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特許7627459シールドされた薄型フラットケーブル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】シールドされた薄型フラットケーブル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20250130BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20250130BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H01B7/08
H05K1/03 610H
H05K1/03 670
H05K1/03 630H
H05K9/00 L
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024103148
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2024070086の分割
【原出願日】2024-04-08
【審査請求日】2024-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518297514
【氏名又は名称】KMT技研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小松信夫
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-024901(JP,A)
【文献】実公昭51-048691(JP,Y1)
【文献】特開2008-024786(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H05K 1/03
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる導体、
前記導体を挟持し、前記導体から導通し表面に露出する導体電極以外の前記導体を包む絶縁体、及び
前記導体電極の周囲以外の前記絶縁体の表面に連続する金属膜を有するシールドされた薄型フラットケーブルであって、
前記導体及び前記導体電極に導通する内層電極が形成される第1のフィルム状の絶縁体面の前記導体、前記内層電極及び前記第1のフィルム状の絶縁体に貼り合わせる第2のフィルム状の絶縁体の融点が、前記第1のフィルム状の絶縁体の融点よりも10℃以上低く、前記第2のフィルム状の絶縁体の前記導体を挟持する面の反対面に、前記第1のフィルム状の絶縁体の融点と同等又は高い融点を有する第3のフィルム状の絶縁体を有することを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブル。
【請求項2】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、
前記第1のフィルム状の絶縁体及び前記第2のフィルム状の絶縁体は、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上含むことを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブル。
【請求項3】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、
前記第2のフィルム状の絶縁体は、カルボキシル基を有するモノマーとアルケンとの共重合体を含むことを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブル。
【請求項4】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、
前記第1のフィルム状の絶縁体は、カルボキシル基を有するモノマーとアルケンとの共重合体を含むことを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブル。
【請求項5】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、
前記第1のフィルム状の絶縁体がホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンの場合、前記第2のフィルム状の絶縁体はプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーポリプロピレンであることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブル。
【請求項6】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、
前記第1のフィルム状の絶縁体が高密度ポリエチレンの場合、前記第2のフィルム状の絶縁体は直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブル。
【請求項7】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、
前記導体を包む前記絶縁体の外表面に連続して金属膜を有するシールドされた薄型フラットケーブルが複数一体化して形成されることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブル。
【請求項8】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、
一体化された複数のシールドされた薄型フラットケーブル間の前記金属膜は連続していることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブル。
【請求項9】
第1のフィルム状の絶縁体の両面に金属膜を貼り合わせ、
前記第1のフィルム状の絶縁体の一方の面の前記金属膜に対して回路形成工程を行うことにより、導体、前記導体と連続する電極に導通する内層電極を形成し、
他方の面の前記金属膜に回路形成工程を行うことにより、ビアホール穴あけ用開口を形成し、
前記第1のフィルム状の絶縁体の一方の面に形成された前記導体、前記内層電極の上に、前記第1のフィルム状の絶縁体の融点よりも10℃以上低い融点を有する第2のフィルム状の絶縁体、及び前記第2のフィルム状の絶縁体の上に金属膜を貼り合わせ、
前記第1のフィルム状の絶縁体の他方の面の前記金属膜、前記第1のフィルム状の絶縁体及び前記第2のフィルム状の絶縁体を除去する、又は前記第1のフィルム状の絶縁体の他方の面の前記金属膜、前記第1のフィルム状の絶縁体、前記第2のフィルム状の絶縁体及び前記第2のフィルム状の絶縁体の上の前記金属膜を破断することにより、シールドされた薄型フラットケーブルの外周形状となるように、前記シールドされた薄型フラットケーブルの端面を形成し、
前記端面に金属膜を形成することを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項10】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、
前記第2のフィルム状の絶縁体の前記導体側の面の反対面に、前記第1のフィルム状の絶縁体の融点と同等又は高い融点を有する第3のフィルム状の絶縁体を設けることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項11】
請求項又は請求項10に記載のシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、
前記第1のフィルム状の絶縁体及び第2のフィルム状の絶縁体にアルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上含ませることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項12】
請求項又は請求項10に記載のシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、
前記第2のフィルム状の絶縁体にアルケンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体を含ませることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項13】
請求項又は請求項10に記載のシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、
前記第1のフィルム状の絶縁体にアルケンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体を含ませることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項14】
請求項又は請求項10に記載のシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、
前記第1のフィルム状の絶縁体がホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンの場合、前記第2のフィルム状の絶縁体はプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーポリプロピレンとすることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項15】
請求項又は請求項10に記載のシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、
前記第1のフィルム状の絶縁体が高密度ポリエチレンの場合、前記第2のフィルム状の絶縁体は直鎖状低密度ポリエチレンとすることを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項16】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、
前記第1のフィルム状の絶縁体の一方の面の前記金属膜に対して回路形成工程を行うことにより、導体及び前記導体と連続する電極に導通する内層電極を形成し、
他方の面の前記金属膜に回路形成工程を行うことにより、ビアホール穴あけ用開口を形成したシールドされた薄型フラットケーブルの中間製造物の前記第1のフィルム状の絶縁体の前記導体の側に、第2のフィルム状の絶縁体、金属膜、他の第2のフィルム状の絶縁体及び前記シールドされた薄型フラットケーブルの他の中間製造物の前記導体を前記他の第2のフィルム状の絶縁体の側として貼り合わせ、
前記シールドされた薄型フラットケーブル中間製造物の複数が上下に一体化されたシールドされた薄型フラットケーブルの上下の前記絶縁体にレーザー光を照射し、前記絶縁体をもう一方の前記シールドされた薄型フラットケーブルの前記金属膜まで除去し、前記絶縁体を除去することにより形成された溝の壁面に、前記金属膜を形成することを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項17】
請求項に記載のシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、
前記第1のフィルム状の絶縁体の一方の面の前記金属膜に対して回路形成工程を行うことにより、導体及び前記導体と連続する電極に導通する内層電極を形成し、
他方の面の前記金属膜に回路形成工程を行うことにより、ビアホール穴あけ用開口を形成したシールドされた薄型フラットケーブルの中間製造物の前記第1のフィルム状の絶縁体の前記導体の側に、第2のフィルム状の絶縁体、金属膜、他の第2のフィルム状の絶縁体及び前記シールドされた薄型フラットケーブルの他の中間製造物の前記導体を前記他の第2のフィルム状の絶縁体の側として貼り合わせ、
前記シールドされた薄型フラットケーブル中間製造物の複数が上下に一体化されたシールドされた薄型フラットケーブルの外形に沿って上下の前記金属膜及び前記絶縁体を破断し、形成された前記シールドされた薄型フラットケーブルの端面に、前記金属膜を形成することを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載のシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、
一体化された複数のシールドされた薄型フラットケーブル間の前記金属膜は連続して形成することを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は高密度実装、軽量の必要な機器の通信、配線に使用するシールドされた薄型フラットケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主にテレビ受像機や無線機とアンテナを接続する給電線、計測機器の接続用、音声信号や映像信号の伝送用、電子機器内部のRF回路及びその周辺に代表される高周波部分やRF回路等とも称される高速伝送線路部分の配線には、芯材がシールド層で覆われた同軸ケーブルが多用されている。
【0003】
一般的に同軸ケーブルの構造は、銅等でできた芯線をポリエチレン等の絶縁体で包み、さらに細い導線を編んだ網状の編組線と呼ばれるシールド層で包み、最後に外側を塩化ビニル等の保護被覆で覆っているものが多い。編組線が外からの電磁波を遮断するため、ノイズや減衰を抑えることができ、また、内部からの電磁波の漏れも少なくなる。伝送周波数範囲は幅広く、直流からミリ波までの伝送ができる(非特許文献1参照)。
【0004】
他方、モバイル機器等では、電子機器等で部品を高密度実装するフレキシブル配線板や、機器内部で狭隘な隙間などを通して、配線を行うフラットケーブルなどの熱可塑性樹脂からなる樹脂多層基板において、高周波信号を伝送する信号伝送線路としてトリプレート線路が設けられることがある。トリプレート線路は、配線板にライン導体とグランド導体とを設け、ライン導体よりも幅広なグランド導体を、ライン導体の両面に対向させた信号伝送線路である(特許文献1、特許文献2参照)。トリプレート線路は、両側にグランド導体が設けられているため、外部からのノイズを抑え、不要放射又は不要輻射と呼ばれる現象が生じにくいといった特徴がある。
【0005】
トリプレート線路が設けられていても、折り曲げが容易であり、また、折り曲げても伝送特性の劣化が生じ難い配線板を提供することが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
