(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】打抜装置
(51)【国際特許分類】
B26F 1/40 20060101AFI20250130BHJP
B26D 7/00 20060101ALI20250130BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20250130BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B26F1/40 A
B26D7/00 Z
B26D7/06 C
B26D7/02 D
(21)【出願番号】P 2020183228
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(72)【発明者】
【氏名】本間 富雄
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529552(JP,A)
【文献】特開2017-213609(JP,A)
【文献】特許第4062878(JP,B2)
【文献】特開平01-310898(JP,A)
【文献】特開昭62-130953(JP,A)
【文献】実開昭55-090658(JP,U)
【文献】特公昭57-025464(JP,B2)
【文献】特公昭33-001988(JP,B1)
【文献】特開2018-202552(JP,A)
【文献】特開2006-346778(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0087960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/40
B26D 7/00
B26D 7/06
B26D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、
シート状の被加工物の一端を保持する保持部を移動させて前記移動定盤及び前記対向定盤によって挟まれた打抜領域内の所定の
打抜位置に前記被加工物を搬送する保持搬送手段と、を備え
、
前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に近づけることで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって前記被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き処理を行う打抜装置において、
前記保持搬送手段に保持され前記打抜領域内を搬送される前記被加工物が通過する領域に気流を発生させる気流発生手段を備え、
前記気流発生手段は、前記打抜領域内の前記被加工物が通過する領域よりも下方に気流を吐出する下部気流吐出
口を有
し、
前記保持搬送手段は、搬送方向に直交する幅方向について前記抜型と対向する範囲の外側となる部分で前記被加工物の幅方向の一端部のみを保持し、
前記下部気流吐出口が吐出する下気流は、幅方向における前記一端部の側から他端部の側に向かう成分を有する気流であることを特徴とする打抜装置。
【請求項2】
上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、
シート状の被加工物の一端を保持する保持部を移動させて前記移動定盤及び前記対向定盤によって挟まれた打抜領域内の所定の
打抜位置に前記被加工物を搬送する保持搬送手段と、を備え
、
前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に近づけることで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって前記被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き処理を行う打抜装置において、
前記保持搬送手段に保持され前記打抜領域内を搬送される前記被加工物が通過する領域に気流を発生させる気流発生手段を備え、
前記気流発生手段は、
前記打抜領域内の前記被加工物が通過する領域よりも下方に気流を吐出する下部気流吐出口を有
し、
前記保持搬送手段は、搬送方向に直交する幅方向について前記抜型と対向する範囲の外側となる部分で前記被加工物の幅方向の一端部のみを保持し、
前記下部気流吐出口が吐出する下気流は、搬送方向の上流側から下流側に向かう成分を有する気流であることを特徴とする打抜装置。
【請求項3】
請求項1の打抜装置において、
前記下気流は、搬送方向の上流側から下流側に向かう成分を有する気流であることを特徴とする打抜装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れかに記載の打抜装置において、
前記保持搬送手段は、前記被加工物を二つのベルト部材で挟んで搬送するベルト搬送装置であり、
前記二つのベルト部材は、
前記幅方向について前記移動定盤の外側に位置し、前記打抜領域に位置する前記被加工物における前記打抜領域からはみ出した部分を挟んで保持することを特徴とする打抜装置。
【請求項5】
上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、
シート状の被加工物の一端を保持する保持部を移動させて前記移動定盤及び前記対向定盤によって挟まれた打抜領域内の所定の打抜位置に前記被加工物を搬送する保持搬送手段と、を備え、
前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に近づけることで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって前記被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き処理を行う打抜装置において、
前記保持搬送手段に保持され前記打抜位置に向けて搬送される前記打ち抜き処理前の前記被加工物に向けて気流を発生させる気流発生手段を備え、
前記気流発生手段は、前記打抜領域内の前記被加工物が通過する領域よりも下方に気流を吐出する下部気流吐出口を有し、
前記保持搬送手段は、前記被加工物の搬送方向の先端部のみを保持し、
前記気流発生手段は、前記下部気流吐出口から吐出する気流として、前記打抜領域内を搬送される前記被加工物の前記保持搬送手段に保持される先端側から後端側に向かう気流を発生することを特徴とする打抜装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の打抜装置において、
前記気流発生手段は、前記打抜領域内の前記被加工物が通過する領域よりも上方に気流を吐出する上部気流吐出口を有することを特徴とする打抜装置。
【請求項7】
請求項6の打抜装置において、
前記気流発生手段は、前記上部気流吐出口から吐出する気流として、前記打抜領域内を搬送される前記被加工物の搬送方向上流側から下流側に向かう気流を発生することを特徴とする打抜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打抜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下方向等に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、移動定盤を対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、シート状の被加工物の一端を保持する保持部を移動させて移動定盤及び前記対向定盤によって挟まれた打抜領域に被加工物を搬送する保持搬送手段と、を備える平盤打抜装置が知られている。この種の打抜装置では、被加工物を打抜領域に搬送し、移動定盤を対向定盤に近づけることで、移動定盤と対向定盤との一方に取り付けられた抜型によって被加工物を所定の形状に打ち抜く。
