(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ジンギョウ及びそのモノマー化合物のダニ殺滅への使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/515 20060101AFI20250130BHJP
A61P 33/14 20060101ALI20250130BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20250130BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20250130BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20250130BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20250130BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20250130BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20250130BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A61K36/515
A61P33/14
A61K31/7048
A61K31/192
A61K31/37
A61K31/352
A61P27/02
A61P17/00
A61P37/08
A61K8/9789
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2022564791
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 CN2021089107
(87)【国際公開番号】W WO2021213484
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】202010334100.3
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524429903
【氏名又は名称】コアンチョウ、メディカル、ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU MEDICAL UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】524429914
【氏名又は名称】ザ、セカンド、アフィリエイテド、ホスピタル、オブ、コアンチョウ、メディカル、ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】THE SECOND AFFILIATED HOSPITAL OF GUANGZHOU MEDICAL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 岩
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101869107(CN,A)
【文献】特開2003-113013(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109172633(CN,A)
【文献】ZHOU, H. et al.,Biomed Res Int,2017年,Vol. 2017, Article ID 9579736,pp. 1-13
【文献】YATAGAI, M. et al.,Curr Top Phytochem,2007年,Vol. 8,pp. 23-28
【文献】CALDER, V.L.,Encyclopedia of the Eye,2010年,pp. 30-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61K 31/00
A61K 8/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンギョウの殺ニキビダニ属ダニ製品の製造における使用。
【請求項2】
ジンギョウ
の熱水抽出物の殺ニキビダニ属ダニ製品の製造における使用。
【請求項3】
ジンギョウ単離化合物又はその塩、エステル、溶媒和物の殺ニキビダニ属ダニ製品の製造における使用
であって、
前記単離化合物は、ゲンチオピクロシド、ロガン酸、スウェロサイド、ロブル酸、スコポレチン、ルビマイリン、スウェルチアマリンから選択される1種又は複数種である、使用。
【請求項4】
前記単離化合物はゲンチオピクロシドから選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記ニキビダニ属ダニはニキビダニ、コニキビダニのうちの1種又は複数種である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記殺ニキビダニ属ダニ製品は医薬組成物、化粧品又は殺ダニ剤である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬組成物は、ニキビダニ属ダニ感染による疾患を予防及び/又は治療するための医薬組成物であり、
前記疾患は、眼病、皮膚疾患、アレルギー疾患から選択される、請求項
6に記載の使用。
【請求項8】
