(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】無人搬送車および無人搬送車の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/244 20240101AFI20250130BHJP
G05D 1/243 20240101ALI20250130BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20250130BHJP
G05D 1/667 20240101ALI20250130BHJP
【FI】
G05D1/244
G05D1/243
G05D1/43
G05D1/667
(21)【出願番号】P 2024008118
(22)【出願日】2024-01-23
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】524030813
【氏名又は名称】美馬 一博
(73)【特許権者】
【識別番号】503231321
【氏名又は名称】鈴木製機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】美馬 一博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純一郎
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-165189(JP,A)
【文献】特開2018-34932(JP,A)
【文献】特開2017-47996(JP,A)
【文献】特開平9-185413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 ~ 1/87
B66F 3/00 ~ 11/04
B62B 3/00 ~ 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物の下に潜り込んで前記被搬送物を持ち上げてまたは牽引して搬送する無人搬送車であって、
前記無人搬送車の周辺を撮影する光学的読取装置と、
前記光学的読取装置にて撮影された画像から前記被搬送物に付されたマーカーを検出し、検出したマーカーを読み取るマーカー読取部と、
無人搬送車の移動を制御する移動制御部と、
を備え、
前記移動制御部は、前記マーカーの位置に基づいて、前記被搬送物の前にターゲットを設定し、前記ターゲットの位置に前記無人搬送車を移動させる制御を行い、
前記ターゲットの位置に到着したときに再度前記マーカーを読み取り、前記マーカーから読み取った情報に基づいて前記無人搬送車を前記被搬送物の下に移動させる制御を行う、無人搬送車。
【請求項2】
前記移動制御部は、前記ターゲットの位置に到着したときに再度前記マーカーを読み取り、前記マーカーの位置に基づいて、前記被搬送物の下に第2のターゲットを設定し、前記第2のターゲットの位置に前記無人搬送車を移動させる制御を行う、請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記マーカーは、前記被搬送物に対して前記マーカーが付された位置を示すデータを含み、
前記移動制御部は、前記画像から検出されたマーカーの位置と、前記マーカーが貼られた位置を示すデータとに基づいて、前記被搬送物の位置および向きを特定し、前記被搬送物の前に前記ターゲットを設定する、請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記マーカーは、前記被搬送物の寸法を示すデータを含み、
前記移動制御部は、前記被搬送物の寸法を示すデータに基づいて、前記被搬送物の下に前記第2のターゲットを設定する、請求項2に記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記マーカーは、前記被搬送物の重量を示すデータを含み、
前記移動制御部は、前記重量を示すデータに基づいて最高速度を設定する請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項6】
前記無人搬送車の前端および後端に、上方にある物体を検知する物体検知センサを備え、
