(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】換気装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/24 20060101AFI20250130BHJP
B60H 1/26 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B60H1/24 621
B60H1/26 651A
(21)【出願番号】P 2024059606
(22)【出願日】2024-04-02
【審査請求日】2024-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2023064930
(32)【優先日】2023-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592159173
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ工機
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村越 雄介
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3112289(JP,U)
【文献】特開2001-105842(JP,A)
【文献】特開昭57-051510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/24
B60H 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部に係止される係止部と、この係止部の上方又は下方に開口する開口部を
それぞれ備える
複数の風路室と、を有する本体部と、
前記
各風路室に位置して前記本体部に配置されたファンと、を備え
、
前記風路室は、いずれかが吸気室であり、残りの他が排気室であって、互いに独立して前記本体部に形成され、
前記ファンは、前記吸気室に配置された吸気用の一のファンと、前記排気室に配置された排気用の他のファンと、を有する
ことを特徴とする換気装置
。
【請求項2】
前記本体部の上部に少なくとも一部が位置する把持部を備える
ことを特徴とする請求項
1記載の換気装置。
【請求項3】
前記ファンは、
前記開口部に対向する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の換気装置。
【請求項4】
前記開口部を覆うフィルタを備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の換気装置。
【請求項5】
別体の携帯型電源が接続される接続部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の換気装置。
【請求項6】
前記被取付部は、窓を上下方向に開閉する開閉部材である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の換気装置。
【請求項7】
車室内外の換気を行う車両用の換気装置である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンが配置される本体部を備える換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車内換気用の換気装置が知られている。この換気装置は、変形可能なアームと、ファンを内蔵してアームに取り付けられるケーシングと、このケーシングの車外側に配置される電源用のソーラーパネルと、を備える。そして、窓枠上部の窓ガラス受け溝に取り付けたアームを窓ガラスによって下方から挟み込むことで取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の換気装置では、窓枠の形状に応じたアームの嵌め込み作業が必要であるとともに、窓ガラスによってアームを下方から窓枠上部との間に挟み込むまでの間、軟質のアームによって全体を吊り下げている状態となることから、落下しないように保持しておく必要がある等、設置作業が煩雑である。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、容易に設置できる換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る換気装置は、被取付部に係止される係止部と、この係止部の上方又は下方に開口する開口部をそれぞれ備える複数の風路室と、を有する本体部と、前記各風路室に位置して前記本体部に配置されたファンと、を備え、前記風路室は、いずれかが吸気室であり、残りの他が排気室であって、互いに独立して前記本体部に形成され、前記ファンは、前記吸気室に配置された吸気用の一のファンと、前記排気室に配置された排気用の他のファンと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係る換気装置の使用状態を示し、(a)はその正面図、(b)はその背面図である。
