(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】操作された抗体、抗体薬物複合体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20250130BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20250130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250130BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20250130BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250130BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20250130BHJP
A61K 31/537 20060101ALI20250130BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20250130BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C07K16/30
A61P35/00
A61K47/68
A61K39/395 C
A61K39/395 T
A61K38/07
A61K31/537
A61K31/357
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2023530653
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 CN2021131757
(87)【国際公開番号】W WO2022105873
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/130409
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523173379
【氏名又は名称】ブリス バイオファーマシューティカル(ハンゾウ)カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シァ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ユホン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ジピン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジアンフェン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-509675(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111171155(CN,A)
【文献】特表2014-516250(JP,A)
【文献】国際公開第2017/076492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの全く同一の重鎖を含
む、
単離されたIgG抗体であって、
各重鎖は、
(a
)ヒンジ領域
であって、前記ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列が、
(i)EPKSDCKTHTVECPPCP(配列番号7);
(ii)EPKSDKCTHTVECPPCP(配列番号9);
(iii)EPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号10);
(iv)EPPKSDCKTHTVECPPCP(配列番号11);
(v)EPPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号12);
(vi)EPPPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号13);及び
(vii)EPPKSDCKTKTVECPPCP(配列番号28);
からなる群より選択されるヒンジ領域と、
(b)前記ヒンジ領域の上流に位置し、前記ヒンジ領域に接続され
たCH1ドメインと、
を含
み、
前記IgG抗体のCH1ドメインは、S142C突然変異を有する天然ヒトIgG1抗体のCH1ドメインの配列を有するか、または、
前記IgG抗体のCH1ドメインは、天然ヒトIgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体のCH1ドメインと同一の配列を有する、単離されたIgG抗体。
【請求項2】
前記IgG抗体は、二つの全く同一のkappa軽鎖をさらに含む、請求項1に記載のIgG抗体。
【請求項3】
各前記重鎖は、天然ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体の前記ヒンジ領域の下流に位置し、前記ヒンジ領域に接続されたCH2-CH3ドメインをさらに含み、前記CH2-CH3は、任意選択的に一つ又は複数の突然変異を含む、請求項
1に記載のIgG抗体。
【請求項4】
前記ヒンジ領域に含まれるアミノ酸配列が、EPPKSDCKTKTVECPPCP(配列番号28)である、請求項
1に記載のIgG抗体。
【請求項5】
前記ヒンジ領域における二つの重鎖の
N末端からC末端に向かって最初のシステイン残基の間にジスルフィド結合を形成している、請求項
1に記載のIgG抗体。
【請求項6】
前記IgG抗体は、抗原に特異的に結合したFabドメインをさらに含み、前記抗原は、EGFR、HER2、HER3、BCMA、B7H3、CEA、CEACAM6、claudin 18.2、c-MET、葉酸受容体、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD48、CD56、CD70、CD73、CD74、CD79b、CD98、CD138、CD309(VEGFR2)、コラーゲンIV、エンドセリン受容体ETB、ENPP3、フィブロネクチンエクストラドメインB、GCC、GPNMB、LIV-1(ZIP6)、MUC1、MUC16、メソテリン、NaPi2b、ネクチン4、p-カドヘリン、ペリオスチン、PSMA、SC-16(抗-Fyn3)、SLC44A4、SLTRK6、STEAP1、テネイシンc、組織因子、Trop2及び5T4(TPBG)からなる群より選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載のIgG抗体。
【請求項7】
(a)それぞれが配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(
b)それぞれが配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(
c)それぞれが配列番号21に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(
d)それぞれが配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(
e)それぞれが配列番号29に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号31に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;並びに
(
f)それぞれが配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号32に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
中の一つを含む単離されたIgG抗体。
【請求項8】
化学リンカーを介して細胞傷害性薬物にコンジュゲートした請求項1~
7のいずれか一項に記載のIgG抗体を含む、抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
前記細胞傷害性薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、アウリスタチンE、アウリスタチンF、メイタンシンDM1とDM4、メイタンシノール、サンドラマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、アントラサイクリン系、カリケアマイシン、ドラスタチン10、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、タイランスタチンA、ウンシアラマイシン、アマニチン、リシン、ジフテリア毒素、エリブリン、
131I、インターロイキン、腫瘍壊死因子、ケモカイン、イリノテカン(SN38)、エキサテカン
及びエキサテカン誘導
体からなる群より選択される、請求項
8に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
前記化学リンカーに含まれる部分は、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロピオニル(MP)、バリン-シトルリン(Val-Cit)、アラニン-フェニルアラニン(Ala-Phe)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-Val-Cit-PAB)、Mal-PEG
n-Val-Cit-PAB(n=1~20)、Phe-Lys(Fmoc)-PAB、Aloc-D-Ala-Phe-Lys(Aloc)-PAB-PNP、Boc-Phe-(Alloc)Lys-PAB-PNP及びパーフルオロフェニル 3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパノエートからなる群より選択される、請求項
8に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ、ここで、前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである、請求項
8~
10のいずれか一項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ、ここで、前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである、請求項
