(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ゴム成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/205 20060101AFI20250130BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20250130BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20250130BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20250130BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C08J3/205 CEQ
C08J3/20 D
C08J5/00
C08L21/00
F16J15/10 Y
(21)【出願番号】P 2020189105
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敬子
(72)【発明者】
【氏名】安福 勇志
(72)【発明者】
【氏名】川端 貴美
(72)【発明者】
【氏名】片山 竜雄
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-196853(JP,A)
【文献】特開2002-309040(JP,A)
【文献】特開平01-229055(JP,A)
【文献】特開2006-045329(JP,A)
【文献】特開平06-322183(JP,A)
【文献】特開2016-117831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00 -3/28
C08K
C08L
F16J 15/00 -15/14
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物
を加硫する加硫工程を有するゴム成形品の製造方法であって、
前記ゴム組成物は、アミン系加硫剤
のみからなる粉末材料に可塑剤を加えて湿式粉砕処理することによりペースト状混合物を得る湿式粉砕工程と、少なくともゴムと前記ペースト状混合物とを混練
する混錬工程とにより得られるものであり、
前記ペースト状混合物に含まれる粒子の最大粒子径が30μm以下であり、前記ペースト状混合物に含まれる粒子の平均粒子径が0.1~12μmであり、
前記ゴム成形品がシール部材であることを特徴とするゴム
成形品の製造方法。
【請求項2】
前記ペースト状混合物における前記粉末材料と前記可塑剤との配合比が1:0.5~1:20である請求項1に記載のゴム
成形品の製造方法。
【請求項3】
前記ゴム100質量部に対して、前記ペースト状混合物0.1~100質量部を配合する請求項1又は2に記載のゴム
成形品の製造方法。
【請求項4】
前記ゴムが、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)及びフッ素ゴム(FKM)からなる群から選択される少なくとも1種であ
る請求項1~3のいずれかに記載のゴム
成形品の製造方法。
【請求項5】
前記混練工程において、更に第2の可塑剤を加えて混練する請求項1~
4のいずれかに記載のゴム
成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の製造方法に関する。また、当該ゴム組成物を加硫して得られるゴム成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物に添加される加硫促進剤等の配合剤の中には凝集性の大きなものが知られている。このような凝集性の大きな加硫促進剤をゴムと混練した場合、分散不良となり、成形して得られるゴム成形品に配合剤残り等の不良が発生する問題があった。特許文献1には、このような分散不良を改善する方法として、グアニジン化合物に可塑剤を加え、グアニジンを溶融した後ペースト化する加硫促進剤の調製方法が記載されている。これによれば、混練工程、成形工程などで加硫促進剤の分散不良に起因する不具合を完全に防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、グアニジン化合物の融点以上の高温で溶融させるため、生産性に課題があり、また溶融が困難な配合剤については適用することができず、かかる課題を解決できるゴム組成物の製造方法が求められていた。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、分散不良に起因する気泡、キズ、配合剤残り等の不良が著しく低減されたゴム成形品を得ることのできる、生産性に優れるゴム組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、ゴム組成物の製造方法であって、加硫剤及び加硫促進剤からなる群から選択される少なくとも1種の粉末材料に可塑剤を加えて湿式粉砕処理することによりペースト状混合物を得る湿式粉砕工程と、少なくともゴムと前記ペースト状混合物とを混練してゴム組成物を得る混練工程とを有することを特徴とするゴム組成物の製造方法を提供することによって解決される。