【
図7】同上換気装置の使用状態の他の例を示す側面図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る換気装置の正面図である。
【
図9】第3の実施の形態に係る換気装置の
図10(a)のB-B相当位置の断面図である。
【
図10】同上換気装置の使用状態を示し、(a)はその正面図、(b)はその背面図である。
【
図11】同上換気装置の
図10(a)のC-C相当位置の断面図である。
【
図12】同上換気装置の他の使用状態の例を室内側から示す側面図である。
【
図13】第4の実施の形態に係る換気装置を示し、(a)はその斜視図、(b)は使用状態を示す側面図である。
【
図14】同上換気装置の使用状態を示し、(a)はその正面図、(b)はその背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1(a)、
図1(b)、
図2及び
図6において、1は換気装置である。換気装置1は、被取付部の上部、例えば窓2を上下方向に開閉する被取付部である開閉部材3の上部に取り付けられて設置されるもので、本実施の形態では、自動車等の車室内外の換気を行う車両用の換気装置1を例に挙げる。この例では、窓2はサイドウインドウであり、開閉部材3は窓ガラスである。
【0011】
換気装置1は、本体部5を備える。本体部5には、筐体(ケーシング)6の内部に風路室7が形成されているとともに、換気装置1を開閉部材3の上部に係止するための係止部(引っ掛け部)8が形成されている。なお、以下、前後方向、左右方向、及び、上下方向については、換気装置1を開閉部材3の上部に係止部8により室内側から係止した設置状態を基準とし、車内側又は使用者側を前側、車外側を後側とする。図中においては、前側を矢印FR、後側を矢印RR、左側を矢印L、右側を矢印R、上側を矢印U、下側を矢印Dで示す。
【0012】
筐体6は、上面10、下面11、前面12、後面13、及び、両側面14,14を有し風路室7を区画する中空な箱状となっている。本実施の形態では、筐体6の内部には、
図4に示す仕切部(仕切板)15が形成され、独立した風路室7が複数区画されている。図示される例では、仕切部15が筐体6内部の左右方向の中央部に位置して、風路室7が筐体6の内部に左右一対設定されている。好ましくは、筐体6は、金属製つまり板金により形成され、例えばヘアライン加工が施されたステンレス(SUS304)製等とすることで、強度(耐久性)と見栄え(高級感)とを両立している。
【0013】
図1乃至
図4に示すように、上面10及び下面11は、例えば前後方向及び左右方向に拡がる水平面状であり、互いに上下に離れた位置にある。本実施の形態では、上面10と下面11とは等しい又は略等しい幅を有し、上面10よりも下面11が前後に短く形成されている。上面10は、換気装置1の設置状態で上部の窓枠17に対し下方から圧接される圧接部である。上面10の上部には、窓枠17との上下の隙間を閉塞するための隙間埋め用の閉塞部材が配置されていてもよい。閉塞部材は、弾性、可撓性等を有する部材であり、好適にはウレタン部材である。
【0014】
本実施の形態において、前面12は、上面10の下部に連なる前面上部12aと、下面11の上部に連なる前面下部12bと、を一体的に有する。前面上部12aは、上面10から前側下方へと傾斜して形成されている。前面上部12aの下端部に、前面下部12bの上端部が、湾曲状に連なっている。前面下部12bは、前面上部12aの下端部から後側下方へと傾斜して形成されている。つまり、前面下部12bは、本体部5の下方に面を向け、開閉部材3に対して傾斜している。これら前面上部12a及び前面下部12bにより、前面12が前側に膨出して風路室7を前後に拡げる形状となっている。
【0015】
前面下部12bは、前面上部12aよりも上下に長く、つまり面積が大きく形成されている。前面下部12bには、風路室7に気流を通過させるファン20が取り付けられている。つまり、前面下部12bはファン20の取付面である。前面下部12bに取り付けられたファン20は、下方に傾斜した状態で本体部5に配置されている。ファン20は、前面下部12bに位置する取付開口部21に嵌め込まれて、取付開口部21を覆っている。取付開口部21は、風路室7の一方の吸排気口であり、風路室7に応じて形成されている。本実施の形態において、取付開口部21は、左右に一対形成されている。つまり、風路室7毎に一つの取付開口部21が配置されている。図示される例では、取付開口部21は、別体の取付板22の板厚を貫通して形成され、この取付板22が筐体6前部の開口を覆って取り付けられていることにより前面下部12bが構成されて、ファン20が筐体6前部に取り付けられている。