8~
10のいずれか一項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ、ここで、前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである、請求項
8~
10のいずれか一項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、且つ、ここで、前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである、請求項
8~
10のいずれか一項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号32に示されるアミノ酸配列を含み、且つ、ここで、前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである、請求項
8~
10のいずれか一項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
ADCの少なくとも80%は、抗体の重鎖上のシステインを介して化学リンカーにコンジュゲートされる、請求項
8~
10のいずれか一項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩の製剤。
【請求項17】
薬物抗体比(DAR)が2であるADC分子は、ADC分子の総量の60%以上を占める、請求項
8~
10のいずれか一項に記載のADC又はその薬学的に許容される塩の製剤。
【請求項18】
抗体のヒンジ領域における対応するシステイン間の少なくともいくつかのH-Hジスルフィド結合が遊離スルフヒドリルに還元されるように、少なくとも部分的な還元を受けた請求項1~
7のいずれか一項に記載のIgG抗体と、
細胞傷害性薬物分子に結合した末端チオール反応基を含む化学リンカーと、の反応生成物を含む、抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のIgG抗体のヒンジ領域における二つの重鎖の
N末端からC末端に向かって最初のシステイン残基の間のH-Hジスルフィド結合を還元し、これにより、遊離スルフヒドリルを得ることと、
末端チオール反応基を含む化学リンカーを反応させて、これにより、抗体の二つの重鎖のそれぞれを化学リンカーを介して一つの細胞傷害性薬物分子にコンジュゲートさせることとを含む、DAR2の抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は出願日が2020年11月20日である国際出願PCT/CN2020/130409の優先権を主張する。本出願には引用により上記特許出願に開示された全文が組み込まれる。
【0002】
〔背景技術〕
抗体は、外来病原体に対する重要な免疫分子である。モノクローナル抗体(monoclonal antibody、mAb)技術の発展により、モノクローナル抗体が疾患の研究、診断、及び治療に広く使用されるようになっている。第一世代mAb(主に単一特異性的な二価mAb)の治療的使用は、がん、自己免疫疾患、及び感染症を含むさまざまな疾患の治療に成功した。しかし、固形腫瘍などの多くの疾患は、抗体ベースの治療法に対して非常に強い抵抗力を示している。
【0003】
抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate、ADC)は、活性傷害性薬物と化学的に結合したmAbであるため、mAbの標的特異性と細胞傷害性薬物のがん殺傷能力を備えている。特定のmAb-傷害性薬物の組み合わせを選択する能力、及びmAbと薬物の結合の進歩は、健康な組織の曝露を最小限に抑えながら、がんを標的とする新しい可能性を提供した。2019年の時点で、Ado-トラスツズマブエムタンシン(ado-trastuzumab emtansine、KadcylaTM)、ブレンツキシマブベドチン(brentuximab vedotin、AdcetrisTM)、イノツズマブオゾガマイシン(inotuzumab ozogamicin、BesponsaTM)、ゲムツズマブオゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin、MylotargTM)、ポラツズマブベドチン-piiq(polatuzumab vedotin-piiq、PolivyTM)、エンホルツマブベドチン(Enfortumab vedotin、PadcevTM)、及びトラスツズマブデルクステカン(Trastuzumab deruxtecan、EnhertuTM)という合計七つのADCがFDAによって承認されている。現在、市販が承認されたこれらの七つのADC薬物に加えて、多数のADCが臨床開発中である。
【0004】
薬物を抗体に結合させる従来の方法では、通常、ADCの不均一な混合物が生じることがある。例えば、細胞傷害性薬物は、通常、表面に露出したリジン又はシステイン(鎖間ジスルフィド結合を還元することにより得られる)を介して抗体にコンジュゲートされ、抗体上に異なる結合部位及び異なる薬物抗体比(drug to antibody ratio、DAR)を有する異なる種類のADCを生成する。非特異的コンジュゲートは、ADC製品のコンジュゲーションプロセス制御、製品の特性評価、及び品質管理という点で課題をもたらす。さらに、ADCの種類が異なれば、安全性と有効性のプロファイルも大きく異なる可能性がある。IgG1抗体の重鎖とその対になる軽鎖との間のジスルフィド結合は、コンジュゲーションプロセスにおける還元される好ましい結合である可能性があるため、これにより産生される軽鎖薬物複合体を有するADCの種類は安定性が低く、生体内循環中にそれらの軽鎖を失いやすい可能性がある。
【0005】
近年、より均質なADCを得るために、いくつかの部位特異的なADC技術が開発されている。例えば、特定のアミノ酸(例えば、システイン)、非天然アミノ酸残基(例えば、p-アセチルフェニルアラニン(pAcF))、及び酵素によって認識と修飾され得る短いペプチドタグを、抗体のアミノ酸配列の選択部位に操作した。抗体の重鎖に結合したグリカンを使用してグリカンを介したコンジュゲーションを試みた人もいる。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明の一態様は、二つの全く同一の重鎖を含み、各重鎖は、(a)アミノ酸配列-(X1)-C-(X2)-CPPCP-を含み、ここで、X1は、それぞれ独立して非システイン残基の任意のアミノ酸残基から選択される0~7個のアミノ酸残基を有するポリペプチド断片であり、X2は、それぞれ独立して非システイン残基の任意のアミノ酸残基から選択される2~7個のアミノ酸残基を有するポリペプチド断片である、ヒンジ領域と、(b)前記ヒンジ領域の上流に位置し前記ヒンジ領域に接続され、IMGTのナンバリングスキームにより142位にシステインを含む、CH1ドメインとを含む単離されたIgG抗体を提供する。前記抗体はさらに、それぞれが重鎖と対になる二つの全く同一のkappa軽鎖を含んでもよい。
【0007】
前記IgG抗体のCH1ドメインは、天然ヒトIgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体のCH1ドメインと同一の配列を有してもよい。或いは、前記IgG抗体のCH1ドメインの配列は、S142C突然変異を有する天然ヒトIgG1抗体のCH1ドメインの配列と同一であってもよい。
【0008】
各前記重鎖は、天然ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体の前記ヒンジ領域の下流に位置し前記ヒンジ領域に接続されたCH2-CH3ドメインをさらに含んでもよい。前記CH2-CH3ドメインは、任意選択的に一つ又は複数の突然変異を含んでもよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記ヒンジ領域のアミノ酸配列は、(a)CKTHTCPPCP(配列番号1)、(b)DKTCHTCPPCP(配列番号2)、
(c)ERKSCVECPPCP(配列番号3)、(d)EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号4)、(e)EPKSDCKTHTCPPCP(配列番号5)、(f)EPKSDKCTHTCPPCP(配列番号6)、(g)EPKSDCKTHTVECPPCP(配列番号7)、(h)EPKSDCKTVECPPCP(配列番号8)、(i)EPKSDKCTHTVECPPCP(配列番号9)、(j)EPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号10)、
(k)EPPKSDCKTHTVECPPCP(配列番号11)、(l)EPPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号12)、及び(m)EPPPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号13)、及び(n)EPPKSDCKTKTVECPPCP(配列番号28)からなる群より選択される。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記IgG抗体は、抗原に特異的に結合したFabドメインをさらに含み、前記抗原は、EGFR、HER2、HER3、BCMA、B7H3、CEA、CEACAM6、claudin 18.2、c-MET、葉酸受容体(folate receptor)、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD48、CD56、CD70、CD73、CD74、CD79b、CD98、CD138、CD309(VEGFR2)、コラーゲンIV(collagen IV)、エンドセリン受容体ETB(endothelin receptor ETB)、ENPP3、フィブロネクチンエクストラドメインB(fibronectin extra-domain B)、GCC、GPNMB、LIV-1(ZIP6)、MUC1、MUC16、メソテリン(Mesothelin)、NaPi2b、ネクチン4(nectin 4)、p-カドヘリン(p-Cadherin)、ペリオスチン(periostin)、PSMA、SC-16(抗-Fyn3)、SLC44A4、SLTRK6、STEAP1、テネイシンc(tenascin c)、組織因子(tissue factor)、Trop2及び5T4(TPBG)からなる群より選択される。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記IgG抗体は、
