(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】発行済ST類の取引システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/04 20120101AFI20250130BHJP
【FI】
G06Q40/04
(21)【出願番号】P 2022143293
(22)【出願日】2022-09-08
【審査請求日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2022131354
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313004816
【氏名又は名称】西本 一也
(73)【特許権者】
【識別番号】500566567
【氏名又は名称】株式会社インタートレード
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-059292(JP,A)
【文献】特開2019-212317(JP,A)
【文献】特表2022-547348(JP,A)
【文献】特表2022-515190(JP,A)
【文献】特許第5174334(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トークン類(ブロックチェーン
その他の分散
台帳技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン
その他の分散
台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を
コンピュータに行
わせるスマートコントラクトを備えて構築される、発行済ST類の取引システムであって、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、ST類
が生成(発行)
された時に生成(発行)
されたST類の銘柄を
、前記分散型台帳のコンセンサスノードに設けられている発行済ST銘柄を登録するためのリストであって登録されている銘柄について取引の参加者である各マーケットメイクを行う金融機関が共通で取引に用いるための取引リストに
コンピュータを介して登録する機能を有する銘柄登録用スマートコントラクトと、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記銘柄登録用スマートコントラクトにより取引リストに登録されている銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとして
コンピュータに取り扱
わせ、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に
コンピュータに取り扱
わせる、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、
最良注文(最も安い売り注文、最も高い注文)となる当該銘柄についてのリーブオーダーの価格に各マーケットメイクを行う金融機関におけるそれぞれ独自のリスク分を手数料として上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを
コンピュータに作成
させる機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが
コンピュータに作成
させた、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として
、コンピュータを介して前記分散型台帳に保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、
前記独自レート作成用スマートコントラクトがコンピュータに作成させた、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて
、顧客にとって最も有利となる金融機関の独自の当該銘柄についてのレートを当該銘柄についての基準レート
としてコンピュータに生成
させる機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記基準レート生成用スマートコントラクトが
コンピュータに生成
させた所定銘柄についての基準レートを非公開情報として
、コンピュータを介して前記分散型台帳に保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを
、コンピュータを介して受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトが
コンピュータに生成
させた当該銘柄についての基準レートを
、コンピュータを介して当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記独自レート作成用スマートコントラクトが
コンピュータに作成
させた、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを
、コンピュータを介して約定する機能を有する約定用スマートコントラクトと、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを
、コンピュータを介して約定することができない
と、コンピュータを介して判定した場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として
、コンピュータを介して前記分散型台帳に保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが
コンピュータに作成
させた、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を
、コンピュータを介して探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトの
コンピュータを介して探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する
と、コンピュータを介して判定した場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを
、コンピュータを介して約定
する機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートで
コンピュータを介して約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロスまたは短期ネットのDVP型決済を
コンピュータに行
わせる機能を有する決済用スマートコントラクトと、
を有することを特徴とする発行済ST類の取引システム。
【請求項2】
前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記約定先探索用スマートコントラクトによる、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関の探索における、
顧客の取引を所望しない金融機関のブラックリストへの登録を
、コンピュータを介して受け付ける機能を有するブラックリスト登録受付用スマートコントラクトをさらに有し、
前記約定先探索用スマートコントラクトは、前記ブラックリスト登録受付用スマートコントラクトによる取引を所望しない金融機関のブラックリストへの登録の受け付けにより、ブラックリストに登録された金融機関を探索対象から除外して、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を
、コンピュータを介して探索する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の発行済ST類の取引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発行済ST類の取引システムに関する。
なお、本願明細書における「システム」とは、コンピュータや他の電子機器、ソフトウェア、通信ネットワーク、データなどの要素を組み合わせて構成された、ソフトウェアによる情報処理を、ハードウェア資源を用いて具体的に実現するコンピュータシステムを意味する。
【背景技術】
【0002】
ST類(電子記録移転権利の概念だけではなくデジタル証券の概念を含むものとして定義する。以下同じ。)の取引サービスは、特定者への、クローズドされた環境でのサービスであり、プライベート型チェーンのコンセンサスノードにソフトウェアで構築された複数の仮想ノードが設けられ、夫々の仮想ノードに、一般的な権限に加えて全物理ノードの運用権限が付与されて、2階層の権限を備えた仮想コンソ-シアム型チェーンとなるブロックチェーン方式が適切と考えられる。
【0003】
本件発明者は、そのようなタイプのブロックチェーン方式において、ST類の取引を効率的にすることについて考察・検討した。
【0004】
ST類などの証券系のトークンについての取引サービスでは、PTS(私設取引システム)のような、証券会社内での売り買いの注文の集中処理が基本となっている。
ただし、PTSは、運用するための体制や財務力が非常に高く要求されるため、簡単に実装できる機能ではない。
【0005】