【0007】
このとき、前記ペースト状混合物における前記粉末材料と前記可塑剤との配合比が1:0.5~1:20であることが好適である。前記ゴム100質量部に対して、前記ペースト状混合物0.1~100質量部を配合することが好適な実施態様である。前記ゴムが、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)及びフッ素ゴム(FKM)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適であり、前記加硫剤が、硫黄及びアミン系加硫剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適であり、前記加硫促進剤が、チウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバメート系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。前記ペースト状混合物に含まれる粒子の最大粒子径が80μm以下であることが好適であり、前記ペースト状混合物に含まれる粒子の平均粒子径が0.1~30μmであることが好適である。
【0008】
前記混練工程において、更に第2の可塑剤を加えて混練することが好適な実施態様であり、前記混練工程で得られたゴム組成物を加硫する加硫工程を有するゴム成形品の製造方法が好適な実施態様である。ゴム成形品がシール部材であることも好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、分散不良に起因する気泡、キズ、配合剤残り等の不良が著しく低減されたゴム成形品を得ることのできる、生産性に優れるゴム組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、加硫剤及び加硫促進剤からなる群から選択される少なくとも1種の粉末材料に可塑剤(以下、「第1の可塑剤」と呼ぶことがある)を加えて湿式粉砕処理することによりペースト状混合物を得る湿式粉砕工程(以下、「湿式粉砕工程」と略記することがある)と、少なくともゴムと前記ペースト状混合物とを混練してゴム組成物を得る混練工程(以下、「混練工程」と略記することがある)とを有するゴム組成物の製造方法である。
【0011】
後述する実施例と比較例との対比から分かるように、ゴムに対して加硫剤又は加硫促進剤の粉末等を用いて混練した比較例では、分散不良に起因する不良率(%)が一定以上となり、得られるゴム成形品に気泡、キズ、配合剤残り等の不良が観察された。これに対し、湿式粉砕工程を採用した実施例では、分散不良に起因する不良率(%)は0%であり、得られるゴム成形品に気泡、キズ、配合剤残り等の不良が観察されなかった。すなわち、加硫剤及び加硫促進剤からなる群から選択される少なくとも1種の粉末材料に可塑剤を加えて湿式粉砕処理してペースト状混合物を得る湿式粉砕工程を採用することにより、ゴムと前記ペースト状混合物とを混練してゴム組成物を得る混練工程において分散性が良好となり、分散不良に起因する気泡、キズ、配合剤残り等の不良が著しく低減されたゴム成形品を提供できることが明らかとなった。このように、湿式粉砕工程の採用により、前記粉末材料の融点が非常に高い場合であっても前記粉末材料を溶融させることなく生産性良くペースト状混合物が得られるため、本発明の意義が大きいことが分かる。なお、本明細書において「気泡、キズ、配合剤残り」は、加硫剤及び加硫促進剤からなる群から選択される少なくとも1種の配合剤に起因するものである。
【0012】
本発明で用いられる粉末材料は、加硫剤及び加硫促進剤からなる群から選択される少なくとも1種である。本発明で用いられる加硫剤としては特に限定されないが、硫黄及びヘキサメチレンジアミンカーバメート(HMDC)等のアミン系加硫剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。本発明で用いられる加硫促進剤としては特に限定されず、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;1,3-ジ-o-トリルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバメート系加硫促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール系加硫促進剤;などが挙げられる。加硫促進剤としては、チウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバメート系加硫促進剤及びチアゾール系加硫促進剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。湿式粉砕処理する際の前記粉末材料としては、加硫剤のみからなることが好適な実施態様であり、中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(HMDC)が好適に採用される。