(a)それぞれが配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(b)それぞれが配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(c)それぞれが配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(d)それぞれが配列番号17に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(e)それぞれが配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(f)それぞれが配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(g)それぞれが配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(h)それぞれが配列番号21に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(I)それぞれが配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(j)それぞれが配列番号29に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号31に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;並びに
(k)それぞれが配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号32に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
である構造のうちの一つを有する。
【0012】
本開示は、さらなる態様において、化学リンカーを介して細胞傷害性薬物にコンジュゲートされた本発明に記載の抗体を含む、抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。いくつかの実施形態において、前記細胞傷害性薬物は、モノメチルアウリスタチンE(monomethyl auristatin E、MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(monomethyl auristatin F、MMAF)、アウリスタチンE(auristatin E)、アウリスタチンF(auristatin F)、メイタンシン(maytansine)DM1とDM4、メイタンシノール(maytansino)、サンドラマイシン(sandramycin)、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine)、ピロロベンゾジアゼピン二量体(pyrrolobenzodiazepine dimer)、アントラサイクリン系(anthracycline)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ドラスタチン10(dolastatin 10)、デュオカルマイシン(duocarmycin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、タイランスタチンA(thailanstatin A)、ウンシアラマイシン(uncialamycin)、アマニチン(amanitin)、リシン(ricin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)、エリブリン(eribulin(CAS))、131I、インターロイキン(interleukin)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ケモカイン(chemokine)、イリノテカン(irinotecan、SN38)、エキサテカン(exatecan)、エキサテカン誘導体及びナノ粒子(nanoparticle)からなる群より選択される。
【0013】
前記抗体部分と前記細胞傷害性薬物とを連結する化学リンカーは、切断可能であっても切断不可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記リンカーは、nが1~20である(即ち、1~20の繰り返し単位を有する(CH2CH2O))PEGnスペーサー領域を含む。いくつかの実施形態において、前記化学リンカーは、前記PEGnスペーサー領域に接続されたリンカー断片をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記化学リンカーは、PEGnスペーサー領域を含まないリンカー断片を含む。いくつかの実施形態において、前記リンカー断片は、6-マレイミドカプロイル(6-maleimidocaproyl、MC)、マレイミドプロピオニル(maleimidopropionyl、MP)、バリン-シトルリン(Val-Cit)、アラニン-フェニルアラニン(Ala-Phe)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(p-aminobenzyloxycarbonyl、PAB)、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-Val-Cit-PAB)、Mal-PEGn-Val-Cit-PAB(n=1~20)、Phe-Lys(Fmoc)-PAB、Aloc-D-Ala-Phe-Lys(Aloc)-PAB-PNP、Boc-Phe-(Alloc)Lys-PAB-PNP及びパーフルオロフェニル 3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパノエート(perfluorophenyl 3-(pyridine-2-yldisulfanyl)propanoate)、又はそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0014】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0015】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0016】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0017】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0018】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号32に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0019】
前記ADC又はその薬学的に許容される塩の製剤において、ADCの少なくとも80%は、抗体の重鎖上のシステインを介して化学リンカーにコンジュゲートされる。前記製剤のいくつかの実施形態において、薬物抗体比(DAR)が2であるADC分子は、ADC分子の総量の60%以上を占める。
【0020】
本開示のさらなる態様は、抗体のヒンジ領域における対応するシステイン間の少なくともいくつかのH-Hジスルフィド結合が遊離スルフヒドリルに還元されるように、少なくとも部分的な還元を受けた本発明に記載のIgG抗体と、細胞傷害性薬物分子に結合した末端チオール反応基を含む化学リンカーと、の反応生成物を含む、抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0021】
本開示のさらなる態様は、本発明に記載のIgG抗体のヒンジ領域における対応するシステイン間のH-Hジスルフィド結合を少なくとも部分的に還元し、これにより遊離スルフヒドリルを得ることと、ヒンジ領域におけるシステインのスルフヒドリルと末端チオール反応基を含む化学リンカーとを反応させ、これにより抗体を化学リンカーを介して一つ又は複数の細胞傷害性薬物分子にコンジュゲートさせることとを含む、抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩の製造方法を提供する。
【0022】
〔図面の説明〕
〔
図1〕本出願で使用される抗体のアミノ酸ナンバリングシステムの模式図を示す。(a)ヒトIgG1(κ)のIMGTベースのアミノ酸ナンバリングシステムである。(b)突然変異体(IgG1ヒンジ領域の場合)のナンバリングシステムである。
【0023】
〔
図2〕A部分は、本発明の実施形態による操作された抗体の模式図を示す。B部分は、本発明の実施形態によるIgG抗体におけるジスルフィド結合を示す。
【0024】
〔
図3〕本発明の実施例の抗体の特徴を示す。(a)HEK293細胞で産生された抗体の純度と収量である。(b)還元(R)抗体及び非還元(NR)抗体のSDS-PAGE分析である。(c)精製抗体のSEC-HPLC分析である。
【0025】
〔
図4〕天然ヒトIgG1(κ)、IgG2(κ)及び本発明の実施例の操作された抗体から製造したADCのHICプロファイルを示す。a:IgG1(κ)-MMAE、b:IgG2(κ)-MMAE、c:BB0500-2a-MMAE、d:BB0500-2b-MMAE、e:BB0500-2g-MMAE、f:BB0500-2n-MMAE、g:BR0301-MMAE及びh:BR0302-MMAE。
【0026】
〔
図5〕本発明の特定の実施例のADCのCE-SDSプロファイルを示す。a:IgG1(κ)-MMAE、b:IgG2(κ)-MMAE、c:BB0500-2a-MMAE及びd:BB0500-2g-MMAE。
【0027】
〔
図6〕タンパク質EGFR(a)、HER3(b)、及びHER2(c)に対する本発明の実施形態による異なる操作された抗体と対照(wt)抗体の結合曲線を示す。
【0028】
〔
図7〕EGFR発現がん細胞(a:A431細胞、b:NUGC3細胞)に対する本発明の実施形態による操作されたADCの細胞傷害性曲線と、HER2発現がん細胞(c:NCI-N87(HER2高発現)、及びd:A431(HER2低発現))に対する本発明の実施形態による他の操作されたADCの細胞傷害性曲線とを示す。