【0016】
ファン20は、直流駆動のものである。例えば、ファン20は、直流5V駆動が可能であり、低電力で駆動するものが好適に用いられる。ファン20は、風路室7に応じて配置され、風路室7の上流端又は下流端に位置している。本実施の形態において、ファン20は、複数、例えば一対配置されている。つまり、風路室7毎に一つのファン20が配置されている。図示される例では、ファン20は、左右に並んで互いに離れて配置されている。これに限らず、ファン20は、上下に並んで配置されていてもよい。
【0017】
好ましくは、ファン20はそれぞれ独立して駆動される。つまり、一のファン20と他のファン20とは、停止と駆動とが別個に設定可能となっている。本実施の形態では、ファン20は、それぞれスイッチ23により停止(OFF)、強風駆動(HIGH)、弱風駆動(LOW)の三モードの切り替えが可能となっている。
【0018】
一対のファン20は、双方が吸気用又は排気用として用いられてもよいし、正逆転可能なものとして、吸気、排気を回転方向に応じてスイッチ23等により切り替えられるようにしてもよいが、好ましくは一方が吸気ファン、他方が排気ファンとして用いられる。図示される例では、左側のファン20が吸気ファン、左側の風路室7が吸気室、右側のファン20が排気ファン、右側の風路室7が排気室となっているが、いずれのファン20を吸気ファン、排気ファンとするかは任意である。
【0019】
本実施の形態において、スイッチ23は、ファン20,20間(取付開口部21,21間)に配置されている。スイッチ23は、ファン20毎に設定されている。スイッチ23としては、レバー式のトグルスイッチが好適に用いられる。図示される例では、スイッチ23は、パネル24に左右に並んで配置され、スイッチ23及びファン20の機能を表示するパネル24とともに取付板22に保持されて、ファン20とともに取付板22を介して前面下部12bに取り付けられている。
【0020】
スイッチ23及びファン20は、駆動回路に電気的に接続されている。駆動回路は、例えば取付板22の後部に取り付けられた回路基板上に構成され、筐体6の内部に位置する。駆動回路を備える回路基板は、例えば排気用の風路室7に配置又は近接させることで、風路室7を介して排出される排気によって冷却可能としてもよい。
【0021】
好ましくは、駆動回路への電源は、外部電源から供給される。本実施の形態では、外部電源は、携帯型電源、好ましくはモバイルバッテリが用いられ、接続部25に対して着脱可能となっている。接続部25は、例えばUSBジャックが好適に用いられる。接続部25は、筐体6から導出された配線26の先端部に電気的に接続されている。配線26は、基端部が駆動回路と電気的に接続され、例えば下面11の左右方向の中央部から本体部5(筐体6)の外部に導出されている。
【0022】
本実施の形態において、後面13は、上面10の下部に連なる後面上部13aと、後面上部13aの下部に連なる後面中間部13bと、後面中間部13bの下部から下面11に亘り連なる後面下部13cと、を一体的に有する。後面上部13aは、上下方向及び左右方向に拡がる面状である。また、後面中間部13bは、後面上部13aから前方に延びており、前後方向及び左右方向に拡がる水平面状である。さらに、後面下部13cは、後面中間部13bの前端部から下方に延び、上下方向及び左右方向に拡がる面状である。これら後面上部13a、後面中間部13b、及び、後面下部13cにより、後面13が側方から見てクランク状に屈曲されている。
【0023】
後面上部13aには、風路室7の他方の吸排気口である開口部28が形成されている。開口部28は、風路室7に応じて形成されている。本実施の形態では、開口部28は、本体部5の最上部に位置しており、ファン20よりも上方にある。本実施の形態では、開口部28は、風路室7毎に二つずつ、左右に並んで配置されている。図示される例では、開口部28は、後面上部13aに四つ、左右に等間隔又は略等間隔に並んで配置される。
【0024】
開口部28は、フィルタ29により覆われている。フィルタ29は、風路室7への虫等の侵入を防ぐ防虫フィルタであり、例えば金網によって形成されている。本実施の形態では、フィルタ29は、
図2に示すように、別体の板部材31に設けられている。板部材31が後面上部13aの後部に重ねられて後面上部13aに固定されることで、フィルタ29により開口部28が覆われている。
【0025】