【0013】
本発明で用いられる可塑剤としては、ゴムに配合されるものであれば特に限定されず、ジオクチルフタレート等のフタル酸系;ジオクチルアジペート等のアジピン酸系;ジブチルセバケート等のセバシン酸系;トリメリット酸トリメチル等のトリメリット酸系;アジピン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステル等のポリエステル系;フタル酸エーテルエステル、アジピン酸エーテルエステル等のポリエーテルエステル系;トリオクチルホスフェート等のリン酸系;石油系炭化水素などが挙げられる。これらの可塑剤は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。中でも、フタル酸系、アジピン酸系、ポリエステル系、ポリエーテルエステル系及びリン酸系からなる群から選択される少なくとも1種の可塑剤が好適に用いられる。
【0014】
本発明における湿式粉砕工程において、前記粉末材料に前記可塑剤を加えて湿式粉砕処理することによりペースト状混合物が得られる。湿式粉砕処理に用いられる装置としては、ボールミル、ビーズミル、ライカイ機、ジェットミルなどの公知の湿式粉砕装置を使用することができる。前記粉末材料と前記可塑剤との配合比(質量比)が1:0.5~1:20であることが好ましい。前記配合比は、1:1~1:18であることがより好ましく、1:1.5~1:15であることが更に好ましい。
【0015】
本発明において、前記ペースト状混合物に含まれる粒子の最大粒子径が80μm以下であることが好適な実施態様である。最大粒子径が80μmを超える場合、得られるゴム成形品に分散不良に起因する気泡、キズ、配合剤残り等の不良が発生するおそれがあり、最大粒子径は70μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが更に好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。前記ペースト状混合物に含まれる粒子の最大粒子径は、通常、3μm以上である。本明細書における最大粒子径は、体積基準の粒度分布において、最も粒子径の大きい極大を示す値を読み取ったものである。
【0016】
本発明において、前記ペースト状混合物に含まれる粒子の平均粒子径が0.1~30μmであることが好適な実施態様である。平均粒子径が0.1μm未満の場合、ペースト状混合物の作製に時間がかかるおそれがあり、平均粒子径は0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、1.5μm以上であることが特に好ましい。一方、平均粒子径が30μmを超える場合、得られるゴム成形品に分散不良に起因する気泡、キズ、配合剤残り等の不良が発生するおそれがあり、平均粒子径は20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましく、12μm以下であることが特に好ましい。本明細書における平均粒子径は、体積基準の粒度分布に基づいて決定される体積基準積算値が50%となるときの粒子径である。
【0017】
本発明では、前記湿式粉砕工程の後に、少なくともゴムと前記ペースト状混合物とを混練してゴム組成物を得る混練工程を行う。混練工程で用いられるゴムとしては特に限定されず、クロロプレンゴム(CR);ニトリルゴム(NBR)と水素化ニトリルゴム(HNBR)のニトリルゴム;エチレンプロピレンゴム(EPDM);アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)等のアクリルゴム;フッ素ゴム(FKM);等が挙げられる。中でも、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)及びフッ素ゴム(FKM)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)及びエチレンアクリルゴム(AEM)からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0018】
クロロプレンゴム(CR)としては特に限定されず、2-クロロ-1,3-ブタジエンを主成分とするゴムであればよい。2-クロロ-1,3-ブタジエンは単独で重合しても、2-クロロ-1,3-ブタジエンと他の単量体とが共重合していてもよい。他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシエチルなどのアクリル酸エステルが好適に用いられる。
【0019】