前記眼病は、眼瞼炎、マイボーム腺機能障害、瞼板炎、まつげ抜け、まつげ乱生、緑内障、白内障、眼部毛嚢炎、結膜炎、眼瞼結膜炎、翼状片、角膜炎、眼瞼下垂及びまぶたの外反、眼瞼基底細胞癌、ドライアイ、霰粒腫から選択される、請求項
7に記載の使用。
【請求項9】
前記皮膚疾患は、脂漏性皮膚炎、ニキビ、酒さ、毛包性粃糠疹、口周囲皮膚炎、ニキビダニ症、ヒゼンダニ症、基底細胞癌から選択される、請求項
7に記載の使用。
【請求項10】
前記アレルギー疾患は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎から選択される、請求項
7に記載の使用。
【請求項11】
前記医薬組成物は外用製剤である、請求項
7に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬組成物は眼用製剤又は皮膚外用製剤である、請求項
7に記載の使用。
【請求項13】
前記眼用製剤は、点眼剤、眼軟膏、眼科用ゲル剤、アイエマルジョン、眼科用懸濁液、眼科用フィルム剤、洗眼剤、眼内注射剤から選択される、請求項
12に記載の使用。
【請求項14】
前記皮膚外用製剤は、エアロゾル、粉末剤、ローション、チンキ剤、リニメント剤、コーティング剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、乳剤から選択される、請求項
12に記載の使用。
【請求項15】
前記医薬組成物は人用医薬組成物又は動物用医薬組成物である、請求項
7に記載の使用。
【請求項16】
前記化粧品の形態は、洗顔料、石鹸、エモリエント化粧水、クレンジングローション、スキンケアローション、ジェル、フェイスクリーム、日焼け止めクリーム、エッセンス、フェイシャルマスク、ゲル、リキッドファンデーション、リップバーム、ネッククリーム、シャンプー、ボディソープ、整髪料、ボディーローション、アイクリーム、マスカラ、アイライナーパウダー、アイライナークリーム、アイライナー、アイシャドウパウダー、アイシャドウクリーム、眉描き、アイブロウパウダーから選択される、請求項
6に記載の使用。
【請求項17】
前記殺ダニ剤の形態は、噴霧剤、ローション、パッチ、スモールパッケージから選択される、請求項
6に記載の使用。
【請求項18】
ジンギョウ、ジンギョウ
の熱水抽出物、ジンギョウ単離化合物又はその塩、溶媒和物の、ニキビダニ属ダニによる疾患を治療及び/又は予防する
ための薬物の製造における使用
であって、
前記単離化合物は、ゲンチオピクロシド、ロガン酸、スウェロサイド、ロブル酸、スコポレチン、ルビマイリン、スウェルチアマリンから選択される1種又は複数種である、使用。
【請求項19】
前記疾患は、眼病、皮膚疾患、アレルギー疾患から選択される、請求項
18に記載の使用。
【請求項20】
前記眼病は、眼瞼炎、マイボーム腺機能障害、瞼板炎、まつげ抜け、まつげ乱生、緑内障、白内障、眼部毛嚢炎、結膜炎、眼瞼結膜炎、翼状片、角膜炎、眼瞼下垂及びまぶたの外反、眼瞼基底細胞癌、ドライアイ、霰粒腫から選択される、請求項
19に記載の使用。
【請求項21】
前記皮膚疾患は、脂漏性皮膚炎、ニキビ、酒さ、毛包性粃糠疹、口周囲皮膚炎、ニキビダニ症、ヒゼンダニ症、基底細胞癌から選択される、請求項
19に記載の使用。
【請求項22】
前記アレルギー疾患は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎から選択される、請求項
19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬及びデイリーケアの技術分野に関し、具体的には、ジンギョウ及びそのモノマー化合物、特にゲンチオピクロシドのダニ殺滅への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ダニは節足動物門のクモ形綱の広腹亜綱の一種の小型の動物であり、体の大きさは通常0.5ミリ前後で、そのうち、0.1ミリまで小さいものもあり、多くの種類は1ミリ未満である。現在、ダニはヒトや動物(例えば、イヌ、ネコなどのペット)の健康に非常に密接な関係があり、例えば、革ダニ、ツツガムシダニ、ヒゼンダニ、ニキビダニ、コナダニ、チリダニやシラミダニなどは血を吸い、皮膚を侵害し、「酒さ」や、ニキビダニ症、アレルギー症、尿路ダニ症、肺ダニ症、腸ダニ症や疥癬などを引き起こし、ヒトと動物の体の健康に深刻な被害を与えることが発見された。
【0003】
ニキビダニ属ダニ(クモ綱(Arachnid)及びダニ目(Acarina)に属する)は、通常、皮膚毛包皮脂腺単位に感染するミクロインビトロ寄生虫である。報告された広範な種のうち、少なくとも毛包ニキビダニと皮脂ニキビダニは既にヒトの体表で発見されており、主に毛包と皮脂腺、マイボーム腺に寄生している。ニキビダニは毛包上皮細胞をエサとし、毛包拡張と脱毛を引き起こし、臨床では眼瞼炎、マイボーム腺機能障害、まつげ抜け、まつげ乱生(abnormal eyelash alignment)、結膜炎と眼瞼結膜炎、翼状片、角膜炎、眼瞼基底細胞癌などとして表現する。ニキビダニはまた脂質をエサとし、ドライアイを引き起こすこともある。また、ニキビダニは機械的な閉塞によってマイボーム腺排出管を閉塞させ、脂質排出困難や過剰な分泌物貯留を引き起こし、霰粒腫を形成させることもある。ニキビダニ感染眼病の臨床的症状は主に、繰り返す目の縁の赤みやかゆみ、目の乾燥、目の灼熱感、目の異物感、光を恐れること、分泌物が増えること、まつげが繰り返して抜けることがあり、重篤な場合は、角膜に影響を及ぼし、視覚がぼやけ、視力が低下することがある。