特にST類の取引サービスは、主に小口の顧客に対する証券サービスであり、小口の顧客はコストについては非常にシビアである。このため、ST類の取引サービスについては、コストの負担が無いサービスを考える必要がある。
【0006】
また、ST類の取引サービスについては、既存の上場物などの有価証券をデジタル化したST類を対象とした取引サービスのほかに、上場のコストが支払えない小規模で直接金融的なST類を対象とした取引サービスのニーズが多く存在している。
例えば、個別不動産を証券化したST類を対象とした取引サービスなどは、そのような取引サービスに該当し、上場証券であるリート(REIT:Real Estate Investment Trust、不動産投資信託)などの、複数の不動産案件を運用する、中身(投資先)のわかり難いものをデジタル化したST類を対象とした取引サービスとは異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような小規模で直接金融的な個別不動産などをみなし有価証券としてデジタル化したタイプのST類は、流動性が低い。このため、そのようなタイプのST類の転売などにおける価格設定は、PTS(私設取引システム)において行われているような、証券会社内での単純な売り買いの注文を集中させる価格発見の方法では、ミスプライス(適正価格からの乖離)が出やすくなる問題がある。
【0008】
この課題を解決するための方策としては、価格設定に責任を持つマーケットメイクを行う金融機関が、取引価格に責任を持つという方法が考えられる。
この方法においては、複数のマーケットメイクを行う金融機関に当該銘柄のレートを提示させて、最良レートを競わせる方法が望まれる。各マーケットメイクを行う金融機関の提示する当該銘柄のレートの根拠となるのは、各マーケットメイクを行う金融機関の顧客が各マーケットメイクを行う金融機関にオーダー(リーブオーダー)した注文のブック(約定)状態である。これを参考として、各マーケットメイクを行う金融機関が自己リスク分を加味して当該銘柄のレートを生成し、顧客に提示する。
【0009】
従来、各マーケットメイクを行う金融機関は、取引市場に当該銘柄のレートを提示する場合、基本的に本来の各マーケットメイクを行う金融機関の店内レートよりも不利なレートとする一方、各マーケットメイクを行う金融機関の店内にて有利なレートを顧客に提示する方法を主軸として採用し、顧客の注文を約定させ易くなるようにしていた。
【0010】
これは、手数料収益を考慮したとき、取引市場への手数料の支払いが不要になり、顧客としてもメリットがあるためであった。
【0011】
しかし、取引市場は、約定率が上がらない、個別の各マーケットメイクを行う金融機関での約定価格が不透明になるなどの理由により、各マーケットメイクを行う金融機関が管理している自社の顧客のリーブオーダー自体を、取引市場に強制回送させるようにした。
【0012】
これでは、結果的に、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることになり、各マーケットメイクを行う金融機関が撤退し、日本におけるマーケットメイクがなくなることが懸念される。
【0013】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことの可能な発行済ST類の取引システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明による発行済ST類の取引システムは、トークン類(ブロックチェーンその他の分散台帳技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーンその他の分散台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理をコンピュータに行わせるスマートコントラクトを備えて構築される、発行済ST類の取引システムであって、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、ST類が生成(発行)された時に生成(発行)されたST類の銘柄を、前記分散型台帳のコンセンサスノードに設けられている発行済ST銘柄を登録するためのリストであって登録されている銘柄について取引の参加者である各マーケットメイクを行う金融機関が共通で取引に用いるための取引リストにコンピュータを介して登録する機能を有する銘柄登録用スマートコントラクトと、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記銘柄登録用スマートコントラクトにより取引リストに登録されている銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとしてコンピュータに取り扱わせ、各マーケットメイクを行う金融機関において共通にコンピュータに取り扱わせる、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、最良注文(最も安い売り注文、最も高い注文)となる当該銘柄についてのリーブオーダーの価格に各マーケットメイクを行う金融機関におけるそれぞれ独自のリスク分を手数料として上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートをコンピュータに作成させる機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトがコンピュータに作成させた、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として、コンピュータを介して前記分散型台帳に保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトがコンピュータに作成させた、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて、顧客にとって最も有利となる金融機関の独自の当該銘柄についてのレートを当該銘柄についての基準レートとしてコンピュータに生成させる機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記基準レート生成用スマートコントラクトがコンピュータに生成させた所定銘柄についての基準レートを非公開情報として、コンピュータを介して前記分散型台帳に保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを、コンピュータを介して受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトがコンピュータに生成させた当該銘柄についての基準レートを、コンピュータを介して当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記独自レート作成用スマートコントラクトがコンピュータに作成させた、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを、コンピュータを介して約定する機能を有する約定用スマートコントラクトと、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを、コンピュータを介して約定することができないと、コンピュータを介して判定した場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として、コンピュータを介して前記分散型台帳に保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトがコンピュータに作成させた、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を、コンピュータを介して探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトのコンピュータを介して探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当すると、コンピュータを介して判定した場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを、コンピュータを介して約定する機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートでコンピュータを介して約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロスまたは短期ネットのDVP型決済をコンピュータに行わせる機能を有する決済用スマートコントラクトと、を有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の発行済ST類の取引システムにおいては、前記分散型台帳のコンセンサスノードに各仮想ノードとして構築された、各マーケットメイクを行う金融機関のノードに備えられていて、前記約定先探索用スマートコントラクトによる、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関の探索における、顧客の取引を所望しない金融機関のブラックリストへの登録を、コンピュータを介して受け付ける機能を有するブラックリスト登録受付用スマートコントラクトをさらに有し、前記約定先探索用スマートコントラクトは、前記ブラックリスト登録受付用スマートコントラクトによる取引を所望しない金融機関のブラックリストへの登録の受け付けにより、ブラックリストに登録された金融機関を探索対象から除外して、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を、コンピュータを介して探索する機能を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことの可能な発行済ST類の取引システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る発行済ST類の取引システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