板部材31は、下端部が後面中間部13bよりも下方に延びることで、後面下部13cと後面中間部13bとによりフック形状となる係止部8を構成している。すなわち、係止部8の突出方向とは反対方向、本実施の形態では係止部8の上方に開口部28及びフィルタ29が位置する。図示される例では、係止部8には、滑り止め用及び開閉部材3の傷付け防止用の軟質部材又は弾性部材であるグリップ部32が板部材31の下端部に取り付けられている。
【0026】
後面中間部13bは、上面10の下方に上面10と平行又は略平行に位置し、筐体6の上部後側に後方へと延びて風路室7の上流端又は下流端を構成するダクト部33を開口部28の前方に形成している。後面中間部13b又はダクト部33の下部に、開閉部材3の上端部が当接する。つまり、後面中間部13b又はダクト部33は、換気装置1を開閉部材3の上端部に支持するための支持部である。ダクト部33は、窓2における開閉部材3の上部と窓枠17の下部とに上下方向に挟み込まれて室内から室外へと延びる部分である。ダクト部33の上下方向の高さは、防犯の観点から開閉部材3と窓枠17との隙間を介して室内へ容易にアクセスできないように小さく設定され、例えば4cm程度である。なお、例えば開閉部材3が車両用の窓ガラスである場合、パワーウインドウのオート機能を用いて開閉部材3を換気装置1とともに引き上げた際に、ダクト部33の挟み込みによってパワーウインドウの挟み込み防止用の安全装置が働かないようにすることが望ましい。
【0027】
後面下部13cは、係止部8に対して前方に離れており、この係止部8との間に、開閉部材3の上端部が位置する空間部を形成している。この空間部の前後幅を設定する後面中間部13bの前後方向長さは、開閉部材3の厚みに対して大きく設定されているが、係止部8による係止状態でのバランスを保持できるように、開閉部材3の厚みに対して過剰に大きくならないようにすることが好ましい。
【0028】
側面14は、例えば前後方向及び上下方向に拡がる鉛直面状であり、互いに左右に離れた位置にある。側面14は、上面10、下面11、前面12、及び、後面13の側部を閉塞している。本実施の形態では、各側面14には、取り付け時や取り外し時等に換気装置1を把持するための取手35が取り付けられている。
【0029】
図1(a)及び
図5に示すように、仕切部15は、側面14と同形状又は略同形状に形成されており、複数の風路室7を取付開口部21から開口部28に亘り仕切ってほぼ独立するように仕切っている。本実施の形態において、仕切部15は、板状に形成された仕切り板であり、筐体6の後面13の後面後部13cの前部に溶接された取付ブラケット37に左右方向に重ねられて取り付けられている。
【0030】
次に、第1の実施の形態の作用を説明する。
【0031】
換気装置1を設置する際には、まず、開閉部材3を引き下ろして窓2の上部を僅かに開き、取手35,35により把持した換気装置1を、係止部8をその開いた隙間を介して室内側から室外側へと出しつつ開閉部材3の上部に引っ掛けて、
図1(a)、
図1(b)、及び、
図2に示すように、開閉部材3の上部に換気装置1を吊り下げる。
【0032】
このように、第1の実施の形態によれば、基本的に係止部8を被取付部(開閉部材3)の上部に引っ掛けて係止保持するだけで、換気装置1を容易に設置できる。
【0033】
しかも、サイズが合えば、様々な窓2や車種に対しても換気装置1を使用可能となる。
【0034】
また、開閉部材3を換気装置1とともに引き上げ、換気装置1のダクト部33の上部つまり筐体6の上面10を窓枠17の下部に圧接すれば、開閉部材3の上部と窓枠17の下部との隙間は4cm程度であるため、この隙間から室内へのアクセスは基本的に困難である。しかも、換気装置1の両側面14の外方における開閉部材3の上部と窓枠17の下部との隙間には、必要に応じて、閉塞部材を挟み込んで閉塞することで、隙間全体をほぼ完全に閉塞することが可能になる。したがって、防犯性に優れた状態で使用可能となる。
【0035】
また、この設置状態で、換気装置1は、ダクト部33を除く全体が室内に位置し、重心が室内側にある。したがって、換気装置1の設置作業時に誤って開閉部材3を全開してしまった場合でも、換気装置1が室外に落下することがない。
【0036】
そして、設置した換気装置1に対し、携帯型電源を接続部25に接続する。すなわち、接続部25を介して、携帯型電源を容易に接続できる。このとき、携帯型電源として、モバイルバッテリを用いることにより、車両に用いる場合には、車両のバッテリを使用する必要がなく、車両のエンジンを停止した状態でも使用可能となるとともに、ソーラー電源等を用いる場合と異なり、昼夜を問わず使用することが可能になる。
【0037】