前記移動制御部が前記無人搬送車を前記被搬送物の下に移動させるときに、前記物体検知センサが物体を検知しないことを確認した上で前記無人搬送車を停止させる、請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項7】
前記マーカーは、前記マーカーを特定するマーカーIDのデータを含み、
前記マーカー読取部は、前記マーカーからマーカーIDを読み取り、読み取ったマーカーIDを記憶部に記憶させる、請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項8】
前記マーカーは、前記マーカーが付された前記被搬送物の目的地のデータを含み、
前記移動制御部は、前記目的地のデータに基づいて、前記被搬送物を所定の場所に搬送する、請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項9】
前記無人搬送車は、全輪が駆動可能であると共に操舵可能である、請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項10】
被搬送物の下に潜り込んで前記被搬送物を持ち上げてまたは牽引して搬送する無人搬送車の制御方法であって、
光学的読取装置によって前記無人搬送車の周辺を撮影するステップと、
前記光学的読取装置にて撮影された画像から前記被搬送物に付されたマーカーを検出し、検出したマーカーを読み取るステップと、
前記マーカーの位置に基づいて、前記被搬送物の前にターゲットを設定し、前記ターゲットの位置に前記無人搬送車を移動させるステップと、
前記ターゲットの位置に到着したときに再度前記マーカーを読み取り、前記マーカーから読み取った情報に基づいて前記無人搬送車を前記被搬送物の下に移動させるステップと、
を備える無人搬送車の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物に下に潜り込んで被搬送物を持ち上げてまたは牽引して搬送する無人搬送車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カゴ台車などの被搬送物を搬送する無人搬送車が知られている。特許文献1は、ロールボックスのかごと走行面との間に潜り込んでロールボックスを搬送する搬送車を開示している。特許文献2は、台車の下側に潜り込んでリフターバーを上昇させることによって台車を牽引可能に構成された無人搬送車を開示している。特許文献3は、ワゴン台車の下に潜り込んでリフトアップし、ワゴン台車を外部から指示された目的地まで搬送する無人車を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-34932
【文献】特開2017-47996
【文献】特開平9-185413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、被搬送物の下に潜り込んで被搬送物を搬送する無人搬送車を開示した文献はあるが、どのようにして無人搬送車を被搬送物の下に潜りこませるかについての具体的な制御は開示されていない。
【0005】
無人搬送車が走行するコースと被搬送物が置かれる場所が予め決められていれば、無人搬送車が予定されたコースを走行するだけで、被搬送物の下に無人搬送車を潜り込ませることができる。
【0006】
しかし、無人搬送車の走行するコースを予め決めてしまうのは、柔軟性に欠ける。また、倉庫等の実際の現場においては、被搬送物であるカゴ台車等は、いつも同じ位置に同じ向きで置かれることを期待することはできず、被搬送物がずれて置かれることもしばしばである。適宜の場所に置かれた被搬送物の下に無人搬送車を潜り込ませることは容易ではない。
【0007】
上記背景に鑑み、本発明は、被搬送物の下に適切に潜り込ませることができる無人搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無人搬送車は、被搬送物の下に潜り込んで前記被搬送物を持ち上げてまたは牽引して搬送する無人搬送車であって、前記無人搬送車の周辺を撮影する光学的読取装置と、前記光学的読取装置にて撮影された画像から前記被搬送物に付されたマーカーを検出し、検出したマーカーを読み取るマーカー読取部と、無人搬送車の移動を制御する移動制御部とを備え、前記移動制御部は、前記マーカーの位置に基づいて、前記被搬送物の前にターゲットを設定し、前記ターゲットの位置に前記無人搬送車を移動させる制御を行い、前記ターゲットの位置に到着したときに再度前記マーカーを読み取り、前記マーカーから読み取った情報に基づいて前記無人搬送車を前記被搬送物の下に移動させる制御を行う構成を有する。