【
図2】
図1の発行済ST類の取引システムにおける銘柄登録用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図3】
図1の発行済ST類の取引システムにおける独自レート作成用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図4】
図1の発行済ST類の取引システムにおける非公開共有情報保管用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図5】
図1の発行済ST類の取引システムにおける基準レート生成用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図6】
図1の発行済ST類の取引システムにおける基準レート提示用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図7】
図1の発行済ST類の取引システムにおける約定用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図8】
図1の発行済ST類の取引システムにおける約定先探索用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図9】
図1の発行済ST類の取引システムにおける約定制御用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図10】
図1の発行済ST類の取引システムにおける決済用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図11】
図1の発行済ST類の取引システムにおけるブラックリスト登録受付用スマートコントラクトの有する機能を概略的に示す説明図である。
【
図12】
図1の発行済ST類の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの一例の一部分を示す説明図である。
【
図13】
図1の発行済ST類の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの一例の
図12の続きの部分を示す説明図である。
【
図14】
図1の発行済ST類の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの一例の他の部分を示す説明図である。
【
図15】
図1の発行済ST類の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの全体を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯、及び本発明の作用効果について説明する。
【0019】
上述のとおり、ST類(電子記録移転権利の概念だけではなくデジタル証券の概念を含むものとして定義する。以下同じ。)の取引サービスは、特定者への、クローズドされた環境でのサービスであり、プライベート型チェーンのコンセンサスノードにソフトウェアで構築された複数の仮想ノードが設けられ、夫々の仮想ノードに、一般的な権限に加えて全物理ノードの運用権限が付与されて、2階層の権限を備えた仮想コンソ-シアム型チェーンとなるブロックチェーン方式が適切と考えられる。
本件発明者は、そのようなタイプのブロックチェーン方式において、ST類の取引を効率的にすることについて考察・検討した。
【0020】
ST類などの証券系のトークンについての取引サービスでは、PTS(私設取引システム)のような、証券会社内での売り買いの注文の集中処理が基本となっている。
ただし、PTSは、運用するための体制や財務力が非常に高く要求されるため、簡単に実装できる機能ではない。
【0021】
特にST類の取引サービスは、主に小口の顧客に対する証券サービスであり、小口の顧客はコストについては非常にシビアである。このため、ST類の取引サービスについては、コストの負担が無いサービスを考える必要がある。
【0022】
また、ST類の取引サービスについては、既存の上場物などの有価証券をデジタル化したST類を対象とした取引サービスのほかに、上場のコストが支払えない小規模で直接金融的なST類を対象とした取引サービスのニーズが多く存在している。
例えば、個別不動産を証券化したST類を対象とした取引サービスなどは、そのような取引サービスに該当し、上場証券であるリート(REIT:Real Estate Investment Trust、不動産投資信託)などの、複数の不動産案件を運用する、中身(投資先)のわかり難いものをデジタル化したST類を対象とした取引サービスとは異なる。
【0023】
このような小規模で直接金融的な個別不動産などをみなし有価証券としてデジタル化したタイプのST類は、流動性が低い。このため、そのようなタイプのST類の転売などにおける価格設定は、PTS(私設取引システム)において行われているような、証券会社内での単純な売り買いの注文を集中させる価格発見の方法では、ミスプライス(適正価格からの乖離)が出やすくなる問題がある。
【0024】
この課題を解決するための方策としては、価格設定に責任を持つマーケットメイクを行う金融機関が、取引価格に責任を持つという方法が考えられる。
この方法においては、複数のマーケットメイクを行う金融機関に当該銘柄のレートを提示させて、最良レートを競わせる方法が望まれる。各マーケットメイクを行う金融機関の提示する当該銘柄のレートの根拠となるのは、各マーケットメイクを行う金融機関の顧客が各マーケットメイクを行う金融機関にオーダー(リーブオーダー)した注文のブック(約定)状態である。これを参考として、各マーケットメイクを行う金融機関が自己リスク分を加味して当該銘柄のレートを生成し、顧客に提示する。
【0025】
従来、各マーケットメイクを行う金融機関は、取引市場に当該銘柄のレートを提示する場合、基本的に本来の各マーケットメイクを行う金融機関の店内レートよりも不利なレートとする一方、各マーケットメイクを行う金融機関の店内にて有利なレートを顧客に提示する方法を主軸として採用し、顧客の注文を約定させ易くなるようにしていた。
【0026】
これは、手数料収益を考慮したとき、取引市場への手数料の支払いが不要になり、顧客としてもメリットがあるためであった。
【0027】
しかし、取引市場は、約定率が上がらない、個別の各マーケットメイクを行う金融機関での約定価格が不透明になるなどの理由により、各マーケットメイクを行う金融機関が管理している自社の顧客のリーブオーダー自体を、取引市場に強制回送させるようにした。
【0028】
これでは、結果的に、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることになり、各マーケットメイクを行う金融機関が撤退し、日本におけるマーケットメイクがなくなることが懸念される。
【0029】
そこで、本件発明者は、上述のマーケットメイクを行う金融機関のロジック(各マーケットメイクを行う金融機関の顧客が各マーケットメイクを行う金融機関にオーダー(リーブオーダー)した注文のブック(約定)状態を参考として、各マーケットメイクを行う金融機関が自己のリスク分を加味して当該銘柄のレートを生成し、顧客に提示する)をベースとして、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うための方法について考察・検討を重ねた。
【0030】
まず、ST類を生成した際に、取引リストの作成(銘柄登録)を行い、その取引リストに登録されている銘柄について、取引の参加者(各マーケットメイクを行う金融機関)が共通で取引に用いることのできるベースとなるものを考えた。
【0031】
そのベースとなるものとして、一つのマーケットメイクを行う金融機関の顧客からの注文を、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々自社の顧客のリーブオーダーとして扱う機能を、各マーケットメイクを行う金融機関が共有するシステムを提供することを考えた。
【0032】
この機能を共有するシステムでは、顧客からの当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と各マーケットメイクを行う金融機関の自己のリスク分を加味した処理より、基準となる妥当性のある当該銘柄のレートを生成する一方、生成した基準となる妥当性のある当該銘柄のレートは開示しないものとし、各顧客が取引を所望する銘柄のレートを問い合わせたときにのみ提示するものとすることを考えた。
【0033】