【0003】
平盤打抜装置として、特許文献1には、グリッパーと呼ばれる保持部をエンドレスチェーンに複数配置した保持搬送手段を備える構成が記載されている。この打抜装置では、被加工物であるシートの先端部をグリッパーで把持してエンドレスチェーンを回転させることによってシートを搬送するものである。このようにグリッパーでシートの先端部を把持して搬送する構成では、グリッパーが打抜領域を通過した直後に停止し、移動定盤を対向定盤に向けて移動させる。これにより、グリッパーで把持したシートを打抜領域に停止させ、所定の形状に打ち抜くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5399231号
【文献】特開2017-213609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、シート状の被加工物の先端のみを保持部で保持して搬送する保持搬送手段では、被加工物の後端側が垂れ下がり、搬送中の被加工物が下方の移動定盤に接触するおそれがある。
保持搬送手段としては、特許文献2に記載のシート材搬送機構のように、幅方向の一方の端部に二つのベルト部材を設け、二つのベルト部材の接触部で被加工物の幅方向の一端部を挟んで保持し、ベルトの回転によって被加工物を搬送するものがある。移動定盤と固定定盤とを備える平盤打抜装置の保持搬送手段として、特許文献2の保持搬送手段を用いると、保持搬送手段によって保持されていない幅方向の他端側は垂れ下がり、搬送中の被加工物の他端が下方の移動定盤に接触するおそれがある。搬送中の被加工物の幅方向の端部が移動定盤に接触すると、被加工物が移動定盤に引っかかり、被加工物が損傷する恐れがある。
このように、シート状の被加工物の一端のみを保持して搬送する構成で、被加工物が打抜装置の部材に接触する不具合は、他端側が垂れ下がって下方に位置する部材に接触する場合に限らない。例えば、搬送中の被加工物の保持されていない他端側が浮き上がり、被加工物が上方に位置する部材に接触する不具合も生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一つ目の態様は、上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、シート状の被加工物の一端を保持する保持部を移動させて前記移動定盤及び前記対向定盤によって挟まれた打抜領域内の所定の打抜位置に前記被加工物を搬送する保持搬送手段と、を備え、前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に近づけることで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって前記被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き処理を行う打抜装置において、前記保持搬送手段に保持され前記打抜領域内を搬送される前記被加工物が通過する領域に気流を発生させる気流発生手段を備え、前記気流発生手段は、前記打抜領域内の前記被加工物が通過する領域よりも下方に気流を吐出する下部気流吐出口を有し、前記保持搬送手段は、搬送方向に直交する幅方向について前記抜型と対向する範囲の外側となる部分で前記被加工物の幅方向の一端部のみを保持し、前記下部気流吐出口が吐出する下気流は、幅方向における前記一端部の側から他端部の側に向かう成分を有する気流であることを特徴とするものである。
また、本発明の二つ目の態様は、上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、シート状の被加工物の一端を保持する保持部を移動させて前記移動定盤及び前記対向定盤によって挟まれた打抜領域内の所定の打抜位置に前記被加工物を搬送する保持搬送手段と、を備え、前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に近づけることで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって前記被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き処理を行う打抜装置において、前記保持搬送手段に保持され前記打抜領域内を搬送される前記被加工物が通過する領域に気流を発生させる気流発生手段を備え、前記気流発生手段は、前記打抜領域内の前記被加工物が通過する領域よりも下方に気流を吐出する下部気流吐出口を有し、前記保持搬送手段は、搬送方向に直交する幅方向について前記抜型と対向する範囲の外側となる部分で前記被加工物の幅方向の一端部のみを保持し、前記下部気流吐出口が吐出する下気流は、搬送方向の上流側から下流側に向かう成分を有する気流であることを特徴とするものである。
また、本発明の三つ目の態様は、上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、シート状の被加工物の一端を保持する保持部を移動させて前記移動定盤及び前記対向定盤によって挟まれた打抜領域内の所定の打抜位置に前記被加工物を搬送する保持搬送手段と、を備え、前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に近づけることで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって前記被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き処理を行う打抜装置において、前記保持搬送手段に保持され前記打抜位置に向けて搬送される前記打ち抜き処理前の前記被加工物に向けて気流を発生させる気流発生手段を備え、前記気流発生手段は、前記打抜領域内の前記被加工物が通過する領域よりも下方に気流を吐出する下部気流吐出口を有し、前記保持搬送手段は、前記被加工物の搬送方向の先端部のみを保持し、前記気流発生手段は、前記下部気流吐出口から吐出する気流として、前記打抜領域内を搬送される前記被加工物の前記保持搬送手段に保持される先端側から後端側に向かう気流を発生することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被加工物における保持搬送手段によって保持されていない他端側の垂れ下がりや浮き上がりを抑制し、搬送中の被加工物が下方や上方に位置する部材に接触することを抑制できる、という優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】手前フレームと奥フレームとを非表示としたダイカッターの正面図。
【
図6】手前フレームと奥フレームとを非表示としたダイカッターの背面図。
【
図7】手前フレームと奥フレームとを非表示としたダイカッターの斜視図。
【
図14】円柱部が下死点から上死点まで移動するように昇降伝達機構を駆動させた ときの昇降伝達ロッドと円柱部との変位を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
以下、本発明に係る打抜装置と、この打抜装置を備えた打抜処理システムとの一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る打抜処理システムであるダイカットシステム500の概略斜視図である。
ダイカットシステム500は、被加工物であるシート材の搬送方向上流側からシートフィーダー200、レジスト装置300、ダイカッター100及び排出処理装置400を備える。
【0012】