【0009】
このようにマーカーから読み取った情報に基づいて被搬送物の前に設定したターゲットの位置に無人搬送車を移動させ、ターゲットの位置に移動したところで、再度マーカーを読み取って無人搬送車の移動を制御することにより、計算負荷を抑えつつ、無人搬送車を被搬送物の下に潜り込ませることができる。
【0010】
本発明の無人搬送車において、前記移動制御部は、前記ターゲットの位置に到着したときに再度前記マーカーを読み取り、前記マーカーの位置に基づいて、前記被搬送物の下に第2のターゲットを設定し、前記第2のターゲットの位置に前記無人搬送車を移動させる制御を行ってもよい。
【0011】
本発明の無人搬送車において、前記マーカーは、前記被搬送物に対して前記マーカーが付された位置を示すデータを含み、前記移動制御部は、前記画像から検出されたマーカーの位置と、前記マーカーが貼られた位置を示すデータとに基づいて、前記被搬送物の位置および向きを特定し、前記被搬送物の前に前記ターゲットを設定してもよい。
【0012】
この構成により、被搬送物に対してマーカーが付された位置にかかわらず、被搬送物の前の適切な位置にターゲットを設定できる。
【0013】
本発明の無人搬送車において、前記マーカーは、前記被搬送物の寸法を示すデータを含み、前記移動制御部は、前記被搬送物の寸法を示すデータに基づいて、被搬送物の下に前記第2のターゲットを設定してもよい。
【0014】
この構成により、被搬送物の寸法に基づいて、被搬送物の下の適切な位置に第2のターゲットを設定できる。
【0015】
本発明の無人搬送車において、前記マーカーは、前記被搬送物の重量を示すデータを含み、前記移動制御部は、前記重量を示すデータに基づいて最高速度を設定してもよい。この構成により、被搬送物の重量に応じた安全速度で搬送を行うことができる。
【0016】
本発明の無人搬送車は、前記無人搬送車の前端および後端に、上方にある物体を検知する物体検知センサを備え、前記移動制御部が前記無人搬送車を前記被搬送物の下に移動させるときに、前記物体検知センサが物体を検知しないことを確認した上で前記無人搬送車を停止させてもよい。
【0017】
無人搬送車の前後が被搬送物からはみ出す状態とすることにより、被搬送物を搬送しやすい位置に無人搬送車を停止させることができる。
【0018】
本発明の無人搬送車において、前記マーカーは、前記マーカーを特定するマーカーIDのデータを含み、前記マーカー読取部は、前記マーカーからマーカーIDを読み取り、読み取ったマーカーIDを記憶部に記憶させてもよい。
【0019】
このように無人搬送車が搬送した被搬送物に付されたマーカーIDを記録することで、無人搬送車が搬送した被搬送物を把握できる。
【0020】
本発明の無人搬送車において、前記マーカーは、前記マーカーが付された前記被搬送物の目的地のデータを含み、前記移動制御部は、前記目的地のデータに基づいて、前記被搬送物を所定の場所に搬送してもよい。
【0021】
このように被搬送物を目的地に応じた場所に搬送することにより、例えば、目的地へ向けたトラック等に積み込むことが容易になる。
【0022】
本発明の無人搬送車は、全輪が駆動可能であると共に操舵可能であってもよい。この構成により、ターゲットへの到達位置に誤差があっても、誤差を修正しつつ無人搬送車を第2のターゲットへ移動させることができる。
【0023】
本発明の無人搬送車の制御方法は、被搬送物の下に潜り込んで前記被搬送物を持ち上げてまたは牽引して搬送する無人搬送車の制御方法であって、光学的読取装置によって前記無人搬送車の周辺を撮影するステップと、前記光学的読取装置にて撮影された画像から前記被搬送物に付されたマーカーを検出し、検出したマーカーを読み取るステップと、前記マーカーの位置に基づいて、前記被搬送物の前にターゲットを設定し、前記ターゲットの位置に前記無人搬送車を移動させるステップと、前記ターゲットの位置に到着したときに再度前記マーカーを読み取り、前記マーカーから読み取った情報に基づいて前記無人搬送車を前記被搬送物の下に移動させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、計算負荷を抑えつつ、無人搬送車を被搬送物の下に潜り込ませるように移動制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)AMRの構成を示す図である。(b)ワークWを持ち上げる状態のAMRを示す図である。