【0029】
〔具体的な実施形態〕
本開示の一態様は、重鎖が142位のアミノ酸又はその近傍にシステイン残基を有するCH1ドメインを含み、ヒンジ領域がヒトIgG1ヒンジ領域における二つの固有のシステインの上流に位置する第3又は追加のシステイン残基を含む配列と見なすことができる3つのシステインのパターンに配置された配列を含む、新規の操作された抗体を提供する。当該第3のシステイン残基は本明細書では「HG3システイン」と呼ばれる。
【0030】
この形態の重鎖を含む抗体は、好ましくは、CH1ドメインのC142(又は142位近傍のシステイン、部位が以下にさらに記載されたIMGTナンバリングシステムのように定義される)と軽鎖の最後のシステイン残基との間にH-L鎖間ジスルフィド結合を形成する。天然CPPCP配列の上流のヒンジ領域のシステイン残基は、第3のH-H鎖間ジスルフィド結合を形成する。CH1ドメインの142位又は近傍のアミノ酸のシステインは、IgG1サブタイプの単一アミノ酸の突然変異又は挿入によって導入されてもよく、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプのCH1ドメインに由来する天然システイン残基であってもよい。IgG1における天然H-Lジスルフィド結合(IgG1抗体重鎖のヒンジ領域のシステインと対になる軽鎖の末端との間に位置する)と比較して、この形態のH-Lジスルフィド結合がより安定であり、抗体への薬物コンジュゲートプロセスで還元条件下で完全な状態を保つことができる。これにより、軽鎖薬物複合体を含むADCが得られる可能性は大きく減少した。
【0031】
ヒンジ領域における第3のシステインの正確な位置及びその周囲のアミノ酸配列は異なる場合がある。第3のH-H鎖間ジスルフィド結合は、固有のH-H鎖間ジスルフィド結合又はH-L鎖間ジスルフィド結合よりも還元されやすい。当該ジスルフィド結合の還元しやすい特性は、部位特異的な薬物コンジュゲートを促進することができる。選択された還元と薬物コンジュゲート条件は、主に第3のシステイン「HG3システイン」への部位特異的な薬物コンジュゲートを得るために使用することができる。
【0032】
免疫グロブリンスーパーファミリーのIMGTナンバリングシステムは、本明細書において、ナンバリングシステムを簡略化するために使用され、ここで、VH又はVLドメインは、それぞれアミノ酸残基1~128位を含む。したがって、CH1ドメインにおけるアミノ酸番号はaa 129-226であり、kappaドメインはaa 129-235であり、ヒンジ領域はaa 227-241(IgG1による)であり、CH2はaa 242-351であり、CH3はaa 352-456である(
図1のa部分参照)。このナンバリングシステムに基づいて、野生型IgG1(κ)におけるH-L鎖間ジスルフィド結合はH(C231)-L(C235)間に形成されるのに対し、IgG2(κ)(又はIgG3(κ)又はIgG4(κ))では、H(C142)-L(C235)間に形成されてもよい。重鎖の230位のセリンがシステインに変化したIgG1突然変異体はIgG1(S230C)と命名され、C231が欠損したIgG1突然変異体はIgG1(Δ231)と命名される。C231の後に一つのリジンが挿入されたIgG1突然変異体はK231.1と命名され、C231の後にKLの二つのアミノ酸が挿入されたIgG1突然変異体はK231.1L231.2と命名される(IgG1のヒンジ領域に突然変異を導入したいくつかの記号例を示す
図1のb部分参照)。
【0033】
本明細書で使用される用語「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。抗原に特異的に結合する単離された抗体は、その抗原に結合しない抗体を実質的に含まない。
【0034】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な分子からなる抗体分子の集団を有する製剤を指し、ここで、抗体分子の集団中の個々の抗体は、ごくわずかな量で存在する可能性のある天然に発生する突然変異を除いて、同一である。
【0035】
いくつかの実施形態において、本開示は、二つの全く同一の重鎖を含み、各重鎖は、(a)アミノ酸配列-(X1)-C-(X2)-CPPCP-を含み、X1は、それぞれ独立して非システイン残基の任意のアミノ酸残基から選択される0~7個のアミノ酸残基を有するポリペプチド断片であり、X2は、それぞれ独立して非システイン残基の任意のアミノ酸残基から選択される2~7個のアミノ酸残基を有するポリペプチド断片である、ヒンジ領域と、(b)前記ヒンジ領域の上流に位置し前記ヒンジ領域に接続され、IMGTのナンバリングスキームにより142位にシステインを含む、CH1ドメインとを含む単離されたIgG抗体を提供する。
【0036】
前記IgG抗体は、二つの全く同一のkappa軽鎖をさらに含んでもよい。前記kappa軽鎖のC末端のシステインは、CH1 C142とジスルフィド結合を形成することができる。
【0037】
前記IgG抗体のいくつかの実施形態において、前記IgG抗体のCH1ドメインは、天然ヒトIgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体のCH1ドメインと同一の配列を有する。
【0038】
前記IgG抗体のいくつかの実施形態において、前記IgG抗体のCH1ドメインの配列は、S142C突然変異を有する天然ヒトIgG1抗体のCH1ドメインの配列と同一である。
【0039】
前記IgG抗体のいくつかの実施形態において、各前記重鎖は、天然ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブクラス抗体の前記ヒンジ領域の下流に位置し前記ヒンジ領域に接続されたCH2-CH3ドメインのアミノ酸配列をさらに含んでもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記ヒンジ領域のアミノ酸配列は、(a)CKTHTCPPCP(配列番号1)、(b)DKTCHTCPPCP(配列番号2)、(c)ERKSCVECPPCP(配列番号3)、(d)EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号4)、(e)EPKSDCKTHTCPPCP(配列番号5)、(f)EPKSDKCTHTCPPCP(配列番号6)、(g)EPKSDCKTHTVECPPCP(配列番号7)、(h)EPKSDCKTVECPPCP(配列番号8)、(i)EPKSDKCTHTVECPPCP(配列番号9)、(j)EPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号10)、(k)EPPKSDCKTHTVECPPCP(配列番号11)、(l)EPPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号12)、(m)EPPPPKSCDKTHTVECPPCP(配列番号13)、及び(n)EPPKSDCKTKTVECPPCP(配列番号28)からなる群より選択される。
【0041】
前記抗体は、抗原に特異的に結合したFabドメインをさらに含んでもよく、前記抗原は、EGFR、HER2、HER3、BCMA、B7H3、CEA、CEACAM6、claudin 18.2、c-MET、葉酸受容体(folate receptor)、CD3、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD48、CD56、CD70、CD73、CD74、CD79b、CD98、CD138、CD309(VEGFR2)、コラーゲンIV(collagen IV)、エンドセリン受容体ETB(endothelin receptor ETB)、ENPP3、フィブロネクチンエクストラドメインB(fibronectin extra-domain B)、GCC、GPNMB、LIV-1(ZIP6)、MUC1、MUC16、メソテリン(Mesothelin)、NaPi2b、ネクチン4(nectin 4)、p-カドヘリン(p-Cadherin)、ペリオスチン(periostin)、PSMA、SC-16(抗-Fyn3)、SLC44A4、SLTRK6、STEAP1、テネイシンc(tenascin c)、組織因子(tissue factor)、Trop2及び5T4(TPBG)からなる群より選択される。
【0042】
前記IgG抗体の配列の例としては、
(a)それぞれが配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(b)それぞれが配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(c)それぞれが配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(d)それぞれが配列番号17に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(e)それぞれが配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(f)それぞれが配列番号19に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(g)それぞれが配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(h)それぞれが配列番号21に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(I)それぞれが配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号27に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
(j)それぞれが配列番号29に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号31に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;並びに
(k)それぞれが配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む二つの同一の重鎖、及びそれぞれが配列番号32に示されるアミノ酸配列を含む二つの軽鎖;
が含まれる。
【0043】