ダイカットシステム500では、被加工物供給手段であるシートフィーダー200が、載置棚に載置されたシート材をレジスト装置300に向けて供給する。被加工物位置補正手段であるレジスト装置300は、シート材の搬送方向に平行な方向(図中のX軸方向)に対するシート材の傾きや、幅方向(図中のY軸方向)のシート材の位置を調整し、ダイカッター100に向けてシート材を搬送する。打抜装置であるダイカッター100は、レジスト装置300から供給されたシート材を一旦停止し、詳細は後述する固定定盤と移動定盤とで挟むことでシート材を固定定盤に装着された抜型の形状に打ち抜く打抜処理を行う。排出処理装置400は、ダイカッター100で打抜処理が施されて排出されるシート材を受け取る排出ユニットと、打抜処理が施されたシート材を成果物と余剰部とに分離するセパレーターと、分離された成果物を集積するスタッカーとを備える。
図1に示すように、ダイカッター100は、その上面に操作パネル101を備える。
【0013】
次に、ダイカッター100について説明する。
図2~
図7は、外装カバーを取り外した状態のダイカッター100の説明図である。
図2は、ダイカッター100の正面図である。
図3は、
図2中の右側から見たダイカッター100の上流側側面図、
図4は、
図2中の左側から見たダイカッター100の下流側側面図である。
図5は、
図2の正面図から手前フレーム5と奥フレーム6とを非表示としたダイカッター100の正面図であり、
図6は、
図5に示す状態の手前フレーム5と奥フレーム6とを非表示としたダイカッター100の背面図である。また、
図7は、手前フレーム5と奥フレーム6とを非表示としたダイカッター100の斜視図である。
図8は、
図3に示すダイカッター100の上流側側面図を模式的に示した説明図である。
【0014】
図2~
図7に示すように、ダイカッター100は、装置のフレーム(5,6,7等)に対して上下動可能な移動定盤1と、移動定盤1の上方に対向配置され、装置のフレームに対して固定された固定定盤2と、を備える。
ダイカッター100は、金属製のフレーム構造として、架台フレーム7、手前フレーム5、奥フレーム6、上流ガイドフレーム21及び下流ガイドフレーム23を備える。架台フレーム7は、移動用のキャスターと、移動防止固定機構とを有する。手前フレーム5及び奥フレーム6は、板状部材であって、その下部が架台フレーム7に固定されている。上流ガイドフレーム21及び下流ガイドフレーム23は、装置の幅方向に延在し、その両端が手前フレーム5と奥フレーム6とに固定された角棒状の部材である。
固定定盤2は、手前フレーム5及び奥フレーム6の上部に固定されている。また、
図8に示すように、切断刃81を有する抜型8は、ステンレス板82を挟んで固定定盤2の下面に固定されている。一方、移動定盤1の上面には面板9が固定されている。
【0015】
ダイカッター100は移動定盤1を上下動させる移動機構として、四つの昇降伝達機構4(4a、4b、4c、4d)と、四つのプレスモータ3(3a、3b、3c、3d)と、を備える。移動定盤1は、その下部に、軸方向が搬送方向に平行な四つの円柱部10(10a、10b、10c、10d)が固定されている。昇降伝達機構4は、入力された回転運動を上下方向の往復運動に変換するクランク機構の構成を備え、プレスモータ3が回転駆動し、昇降伝達機構4が昇降運動を円柱部10に伝達することで、移動定盤1が上下方向に移動する。
図2~
図7は、四つ全ての円柱部10が昇降伝達機構4の下死点に位置する状態であり、移動定盤1の可動範囲で、移動定盤1が固定定盤2から最も離れた状態の説明図である。
図8は、移動定盤1が上部停止位置まで上昇し、抜型8の切断刃81によってシート材Sを打ち抜いた状態の説明図である。
【0016】
移動定盤1は、
図3に示すように、搬送方向上流側の面の幅方向の中央部に、図中のX軸に平行で搬送方向上流側に突き出した上流側被ガイド軸11を備える。また、移動定盤1は、
図4に示すように、搬送方向下流側の面の幅方向の中央部に、図中のX軸に平行で搬送方向下流側に突き出した下流側被ガイド軸12を備える。上流側被ガイド軸11及び下流側被ガイド軸12には上流側被ガイドベアリング11a及び下流側被ガイドベアリング12aが設けられている。
【0017】
図3に示すように、上流ガイドフレーム21の幅方向の中央部には、上流側ガイド部22を備える。上流側ガイド部22は、搬送方向下流側に突き出し、上下方向に延在する二本の上流側ガイドレール22aを備え、二本の上流側ガイドレール22aで上流側被ガイドベアリング11aを挟むように係合することで、上流側被ガイド軸11の幅方向の移動を規制する。
また、
図4に示すように、下流ガイドフレーム23の幅方向の中央部には、下流側ガイド部24を備える。下流側ガイド部24は、搬送方向上流側に突き出し、上下方向に延在する二本の下流側ガイドレール24aを備え、二本の下流側ガイドレール24aで下流側被ガイドベアリング12aを挟むように係合することで、下流側被ガイド軸12の幅方向の移動を規制する。
上流側ガイド部22及び下流側ガイド部24によって上流側被ガイド軸11及び下流側被ガイド軸12の幅方向の移動を規制することで、移動定盤1が上下動する際の移動定盤1の幅方向の変位を防止できる。
【0018】
ダイカッター100は、レジスト装置300から供給されたシート材Sを装置内部に向けて搬送する入口ローラ対20と、移動定盤1に対して幅方向の奥側に配置され、シート材Sを搬送する搬送ベルト対(14、15)とを備える。また、入口ローラ対20と搬送ベルト対との駆動源である搬送駆動モータ13と、駆動力を伝達する搬送駆動伝達機構16とを備える。入口ローラ対20は、入口駆動ローラ20aと入口従動ローラ20bとを備える。搬送駆動モータ13を駆動することで、入口駆動ローラ20a、下搬送ベルト14及び上搬送ベルト15が同じ表面移動速度で無端移動する。これにより、入口ローラ対20によってシート材Sの幅方向の複数箇所を挟んで搬送ベルト対(14、15)に向けて搬送する。さらに、下搬送ベルト14と上搬送ベルト15とによってシート材Sの幅方向の一方(装置の奥側)の端部を挟んで、挟んだ部分のベルト表面が移動することでシート材Sを搬送する。
【0019】
図8に示すように、ダイカッター100は、搬送ベルト対(14、15)を支持するベルト支持機構32を備える。ベルト支持機構32は、奥フレーム6に固定された固定プレート34と、固定プレート34に対して上下方向に移動可能な可動プレート33とを備える。
【0020】
図9は、ダイカッター100の正面の模式図である。
図9(a)は、シート材Sを打抜領域に向けて搬送する途中の説明図であり、
図9(b)は、シート材Sを打抜領域で停止後、移動定盤1を上昇させた状態の説明図である。
図10は、シート材Sの搬送中のダイカッター100の説明図である。
図10(a)は、シート材Sが通過する領域よりも上方の平面のおける平面図に、詳細は後述する上気流A2を追記した模式図である。
図10(b)は、ダイカッター100の正面図に、詳細は後述する上気流A2及び下気流A1を追記した模式図である。
図10(c)は、シート材Sが通過する領域よりも下方の平面のおける平面図に、詳細は後述する下気流A1を追記した模式図である。
【0021】
下搬送ベルト14は、下駆動ローラ140、複数の下張架ローラ141及び下テンションローラ142に張架されている。上搬送ベルト15は、上駆動ローラ150、複数の上張架ローラ151及び上テンションローラ152に張架されている。
【0022】
搬送駆動モータ13が駆動すると搬送駆動伝達機構16によって駆動が伝達され、上駆動ローラ150及び下駆動ローラ140が回転し、上搬送ベルト15及び下搬送ベルト14が回転する。
【0023】
図9(a)に示すように、複数の下張架ローラ141と複数の上張架ローラ151とが、下搬送ベルト14の上部張架面と上搬送ベルト15の下部張架面との間でシート材Sを挟む面を水平に形成するように、下搬送ベルト14と上搬送ベルト15との経路を規定する。このシート材Sを挟む面を形成する下張架ローラ141及び上張架ローラ151は、
図8に示すように、上下動可能なローラ保持部材である可動プレート33に支持されている。移動定盤1は、幅方向の奥側に突き出した突出部29を備える。