以上の眼病のほかに、近年多くの研究により、ニキビダニ感染は多種のよく見られる皮膚疾患につながることが指摘されており、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、酒さ、毛包性粃糠疹、口周皮膚炎、ニキビダニ症、基底細胞癌などが含まれる(例えば、Luo, X., Li, J., Chen, C., Tseng, S. & Liang, L. Ocular Demodicosis as a Potential Cause of Ocular Surface Inflammation. Cornea 36 Suppl 1, S9-s14;Karincaoglu, Y., Tepe, B., Kalayci, B., Atambay, M. & Seyhan, M. Is Demodex folliculorum an aetiological factor in seborrhoeic dermatitis? Clinical and experimental dermatology 34, e516-520;Chen, W. & Plewig, G. Human demodicosis: revisit and a proposed classification. The British journal of dermatology 170, 1219-1225)。
【0004】
ダニによる疾患(例えば眼病、皮膚疾患)は、現在、臨床では十分に重視されておらず、細菌性疾患などと誤診されてしまう場合が多く、一般的な抗菌薬治療では明らかな治療効果がない場合が多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様は、ジンギョウの殺ダニ製品の製造における使用を提供する。
【0006】
具体的には、上記ジンギョウは、唯一の殺ダニ活性成分としてもよいし、他の同一又は異なる活性成分と組み合わせてダニ殺滅に供してもよい。
【0007】
本発明の第2態様は、ジンギョウ抽出物の殺ダニ製品の製造における使用を提供する。
【0008】
具体的には、上記ジンギョウ抽出物は、本分野で公知の適切な生薬抽出方法、例えば煎じ法、浸漬法、浸出法、還流法、水蒸気蒸留法、超音波抽出法などのうちの1種又は複数種の組み合わせによって得られ得る。本発明の一実施例では、上記ジンギョウ抽出物は煎じ法によって得られ得る。
【0009】
具体的には、上記ジンギョウ抽出物は、
ジンギョウを抽出溶媒と混合して浸漬するステップ(1)と、
ステップ(1)の混合物を沸騰まで加熱した後、煎じてろ過するステップ(2)とを含む方法によって製造される。
【0010】
本発明の一実施例では、上記抽出溶媒は水である。
【0011】
具体的には、上記浸漬時間は1~24時間(具体的には、例えば、1、2、3、4、5、6、12、18、24時間)である。
【0012】
具体的には、上記煎じ時間は10~60分間(具体的には、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60分間)である。
【0013】
具体的には、上記方法は、
ステップ(2)で得られたろ液を抽出溶媒とともに沸騰まで加熱した後、煎じてろ過するステップ(3)と、ステップ(2)及びステップ(3)で得られたろ液を併せるステップとをさらに含んでもよい。
【0014】
好適には、上記方法は、得られたろ液を、均一な混合、濃縮、定量、殺菌などの処理ステップのうちの1種又は複数種に供するステップをさらに含む。
【0015】
具体的には、上記ジンギョウ抽出物には、ゲンチオピクロシド、ロガン酸、スウェロサイド、ロブル酸、スコポレチン、ルビマイリン、スウェルチアマリンのうちの1種又は複数種が含まれている。
【0016】
より具体的には、上記ジンギョウ抽出物には、ゲンチオピクロシドが含まれている。
【0017】
本発明の第3態様は、ジンギョウモノマー化合物又はその塩、エステル、異性体、溶媒和物、誘導体の殺ダニ製品の製造における使用を提供する。
【0018】
具体的には、上記ジンギョウモノマー化合物の塩、エステル、異性体、溶媒和物、誘導体は、薬学的に許容可能な対応する塩、エステル、異性体、溶媒和物、誘導体である。
【0019】
具体的には、上記モノマー化合物はゲンチオピクロシド、ロガン酸、スウェロサイド、ロブル酸、スコポレチン、ルビマイリン、スウェルチアマリンから選択される1種又は複数種である。
【0020】
具体的には、上記モノマー化合物はゲンチオピクロシドである。
【0021】
本発明の第4態様は、ゲンチオピクロシド又はその塩、エステル、異性体、溶媒和物、誘導体の殺ダニ製品の製造における使用を提供する。
【0022】
具体的には、上記ジンギョウモノマー化合物の塩、エステル、異性体、溶媒和物、誘導体は、薬学的に許容可能な対応する塩、エステル、異性体、溶媒和物、誘導体である。
【0023】
具体的には、本発明の上記殺ダニ製品は、治療及び/又は予防目的にも、非治療及び/又は予防目的にも有用である。
【0024】
具体的には、本発明の上記ダニはニキビダニ、チリダニ、ヒゼンダニなどのうちの1種又は複数種であってもよい。本発明の一実施例では、本発明の上記ダニはニキビダニ、例えば毛包ニキビダニ及び皮脂ニキビダニである。
【0025】
本発明の一実施形態では、本発明の上記殺ダニ製品は医薬組成物である。
【0026】
具体的には、上記医薬組成物は薬学的に許容可能な補助材料をさらに含む。
【0027】