使用者は、各スイッチ23を操作し、各ファン20を独立して駆動させる。そのため、複数のファン20を利用して、吸気のみ、排気のみとする場合には、大きな風量を得ることができる。また、本実施の形態では、ファン20が配置されている複数の風路室7が互いに独立しているため、一方のファン20を吸気用、他方のファン20を排気用として駆動することで、同時に吸排気でき、排気用又は吸気用として窓2以外の窓を開放することなく効率よく換気が可能になる。さらに、上部の開口部28から吸排気する構成であるため、ファン20を左右に配置することで、風路室7を本体部5の内部に容易に独立させて形成できる。
【0038】
また、風路室7は、本体部5筐体6の前面12の膨出形状により空間が大きいため、風量をより大きく取ることができる。
【0039】
各スイッチ23は、ファン20,20間にて本体部5に配置されていることで、ファン20,20間のスペースを有効活用できるとともに、ファン20とスイッチ23とが隣接して位置するため、スイッチ23を介してファン20を直感的に操作でき、操作性が良好である。
【0040】
しかも、各スイッチ23は、前面下部12bに取り付けられて下方に傾斜しているため、室内下方からのアクセスが容易である。
【0041】
そして、ファン20が下方に傾斜した状態で本体部5に配置され、設置状態で開閉部材3に対して傾斜しているため、ファン20の吸気側又は排気側が開閉部材3の上方にある開口部28に直接的に向けられているので、吸排気が風路室7を大きく屈曲することなく直線状に通り、吸排気の効率がよいとともに、ファン20からの排気を室内の使用者に向けることができる。
【0042】
このとき、吸排気用の開口部28をフィルタ29で覆っているので、室外の虫等が開口部28から風路室7に入り込みにくい。
【0043】
しかも、ファン20は、低電力で駆動可能であるため、モバイルバッテリ等の携帯型電源であっても、長時間の連続駆動が可能である。また、ファン20を低電力で駆動することにより、静音性に優れた換気装置1を構成できる。
【0044】
さらに、車種等によって窓枠17の室外側に雨除けが設けられていない場合も想定されるので、開口部28の上方つまりダクト部33の上部である上面10の後端部等に、雨除けのカバーを取り付け可能としておくことが好ましい。この場合には、開口部28からの雨の侵入をより確実に防止できる。そこで、換気装置1の使用可能な条件が天候に左右されにくい。
【0045】
このように、上記の換気装置1は、車両用の車室内外の換気を行う換気装置1として、例えば車中泊時の車内換気、トラックや営業車での待機時における車内換気、キッチンカー等での補助的な換気、及び、エンジンを停止した車内における新型コロナウィルス等の疾病に対する感染防止策等に、好適に用いることができる。
【0046】
なお、上記第1の実施の形態において、例えば花粉症等の疾病対策のフィルタを適用してもよい。例えば、このフィルタは、ダクト部33に配置することで、ダクト部33内の風路室7のスペースを有効活用できる。
【0047】
また、本体部5の筐体6には、
図7に例を示すように、所定のミリタリレールインタフェース等のアタッチメント取付部40を装備可能としてもよい。例えば、筐体6の前面12の前面下部12bにおいて、ファン20間のスイッチ23の上方及び/又は下方のスペースをアタッチメント取付部40の設置スペースとして利用してもよい。アタッチメント取付部を介して、室内灯等の種々のアタッチメント41を必要に応じて着脱できることで、利便性がより向上する。同様に、使用者がカスタイマイズできる予備のねじ穴を筐体6の前面12等に設けておけば、多種のアタッチメント41を取り付けでき、より利便性が向上する。しかも、前面下部12bは下方に傾斜しているので、この前面下部12bにアタッチメント41を設置することで、アタッチメント41へのアクセスが容易である。
【0048】
さらに、換気装置1は、取手35に代えて、
図8に示す第2の実施の形態のように、把持部45を備えていてもよい。把持部45は、本体部5の上部に少なくとも一部が位置する。本実施の形態において、把持部45は、本体部5の筐体6の両側面14,14に亘り取り付けられたバンドであり、両端部が両側面14,14に形成された取付部46,46に保持され、本体部5の両側部から上部に亘る範囲にある。把持部45及び取付部46は、筐体6の前部寄りに位置し、つまりダクト部33に対して前方に離れた位置にあり、筐体6の上面10に対する窓枠17の下部の圧接を妨げない位置となっている。把持部45は、例えば布製のもの等が好適に用いられるが、これに限らず、合成樹脂や皮革等、換気装置1を把持するための強度を備える任意の素材により形成されていてよい。このように、本体部5の上部に把持部45の少なくとも一部を位置させることにより、把持部45を利用して換気装置1を片手で容易に持ち運んだり被取付部に取り付けたりすることが可能となり、作業性及び利便性が向上する。
【0049】