また、流動性が本質的に低い状況で、適正な当該銘柄のレートを提示することが必要になることから、各マーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)を、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有することを考えた。
【0034】
この機能により、各顧客が取引を所望する銘柄のレートを問い合わせたときには、各マーケットメイクを行う金融機関が他社のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)を把握することなく、システムが機械的に他社のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)を把握し、基準となる妥当性のある当該銘柄のレート(つまり、各マーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)、および各マーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄のレート:自己のリスク分を加味したものの双方から)を算出して各顧客に提示するようにすることを考えた。
【0035】
また、マーケットメイクを行う金融機関が当該銘柄の自社レートで自社の顧客の当該銘柄のリーブオーダーを約定できない場合、システムが、各社のマーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報(各マーケットメイクを行う金融機関の顧客の当該銘柄のリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索するようにすることを考えた。
【0036】
また、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関の探索においては、取引を所望しない相手をブラックリストに登録しておくことにより、そのブラックリストに登録された企業(マーケットメイクを行う金融機関)の情報を排除した形態で行われるようにすることを考えた。
【0037】
さらに、探索の結果、約定可能な相手先のマーケットメイクを行う金融機関が見つかり、自社の顧客のリーブオーダーが自社のマーケットメイクを行う金融機関内ではなく、他社のマーケットメイクを行う金融機関の間で約定(他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄のレートで約定)となる場合は、2者(自社のマーケットメイクを行う金融機関の顧客と他社のマーケットメイクを行う金融機関)間で即時グロスまたは短期ネットのDVP型決済を行い、その際にデジタル通貨と該当ST類を決済用スマートコントラクトに渡して処理するようにすることを考えた。
【0038】
これにより、リアルタイムにST類とデジタル通貨の取引が可能になり、顧客に対してデジタル資産を即時出庫することができ、流動性の低いST類について妥当性のある取引価格を導出し、リアルタイムに決済することが可能になると考えられる。
【0039】
本件発明者は、このように考察・検討を重ねた末、本発明の発行済ST類の取引システムを導出するに至った。
【0040】
本発明の発行済ST類の取引システムは、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築される、発行済ST類の取引システムであって、ST類の生成(発行)時に生成(発行)したST類の銘柄を取引リストに登録する機能を有する銘柄登録用スマートコントラクトと、前記銘柄登録用スマートコントラクトにより取引リストに登録されている銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する機能を有する約定用スマートコントラクトと、前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトの探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロスまたは短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクトと、を有する。
【0041】
本発明の発行済ST類の取引システムのように、前記銘柄登録用スマートコントラクトにより取引リストに登録されている銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関に対し顧客からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクトと、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクトと、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトを介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクトと、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、前記基準レート生成用スマートコントラクトが生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクトと、を有した構成にすれば、流動性が低い小規模で直接金融的な個別不動産などをみなし有価証券としてデジタル化したタイプのST類であっても、取引価格の設定において、ミスプライス(適正価格からの乖離)が出難くなり、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことが可能となる。また、各顧客が取引を所望する銘柄のレートを問い合わせたときにのみ提示することで、顧客は妥当な取引価格を得ることが可能となる。また、取引市場に回送しないので、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率を下げずに済み、また、取引市場に上場するためのコストが不要で、顧客の取引に要するコストも低減することが可能となる。
【0042】
また、本発明の発行済ST類の取引システムのように、前記約定用スマートコントラクトが、所定のマーケットメイクを行う金融機関における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、前記非公開共有情報保管用スマートコントラクトが各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、前記独自レート作成用スマートコントラクトが作成した、各マーケットメイクを行う金融機関における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクトと、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、前記約定先探索用スマートコントラクトの探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、前記約定用スマートコントラクトに当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクトと、を有した構成にすれば、約定率を上げることが可能となる。
【0043】
また、本発明の発行済ST類の取引システムのように、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロスまたは短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクトを有した構成にすれば、リアルタイムにST類とデジタル通貨の取引が可能になり、顧客に対してデジタル資産を即時出庫することができ、流動性の低いST類について妥当性のある取引価格を導出し、リアルタイムに決済することが可能となる。
【0044】
また、本発明の発行済ST類の取引システムにおいては、好ましくは、前記約定先探索用スマートコントラクトによる、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関の探索における、取引を所望しない金融機関のブラックリストへの登録を受け付ける機能を有するブラックリスト登録受付用スマートコントラクトをさらに有し、前記約定先探索用スマートコントラクトは、前記ブラックリスト登録受付用スマートコントラクトによる取引を所望しない金融機関のブラックリストへの登録の受け付けにより、ブラックリストに登録された金融機関を探索対象から除外して、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関を探索する機能を有する。
このようにすれば、取引を所望しない相手との約定を回避することが可能となる。
また、リアルタイムにST類とデジタル通貨の取引が可能となる。即ち、顧客に対してデジタル資産を即時出庫することができ、流動性の低いST類について妥当性のある取引価格を導出し、リアルタイムに決済することが可能となる。
【0045】
このため、本発明によれば、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことの可能な発行済ST類の取引システムが得られる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行うこととする。
【0046】
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係る発行済ST類の取引システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