ニトリルゴムとしては特に限定されず、アクリロニトリルと1,3-ブタジエンの共重合体を用いることができる。重合後の1,3-ブタジエン単位に残存する二重結合への水素添加は任意である。水素添加されていないニトリルゴム(NBR)と水素添加されたニトリルゴム(HNBR)を好適に用いることができる。ニトリルゴム中のアクリロニトリル単位の含有量は、15~50質量%であることが好ましい。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の共重合可能な単量体由来の構成単位を含んでいても構わないが、通常その含有量は10質量%以下であり、好適には5質量%以下である。
【0020】
エチレンプロピレンゴム(EPDM)としては特に限定されず、エチレンとプロピレンとジエン化合物との共重合体を用いることができる。EPDMに含まれるジエン化合物としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の共重合可能な単量体由来の構成単位を含んでいても構わないが、通常その含有量は10質量%以下であり、好適には5質量%以下である。
【0021】
アクリルゴムとしては特に限定されず、アクリル酸エステルを主成分とするゴムであればよい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシエチルなどが好適に用いられる。アクリル酸エステルと共重合させる単量体としては、アクリロニトリル、エチレンなどが例示される。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸メトキシエチルから選択される2種以上のアクリル酸エステル及び架橋性モノマーを共重合してなるアクリルゴム(ACM)や、アクリル酸メチル、エチレン及び架橋性モノマーを共重合してなるアクリルゴム(AEM)などが好適に用いられる。AEMとしては、デュポン社の「VAMAC」(登録商標)などが入手可能である。本発明の趣旨を阻害しない範囲であれば、他の共重合可能な単量体由来の構成単位を含んでいても構わないが、通常その含有量は10質量%以下であり、好適には5質量%以下である。
【0022】
フッ素ゴム(FKM)としては特に限定されず、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、VDFとトリクロロフルオロエチレン(CTFE)との共重合体、VDFとHFPとテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体、TFEとプロピレンとの共重合体、TFEと含フッ素ビニルエーテルとの共重合体、炭化水素系ジエン単量体と含フッ素単量体との共重合体などが例示される。中でも、VDFとHFPとテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体である三元系フッ素ゴムが好適に用いられる。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の共重合可能な単量体由来の構成単位を含んでいても構わないが、通常その含有量は10質量%以下であり、好適には5質量%以下である。
【0023】
前記混練工程においては、前記ゴム100質量部に対して、前記ペースト状混合物0.1~100質量部を配合することが好適な実施態様である。前記配合量が0.1質量部未満の場合、加硫剤又は加硫促進剤の性能が出ないおそれがあり、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましく、0.8質量部以上であることが特に好ましい。一方、前記配合量が100質量部を超える場合、加硫の進行が早くなるおそれがあり、80質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることが更に好ましく、40質量部以下であることが特に好ましい。
【0024】
前記混練工程において、前記ゴムと前記ペースト状混合物とを混練する方法は特に限定されないが、ロール、ニーダ、バンバリーミキサ、インターミックス、押出機などを用いて混練することができる。混練時のゴム組成物の温度は20~170℃とすることが好ましい。
【0025】
前記混練工程において、白色充填剤、カーボンブラック等の充填剤を配合することが好適な実施態様である。本発明で用いられる白色充填剤としては、特に限定されず、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、珪藻土、ウォラストナイト等を用いることができる。本発明で用いられるカーボンブラックとしては特に限定されず、FEF、SRF、SAF、ISAF、HAF、MAF、GPF、FT、MT等を用いることができる。白色充填剤又はカーボンブラックの配合量としては、前記ゴム100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、10~90質量部であることがより好ましい。
【0026】