シールド効果を向上させるため、フラットケーブルに金属箔テープを貼り付けて、フラットケーブルを包み込む方法も行われている(特許文献4参照)。しかし、このようなフラットケーブルの短手方向は、絶縁体が外気に露出しており、その露出した絶縁体が水蒸気に曝露され、絶縁体の内部まで水蒸気が浸透し、絶縁体は吸湿する。吸湿された水が伝送特性に影響を及ぼす。吸湿率の高い絶縁体は水蒸気の影響を受けやすく、特に、高周波領域でその影響は顕著となり、伝送特性に変化をもたらす。
【0007】
長手方向のシールドの強化として、遮蔽テープを巻く方法(特許文献5、特許文献6参照)があるが、シールド層としてシールドフィルムを巻くものであり、シールドフィルムの重なり若しくは接触の部分で、隙間や接触抵抗が発生し、完全なシールドにはならない、また、シールドフィルムが重なり、フラットケーブルが厚くなる。さらに、接触する部分は粘着層や接着層といった有機物が外気に露出するため、絶縁体は吸湿する。
【0008】
上述のような吸湿により絶縁体は、電気特性が変化し、それによりケーブルの伝送特性が変化する。特に高周波や高速信号を扱う場合は、吸湿による伝送特性への影響が顕著である。
【0009】
長手方向に継ぎ目のないシールド膜を、銅メッキで形成するフラットケーブルも提案されている(特許文献7参照)。しかし、短手方向は、切断して個片化するため、その断面はメッキ処理がなく導体と絶縁体が露出する。すなわち短手方向の端面は湿度の影響を受け水蒸気が浸透する。そのため、この場合、伝送特性の安定が必要なフラットケーブルでは、絶縁体として吸湿性の高い樹脂を使用するには制限が必要となる。また、他の部品と接続するためには、改めて端子の形成が必要となる。
【0010】
最近の5G通信に代表される通信の高周波化や半導体の伝送速度の高速化により、伝送線路の低損失化が求められている。そして伝送損失の小さい絶縁体が求められる。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン又はポリプロピレンといった炭化水素系の汎用樹脂は伝送損失が小さく、加工性もよく、さらに安価であるため、高周波化や伝送速度の高速化には適した材料である。しかし、これらの材料は耐熱性や難燃性に欠けるため、耐熱性と難燃性が要求される携帯機器や車載機器への使用には難がある。
【0011】
絶縁体の樹脂が外部に露出した構造のフラットケーブルでは、はんだ付け作業のリフロー処理において温度が250℃程度に達するため、絶縁体を炭化水素系の汎用樹脂とすることは、加熱時にシールドする金属膜と絶縁体の剥離、フラットケーブル端面から樹脂の流れ出しといった不良が発生する。このため、現状では、高周波を高速伝送する用途では、耐熱性の高いフッ素樹脂、液晶ポリマー等の耐熱性の高い樹脂が、絶縁体として使用されている。
【0012】
さらに、導体に銅線を用いるフラットケーブルでは、長手方向に同じ形状しか形成できず、複数の導体を持つフラットケーブルの場合、平面性を保持したまま折れ曲がった形状を形成することが困難である。また、銅線の末端は絶縁体の樹脂から、導体である導線が露出してしまう。
【0013】
このような現象に対応するため、液晶ポリマーに代表される低伝送損失の樹脂を使用したトリプレート線路やマイクロストリップ線路を持つ薄型の配線板も提案されている(特許文献3参照。)。この配線板はフレキシブル配線板と同様の回路形成ができるため、複数の信号線を一つの配線板に形成できるため、今後のモバイル機器への貢献が期待されている。
【0014】
液晶ポリマーに代表される低伝送損失の樹脂を使用したトリプレート線路やマイクロストリップ線路を持つ薄型の配線板は、同軸ケーブルと比較すると、シールドが完全でなく、ビアで上下のグランドを接続するためグランド安定にも限界があり、更なる高周波化、高速化に向けては、低伝送損失やEMIシールド性に懸念がある。
【0015】
液晶ポリマーに代表される低伝送損失材の樹脂も外気からの影響があるため、例えば、低誘電樹脂であるポリイミドは優れた伝送特性を有しているが、吸湿率が高く、伝送特性が湿度に影響されるため、現状のRF回路への使用には向かない。つまり、トリプレート線路やマイクロストリップ線路を持つ薄型の配線板では、湿度の影響が少ない樹脂の選択が必要で、使用できる樹脂に大きな制限がある。今後、高周波領域の使用が進む場合、更なる伝送特性の安定化が求められるため、外気からの水蒸気の影響を極小化する必要がある。
【0016】
ポリイミドや空気を含むような樹脂は、空気中の水蒸気の浸透により吸湿するため、電気特性が大きく変化する。そのため、現状のFFC(Flat Flexible Cable)では使用が難しく、もっぱらフッ素樹脂であるPTFEもしくは液晶ポリマーが使用されている。しかし、これらの樹脂は高価であり、高温での加工が必要で、接着性にも乏しいため生産性が悪く使用範囲が限られる。
【0017】
高速伝送や高周波伝送用のフラットケーブルでは、薄型可撓性といったフラットケーブル本来の特性以外に、外気からの吸湿の影響を受けず、安定した伝送特性を有する伝送線路であること、電磁波シールド効果が高いこと、はんだ付け等に耐える耐熱性を有すること、難燃性を有すること、及び生産性が良く、安価な材料が使用できることが求められる。
【0018】
上記の要求に対し、外気からの吸湿の影響を受けずに安定した伝送特性を有し、電磁波シールド効果が高く、耐熱性の低い汎用樹脂を絶縁体に用いてもはんだ付け可能で、複雑な形状にも対応が可能なシールドされた薄型フラットケーブルとその製造方法が提案されている(特許文献8参照)。図1は、特許文献8を説明する図で、吸湿等による外気の影響がなく、安定した電気的特性を有する伝送線路の絶縁体に、低融点である熱可塑性樹脂を使用することが可能なシールドされた薄型のフラットケーブルの構造である。
【0019】
特許文献8では、導体及び絶縁体の周囲を金属膜で覆うことで、外気からの吸湿の影響を受けず安定した伝送特性を有し、電磁波シールド効果が高く、耐熱性の低い汎用樹脂を絶縁体に用いてもはんだ付け可能で、複雑な形状にも対応が可能なシールドされた薄型フラットケーブルが提案されている。
【0020】
現状広く用いられているポリイミドを絶縁体とするFFCでは、耐アルカリ性が劣るため、例えば、リチウムイオン電池周辺での使用は制限される。
液晶ポリマーは、耐アルカリ性はポリイミドより優れるが十分でない。また、フッ素樹脂の代表である、PTFEでは積層が難しく、図1のような多層構造はとりにくい。耐アルカリ性の優れた絶縁体を用いるフラットケーブルが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特開2011-71403号公報
【文献】特開2017-188307号公報
【文献】国際公開WO2014/156422号
【文献】特開2010-182576号公報
【文献】特開平5-242736号公報
【文献】国際公開WO2016/104066号公報
【文献】特開昭61-131306号公報
【文献】国際公開WO2020/195784号公報
【非特許文献】
【0022】
【文献】ダイヤトレンド株式会社、用語集、同軸ケーブル
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
現在、スマートフォンを含むモバイル機器内部のカメラやディスプレイ等の部品とメイン基板との配線は、フレキシブル配線板が多用されている。他方、RF部分は同軸ケーブルを使用するのが一般的である。スマートフォンに代表されるディスプレイを搭載する機器では、ディスプレイは大型化の傾向があるため、スマートフォンを小型化、軽量化するためには、厚み方向の薄型化が重要になる。しかし、同軸ケーブルは薄型化が難しく、最近では、同軸ケーブルの太さが、機器の実装設計の障害になることが発生している。すなわち、厚みに制限のある機器に実装するためには、ケーブルの薄型化が必要である。
【0024】
スマートフォンに代表されるモバイル機器では、カメラやディスプレイ等の高機能化、アプリケーションの進化に伴うアプリケーションプロセッサーの回路規模の増大化、及び伝送速度の高速化に伴うバッテリーの大型化が進み、限られた筐体の内部にこれらの機能、部品を納めることが難しくなってきている。他方、スマートフォンで扱う無線の種類も増加しており、アンテナと機器を接続する配線や部品とメイン基板を接続する配線の数は、増加している。
【0025】
上述の課題を解決するため、特許文献8では、導体を囲む絶縁体の周囲を金属膜で覆うことで、外気からの吸湿の影響を受けず安定した伝送特性を有し、電磁波シールド効果が高く、耐熱性の低い汎用熱可塑性樹脂を絶縁体に用いてもはんだ付け可能で、複雑な形状にも対応が可能なシールドされた薄型フラットケーブル及びその製造方法が提案されている。
【0026】
絶縁体として耐熱性の低い汎用熱可塑性樹脂を用いる場合、シールドされた薄型フラットケーブルの製造において、熱圧着による積層工程で、端面から樹脂が流れ出し、フラットケーブルの厚さのばらつきが大きくなり、また、加工条件設定等が難しく、生産性が劣る。
【0027】
低伝送損失の信号線を作製するには、特性インピーダンスの整合が重要で、そのため、信号線とビアランド、導体電極の特性インピーダンスを導体の特性インピーダンスに揃える必要がある。すなわち、信号線とビアランドをできるだけ小径にする必要がある。しかし、耐熱性の低い汎用熱可塑性樹脂は、熱ストレスや機械ストレスにより、容易に寸法変化や変形しやすい。そのため、ポリイミドやエポキシ樹脂といった耐熱性の高い熱硬化樹脂に比べ、加工時の層間合わせ精度が劣るため、信号線とビアランドの径が大きくなる。
【0028】
引用文献8に記載されるように、絶縁体に溝を形成する時、溝を形成するレーザー加工機のレーザー光の吸収が極端に低い場合、耐熱性の低い汎用熱可塑性樹脂をレーザーが透過して金属体で吸収され、発熱することで絶縁体が溶け出し、所望の形状が得られないという欠点がある。
【0029】
溝の形成はレーザー光による加工が適しており、特にレーザー光として赤外光を使用する加工が適している。紫外光もしくは可視光レーザーを使用する場合、加工速度が遅くレーザー光の寿命も短い。
【0030】
炭酸ガスレーザー加工装置は高速での加工が可能で、工業生産では多く用いられている。効率よく炭酸ガスレーザー加工をするためには、加工の波長は、主に10μm付近であるので、絶縁体はその波長の吸収が必要である。吸収効率が悪いと、加工条件の変更により、加工は可能であるが、加工時間が長くなる。
【0031】
導体を囲む絶縁体の周囲を金属膜で覆うシールドされた薄型フラットケーブルの製造において、積層工程やレーザー加工の影響による形状変化がなく、簡易で生産性の高いシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法が求められている。
【0032】
また、信号線とビアランド、導体電極の特性インピーダンスと導体の特性インピーダンスが整合するフラットケーブルの製造方法が求められている。
【0033】
本開示は、導体を囲む絶縁体の表面に連続して金属膜を設けるシールドされた薄型フラットケーブルであって、上述の課題を解決するシールドされた薄型フラットケーブル及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルは、金属からなる導体、前記導体を挟持し、前記導体から導通し表面に露出する導体電極以外の前記導体を包む絶縁体、及び前記導体電極の周囲以外の前記絶縁体の表面に連続する金属膜を有するシールドされた薄型フラットケーブルであって、前記導体及び前記導体電極に導通する内層電極が形成される第1のフィルム状の絶縁体面の前記導体、前記内層電極及び前記第1のフィルム状の絶縁体に貼り合わせる第2のフィルム状の絶縁体の融点が、前記第1のフィルム状の絶縁体の融点よりも10℃以上低く、前記第2のフィルム状の絶縁体の前記導体を挟持する面の反対面に、前記第1のフィルム状の絶縁体の融点と同等又は高い融点を有する第3のフィルム状の絶縁体を有することを特徴とする。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルは、 金属からなる導体、前記導体を挟持し、前記導体から導通し表面に露出する導体電極以外の前記導体を包む絶縁体、及び前記導体電極の周囲以外の前記絶縁体の表面に連続する金属膜を有するシールドされた薄型フラットケーブルであって、前記絶縁体が、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上、及びレーザー光吸収体を含み、前記絶縁体を50μmの厚さとしたとき、0.8μm以上、11.0μm以下の波長の光の最低透過率が85%以下であることを特徴とする。
【0035】
また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記アルケンが、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンテンの1種以上であると好適である。
【0036】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記第1のフィルム状の絶縁体及び前記第2のフィルム状の絶縁体は、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上含むと好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記重合体が酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、無水マレイン酸の1種以上を20モル%未満含むと好適である。
【0037】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記第2のフィルム状の絶縁体は、カルボキシル基を有するモノマーとアルケンとの共重合体を含むと好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて前記導体を挟持する前記絶縁体の融点が、10℃以上相異すると好適である。
【0038】
また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記レーザー光吸収体が、二酸化ケイ素、中空シリカ、ブラックシリカ、ケイ酸及びその金属塩、石英、ガラス、ガラスバルーン、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化銅、酸化鉄、酸化スズ、二酸化マンガン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、チタンブラックの1種以上であると好適である。
【0039】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記第1のフィルム状の絶縁体はカルボキシル基を有するモノマーとアルケンとの共重合体を含むと好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記絶縁体表面のレーザー光により形成された溝の壁面に、前記金属膜が形成されていると好適である。