第1実施形態の発行済ST類の取引システムは、トークン類(ブロックチェーン等の分散技術においてデジタルで定義される価値などの総称)、デジタル通貨、トークン類とデジタル通貨、もしくはトークン類同士、デジタル通貨同士など、あらゆる形態のデジタル資産間による取引を管理するための、少なくとも1種類のブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデジタル資産を用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトを備えて構築され、
図1に示すように、銘柄登録用スマートコントラクト11と、独自レート作成用スマートコントラクト12と、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13と、基準レート生成用スマートコントラクト14と、基準レート提示用スマートコントラクト15と、約定用スマートコントラクト16と、約定先探索用スマートコントラクト17と、約定制御用スマートコントラクト18と、決済用スマートコントラクト19と、ブラックリスト登録受付用スマートコントラクト20と、を有して構築されている。
【0047】
銘柄登録用スマートコントラクト11
銘柄登録用スマートコントラクト11は、例えば、
図2に示すように、ST類の生成(発行)時に生成(発行)したST類の銘柄を取引リストに登録する機能を有して構成されている。
【0048】
独自レート作成用スマートコントラクト12
独自レート作成用スマートコントラクト12は、例えば、
図3に示すように、銘柄登録用スマートコントラクト11により取引リストに登録されている銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関40(1)に対し顧客50(1,x)(但し、xは正の整数)からの注文があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における共通の顧客のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、例えば、最良注文(最も安い売り注文、最も高い買い注文)となる当該銘柄についてのリーブオーダーの価格に各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々自己のリスク分を手数料として上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)して、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有して構成されている。
【0049】
非公開共有情報保管用スマートコントラクト13
非公開共有情報保管用スマートコントラクト13は、例えば、
図4に示すように、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有して構成されている。
【0050】
基準レート生成用スマートコントラクト14
基準レート生成用スマートコントラクト14は、例えば、
図5に示すように、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13を介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有して構成されている。
【0051】
基準レート提示用スマートコントラクト15
基準レート提示用スマートコントラクト15は、例えば、
図6に示すように、基準レート生成用スマートコントラクト14が生成した所定銘柄についてのレートを非公開情報として保管するとともに、顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、基準レート生成用スマートコントラクト14が生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)に提示する機能を有して構成されている。
【0052】
約定用スマートコントラクト16
約定用スマートコントラクト16は、例えば、
図7に示すように、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する機能を有して構成されている。
【0053】
約定先探索用スマートコントラクト17
約定先探索用スマートコントラクト17は、例えば、
図8に示すように、約定用スマートコントラクト16が、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)における所定銘柄についての自社レートで顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13が各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)を探索する機能を有して構成されている。
また、約定先探索用スマートコントラクト17は、ブラックリスト登録受付用スマートコントラクト20による取引を所望しない金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)のブラックリストへの登録の受け付けにより、ブラックリストに登録された金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)を探索対象から除外して、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関(m’)(但し、m’は1以上n以下、かつ、k及びL以外の整数)を探索する機能を有して構成されている。
【0054】
約定制御用スマートコントラクト18
約定制御用スマートコントラクト18は、例えば、
図9に示すように、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)の顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、約定先探索用スマートコントラクト17の探索した他のマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定用スマートコントラクト16に当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有して構成されている。
【0055】
決済用スマートコントラクト19
決済用スマートコントラクト19は、例えば、
図10に示すように、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)の顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロスまたは短期ネットのDVP型決済を行う機能を有して構成されている。
【0056】
ブラックリスト登録受付用スマートコントラクト20
ブラックリスト登録受付用スマートコントラクト20は、例えば、
図11に示すように、約定先探索用スマートコントラクト17による、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)の探索における、取引を所望しない金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)のブラックリストへの登録を受け付ける機能を有して構成されている。
【0057】
このように構成された本実施形態の発行済ST類の取引システムを用いた、基本的な処理の流れを
図12~
図15を用いて説明する。なお、
図15は
図1の発行済ST類の取引システムを用いた、基本的な処理の流れの全体を概略的に示すブロック図である。
【0058】
(S1)ST類の銘柄の取引リストへの登録(図12)
銘柄登録用スマートコントラクト11が、ST類の生成(発行)時に生成(発行)したST類の銘柄を取引リストに登録する。
【0059】
(S2)独自レートの作成(図12)
独自レート作成用スマートコントラクト12は、銘柄登録用スマートコントラクト11により取引リストに登録されている銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関40(1)に対し顧客50(1,x)(但し、xは正の整数)からの注文があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における共通の顧客のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、例えば、最良注文(最も安い売り注文、最も高い買い注文)となる当該銘柄についてのリーブオーダーの価格に各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々自己のリスク分を手数料として上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)して、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する。
【0060】
(S3)非公開情報の共有(図12)
非公開共有情報保管用スマートコントラクト13は、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)が把握しない非公開方式の共有情報として保管する。