前記混練工程において、更に第2の可塑剤を加えて混練することも好適な実施態様である。第1の可塑剤と第2の可塑剤の合計の配合量は、前記ゴム100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましい。第2の可塑剤は、前記湿式粉砕工程で使用される第1の可塑剤と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、本実施形態では、ゴム100質量部に対する必要量の可塑剤を第1の可塑剤と第2の可塑剤として2回に分けて配合しているが、前記湿式粉砕工程において、粉末材料に必要量の可塑剤を加えて湿式粉砕処理することによりペースト状混合物を得るようにしてもよい。この場合は、前記混練工程において、第2の可塑剤を加えなくてもよい。
【0027】
前記混練工程において、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ゴム組成物において通常使用される、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、受酸剤、着色剤、フィラーなどの各種配合剤を含むことができる。
【0028】
前記混練工程で得られたゴム組成物を加硫する加硫工程を行うことにより、ゴム成形品を好適に得ることができる。加硫工程において、ゴム組成物が所望の形状に成形され、加熱することにより架橋反応(加硫)が進行する。ゴム組成物の成形方法としては、射出成形や圧縮成形などが挙げられる。架橋温度は、通常100~250℃である。架橋時間は、通常0.5分~24時間である。さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0029】
本発明で得られるゴム成形品がシール部材であることが好ましい。好適なシール部材としては、パッキン、シール、ガスケット、Oリング、ダイヤフラムである。具体的には、シールとしては、ベアリングシールやオイルシールなどが例示され、ガスケットとしては、インテークマニホールド用ガスケット、ヘッドカバー用ガスケットなどが例示される。
【実施例】
【0030】
以下の比較例4及び比較例1で使用した原料は以下の通りである。
[原料]
・ニトリルゴム(NBR):日本ゼオン株式会社製「Nipol1042」
・カーボンブラック:東海カーボン株式会社製「シースト3(HAF)」
・可塑剤:株式会社ADEKA製「DOP」
・加工助剤:株式会社ジェイ・プラス製「ステアリン酸」
・亜鉛華:堺化学工業株式会社製「ZINCA#20」
・加硫剤:細井化学工業製「微粉硫黄500Mesh」
・加硫促進剤:川口化学工業株式会社製「ACCEL PZ」ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛
【0031】
比較例4
湿式粉砕装置に可塑剤を0.5質量部と加硫剤の粉末(平均粒子径:50μm、最大粒子径:175μm)を0.5質量部入れ、室温で1時間湿式粉砕処理を行うことによりペースト状混合物を得た。株式会社堀場製作所製「LA-950」の粒子径分布測定装置を用い、前記ペースト状混合物に含まれる粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は15μmであり、最大粒子径は70μmであった。ニトリルゴム(NBR)100質量部に対して、前記ペースト状混合物を1質量部、カーボンブラックを65質量部、可塑剤を14.5質量部、加工助剤を1質量部、亜鉛華を5質量部、及び加硫促進剤を0.3質量部とともに70℃でオープンロールを用いて混練し、未加硫ゴム生地を作製した。得られた未加硫ゴム生地を射出成形機を用いて170℃で10分間加硫して成形することにより成形品であるガスケットを得た。得られたガスケットを拡大鏡で観察し、分散不良に起因する不良率(%)を算出した。分散不良に起因する不良率(%)は、成形品の個数に対する不良(気泡、キズ、配合剤残り)が確認された個数の割合を表したものである。結果を表1にまとめて示す。
【0032】
比較例1
比較例4において、ペースト状混合物を得る代わりに、ニトリルゴム(NBR)100質量部に対して、加硫剤の粉末(平均粒子径:50μm、最大粒子径:175μm)を0.5質量部、カーボンブラックを65質量部、可塑剤を15質量部、加工助剤を1質量部、亜鉛華を5質量部、及び加硫促進剤を0.3質量部とともに70℃でオープンロールを用いて混練した以外は比較例4と同様にして成形品であるガスケットを得た。比較例4と同様に、得られたガスケットを拡大鏡で観察し、分散不良に起因する不良率(%)を算出した。結果を表1にまとめて示す。
【0033】
【0034】
以下の実施例2及び比較例2で使用した原料は以下の通りである。
[原料]
・アクリルゴム(ACM):日本ゼオン株式会社製「AR12」
・カーボンブラック:東海カーボン株式会社製「シースト3(HAF)」
・可塑剤:株式会社ADEKA製「アデカサイザーRS1000」
・加工助剤a:日油株式会社製「ステアリン酸」
・加工助剤b:NIケミテック株式会社製「グレッグG8205」
・老化防止剤:白石カルシウム株式会社製「ナウガード445」