なお、把持部45については、少なくとも一部が本体部5の筐体6の上部にあって換気装置1を片手で持てるようにすることが重要であり、形態としてはバンドに限らず、例えば取手35と同様の持ち手であってもよい。
【0050】
次に、第3の実施の形態について、
図9ないし
図12を参照して説明する。なお、各実施の形態と同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施の形態の換気装置1は、上記各実施の形態の換気装置1に対して小型、薄型の形状となっているものである。
【0052】
換気装置1は、筐体6の前面12の前面上部12aが上下方向及び左右方向に延びて後面13に対して平行又は略平行となっており、前面上部12aの下端部から後面13の上下方向の中間部付近の前部に向かって前面下部12bが後側下方へと傾斜している。そのため、筐体6の前面12には、基本的に前方に向かって突出する部分がなく、筐体6前部がフラット形状となっている。
【0053】
そして、前面上部12aにファン20が取り付けられている。つまり、本実施の形態においては、前面上部12aがファン20の取付面である。前面上部12aに取り付けられたファン20は、上下に実質的に傾斜することなく前方に向いた状態で本体部5に配置されている。ファン20は、前面上部12aに位置する取付開口部21に嵌め込まれて、取付開口部21を覆っている。本実施の形態において、取付開口部21は、左右に対をなして形成され、図示される例では二対形成されている。
【0054】
仕切部15により、少なくとも吸気側の風路室7と排気側の風路室7とが区画されているが、本実施の形態では、風路室7が吸気側に二つ、排気側に二つ、それぞれ区画され、風路室7毎にファン20が一つずつ配置されている。本実施の形態では、吸気用のファン20と排気用のファン20とが二つずつ配置されている。例えば、左側の二つが吸気用のファン20であり、右側の二つが排気用のファン20であるが、これら四つのファン20のうち、いずれの二つのファン20を吸気ファン、残りの二つのファン20を排気ファンとするかは、任意に決定してよい。また、吸気用の風路室7と排気用の風路室7とが区画されていれば、吸気用の二つの風路室7,7間、及び、排気用の二つの風路室7,7間の仕切り部15については、必須のものではない。
【0055】
ファン20は、各実施の形態と比較して小型のものが採用されている。ファン20は、例えば直流5V駆動が可能であり、高出力のものが好適に用いられる。
【0056】
図9及び
図11に示すように、各風路室7は、取付開口部21から開口部28に至るまで直線状に形成されている。本実施の形態では、各風路室7は、筐体6の厚み方向、すなわち前後方向に沿って直線状に形成され、基本的に上下方向及び左右方向に傾斜していない。したがって、取付開口部21すなわちファン20と開口部28とは最短距離で結ばれる位置関係にあり、ファン20がそれぞれ開口部28と前後方向に対向している。開口部28の前方への投影範囲内にファン20の少なくとも回転中心部が位置する。
【0057】
本実施の形態において、これらファン20は、スイッチ23により、停止(OFF)、四つのファン20を同時に駆動する強風駆動(QUAD)、二つのファン20を同時に駆動する弱風駆動(TWIN)の三モードの切り替えが可能となっている。すなわち、本実施の形態では、吸気用のファン20と排気用のファン20とを一つのスイッチ23で同時に操作できるようになっている。弱風駆動モードの場合、例えばファン20のうち、吸気側のいずれか一つのファン20、例えば一番左側のファン20と、排気側のいずれか一つのファン20、例えば一番右側のファン20と、が駆動される。
【0058】
スイッチ23は、前面下部12bに配置されて下方に向かって傾斜している。前面下部12bの傾斜により、スイッチ23や回路基板が配置される空間部が風路室7の下方に区画されている。
図10(a)に示すように、前面下部12bの下部に連なる下面11から、接続部25が導出されている。
【0059】
さらに、本実施の形態の換気装置1は、ファン20の下方にポケット部48を有する。ポケット部48は、換気装置1の駆動源となる外部電源やその他の小物類等の物品を収容可能に形成されている。
【0060】
ポケット部48は、任意に構成されていてよいが、例えば下面11よりも下方に延出する、
図9及び
図10(a)に示すように、後面13の下部及び両側面14,14の下部と、それらの間を左右に連ねる支持面49と、支持面49から立ち上がる保持面50と、からなり、スイッチ23の下方の位置にて上方に開口した断面コ字状に形成され、左右方向に延びている。
【0061】