【0024】
打抜処理を行う際には、搬送ベルト(14及び15)によってシート材Sを移動定盤1と固定定盤2との間まで搬送して、下搬送ベルト14と上搬送ベルト15とを停止し、移動定盤1を上昇する。
移動定盤1が上昇すると、突出部29が可動プレート33の下端部に接触し、さらに、移動定盤1が上昇することで突出部29が可動プレート33を押し上げて、可動プレート33に保持された下張架ローラ141及び上張架ローラ151が上昇する。そして、
図9(b)に示すように、下搬送ベルト14の上部張架面における下張架ローラ141に張架される部分と、上搬送ベルト15の下部張架面における上張架ローラ151に張架される部分とが、移動定盤1とともに上昇する。これにより、下搬送ベルト14の上部張架面と上搬送ベルト15の下部張架面とのシート材Sを挟む部分が移動定盤1とともに上昇することとなり、移動定盤1の上昇に合わせて、加工対象のシート材Sを固定定盤2に向けて上昇させることができる。
【0025】
図8に示すように、固定プレート34は手前側に突き出した上突出板34a及び下突出板34bを備え、上突出板34aと下突出板34bとを繋ぎ、上下方向に延びる張架ベルトスライド軸を備える。
可動プレート33は奥側に突き出し、上突出板34aと下突出板34bとの間に位置するスライド部材33aを備える。スライド部材33aには、張架ベルトスライド軸を通す貫通孔を備え、スライド部材33aが張架ベルトスライド軸に沿って上下動することで、可動プレート33が上下方向に移動する。スライド部材33aの上面と上突出板34aの下面との間には、可動プレート位置決めバネを備え、スライド部材33aを下方に押圧する。
【0026】
移動定盤1が上昇する前は、突出部29が可動プレート33を押し上げておらず、可動プレート位置決めバネに押し下げられたスライド部材33aが下突出板34bの上面に突き当たる。この突き当たりにより、スライド部材33aを有する可動プレート33の固定プレート34に対する位置決めができ、可動プレート33に保持される上張架ローラ151及び下張架ローラ141の上下方向の位置決めができる。移動定盤1が上昇し、突出部29が可動プレート33を押し上げると、スライド部材33aが上昇し、可動プレート位置決めバネが圧縮した状態となる。この状態では、可動プレート位置決めバネに付勢された可動プレート33が突出部29に突き当たる状態となり、可動プレート33の位置決めができ、上張架ローラ151及び下張架ローラ141の上下方向の位置決めができる。
【0027】
搬送ベルト対(14、15)で挟んだシート材Sを上下方向に移動させる構成としては、搬送駆動機構(搬送駆動モータ13、搬送駆動伝達機構16)を含めて、搬送ベルト対(14、15)を上下方向に移動可能な保持ユニットに保持させてもよい。この場合、移動定盤1の突出部29で搬送駆動機構を含めた搬送ベルト対を保持する保持ユニットを押し上げる構成となる。
【0028】
図12は、ダイカッター100のブロック図である。
打抜装置であるダイカッター100は、移動定盤1を固定定盤2に向けて上下動させる移動機構(プレスモータ3及び昇降伝達機構4)を制御する制御手段である制御部30を備える。そして、移動機構が、移動定盤1を固定定盤2に近づけることで、移動定盤1と固定定盤2との少なくとも一方(本実施形態では固定定盤2)に取り付けられた抜型8によって被加工物であるシート材Sを所定の形状に打ち抜く。
ダイカッター100の制御部30は、操作パネル101や入口センサ25からの出力に基づいて、四つのプレスモータ3(3a~3d)と搬送駆動モータ13との駆動を制御する。本実施形態のダイカッター100では、制御部30が、四つのプレスモータ3(3a~3d)をそれぞれ独立して駆動制御可能となっている。
【0029】
次に、打抜処理を行う際の準備作業について説明する。
シートフィーダー200では、打抜加工を施すシート材Sの束を載置棚に載置する。
【0030】
ダイカッター100では、抜型8を固定定盤2にセットし、面板9を移動定盤1にセットする。抜型8や面板9をセットする際には、排出処理装置400を構成するユニットのうち最もダイカッター100寄りの位置に設けられている排出ユニットを、手動または電動で下降させる。これにより、固定定盤2と移動定盤1との間のシート材Sを通過させる空間の出口側が開かれ、外部からのアクセスが可能となる。
【0031】
固定定盤2の下方には、抜型8を搬送方向に沿う方向にスライドさせることができる型スライドガイドを備える。抜型8を装置本体の搬送方向下流側から固定定盤2の下方の空間に挿入することで、抜型8が型スライドガイドに沿って搬送方向の上流側に向けてスライドする。抜型8の挿入方向の先端が型突き当て板19に突き当たるまで抜型8を挿入し、型固定レバー17を引き下げて
図2等に示す状態にすることで、型固定部材18が抜型8を型突き当て板19に突き当て、且つ、抜型8を固定定盤2の下面に突き当てた状態でロックされる。これにより、抜型8を固定定盤2に対して固定する。
【0032】
抜型8についての情報を呼び出すためのバーコード等の識別子が抜型8に付与されている場合は、ハンディースキャナ等の読み取り手段で識別子を読み取った後に抜型8を固定定盤2にセットする。
【0033】
抜型8と面板9とをセットした後は、排出ユニットを所定の位置まで手動または電動で上昇させる。
【0034】
次に、操作パネル101や外部入力装置を用いてジョブ設定を行う。設定内容としては、シート材Sのサイズ、抜型8の切断刃81の高さ、抜型8のシートの厚さ、打抜回数、抜型基準位置及びシート基準位置等を挙げることができる。
ここで、抜型8のシートの厚さとは、抜型8の上面に固定されるステンレス板82と、このステンレス板82の上面に固定され、抜型8の切断刃81の配置が描かれた画像シートと、画像シートの上面を覆う保護シートと、の厚さの総和である。
抜型8は、その上面にステンレス板82、必要に応じシムテープが貼り付けられた画像シート、保護シートの順に積層した状態でダイカッター100に対して挿脱される。
【0035】
ステンレス板82は、抜型8の切断刃81が、面板9に押し上げられて抜型8の裏面(上面)から突き出すことを防止する部材である。画像シートは、抜型8の切断刃81の配置を確認できるものであり、切断刃81の配置から打抜圧が不足する箇所が分かる場合に、ムラ取り用のシムテープを画像シートの上面に貼り付けておくことができる。保護シートは、ムラ取り用のシムテープを貼った画像シートの上面を覆って保護するため、抜型8をセットするためにスライドさせた際に、ムラ取り用のシムテープが固定定盤2の下面と擦れて剥がれることを防止できる。
【0036】
上述した抜型基準位置及びシート基準位置は、打抜処理時のシート材Sの停止位置が、シート材S上の切断されるべき位置と抜型8の切断刃81の位置とが合致する停止位置となるようにするためにジョブ設定で入力する基準値である。
シート材Sは、搬送ベルト対(14、15)よりも上流側に配置された入口センサ25がシート材Sの後端を検知してから、所定の停止パルス数を取得した時点で停止し、その停止位置で打ち抜きが行われる。
ジョブ設定において、作業者は、抜型8の切断刃81のうちの任意の刃基準点を抽出し、その刃基準点から、抜型8の上流側端部までの距離である抜型基準位置を入力する。また、作業者は、打ち抜かれるシート材S上の切断されるべき位置のうち、上述した刃基準点に対応する被切断基準点を抽出し、その被切断基準点から、打ち抜かれるシート材Sの上流側端までの距離であるシート基準位置を入力する。
制御部30は、入力された抜型基準位置とシート基準位置とに基づいて、刃基準点と被切断基準点とが合致する停止位置でシート材Sが停止するように、上述した停止パルス数を算出し、設定する。この処理によって、打抜処理時の、抜型8の切断刃81と、シート材S上の切断されるべき位置とを一致させることができる。
