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特許7627559ハブベアリングの組立方法および組立装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ハブベアリングの組立方法および組立装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 43/04 20060101AFI20250130BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F16C43/04
F16C19/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020158599
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052298
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 龍斗
(72)【発明者】
【氏名】澤田 知明
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-065049(JP,A)
【文献】特許第4513295(JP,B2)
【文献】特開2008-223976(JP,A)
【文献】特開2002-283805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/38
F16C 43/04-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に第1外側軌道面および第2外側軌道面が形成された外輪と、
外周面に前記第2外側軌道面に対向する第2内側軌道面が形成された内輪と、
外周面に前記第1外側軌道面に対向する第1内側軌道面が形成された筒部、および前記第1内側軌道面の軸方向一方側に設けられたフランジを一体に有するハブ輪と、
前記第1外側軌道面と前記第1内側軌道面の間に介在する複数の円すいころ、および該複数の円すいころを周方向所定間隔で保持する保持器からなるローラカセットと、
前記外輪の軸方向一方側の端部開口を密封するシール部材と、を備えたハブベアリングの組立方法であって、
前記外輪、前記ハブ輪および前記ローラカセットが組み合わされた第1アセンブリを得る第1工程と、前記第1アセンブリおよび前記シール部材が組み合わされた第2アセンブリを得る第2工程と、を含み、該第2工程では、
前記ハブ輪のフランジ下方に前記外輪が配置された縦姿勢の前記第1アセンブリのうち、前記外輪および前記ローラカセットを第1支持具により下方側から支持すると共に、前記ハブ輪の筒部を前記第1支持具との分離が規制された状態で前記第1支持具に対して相対的に昇降可能な第2支持具により下方側から支持し、
次いで、縦姿勢の前記第1アセンブリから前記ハブ輪を分離させるのに追従して前記第2支持具を前記第1支持具に対して相対的に上昇移動させることにより、前記第2支持具に設けた円筒状のころ支持面を前記ローラカセットの径方向内側に導入し、
その後、前記外輪に前記シール部材を装着してから、前記外輪の内周に前記ハブ輪の筒部を再挿入するのに追従して前記第2支持具を前記第1支持具に対して相対的に下降移動させることにより、前記ころ支持面を前記ローラカセットの下側に排出しながら、前記ローラカセットの径方向内側に前記第1内側軌道面を導入することを特徴とするハブベアリングの組立方法。
【請求項2】
前記第1支持具と前記第2支持具の間に介在させた弾性部材の伸縮変形により、前記第2支持具が前記第1支持具に対して相対的に昇降移動する請求項1に記載のハブベアリングの組立方法。
【請求項3】
前記第1支持具による前記ローラカセットの下方側からの支持を、前記複数の円すいころを支持せずに、前記保持器を支持することにより行う請求項1に記載のハブベアリングの組立方法。
【請求項4】
内周面に第1外側軌道面および第2外側軌道面が形成された外輪と、
外周面に前記第2外側軌道面に対向する第2内側軌道面が形成された内輪と、
外周面に前記第1外側軌道面に対向する第1内側軌道面が形成された筒部、および前記第1内側軌道面の軸方向一方側に設けられたフランジを一体に有するハブ輪と、
前記第1外側軌道面と前記第1内側軌道面の間に介在する複数の円すいころ、および該複数の円すいころを周方向所定間隔で保持する保持器からなるローラカセットと、
前記外輪の軸方向一方側の端部開口を密封するシール部材と、を備えたハブベアリングの組立装置であって、
前記ハブ輪のフランジ下方に前記外輪を配置した縦姿勢の状態で前記外輪、前記ハブ輪および前記ローラカセットが組み合わされた第1アセンブリのうち、前記外輪および前記ローラカセットを下方側から支持する第1支持具と、
前記第1支持具との分離が規制された状態で前記第1支持具に対して相対的に昇降可能に設けられ、縦姿勢の前記第1アセンブリのうち前記ハブ輪の筒部を下方側から支持する第2支持具と、を備え、