出発ポリペプチドのアミノ酸配列突然変異体をコードするDNAは、当該分野で知られている様々な方法によって製造することができる。これらの製造方法には、初期に製造されたポリペプチドをコードするDNAの部位特異的(又はオリゴヌクレオチド媒介の)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。組換え抗体の突然変異体は、制限断片操作によって、又は合成オリゴヌクレオチドとのオーバーラップ伸長PCRによっても構築することができる。突然変異原性プライマーは、システインコドン置換をコードする。標準的な突然変異誘発技術を採用して、そのような突然変異操作された抗体をコードするDNAを生成することができる。
【0044】
本開示のなおさらなる態様は、本発明に記載の抗体又は任意の前記抗体の抗原結合部分をコードする核酸分子を提供する。前記核酸分子を含む発現ベクターを含む、宿主細胞(例えば、CHO細胞、リンパ球細胞、ヒト胚性腎細胞又は微生物(例えば大腸菌、及び酵母などの真菌)であって、本開示の抗体、好ましくはモノクローナル抗体を製造するために使用することができる。一実施形態において、本開示の部分的又は完全長抗体をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結されるように一つ又は複数の発現ベクターに挿入される標準的な分子生物学的手法によって得ることができる。「作動可能に連結される(operatively linked)」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するという意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターに連結されることを意味することを意図する。「制御配列(regulatory sequence)」という用語は、抗体遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)にこのような制御配列が記載されている。哺乳動物宿主細胞発現の好ましい制御配列には、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)、シミアンウイルス40(Simian Virus 40、SV40)、アデノウイルス(adenovirus、例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマウイルス(polyoma)に由来するプロモーター及び/又はエンハンサーなどの、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントが含まれる。或いは、ユビキチンプロモーター又はβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列を使用することができる。さらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーター及びヒトT細胞白血病ウイルス1型の長末端リピートからの配列を含むSRαプロモーターシステムなどの異なる供給源からの配列から構成されている(Takebe et al., (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。使用される発現宿主細胞と適合性がある発現ベクター及び発現制御配列を選択する。
【0045】
抗体をコードするDNAを前記発現ベクターに挿入することができる。組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体をコードするDNAは、シグナルペプチドが抗体のアミノ末端をコードするDNAにインフレームで連結されるようにベクターにクローニングすることができる。前記シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリン由来のシグナルペプチド)であってもよい。
【0046】
本開示は、さらなる態様において、化学リンカーを介して細胞傷害性薬物にコンジュゲートされた本発明に記載の抗体を含む、抗体薬物複合体(ADC)又はその薬学的に許容される塩をさらに提供する。前記細胞傷害性薬物は、モノメチルアウリスタチンE(monomethyl auristatin E、MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(monomethyl auristatin F、MMAF)、アウリスタチンE(auristatin E)、アウリスタチンF(auristatin F)、メイタンシン(maytansine)DM1とDM4、メイタンシノール(maytansino)、サンドラマイシン(sandramycin)、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine)、ピロロベンゾジアゼピン二量体(pyrrolobenzodiazepine dimer)、アントラサイクリン系(anthracycline)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ドラスタチン10(dolastatin 10)、デュオカルマイシン(duocarmycin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、タイランスタチンA(thailanstatin A)、ウンシアラマイシン(uncialamycin)、アマニチン(amanitin)、リシン(ricin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)、エリブリン(eribulin)、131I、インターロイキン(interleukin)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ケモカイン(chemokine)、イリノテカン(irinotecan、SN38)、エキサテカン(exatecan)、エキサテカン誘導体及びナノ粒子(nanoparticle)からなる群より選択され得る。
【0047】
前記抗体部分と前記細胞傷害性薬物とを連結する化学リンカーは、切断可能であっても切断不可能であってもよい。いくつかの実施形態において、前記リンカーは、nが1~20である(即ち、1~20の繰り返し単位を有する(CH2CH2O))PEGnスペーサー領域を含む。いくつかの実施形態において、前記化学リンカーは、前記PEGnスペーサー領域に接続されたリンカー断片をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記化学リンカーは、PEGnスペーサー領域を含まないリンカー断片を含む。いくつかの実施形態において、前記リンカー断片は、6-マレイミドカプロイル(6-maleimidocaproyl、MC)、マレイミドプロピオニル(maleimidopropionyl、MP)、バリン-シトルリン(Val-Cit)、アラニン-フェニルアラニン(Ala-Phe)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(p-aminobenzyloxycarbonyl、PAB)、6-マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-Val-Cit-PAB)、Mal-PEGn-Val-Cit-PAB(n=1~20)、Phe-Lys(Fmoc)-PAB、Aloc-D-Ala-Phe-Lys(Aloc)-PAB-PNP、Boc-Phe-(Alloc)Lys-PAB-PNP及びパーフルオロフェニル 3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパノエート(perfluorophenyl 3-(pyridine-2-yldisulfanyl)propanoate)、又はそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0048】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号21に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0049】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号19に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号25に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0050】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号26に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0051】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号29に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0052】
ADCの特定の実施形態において、前記抗体の二つの重鎖はそれぞれ配列番号30に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の二つの軽鎖はそれぞれ配列番号32に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記細胞傷害性薬物はエリブリン又はMMAEである。
【0053】
本開示において、ADCの薬学的に許容される塩には、無機酸、カルボン酸及びスルホン酸の酸付加塩、例えば、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸及び安息香酸の塩が含まれる。
【0054】