具体的には、本発明の上記医薬組成物はダニ感染による疾患の予防及び/又は治療に有用である。
【0028】
具体的には、上記疾患は眼病、皮膚疾患、アレルギー疾患などであってもよい。
【0029】
具体的には、上記眼病は、眼瞼炎、マイボーム腺機能障害、瞼板炎、まつげ抜け、まつげ乱生、緑内障、白内障、眼部毛嚢炎、結膜炎、眼瞼結膜炎、翼状片、角膜炎、眼瞼下垂及びまぶたの外反、眼瞼基底細胞癌、ドライアイ、霰粒腫などのうちの1種又は複数種であってもよく、目の充血やかゆみ、目の乾燥、目の灼熱感、目の異物感、光を恐れること、眼の分泌物が増えること、まつげ抜け、視覚ぼやけ、視力低下などから選択される1種又は複数種の症状があってもよい。
【0030】
具体的には、上記皮膚疾患は、脂漏性皮膚炎、ニキビ、酒さ、毛包性粃糠疹、口周囲皮膚炎、ニキビダニ症、ヒゼンダニ症、基底細胞癌などのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0031】
具体的には、上記アレルギー疾患は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎などのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0032】
具体的には、上記医薬組成物は、投与に適している任意の剤形、例えば外用製剤、特に眼用製剤、皮膚外用製剤などとしてもよい。
【0033】
具体的には、上記眼用製剤は、点眼剤、眼軟膏、眼科用ゲル剤、アイエマルジョン、眼科用懸濁液、眼科用フィルム剤、洗眼剤、眼内注射剤などであってもよい。
【0034】
具体的には、前記眼用製剤は、薬学的に許容可能な補助材料、例えばpH調整剤、共溶媒、浸透圧調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、静菌防腐剤、緩衝剤、懸濁剤、局所麻酔剤、界面活性剤、可溶化剤、潤滑剤、乳化剤、安定剤、充填剤、保護剤、溶媒などを含んでもよい。
【0035】
具体的には、上記皮膚外用製剤はエアロゾル、粉末剤、ローション、チンキ剤、リニメント剤、コーティング剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、乳剤などであってもよい。
【0036】
具体的には、本発明の上記医薬組成物のさまざまな剤形は薬学分野の一般的な製造方法によって製造される。例えば、眼科製剤技術は、『眼科薬物及び製剤学』(中国軽工業出版社、2010)、『点眼剤の開発及び生産』(中国軽工業出版社、2009)などを採用してもよい。
【0037】
具体的には、本発明の上記医薬組成物は、0.01~99.5重量%(具体的には、例えば、0.01重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%、99.5重量%)の活性成分を含有してもよい。
【0038】
具体的には、上記医薬組成物はヒトに用いられてもよいし、動物用薬として非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳類、例えばペット動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ネズミなど)、家畜動物(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、イヌ、ウサギなど)などの動物に用いられてもよい。
【0039】
本発明の別の実施形態では、本発明の上記殺ダニ製品は化粧品である。
【0040】
具体的には、上記化粧品は化粧品の分野で許容可能な補助材料をさらに含む。
【0041】
具体的には、本発明の上記化粧品は顔用の化粧品、例えば洗顔料、石鹸、エモリエント化粧水、クレンジングローション、スキンケアローション、ジェル、フェイスクリーム、日焼け止めクリーム、エッセンス、フェイシャルマスク、ゲル、リキッドファンデーション、リップバームであってもよい。
【0042】
具体的には、本発明の上記化粧品は、顔以外の他の部位用の化粧品、例えばネッククリーム、シャンプー、ボディソープ、石鹸、整髪料、ボディーローション、リップバームなどであってもよい。
【0043】
具体的には、本発明の上記化粧品はまた、眼及び眼の周囲用の化粧品、例えばアイクリーム、マスカラ、アイライナーパウダー、アイライナークリーム、アイライナー、アイシャドウパウダー、アイシャドウクリーム、眉描き、アイブロウパウダーなどであってもよい。
【0044】
具体的には、本発明の上記化粧品の各種の形態は、化粧品分野の一般的な製造方法によって製造されてもよい。
【0045】
具体的には、本発明の上記化粧品は、0.01~99.5重量%(具体的には、例えば、0.01重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%、99.5重量%)の活性成分を含有してもよい。
【0046】
本発明の別の実施形態では、本発明の上記殺ダニ製品は、生活で用いる物品(例えば、枕カバー、枕詰め物、シート、寝具、マットレス、衣類、カーペット、クッション、ソファー、夏ござ、ぬいぐるみ、エアコンなど)に寄生し得るダニを殺滅、抑制し得る殺ダニ剤であってもよい。
【0047】
具体的には、上記殺ダニ剤は、所望の性能を達成させ得る任意の適切な補助材料を含んでもよい。
【0048】
具体的には、上記殺ダニ剤は、噴霧剤、ローション、パッチ、スモールパッケージなどの形態であってもよい。
【0049】