【
図2】AMRによって搬送されるカゴ台車の例を示す図である。
【
図3】ARマーカーがバックパネルに付けられたカゴ台車の例を示す図である。
【
図4】AMRの機能を説明するためのブロック図である。
【
図5】AMRの移動制御について説明するための図である。
【
図6】AMRの移動制御について説明するための図である。
【
図7】AMRの移動制御について説明するための図である。
【
図8】AMRの移動制御について説明するための図である。
【
図9】AMRの移動制御の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施の形態の無人搬送車について図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも好ましい態様の一例を示したものであり、特許請求の範囲に記載された発明を限定する意図ではない。
【0027】
本実施の形態では、無人搬送車としてAMR(autonomous mobile robot)を例として用いるが、本発明の無人搬送車はAMRに限定されるものではない。また、ワークの例としてカゴ台車を取り上げるが、本実施の形態のAMRはカゴ台車に限らず、他の貨物を搬送することが可能である。
【0028】
図1(a)及び
図1(b)は、本実施の形態のAMR1の構成を示す図である。本実施の形態のAMR1は、カゴ台車20の下に潜り込んでカゴ台車20を持ち上げて搬送する。本実施の形態では、AMR1は任意の場所に置かれているカゴ台車20の下に適切に潜り込む。
【0029】
図2は、AMR1によって搬送されるカゴ台車20の例を示す図である。カゴ台車20は、荷物を載置する底板21とバックパネル22と2枚のサイドパネル23とを有している。カゴ台車20はキャスター24を有しており、底板21は床面から持ち上げられている。AMR1は底板21と床面との間に潜り込んで、カゴ台車20を持ち上げて搬送する。
【0030】
カゴ台車20の前面には2枚のサイドパネル23に架け渡された安全バー25を備えている。カゴ台車20は
図2において右側のサイドパネル23上に名板26が付されている。安全バー25の中央にARマーカーMが付けられている。ARマーカーMは周囲が黒い枠線で囲まれているため、容易に検出することが可能である。マーカーはARマーカーに限定されるものではなく、QRコード(登録商標)等の他のマーカーでもよい。
【0031】
本実施の形態のAMR1は、カメラ31で撮影した周辺の画像からARマーカーMを検出し、ARマーカーMの位置の情報に基づいて、AMR1がカゴ台車20の下に潜り込むように移動制御する。
【0032】
ARマーカーMには、種々の情報がエンコードされていてもよい。例えば、ARマーカーMを特定するIDのデータ、カゴ台車20においてARマーカーMが付される位置のデータ、カゴ台車20の寸法のデータ等である。
【0033】
ARマーカーMを特定するIDのデータがエンコードされている場合には、AMR1はどのカゴ台車20を搬送したかを管理することが可能になる。ARマーカーMの位置のデータは、ARマーカーMが付される位置がカゴ台車20によって異なる場合に有効である。例えば、
図3に示すようにARマーカーMがバックパネル22に付けられる例を示す図である。なお、ARマーカーMを取り付ける際には、カゴ台車20の外側に向けて付けられるので、
図3ではARマーカーMの背面が見えている。
図3は、マーカーMの取付位置を示したものである。
【0034】
ARマーカーMをカゴ台車20のバックパネル22に付けた場合には、カゴ台車20の前面中央から見たARマーカーMの相対位置を示すデータをエンコードしておく。これにより、AMR1はカゴ台車20の前面中央がどこかを把握し、カゴ台車20の下に適切に移動することができる。また、カゴ台車20の寸法のデータがエンコードされていると、カゴ台車20の奥行きが分かるため、AMR1をカゴ台車20の下に潜り込ませるときに、どの程度前進すればよいのかを把握できる。
