動しながら上昇し、下降させる際には前方へ移動しながら下降するので、飛散防止板10と弾性外周カバー9との隙間ができると、ここから刈草や泥土、小石等が右側方へ飛散する可能性がある。飛散防止効果を考慮すると、刈取装置Kがどのような状態であってもこの隙間ができない方が好ましいが、刈取装置Kを最下降させた状態時に、刈刃カバー8前端部や弾性外周カバー9前部が飛散防止板10へ接触すると弾性材の飛散防止板10が変形し、刈草や泥土の飛散防止効果が安定しないので、刈取装置K最下降位置、すなわち刈取装置Kが最も前位置に移動した位置においても刈刃カバー8や弾性外周カバー9の前端部が飛散防止板10に接触して大きく変形させることがないよう構成している。尚、飛散防止板10は
図4に示すように、後下部の切断形状を直線に切断した形状(a)、曲線に丸く切断した形状(b)、又は多角形状に切断した形状(c)等でも同様の効果が期待できる。
【0016】
刈刃4の回転により刈草や泥土がシール部材S部分に付着すると、伝動ケース6の下部嵌合部6aとシール部材S内側のリップ部との間に侵入し、特に泥土は研磨材の役割を果たすことでリップ部、又は、アルミ系の鋳物素材で形成された下部嵌合部6aが短時間に摩耗する。伝動ケース6内のオイルレベルLはシール部材Sよりも高いレベルまで充填されていることから、シール部材Sのシール効果が弱まると内部のオイルが漏洩してしまうという問題がある。ここにおいて、アクスルユニットU前側に、左右前輪1,1間に亘り地面近傍まで垂下延設した弾性フロントカバーFを設け、刈刃4を覆う刈刃カバー8の前端部には、平面視、刈刃4の回転軌跡外周縁Rに略沿う位置、及び、前輪1,1後方部位置で垂下する弾性外周カバー9を設け、回転する刈刃4の最前端位置から回転する方向側の操向ケース7の左右内側、且つ、前記弾性フロントカバーFと弾性外周カバー9との間に、最下降させた刈刃4と略同高さ位置まで垂下延設した前後方向の飛散防止板10を設けた草刈機の構成としている。
図4は刈取装置Kを最も下降させた状態を示し、刈刃4と略同高さ位置まで飛散防止板10を垂下延設してある。この構成により、回転する刈刃4により飛散する刈草や泥土が、前輪1,1間に亘る弾性フロントカバーFにより遮られ、車体3前方へ飛散することがなく、刈刃カバー8前端部の刈刃4の回転軌跡外周縁Rに略沿う位置、及び、前輪1,1後方部位置で垂下する弾性外周カバー9により、刈刃4の回転により巻き上げられた土埃を刈刃カバー8内から前方、又は側方へ飛散排出されることを抑制できる。又、回転する刈刃4の最前端位置から回転する方向側の操向ケース7の左右内側、且つ、前記弾性フロントカバーFと弾性外周カバー9との間に、最下降させた刈刃4と略同高さ位置まで垂下延設した前後方向の飛散防止板10を設けているので、まず弾性外周カバー9で刈刃カバー8から土埃が前方又は側方へ飛散排出されることを抑制し、刈草の塊や泥土、小石が車体3前方へ飛散排出されることを弾性フロントカバーFが防ぎ、前後方向の飛散防止板10により、右側操向ケース7方向や右前輪1と刈取装置Kとの間隔部30から外方へ泥土や刈草、土埃等が飛散することを防止可能で、泥土付着に起因するアクスルユニットUの故障も防止できる。
【0017】
又、前後一対のリンクアーム11,12を左右に配置し、該リンクアーム11,12上部前端を車体3側に、下部後端を刈刃カバー8側に枢支するリンク機構により、刈取装置Kを略水平状態のまま昇降させるよう構成し、飛散防止板10を、平面視、後方外方へ向け傾けたアクスルユニットU下側へ取着しているので、アクスルユニットU側に取着した飛散防止板10は、昇降する刈刃カバー8側に設けるよりも上下移動が少なく、又、飛散防止板10の後下部を後方上方へ向け切断してあるので、後進走行時に飛散防止板10が草や地面に引っ掛かることがなく安定した泥土や刈草の飛散防止効果が得られる。
【0018】
又、弾性フロントカバーFと飛散防止版10前端とを離間して配置しているので、前進走行中に草や地面との接触により弾性フロントカバーFが後方へ湾曲、又は屈曲しても、飛散防止板10前側の隙間32により、前後方向の飛散防止板10が弾性フロントカバーFの湾曲、乃至屈曲を阻害することがなく、弾性フロントカバーFの未刈草の良好な取込性を維持できるとともに、刈草の前方への飛出しを防止できる。
【符号の説明】
【0019】
1 前輪
2 後輪
3 車体
4 刈刃
5 原動機
6 伝動ケース
6a 下部嵌合部
7 操向ケース
8 刈刃カバー
9 弾性外周カバー
10 飛散防止板
11 リンクアーム
12 リンクアーム
F 弾性フロントカバー
K 刈取装置
R 回転軌跡外周縁
U アクスルユニット
α 傾斜