【0037】
ダイカッター100で実行させるジョブが、シート材Sに筋を付ける筋付け処理を含む場合には、面板9に筋付け対向凹部材を固定する作業を行う。この作業では、筋付け対向凹部材の下面に両面テープを貼り、抜型8に設けられた筋付け凸部に対して筋付け対向凹部材とクリップとを取り付ける。この状態で筋付け凹部転写ボタンが操作されると、移動定盤1が打抜処理動作よりも少ない移動量で移動し、面板9が対向凹部材の下面に接触し、両面テープによって対向凹部材を面板9に貼り付ける。貼り付けた対向凹部材にはクリップが残っているので、移動定盤1から面板9を取り外し、不要部材であるクリップを除去し、面板9を移動定盤1に固定する。
【0038】
ダイカッター100では、上述した各種の設定の後、シート材Sを連続的に搬送して連続的に打抜処理を行う量産処理の前に、適切な打ち抜きが行えるように調整処理を行う。
【0039】
調整処理では、シート材Sを一枚だけ給送し、打抜処理を行うテスト給送を行う。テスト給送では、ダイカッター100による打抜処理は行うが、セパレーターによる分離処理を行わず、打抜処理の成果物と余剰部とが分離されていない状態のものをスタッカーに排出する。
作業者が操作パネル101のテスト給送ボタンを押すことで、テスト給送を行い、テスト給送での成果物を作業者が見て各部の調整を行う。必要に応じて、テスト給送と調整操作とを繰り返す。
【0040】
調整操作は、操作パネル101で行うが、外部入力装置で行ってもよい。
調整する対象は、シート材Sの幅方向の位置、搬送方向に対するシート材Sの傾き(スキュー)、打抜時に停止させたときのシート材Sの搬送方向の位置等である。また、本実施形態のダイカッター100は、詳細は後述するように、抜きムラを補正する調整も操作パネル101の操作で行うことができる。作業者は、テスト給送で得られたシート材Sを目視し、その抜きずれ、抜きムラに基づいて、調整操作を行う。
【0041】
調整処理後、作業者が操作パネル101で、処理枚数と処理速度を入力し、スタートボタンを押すことで、量産処理を実行する。量産処理は、入力された処理枚数の処理満了、エラーの検出または作業者によるストップボタンの操作によって停止する。
スタートボタン及びストップボタンを、操作パネル101だけでなく、シートフィーダー200の操作部にも設け、どちらからでも操作可能としてもよい。
【0042】
次に、ダイカッター100での打抜処理の動作について説明する。
操作パネル101のスタートボタンが押されると、シートフィーダー200からシート材Sが送られ、レジスト装置300でシート材Sの傾きや幅方向の位置が補正され、ダイカッター100にシート材Sが供給される。ダイカッター100では、搬送駆動モータ13が駆動し、搬送ベルト対の下搬送ベルト14及び上搬送ベルト15が無端移動を開始する。そして、レジスト装置300から供給されたシート材Sを搬送ベルト対で挟んで搬送する。搬送ベルト対の上流側に配置された入口センサ25でシート材Sの後端を検知してから所定のタイミング経過後に搬送駆動モータ13を停止する。これにより、搬送ベルト対で挟んだシート材Sを移動定盤1と固定定盤2とに挟まれた打抜領域内における所定の打抜位置に停止させる。
【0043】
次に、四つのプレスモータ3を駆動し、移動定盤1を上昇させる。移動定盤1が上昇すると、移動定盤1の突出部29が上述したローラ保持部材を押し上げ、搬送高さにあったシート材Sも上昇する。四つのプレスモータ3をそれぞれ所定の回転量だけ正転駆動して停止することで、移動定盤1が上部停止位置に到達し、シート材Sが抜型8の切断刃81の形状に打ち抜かれる。
【0044】
次に、四つのプレスモータ3が所定の回転量だけ逆転駆動して停止することで、移動定盤1が下降して下部停止位置に到達する。このとき、ローラ保持部材も移動定盤1とともに下降し、シート材Sが搬送高さまで下降する。この後、搬送駆動モータ13の駆動を再開することで、打抜処理を施したシート材Sを排出処理装置400に搬送するとともに、レジスト装置300から供給される後続のシート材Sを搬送ベルト対で挟んで打抜位置まで搬送する。
量産処理の際には、これらの動作を繰り返す。
【0045】
上述した説明では、搬送駆動モータ13が停止後にプレスモータ3を正転駆動させ、プレスモータ3の逆転駆動を停止後に搬送駆動モータ13の駆動を再開させているが、モータの駆動タイミングとしてはこれに限るものではない。詰まり等のシート材Sの搬送不良が生じない範囲で、搬送駆動モータ13の停止前にプレスモータ3を正転駆動させてもよいし、プレスモータ3の逆転駆動の停止前に搬送駆動モータ13の駆動を再開させてもよい。搬送駆動モータ13の駆動期間とプレスモータ3の駆動期間とが重なる期間を設けることで、処理速度の向上を図ることができる。
【0046】
次に、打抜動作の際のプレスモータ3の動きについて説明する。
搬送駆動モータ13の駆動時には、昇降伝達機構4が下部停止位置で待機するように、制御部30は、サーボモータであるプレスモータ3の回転位置が下部停止位置に対応した下基準回転位置となるように回転位置を制御する。
【0047】
入口センサ25でシート材Sの後端の通過を検知してから所定のタイミング経過後に搬送駆動モータ13を停止し、プレスモータ3の正回転を開始する。そして、昇降伝達機構4が上部停止位置となるように、プレスモータ3を上基準回転位置まで正回転させて停止する。
四つすべてのプレスモータ3の回転位置が上基準回転位置となり、正回転が停止すると、所定時間(20[msec(ミリ秒)])待機し、その後は、逆回転を開始する。四つのプレスモータ3は下基準回転位置まで逆回転すると停止する。
このように四つのプレスモータ3が、下基準回転位置から上基準回転位置まで回転する正回転と、上基準回転位置から下基準回転位置まで回転する逆回転と、を繰り返すことで、打抜処理を行う。
【0048】
図13は、四つの昇降伝達機構4のうちの一つの概略説明図である。
図13(a)は、X-Z平面の説明図、
図13(b)は、Y-Z平面の説明図、
図13(c)は、斜視図である。
図13に示すように、昇降伝達機構4は、回転出力ギヤ31と係合する回転入力ギヤ41と、回転入力ギヤ41ともに回転する偏心シャフト44と、架台フレーム7に固定され、偏心シャフト44の回転軸部441を回転可能に保持するシャフト保持部42と、を備える。さらに、昇降伝達機構4は、下部が偏心シャフト44の偏心軸部442と係合し、上部が移動定盤1の円柱部10と係合する昇降伝達ロッド43を備える。
【0049】
図14は、円柱部10が下死点から上死点まで移動するように、偏心シャフト44を回転軸部441の中心線周りで回転させたときの昇降伝達ロッド43と円柱部10との変位を示す説明図である。
図14(a)は、円柱部10が下死点に位置する状態の説明図、
図14(b)は、円柱部10が下死点と上死点との中間に位置する状態の説明図、
図14(c)は、円柱部10が上死点に位置する状態の説明図である。
【0050】
偏心シャフト44は、シャフト保持部42に係合する回転軸部441と、昇降伝達ロッド43に係合する偏心軸部442とで中心線の位置が異なる部材である。回転入力ギヤ41は、回転軸部441と中心線の位置が一致する。
【0051】
プレスモータ3が回転駆動して回転出力ギヤ31が回転すると、回転入力ギヤ41が回転し、回転入力ギヤ41が固定された偏心シャフト44は、回転軸部441の中心線周りで回転する。これにより、偏心軸部442が回転軸部441の中心軸周りを回転移動し、偏心軸部442に係合する昇降伝達ロッド43と、昇降伝達ロッド43に係合する円柱部10とが移動する。このとき、円柱部10を有する移動定盤1は、上流側ガイド部22及び下流側ガイド部24によって幅方向(
図14中の左右方向、Y軸に平行な方向)への移動が規制され、円柱部10も幅方向へは移動しない。このため、偏心シャフト44の回転によって偏心軸部442が上下方向及び幅方向に変位すると、