保持面50は、支持面49の前端部から上方に立ち上がっている。保持面50は、前面12の前面上部12aと面一又は略面一であり、前面12に対して前方に突出しない位置にある。保持面50の上端部は、下面11に対して下方に離れて位置する。保持面50には、ポケット部48から物品を取り出しやすくするための切欠部51が形成されている。切欠部51は、例えば保持面50の上端部において、左右方向の中央部の位置に形成されている。
【0062】
そして、換気装置1を設置する際には、まず、開閉部材3を引き下ろして窓2の上部を僅かに開き、把持部45により把持した換気装置1を、係止部8をその開いた隙間を介して室内側から室外側へと出しつつ開閉部材3の上部に引っ掛けて、
図9、
図10(a)、及び、
図10(b)に示すように、開閉部材3の上部に換気装置1を吊り下げる。
【0063】
このように、本実施の形態によれば、基本的に係止部8を被取付部(開閉部材3)の上部に引っ掛けて係止保持するだけで、換気装置1を容易に設置できる等、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0064】
また、本体部5の筐体6を薄型とし、開閉部材3とは反対側の前面12の前面上部12aが開閉部材3と平行又は略平行な状態となるようにしたので、換気装置1が室内にスペースを取りにくく、例えば開閉部材3よりも前方にあるスライドタイプのドアを後方にスライドさせて開いたときに、そのスライドドアに対して筐体6の前部が干渉しにくくなる。
【0065】
そして、設置した換気装置1に対し、携帯型電源を接続部25に接続し、スイッチ23を操作し、ファン20を駆動させる。ファン20の数を吸気側と排気側とで二つずつとしたことで、風量をより多く確保できる。また、風路室7を直線状とし、ファン20を開口部28に直接対向する位置としたため、さらに風量を確保できるとともに、吸排気の効率をより向上できる。
【0066】
スイッチ23については、前面下部12bの傾斜を利用することにより、配置スペースを取ることができるとともに、前面下部12bに取り付けられて下方に傾斜しているため、室内下方からのアクセスが容易である。
【0067】
また、ファン20の下方のスペースを利用してポケット部48を設けたことにより、例えば外部電源等をポケット部48に収納保持でき、外部電源等まで含めて換気装置1をコンパクトにまとめて使用できる。
【0068】
そして、基本的には、換気装置1と窓枠17との隙間は、室内への虫の侵入等を防ぐために閉塞部材により閉塞されるが、
図12に示すように、車両用のウインドウネット等の、通気性を有する被覆部材54を用いて換気装置1とともに窓枠17を覆って使用することにより、吸排気を妨げることなく、換気装置1と窓枠17との隙間を閉塞するための閉塞部材を廃することができる。そのため、換気装置1の本体部5の筐体6の上面10に対して形状が合わない窓枠17、例えば車両のフロントドアの窓枠等のような、閉塞部材による隙間の閉塞が困難な隙間が生じる被取付部に対しても換気装置1を適用でき、利便性が向上する。
【0069】
次に、第4の実施の形態について、
図13及び
図14を参照して説明する。なお、各実施の形態と同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
本実施の形態の換気装置1は、水平方向にスライドされるスライド部材をガイドするガイド部を被取付部56とするものである。この換気装置1が自動車等に適用される場合、被取付部56としては、ワゴン車やバン等に採用される、窓2を水平方向に開閉する開閉部材(スライド部材)3である窓ガラスをガイドする上下のレール部を例に挙げる。
【0071】
被取付部56に係止される係止部8は、筐体6の上下にそれぞれ突設されている。これら係止部8のうち、少なくともいずれかは係止方向に可動的となっている。本実施の形態では、本体部5の筐体6の上部に位置する係止部8が筐体6と別体に形成され、上下方向に可動的である。上部の係止部8は、筐体6の上面10よりも上方に突出し、左右方向に延びて形成されている。上部の係止部8は、ガイド部60を介して筐体6の上部に上下方向に移動可能にガイドされている。好ましくは、ガイド部60は、上部の係止部8に連結されて、ガイド部60と一体的に筐体6に対して移動可能となっているとともに、下端部が筐体6の内部に挿入され、抜け止め部61により筐体6に対し抜け止めされている。
【0072】
また、下部の係止部8は、筐体6の後面13の下部がポケット部48の支持面49よりも下方に延出することで筐体6と一体的に形成されており、左右方向に延びている。
【0073】
移動可能な係止部8は、係止方向に突出した位置を保持できるようにすることが好ましい。本実施の形態において、例えば、上部の係止部8は、ばね等の保持手段である付勢手段63により、係止方向である上方へと付勢されている。これに限らず、移動可能な係止部8は、ねじ等の保持手段である固定部材を介して本体部5の筐体6に対して上下方向の位置が固定されることで係止方向に突出した位置を保持する構成等でもよい。