本開示の抗体薬物複合体の薬学的に許容される塩には、従来の塩基の塩、例えばアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩)及びアンモニア又は1~16個の炭素原子を含む有機アミンから誘導されるアンモニウム塩がさらに含まれ、ここで、有機アミンとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジアミン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、アルギニン、リジン及び1,2-エチレンジアミンが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用されるADCは、薬物分子と抗体(又はその抗原結合部分)の両方を含む分子を指し、薬物と抗体(又はその抗原結合部分)はリンカーによって共有結合されていると理解されるべきである。本明細書における「ADC製剤」とは、抗体(又はその抗原結合部分)に対する化学リンカーのおそらく異なる付着部位のために構造が異なり得るADC分子の集合又は集団を指す。いくつかの実施形態において、化学リンカーは、主に又は大部分的に(例えば、≧80%、≧85%、≧90%、≧95%、又は≧98%)重鎖上のシステインとコンジュゲートされ、軽鎖のコンジュゲートの実質的にないADC製剤をもたらす。いくつかの実施形態において、化学リンカーは、主に抗体重鎖のヒンジ領域におけるシステインを介して抗体とコンジュゲートされる。特定の実施形態において、薬物抗体比(DAR)が2であるADC分子は、ADC分子の総量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%を占める。
【0056】
さらなる態様において、前記ADC又はその薬学的に許容される塩は、抗体のヒンジ領域における対応するシステイン間の少なくともいくつかのH-Hジスルフィド結合が遊離スルフヒドリルに還元されるように、少なくとも部分的な還元を受けた本発明に記載の抗体と、細胞傷害性薬物分子に結合した末端チオール反応基を含む化学リンカーとの反応生成物であるか、又はそれらを含む。
【0057】
本開示のさらなる態様は、本発明に記載の抗体のヒンジ領域における対応するシステイン間のH-Hジスルフィド結合を少なくとも部分的に還元し、これにより遊離スルフヒドリルを得ることと、ヒンジ領域におけるシステインのスルフヒドリルと末端チオール反応基を含む化学リンカーとを反応させ、これにより抗体を化学リンカーを介して一つ又は複数の細胞傷害性薬物分子にコンジュゲートさせることとを含む、前記ADC又はその薬学的に許容される塩の製造方法を提供する。
【0058】
本開示のさらなる態様において、本発明の一つ又は複数の抗体、一つ又は複数のADC又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤を含む。これらには、生理学的に適合する溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、界面活性剤、増粘剤又は乳化剤、固体結合剤、分散又は懸濁補助剤、可溶化剤、着色剤、香料、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、防腐剤及び等張剤などが含まれるが、これらに限定されない。適切な担体の選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0059】
組成物は、一つ又は複数の追加の薬物活性成分、例えば別の抗体及び薬物(例えば、細胞毒性剤又は抗腫瘍剤)を含むことができる。本発明の医薬組成物はまた、例えば別の抗がん剤及び別の抗炎症剤等との併用療法で投与することができる。
【0060】
前記医薬組成物は、静脈内(intravenous)、筋肉内(intramuscular)、皮下(subcutaneous)、非経口(parenteral)、表皮(epidermal)、及び他の投与経路に適用することができる。投与経路によっては、活性成分を材料にコーティングするか、或いは他の方法で材料又は構造に担持して、それを不活性化する可能性のある酸及び他の自然条件の作用から保護することができる。本明細書で使用される語句「非経口投与」は、経腸及び局所(topical)投与以外の投与様式を指し、通常は注射による、且つ静脈内、筋肉内、動脈内(intraarterial)、髄腔内(intrathecal)、嚢内(intracapsular)、眼窩内(intraorbital)、心臓内(intracardiac)、皮内(intradermal)、腹腔内(intraperitoneal)、経気管(transtracheal)、皮下(subcutaneous)、表皮下(subcuticular)、関節内(intraarticular)、被膜下(subcapsular)、くも膜下(subarachnoid)、脊髄内(intraspinal)、硬膜外(epidural)及び胸骨内(intrasternal)注射及び注入が含まれるが、これらに限定されない。或いは、本発明の組成物は、非経口以外の経路、例えば、局所、表皮又は粘膜投与経路(例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下又は局所投与)により投与することができる。
【0061】
実施例
1.操作された抗体の設計
表1の抗体を設計及び製造し、ここで、これらの抗体のCH1ドメインはアミノ酸142位にシステイン残基を含む。いくつかの抗体では、CH1ドメインにおけるアミノ酸142位のシステインは、単一のアミノ酸の突然変異又は挿入(表1のS142Cはセリン142位に代わるシステイン)によって導入され、他の抗体では、C142はIgG2サブタイプ(表1ではG2CH1と表記)のCH1ドメインにおける天然のシステイン残基に由来する。各抗体は、天然ヒンジ領域の代わりに、CPPCP配列の上流に第3のシステイン残基(HG3システイン)を含む人工ヒンジ配列を含む。HG3システイン残基周辺のアミノ酸配列は、操作された抗体によって異なる可能性がある。操作された抗体のCH1の142位にシステイン残基を導入することにより、CH1ドメインのC142と軽鎖のC235の間にH-L鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。HG3システインは、他のH鎖の同じ位置のシステインと対になることができ、固有のH-H鎖間ジスルフィド結合に加えて、余分なH-H鎖間ジスルフィド結合を形成する(
図2)。
【0062】
【0063】
実施例における操作された抗体の構造及び配列は、以下のように記載される:
1.BB0500-3はIgG2κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗EGFR)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号3)-CH2CH3(IgG2)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0500-3の重鎖の配列は配列番号14に示される。BB0500-3の軽鎖の配列は配列番号23に示される。
【0064】
2.BB0500-5はIgG1κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗EGFR)-CH1(S142C)-ヒンジ(配列番号4)-CH2CH3(IgG1)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0500-5の重鎖の配列は配列番号15に示される。BB0500-5の軽鎖の配列は配列番号23に示される。
【0065】
3.BB0500-2aはIgG1κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗EGFR)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号4)-CH2CH3(IgG1)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0500-2aの重鎖の配列は配列番号16に示される。BB0500-2aの軽鎖の配列は配列番号23に示される。
【0066】
4.BB0500-2bはIgG1κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗EGFR)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号5)-CH2CH3(IgG1)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0500-2bの重鎖の配列は配列番号17に示される。BB0500-2bの軽鎖の配列は配列番号23に示される。
【0067】
5.BB0500-6aはIgG1κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗EGFR)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号6)-CH2CH3(IgG1)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0500-6aの重鎖の配列は配列番号18に示される。BB0500-6aの軽鎖の配列は配列番号24に示される。
【0068】
6.BB0500-2fはIgG2κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗EGFR)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号9)-CH2CH3(IgG2)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0500-2fの重鎖の配列は配列番号19に示される。BB0500-2fの軽鎖の配列は配列番号25に示される。
【0069】
7.BB0500-2gはIgG2κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗EGFR)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号10)-CH2CH3(IgG2)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0500-2gの重鎖の配列は配列番号20に示される。BB0500-2gの軽鎖の配列は配列番号26に示される。
【0070】
8.BB0500-2nはIgG1κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗EGFR)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号11)-CH2CH3(IgG1)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0500-2nの重鎖の配列は配列番号21に示される。BB0500-2nの軽鎖の配列は配列番号25に示される。