図14(b)に示すように、昇降伝達ロッド43が傾きつつ、円柱部10は上下方向のみに移動する。
【0052】
本実施形態の偏心シャフト44は、回転軸部441の中心軸と偏心軸部442の中心軸との偏心量が15[mm]である。このため、
図14(a)に示す下死点の状態から
図14(c)に示す上死点の状態まで偏心シャフト44を回転させたときの円柱部10の変位量である上下可動範囲Hは、30[mm]である。
【0053】
移動定盤1を移動させる移動機構は、複数の加圧部としての四箇所の円柱部10を、それぞれ独立して加圧する複数の加圧機構としての四つの昇降伝達機構4(4a~4d)と、これらをそれぞれ駆動する複数の駆動源としての四つのプレスモータ3(3a~3d)とを有する。
制御部30は、四つのプレスモータ3をそれぞれ独立して駆動を制御することができるため、上部停止位置に対応する上基準回転位置をプレスモータ3毎に変更することができる。これにより、上部停止位置のときの円柱部10の高さを個別に変更することができる。
【0054】
本実施形態のダイカッター100では、偏心シャフト44を一回転させるような制御を行わず、円柱部10が下死点と上死点との間に挟まれた範囲である下部停止位置と上部停止位置との間を行き来する制御を行う。
偏心シャフト44の回転角度θについて、円柱部10が下死点のときをθ=0[°]とすると、円柱部10が上死点のときはθ=180[°]となる。ここで、円柱部10が下部停止位置のときの偏心シャフト44の回転角度をθ1、円柱部10が上部停止位置のときの回転角度をθ2、とすると、以下の(1)式の関係が成り立つ。
0[°]≦θ1<θ2<180[°] ・・・・・・(1)
【0055】
このように、上部停止位置の回転角度を上死点の回転角度よりも小さくすることにより、円柱部10が上部停止位置のときの回転角度「θ2」の変更が可能となり、上部停止位置のときの円柱部10の位置を調整することが可能となる。
加圧する際には、昇降伝達機構4のホームポジションである円柱部10が下部停止位置に位置する状態に対応した下基準回転位置の状態の四つのプレスモータ3を同じ速度で正回転させる。そして、昇降伝達機構4の上部停止位置に対応した上基準回転位置まで回転したプレスモータ3から順次停止する。四つのプレスモータ3の「θ2」が互いに相違している場合は、下基準回転位置から上基準回転位置までの回転量が大きいプレスモータ3は他のプレスモータ3よりも停止タイミングが遅くなる。
これに対して、下基準回転位置から上基準位置までの回転量をそれぞれ算出し、回転量が大きいプレスモータ3ほど回転速度を速くして、全てのプレスモータ3について、下基準回転位置から上基準回転位置までの駆動時間が同じ時間になるように、または、駆動時間の差が小さくなるように制御してもよい。
【0056】
プレスモータ3同士で上基準回転位置が互いに相違する場合に、上基準回転位置までの回転量が同じとなるように下基準回転位置を設定してもよい。これにより、プレスモータ3同士で上基準位置が互いに相違しても、下基準回転位置から上基準回転位置までの駆動時間及び回転速度を同じ値にできる。そして、打抜動作の際に、一部のプレスモータ3の駆動時間を長くしたり、回転速度を遅くしたりする必要がなく、打抜動作に要する時間の短縮を図れる。なお、下基準回転位置の設定は、制御部30が自動的に算出してもよいし、使用者が入力してもよい。
【0057】
上述したように、本実施形態のダイカッター100は、上部停止位置に対応する上基準回転位置をプレスモータ3毎に変更することができ、上部停止位置のときの円柱部10の高さを個別に変更することができる。
このような構成により、一つのプレスモータ3の上基準回転位置のときの回転量を大きくする変更を行うことで、上基準回転位置のときの偏心シャフト44の回転角度「θ2」の値が大きくなり、上部停止位置のときの円柱部10の位置が高くなる。これにより、上部停止位置のときの位置が高くなった円柱部10の鉛直上方において、打抜処理時の面板9と抜型8との当接圧である打抜圧を高くすることができる。
【0058】
このように、打抜処理時の面板9と抜型8との当接圧を部分的に高くできる構成では、テスト給送の際に抜きムラが生じた箇所の下方の円柱部10の上部停止位置が高くなるように、プレスモータ3の上基準回転位置の回転量を大きくすることで、抜きムラを解消する補正が可能となる。
【0059】
すなわち、従来のダイカッターで、ムラ取り用のシムテープを抜型の裏に貼って調整していた打抜圧を、プレスモータ3の上基準回転位置の回転量を変更することで調整が可能となる。
例えば、テスト給送で出力したシート材Sの手前上流側に抜きムラが生じた場合、第一プレスモータ3aの上基準回転位置の回転量を大きくする設定を行う。これにより、第一昇降伝達機構4aの偏心シャフト44の回転角度「θ2」の値が大きくなり、上部停止位置のときの第一円柱部10aの位置を設定前よりも高くすることができる。そして、打抜処理時のシート材Sの手前上流側の打抜圧を上昇させることができ、抜きムラの解消を図ることができる。
【0060】
次に、下搬送ベルト14及び上搬送ベルト15からなる搬送ベルト対によるシート材Sの搬送について説明する。
ダイカッター100のように、平らな抜型を用いて、シート材または抜型を上下運動させる平盤打抜装置等と呼ばれる打抜装置では、抜型と対向する範囲に、シート搬送部材を配置することができない。
このため、従来の平盤打抜装置では、シート材の搬送経路の幅方向の両サイドに設けられた二つの循環チェーンに掛け渡されたグリッパーバーに固定されたグリッパーでシート材の先端を把持し、引っ張ることでシート材を搬送する構成が一般的である。
【0061】
一方、ダイカッター100は、
図3、
図4、
図8乃至
図10に示すように、抜型8の下方の対向する範囲の外側となる幅方向の奥側に配置した搬送ベルト対(14、15)を備える。そして、搬送ベルト対(14、15)によってシート材Sの幅方向の一方の端部を挟持し、ダイカッター100内における抜型8と対向する範囲を通過するようにシート材Sを搬送する。
【0062】
次に、搬送ベルト対(14、15)に挟持搬送されるシート材Sに空気を吹き付けるエア吐出機構について
図10を用いて説明する。
図10に示すように、ダイカッター100は、搬送ベルト対(14、15)で保持して搬送するシート材Sが通過する領域に気流を発生させる気流発生手段として、下送風機70及び上送風機90を備える。
図10では、下送風機70が発生する下気流A1を一点鎖線で示し、上送風機90が発生する上気流A2を二点鎖線で示している。また、シート材Sの搬送方向を矢印「α」で示し、
図10(c)中の上方にシート材Sが位置する箇所を破線で示している。
【0063】
下送風機70は、幅方向に延在し、下送風口71が形成された下気流水平案内管72の下方に下ブロア73を備える。下ブロア73が周囲の空気を吸引して発生した気流は、下気流上昇案内管74を通過し、下気流水平案内管72の幅方向奥側端部に流入し、下気流水平案内管72の内壁面と下気流管壁部75との間を通過し、幅方向(Y軸方向)の手前側に向けて流入する。下気流水平案内管72の下気流管壁部75よりも手前側に到達した気流は、下気流水平案内管72における搬送方向「α」の下流側に設けられた下送風口71から下気流A1として吐出される。
【0064】
下気流水平案内管72の内壁と下気流管壁部75との間を通過し、幅方向の手前側に向けて流入することによって幅方向の奥側から手前側に向かう成分を有する気流となる。また、下気流水平案内管72の搬送方向下流側に開口した下送風口71から流出することで、搬送方向の上流側から下流側に向かう成分を有する気流となる。これらの成分を有することで、下気流A1は、
図10(c)に示すように、搬送方向「α」に対して、幅方向の奥側から手前側に向かうように傾斜した気流となる。
【0065】