【0035】
図1(a)及び
図1(b)に戻ってAMR1の構成について説明する。
図1(a)は、AMR1の構成を示す図である。
図1(b)はカゴ台車20を持ち上げる状態のAMR1を示す図である。AMR1は、前後に長い略直方体の本体11を有している。
図1(a)において左側を前、右側を後ろとして説明する。本実施の形態では、被搬送物を持ち上げて搬送するAMR1を例として説明するが、本発明は、被搬送物を牽引するタイプのAMR1にも適用できる。
【0036】
図1(b)に示すように、AMR1は、上面に、前後方向に延びる2本のバー12を備えている。
図1(a)では2本のバー12が下がった状態を示し、
図1(b)では2本のバー12が上がった状態を示している。なお、
図1では、カゴ台車20を持ち上げる2本のバー12を有するAMR1を例としているが、カゴ台車20を持ち上げる構成は2本のバー12に限定されることはなく、例えば、AMR1の上面に上下に移動可能な1枚のプレートを設けることとしてもよい。
【0037】
AMR1はカゴ台車20の下に潜り込んで、
図1(b)に示すようにバー12を上に上げることで、カゴ台車20を床面から持ち上げる。AMR1はカゴ台車20を持ち上げた状態で搬送する。AMR1が持ち上げることができるカゴ台車20の重量は、一例として300~500Kgである。
【0038】
AMR1は前後方向の中央に左右2つの駆動輪13R,13Lを有しており(図では、右側の駆動輪13Rだけが見えている)、前方に2つ、後方に2つの自在キャスターを備えている。なお、自在キャスターの個数は限定されず、例えば、前方および後方に1つずつでもよい。また、AMR1は前方に無線LAN通信部14を備え、側面に光通信部15を備えている。無線LAN通信部14および光通信部15は通信を行う機能を有し、例えば、AMR1を上下階の間で搬送する垂直搬送機と通信を行うことができる。
【0039】
AMR1の底面中央には、ワイヤレス充電のための受電ヘッドを有している。受電ヘッドをワイヤレス充電の給電部と近接して対向させることで、AMR1の充電を行うことができる。
【0040】
図4は、AMR1の機能を説明するためのブロック図である。
図4では、AMR1をカゴ台車20の下に潜り込ませる制御に関わる機能について記載しているが、AMR1は、
図4に示す以外の機能を有している。
【0041】
AMR1は駆動系42のハードウェアとして、左駆動輪13L、右駆動輪13Rと、左車輪モータ43L、右車輪モータ43Rを備えている。左右の駆動輪13L,13Rの回転速度を変えることにより、AMR1は左右に曲がったり、旋回することができる。
【0042】
AMR1は、カメラ31と光電センサ32と車輪速度センサ33を含むセンサ類30を備えている。カメラ31は、AMR1の周辺を撮影する機能を有する。本実施の形態では光学的読取装置の一例としてカメラ31を取り上げているが、AMR1はカメラ以外の光学的読取装置(例えばLiDAR等)を備えてもよい。光電センサ32は、AMR1の前端および後端に設けられ、上方にある物体を検知する機能を有する。車輪速度センサ33は、左右の駆動輪13L,13Rの回転数から車輪の速度を検出する機能を有する。なお、本実施の形態では、AMR1の上方にある物体を検知するために光電センサ32を用いる例を説明したが、物体検知センサとしてレーザーセンサ、超音波センサ等を用いてもよい。
【0043】
AMR1はカメラ31で撮影して得られた画像を処理する画像処理部34と、AMR1の移動を制御する移動制御部37とを有している。画像処理部34と移動制御部37は、画像処理プログラム、移動制御プログラムを読み出してCPUで実行することにより実現される。画像処理部34と移動制御部37は、ハードウェアとしては、1つのCPUであってもよいし、各々の処理を行うCPUを備えてもよい。
【0044】
