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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】窒化ホウ素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
C01B21/064 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021007381
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111748
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 勝弥
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-100448(JP,A)
【文献】特開2018-104253(JP,A)
【文献】特開2012-171842(JP,A)
【文献】特開平11-302004(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179662(WO,A1)
【文献】特開2019-189525(JP,A)
【文献】特開2016-141600(JP,A)
【文献】萩尾 剛 et al.,Journal of the Ceramic Society of Japan,日本,1994年,102 [11],p.1051-1054
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/064
JSTPlus/JSTchina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ酸メラミンを得る工程と、
前記ホウ酸メラミンを融剤の存在下で1000℃以上1700℃以下の温度で焼成し、窒化ホウ素を得る焼成工程と、を備える、窒化ホウ素の製造方法であって、
前記焼成工程において、前記ホウ酸メラミンに対する、前記融剤のモル比(ホウ酸メラミン/融剤)が、1以上3以下となる割合で混合して焼成し、
前記融剤は、炭酸リチウム又は水酸化リチウムである、窒化ホウ素の製造方法
【請求項2】
前記ホウ酸メラミンを得る工程は、ホウ酸とメラミンの飽和水溶液を超音波処理する工程を備える、請求項1に記載の窒化ホウ素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ホウ素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素は高い熱伝導性を有し、化学的又は熱的に安定である。このため、熱伝導フィラーとしての利用が進んでいる。
窒化ホウ素は、ホウ素を含む化合物と窒素を含む化合物とを反応させることにより製造できる。例えば特許文献1には、ホウ酸メラミンを特定の条件で二段焼成し、六方晶窒化ホウ素一次粒子凝集体を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒化ホウ素は、結晶構造と鱗片形状に由来する熱伝導の異方性が大きいことが知られている。このため、熱伝導フィラーとして樹脂に充填した場合、樹脂中での窒化ホウ素の配向に起因して、熱伝導性が低下しやすいという課題があった。
また、樹脂にフィラーとして窒化ホウ素を充填させる場合、充填性をより高めるためにホウ酸メラミンの粒子の大きさを制御することが求められる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、窒化ホウ素の粒子の形状と大きさを制御できる窒化ホウ素の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の[1]~[4]を包含する。
[1]ホウ酸メラミンを得る工程と、前記ホウ酸メラミンを融剤の存在下で1000℃以上1700℃以下の温度で焼成し、窒化ホウ素を得る焼成工程と、を備える、窒化ホウ素の製造方法。
[2]前記ホウ酸メラミンを得る工程は、ホウ酸とメラミンの飽和水溶液を超音波処理する工程を備える、[1]に記載の窒化ホウ素の製造方法。
[3]前記焼成工程において、前記ホウ酸メラミンに対する、前記融剤のモル比(ホウ酸メラミン/融剤)が、1以上4以下となる割合で混合して焼成する、[1]又は[2]に記載の窒化ホウ素の製造方法。
[4]前記融剤は、炭酸リチウム又は水酸化リチウムである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の窒化ホウ素の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、窒化ホウ素の粒子の形状と大きさを制御できる窒化ホウ素の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ホウ酸メラミンのX線回折パターンを示す図である。
図2】ホウ酸メラミンの走査型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例1で製造した窒化ホウ素のX線回折パターンを示す図である。