【0061】
(S4)基準レートの生成(図13)
基準レート生成用スマートコントラクト14は、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13を介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する。
【0062】
(S5)基準レートの提示(図13)
基準レート提示用スマートコントラクト15は、基準レート生成用スマートコントラクト14が生成した所定銘柄についてのレートを非公開情報として保管するとともに、顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、基準レート生成用スマートコントラクト14が生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)に提示する。
【0063】
(S6)約定(図13)
約定用スマートコントラクト16は、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における所定銘柄についての自社レートに対当する顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定する。
【0064】
(S7)約定先の探索(図14)
約定先探索用スマートコントラクト17は、約定用スマートコントラクト16が、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)における所定銘柄についての自社レートで顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13が各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)を探索する。
なお、約定先探索用スマートコントラクト17は、ブラックリスト登録受付用スマートコントラクト20による取引を所望しない金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)のブラックリストへの登録の受け付けにより、ブラックリストに登録された金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)を探索対象から除外して、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m’)(但し、m’は1以上n以下、かつ、k及びL以外の整数)を探索する。
【0065】
(S8)探索先レートでの約定(図14)
約定制御用スマートコントラクト18は、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)の顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、約定先探索用スマートコントラクト17の探索した他のマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定用スマートコントラクト16に当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる。
【0066】
(S9)決済(図14)
決済用スマートコントラクト19は、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)の顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロスまたは短期ネットのDVP型決済を行う。
【0067】
(S10)その他の処理:ブラックリストへの登録
ブラックリスト登録受付用スマートコントラクト20は、約定先探索用スマートコントラクト17による、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)の探索における、取引を所望しない金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)のブラックリストへの登録を受け付ける。
【0068】
処理の具体例
ここで、独自レート作成用スマートコントラクト12による各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートの作成、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13により各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)が把握しない非公開方式で共有する取引情報、基準レート生成用スマートコントラクト14が算出する基準となる妥当性のある当該銘柄についてのレート、約定先探索用スマートコントラクト17による約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)の探索についての具体例を、表を用いて説明する。
なお、説明の便宜上、マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)は4つ、取引対象となる銘柄は1つとする。また、レートの算出に際しては、顧客の信用度等は考慮しないこととするとともに、リスク分の手数料は整数で示すこととする。さらに、注文価格やレートの単位は省略する。
【0069】
前提として、マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)の夫々に対する、顧客からの、売りおよび買いの注文(リーブオーダー)が、表1に示すものであったとする。
【表1】
マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)は、これらのマーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)に夫々固有の取引情報についてのみ認識している。
表1の例では、顧客からのST類の売りおよび買いの注文(リーブオーダー)が、マーケットメイクを行う金融機関40(1)、40(3)、40(4)に対してあり、マーケットメイクを行う金融機関40(2)にはない。
マーケットメイクを行う金融機関40(1)に対しては、注文価格98、注文数量1の売り注文があり、マーケットメイクを行う金融機関40(1)内において、約定価格98で約定が成立している。また、注文価格106、注文数量1の買い注文があるが、未約定となっている。
マーケットメイクを行う金融機関40(3)に対しては、注文価格95、注文数量1の売り注文があり、未約定となっている。また、注文価格104、注文数量1の買い注文があり、マーケットメイクを行う金融機関40(3)内において、約定価格104で約定が成立している。
マーケットメイクを行う金融機関40(4)に対しては、注文価格99、注文数量1の売り注文があり、マーケットメイクを行う金融機関40(4)内において、約定価格99で約定が成立している。また、注文価格105、注文数量1の買い注文があるが、未約定となっている。
【0070】
ここで、独自レート作成用スマートコントラクト12は、一つのマーケットメイクを行う金融機関40(1)、40(3)または40(4)に対し顧客50(1,1)、50(3,1)または50(4,1)からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)における共通の顧客のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、最良注文(最も安い売り注文、最も高い買い注文)となる当該銘柄についてのリーブオーダーの価格に各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)における夫々自己のリスク分を手数料として上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)して、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する。非公開共有情報保管用スマートコントラクト13は、表2に示すように、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関が把握しない非公開方式の共有情報として保管する。
【0071】
【表2】
本例では、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーにおいて、約定となっているのは、注文価格98の売り注文、注文価格99の売り注文、注文価格104の買い注文であることから、最良注文は、注文価格98の売り注文と、注文価格104の買い注文となる。
なお、本例では、マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)の夫々における、上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)すべき自己のリスク分としての手数料を、夫々4、1、2、3とする。
マーケットメイクを行う金融機関40(1)の独自レートは、
・売りレート:104+4=108
・買いレート:98-4=94
マーケットメイクを行う金融機関40(2)の独自レートは、
・売りレート:104+1=105