【0040】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記導体を包む前記絶縁体の外表面に連続して金属膜を有するシールドされた薄型フラットケーブルが複数一体化して形成されると好適である。
【0041】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、一体化された複数のシールドされた薄型フラットケーブル間の前記金属膜は連続していると好適である。
【0042】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記第1のフィルム状の絶縁体がホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンの場合、前記第2のフィルム状の絶縁体はプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーポリプロピレンであると好適である。また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記第1のフィルム状の絶縁体が高密度ポリエチレンの場合、前記第2のフィルム状の絶縁体は直鎖状低密度ポリエチレンであると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルにおいて、前記金属膜が、前記導体電極の周囲以外の前記絶縁体の表面の全面を連続して被覆していると好適である。
【0043】
本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法は、第1のフィルム状の絶縁体の両面に金属膜を貼り合わせ、前記第1のフィルム状の絶縁体の一方の面の前記金属膜に対して回路形成工程を行うことにより、導体、前記導体と連続する電極に導通する内層電極を形成し、他方の面の前記金属膜に回路形成工程を行うことにより、ビアホール穴あけ用開口を形成し、前記第1のフィルム状の絶縁体の一方の面に形成された前記導体、前記内層電極の上に、前記第1のフィルム状の絶縁体の融点よりも10℃以上低い融点を有する第2のフィルム状の絶縁体、及び前記第2のフィルム状の絶縁体の上に金属膜を貼り合わせ、前記第1のフィルム状の絶縁体の他方の面の前記金属膜、前記第1のフィルム状の絶縁体及び前記第2のフィルム状の絶縁体を除去する、又は前記第1のフィルム状の絶縁体の他方の面の前記金属膜、前記第1のフィルム状の絶縁体、前記第2のフィルム状の絶縁体及び前記第2のフィルム状の絶縁体の上の前記金属膜を破断することにより、シールドされた薄型フラットケーブルの外周形状となるように、前記シールドされた薄型フラットケーブルの端面を形成し、前記端面に金属膜を形成することを特徴とする。本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法は、金属からなる導体を挟持し、前記導体から導通し表面に露出する導体電極以外の前記導体を包む絶縁体を設け、前記絶縁体の前記導体電極の周囲以外の表面に連続して金属膜を設け、前記絶縁体が、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上、及びレーザー光吸収体を含み、前記絶縁体を50μmの厚さとしたとき、0.8μm以上、11.0μm以下の波長の光の最低透過率が85%以下であることを特徴とする。
【0044】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記第2のフィルム状の絶縁体の前記導体側の面の反対面に、前記第1のフィルム状の絶縁体の融点と同等又は高い融点を有する第3のフィルム状の絶縁体を設けると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記アルケンが、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテンオクテン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンテンの1種以上であると好適である。
【0045】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記第1のフィルム状の絶縁体及び第2のフィルム状の絶縁体にアルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上含ませると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記重合体が酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、無水マレイン酸の1種以上を20モル%未満含むと好適である。
【0046】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記第2のフィルム状の絶縁体にアルケンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体を含ませると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記導体を挟持する前記絶縁体の融点が、10℃以上相異すると好適である。
【0047】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記第1のフィルム状の絶縁体にアルケンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体を含ませると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記レーザー光吸収体が、二酸化ケイ素、中空シリカ、ブラックシリカ、ケイ酸及びその金属塩、石英、ガラス、ガラスバルーン、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化銅、酸化鉄、酸化スズ、二酸化マンガン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、チタンブラックの1種以上であると好適である。
【0048】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記第1のフィルム状の絶縁体がホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンの場合、前記第2のフィルム状の絶縁体はプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーポリプロピレンとすると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記絶縁体の表面にレーザー光を照射し、前記レーザー光により前記絶縁体を除去し、前記絶縁体を除去することにより形成された溝の壁面に、前記金属膜を形成すると好適である。
【0049】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記第1のフィルム状の絶縁体が高密度ポリエチレンの場合、前記第2のフィルム状の絶縁体は直鎖状低密度ポリエチレンとすると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、複数の前記導体を挟持する前記薄型フラットケーブルを複数上下に一体化し、一体化した前記シールドされた薄型フラットケーブルの上下の片面の前記金属膜を除去し、前記金属膜が除去された前記絶縁体に前記レーザー光を照射し、前記絶縁体をもう一方の前記シールドされた薄型フラットケーブルの前記金属膜まで除去し、前記絶縁体を除去することにより形成された前記溝の壁面に、前記金属膜を形成すると好適である。
【0050】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記第1のフィルム状の絶縁体の一方の面の前記金属膜に対して回路形成工程を行うことにより、導体及び前記導体と連続する電極に導通する内層電極を形成し、他方の面の前記金属膜に回路形成工程を行うことにより、ビアホール穴あけ用開口を形成したシールドされた薄型フラットケーブルの中間製造物の前記第1のフィルム状の絶縁体の前記導体の側に、第2のフィルム状の絶縁体、金属膜、他の第2のフィルム状の絶縁体及び前記シールドされた薄型フラットケーブルの他の中間製造物の前記導体を前記他の第2のフィルム状の絶縁体の側として貼り合わせ、前記シールドされた薄型フラットケーブル中間製造物の複数が上下に一体化されたシールドされた薄型フラットケーブルの上下の前記絶縁体にレーザー光を照射し、前記絶縁体をもう一方の前記シールドされた薄型フラットケーブルの前記金属膜まで除去し、前記絶縁体を除去することにより形成された溝の壁面に、前記金属膜を形成すると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記金属膜を前記導体の周囲以外の前記絶縁体の全面に連続して形成すると好適である。
【0051】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記第1のフィルム状の絶縁体の一方の面の前記金属膜に対して回路形成工程を行うことにより、導体及び前記導体と連続する電極に導通する内層電極を形成し、他方の面の前記金属膜に回路形成工程を行うことにより、ビアホール穴あけ用開口を形成したシールドされた薄型フラットケーブルの中間製造物の前記第1のフィルム状の絶縁体の前記導体の側に、第2のフィルム状の絶縁体、金属膜、他の第2のフィルム状の絶縁体及び前記シールドされた薄型フラットケーブルの他の中間製造物の前記導体を前記他の第2のフィルム状の絶縁体の側として貼り合わせ、前記シールドされた薄型フラットケーブル中間製造物の複数が上下に一体化されたシールドされた薄型フラットケーブルの外形に沿って上下の前記金属膜及び前記絶縁体を破断し、形成された前記シールドされた薄型フラットケーブルの端面に、前記金属膜を形成すると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、前記レーザー光により前記溝を形成し、形成された前記溝の前記壁面にメッキにより前記金属膜を形成すると好適である。
【0052】
また、本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、一体化された複数のシールドされた薄型フラットケーブル間の前記金属膜は連続して形成すると好適である。また、本開示の他の実施形態に係るシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法において、複数の前記導体から導通し表面に露出する複数の前記導体電極以外複数の前記導体を包む前記絶縁体を設け、前記導体電極の周囲以外の前記絶縁体の表面に、前記導体と平行に前記金属膜を複数列形成したのち、前記導体と平行に前記絶縁体を個片に切り離すことを特徴とするシールドされた薄型フラットケーブルの製造方法。
【発明の効果】
【0053】
本開示によりシールド性に優れた、精度の良い、エネルギー効率が高いシールドされた薄型のフラットケーブルを提供できる。また、伝送特性の優れたシールドされた薄型のフラットケーブル及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本開示の実施の形態1に係るシールドされた薄型のフラットケーブルを示し、(A)は斜視図を示す。(B)はシールドされた薄型のフラットケーブルの端子部の拡大斜視図を示す。(C)はシールドされた薄型のフラットケーブルの導体が存在する部分の斜視断面図を示す。(B―1),(B-2),(B―3)は、シールドされた薄型のフラットケーブルの端子露出部の端子部の平面図を示し、(B-1)は、Bの平面図であり、(B-2)及び(B-3)は、他の端子部を示す。
図2】本開示の実施の形態1に係るシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程を示す。
図3】従来のシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程を示す。
図4】本開示の実施の形態2に係るシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程を示す。
図5】本開示の実施の形態に係るシールドされた薄型のフラットケーブルの内層配線構造を示す。
図6】従来のシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程であって、絶縁体を切断する工程を示す。
図7】従来の形態に係る薄型のフラットケーブルの構造を示す。
図8】本開示の実施の形態3に係るシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程の一部を示す。
図9】本開示の実施の形態4に係る薄型フラットケーブルが水平方向に複数一体化されたシールドされた薄型のフラットケーブルの構造を示す。
図10】本開示の実施の形態5に係る薄型フラットケーブルが水平方向及び垂直方向に複数一体化されたシールドされた薄型のフラットケーブルの構造を示す。
図11】本開示の実施の形態4に係る薄型フラットケーブルが水平方向に複数一体化されたシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程を示す。
図12】本開示の実施の形態5に係る薄型フラットケーブルが水平方向及び垂直方向に複数一体化されたシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程を示す。
図13】本開示の実施の形態6に係る薄型フラットケーブルの端面に導体電極を設けたシールドされた薄型のフラットケーブルを示す。
図14】本開示の実施の形態6に係る薄型フラットケーブルの導体電極を端面に設けたシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程を示す。
図15】本開示の実施の形態6に係る薄型フラットケーブルの導体を2本とした場合の導体電極を端面に設けたシールドされた薄型のフラットケーブルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(実施の形態1)