具体的には、本発明の上記殺ダニ剤の各種の形態は、デイリーケア用製品の分野でよく使用される製造方法によって製造されてもよい。
【0050】
具体的には、本発明の上記殺ダニ剤は、0.01~99.5重量%(具体的には、例えば、0.01重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%、99.5重量%)の活性成分を含有してもよい。
【0051】
本発明はまた、これを必要とする被験者にジンギョウ、ジンギョウ抽出物、ジンギョウモノマー化合物(特にゲンチオピクロシド)又はその塩、エステル、異性体、溶媒和物、誘導体又は本発明の上記医薬組成物を投与するステップを含むダニ感染による疾患の予防及び/又は治療方法を提供する。
【0052】
具体的には、上記疾患は眼病、皮膚疾患、アレルギー疾患などであってもよい。
【0053】
具体的には、上記眼病は、眼瞼炎、マイボーム腺機能障害、瞼板炎、まつげ抜け、まつげ乱生、緑内障、白内障、眼部毛嚢炎、結膜炎、眼瞼結膜炎、翼状片、角膜炎、眼瞼下垂及びまぶたの外反、眼瞼基底細胞癌、ドライアイ、霰粒腫などのうちの1種又は複数種であってもよく、目の充血やかゆみ、目の乾燥、目の灼熱感、目の異物感、光を恐れること、眼の分泌物が増えること、まつげ抜け、視覚ぼやけ、視力低下などから選択される1種又は複数種の症状があってもよい。
【0054】
具体的には、上記皮膚疾患は、脂漏性皮膚炎、ニキビ、酒さ、毛包性粃糠疹、口周囲皮膚炎、ニキビダニ症、ヒゼンダニ症、基底細胞癌などのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0055】
具体的には、上記アレルギー疾患はアレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎などのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0056】
本発明はまた、これを必要とする被験者の眼にジンギョウ、ジンギョウ抽出物、ジンギョウモノマー化合物又はその塩、異性体、溶媒和物、誘導体を投与するステップを含む、ダニによる眼病の治療及び/又は予防方法を提供する。
【0057】
本発明はまた、ジンギョウ、ジンギョウ抽出物、ジンギョウモノマー化合物又はその塩、異性体、溶媒和物、誘導体の、ダニによる眼病を治療及び/又は予防する薬物の製造における使用を提供する。
【0058】
特に、ダニと眼病との関係が証明された報告には、以下のものがある。
【0059】
Human Permanent Ectoparasites; Recent Advances on Biology and Clinical Significance of Demodex Mites: Narrative Review Article(Iranian journal of parasitology 12(1):12-21)から、コニキビダニは皮脂腺やマイボーム腺、毛包ニキビダニに存在し、しばしばヒトのまつげの毛包部位に寄生し、顔の皮膚を感染すると眼病を引き起こすことが実証されている。
【0060】
Ocular Demodicosis as a Potential Cause of Ocular Surface Inflammation(Cornea 36 Suppl 1(Suppl 1):s9-s14)から、コニキビダニ及び毛包ニキビダニはヒトの眼のダニ症を引き起こす2種のニキビダニであり、また、ヒトの年齢が罹患リスクに比例し、眼のダニ症は眼表面の状况に強く正の相関を持っていることが実証されている。
【0061】
Demodex species in human ocular disease: new clinicopathological aspects(International ophthalmology 37(1):303-312)研究から明らかなように、コニキビダニ及び毛包ニキビダニは外眼疾患の発症機構につながる一方、眼のダニ症は眼外のエコシステムのバランスを崩す。
【0062】
Ocular Demodex: a systematic review of the clinical literature(Ophthalmic & physiological optics : the journal of the British College of Ophthalmic Opticians (Optometrists) 40(4):389-432)では、ニキビダニ感染は複数の眼表面の疾患の潜在的な病因であり、ニキビダニが眼の前部構造、例えばまぶた、まつげや眼表面に寄生すると、ヒトの眼のダニ症が発症し、また、発症率は年齢と正の相関を持つことが記載されている。
【0063】
The relationship between demodex and ocular discomfort(Investigative ophthalmology & visual science 51(6):2906-2911)では、ニキビダニの数が眼病の重篤度及び患者の年齢と正の相関を持つことが指摘されている。
【0064】
Demodex mites(Clinics in dermatology 32(6):739-743)では、ニキビダニ感染は慢性眼瞼炎を引き起こし、慢性眼瞼炎の罹患率はダニの数及び患者の年齢と正の相関を持つことが指摘されている。
【0065】