【0071】
9.BB0802はIgG1κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗HER3)-CH1(S142C)-ヒンジ(配列番号12)-CH2CH3(IgG1)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BB0802の重鎖の配列は配列番号22に示される。BB0802の軽鎖の配列は配列番号27に示される。
【0072】
10.BR0301はIgG1κアイソタイプの形で製造され、その重鎖には、VH(抗HER2)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号28)-CH2CH3(IgG1)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BR0301の重鎖の配列は配列番号29に示される。BR0301の軽鎖の配列は配列番号31に示される。
【0073】
11.BR0302はIgG1κアイソタイプの形で製造され、その重鎖にはVH(抗HER2)-CH1(IgG2)-ヒンジ(配列番号28)-CH2CH3(IgG1)が含まれ、及びその軽鎖には、VL-CL(κ)が含まれる。BR0302の重鎖の配列は配列番号30に示される。BR0302の軽鎖の配列は配列番号32に示される。
【0074】
2.操作された抗体の発現と精製
操作された抗体の発現のために、コドン最適化及び遺伝子合成を行った。特定の完全長重鎖及び完全長軽鎖DNAをそれぞれ別々のpcDNA3プラスミドにクローニングした。ペアプラスミドを使用してHEK293細胞を一過性にトランスフェクションし、ワンステッププロテインA精製を行って検出に十分なタンパク質を製造した。このような形で製造された抗体は発現が良好で、収率が高く、ワンステッププロテインA精製プロセスで高純度の精製を行うことができる(
図3のa、b、c部分)。
【0075】
3.天然IgG1(κ)及びIgG2(κ)で製造された抗体薬物複合体のプロファイル
穏やかな還元条件下(トリス(2-クロロエチル)ホスフェート(tris(2-chloroethyl)phosphate、TCEP):mAb=1~3、中性pH、室温下<240分間)で、IgG抗体の鎖間ジスルフィド結合を部分的に還元し、薬物‐リンカーにコンジュゲートしてADCを形成することができる。精製抗体は、リンカーを介して細胞傷害性薬物にコンジュゲートした(例えば、MMAE、DM1、又はエリブリン(eribulin))。中性pHのリン酸緩衝液中の精製抗体にTCEPを加えて部分的に還元し、薬物複合体を生成した。薬物‐リンカー(MC-Val-Cit-PAB-MMAE又はMal-PEG2-Val-Cit-PAB-エリブリン)をDMAに加え、抗体と反応させて所望の薬物抗体比(drug-to-antibody ratio、DAR)を得た。抗体とADCの特性評価のために、疎水性相互作用クロマトグラフィー(Hydrophobic Interaction Chromatography、HIC)を使用してADCにおける薬物分布及び薬物と抗体のモル比を評価した。非還元型ADCにCE-SDSも実施し、遊離軽鎖(L)、遊離重鎖(H)、半抗体(HL)、インタクト抗体(LHHL)、及び一つ又は二つの軽鎖を欠く抗体(HHL又はHH)など、ADC製品中の非共有結合成分の割合を評価した。
【0076】
IgG1(κ)ADCのHICプロファイルは、反応期間終了時に残存する裸抗(DAR0)が非常に少なく、得られたADC生成物がDAR2-8種の混合物であることを示している(
図4のa部分)。非還元型ADC生成物のCE-SDSの結果は、高いパーセンテージの遊離軽鎖(L、18%)、及び一つ又は二つの軽鎖を欠く構造(20%+18%)が存在し、H-L鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基で発生するコンジュゲートが高いパーセンテージを占めることを示している(
図5のa部分)。
【0077】
逆に、同様の還元とコンジュゲート条件下では、IgG2(κ)は反応に対してより耐性がある。H-L又はH-H鎖間ジスルフィド結合の開放率は非常に低く、反応期間終了時にIgG2分子の大部分はDAR0のままである(
図4のb部分)。CE-SDSプロファイルは、IgG2(κ)ADC生成物中に高いパーセンテージのインタクト抗体(LHHL、89%)が存在し、遊離軽鎖(L、~1%、軽鎖薬物複合体を表す)のレベルが非常に低いことを示している(
図5のb部分)。これらの結果は、IgG2(κ)分子のジスルフィド結合がIgG1抗体のジスルフィド結合よりもはるかに安定であることを示唆している。
【0078】
4.薬物と操作された抗体とのコンジュゲート
HICプロファイルは、操作された抗体に基づくADC生成物(例えば、
図4のcとd部分のBB0500-2aと2b)がDAR0-10種の混合物で構成され、ここで、DAR2種が最も高いパーセンテージ(35~50%)を占め、次にDAR0(DAR0は、コンジュゲートプロセスでADCに変換されない抗体(又はその一部)であることに注意)、DAR4、及びDAR6種(10~25%の範囲)が続くことを示している。DAR8-10種は、混合物中で非常に小さなパーセンテージを占めている(<5%)(
図4のcとd部分)。CE-SDSの結果は、IgG1(κ)と比較して、操作された抗体の全体的な還元耐性、特に~2%しか占めない遊離軽鎖(結合軽鎖を表す)のH-L鎖間ジスルフィド結合を検証した(
図5のc部分)。したがって、得られたADC生成物は、主に重鎖のみを含む複合物からなる。
【0079】
5.部位選択的薬物コンジュゲート
本開示の特定の操作された抗体から製造されたADCは、主にDAR2 ADC種である(
図4のe部分及び
図4のf部分に示されるように、約60~70%であり、ここで、ADC中の抗体はそれぞれBB0500-2g及びBB0500-2nであり、
図4のg部分及び
図4のh部分に示されるように、約70~80%であり、ここで、ADC中の抗体はそれぞれBR0301及びBR0302である)。これらのクローンのヒンジ領域の配列は、HG3システイン間のH-H鎖間ジスルフィド結合を残りの鎖間ジスルフィド結合よりも還元しやすくし、HG3システインを好ましい又は主要な薬物コンジュゲート部位にすると考えられている。HG3システインを取り囲む異なるヒンジアミノ酸配列を含む抗体は、DAR2を主とするADC生成物を得るために、異なる還元及びコンジュゲート条件を必要とする。CE-SDSプロファイルは、これらのADC製品に非常に低いレベル(~1%)の遊離軽鎖(軽鎖薬物複合体を表す)が存在することを示している(
図5のd部分)。
【0080】
LC-MS及びLC-MS/MS分析により、非還元条件下でトリプシン消化で操作された抗体のジスルフィド結合パターンを評価した。全てのジスルフィド結合連結ペプチドは、それらの分子量及び配列によって同定された。LC-UV検出とLC-MS検出を組み合わせた場合、全シーケンスカバレッジは100%であった。Cys142を含む軽鎖と重鎖の間のジスルフィド結合、及び二つの重鎖の間の余分なジスルフィド結合(ヒンジ領域のCPPCP配列の上流の追加のCysに由来する)が検証された。他の14個のジスルフィド結合連結は、典型的なIgG1型ジスルフィド結合連結と一致している。
【0081】
コンジュゲート後、コンジュゲート部位は、ペプチドマッピングにおける後期溶出ピークの特徴によって決定された。ピークの分布は、観察されたコンジュゲートペプチドの質量とMS/MSスペクトルに基づいている。主要なコンジュゲート部位は、重鎖ヒンジ領域のCPPCP配列の上流にある追加のCys残基であると決定された。ヒンジ領域におけるCPPCP配列中のCys残基の低レベルのコンジュゲートも検出された。これは、ヒンジ領域における二つの重鎖間の鎖間ジスルフィド結合で予想される結合部位と一致している。
【0082】
6.タンパク質EGFR、HER2又はHER3に対する異なる操作された抗体の結合活性
ELISA法を使用して、操作された抗体と対照野生型(wt)抗体との間のEGFR、HER2又はHER3結合能力を検出・比較した。ヒトEGFR、HER2及びHER3タンパク質を96ウェルプレートにコーティングし、プレートを一晩インキュベートした。操作された抗体サンプル又は対応する対照抗体を希釈した。その後、希釈したサンプルをタンパク質でコーティングされたプレートに移し、室温でインキュベートした。検出試薬としてHRP標識ヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(Sigma)を用い、TMBを用いて比色反応を行い、450/650nmでマイクロプレートリーダー(Molecular Devices、SpectraMax 190)を用いて酵素標識プレート上の吸光度を読み取り、用量反応曲線形式の4つのパラメータロジスティックモデルを用いてデータ解析を行った。
【0083】
図6の結果は、対応する対照と比較して、異なるターゲットの操作された抗体が類似した結合活性を有することを示し、新規の操作された抗体が、標的タンパク質に対する操作された抗体の活性に影響しないことを示唆している。
【0084】
7.EGFR高/低発現細胞に対する操作された抗体から製造されたADCの細胞毒性
操作された抗体に由来するADCの細胞毒性を調べるために、標的発現がん細胞に対するインビトロ細胞毒性を比色ベースの細胞毒性アッセイで評価した。アッセイを行うために、標的細胞を細胞株ごとに最適化された細胞密度で96ウェル平底組織培養プレートに接種し、37℃、5%CO
2で一晩(16~20時間)インキュベートした。連続的に希釈したADCサンプルを細胞プレートに移し、最適な殺傷効果を達成するために、アッセイプレートを特定の期間(細胞株により、3~5日間とする)インキュベートした。データ解析は、用量反応曲線の4つのパラメータロジスティックモデルを用いて行った。
図7の結果は、BB0500-2f、2g又は2nの操作された抗体部分から製造されたエリブリン含有EGFR標的ADCが、EGFR高発現細胞(A431細胞、
図7のa部分)及びEGFR低発現細胞(NUGC3細胞、
図7のb部分)に対して有効な細胞傷害性を発揮することを示している。同様に、BB0301又はBB0302の抗体部分を含むMMAE含有HER2標的ADCの結果は、HER2高発現細胞(NCI-N87細胞、