図1は本開示の実施の形態1に係るシールドされた薄型のフラットケーブル101を示し、(A)は斜視図を示す。(B)はシールドされた薄型のフラットケーブル101の端子部103の拡大斜視図を示す。(C)はシールドされた薄型のフラットケーブル101の導体204が存在する導体部102の斜視断面図を示す。(B―1),(B-2),(B―3)は、シールドされた薄型のフラットケーブルの端子部103の平面図を示し、(B-1)は、Bの平面図であり、(B-2),(B-3)は、他の端子部103を示す。
【0056】
フラットケーブルは、薄く可撓性を有するというフラットケーブル本来の特性と低伝送損失以外に、以下の内容が要求されている。吸湿等の外気の影響をなくし、物理的および電気的特性が安定した伝送線路であること、電磁波シールド効果が高いこと、はんだ付け等に耐える耐熱性を有すること、難燃性があること、耐薬品性に優れること、加工性が良く、生産性が高く、安価な材料が使用できることである。特に、高周波伝送用及び高速伝送用のフラットケーブルでは、伝送特性が重要となる。
【0057】
本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブル101は、金属からなる導体204、導体204を挟持し、導体204から導通し表面に露出する導体電極105以外の導体204を包む絶縁体106、及び導体電極の105の周囲以外の絶縁体106の表面に連続して金属膜202を有する。
【0058】
図1(A)に示すようにシールドされた薄型のフラットケーブル101は、導体204が導通する導体電極105を備える端子部103、及び導体204が存在する導体部102から構成される。端子部103は、導体204に導通する導体電極105、導体電極105の周囲の金属膜202が設けられない露出する絶縁体106、及び金属膜202が設けられない露出する絶縁体106以外の絶縁体106の表面に連続して設けられる金属膜202から構成される。導体部102は、導体204、導体204を包む絶縁体106及び絶縁体106の表面に連続して設けられる金属膜202から構成される。
【0059】
図1(B)に示すように、シールドされた薄型のフラットケーブル101の短手方向の端面も金属膜202を有する。図1(C)に示すように、シールドされた薄型のフラットケーブル101は、導体204が導通しシールドされた薄型のフラットケーブル101の表面に露出する導体電極105以外の導体204を絶縁体106が包み、導体電極105の周囲以外の絶縁体106の表面に連続して金属膜202を有する。
【0060】
金属膜202は、シールドされた薄型のフラットケーブル101の短手方向及び長手方向に連続して設けられる。長手方向の端面にも連続して設けられる。金属膜202が連続していることにより、絶縁体106の熱による変形、剥離による不良、外気からの水蒸気の侵入による導体204の電気特性への影響を抑えることができる。導体204のシールド性の毀損、電気特性の毀損、絶縁体106の変形、絶縁体106と金属膜202の剥離が生じない程度に、絶縁体106の表面の一部に金属膜202が設けられていなくても構わない。
【0061】
シールドされた薄型のフラットケーブル101の導体204のシールド性を高めるためには、金属膜202は、導体電極105の周囲以外の絶縁体106の全面に設けられることが好ましい。金属膜202は、導体電極105の周囲には設けられない。周囲とは、導体電極105と金属膜202が導通しない程度の間隔を満たす面積を有する必要がある。絶縁体106の表面の金属膜202が設けられない面積は少ないことが好ましい。また、金属膜202と絶縁体106は熱により密着強度が低下し剥離しやすいので、シールドされた薄型のフラットケーブル101の長手方向及び短手方向の端面は、絶縁体106が露出することなく金属膜202により被覆されていることが望ましい。長手方向及び短手方向の端面は、金属膜202で被覆されており、絶縁体106の表面の95%以上に金属膜202が設けられることが好ましい。
【0062】
導体電極105の周囲の金属膜202が設けられない絶縁体106が露出する部分は、外気に露出する。絶縁体106の導体電極105の周囲の露出部分の面積を最小化することが重要である。露出部分の面積が多い場合は、外気の水蒸気により絶縁体106が吸湿し、吸湿の影響を受け、伝送特性が低下するおそれがある。
【0063】
導体電極105以外の導体204を絶縁体106が包み、導体電極105の周囲以外の絶縁体106の表面に連続して金属膜202を有する。すなわち、シールドされた薄型フラットケーブル101の長手方向の端面及び短手方向の端面にも金属膜202を有することで、金属膜202の保護機能により、シールドされた薄型フラットケーブル101は外気の影響が抑制され、伝送特性を長期間維持することができる。
【0064】
従来のフラットケーブルを図7に示す。フラットケーブルの長手方向の端面及び短手方向の端面に金属膜202を有していない。このようなフラットケーブルは、外気の水蒸気により絶縁体106が吸湿し、吸湿の影響により伝送特性が低下するおそれがある。また、吸湿により金属膜202と絶縁体106は、はんだ付けのリフロー等の熱により密着強度が低下し剥離や絶縁体106の溶融変形が発生することがある。
【0065】
導体電極105の端と金属膜202の端との間隔は、10μm以上、1000μm以下である。この間は絶縁体106が露出している。10μm未満では、導体電極105の端部と金属膜202の端部が導通するおそれがある。1000μmを超えると、外気の水蒸気が絶縁体106内部への浸透が多くなり、伝送特性や耐熱性が劣化するおそれがある。また、導体204のシールド性が毀損されるおそれがある。さらに、リフロー等の熱工程において絶縁体106が溶融し、形状が変化するおそれがある。導体電極105の端と金属膜202の端との間隔は、導体電極105の周囲で等間隔であっても、異なっても構わない。
【0066】
図1(B―1),(B-2),(B-3)に端子部103の平面図を示す。(B-1)は、図1(B)の導体電極105が円形の場合を示す。(B-2)は、導体電極105が方形であって、複数の場合を示す。(B-3)は導体電極105が、複数の方形であって、シールドされた薄型のフラットケーブル101の長手方向の端部に設けられる場合を示す。金属膜202は、導体電極105の形状に沿って、導体電極105の周囲には設けられない。導体電極105の形状はどのようなものでも構わない。また、導体電極105は、1本の導体204に複数設けても構わない。金属膜202はグラウンドとして使用される。
【0067】
図2(G)に示すように、端子部103では、導体204は、内層電極214、ビアホール208を介して導体電極105に接続されている。導体電極105は、外部素子等との接続のためのもので、コネクター接続端子、SMTはんだ付け電極、コネクター固定用のはんだ付け端子、ACF(Anisotropic Conducting Film)接続のための端子等として使用される。上記の目的を果たすため、導体電極105の表面には、はんだ塗布、金メッキ、スズメッキ、銀メッキ、OSP(Organic Solderability Preservatives)等の表面処理を必要に応じて行っても構わない。導体電極105の周囲は、金属膜202が形成されていない絶縁体106により、金属膜202と導体電極105の間で導通しないような構造としている。
【0068】
本開示に係るシールドされた薄型のフラットケーブル101は、絶縁体106が導体204を保護し、金属膜202は絶縁体106を保護する。金属膜202は導体204をシールドする。
【0069】
導体電極105の周囲以外の絶縁体106の表面に連続して設けられる金属膜202は、外部から水蒸気や薬液の絶縁体106の内部への浸透を防ぐ。また、シールドされた薄型フラットケーブル101に外部から向けられる炎に対して、金属膜202は炎を絶縁体106に直接触れさせないため、絶縁体106の難燃性を向上させる。
【0070】
絶縁体106は、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上、及びレーザー光吸収体を含み、絶縁体106を50μmの厚さとしたとき、0.8μm以上、11.0μm以下の波長の光の最低透過率が85%以下である。85%を超えてもレーザー加工は可能であるが、効率よく加工するためには、好ましくは60%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0071】
アルケンは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテンオクテン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンテンの1種以上であると好適である。
【0072】
アルケンを80モル%以上含む重合体とは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、メチルペンテンポリマー等である。
【0073】
アルケンとしてのエチレン、プロピレン等は、バイオマスから得られるモノマー又はリサイクルによって得られるモノマーでも構わない。バイオマス又はリサイクルにより得られるモノマーを使用することで、二酸化炭素排出抑制に貢献できる。
【0074】
重合体のアルケン以外のモノマーとして、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、無水マレイン酸の1種以上を20モル%未満含むと好適である。
【0075】
絶縁体106は、ポリブタジエン、ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリスチレン、SBS等の樹脂を含んでも構わない。
【0076】
絶縁体106が含むレーザー光吸収体とは、二酸化ケイ素、中空シリカ、ブラックシリカ、ケイ酸及びその金属塩、石英、ガラス、ガラスバルーン、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化銅、酸化鉄、酸化スズ、二酸化マンガン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、チタンブラックが好適である。
【0077】
さらに、絶縁体106の誘電特性を低下させないレーザー光吸収体として、二酸化ケイ素、中空シリカ、ブラックシリカ、ケイ酸及びその金属塩、石英、ガラス、ガラスバルーン、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化モリブデン、酸化銅、四三酸化鉄、酸化スズ、二酸化マンガン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、チタンブラックがさらに好適である。また、絶縁体106は、アルケンを80モル%以上含む重合体、レーザー光吸収体及び樹脂以外に、充填剤、粘度調整剤、滑剤、難燃剤といった添加剤を誘電特性が低下しない範囲で適宜配合できる。
【0078】
絶縁体106の厚みは、10μmから1000μmが好適である。さらに、30μmから500μmが好適である。10μmより薄いと導体204と金属膜202の層間絶縁不良が発生し、また、インピーダンス整合のための線路幅の管理が困難になる。1000μmより厚いと、後述する絶縁体106にレーザーにより溝を形成するレーザー加工の速度が極端に遅くなってしまう。
【0079】
絶縁体106がアルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上含むことで、安価にシールドされた薄型のフラットケーブル101を製造することができる。しかし、アルケンを80モル%以上含む重合体は、波長0.8μm以上、11.0μm以下のレーザー光を吸収しにくいため、絶縁体106の表面にレーザー光を照射して溝を形成することが困難である。しかし、絶縁体106にレーザー光吸収体を含ませることで、レーザー光の照射により溝を形成することができる。絶縁体106を50μmの厚さとしたとき、0.8μm以上、11.0μm以下の波長の光の最低透過率が85%以下となるように、絶縁体106にレーザー光吸収体を含ませる。透過率が85%以上ではレーザー光の照射による溝の形成が困難となる、又は長時間を要する。
【0080】
導体204は、電気伝導度の良好なものを使用し、特に、金、銀、銅、アルミニウムのいずれかが好ましい。屈曲性と導電性を考慮すると、銅が最も好適である。導体204が、金又は銀でない場合、導体204は、金メッキ又は銀メッキが施されても構わない。
【0081】
導体204の幅は0.01mm~10mmが好ましく、さらに0.02mm~5mmが好適である。導体幅が0.01mm未満では、導体204の幅の仕上がり寸法精度の管理が難しい。そのため、インピーダンスの整合が難しく導体として好ましくない。また、導体204の幅が0.01mm未満では導体損失が大きくなり、伝送線路として好ましくない。逆に、導体204の幅が、10mmを超える場合、所望の特性インピーダンスを得るための絶縁体106の厚さが厚くなり、薄さを追求するシールドされた薄型フラットケーブル101には適さない。
【0082】
導体204の幅は伝送特性に大きな影響を与えるため、幅の管理は精密に行う必要がある。また、導体204の線幅精度を向上させるため、MSAP工法(Modified Semi Additive Process)を用いることも可能である。さらに伝送特性を良好とするため、導体204が金又は銀でない場合、導体204に金メッキ又は銀メッキを施しても構わない。本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブル101は、ストリップ線路の構造であるため、導体204の特性インピーダンスは、導体幅、導体厚さ、絶縁体厚さ、絶縁体の誘電率等で決まる。所望のインピーダンスを得るため、通常は導体204の幅を調整することが多い。
【0083】
導体204の厚さは、1μm~75μmが好ましい。導体損失と表皮効果により、1μm未満では電気信号が効率よく伝わらない。また、1μm未満では折り曲げ時に導体204の破断が発生する可能性が大きい。75μmを超えると導体204を製造する際に幅の精度を出しにくく、さらに導体204を包むための絶縁体106が厚くなり、薄さを追求するシールドされた薄型フラットケーブル101には適さない。
【0084】
シールドされた薄型フラットケーブル101の金属膜202は、電気伝導度の良好な金属を使用し、金、銀、銅、アルミニウムが好ましく、銅が好適である。屈曲性と導電性を考慮すると、銅が最も好適である。シールドされた薄型フラットケーブル101のフラットな面である上面及び下面の金属膜202は銅箔とすることができるが、シールドされた薄型フラットケーブル101の長手方向の端面及び短手方向の端面は、メッキにより形成される銅とすることが好適である。金属膜202の電気抵抗率は1μΩ・m以下が好ましい。酸化防止やノイズ対策等の機能追加のため、金属膜202は異種金属を組み合わせてもよく、例えば、銅膜の外側にニッケル、亜鉛、クロム、鉄系合金等を形成することも可能である。