図4】実施例1で製造した窒化ホウ素の走査型電子顕微鏡写真である。
図5】実施例2で製造したホウ酸メラミンの走査型電子顕微鏡写真である。
図6】実施例2で製造した窒化ホウ素の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<窒化ホウ素の製造方法>
本実施形態の窒化ホウ素の製造方法は、ホウ酸メラミンを得る工程と、ホウ酸メラミンを融剤の存在下で焼成する焼成工程とを備える。
本発明者らの検討により、ホウ酸メラミンを融剤の存在下で焼成すると、ホウ酸メラミンの粒子の大きさや形状が維持された窒化ホウ素を製造できることが見いだされた。本発明は、ホウ酸メラミンを得る工程においてホウ酸メラミンの粒子の形状や大きさを制御することにより、製造される窒化ホウ素の粒子の形状と大きさを所望の範囲に制御するという技術思想に係る。
【0010】
[ホウ酸メラミンを得る工程]
ホウ酸メラミンは、例えばホウ酸とメラミンとを含む飽和水溶液から、ホウ酸メラミンを再結晶することにより得られる。以下、「飽和水溶液」と記載する場合には、ホウ酸とメラミンとを含む飽和水溶液を意味する。
【0011】
後の焼成工程においてホウ酸メラミンを融剤の存在下で焼成すると、ホウ酸メラミンの粒子の大きさや形状が維持される。このため、目的とする大きさや形状の窒化ホウ素を得るために、ホウ酸メラミンの大きさや形状を制御する。
【0012】
例えば、粒子径が約5μm以上10μm以下の窒化ホウ素を製造しようとする場合、粒子径が約5μm以上10μm以下のホウ酸メラミンを製造することが好ましい。
上記の粒子径の範囲は、目的とする窒化ホウ素の大きさによって適宜変更できる。
【0013】
柱状の細長い形状を有する二次粒子であって、短軸径と長軸径との比であるアスペクト比が約1~1.5である窒化ホウ素を製造しようとする場合、短軸径と長軸径との比であるアスペクト比が約1~1.5のホウ酸メラミンを製造することが好ましい。
上記のアスペクト比の範囲は、目的とする窒化ホウ素の大きさによって適宜変更できる。
【0014】
ホウ酸メラミンの粒子の大きさや形状は、再結晶の条件制御や後処理を施すことにより、制御できる。再結晶の条件としては、飽和水溶液の加熱冷却条件又は飽和水溶液の超音波処理条件である。後処理としては、乾式粉砕法やボールミル等の機械的粉砕を用いることができる。
【0015】
本発明の一態様において、ホウ酸メラミンを得る工程は飽和水溶液を加熱冷却する工程である。
本発明の一態様において、ホウ酸メラミンを得る工程は飽和水溶液を超音波処理した後に、吸引ろ過をする工程である。
【0016】
(加熱冷却する工程)
まず、約95℃に加温された純水に、所定量のホウ酸を完全に溶解させる。次いで、所定量のメラミンを加え、攪拌し、メラミンを完全に溶解させる。この操作により、飽和水溶液が得られる。
【0017】
ホウ酸の量は、例えば100mLの蒸留水に対し、1g以上5g以下であり、2g以上4g以下が好ましい。
メラミンの量は、例えば100mLの蒸留水に対し、0.5g以上4g以下であり、1g以上3g以下が好ましい。
【0018】
飽和水溶液を、放冷することにより、ホウ酸メラミンの結晶が析出する。
放冷の条件の一例は、50℃以上100℃以下のお湯を入れた1Lビーカーに、得られた飽和水溶液を入れたビーカーを漬けて、室温で約12時間以上24時間以下放置し、ゆっくり飽和水溶液を冷却することが好ましい。
【0019】
得られた析出物を乾燥させ、ホウ酸メラミンが得られる。析出物を乾燥させる方法としては、自然乾燥させてもよく、室温又は100℃以下の恒温槽を用いて乾燥させてもよい。
【0020】
加熱冷却する工程により、柱状の細長い形状を有するホウ酸メラミンの粒子が得られる。このホウ酸メラミンの粒子は、短軸径は約5μm~10μmである。また、長軸径は、約10μm~2cmである。
【0021】
(超音波処理及び吸引ろ過工程)
本実施形態において、上記と同様の方法により得た飽和水溶液を超音波処理することが好ましい。この場合には、例えば超音波洗浄機を用い、超音波処理すればよい。超音波処理により、ホウ酸メラミンの結晶が析出する。超音波処理には、例えば超音波洗浄機が使用できる。
【0022】
超音波処理の条件を変更することにより、製造されるホウ酸メラミンの粒子の形状と大きさを制御できる。超音波処理することにより、柱状の粒子が破砕され、短軸径と長軸径がそれぞれ数十μmであるホウ酸メラミンの粒子が得られる。
【0023】
超音波処理の条件としては、周波数と処理時間が挙げられる。周波数は、20kHz以上50kHz以下の範囲に調整することが好ましい。処理時間は、1分間以上10分間以下の範囲に調整することが好ましい。
【0024】
周波数と処理時間の組み合わせは、例えば20kHz以上50kHz以下、且つ1分間以上10分間以下である。
【0025】
処理時間を長くするほど、得られるホウ酸メラミンの大きさは小さくなり、アスペクト比が増加する。
また周波数を高くするほど、得られるホウ酸メラミンの大きさは小さくなる。
【0026】