Quantitative Analysis of the Bacteria in Blepharitis With Demodex Infestation(Frontiers in microbiology 9:1719)研究から明らかなように、コニキビダニ及び毛包ニキビダニ感染は眼病の発症を引き起こし、また、罹患率はダニの数及び患者の年齢とと正の相関を持つ。ニキビダニはバチルスのキャリアであり、共病原体として眼瞼炎の発症機構に役割を果たすことができる。
【0066】
Bacillus oleronius and Demodex mite infestation in patients with chronic blepharitis( Clinical microbiology and infection : the official publication of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases 18(10):1020-1025)によれば、ニキビダニは眼瞼炎疾患の発症を引き起こすことがあり、しかも、バチルスのキャリアでもあり、眼瞼炎の進行過程で共病原体として機能する。
【0067】
Correlation between ocular Demodex infestation and serum immunoreactivity to Bacillus proteins in patients with Facial rosacea(Ophthalmology 117(5):870-877.e871)では、ドライアイ患者の眼でのニキビダニ感染の発生率が非ドライアイ患者よりも低く、眼表面炎症ではダニ感染及び細菌感染の共存が可能であることが提案されている。
【0068】
High prevalence of demodex brevis infestation in chalazia(American journal of ophthalmology 157(2):342-348.e341)研究から明らかなように、成人及びマイボーム腺嚢胞に罹患している小児患者の中ではコニキビダニ症の発症率が極めて高く、眼のニキビダニ症はマイボーム腺嚢胞の重要な病因の1つである。
【0069】
具体的には、上記被験者は、この予防及び/又は治療を受ける任意の動物、特に哺乳類、例えばヒト、ネコ、イヌ、ウサギ、ネズミ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタなどであってもよい。本発明の一実施例では、上記被験者はヒトであり、本発明の別の実施例では、上記被験者は非ヒト動物である。
【0070】
具体的には、上記ジンギョウ、ジンギョウ抽出物、ジンギョウモノマー化合物(特にゲンチオピクロシド)又はその塩、エステル、異性体、溶媒和物、誘導体又は本発明の上記医薬組成物の投与量は、投与経路、被験者の年齢、体重、治療対象の疾患のタイプや重篤度などの変化に応じて、1回又は複数回投与されてもよい。
【0071】
複数種の漢方薬のダニに対する殺滅効果を比較した結果、ジンギョウはダニの生存時間を効果的に短縮できることを見出し、さらに、複数種のジンギョウモノマー化合物をスクリーニングし、ダニ殺滅実験を行い、比較した結果、対照群に比べて、これらのモノマー化合物は全てダニの生存時間を短縮させ、特にゲンチオピクロシドはダニの生存時間を顕著に短縮させることができ、ダニ殺滅・抑制製品(例えば医薬品、化粧品、日用品など)に有用である。本発明で提供される使用は自然資源を効果的に利用し、ジンギョウの利用価値及び商業価値を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0072】
特に断らない限り、本発明で使用される全ての科学用語及び技術用語は本発明の当業者が通常理解するものと同義である。
【0073】
特に断らない限り、本発明では、ジンギョウは漢方薬のジンギョウであり、竜胆科のオオバリンドウGentiana macrophylla Pall.、麻花リンドウGentiana straminea Maxim.、ゲンチアナ・クラッシカウリスGentiana crassicaulis Duthie ex Burk.又はリンドウGentiana dahurica Fisch.の乾燥根であり、炮製し、異物を除去して洗浄し、含浸、厚切り、乾燥を行う。辛くて苦味があり、温める性質を有し、胃、肝や胆に作用し、風邪や湿邪を取り除き、湿熱を追い出し、麻痺や痛みを除去し、虚熱を放出するという役割を果たす。
【0074】
生薬モノマーとは単一の生薬から得られた(例えば抽出によって得られた)化合物、特に治療効果又は健康にやさしいなどの効果がある化合物を指し、例えば、本発明に記載のジンギョウモノマー化合物とは、ジンギョウから得られるモノマー化合物を指し、例えば、ゲンチオピクロシド(CAS:20831-76-9)、ロガン酸(CAS:22255-40-9)、スウェロサイド(CAS:14215-86-2)、ロブル酸(CAS:6812-81-3)、スコポレチン(CAS:92-61-5)、ルビマイリン(CAS:55481-88-4)、スウェルチアマリン(CAS:17388-39-5)であるが、これらに限定されるものではない。本発明に記載の生薬モノマー化合物は市販製品であってもよいし、使用するときに対応する生薬から得られる(例えば抽出によって得られる)、又は従来技術で公知の方法で合成される、又は他の適切な手段により得られるものであってもよい。
【0075】