【0085】
金属膜202の厚さは、3μm~100μmが好ましい。3μm未満ではピンホールやキズが発生し内部のバリア性を保てず、レーザー加工時に金属膜202が溶融して線状の溝206を形成することができない。また、加熱時に絶縁体106の膨張により金属膜202に亀裂が入る。また、100μmを超えると線状の溝206及びビアホールとしての孔207の形成加工が煩雑となり、長時間を要す。金属膜202をメッキで形成する場合、メッキ時間が長くなり作業板の反りといった作製工程上で問題が発生する。
【0086】
導体204と金属膜202の平面方向の距離は、20μm以上である。20μm未満では、導体204と金属膜202が短絡する可能性がある。また、導体204と金属膜202の垂直方向の距離は10μm以上、700μm以下である。10μm未満では、短絡する可能性があり、700μmを超える場合は、絶縁体106にレーザーにより線状の溝206を形成する際、長時間を要する。
【0087】
図2(G)に示すように、端子部103では、導体204は、内層電極214、ビアホール208を介して導体電極105に接続されている。電気信号は、一方の導体電極105から入り、ビアホール208、内層電極214、導体204、反対の内層電極214、反対のビアホール208、反対の導体電極105から出て、他に電気信号を伝える。
【0088】
内層電極214は図5(A)に示すように、導体204から連続して形成される。したがって、厚さ及び材料は導体204と同一である。導体電極105とビアホール208により接続させるために、内層電極214は、図5(B)に示すように、円柱状のビアホール208の径と同等、若しくは大きくする。内層電極214の形状は円が好ましいが、ビアホール208の断面と同等、若しくは大きければどのような形状でも構わない。また、ティアドロップ等の補助形状を付加しても構わない。円形の場合、通常、直径が50μm以上、2mm以下である。直径が100μm以上、800μm以下であるとさらに好適である。50μm未満の場合、内層電極214とビアホール208の位置合わせが難しく、2mmを超える場合は、特性インピーダンスの整合が難しくなる。信号線路の特性インピーダンス整合の必要があり、内層電極214と導体204の特性インピーダンス整合が難しく、内層電極214の径を極力小さくすることにより、特性インピーダンス整合を図る必要がある。
【0089】
ビアホール208は、導体電極105が形成される箇所から内層電極214までの絶縁体106をレーザー光の照射により除去し、絶縁体106が除去されて形成されたビアホールとしての孔207をメッキすることで形成される。したがって、断面は円に近似した形状となる。メッキは銅により行うことが好ましい。
【0090】
本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブル101の製造方法を図2に示す。シールドされた薄型フラットケーブル101は、金属からなる導体204を挟持し、導体204から導通し表面に露出する導体電極105以外の導体204を包む絶縁体106を設け、導体電極105の周囲以外の絶縁体106の表面に連続して金属膜202を設ける。
【0091】
図2に、本開示の実施の形態1に係るシールドされた薄型のフラットケーブルの製造工程を示す。
【0092】
図2(A)は、フィルム状の絶縁体106Aの両面に金属膜202A及び金属膜202Bが貼り合わされた金属膜202及び絶縁体106の積層シートである。フィルム状の絶縁体106Aと金属膜202A及び金属膜202Bの張り合わせは、加熱圧着で行うが、貼り合わせの前に、密着強度向上のため、前処理を行ってもよい。例えば、フィルム状の絶縁体106Aに、プラズマ処理、コロナ処理やUV処理、金属膜202A及び金属膜202Bの張り合わせ側にプライマー処理やプラズマ処理を行う。接着剤を使用するドライラミネーション法でも張り合わせは可能である。また、フィルム状の絶縁体106Aと金属膜202A及び金属膜202Bの金属膜202の間にボンディングシートを挿入して、圧着することにより張り合わせすることも可能である。さらに、一方の金属膜202上に、溶融したフィルム状の絶縁体106Aを押出し成形しながら、もう一方の金属膜202を圧着することにより張り合わせすることも可能である。
【0093】
金属膜202A及び金属膜202Bは、金属箔が使用され、張り合わせに使用される金属膜202は金属箔を使用することが好ましい。特に銅箔が好ましい。
【0094】
フィルム状の絶縁体106Aの両面に金属膜202A及び金属膜202Bの貼り合わせを加熱圧着で行うとき、接着力を高めるために、フィルム状の絶縁体106Aの金属膜202A及び金属膜202Bと接する側に、カルボキシル基を有するモノマーとアルケンとの共重合体の層を設けることが好ましい。カルボキシル基を有するモノマーとアルケンとの共重合体と金属との接着力は、熱圧着により大きくなる。特に、アルケンとしてエチレンを使用するポリエチレン、又はアルケンとしてプロピレンを使用するポリプロピレンを重合体とする場合、ポリエチレン又はポリプロピレンに無水マレイン酸をグラフト重合した樹脂を使用することが好ましい。重合体は、カルボキシル基を有するモノマーを20モル%未満含むと好適であり、10モル%未満含むとさらに好適。10モル%未満であると、伝送特性に与える影響を小さく抑えることができる。
【0095】
図2(B)は、金属膜202Bを導体204及び内層電極214とし、金属膜202Aを導体電極105及び絶縁体106の外面に形成される金属膜202とする回路形成工程を示す。ここで、金属膜202Aの一部を除去することにより、ビアホール穴あけ用開口209及び溝形成用開口212が形成される。
【0096】
回路形成工程はプリント配線板の製造において常用の工法が使用できる。例えば、エッチングマスク形成、露光、現像、エッチング、エッチングマスク剥離といった手順で、必要な金属膜202Bを残すことで、導体204及び内層電極214を形成し、金属膜202Aを残すことで、導体電極105及び絶縁体106の表面に金属膜202を形成する。金属膜202Aの一部を除去することにより、ビアホール穴あけ用開口209及び溝形成用開口212が形成される。
【0097】
図2(C)は、フィルム状の絶縁体106A、形成された導体204及び内層電極214の上に、フィルム状の絶縁体106Bと金属膜202Cを順に張り合わせる工程を示す。フィルム状の絶縁体106Bの材料は、フィルム状の絶縁体106Aと同一でも構わない。また、異なる材料の絶縁体を使用しても構わない。フィルム状の絶縁体106Aとフィルム状の絶縁体106Bの張り合わせは熱圧着による。フィルム状の絶縁体106Aとフィルム状の絶縁体106Bにより導体204及び内層電極214は挟持される。熱圧着する際に真空状態で行うことが好ましい。
【0098】
フィルム状の絶縁体106Aの面に形成された導体204及び内層電極214とフィルム状の絶縁体106Bとの張り合わせ、及びフィルム状の絶縁体106Bと金属膜202Cとの張り合わせを熱圧着で行うとき、接着力を高めるために、フィルム状の絶縁体106Bの両面に層として、カルボキシル基を有するモノマーとアルケンとの共重合体を設けることが好ましい。カルボキシル基を有するモノマーとアルケンとの共重合体と金属との接着力は、熱圧着により大きくなる。特に、アルケンとしてエチレンを使用するポリエチレン、又はアルケンとしてプロピレンを使用するポリプロピレンを重合体とする場合、ポリエチレン又はポリプロピレンに無水マレイン酸をグラフト重合した重合体を使用することが好ましい。
【0099】
金属膜202Cは、金属膜202Aと同様の金属を使用することが好ましい。金属膜202Cを形成する方法は、フィルム状の絶縁体106Bをフィルム状の絶縁体106Aに張り合わせした後、金属膜202Cを順次張り合わせしても、フィルム状の絶縁体106Aにフィルム状の絶縁体106Bと金属膜202Cを同時に張り合わせしても構わない。フィルム状の絶縁体106Bと金属膜202Cを張り合わせた後にフィルム状の絶縁体106Bをフィルム状の絶縁体106Aに張り合わせても構わない。図2(D)は、フィルム状の絶縁体106A、フィルム状の絶縁体106B及び金属膜202Cが張り合わされて形成された積層体を示す。
【0100】
図2(E)は、導体204及び内層電極214の両側面側に沿って、導体204と平行に線状の溝206及びビアホールとしての孔207を形成する工程を示す。線状の溝206の形成は、溝形成用開口212に露出する絶縁体106を除去する。絶縁体106に接する片方の面の金属膜202Aを貫通することなく、もう一方の面の金属膜202Cを残し、絶縁体106を線状に除去して、線状の溝206を形成する。
【0101】
ビアホールとしての孔207の形成は、ビアホール穴あけ用開口209に露出する絶縁体106を、金属膜202Aを貫通することなく、内層電極214まで除去する。
【0102】
線状の溝206及びビアホールとしての孔207の形成は、例えば、レーザー加工機、プラズマ化工機、サンドブラスト等を備える装置により行う。加工速度が速いことからレーザー加工機が好ましい。線状の溝206を形成することにより、壁面205に絶縁体106が露出する。
【0103】
レーザー加工機で使用されるレーザー光の波長は、エキシマレーザーは0.248μm、UVレーザーは0.355μm、グリーンレーザーは0.532μm、YAGレーザー・ファイバーレーザーに代表される1μm付近の近赤外レーザーは1.064μm、炭酸ガスレーザーに代表される10μm付近の遠赤外レーザーは9.4μmと10.6μmである。0.25μmから0.60μmまでのエキシマレーザー、UVレーザー及びグリーンレーザーを合わせてUV・可視光レーザーと称する。本開示において、絶縁体106に線状の溝206を形成すするためには、絶縁体106の深堀加工が必要である。UV・可視光レーザーでは、深堀加工の速度が著しく遅い。近赤外線や遠赤外線レーザーは加工速度が速くこれらの使用が好ましい。
【0104】
レーザー加工機の選定は、絶縁体106の吸収波長との整合を考慮する必要がある。特に、YAGレーザー、ファイバーレーザー及び炭酸ガスレーザー加工機は、樹脂加工の速度が速いため、多く使われており、本開示において、好ましいレーザー加工機である。本開示に係るレーザー加工機は、波長が0.25μm~0.6μmのUV・可視光レーザー、波長が1μm付近の近赤外レーザー、波長が10μm付近の遠赤外レーザーを用いることが好適である。
【0105】
多くの樹脂は、UV・可視光レーザーを吸収するため、レーザー光吸収体を使用する必要がない。しかし、吸光度が小さい場合は、少量の着色顔料を加え吸光度を増加させ、加工速度を早くすることも可能である。添加量は電気特性に影響がない10重量パーセント以下が好適である。
【0106】
絶縁体106が50μm以上の場合、UV・可視光レーザーの原理上、加工速度が急速に遅くなり、生産性が低下する。絶縁体106の厚さが50μmまでは、UV・可視光レーザーによる加工が優れているが、それ以上の厚さには不適である。絶縁体106が50μm未満であればUV・可視光レーザーを使用することができる。着色顔料を添加することで、絶縁体106が50μmを超えても使用可能である。加工速度を速めるために着色含量の添加量を増やしても構わない。
【0107】
絶縁体106は、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上、及びレーザー光吸収体を含み、絶縁体106を50μmの厚さとしたとき、0.2μm以上、0.8μm未満の波長の光の最低透過率が85%以下であることが好ましい。0.2μm以上、0.8μm未満の波長のレーザー光吸収体は着色顔料が使用できる。
【0108】
着色顔料とは、シアニンブルー、シアニングリーン、黄土、ベンガラ、パーマネントレッド、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華がある。また、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系等の有機化合物も0.2μm以上、0.8μm未満の波長のレーザー光吸収体として好適である。
【0109】
UV・可視光レーザーによる加工は、長短パルス加工を行うことで、加工面が平滑で、形状もきれいなため、良い仕上がりとなる。
【0110】
YAGレーザー又はファイバーレーザーに代表される近赤外レーザー、及び炭酸ガスレーザーに代表される遠赤外レーザーは、絶縁体106が厚くても加工速度が速く、生産性に優れている。しかし、アルケンを80モル%以上含む重合体は、0.8μmから11μm付近の波長の光をほとんど吸収しないため、遠赤外線レーザーにより線状の溝206を形成することができない。そのためには、絶縁体106にレーザー光吸収体を配合することが必要となる。絶縁体106が、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上であって、レーザー光吸収体を含むことにより、近赤外レーザー光及び遠赤外線レーザー光により、線状の溝206を形成することができる。
【0111】
絶縁体106が、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上有することで、絶縁体106を安価にし、レーザー光吸収体を含むことで、近赤外レーザー光及び遠赤外線レーザー光により線状の溝206を形成する速度を速め、加工面の平滑性及び寸法精度を上げることができる。レーザー光吸収体を含む絶縁体106は、50μmの厚さとしたとき、0.8μm以上、11.0μm以下の波長の光の最低透過率が85%以下である必要がある。
【0112】
図2(E)は、導体電極105を形成する箇所の断面図である。図6(A)は、図2(E)の上面図で、線状の溝206及びビアホールとしての孔207を形成するときの概略の位置関係を示す。線状の溝206の形成は、シールドされた薄型フラットケーブル101の外周形状を決定し、長手及び短手を含むすべての端面を形成するため、本開示において重要な工程である。
【0113】
図6(B)は、線状の溝206の形成をレーザー加工と刃物やルータビットを組みあわせた切削加工により行った状態を示す。線状の溝206に白抜きで示す部分は、切削加工を行った箇所である。図6(A)はすべての線状の溝206をレーザー加工で形成した図である。図6(A-a)は図6(A)のa方向の断面図である。金属膜202Cは貫通していない。これは、図2(E)と同一である。図6(B-b)及び(B-c)は、図6(B)のb方向及びc方向の断面図である。線状の溝206を刃物により切削すると、金属膜202Cも破断することとなる。この段階で個片化すると、後工程の金属メッキ工程が煩雑となる。また、集合体としてシールドされた薄型フラットケーブル101の製造が不可能なり、生産性を阻害する。そのため、金属膜202Cは個片を固定するために、少なくとも部分的に残す必要があり、金属膜202Cを残すためには、レーザー加工が好適である。