画像処理部34は、マーカー検出部35とマーカー読取部36とを有している。マーカー検出部35は、カメラ画像の中からARマーカーMを検出する機能を有する。また、マーカー検出部35は、画像中に映るマーカーの位置、向き及び大きさから、ARマーカーMに対するカメラ31の位置と向きを解析する機能を有する。ARマーカーMに対するカメラ31の位置と向きが分かることにより、ARマーカーMに対するAMR1の位置と向きを特定することができる。マーカー読取部36は、ARマーカーMにエンコードされたデータを読み取る機能を有している。
【0045】
移動制御部37は、ターゲット設定部38と、経路計算部39と、移動量推定部40と、制御信号生成部41とを有している。
【0046】
ターゲット設定部38は、マーカー検出部35にて検出したARマーカーMの位置に基づいて第1のターゲットと第2のターゲットを設定する機能を有する。第1のターゲットはAMR1をカゴ台車20の前に案内するためのターゲットであり、カゴ台車20の前に設定される。第2のターゲットはAMR1をカゴ台車20の下に潜り込ませるためのターゲットであり、カゴ台車20の下に設定される。
【0047】
ここで、ARマーカーMが
図2に示すように、カゴ台車20の安全バー25の中央に付されている場合を例として具体的に説明する。ターゲット設定部38は、ARマーカーMの位置に基づいて、ARマーカーMの前方1mの位置に第1のターゲットを設定する。また、ターゲット設定部38は、ARマーカーMの奥0.5mの位置に第2のターゲットを設定する。
【0048】
図5~
図8を用いて、第1のターゲット及び第2のターゲットを利用したAMR1の移動制御について説明する。
図5~
図8は、カゴ台車20とAMR1との位置関係を上から見た図である。カゴ台車20の前面には、ARマーカーMが付されている。
【0049】
図5に示すように、最初、カゴ台車20とAMR1は任意の位置に置かれている。AMR1は周囲の映像からARマーカーMを検出し、ARマーカーMの前方1mの位置に第1のターゲットT1を設定する。続いて、AMR1は、
図6に示すように、第1のターゲットT1の位置に移動する。AMR1は、その中心が第1のターゲットT1に到達したところで停止する。次に、AMR1は、周辺の映像からARマーカーMを検出し、ARマーカーMの奥1mの位置に第2のターゲットT2を設定する。
【0050】
AMR1は、
図7に示すように第2のターゲットT2の方向を向くように方向を回転し、
図8に示すように、第2のターゲットT2の位置に移動する。AMR1は、その中心が第2のターゲットT2に到達したところで停止する。以上の移動制御により、AMR1はカゴ台車20の下に潜り込むことができる。
【0051】
経路計算部39は、第1のターゲット、第2のターゲットを目的地として、AMR1の現在位置から目的地に至る経路を計算する機能を有する。一例として、
図6及び
図8に示すように、第1のターゲットT1、第2のターゲットT2に向けて移動する直線的な経路を計算する。なお、途中に障害物がある場合には、経路計算部39は、障害物を回避するような経路を計算してもよい。
図6では、AMR1が第1のターゲットに到着したときに、AMR1がカゴ台車20の方向を向いていないが、AMR1が第1のターゲットに到着したときにAMR1がカゴ台車20と対向する状態(すなわち
図7に示す状態)となるように、AMR1の向きを変えながら進む経路を計算することとしてもよい。
【0052】
移動量推定部40は、AMR1が移動する際に、どの方向にどれだけ移動したかを推定する機能を有する。移動量推定部40は、車輪速度センサ33で取得した左右の車輪速度に基づいて、AMR1の移動方向ならびに移動量を計算する。これにより、AMR1は自己位置を推定することができ、移動中にARマーカーMの位置を求めることなく、計算された経路にしたがって移動することが可能になる。
【0053】
制御信号生成部41は、AMR1を経路にしたがって移動させるための左駆動輪13L、右駆動輪13Rの車輪速度を指示する制御信号を生成し、左車輪モータ43L、右車輪モータ43Rに対して送信する機能を有している。
【0054】
図9は、AMR1の移動制御の動作を示すフローチャートである。AMR1は、まずカメラ31によって周辺を撮影しカメラ画像を取得し、カメラ画像からARマーカーMを検出する(S10)。AMR1は、ARマーカーMの前方1mの位置に第1のターゲットを設定し(S11)、現在位置から第1のターゲットの位置に至る経路を計算する(S12)。AMR1は計算により得られた経路にしたがって移動制御を行う(S13)。AMR1が第1のターゲットに到着したか否かを判定する(S14)。具体的には、AMR1は、移動量推定部40により現在位置を推定し、現在位置が第1のターゲットに一致したか否かを判定する。AMR1が第1のターゲットに到着していない場合には(S14でNO)、到着するまで移動制御を継続する(S13)。