例えば、100mL飽和溶液中に1gのホウ酸メラミンを入れた場合には、消費電力430W、高周波出力300w、発振周波数38kHzで5分間の超音波処理をすると、粒径が数十μmであるホウ酸メラミンの粒子が得られる。
【0027】
超音波処理の後、得られた結晶を吸引ろ過して、ホウ酸メラミンの粒子を得ることが好ましい。
【0028】
製造されたホウ酸メラミンの粒子の形状及び大きさは、走査型電子顕微鏡により観察することで確認できる。
【0029】
超音波処理をすることにより、短軸径と長軸径との比であるアスペクト比が約1~1.5であるホウ酸メラミンの粒子が得られやすくなる。
【0030】
[焼成工程]
焼成工程は、ホウ酸メラミンを融剤の存在下で焼成する工程である。
ホウ酸メラミンを融剤の存在下で焼成することにより、ホウ酸メラミンの粒子の形状と大きさを維持した窒化ホウ素を製造することができる。
【0031】
焼成温度は、1000℃以上1700℃以下であり、1100℃以上1600℃以下が好ましく、1200℃以上1500℃以下がより好ましい。
焼成温度が上記範囲内であると、ホウ酸メラミンの大きさと形状を維持した窒化ホウ素が得られやすい。
焼成温度が上記下限値以上であると、窒化ホウ素の結晶成長が進みやすい。
焼成温度が上記上限値を超えると、窒化ホウ素の結晶化が進み鱗片状に成長しやすくなる。このため、粒子状の窒化ホウ素を得るためには、1700℃以下の温度で焼成することが好ましい。
【0032】
本実施形態において「焼成温度」とは、焼成工程における焼成炉内雰囲気の保持温度の最高温度を意味する。
【0033】
上記の焼成温度で保持する時間は、30分間以上2時間以下が好ましく、50分間以上90分間以下が好ましい。
【0034】
本実施形態において、焼成工程は不活性ガスの雰囲気下で実施することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス又はアルゴンガスが挙げられる。
【0035】
焼成工程において、焼成温度に達するまでの昇温速度は、200℃/時間以上400℃/時間以下が挙げられ、250℃/時間以上350℃/時間以下が好ましい。
【0036】
本実施形態において「昇温速度」とは、焼成装置において昇温を開始した時間から、最高保持温度に達するまでの時間と、昇温装置の焼成炉内の昇温開始時の温度から細孔保持温度までの温度差と、から算出される。
【0037】
焼成後、得られた焼成品を水洗してもよい。
【0038】
焼成工程において、ホウ酸メラミンを融剤(フラックス)の存在下で焼成する。
フラックスとして、通常用いられるものであれば特に限定されないが、具体的に、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、酸化ホウ素、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム、及びそれらの混合物や、それらに対応するアンモニウム塩が挙げられる。
【0039】
本実施形態において、フラックスは炭酸リチウム又は水酸化リチウムを用いることが好ましい。
【0040】
焼成工程において、ホウ酸メラミンに対する、融剤のモル比(ホウ酸メラミン/融剤)が、1以上3以下となる割合で混合して焼成することが好ましい。
【0041】
融剤(フラックス)の存在下で焼成することにより、1700℃以下の低い温度条件で窒化ホウ素の結晶を育成することができる。これにより、窒化ホウ素が鱗片状に成長しにくく、ホウ酸メラミンの粒子の形状と大きさを維持した窒化ホウ素を製造することができる。
【0042】
<窒化ホウ素>
本実施形態の製造方法により製造される窒化ホウ素は、原料であるホウ酸メラミンの粒子の形状と大きさが維持されている。
本実施形態の窒化ホウ素は一次粒子の凝集体である二次粒子である。二次粒子は多孔質であり、孔径が約10nmの微細な孔を備える。
【0043】
本実施形態の窒化ホウ素は、例えば柱状の細長い形状を有する二次粒子であって、短軸径が約5μm以上10μm以下、長軸径が約10μm以上2cm以下である粒子である。
本実施形態の窒化ホウ素は、例えば短軸径と長軸径がそれぞれ数十μmである二次粒子であって、アスペクト比が約1~1.5である粒子である。
【0044】
本実施形態の窒化ホウ素は、従来の鱗片状の窒化ホウ素に比べて熱伝導の異方性が小さいため、熱伝導体全体としての熱伝導性が向上すると推察できる。また、窒化ホウ素の粒子の大きさと形状を制御できるため、例えば熱伝導性に優れた薄い絶縁膜や、デバイスの層間絶縁膜など、幅広く応用できる。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>
[ホウ酸メラミンを得る工程]
80℃まで加熱した蒸留水100mLに、ホウ酸3gを添加し、攪拌して完全に溶解させた。次いで、2gのメラミンを添加し、攪拌して完全に溶解させた。攪拌にはスターラーを使用した。これにより、ホウ酸とメラミンの飽和水溶液を得た。
【0047】
80℃のお湯を入れた1Lビーカーに、得られた飽和水溶液を入れたビーカーを漬けて、室温で約12時間放置し、ゆっくり飽和水溶液を冷却した。冷却により、ホウ酸メラミンの結晶が析出した。