【0114】
図2(F)は、図2(E)の状態の線状の溝206に金属膜202Dを形成する工程、及びビアホールとしての孔207に金属体を形成し、導体204から導通を引き出すためのビアホール208を設ける工程を示す。線状の溝206に金属膜202Dを形成する工程では、線状の溝206の壁面205に金属膜202Dを形成する。また、ビアホール208の金属体の形成は、ビアホール208を金属により被覆する。金属膜202D及びビアホール208の金属体の形成は金属メッキ法が適している。通常、金属膜202A及びビアホールとしての孔207の底として内層電極214の露出している部分を清浄化し、絶縁体106以外の表面を導電化し、その後金属メッキを行う。金属膜202Dを形成する金属メッキにより、本開示のシールドされた薄型フラットケーブル101の外周面の全体を連続して被覆する金属膜202が形成される。
【0115】
通常、金属メッキは、デスミア処理、触媒形成、無電解メッキ、電解メッキを順に行う。デスミア処理は、金属膜面にスミアとの異物が残った場合に必要で、金属膜面が清浄の場合は不要である。デスミア処理は、プラズマによる乾式方法と過マンガン酸等の酸化剤による湿式方法があるが、本開示では、吸水を防ぐ観点から乾式法のほうが優れている。触媒形成、無電解メッキ、電解メッキの方法は、例えば、ATOTECH社、株式会社JCU、DOW CHEMICAL社、上村工業株式会社、奥野製薬工業株式会社、マクダーミッド・エンソン社等の薬液システムで行うことができる。また、吸湿を最小にするため、湿式の触媒形成の代わりに、スパッタ等の乾式で絶縁体106の表面に連続して金属膜202を設けても構わない。また、導電化の方法として、触媒形成、無電解メッキの代わりに、日本マクダミッド社のブラックホールシステムの使用も可能である。
【0116】
図2(G)は、図2(F)に示す金属膜202Aの一部を除去する工程を示す。金属膜202Aの一部を除去し、導体電極105と金属膜202Aのギャップ218を形成する工程である。導体電極105となる箇所の周囲の金属膜202Aを除去し、ギャップ218を形成する。除去する範囲は、除去により形成される導体電極105の端と金属膜202となる金属膜202Aの端が通電しない程度である。
【0117】
金属膜202Aの除去は、図2(B)の導体204の形成と同様の回路形成工程で行うことができる。すなわち、エッチングマスク形成、レジスト層形成、露光、現像、エッチング、エッチングマスク剥離といった手順で金属膜202Aの不要な部分を除去し、所望の形状を形成することができる。
【0118】
図2(H)は、図2(G)に示す積層体の金属膜202の表面に、絶縁層となるソルダーマスク211を形成し、金属膜202Cを切断して個片化する工程を示す。ソルダーマスク211には、導体電極105を露出させるために、必要に応じ開口を設けることができる。ソルダーマスクの形成方法は、プリント配線板製造で常用される方法が使用できる。具体的には、ソルダーマスクインクを写真法やシルクスクリーン印刷により形成する方法、フィルム状ソルダーマスクを印刷法で形成する方法等を用いることができる。ソルダーマスクインクの例としては、太陽インキ製造株式会社製PSRシリーズ、株式会社タムラ製作所製PAFシリーズ及びDSRシリーズ、サンワ化学工業株式会社製SPSRシリーズ等がある。フィルム状ソルダーマスクとしては、日立化成株式会社製レイテック、太陽インキ製造株式会社製PSRシリーズ等を使用できる。また、ソルダーマスクを露出した絶縁体106の面上に形成することも可能である。また、ソルダーマスク211を形成せず、次工程の切断を行ってもよい。
【0119】
金属膜202Cを線状の溝206に沿って切断することにより、シールドされた薄型フラットケーブル101を個片化する。個片化する切断は、フレキシブル配線板の裁断方法が使用でき、金型による裁断、ルーターによる裁断及びレーザー加工機による裁断が一般的である。本開示は集合体でシールドされた薄型フラットケーブル101を製造し、最後に個片にすることができるため、作業効率が良い。
【0120】
集合体でシールドされた薄型フラットケーブル101を製造するとは、図2の製造を長手方向のシールドされた薄型フラットケーブル101を並列に多数列で形成し、最後に個片化することで、同時に多数のシールドされた薄型フラットケーブル101を得ることである。また、長手方向のシールドされた薄型フラットケーブル101を直列に多数列として形成しても構わない。
【0121】
図2(B)の工程時に、図2(J)のようにギャップ218を形成することも想定されるが、図2(F)の線状の溝206の壁面205に金属膜202Dを形成する工程、及びビアホールとしての孔207に金属体を形成するメッキ工程において、ギャップ218も金属メッキされてしまう。したがって、図2(B)の回路形成工程時に、図2(J)のようにギャップ218を形成することは不都合である。
【0122】
図3には、図2と異なる工程を示す。図3(A)では、図2(A)と同様に、フィルム状の絶縁体106Aの両面に金属膜202A及び金属膜202Bを貼り合わせる。図3(B)では、導体204及び内層電極214を形成し、図2(B)とは異なり、溝形成用開口212及び、ビアホール穴あけ用開口209を形成しない。図3(C)では、フィルム状の絶縁体106A及び形成された導体204及び内層電極214の上に、フィルム状の絶縁体106Bと金属膜202Cを順に張り合わせる。図3(D)に、図3(C)の工程により得られる積層体を示す。図3(E)では、回路形成工程により、金属膜202Cに溝形成用開口212及び、ビアホール穴あけ用開口209を設ける。図3(F)では、線状の溝206及びビアホールとしての孔207を形成する。図3(G)では、線状の溝206の壁面205に金属膜202Dを形成する工程、及びビアホールとしての孔207に金属体を形成する工程を示す。図3(H)では、ギャップ218を形成する。
【0123】
図3の工程によっても、図2と同様にシールドされた薄型フラットケーブル101が得られるように思える。図2(B)のように、1枚の積層体の表裏に同時に回路形成工程を行うことで、表裏の位置を的確に合わせることができる。内層電極214とビアホール穴あけ用開口209の位置合わせを的確に行わなければならない。内層電極214とビアホール穴あけ用開口209の位置が合わないと、内層電極214と導体電極105が通電しないこととなる。図3の方法では、内層電極214の形成とビアホール穴あけ用開口209の形成が、別な状態の積層体で行われる。図3(C)の張り合わせを熱圧着で行うとき、熱が絶縁体106に加えられる。この工程により、絶縁体106が熱により流動することで、内層電極214の位置が変動することがある。結果として、内層電極214とビアホール穴あけ用開口209の位置が合わずに、内層電極214とビアホール208が通電しないおそれがある。
【0124】
現在、絶縁体に常用されているポリイミドは耐熱性が高く、熱圧着時の変形や収縮がほとんどないため、図3の工程でも内層電極214とビアホール穴あけ用開口209の位置を正確に合わせることができる。
【0125】
本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブル101の絶縁体106に融点の比較的低い重合体を使用する場合、図2(B)のように、1枚の積層体の表裏に同時に回路形成工程を行い、内層電極214とビアホール穴あけ用開口209の位置合わせを的確に行うことが、優れた品質のシールドされた薄型フラットケーブル101を得るために必要である。
【0126】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るシールドされた薄型フラットケーブル101を図4(H)及び(I)に示す。図4(H)は端子部103の断面を示す。図4(I)は導体部102の断面を示す。実施の形態2は、導体204及び内層電極214と並列して導体並列金属膜215を有する。導体並列金属膜215は導体204及び内層電極214と同一の金属膜202Bから形成される。したがって、材料、厚さは導体204及び内層電極214と同一である。導体並列金属膜215は、シールドされた薄型フラットケーブル101の外面を連続して被覆する金属膜202と導通し、グラウンドとなる。
【0127】
導体並列金属膜215の端と導体204及び内層電極214の端との間隔は、10μm以上である。10μm未満では、導体並列金属膜215と導体204及び内層電極214で短絡を起こす懸念がある。この範囲であれば、導体204及び内層電極214との間隔は箇所により異なっても構わない。導体204及び内層電極214との間隔をいずれの箇所において同一とすることが好ましい。この場合、図4(J)に示すように、導体並列金属膜215の端は、導体204及び内層電極214の形状に沿って設けられる。
【0128】
前述のような間隔を有することで、導体並列金属膜215の端部は導体204及び内層電極214に沿って設けなくても構わない。導体並列金属膜215は、金属膜202と導通するため、導体並列金属膜215の電位は金属膜202と同電位であることが必要である。そのため、導体並列金属膜215の導体204及び内層電極214側でない端部は、全周に渡ってシールドされた薄型フラットケーブル101の長手方向及び短手方向の端面の金属膜202と接続されることが好ましい。
【0129】
導体並列金属膜215は、導体204の信号伝達を安定化させ、シールドされた薄型フラットケーブル101の伝送特性を向上させることができる。
【0130】
図7に示す従来のフラットケーブルでは、金属膜202Aと金属膜202Cの接続はスルーホール108で行われる。本開示のシールドされた薄型フラットケーブル101は、絶縁体106の表面に連続して金属膜202を設けており、フラットな面の上下の金属膜202は、シールドされた薄型フラットケーブル101の長手方向及び短手方向の端面に設けられる金属膜202により導通しており、スルーホール108を設ける必要がない。さらに、導体並列金属膜215の端部をシールドされた薄型フラットケーブル101の端面に接続することで、スルーホール108を備える従来のフラットケーブルより電位が安定し、グラウンドの強化ができ、伝送特性を安定させることができる。
【0131】
図4(H)及び(I)に示す導体並列金属層215は、導体204及び内層電極214の両側に設けられているが、片側だけに設けても構わない。また、導体204及び内層電極214に沿って、部分的に設けても構わない。全周に渡って設けることにより、シールドされた薄型フラットケーブル101の伝送特性を向上させるため、より好ましい。
【0132】
図4は導体並列金属膜215を備えるシールドされた薄型フラットケーブル101の製造工程を示す。この製造工程は、導体並列金属膜215を設けること以外、図2に示すシールドされた薄型フラットケーブル101の製造工程と同一である。
【0133】
図4(A)では、フィルム状の絶縁体106Aの両面に金属膜202A及び金属膜202Bを貼り合わせる。図4(B)では、金属膜202Bに対して回路形成工程を行うことにより、導体204、内層電極214及び導体並列金属膜215を形成する。202Aに対して、回路形成工程を行うことにより、溝形成用開口212及びビアホール穴あけ用開口209を形成する。図4(C)では、フィルム状の絶縁体106A及び形成された導体204、内層電極214及び導体並列金属膜215の上に、フィルム状の絶縁体106Bと金属膜202Cを順に張り合わせる。図4(D)に、得られる積層体を示す。
【0134】
図4(E)では、レーザー加工により、絶縁体106を除去することにより、線状の溝206及びビアホールとしての孔207を形成する。このとき、導体並列金属膜215の導体204及び内層電極214側でない端部が露出するように線状の溝206を形成する。したがって、導体並列金属膜215の導体204及び内層電極214側でない端部は、線状の溝206に沿った形状としておかなければならない。直線であることが好ましい。
【0135】
図4(F)では、線状の溝206の壁面205に金属膜202Dを形成し、ビアホールとしての孔207に金属体を形成する。導体並列金属層215の端部と金属膜202Dが接して通電可能とする。
【0136】
図4(G)は、図4(F)に示す金属膜202Aの一部を除去し、ギャップ218を形成する。導体電極105となる箇所の周囲の金属膜202Aを除去し、ギャップ218を形成する。図4(H)は、図4(G)に示す積層体の金属膜202の表面に、絶縁層となるソルダーマスク211を形成し、金属膜202Cを切断して個片化する工程を示す。実施の形態1と同様に、集合体でシールドされた薄型フラットケーブル101を製造しても構わない。
【0137】
(実施の形態3)
実施の形態1の図2(C)及び実施の形態2の図4(C)に示すように、フィルム状の絶縁体106Bをフィルム状の絶縁体106A及び導体204と接して張り合わせる。実施の形態3は、フィルム状の絶縁体106Aと張り合わせるフィルム状の絶縁体106Bの融点がフィルム状の絶縁体106Aの融点よりも10℃低いことである。すなわち、シールドされた薄型フラットケーブル101において、導体204を挟持する絶縁体106の融点が、10℃以上相異することとなる。
【0138】
実施の形態1及び実施の形態2と実施の形態3との相違は、フィルム状絶縁体106A及びフィルム状絶縁体106Aの面上に設けられた導体204、内面電極214又は並列金属膜215に張り合わされる側のフィルム状絶縁体106Bが、フィルム状絶縁体106Aの融点よりも10℃低いことであり、この点以外は実施の形態1及び実施の形態2と同一である。
【0139】
フィルム状の絶縁体106Bの融点をフィルム状の絶縁体106Aの融点よりも10℃以上低くすることにより、熱圧着によりフィルム状絶縁体106Aとフィルム状の絶縁体106Bを張り合わせするとき、加熱条件を緩和することが可能であり、絶縁体106Aは溶融しないので、導体204、内面電極214又は並列金属膜215の位置関係は変化せず、また導体204、内面電極214又は並列金属膜215の破壊を防止することができる。また、張り合わせによる接着力を大きくすることができる。10℃未満では、加熱条件の管理が難しく、フィルム状の絶縁体106Aを溶融せずに、フィルム状の絶縁体106Bを溶融し、フィルム状の絶縁体106Aと熱圧着により十分な接着力を得ることは困難である。
【0140】
絶縁体106は、アルケンを80モル%以上含む重合体を30重量%以上含んでいる。フィルム状の絶縁体106A及びフィルム状の絶縁体106Bに含まれる重合体として、近似又は同一の融点を有するものを使用すると、加熱温度、加圧量及び張り合わせのタイミングの管理を厳密に行う必要がある。条件が適当でない場合、張り合わせ時に端部から溶融した重合体が流れ出し、絶縁体106の厚さに不均一が生じる。また、溝形成用開口212及び、ビアホール穴あけ用開口209に溶融した重合体が流入するため、流入防止フィルムが必要となる。