【0074】
また、本実施の形態の筐体6は、例えば縦長に形成され、ファン20が前面12に上下方向に並んで配置されている。本実施の形態では、風路室7が吸気側に二つ、排気側に二つ、それぞれ区画され、風路室7毎にファン20が一つずつ配置されている。つまり、吸気用のファン20と排気用のファン20とが二つずつ配置されている。例えば、上側の二つが排気用のファン20であり、下側の二つが吸気用のファン20であるが、これら四つのファン20のうち、いずれの二つのファン20を吸気ファン、残りの二つのファン20を排気ファンとするかは、任意に決定してよい。また、吸気用の風路室7と排気用の風路室7とが区画されていれば、吸気用の二つの風路室7,7間、及び、排気用の二つの風路室7,7間は、仕切られていなくてもよい。各風路室7は、第3の実施の形態と同様に、取付開口部21から開口部28に至るまで直線状に形成されている。
【0075】
本実施の形態において、これらファン20は、スイッチ23により、例えば第3の実施の形態と同様に駆動される。スイッチ23は、上側のファン20と下側のファン20との間にて、本体部5の筐体6の前面12に配置されている。
【0076】
また、開口部28は、上下方向において、上下の係止部8,8の間に位置する。すなわち、開口部28は、係止部8,8から見て、係止方向と反対側に位置する。開口部28は、フード部(雨除け)64により上部及び両側部が覆われ、フード部64の傾斜に沿って、吸気が上方に向かい、排気が下方に向かうように構成されている。
【0077】
そして、換気装置1を設置する際には、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、開閉部材3をスライドさせて窓2の側部を僅かに開き、露出した下部の被取付部56に対して下部の係止部8を挿入しつつ、本体部5を窓枠17へと押し込む。すると、上部の係止部8が窓枠17の形状に応じて下方に押されて付勢手段63が圧縮され、上部の係止部8が上部の被取付部56に達すると、その位置で付勢手段63が復帰変形することにより、図示されるように、上部の係止部8が上部の被取付部56に係止される。そのため、付勢手段63の付勢力によって上部の係止部8が上方に突っ張ることで、上下の係止部8により換気装置1が窓枠17に保持される。開いた開閉部材3については、好ましくは筐体6の一方の側面14に密着させる。
【0078】
このように、本実施の形態によれば、基本的に係止部8を被取付部56に係止するように押し込むだけで、換気装置1を容易に設置できる等、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
本実施の形態の換気装置1は、設置状態で、窓2から後面13の略全体が室外側に露出することとなる。そのため、開口部28の上部及び両側部をフード部64によって覆っていることにより、室外側の雨除けの有無に拘らず雨水等が開口部28から入り込むことを抑制できる。
【0080】
そして、駆動されたファン20からの排気は、開口部28からフード部64に沿って下方に向かって排出される。このとき、例えば上側のファン20を排気用とすることで、室内の上部にある暖かい空気を室外へと効率よく排出することが可能になる。
【0081】
なお、第4の実施の形態において、第1の実施の形態の取手35や第2及び第3の実施の形態の把持部45を適用してもよい。
【0082】
また、各実施の形態において、換気装置1を取り付ける被取付部は、窓2の開閉部材3に限らず、複数の部屋の仕切り等、任意の被取付部としてよい。
【0083】
さらに、ファン20は、例えば直流12V駆動のもの等、より駆動電圧(定格電圧)が高いものを用いてもよい。その場合、外部電源としては、例えば車両やアウトドア用のポータブル電源等に搭載されるシガーソケットを利用し、換気装置1から導出した接続部25を介して外部電源に対して着脱可能としてよい。駆動電圧が高いファン20を用いることで、動作時にはファン20の駆動音(送気音)が生じるので、そのファン20の駆動音を介して、換気装置1が動作しているか否かを使用者が直感的に把握しやすくなる。
【0084】
また、例えば可変抵抗器等の供給電力調整手段を用い、ファン20の回転数を使用者が任意に可変制御できるようにしてもよい。供給電力調整手段は、スイッチ23の近傍、例えばスイッチ23の下方や側方等に配置することで、ファン20の動作のオンオフ及び回転数の強弱を効率よく操作できる。
【符号の説明】
【0085】
1 換気装置
2 窓
3 被取付部である開閉部材
5 本体部
7 風路室
8 係止部
20 ファン
25 接続部
28 開口部
29 フィルタ
45 把持部
56 被取付部