幅方向の奥側の端部のみが保持された状態で搬送されるシート材Sは、幅方向の手前側が垂れ下がり、移動定盤1の上面に固定された面板9と接触する恐れがある。移動中のシート材Sが面板9に接触すると、シート材Sが面板9に引っかかりシート材Sが破損する恐れがある。特に、ダイカッター100でシート材Sに筋付け処理を行う場合、抜型8に設けられた筋付け凸部と対向する対向凹部が面板9に設けられており、この対向凹部に搬送中のシート材Sが接触すると、シート材Sが面板9に引っかかることに起因する損傷が生じ易い。
本実施形態のダイカッター100では、搬送ベルト対(14、15)で保持して搬送するシート材Sが通過する領域におけるシート材Sの下面に下送風口71から下気流A1を吐出する。これにより、幅方向の奥側端部のみが保持されたシート材Sの下面を押し上げる、または、シート材Sの下方に気流層を形成することができる。そして、シート材Sの手前側が垂れ下がることを抑制でき、シート材Sが垂れ下がることに起因するシート材Sの損傷を抑制できる。
【0066】
また、打抜領域の上流側に配置された下送風口71から打抜領域に向けて気流を発生することで、搬送されるシート材Sに対してカウンター方向となる気流の発生を抑制し、気流に起因してシート材Sが捲れ上がることを抑制できる。さらに、奥側から手前側に向かう気流を発生させることで、搬送ベルト対(14、15)がシート材Sを保持する奥側とは逆側で、挙動が規制されていないシート材Sの手前側がバタつくことを抑制できる。これらにより、シート材Sの捲れやバタつきによってシート材Sがその上下に位置する部材に接触することを抑制し、この接触に起因するシート材Sの損傷を抑制できる。
【0067】
搬送中のシート材Sの下面に気流を吹き付ける構成としては、打抜領域の上流側から搬送方向「α」に対して傾斜した気流を発生させる構成に限るものではない。例えば、幅方向奥側でシート材Sを保持する搬送ベルト対(14、15)の下方や下搬送ベルト14の環の内側からシート材Sの下面に向けて気流を吹き付けてもよい。すなわち、保持搬送手段に一端を保持され、自重によって垂れ下がろうとするシート材Sの下面を気流によって押し上げる、または、シート材Sの下方に気流層を形成することが可能な構成であればどのような構成であってもよい。
【0068】
上送風機90は、幅方向に延在し、上送風口91が形成された上気流水平案内管92の上方に上ブロア93を備える。上ブロア93が周囲の空気を吸引して発生した気流は、上気流下降案内管94を通過し、上気流水平案内管92の幅方向奥側端部に流入し、上気流水平案内管92の幅方向(Y軸方向)の手前側に向けて流入する。上気流水平案内管92内にはX-Z平面に平行な面を有する整流板92aが幅方向(Y軸方向)に複数枚配置されており、上気流水平案内管92の内壁の上面と整流板92aの上端との間は、気流が通過可能な流路が形成されている。上気流水平案内管92に流入した気体は、整流板92aの上方の流路を通過しつつ、その一部は、下方に向かい、整流板92a同士の間を通過する。この通過の際に、搬送方向「α」に沿った気流に整流され、上気流水平案内管92における搬送方向「α」の下流側に設けられた上送風口91から上気流A2として吐出される。
【0069】
整流板92aで整流され、上気流水平案内管92の搬送方向下流側に開口した上送風口91から流出することで、搬送方向の上流側から下流側に向かう成分を有する気流となる。これにより、上気流A2は、
図10(a)に示すように、搬送方向「α」に沿った気流となる。
【0070】
幅方向の奥側の端部のみが保持された状態で搬送されるシート材Sは、幅方向の手前側が垂れ下がるだけでなく、搬送時の空気抵抗によって搬送方向下流側から向かい風を受けるような状態となり、幅方向手前側が捲れ上がる恐れがある。シート材Sが捲れ上がると、固定定盤2の下面に固定された抜型8の下面にシート材Sが接触し、抜型8の下面に突出した切断刃81に引っかかってシート材Sが破損する恐れがある。
また、本実施形態のダイカッター100は下送風口71からシート材Sの下面に気流を吹き付けているため、この気流によって押し上げられることによってシート材Sが抜型8の下面に接触するおそれもある。
【0071】
本実施形態のダイカッター100では、搬送ベルト対(14、15)で保持して搬送するシート材Sが通過する領域におけるシート材Sの上面に上送風口91から上気流A2を吐出する。これにより、幅方向の奥側端部のみが保持されたシート材Sの上面の上方に気流層を形成でき、シート材Sが上方に位置する抜型8の下面に接触することを防止でき、この接触に起因するシート材Sの損傷を抑制できる。
【0072】
また、打抜領域の上流側に配置された上送風口91から打抜領域に向けて気流を発生することで、搬送されるシート材Sに対してカウンター方向となる気流の発生を抑制し、気流に起因してシート材Sが捲れ上がることを抑制できる。
【0073】
ダイカッター100のように、シート材Sの幅方向の奥側の端部のみを挟持する構成では、シート材Sの手前側が垂れ下がったり、捲れたりして、搬送中のシート材Sの姿勢が安定しなくなるおそれがある。これに対して、空気吐出機構である下送風機70及び上送風機90によって空気を吹き付け、シート材Sの手前側を持ち上げ、シート材Sの姿勢を水平に近づけることでシート材Sの姿勢を安定させることができる。
シート材Sをベルト対で搬送する構成としては、幅方向の両サイドに搬送ベルト対を配置し、シート材Sの姿勢を安定させることが考えられる。しかし、この構成では、搬送できるシート材Sは、抜型8の幅方向の両方の外側に位置する搬送ベルト対で幅方向の両端を挟持できる幅の広いシート材Sに限られる。これに対して、本実施形態のダイカッター100のようにシート材Sの幅方向の一方の端部のみを搬送ベルト対(14、15)で挟持する構成であれば、幅の狭いシート材Sも搬送し、打抜処理を施すことができる。
【0074】
図11は、下送風機70の変形例の説明図である。
図10(c)に示す下送風機70の下気流水平案内管72は、シート材Sが通過し得る領域の幅方向の全域に延在する形状であり、幅方向の両端部の壁面は、搬送方向に平行(X軸方向に平行)な平面である。これに対して、
図11に示す変形例の下送風機70の下気流水平案内管72は、シート材Sが通過し得る領域よりも幅方向の長さが短い。さらに、下気流水平案内管72の幅方向の両端部の壁面が、搬送方向に平行(X軸方向に平行)な方向に対して、搬送方向下流側程、手前側となるように傾斜している。
【0075】
変形例の送風機70では、下ブロア73が周囲の空気を吸引して発生した気流は、下気流上昇案内管74を通過し、下気流水平案内管72に流入すると、下気流水平案内管72の幅方向両端の傾斜した壁面に沿った流れが形成される。これにより、
図11に示すように、搬送方向「α」に対して、幅方向の奥側から手前側に向かうように傾斜した下気流A1として、下送風口71から吐出する。
【0076】
ダイカッター100では、上述した循環チェーンを用いる方式と異なり、搬送部材である搬送ベルト対(14、15)が上流側の装置(レジスト装置300)の搬送部材とは別部材である。このため、上流側の装置の搬送部材からのシート材の受け渡しが生じ、受け渡しの際の位置ずれや搬送速度差による位置ずれが生じる恐れがある。よって、ダイカッター100内で完結した搬送装置を形成する搬送ベルト対(14、15)で打抜処理時のシート材Sの停止位置の精度を高める必要がある。しかし、搬送部材と同様に抜型8と対向する範囲にはシート材Sの通過を検知するセンサを配置することができない。このため、搬送ベルト対(14、15)の上流側端部の近傍に配置された入口センサ25の検知結果に基づいて搬送ベルト対(14、15)を駆動する搬送駆動モータ13の停止タイミングを決定する。
【0077】
ダイカッター100は、
図2に示すように手前フレーム5の搬送方向上流側と下流側とに、第一歪センサ26aと第二歪センサ26bとを備える。また、
図3及び