【0141】
流入を防止するため、フィルム状の絶縁体106Aとフィルム状の絶縁体106Bの間にボンディングシートを挿入し、低温で張り合わせする方法もある。しかし、ボンディングシートの挿入は加工工程が煩雑であり、ボンディングシートによるコストアップを考慮すると、使用しない方が好ましい。実施の形態3の方法によれば、ボンディングシートを使用する必要はない。
【0142】
フィルム状絶縁体106Bの融点をフィルム状絶縁体106Aの融点よりも10℃低くし、フィルム状の絶縁体106Bの融点以上、絶縁体106Aの融点以下に加熱することで、絶縁体106Aを溶融することなく、シールドされた薄型フラットケーブル101に必要なフィルム状の絶縁体106A、導体204、内層電極214又は並列金属膜215と絶縁体106Bとの間に十分な接着力が得られる。
【0143】
フィルム状の絶縁体106Bは、フィルム状の絶縁体106A、導体204又は並列金属膜215と溶融されて張り合わされる。溶融による端部からの流れ出し、溝形成用開口212及び、ビアホール穴あけ用開口209への溶融した重合体の流入を抑制するために、フィルム状の絶縁体106Bは薄いことが好ましい。フィルム状の絶縁体106Bの厚さは20μm以上700μm以下である。接着層としては薄いほうが良いが、伝送特性を考慮すると20μm以上700μm以下が好適である。
【0144】
図8に示すように、フィルム状の絶縁体106Bは、絶縁体106Cと絶縁体106Dの2層とすることができる。3層以上であっても構わない。フィルム状の絶縁体106Bを少なくとも絶縁体106C及び絶縁体106Dの2層からなるフィルム状の絶縁体106Bとする。フィルム状の絶縁体106A及び導体204と接して張り合わされる側の絶縁体106Dは、導体204を挟持するフィルム状の絶縁体106Aの融点よりも10℃以上低い。絶縁体106Cの融点は、絶縁体106Dの融点よりも高くても構わない。フィルム状の絶縁体106Aの融点と同等、又はそれ以上であっても構わない。絶縁体106Bと金属膜202Cをあらかじめ貼り合わせたのちに、絶縁体106Dとフィルム状の絶縁体106Aを熱圧着して張り合わせても構わない。
【0145】
絶縁体106Cと絶縁体106Dの2層からなるフィルム状の絶縁体106Bは、共押出しにより成形することで、絶縁体106Cと絶縁体106D間に十分な接着が得られる。共押出しではなく、押出しラミネーション、ドライラミネーション等の他の加工方法により、少なくとも絶縁体106C及び絶縁体106Dからなるフィルム状の絶縁体106Bを得ても構わない。絶縁体106Dは、フィルム状の絶縁体106A、導体204又は並列金属膜215と溶融させて張り合わされるため、溶融による端部からの流れ出し、溝形成用開口212及び、ビアホール穴あけ用開口209への溶融した重合体の流入を抑制するために薄いことが好ましい。絶縁体106Dは10μm以下、より好ましくは、5μm以下である。
【0146】
絶縁体106Dを薄くし、絶縁体106Cを、電気特性を満足する厚さに調整することにより、寸法及び接着の安定したシールドされた薄型フラットケーブル101を形成することができる。絶縁体106Cと絶縁体106Dを合わせた厚さは、20μm以上700μmが好適である。
【0147】
フィルム状の絶縁体106Aがホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンの場合、フィルム状の絶縁体106Bはプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーポリプロピレンが適当である。ホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンの融点が、例えば160℃とするとランダムコポリマーポリプロピレンの融点は130℃とすることができる。
【0148】
フィルム状の絶縁体106Aが高密度ポリエチレンの場合、フィルム状の絶縁体106Bは直鎖状低密度ポリエチレンが適当である。高密度ポリエチレンの融点が、例えば140℃とする直鎖状低密度ポリエチレンの融点は100℃~120℃とすることができる。また、フィルム状の絶縁体106Aが直鎖状低密度ポリエチレンの場合、フィルム状の絶縁体106Bは、さらに低融点の直鎖状低密度ポリエチレンが適当である。直鎖状低密度ポリエチレンの融点が、例えば120℃とすると、低融点の直鎖状低密度ポリエチレンもしくは低密度ポリエチレンの融点は100℃とすることができる。
【0149】
フィルム状の絶縁体106A及び絶縁体106Cがホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンの場合、絶縁体106Dはプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーポリプロピレンが適当である。ホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンの融点が、例えば160℃とするとランダムコポリマーポリプロピレンの融点は130℃とすることができる。
【0150】
フィルム状の絶縁体106A及び絶縁体106Cが高密度ポリエチレンの場合、フィルム状の絶縁体106Dは直鎖状低密度ポリエチレンが適当である。高密度ポリエチレンの融点が、例えば140℃とする直鎖状低密度ポリエチレンの融点は100℃~120℃とすることができる。また、フィルム状の絶縁体106A及び絶縁体106Cが直鎖状低密度ポリエチレンの場合、絶縁体106Dは、さらに低融点の直鎖状低密度ポリエチレンが適当である。直鎖状低密度ポリエチレンの融点が、例えば120℃とすると、低融点の直鎖状低密度ポリエチレンもしくは低密度ポリエチレンの融点は100℃とすることができる。
【0151】
絶縁体106Dは、アルケンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であることが好ましい。導体204及び内層電極214との接着力を上げることができる。並列金属膜215についても同様である。絶縁体106Dの全体をアルケンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体とする必要はない。導体204及び内層電極214と張り合わせされる面に層として設けることで足りる。
【0152】
(実施の形態4)
実施の形態4に係るシールドされた薄型フラットケーブル101は、平面方向に複数のシールドされた薄型フラットケーブルを一体化して形成したシールドされた薄型フラットケーブル101である。
【0153】
実施の形態1及び実施の形態2では、1本のシールドされた薄型フラットケーブル101に1本の導体204が形成されていた。図9(A)に示すように、1本のシールドされた薄型フラットケーブル101に複数の導体204を設けることができる。また、金属膜202Dにより隔離された複数の絶縁体106に包まれた複数のシールドされた薄型フラットケーブルを平面方向に、一体化させたシールドされた薄型フラットケーブル101とすることができる。複数のシールドされた薄型フラットケーブルを平面方向に、一体化させること以外、実施の形態1及び実施の形態2と同一である。
【0154】
図9(A)の右側に示すのは、金属膜202Dにより隔離された絶縁体106に複数の導体204が包まれ、導体電極105の周囲以外の絶縁体106の表面に連続して金属膜202を有するシールドされた薄型フラットケーブルである。図9(A)の左側に示すのは、導体204が金属膜202Dにより隔離された絶縁体106に包まれ、絶縁体106の導体電極105の周囲以外の絶縁体106の表面に連続して金属膜202を有するシールドされた薄型フラットケーブルである。右側のシールドされた薄型フラットケーブルと左側のシールドされた薄型フラットケーブルという複数のシールドされた薄型フラットケーブルは一体化されたシールドされた薄型フラットケーブル101を構成している。
【0155】
水平方向に複数のシールドされた薄型フラットケーブルを一体化させることにより、複数のシールドされた線路を軽量かつ薄型で、高密度で配線できるという効果がある。
【0156】
図9(A)は、導体部102の断面を示し、図9(B)は端子部103の断面を示す。シールドされた薄型フラットケーブル101に複数の導体204を設けること、複数のシールドされた薄型フラットケーブルを平面方向に、複数一体化させたこと以外は実施の形態1と同様である。
【0157】
図9(A)の右に示されるシールドされた薄型フラットケーブルの複数の導体204間の距離は、5μm以上、10000μm以下である。5μm未満では、クロストークの懸念や短絡の恐れがある。10000μmを超えると製品が大きくなり面積当たりの取り数が少なくなるため実用的でない。また、複数の内面電極214間の間隔は実装設計より決まり、特に制約はないが、間隔は10μm以上である。10μm未満では、加工時の短絡、又ははんだ付け時の短絡の恐れがある。図9(A)では複数の内面電極214は、シールドされた薄型フラットケーブル101の長手方向の同じ位置に設けられているが、複数の内面電極214の位置を変えて、複数の導体204の長さを変えても構わない。図9(A)の左側のシールドされた薄型フラットケーブルについても同様であり、右側のシールドされた薄型フラットケーブルの導体204と長さを変えても構わない。
【0158】
図11に、図9に示す複数のシールドされた薄型フラットケーブルが一体化されたシールドされた薄型フラットケーブル101の製造工程を示す。
【0159】
図11(A)は、フィルム状の絶縁体106Aの両面に金属膜202A及び金属膜202Bが貼り合わされた積層体を示す。実施の形態1と同様の工程で得られる。
【0160】
図11(B)は、金属膜202Bを必要な複数の導体204及び内層電極214とし、金属膜202Aを必要な複数の導体電極105及び絶縁体106の面に連続して形成される金属膜202とする回路形成工程を示す。ここで、金属膜202Aの一部を除去することにより、必要な複数のビアホール穴あけ用開口209及び溝形成用開口212が形成される。
【0161】
図11(C)は、フィルム状の絶縁体106A、形成された複数の導体204及び内層電極214の上に、フィルム状の絶縁体106Bと金属膜202Cを順に張り合わせる工程を示す。フィルム状の絶縁体106Aとフィルム状の絶縁体106Bの張り合わせは熱圧着による。フィルム状の絶縁体106Aとフィルム状の絶縁体106Bにより複数の導体204及び内層電極214は挟持される。
【0162】
図11(D)は、フィルム状の絶縁体106、フィルム状の絶縁体106B及び金属膜202Cが張り合わせされて形成された積層体を示す。
【0163】
図11(E)は、導体204及び内層電極214の両側面に沿って、導体204と平行に必要な複数の線状の溝206及びビアホールとしての孔207を形成する工程を示す。線状の溝206の形成は、絶縁体106の片面の金属膜202Aを貫通することなく、もう一方の面の金属膜202Cを残し、絶縁体106を除去して、線状の溝206及びビアホールとしての孔207を形成できる装置により行う。装置とは、例えば、レーザー加工機、プラズマ化工機、サンドブラスト等を備える装置である。加工速度が速いことからレーザー加工機が好ましい。
【0164】
図11(F)は、図11(E)の状態の複数の線状の溝206に金属膜202Dを形成する工程、及び複数のビアホールとしての孔207に金属体を形成し、導体204から導通を引き出すためのビアホール208を設ける工程を示す。金属膜202Dおよびビアホール208の金属体の形成は、金属メッキ法が適している。1本の導体204と3本の導体204の間に形成された線状の溝206を金属メッキすることにより、図9(A)の左側のシールドされた薄型フラットケーブルと右側のシールドされた薄型フラットケーブルが金属膜202Dにより隔離され、複数のシールドされた薄型フラットケーブルが一体化された構成とすることができる。
【0165】
図11(G)は、金属膜202Aの一部を除去する工程を示す。金属膜202Aの一部を除去し、導体電極105と金属膜202の必要な複数のギャップ218を形成する工程である。図には示さないが必要に応じて、シールドされた薄型フラットケーブル101の外面に、絶縁層となるソルダーマスク211を形成する。
【0166】
図11(H)は、金属膜202Cを切断して個片化する工程を示す。一体化されたシールドされた薄型フラットケーブル101の外形となるように、金属膜202Cを線状の溝206に沿って切断することにより、シールドされた薄型フラットケーブル101を個片化する。
【0167】
実施の形態1において述べたように、集合体でシールドされた薄型フラットケーブル101を製造し、個片化することで、生産効率を上げることができる。単体のシールドされた薄型フラットケーブル101及び一体化されたシールドされた薄型フラットケーブル101を同時に形成して、個片化しても構わない。
【0168】
(実施の形態5)
実施の形態5に係るシールドされた薄型フラットケーブル101は、平面方向及び垂直方向に複数のシールドされた薄型フラットケーブルが一体化して形成されたシールドされた薄型フラットケーブル101である。水平方向には一体化されず、垂直方向のみに一体化されても構わない。
【0169】
実施の形態1及び実施の形態2では、1本のシールドされた薄型フラットケーブル101に1本の導体204が形成されていた。図10(A)に示すように、複数のシールドされた薄型フラットケーブルを水平方向及び垂直方向に複数一体化させたシールドされた薄型フラットケーブル101とすることができる。水平方向及び垂直方向に複数一体化させたシールドされた薄型フラットケーブル101とすること以外、実施の形態1、実施の形態2及び実施の形態4と同一である。
【0170】
図10(A)の左上に示すのは、導体204及び内層電極214に沿って、実施の形態2と同様に、導体並列金属層215を設けたシールドされた薄型フラットケーブルである。右上に示すのは、導体204が1本のシールドされた薄型フラットケーブルである。左下に示すのは、導体204が1本のシールドされた薄型フラットケーブルである。右下に示すのは、導体204が複数のシールドされた薄型フラットケーブルである。図10(A)のシールドされた薄型フラットケーブル101は4本のシールドされた薄型フラットケーブルが一体化された構成である。これら4本のシールドされた薄型フラットケーブルは、金属膜202D及び金属膜202Eにより隔離されている。
【0171】
垂直方向に一体化されるシールドされた薄型フラットケーブル101は、どのような構成でも構わない。導体204が単数でも複数でも構わない。導体204と並行して、導体並列金属膜215が設けられても構わない。