【0055】
AMR1が第1のターゲットに到着した場合(S14でYES)、AMR1はカメラ31によって周辺を撮影しカメラ画像を取得し、カメラ画像からARマーカーMを検出する(S15)。AMR1は、ARマーカーMの奥0.5mの位置に第2のターゲットを設定し(S16)、現在位置から第2のターゲットの位置に至る経路を計算する(S17)。AMR1は計算により得られた経路にしたがって移動制御を行う(S18)。AMR1が第2のターゲットに到着したか否かを判定する(S19)。具体的には、AMR1は、移動量推定部40により現在位置を推定し、現在位置が第2のターゲットに一致したか否かを判定する。
【0056】
なお、
図8に示すようにAMR1がカゴ台車20の前後からはみ出す大きさの場合には、AMR1の前端および後端に設けられた光電センサ32により上方にある物体がないことを確認することとしてもよい。これにより、AMR1がカゴ台車20の下に潜り込んだことを確実にすることができる。
【0057】
AMR1が第2のターゲットに到着していない場合には(S19でNO)、到着するまで移動制御を継続する(S18)。AMR1が第2のターゲットに到着した場合(S19でYES)、移動制御を終了する。
【0058】
本実施の形態のAMR1は、カゴ台車20に付されたARマーカーMに基づいて第1のターゲット、第2のターゲットを設定し、第1のターゲット、第2のターゲットに移動するようにカゴ台車20の移動制御を行うことにより、任意の位置に置かれたカゴ台車20の下にAMR1を潜り込ませることができる。第1のターゲット及び第2のターゲットを設定する際にARマーカーMの検出を行うが、AMR1が移動している最中は、移動量推定部40によってAMR1の位置を推定し移動制御を行う。このようにARマーカーMの検出と検出したARマーカーMに基づく自己位置推定の回数を減らし、計算処理の負荷を軽減することができる。本実施の形態のAMR1は、任意の位置に置かれたカゴ台車20に適切に潜り込ませることができるので、カゴ台車20をきちんと整列して置かなくても搬送することができる。例えば、カゴ台車20をステーション内に置いておくだけで、AMR1はカゴ台車20を搬送できる。
【0059】
以上、本実施の形態のAMR1およびその移動制御について説明したが、本発明の無人搬送車は上記した実施の形態に限定されるものではない。上記した実施の形態では、左右の車輪速度センサ33で取得した左右の車輪速度に基づいてAMR1の移動方向を計算する例をあげたが、AMR1はステアリングセンサを備え、ステアリング角に基づいて移動方向を検出することとしてもよい。
【0060】
上記した実施の形態では、前方中央にARマーカーMを付したカゴ台車20を例として説明したが、ARマーカーMを付す位置はカゴ台車20の前方中央に限定されない。例えば、
図3に示すようにARマーカーMがカゴ台車20のサイドパネル23に付してもよく、その場合には、ターゲット設定部38は、第1のターゲットを設定するARマーカーMが付された位置を考慮して第1のターゲットを設定する。
【0061】
ARマーカーMをカゴ台車20の中央ではない場所に付す場合には、ARマーカーMを付す位置が中央からどれだけシフトしているかのデータをARマーカーMにエンコードしておく。AMR1はマーカー読取部36にてARマーカーMにエンコードされたシフト量のデータを読み取り、読み取ったデータの分だけシフトした位置に第1のターゲットを設定する。例えば、「ARマーカーの取付位置はカゴ台車20の中央に対して50cm左側」というデータを読み取った場合には、ARマーカーMの前方1mで右側に50cmシフトした場所に第1のターゲットを設定する。
【0062】