図7のc部分)及びHER2低発現細胞(A431細胞、
図7のd部分)に対して有効な細胞傷害性を発揮することを示している。
【0085】
シーケンスリスト
配列番号1~13及び28は表1に提供される。
【0086】
配列番号14(BB0500-3重鎖):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNTNYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVTGAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKSCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号15(BB0500-5重鎖):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNTNYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVTGAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号16(BB0500-2a重鎖):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNTNYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVTGAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号17(BB0500-2b重鎖):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNTNYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVTGAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVEPKSDCKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号18(BB0500-6a重鎖):
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSDDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSAASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVEPKSDKCTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号19(BB0500-2f重鎖):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNANYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVTGAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVEPKSDKCTHTVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号20(BB0500-2g重鎖):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNTNYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVAGAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVEPPKSCDKTHTVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号21(BB0500-2n重鎖):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNANYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVTGAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVEPPKSDCKTHTVECPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号22(BB0802重鎖):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSAYGMGWVRQAPGKGLEWVSYISPSGGHTKYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVLETGLLVDAFDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPCSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPPPKSCDKTHTVECPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号23(軽鎖):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYFCQHFDHLPLAFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号24(軽鎖):
DILLTQSPVILSVSPGERVSFSCRASQSIGTNIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVESEDIADYYCQQNNNWPTTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号25(軽鎖):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYFCQHFDHLPLAFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号26(軽鎖):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNALNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYFCQHFDHLPLAFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号27(軽鎖):
QYELTQPPSVSVYPGQTASITCSGDQLGSKFVSWYQQRPGQSPVLVMYKDKRRPSEIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAIDEADYYCQAWDSSTYVFGTGTKVTVLRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号29(BR0301重鎖):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFTDYTMDWVRQAPGKGLEWVADVNPNSGGSIYNQRFKGRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARNLGPSFYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVEPPKSDCKTKTVECPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号30(BR0302重鎖):
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVEPPKSDCKTKTVECPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号31(BR0301軽鎖):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSIGVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYIYPYTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号32(BR0302軽鎖):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1】本出願で使用される抗体のアミノ酸ナンバリングシステムの模式図を示す。(a)ヒトIgG1(κ)のIMGTベースのアミノ酸ナンバリングシステムである。(b)突然変異体(IgG1ヒンジ領域の場合)のナンバリングシステムである。
【
図2】A部分は、本発明の実施形態による操作された抗体の模式図を示す。B部分は、本発明の実施形態によるIgG抗体におけるジスルフィド結合を示す。
【
図3】本発明の実施例の抗体の特徴を示す。(a)HEK293細胞で産生された抗体の純度と収量である。(b)還元(R)抗体及び非還元(NR)抗体のSDS-PAGE分析である。(c)精製抗体のSEC-HPLC分析である。
【
図4】天然ヒトIgG1(κ)、IgG2(κ)及び本発明の実施例の操作された抗体から製造したADCのHICプロファイルを示す。a:IgG1(κ)-MMAE、b:IgG2(κ)-MMAE、c:BB0500-2a-MMAE、d:BB0500-2b-MMAE、e:BB0500-2g-MMAE、f:BB0500-2n-MMAE、g:BR0301-MMAE及びh:BR0302-MMAE。
【
図5】本発明の特定の実施例のADCのCE-SDSプロファイルを示す。a:IgG1(κ)-MMAE、b:IgG2(κ)-MMAE、c:BB0500-2a-MMAE及びd:BB0500-2g-MMAE。
【
図6】タンパク質EGFR(a)、HER3(b)、及びHER2(c)に対する本発明の実施形態による異なる操作された抗体と対照(wt)抗体の結合曲線を示す。
【
図7】EGFR発現がん細胞(a:A431細胞、b:NUGC3細胞)に対する本発明の実施形態による操作されたADCの細胞傷害性曲線と、HER2発現がん細胞(c:NCI-N87(HER2高発現)、及びd:A431(HER2低発現))に対する本発明の実施形態による他の操作されたADCの細胞傷害性曲線とを示す。
【配列表】