本発明では、「動物」という用語は一般に脊椎動物、特にヒトを含む哺乳類を指す。「非ヒト動物」という用語はヒト以外の任意の脊椎動物、特に哺乳類を指す。本発明のいくつかの実施形態では、本発明において、前記非ヒト動物は、ヒトが飼育して家畜化し、人為的に繁殖が制御可能な動物である家畜であり、例えば食用、労働、毛皮、ペット、実験などの目的に用いられ、例えば経済動物、ペット動物、実験動物などが挙げられる。経済動物としては、例えば家畜、例えばブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ロバ、キツネ、タヌキ、ミンク、キャメルなどが挙げられる。ペット動物としては、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、ネズミ(例えばモルモット、ハムスター、スナネズミ、トトロ、リスなど)などが挙げられる。実験動物としては、例えばサル、イヌ、ウサギ、ネコ、ネズミ(例えばラット、マウス)などが挙げられる。
【0076】
以下、本発明の実施例を参照しながら、本発明の技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、実施例の全てというわけではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに実施し得る他の全ての実施例は本発明の特許範囲に属する。
【実施例】
【0077】
実施例1
一、実験方法:
1. 実験対象
本研究は、ヘルシンキ宣言(The Declaration of Helsinki)『人に関する生物医学研究論理審査弁法』の論理原則に厳格に準じる。本研究では、眼がニキビダニに感染したと確診した患者からニキビダニを集めた。選択基準を満たした者は、インフォームドインタビューを受け、インフォームドコンセントフォームに署名した後に実験に参加した。
2. ニキビダニの検査
一般的なまつげ顕微鏡検査方法によってニキビダニ検査(12,20)を行い、つまり、眼瞼ごとに3本のまつげ、合計12本のまつげを抜き、抜けたばかりのまつげを1枚あたり3本ずつスライドグラスに置き、一般的な光学顕微鏡下で観察した。全ての段階のニキビダニを計数して形態学的に分類した(具体的な標準:頭身比1:1のものを皮脂ニキビダニ、頭身比1:3~1:4のものを毛包ニキビダニとする)。完全に視野に露出された成虫だけを実験対象とした(幼虫及び虫卵は生命の初期でより脆弱であるので研究対象としない)。
3.ニキビダニのインビトロ培養
上記ニキビダニ検査を基に、スライドグラスあたり各溶液35μlを加え、2時間ごとに虫体が生存しているか否かを1回観察した。顕微鏡下で虫体(体、四肢など)が動いているか否かを観察することで死んでいるか否かを判断し、実験においては、ニキビダニに関して熟練した2人の実験者はそれぞれ観察して判定し、判定の結果が異なる場合、もう1人の熟練した実験者に個別に判定してもらった。インビトロ培養は、温度20℃、湿度96%の人工気候室にて行われ、スライドグラスは高湿度状態を確保するために観察中にウェットボックスで輸送された。
4. 薬物
4.1 7種類の漢方薬
本実験で使用された生薬(キンギンカ、ハクセンピ、オウゴン、ギョセイソウ、シンピ、ジンギョウ、キクカ)は全て広東省中医院漢方薬薬局から購入した。これらのうち、キンギンカ、ジンギョウ、オウゴン、ギョセイソウ、ジンギョウ、キクカは康美薬業股分有限公司、ハクセンピ、シンピは嶺南漢方薬飲片有限公司から購入した。
4.2 生薬煎剤の製造方法
電子天秤を用いて乾燥生薬60gを秤量し、土鍋に投入し、10倍量の水(600ml)を加えて一晩浸漬し、強火で薬液が沸騰するまで加熱した後、文火で15~30分間(花草の場合15分間、根茎の場合30分間)煎じて、ガーゼでろ過し、ろ液に水500mlを加え、以上と同様に煎じて、ろ過し、2回のろ液を同一ビーカーに合わせ、均一に混合した後、加熱して蒸発させ、薬液を100mlに濃縮させた後、室温まで放冷し、100ml試験管に入れて定容した。
実験群はそれぞれ上記方法で製造された各生薬煎液、陰性対照群は殺菌水とした。
4.3 陽性対照は、ティーツリー精油及びティーツリー精油の主成分のテルピネン-4-オールである。
ティーツリーオイル(TTO:Tea Tree Oil)及びテルピネン-4-オール(T4O:Terpinen-4-olはMilwaukee(WI, USA)から購入し、全て殺菌水で希釈し、最終濃度10%とした。
5. 統計方法
本実験では、SPSS22.0統計ソフトウェアを用いて統計を行い、Shapiro-Wilk検定により正規性検定を行い、Bartlett検定により等分散性検定を行い、正規分布に合致し、分散が揃えているデータについて一元配置分散分析(One-way ANOVA)を行い、統計的有意性がある場合、Bonferroni法を用いて2群ずつ比較を行い、データが正規分布に合致しない場合、Kruskal-Wallis検定を用いて統計分析を行い、検定標準をα=0.05とした。
6. 実験結果:
1. ジンギョウによるニキビダニのインビトロ生存時間の顕著な短縮
湿度96%、温度20℃の環境でニキビダニをインビトロ培養し、ニキビダニの生存状況を動的に観察して生存時間を記録した。実験結果を表1に示す。陰性対照群に比べて、ジンギョウ群では、ニキビダニの生存時間は対照群よりも顕著に短縮され(21.44 ± 9.76 vs. 50.81±19.90, P<0.001)、しかも、TTO及びT4O群よりも、ニキビダニのインビトロ生存時間は短く(21.61 ± 11.95 vs. 41.39 ± 19.33、21.61 ± 11.95 vs. 40.50 ± 13.12 、P<0.01)、残りの6種類の生薬は、対照群、TTO及びT4O群に対して、ニキビダニのインビトロ生存時間に明らかな差が認められなかった(P>0.05)。面白いことに、ダニをインビトロで殺滅し得ると思われているTTO及びその主な有効成分であるT4Oは、このインビトロ培養実験では、陰性対照である水溶液に比べて、ニキビダニの生存時間に明らかな差が認められなかった(P>0.05)。