・買いレート:98-1=97
マーケットメイクを行う金融機関40(3)の独自レートは、
・売りレート:104+2=106
・買いレート:98-2=96
マーケットメイクを行う金融機関40(4)の独自レートは、
・売りレート:104+3=107
・買いレート:98-3=95
となる。
ここで、顧客にとって最も有利となるレートが妥当性のある基準レートとなる。本例では、基準レートは、表3に示すように、売りレート105、買いレート97となる。
基準レート提示用スマートコントラクト15は、基準レート生成用スマートコントラクト14が生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、基準レートを当該顧客に提示する。提示を受けた顧客は、基準レートを参考にして、リーブオーダーを行うようになる。
【0072】
【0073】
約定先探索用スマートコントラクト17は、約定用スマートコントラクト16が、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)における所定銘柄についての自社レートで顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13が各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)における夫々独自の当該銘柄についての(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(4)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40を探索する。
本例では、表1、表2に示すように、マーケットメイクを行う金融機関40(1)に対する顧客からの注文価格106の買い注文、マーケットメイクを行う金融機関40(3)に対する顧客からの注文価格95の売り注文、マーケットメイクを行う金融機関40(4)に対する顧客からの注文価格105の買い注文、が未約定となっている。
また、表2に示すように、独自レート作成用スマートコントラクト12が算出した独自レートは、
マーケットメイクを行う金融機関40(1)の独自レートは、
・売りレート:104+4=108
・買いレート:98-4=94
マーケットメイクを行う金融機関40(2)の独自レートは、
・売りレート:104+1=105
・買いレート:98-1=97
マーケットメイクを行う金融機関40(3)の独自レートは、
・売りレート:104+2=106
・買いレート:98-2=96
マーケットメイクを行う金融機関40(4)の独自レートは、
・売りレート:104+3=107
・買いレート:98-3=95
である。
そこで、約定先探索用スマートコントラクト17が探索した約定可能な相手先は、表4に示すように、
・金融機関40(1)に対する顧客からの注文価格106の買い注文の相手先:金融機関40(2)、金融機関40(3)
・金融機関40(3)に対する顧客からの注文価格95の売り注文の相手先:金融機関40(2)、金融機関40(3)、金融機関40(4)
・金融機関40(4)に対する顧客からの注文価格105の買い注文の相手先:金融機関40(2)
となる。
【0074】
【0075】
約定制御用スマートコントラクト18は、所定のマーケットメイクを行う金融機関の顧客の所定銘柄についてのリーブオーダーが、約定先探索用スマートコントラクト17の探索した他のマーケットメイクを行う金融機関における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定用スマートコントラクト16に当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる。
なお、表3の例では、金融機関40(1)に対する顧客からの注文価格106の買い注文の相手先が2つ(金融機関40(2)と、金融機関40(3))、金融機関40(3)に対する顧客からの注文価格95の売り注文の相手先が3つ(金融機関40(2)と、金融機関40(3)と、金融機関40(4))、金融機関40(4)に対する顧客からの注文価格105の買い注文の相手先が1つ(金融機関40(2))存在するが、対当する相手先が複数存在する場合は、約定用スマートコントラクト16による処理を受け付ける時間の早いいずれか一方を相手先として約定する。
【0076】
本実施形態の効果
本実施形態の発行済ST類の取引システムによれば、銘柄登録用スマートコントラクト11により取引リストに登録されている銘柄について、一つのマーケットメイクを行う金融機関40(1)に対し顧客50(1,x)(但し、xは正の整数)からの注文(リーブオーダー)があったときに、当該リーブオーダーを、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における共通のリーブオーダーとして取り扱い、各マーケットメイクを行う金融機関において共通に取り扱う、全ての当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)に基づき、例えば、最良注文(最も安い売り注文、最も高い買い注文)となる当該銘柄についてのリーブオーダーの価格に各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々自己のリスク分を手数料として上乗せ(売り注文に対しては減算、買い注文に対しては加算)して、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを作成する機能を有する独自レート作成用スマートコントラクト12と、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)が把握しない非公開方式の共有情報として保管する機能を有する非公開共有情報保管用スマートコントラクト13と、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13を介して共有された、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における所定銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートを用いて当該銘柄についての基準レートを生成する機能を有する基準レート生成用スマートコントラクト14と、基準レート生成用スマートコントラクト14が生成した所定銘柄についての基準レートを非公開情報として保管するとともに、顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、基準レート生成用スマートコントラクト14が生成した当該銘柄についての基準レートを当該顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)に提示する機能を有する基準レート提示用スマートコントラクト15と、を有した構成にしたので、流動性が低い小規模で直接金融的な個別不動産などをみなし有価証券としてデジタル化したタイプのST類であっても、取引価格の設定において、ミスプライス(適正価格からの乖離)が出難くなり、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことができる。また、各顧客が取引を所望する銘柄のレートを問い合わせたときにのみ提示することで、顧客は妥当な取引価格を得ることができる。また、取引市場に回送しないので、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率を下げずに済み、また、取引市場に上場するためのコストが不要で、顧客の取引に要するコストも低減できる。
【0077】
また、本実施形態の発行済ST類の取引システムによれば、約定用スマートコントラクト16が、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)における所定銘柄についての自社レートで顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の当該銘柄についてのリーブオーダーを約定することができない場合、非公開共有情報保管用スマートコントラクト13が各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)が把握しない非公開方式で共有する情報として保管する、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのリーブオーダーの状況(注文ブック(約定)状態)と、独自レート作成用スマートコントラクト12が作成した、各マーケットメイクを行う金融機関40(1)~40(n)(但し、nは2以上の整数)における夫々独自の当該銘柄についてのレートと、を用いて、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)を探索する機能を有する約定先探索用スマートコントラクト17と、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)の顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、約定先探索用スマートコントラクト17の探索した他のマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についてのレートに対当する場合、約定用スマートコントラクト16に当該銘柄についてのリーブオーダーを約定させる機能を有する約定制御用スマートコントラクト18と、を有した構成にしたので、約定率を上げることができる。