析出したホウ酸メラミンの結晶をシャーレに取り出して、室温で12時間放置し、自然乾燥させた。これにより、析出物1を得た。
【0048】
得られた析出物1のX線回折パターンを得た。その結果を図1(a)に示す。
【0049】
図1(b)に示すように、粉末X線回折データベース(ICDD)と参照したところ、ICDDのNo050-2384のCNOであることが確認できた。
【0050】
さらに、図1(c)に示すように、ICDDのNo076-6949のホウ酸メラミンであることが確認できた。図1(c)の結果から、析出物1はホウ酸メラミン1であることが確認できた。
【0051】
得られたホウ酸メラミン1のSEM写真(倍率3000倍)を図2に示す。図2に示すように、ホウ酸メラミン1は、柱状の細長い形状を有し、短軸径は約5μm~10μmであった。
【0052】
[焼成工程]
2mmolのホウ酸メラミン1と、1mmolの炭酸リチウムとを10分間混合し、混合物1を得た。混合物1を角型カーボンるつぼに入れ、ケラマックス箱形電気炉を用いて焼成した。ホウ酸メラミンに対する、融剤のモル比(ホウ酸メラミン/融剤)は2であった。
【0053】
まず、昇温速度300℃/時間で4時間20分かけて1400℃まで昇温し、1400℃で1時間保持した。その後、降温速度300℃/時間で4時間20分かけて0℃まで降温した。昇温、1400℃での保持、及び降温工程のすべてにおいて、0.2L/分間の流量で窒素ガスを通気した。
これにより、焼成物1得た。焼成物1を水洗し、焼成品1を得た。
【0054】
得られた焼成品1のX線回折パターンを得た。図3(a)に、水洗前の焼成物1のX線回折パターンを示す。図3(b)に水洗後の焼成品1のX線回折パターンを示す。図3(a)、(b)ともに、炭酸リチウムに帰属するピークは確認されなかった。
【0055】
図3(c)に示すように、ICDDと参照したところ、ICDDのNo034-0421である窒化ホウ素であることが確認できた。図3(c)の結果から、焼成品1は窒化ホウ素1であることが確認できた。
【0056】
図4(a)に、窒化ホウ素1のSEM写真(倍率2000倍)を、図4(b)にSEM写真(倍率20000倍)をそれぞれ示す。図4(a)から、窒化ホウ素1は、柱状の細長い形状を有し、短軸径は約5μm~10μmであった。つまり、ホウ酸メラミン1の形状と大きさが維持されていることが確認できた。
【0057】
図4(b)から、ホウ酸メラミン1は、孔径が約10nm程度の孔を複数備える多孔質構造であることが確認できた。
【0058】
<実施例2>
[ホウ酸メラミンを得る工程]
80℃まで加熱した蒸留水100mLに、ホウ酸3gを添加し、攪拌して完全に溶解させた。次いで、2gのメラミンを添加し、攪拌して完全に溶解させた。攪拌にはスターラーを使用した。これにより、ホウ酸とメラミンの飽和水溶液を得た。
【0059】
得られた飽和水溶液を5分間超音波処理し、ホウ酸メラミンの結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過し、析出物2を得た。
【0060】
得られた析出物2のX線回折パターンを得た。その結果を析出物2はホウ酸メラミンであることを確認した。
【0061】
得られたホウ酸メラミン2のSEM写真(500倍)を図5(a)に示す。得られたホウ酸メラミン2のSEM写真(1000倍)を図5(b)に示す。図5(a)に示すように、ホウ酸メラミン2は、粒子形状を有し、粒子の短軸径と長軸径はそれぞれ約20μmであった。また、ホウ酸メラミン2のアスペクト比(短軸径/長軸径)は約1であった。
【0062】
[焼成工程]
4mmolのホウ酸メラミン2と、2mmolの炭酸リチウムとを10分間混合し、混合物2を得た。混合物2を角型カーボンるつぼに入れ、ケラマックス箱形電気炉を用いて焼成した。ホウ酸メラミンに対する、融剤のモル比(ホウ酸メラミン/融剤)は2であった。
【0063】
まず、昇温速度300℃/時間で4時間40分かけて1400℃まで昇温し、1400℃で1時間保持した。その後、降温速度300℃/時間で4時間20分かけて0℃まで降温した。昇温、1400℃での保持、及び降温工程のすべてにおいて、0.2L/分間の流量で窒素ガスを通気した。
これにより、焼成物2得た。焼成物2を水洗し、焼成品2を得た。
【0064】
得られた焼成品2のX線回折パターンを得た。これにより焼成品2は窒化ホウ素2であることが確認できた。
【0065】
図6(a)に、窒化ホウ素2のSEM写真(倍率1000倍)を、図6(b)にSEM写真(倍率2000倍)をそれぞれ示す。
図6(a)から、窒化ホウ素2は、粒子形状を有し、粒子の短軸径と長軸径はそれぞれ約20μmであった。また、窒化ホウ素2のアスペクト比(短軸径/長軸径)は約1であった。つまり、ホウ酸メラミン2の形状と大きさが維持されていることが確認できた。
【0066】
図6(c)に40000倍の窒化ホウ素2のSEM写真を示す。図6(c)から、ホウ酸メラミン2は、孔径が約10nm程度の孔を複数備える多孔質構造であることが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6