【表1】
【0078】
実施例2:生薬モノマーによるニキビダニの生存時間への影響のインビトロの一次スクリーニング
方法:
1. 生薬モノマー
実施例1の実験結果によれば、ジンギョウは、ニキビダニのインビトロ生存時間を顕著に短縮できるので、この生薬モノマーを使用し、モノマーの英語名及び分子式を以下の表に示す。
【表2】
2. 生薬モノマー溶液の調製
表2に示される漢方薬モノマーの参照品の粉末をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、次に、滅菌蒸留水で希釈し、DMSOの最終濃度を10%とし、対照試験をしたところ、この濃度では、コニキビダニの生存時間を短縮させることができなかった。陰性対照は殺菌水と混合した最終濃度10%のDMSOとした。
3. ニキビダニのインビトロ培養
実施例1と同様に、スライドグラスあたり各溶液35μlを加え、2時間ごとに光学顕微鏡下で虫体が生存しているか否かを1回観察した。顕微鏡下で虫体(体、四肢など)が動いているか否かを観察することで死んでいるか否かを判断し、実験においては、ニキビダニに関して熟練した2人の実験者はそれぞれ観察して判定し、判定の結果が異なる場合、もう1人の熟練した実験者に個別に判定してもらった。インビトロ培養は、温度20℃、湿度96%の人工気候室にて行われ、スライドグラスは高湿度状態を確保するために観察中にウェットボックスで輸送された。
4. 統計方法
本実験では、SPSS22.0統計ソフトウェアを用いて統計を行い、Shapiro-Wilk検定により正規性検定を行い、Bartlett検定により等分散性検定を行い、正規分布に合致し、分散が揃えているデータについて一元配置分散分析(One-way ANOVA)を行い、統計的有意性がある場合、Bonferroni法を用いて2群ずつ比較を行い、データが正規分布に合致しない場合、Kruskal-Wallis検定を用いて統計分析を行い、検定標準をα=0.05とした。
5. 実験結果:
漢方薬モノマーによる毛包ニキビダニの生存時間への影響
湿度96%、温度20℃の環境でニキビダニをインビトロ培養し、ニキビダニの生存状況を動的に観察して生存時間を記録した。結果を表3に示す。陰性対照10% DMSOに比べて、表2に示されるジンギョウモノマー化合物は全てニキビダニのインビトロの生存時間を短縮させることができ、特に、ゲンチオピクロシド群のニキビダニの生存時間は対照群よりも有意に短縮された(37.31±36.06 vs. 80.79±25.34, P<0.001)。
【表3】
【0079】
実施例3:ダニ感染によるドライアイの治療の臨床研究
(一)選択と除外の基準
1.症例選択基準
(1)病歴を聴取した結果、ドライアイの診断基準を満たしている患者
(2)年齢18~70歳
(3)性別は問わず
(4)治療に協力することができる者
2.症例除外基準
(1)細隙灯検査によって虹毛炎を患っている患者;
(2)高眼圧又は低眼圧の患者
(3)まぶたの皮膚に破潰傷と角膜表面に角膜上皮浸潤病巣がある患者
(4)系統疾患、例えば肝腎機能障害によりシェーグレン症候群に罹患した患者
(5)年齢が18歳未満又は70歳以上の者、
(6)精神状態が評価者に協力できない者
(7)妊娠、授乳期の女性
3.中断及び除去基準
(1)治療中に他の疾患を伴うため、治療を継続することができないか又は継続することを望まない者
(2)治療中に協力できない者又は症状が悪化して治療の継続を望まない者
(3)試験プログラムに反して、当該試験で使用されていない他の薬剤を途中で使用した者
(4)最終的に資料が不十分で、治療者を判断できない者。
(二)終点指標
患者は治療前と治療後1週ごとに眼表不快症状採点、一般眼科検査(視力、眼圧、細隙灯検査)、ドライアイに関する3つの項目(結膜充血採点、BUT試験、Schirmer I試験)、眼表面疾患指数採点(OSDI)、ドライアイ計及び眼部ニキビダニ検査を行った。
(三)データ統計
1、サンプル含有量推定
ドライアイは臨床でよく見られる眼表疾患であることを考慮すると、眼部ニキビダニ陽性率は23.8%~90.0%に達した。定量資料の優効性検査サンプル量の計算式によれば、実験群と対照群の患者は各30例であった。
2、研究データの統計及び分析
SPSS20.0ソフトウェア及びexcelを用いて統計学的処理を行い、計数資料の正規分布データには対応のある標本のt検定を用い、測定資料にはχ2検定を用い、非正規分布データにはノンパラメトリック検定を用い、結果を平均値±標準差x+sで表し、P<0.05を有意差とすると統計的有意性がある。
【0080】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の主旨及び原則を逸脱することなく行われる全ての修正、等同置換などは本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【0081】
本発明に記載の前述実施例及び方法は、当業者の能力、経験や好みによって異なる。
【0082】
本発明では、記載されている方法のステップの順番は方法のステップの順番を何ら制限するものではない。