【0078】
また、本実施形態の発行済ST類の取引システムによれば、所定のマーケットメイクを行う金融機関40(L)(但し、Lは1以上n以下の整数)の顧客50(L,x)(但し、Lは1以上n以下の整数、xは正の整数)の所定銘柄についてのリーブオーダーが、他のマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)における当該銘柄についての自社レートで約定した場合、デジタル通貨と該当ST類との即時グロスまたは短期ネットのDVP型決済を行う機能を有する決済用スマートコントラクト19を有した構成にしたので、リアルタイムにST類とデジタル通貨の取引が可能になり、顧客に対してデジタル資産を即時出庫することができ、流動性の低いST類について妥当性のある取引価格を導出し、リアルタイムに決済することができる。
【0079】
また、本実施形態の発行済ST類の取引システムによれば、約定先探索用スマートコントラクト17による、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m)(但し、mは1以上n以下、かつ、L以外の整数)の探索における、取引を所望しない金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)のブラックリストへの登録を受け付ける機能を有するブラックリスト登録受付用スマートコントラクト20をさらに有し、約定先探索用スマートコントラクト17は、ブラックリスト登録受付用スマートコントラクト20による取引を所望しない金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)のブラックリストへの登録の受け付けにより、ブラックリストに登録された金融機関40(k)(但し、kは1以上n以下の整数)を探索対象から除外して、約定可能な相手先となるマーケットメイクを行う金融機関40(m’)(但し、m’は1以上n以下、かつ、k及びL以外の整数)を探索する機能を有する構成にしたので、取引を所望しない相手との約定を回避することが可能となる。
また、リアルタイムにST類とデジタル通貨の取引が可能になる。即ち、顧客に対してデジタル資産を即時出庫することができ、流動性の低いST類について妥当性のある取引価格を導出し、リアルタイムに決済することが可能となる。
【0080】
このため、本実施形態によれば、各マーケットメイクを行う金融機関の収益率が下がることなく、約定価格のばらつきをなくして、流動性が低いST類の公正な取引を行うことの可能な発行済ST類の取引システムが得られる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0082】
例えば、本実施形態の発行済ST類の取引システムにおいては、流動性調整機能を備えた流動性調整用スマートコントラクト(図示省略)を有して構成してもよい。
流動性調整用スマートコントラクトは、各々のマーケットメイクを行う金融機関の非公開共有情報の中で、対当する銘柄は無いが、類似銘柄で対当し得る場合において、類似銘柄と対当させる銘柄の生成を行い、約定を誘導する。
例えば、電子債権型STなど、金利とリスク量の関係を調整できるST類があるものとする。このようなST類については、レンディング機能とCDS(Credit default swap:投資対象の破綻リスクに備えた保険機能を有する金融派生商品)を用いることで、類似銘柄における約定を実施する。
例として、マーケットメイクを行う金融機関40(1)において、A銘柄(リスク量3)の買い注文として、注文数量2、注文価格104(通常は買いレート101.5、売りレート105程度であり、注文価格104の買い注文に対当する売り注文が無いものとする)のリーブオーダーがあるものとする。また、マーケットメイクを行う金融機関40(3)において、B銘柄(リスク量2)の売り注文として、注文数量2、注文価格98(通常は買いレート97、売りレート100であり、注文価格98の売り注文に対当する買い注文が無いものとする)のリーブオーダーがあるものとする。
この場合、マーケットメイクを行う金融機関40(1)の約定先探索用スマートコントラクト17は、A銘柄についての注文数量2、注文価格104の売り注文が無いか非公開共有情報を探索する。
また、マーケットメイクを行う金融機関40(3)の約定先探索用スマートコントラクト17は、B銘柄についての注文数量2、注文価格98の買い注文が無いか非公開共有情報を探索する。
この状態では対当できないが、ここでは、例えば、マーケットメイクを行う金融機関40(4)では、CDS(B銘柄のデフォルトヘッジ)の手数料を数量1当たり1.5で設定できるものとする。その場合、A銘柄とB銘柄の価格差は6であるため、数量1当たり保険料(ヘッジ分)1.5を差し引いた4.5の利益が見込まれる。また、A銘柄をレンディングにより数量1当たり30日間2.0のコスト(30日以内でポジションを解消する想定)で調達できるものとする。
その場合、流動性調整用スマートコントラクトが、CDSとレンディングを用い、A銘柄をレンディングにより調達して注文価格104で売り、B銘柄を注文価格98で買う、というポジションを持つようにする。
流動性調整用スマートコントラクトによる流動性調整機能は、相関の高い銘柄間での売り買いペアを想定したものであり、24時間365日対応であることから、休日や夜間など流動性が拡散するときに用いる。
即ち、流動性が下がっているときにポジションを取り、昼など取引量が多く流動性が高いときに、ポジションを解消する。
【0083】
また、本実施形態の発行済ST類の取引システムにおいては、各マーケットメイクを行う金融機関のノードを仮想ノードとして同一クラウド内に設定し、夫々の金融機関における独自レートの生成、非公開共有情報の保管、基準レートの生成、顧客の当該銘柄についてのリーブオーダーの約定、約定先の探索等の処理を、分散されたネットワーク上のブロックではなく、共有メモリを用いて行うようにすると、処理が非常に高速化するので好ましい。
【0084】
また、本実施形態の発行済ST類の取引システムにおいては、価格情報について、各マーケットメイクを行う金融機関は、独自に作成したレートを非開示とし、顧客からの取引を所望する銘柄についてのレートの問い合わせを受け付けたときにのみ、当該銘柄についての基準レートを当該顧客に提示しているが、それとは別に、各マーケットメイクを行う金融機関が独自に作成したレートを不特定多数者に常時配信する機能を備え、問い合わせを受けたときにのみ、問い合わせをした顧客に対し基準レートを提示する機能と、独自に作成したレートを不特定多数者に常時配信する機能のいずれか一方を選択手段を用いて選択して用いることができるように構成してもよい。このようにすれば、小規模で直接金融的なST類を対象とした取引サービスの他に、既存の上場物などの有価証券をデジタル化したST類を対象とした取引サービスなど、多様なST類に応じて最適な取引サービスを簡単な選択操作で切り替えて提供することができる。
【0085】
また、本発明の発行済ST類の取引システムに用いる、DX(デジタルトランスフォーメーション)で考え得る新概念のST類については、上場証券から生成されるST類とは異なり、マイナーな特性を有するものが多いため、1対1の取引をベースとして、流動性情報を管理しながら価格発見を行うことができるようにすることが理想的であり、極論的には、1対1の取引において、証券会社などの金融機関が仲介することなく、個人が機械(システムなどの取引機能)を介して直接的に取引することが想定される。
そこで、本発明の発行済ST類の取引システムにおいては、流動性が弱いST類についての価格発見を行うための手段として、PTSのような流動性を集中させるのではなく、上述したようなマーケットメイク方式をベースとした非公開共有情報の基準価格を、問い合わせにより提示する機能を有するスマートコントラクトを備えた構成に加えて、例えば、マーケットメイクが出来ない銘柄にも自動対処できるように、類似銘柄の取引動向や、過去取引などの情報をベースとして、個人売買用の基準価格を算出し、算出した基準価格を個人の求めに応じて提示する価格発見機能を有するスマートコントラクトを備えるのが望ましい。
また、本発明の発行済ST類の取引システムにおいて、各々のマーケットメイクを行う金融機関は、マーケットメイクを行う金融機関としての機能を有するスマートコントラクトで構成されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の発行済ST類の取引システムは、例えば、小規模で直接金融的な発行済ST類を用いた取引サービスを提供することが求められる分野に有用である。
【符号の説明】
【0087】
11 銘柄登録用スマートコントラクト
12 独自レート作成用スマートコントラクト
13 非公開共有情報保管用スマートコントラクト
14 基準レート生成用スマートコントラクト
15 基準レート提示用スマートコントラクト
16 約定用スマートコントラクト
17 約定先探索用スマートコントラクト
18 約定制御用スマートコントラクト
19 決済用スマートコントラクト
20 ブラックリスト登録受付用スマートコントラクト
40(1)~40(n) マーケットメイクを行う金融機関
50(1,1)~50(n,x) 顧客