【0172】
実施の形態5は、実施の形態4と相違し、垂直方向に複数のシールドされた薄型フラットケーブルが一体化されていることが特徴である。水平方向には2以上のシールドされた薄型フラットケーブルを一体化することができるが、垂直方向には2本のシールドされた薄型フラットケーブルを一体化することが適切である。3本以上のシールドされた薄型フラットケーブルを一体化させると、中間のシールドされた薄型フラットケーブルは、導体電極105を端面に設けなければならないため、構成が複雑となってしまう。端面に導体電極105を設け、垂直方向に3本以上のシールドされた薄型フラットケーブルを一体化しても構わない。
【0173】
垂直方向に複数のシールドされた薄型フラットケーブルを一体化させることにより、平面での一体化よりさらに小型、軽量で高密度のシールドされた薄型フラットケーブル101を得ることができる。
【0174】
図10(A)は、導体部102の断面を示し、図10(B)は、端子部103の断面を示す。
【0175】
図12に、図10に示す複数のシールドされた薄型フラットケーブルが、水平方向及び垂直方向に一体化されたシールドされた薄型フラットケーブル101の製造工程を示す。
【0176】
図12(A)は、フィルム状の絶縁体106Aの両面に金属膜202A及び金属膜202Bが貼り合わされた積層体2枚を示す。積層体の製造工程は、実施の形態1と同様である。2枚の積層体を使用することで、垂直方向に2本のシールドされた薄型フラットケーブルを一体化することができる。
【0177】
図12(B)は、必要なビアホール穴あけ用開口209、溝形成用開口212、導体204、内層電極214及び導体並列金属膜215を形成する回路形成工程を示す。
【0178】
一体化されたとき、図10(A)に示す垂直方向の上部に複数のシールドされた薄型フラットケーブルを構成する積層体の上側の金属膜202に必要な複数のビアホール穴あけ用開口209及び溝形成用開口212を形成し、積層体の下側の金属膜202に必要な複数の導体204及び内層電極214を形成する。垂直方向の下部に複数のシールドされた薄型フラットケーブルを構成する積層体の下側の金属膜202に必要な複数のビアホール穴あけ用開口209及び溝形成用開口212を形成し、積層体の上側の金属膜202に必要な複数の導体204、内層電極214及び導体並列金属215を形成する。
【0179】
図12(C)は、2枚のフィルム状の絶縁体106の間に金属膜202Eを挟み、上部のフィルム状の絶縁体106の上にシールドされた薄型フラットケーブル101の上部を構成する積層体を、下部のフィルム状の絶縁体106の下にシールドされた薄型フラットケーブル101の下部を構成する積層体を張り合わせる工程を示す。図12(C)に示すように、5枚の構成材料を張り合わせる。張り合わせる方法は熱圧着によることが適当である。
【0180】
図12(D)は、ビアホール穴あけ用開口209及び溝形成用開口212が形成された金属膜202と,導体204、内面電極214及び導体並列金属膜215を包む絶縁体106と、金属膜202Eと、導体204、内面電極214を包む絶縁体106と、ビアホール穴あけ用開口209及び溝形成用開口212が形成された金属膜202が張り合わされて形成された積層体を示す。
【0181】
図12(E)は、金属膜202Eの上下の絶縁体106に、導体204及び内層電極214の両側面側に沿って、導体204と平行に必要な複数の線状の溝206及びビアホールとしての孔207を形成する工程を示す。線状の溝206の形成は、絶縁体106の上側の金属膜202を貫通することなく、また、絶縁体106の下側の金属膜202を貫通することなく、金属膜202Eを残し、レーザー加工により金属膜202Eの上下の絶縁体106を線状に除去して、線状の溝206及びビアホールとしての孔207を形成する。
【0182】
図12(F)は、図12(E)の複数の線状の溝206に金属膜202Dを形成する工程、及び複数のビアホールとしての孔207に金属体を形成し、導体204から導通を引き出すためのビアホール208を設ける工程を示す。金属膜202Dおよびビアホール208の金属体の形成は、金属メッキ法が適している。1本の導体204と内面電極214に沿って設けられた導体並列金属膜215と1本の導体204の間に形成された線状の溝206の壁面205を金属メッキし、金属膜202Dを形成することにより、金属膜202D及び金属膜202Eにより隔離される図10(A)の上部の2本のシールドされた薄型フラットケーブルが形成される。また、1本の導体204と3本の導体204の間に形成された線状の溝206の壁面205を金属メッキし、金属膜202Dを形成することにより、金属膜202D及び金属膜202Eにより隔離される図10(A)の下部の2本のシールドされた薄型フラットケーブルが形成される。複数のシールドされた薄型フラットケーブルが水平方向及び垂直方向に一体化された構成とすることができる。
【0183】
図12(G)は、金属膜202の一部を除去し、導体電極105と金属膜202に必要な複数のギャップ218を形成する工程である。
【0184】
図12(H)は、金属膜202Eの不要な一部を除去する工程を示す。図には示さないが必要に応じて、シールドされた薄型フラットケーブル101の外面に、絶縁層となるソルダーマスク211を形成する。
【0185】
実施の形態1において述べたように、集合体でシールドされた薄型フラットケーブル101を製造し、個片化することで、生産効率を上げることができる。単体のシールドされた薄型フラットケーブル101及び一体化されたシールドされた薄型フラットケーブル101を同時に形成して、個片化しても構わない。
【0186】
(実施の形態6)
図1(B)、(B-1)、(B-2)及び(B-3)に示すように、通常、導体204から導通を引き出し、信号の授受を行う端子となる導体電極105は、シールドされた薄型フラットケーブル101のフラットな面に設けられる。実施の形態6に係るシールドされた薄型フラットケーブル101は、図13に示すように、端面に導体電極105を設けたシールドされた薄型フラット101である。
【0187】
図13は、シールドされた薄型フラットケーブル101の端面に設けられる導体電極105を示す。図13(A)は左側側面図、(B)は平面図、(C)は右側側面図、(D)は下面図を示す。導体電極105はシールドされた薄型フラットケーブル101の端面及びフラットな面の上下の一部に設けられる。金属膜202と導体電極105とは、ギャップ218により隔てられ、通電しない。導体電極105はシールドされた薄型フラットケーブル101の内部に設けられる導体204から連続した金属膜となっている。図13では、導体電極105はシールドされた薄型フラットケーブル101の長手方向の端面に設けているが、短手方向の端面に設けても構わない。
【0188】
実施の形態6に係る端面に導体電極105を設けたシールドされた薄型フラット101の導体204、導体並列金属膜215、導体電極105、ギャップ218、絶縁体106及び金属膜202は、実施の形態1及び実施の形態2と同様の材料及び形状である。
【0189】
図14に、端面に導体電極105を設けたシールドされた薄型フラット101の製造工程を示す。この製造工程は、シールドされた薄型フラットケーブル101の端面に導体電極105を設けること以外、実施の形態1の製造工程を示す図2と同一である。但し、端面の導体電極105は、導体204から連続しているため、ビアホール208を設ける必要がない。
【0190】
図14(A)では、フィルム状の絶縁体106Aの両面に金属膜202A及び金属膜202Bを貼り合わせる。図14(B)では、金属膜202Bに対して回路形成工程を行うことにより、導体204及び溝形成開口212を設ける。シールドされた薄型フラットケーブル101の端面となる箇所に、導体204を連続して引き出すように設ける。
【0191】
図14(B)は、導体部102の断面を示している。図14(B)の平面図を図14(B―1)に示す。図14(B-1)に示すように、導体204をシールドされた薄型フラットケーブル101の長手方向の端面となる箇所に引き出すように曲げて設ける。シールドされた薄型フラットケーブル101の短手方向の端面に、導体204を直線的に引き出しても構わない。図14(B-1)に示すように、端面となる箇所で導体204を端面に沿って導体204の幅よりも広くすることが好ましい。幅を広くすることで、端面の壁面205に設ける金属メッキ202Dとの接続を確実に行うことができる。
【0192】
図14(C)では、フィルム状の絶縁体106A及び形成された導体204の上に、フィルム状の絶縁体106Bと金属膜202Cを順に張り合わせる。図14(D)に得られる積層体を示す。
【0193】
図14(E)では、レーザー加工により、溝形成開口212から絶縁体106を除去することにより、線状の溝206を形成する。線状の溝206の壁面205は、シールドされた薄型フラットケーブル101の端面となる箇所の導体204の端部に接して設けられる。線状の溝206の壁面205に設けられる金属膜202Dと導体204の端部を接続するためである。線状の溝206の形成に、レーザー加工とルーター加工を組み合わせてもよい。
【0194】
図14(F)では、線状の溝206の壁面205に金属メッキにより金属膜202Dを形成し、線状の溝206の壁面205に設けられる金属膜202Dと導体204の端部を接続する。
【0195】
図14(G)はシールドされた薄型フラットケーブル101の端子部103の断面を示している。図14(G)は、図14(F)に示す金属膜202A、202C及び202Dの一部を除去し、ギャップ218を形成する工程を示す。回路形成工程により、導体電極105となる箇所の周囲の金属膜202を除去し、導体電極105と金属膜202との間にギャップ218を形成する。ギャップ218は、シールドされた薄型フラットケーブル101のフラットな面の両側、及びフラットな面に設けられるギャップ218から連続してシールドされた薄型フラットケーブル101の端面の2か所に設けられる。
【0196】
図14(H)は、図14(G)に示す積層体の金属膜202の表面に、絶縁層となるソルダーマスク211を形成し、金属膜202Cを切断して個片化する工程を示す。実施の形態1と同様に、集合体でシールドされた薄型フラットケーブル101を製造しても構わない。
【0197】
図15には、シールドされた薄型フラットケーブル101の導体を2本とした場合の導体電極105を端面に設けたシールドされた薄型のフラットケーブル101を示す。図15(A)は図14(B-1)の工程に相当する平面図である。回路形成工程により、金属膜202Aから導体204を2本及び2本の導体204の外側に導体並列金属215を設ける。2本の導体204をシールドされた薄型フラットケーブル101の長手方向の異なる端面となる箇所に引き出すように曲げて設ける。図15(A)に示すように、端面となる箇所で導体204を端面に沿って導体204の幅よりも広くすることが好ましい。幅を広くすることで、端面の壁面205に設ける金属メッキ202Dとの接続を確実に行うことができる。
【0198】
導体204の厚さは9μm以上、100μm以下が好適である。9μm未満では、端面の壁面205に設ける金属メッキとの接続を確実に行なえず、断線しやすい。100μmを超えると、導体204の幅の加工精度が著しく悪くなる。
【0199】
図15(B)は、導体電極105が両端面に設けられるシールドされた薄型フラットケーブル101を示す。図15(B)は、ギャップ218を回路形成工程により形成した場合を示す。ギャップ218の端部を直線的にすることができる。線状の溝206の壁面205に形成された金属膜202Dの除去を回路形成工程により行うことは、フラットな面ではないため、レジスト膜の硬化工程が煩雑となる。端面の回路形成を行うため、エッチングレジストはドライフィルムではなく、液状のエッチングレジストを静電コートやロールコートで端面までレジストが塗布される方法で行う。また、露光も端面まで行うため、レーザー光等の方法で行う。端面の回路形成は通常のプリント配線板加工方法と異なるため、条件を管理する必要がある。
【0200】
線状の溝206の壁面205に形成された金属膜202Dの一部を除去して、ギャップ218を形成する工程を切削により行っても構わない。具体的には、ドリルビット又はルータビットにより切削を行うことも可能である。図15(C)は切削により、壁面205に形成された金属膜202Dを除去したもので、除去した端面が曲線となっている。
【0201】
端面に導体電極105を設けることにより、導体204から端面を使って導体電極105に引き出すため、ビアホール穴あけ用開口209を形成しない。また、端面及びフラットな面の上下の金属膜202を導体電極105の一部として使用できるので、はんだ付けの際フィレットを形成し、はんだ付け強度を向上することができる。
【0202】
本開示に係るシールドされた薄型フラットケーブルは、高密度実装が必要な通信機器、高周波、高速信号を使用する機器、EMI対策の必要な機器、耐薬品性の必要な機器等、具体的には、スマートフォン、IoT機器、通信基地局周辺機器、ADAS等自動車関連機器、リチウムイオン電池周辺機器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0203】
101・・シールドされた薄型フラットケーブル
102・・導体部
103・・端子部
105・・導体電極
106・・絶縁体
108・・スルーホール
202・・金属膜
204・・導体
205・・壁面
206・・線状の溝
207・・ビアホールとしての孔
208・・ビアホール
209・・ビアホール穴あけ用開口
211・・ソルダーマスク
212・・溝形成用開口
214・・内層電極
215・・導体並列金属膜
218・・ギャップ
【要約】      (修正有)
【課題】フィルム状の絶縁体の融点以上、他方の絶縁体の融点以下に加熱することで、他方の絶縁体を溶融することなく、フィルム状の絶縁体と導体、内層電極及び他方の絶縁体との間に十分な接着力を有するシールドされた薄型フラットケーブルを提供する。
【解決手段】金属からなる導体204、導体204を挟持し、導体204と導通し表面に露出する導体電極105以外の導体204を包む絶縁体106及び導体電極105の周囲以外の絶縁体106の表面に連続する金属膜202を有するシールドされた薄型フラットケーブルであって、導体204及び導体電極105に導通する内層電極214が形成される第1のフィルム状の絶縁体106A面の導体204、内層電極及214及び第1のフィルム状の絶縁体106Aに貼り合わせる第2のフィルム状の絶縁体106Bの融点を、第1のフィルム状の絶縁体の融点よりも10℃以上低くする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14
図15