・加硫促進剤:大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーDT」1,3-ジ-o-トリルグアニジン
・加硫剤:ケマーズ株式会社製「DiakNo.1」ヘキサメチレンジアミンカーバメート(HMDC)
【0035】
実施例2
湿式粉砕装置に可塑剤を2質量部と加硫剤の粉末(平均粒子径:50μm、最大粒子径:500μm)を0.5質量部入れ、室温で1時間湿式粉砕処理を行うことによりペースト状混合物を得た。株式会社堀場製作所製「LA-950」の粒子径分布測定装置を用い、前記ペースト状混合物に含まれる粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は3μmであり、最大粒子径は25μmであった。アクリルゴム(ACM)100質量部に対して、前記ペースト状混合物を2.5質量部、カーボンブラックを60質量部、可塑剤を8質量部、加工助剤aとbをそれぞれ1質量部、老化防止剤を1質量部、及び加硫促進剤を2.0質量部とともに70℃でオープンロールを用いて混練し、未加硫ゴム生地を作製した。得られた未加硫ゴム生地を射出成形機を用いて170℃で10分間加硫して成形することにより成形品であるガスケットを得た。比較例4と同様に、得られたガスケットを拡大鏡で観察し、分散不良に起因する不良率(%)を算出した。結果を表2にまとめて示す。
【0036】
比較例2
実施例2において、ペースト状混合物を得る代わりに、アクリルゴム(ACM)100質量部に対して、加硫剤の粉末(平均粒子径:50μm、最大粒子径:500μm)を0.5質量部、カーボンブラックを60質量部、可塑剤を10質量部、加工助剤aとbをそれぞれ1質量部、老化防止剤を1質量部、及び加硫促進剤を2.0質量部とともに70℃でオープンロールを用いて混練した以外は実施例2と同様にして成形品であるガスケットを得た。比較例4と同様に、得られたガスケットを拡大鏡で観察し、分散不良に起因する不良率(%)を算出した。結果を表2にまとめて示す。
【0037】
【0038】
以下の比較例5及び比較例3で使用した原料は以下の通りである。
[原料]
・アクリルゴム(ACM):日本ゼオン株式会社製「AR51」
・カーボンブラック:東海カーボン株式会社製「シースト3(HAF)」
・可塑剤:株式会社ADEKA製「アデカサイザーRS1000」
・加工助剤a:日油株式会社製「ステアリン酸」
・加工助剤b:NIケミテック株式会社製「グレッグG8205」
・老化防止剤:白石カルシウム株式会社製「ナウガード445」
・加硫促進剤a:大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーPZ」ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛
・加硫促進剤b:大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーTTFE」ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄
・加硫剤:ランクセス社製「ブルカレントE/C」N-フェニル-N-(トリクロロメチルスルフェニル)ベンゼンスルホンアミド
【0039】
比較例5
湿式粉砕装置に可塑剤を2.5質量部と加硫促進剤aの粉末(平均粒子径:40μm、最大粒子径:300μm)を2.5質量部入れ、室温で1時間湿式粉砕処理を行うことによりペースト状混合物を得た。株式会社堀場製作所製「LA-950」の粒子径分布測定装置を用い、前記ペースト状混合物に含まれる粒子の粒子径を測定したところ、平均粒子径は20μmであり、最大粒子径は70μmであった。アクリルゴム(ACM)100質量部に対して、前記ペースト状混合物を5質量部、カーボンブラックを50質量部、可塑剤を12.5質量部、加工助剤aとbをそれぞれ1質量部、老化防止剤を2質量部、加硫促進剤bを0.5質量部、及び加硫剤を0.5質量部とともに70℃でオープンロールを用いて混練し、未加硫ゴム生地を作製した。得られた未加硫ゴム生地を射出成形機を用いて170℃で10分間加硫して成形することにより成形品であるガスケットを得た。比較例4と同様に、得られたガスケットを拡大鏡で観察し、分散不良に起因する不良率(%)を算出した。結果を表3にまとめて示す。
【0040】
比較例3
比較例5において、ペースト状混合物を得る代わりに、アクリルゴム(ACM)100質量部に対して、加硫促進剤aの粉末(平均粒子径:40μm、最大粒子径:300μm)を2.5質量部、カーボンブラックを50質量部、可塑剤を15質量部、加工助剤aとbをそれぞれ1質量部、老化防止剤を2質量部、加硫促進剤bを0.5質量部、及び加硫剤を0.5質量部とともに70℃でオープンロールを用いて混練した以外は比較例5と同様にして成形品であるガスケットを得た。比較例4と同様に、得られたガスケットを拡大鏡で観察し、分散不良に起因する不良率(%)を算出した。結果を表3にまとめて示す。
【0041】