図4に示すように、奥フレーム6の搬送方向上流側と下流側とに、第三歪センサ26cと第四歪センサ26dとを備える。
四つの歪センサ26(26a、26b、26c、26d)は、ダイカッター100のフレームのうち固定定盤2を保持する保持部材である手前フレーム5及び奥フレーム6の上下方向の伸び量を測定する伸び量測定手段である。
測定箇所は、シート材Sの搬送路の両サイドのフレームである手前フレーム5及び奥フレーム6の各々に、搬送方向に離間した複数箇所(本実施形態では二箇所)としている。
【0078】
四つの歪センサ26は、手前フレーム5または奥フレーム6の上端部近傍に固定され、歪センサ26の下方にはそれぞれ歪検出棒27(27a、27b、27c、27d)が配置されている。四つの歪検出棒27の下端部は、手前フレーム5または奥フレーム6の下端部近傍の検出棒固定部28(28a、28b、28c、28d)に固定されている。歪検出棒27は、下端部のみが手前フレーム5または奥フレーム6に固定されているため、その上端部の位置は、手前フレーム5や奥フレーム6の変形の影響を受けない。一方、歪センサ26は、手前フレーム5または奥フレーム6の上端部に配置されているため、手前フレーム5や奥フレーム6が伸びると上方に移動して対向する歪検出棒27の上面までの距離が離れ、伸びが解消されると歪センサ26から歪検出棒27の上面までの距離も元に戻る。よって、歪センサ26は、対向配置された歪検出棒27の上面までの距離の変化を測定することで、配置された位置における手前フレーム5や奥フレーム6の伸び量を検出することができる。
【0079】
四つの歪センサ26は、設置された位置における手前フレーム5や奥フレーム6の伸び量を電気信号として検出するものである。制御部30は、歪センサ26の測定結果に基づいて四つのプレスモータ3の駆動をそれぞれ制御可能となっている。
【0080】
板状の被加工物であるシート材Sとしては、普通紙、ボール紙、ラベル紙、厚紙及びコート紙等の紙媒体を挙げることができる。また、本発明に係る打抜装置の加工対象である板状の被加工物としては、紙媒体の他に、OHPシート、フィルム、布帛、樹脂製シート、金属製シート、金属箔やメッキ処理等を施した電子回路基板材、特殊フィルム、プラスチックフィルム、プリプレグ、電子回路基板用シート等を含み、複数枚を重ねた束状でも単枚でも良い。
【0081】
移動定盤を下方に配置し、固定定盤を上方に配置する構成について説明したが、移動定盤を上方に配置し、固定定盤を下方に配置してもよい。さらに、上下に対向する二つの定盤の両方を上下に移動可能な移動定盤として、それぞれ複数(四つ)の昇降駆動源によって接離させる構成としてもよい。
本実施形態のように、移動定盤を下方に配置し、固定定盤を上方に配置する構成では、ある程度重さのある四つのプレスモータ3と、四つの昇降伝達機構4とを装置の低い位置に配置することができ、ダイカッター100の装置の重心を低くできる。
【0082】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0083】
〔態様1〕
上下方向等に対向配置された移動定盤1等の移動定盤及び固定定盤2等の対向定盤と、移動定盤を前記対向定盤に向けて移動させるプレスモータ3及び昇降伝達機構4等の移動機構と、シート材S等のシート状の被加工物の一端を保持するベルト表面等の保持部を移動させて移動定盤及び対向定盤によって挟まれた打抜領域に被加工物を搬送する下搬送ベルト14及び上搬送ベルト15等の保持搬送手段と、を備えるダイカッター100等の打抜装置において、保持搬送手段で保持して搬送する被加工物が通過する領域に下気流A1及び上気流A2等の気流を発生させる下送風機70及び上送風機90等の気流発生手段を備えることを特徴とするものである。
これによれば、保持搬送手段で搬送する被加工物の下面を押し上げ、または、下面の下方に気流層を形成したり、被加工物の上面の上方に気流層を形成したりすることで、搬送中の被加工物が下方や上方に位置する部材(面板9や抜型8等)に接触することを抑制できる。
本実施形態の打抜装置であるダイカッター100は、保持搬送手段として、シート材Sの幅方向の一端を保持する搬送ベルト対(14及び15)を備える構成であるが、保持搬送手段として、特許文献1に記載のようなエンドレスチェーンにグリッパーを複数配置した構成にも本発明は適用可能である。この構成の場合、シート状の被加工物におけるグリッパーによって保持される端部から反対側の端部に向かう気流を発生させる。これにより、グリッパーによって保持されていない側の端部が垂れ下がったり、捲れたりすることを抑制できる。すなわち、シート状の被加工物の一端を保持搬送手段で保持して搬送する構成であれば、どのような構成であっても適用可能である。
【0084】
〔態様2〕
態様1の打抜装置において、保持搬送手段は、被加工物を下搬送ベルト14及び上搬送ベルト15等の二つのベルト部材で挟んで搬送するベルト搬送装置であり、二つのベルト部材は、幅方向について移動定盤の外側に位置し、打抜領域に位置する被加工物における打抜領域からはみ出した部分を挟んで保持することを特徴とする。
これによれば、打抜領域を回避するように配置した二つのベルト部材でシート状の被加工物の一端を挟んで搬送する構成で、搬送中の被加工物が下方や上方に位置する部材に接触することを抑制できる構成を実現できる。
【0085】
〔態様3〕
態様2の打抜装置において、気流発生手段は、打抜領域よりも搬送方向の上流側に位置し、打抜領域に向かう気流を発生させることを特徴とする。
これによれば、搬送される被加工物に対してカウンター方向となる気流の発生を抑制し、気流に起因してシート状の被加工物が捲れ上がることを抑制できる。
【0086】
〔態様4〕
態様1乃至3の何れかの打抜装置において、下送風機70等の気流発生手段は、保持搬送手段で保持して搬送する被加工物が通過する領域よりも下方に気流を吐出する下送風口71等の下部気流吐出口を備える。
これによれば、保持搬送手段で搬送するシート状の被加工物の下面を押し上げる、または、下面の下方に気流層を形成することができ、搬送中の被加工物が下方に位置する部材に接触することを抑制できる。
【0087】
〔態様5〕
態様4の打抜装置において、気流発生手段は、下部気流吐出口から吐出する気流として、保持搬送手段が保持する被加工物の一端側から他端側に向かう気流(打抜領域の上流側から搬送方向「α」に対して傾斜した下気流A1等)を発生することを特徴とする。
これによれば、被加工物の他端側を気流によって押し上げ、搬送中の被加工物が下方に位置する部材に接触することを抑制できる。
【0088】
〔態様6〕
態様1乃至5の何れかの打抜装置において、上送風機90等の気流発生手段は、保持搬送手段で保持して搬送する被加工物が通過する領域よりも上方に気流を吐出する上送風口91等の上部気流吐出口を備えることを特徴とする。
これによれば、保持搬送手段で搬送するシート状の被加工物の上面の上方に気流層を形成することができ、搬送中の被加工物が上方に位置する部材に接触することを抑制できる。
【0089】
〔態様7〕
少なくとも態様2の構成を備える態様6の打抜装置において、気流発生手段は、上部気流吐出口から吐出する気流として、搬送方向上流側から下流側に向かう気流を発生することを特徴とする。
これによれば、搬送される被加工物に対してカウンター方向となる気流の発生を抑制し、気流に起因してシート状の被加工物が捲れ上がることを抑制できる。
【符号の説明】
【0090】
1 :移動定盤
2 :固定定盤
3 :プレスモータ
3a :第一プレスモータ
4 :昇降伝達機構
4a :第一昇降伝達機構
5 :手前フレーム
6 :奥フレーム
7 :架台フレーム
8 :抜型
9 :面板
13 :搬送駆動モータ
14 :下搬送ベルト
15 :上搬送ベルト
16 :搬送駆動伝達機構
25 :入口センサ
70 :下送風機
90 :上送風機
100 :ダイカッター
500 :ダイカットシステム
A1 :下気流
A2 :上気流