また、上記した実施の形態では、第2のターゲットについてはARマーカーMから一定の距離だけ奥の位置に設定することとしたが、カゴ台車20の大きさに合わせて第2のターゲットを設定することとしてもよい。具体的には、ARマーカーMにカゴ台車20のサイズのデータとしてカゴ台車20の前後方向の奥行きデータをエンコードしておく。AMR1はマーカー読取部36にてARマーカーMにエンコードされた奥行データを読み取り、カゴ台車20の奥行き方向の中央に第2のターゲットを設定する。例えば、カゴ台車20の奥行きが120cmの場合、ARマーカーMの奥に60cmの位置に第2のターゲットを設定する。この構成により、様々な大きさのカゴ台車20に適用することができる。
【0063】
上記した実施の形態では、AMR1は第1のターゲットに到着した後に第2のターゲットを設定し、AMR1を第2のターゲットに向けて移動させる例について説明したが、AMR1をカゴ台車20の下に潜り込ませるための移動制御を行うに際し、第2のターゲットを設定することは任意である。第2のターゲットを設定することなく、マーカーMから読み取った情報に基づいてAMR1をカゴ台車20の下に移動させることとしてもよい。
【0064】
また、ARマーカーMには、上記実施の形態で説明したデータ以外のデータをエンコードしてもよい。例えば、物流の現場でカゴ台車20を用いる場合、カゴ台車20を搬送目的地に応じて集荷する場所が異なることがある。このような場合、ARマーカーMが付されるカゴ台車20の搬送目的地のデータを含める。AMR1は、ARマーカーMから搬送目的地のデータを読み出し、その目的地に応じてカゴ台車20を該当の集荷場所に運搬することが可能となる。
【0065】
ARマーカーMにカゴ台車20の積載重量に関する情報をエンコードしてもよい。これにより、AMR1がカゴ台車20を搬送する際に、積載重量に応じた速度で安全にカゴ台車20を搬送することができる。また、種類の異なる複数のAMRを有するシステムにおいては、カゴ台車20の積載重量に応じて、適切なAMRがカゴ台車20を搬送するように制御することができる。
【0066】
上記した実施の形態では、AMR1は左右2つの駆動輪13と、前方と後方に各2つの自在キャスターを備える例を挙げたが、AMR1は、全輪が駆動可能であると共に操舵可能であってもよい。これにより、AMR1は横方向への移動が可能なので、AMR1が潜り込んだ方向の横方向にカゴ台車20の搬送を開始することができる。また、障害物を避ける動きが可能となり、路面の凹凸の影響を受けにくくなる。
【0067】
上記した実施の形態では、ARマーカーMをカゴ台車20の前方に付ける例を挙げたが、ARマーカーMの位置は前方に限らず、側方でもよい。また、カゴ台車20に対してAMR1が潜り込むときの方向は前方からに限らず、側方や後方からであってもよい。ARマーカーMが付されている側から潜り込むようにすれば、ARマーカーMの前に第1のターゲットを設定すればよく、第1のターゲットを精度良く設定できる。
【符号の説明】
【0068】
1 AMR
11 本体
12 バー
13L,13R 車輪
14 無線LAN通信部
15 光通信部
20 カゴ台車
21 底板
22 バックパネル
23 サイドパネル
24 キャスター24
25 安全バー
26 名板
30 センサ類
31 カメラ
32 光電センサ
33 車輪速度センサ
34 画像処理部
35 マーカー検出部
36 マーカー読取部
37 移動制御部
38 ターゲット設定部
39 経路計算部
40 移動量推定部
41 制御信号生成部
42駆動系
43L,43R 車輪モータ
M ARマーカー
T1 第1のターゲット
T2 第2のターゲット
【要約】 (修正有)
【課題】カゴ台車の下に適切に潜り込ませることができる無人搬送車を提供する。
【解決手段】カゴ台車の下に潜り込んでカゴ台車を持ち上げてまたは牽引して搬送するAMR1である。AMR1の周辺を撮影するカメラ31と、カメラ31にて撮影されたカメラ31画像からカゴ台車に付されたARマーカーを検出し、検出したARマーカーを読み取るマーカー読取部36と、AMR1の移動を制御する移動制御部37とを備え、移動制御部37は、ARマーカーの位置に基づいて、カゴ台車の前に第1のターゲットを設定し、第1のターゲットの位置にAMR1を移動させる制御を行い、第1のターゲットの位置に到着したときに再度ARマーカーを読み取り、ARマーカーの位置に基づいて、カゴ台車の下に第2のターゲットを設定し、第2のターゲットの位置にAMR1を移動させる制御を行う構成を有する。
【選択図】
図4