縦姿勢の前記第1アセンブリから前記ハブ輪が分離されるのに追従して前記第2支持具が前記第1支持具に対して相対的に上昇移動することにより、前記第2支持具の外周面に設けられたころ支持面が前記ローラカセットの径方向内側に配置された後、前記シール部材を装着した前記外輪の内周に前記ハブ輪の筒部が再挿入されるのに追従して前記第2支持具が前記第1支持具に対して相対的に下降移動することにより、前記ころ支持面を前記ローラカセットの下側に排出しながら、前記ローラカセットの径方向内側に前記ハブ輪の前記第1内側軌道面を導入することを特徴とするハブベアリングの組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において、車輪を車体に対して回転自在に支持するハブベアリングの組立方法および組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハブベアリングには、複列の転がり軸受を組み合わせて使用する第1世代、転がり軸受の外輪に車体取付フランジを一体に設けた第2世代、車輪取付フランジを有するハブ輪の外周面に内側軌道面(二つの内側軌道面のうちの一方であって、車輪取付フランジ側の内側軌道面)を形成した第3世代などがある。ハブベアリングの軸受部には、負荷容量が大きく、かつラジアル荷重およびアキシャル荷重の双方を受けることができる軸受、例えば複列玉軸受や複列円すいころ軸受を採用するのが一般的である。
【0003】
例えば、特開2000-65049号公報(特許文献1)の図1には、軸受部に複列円すいころ軸受を採用した第3世代のハブベアリングが記載されている。すなわち、このハブベアリングは、筒部およびフランジ(車輪取付フランジ)を一体に有するハブ輪と、ハブ輪の筒部の外周面に装着された内輪と、車体取付フランジを一体に有する外輪とを備える。外輪の内周面に形成された円すい面状の第1および第2外側軌道面は、それぞれ、ハブ輪の外周面に形成された第1内側軌道面および内輪の外周面に形成された第2内側軌道面と対向し、これらの軌道面間に複数の円すいころが転動自在に配置されている。また、このハブベアリングは、第1外側軌道面と第1内側軌道面の間(に画成される第1軌道)に配置された複数の円すいころを保持する第1保持器と、第2外側軌道面と第2内側軌道面の間(に画成される第2軌道)に配置された複数の円すいころを保持する第2保持器と、外輪の一端および他端開口をそれぞれ密封する第1および第2シール部材とをさらに備える。
【0004】
以上の構成を有する第3世代のハブベアリングは、ハブ輪に、車輪取付フランジが一体的に設けられると共に、二つの内側軌道面のうちの一方(第1内側軌道面)が直接形成されている関係上、第1世代や第2世代のハブベアリングに比べて部品点数が少なくコスト低減に有利であるとされている。しかしながら、コスト低減に有利とされている上記の構造が、組立性の低下等といった別問題の発生要因になっているとの指摘がある(例えば、下記の特許文献2を参照)。
【0005】
すなわち、第3世代のハブベアリングのハブ輪においては、車輪取付フランジと第1内側軌道面とが軸方向に隣接配置されているため、ハブ輪の筒部を外輪の内周に挿入した後(ハブ輪と外輪とを組み合わせた後)にフランジ側に配置される第1シール部材を装着することが実質的に不可能である。従って、この場合には、まず、第1軌道に配置される複数の円すいころ、およびこれらを保持する第1保持器からなるローラカセットを外輪の第1外側軌道面に装着してから第1シール部材を外輪の軸方向一方側の端部に装着し、その後、ハブ輪の筒部を外輪の内周に挿入する、という組立手順が採用される。しかしながら、このような組立手順を採用すると、外輪内周へのハブ輪の筒部の挿入がある程度進行するまでは第1保持器からの円すいころの脱落(円すいころの径方向内側への移動)が生じ、組立作業に多大な手間を要する。係る問題を解消すべく、特許文献1においては、第1保持器に円すいころと径方向で係合可能な構造を有する専用品を採用しているが、このような専用保持器は広く流通している一般的な保持器(汎用保持器)に比べて高価であるため、上記構造を有するハブ輪を採用することで得られるコスト低減効果が薄れる。
【0006】
そこで、特許文献2においては、外輪、ローラカセット、第1シール部材、およびローラカセットに含まれる複数の円すいころを径方向内側から支持する保持リングの組み合わせ品(アセンブリ)を作製し、その後、保持リングをハブ輪によって軸方向外側に押し出しながら、ハブ輪を上記アセンブリに対して組み合わせる、という組立方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-65049号公報
【文献】特許第4513295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載されたハブベアリングの組立方法によれば、第1保持器に汎用保持器を採用した場合でも、組立時に第1保持器から円すいころが脱落するのを防止することができる。しかしながら、このような組立方法では、ハブベアリングの構成部材とは別部材である保持リングを精度良く作製し、かつこの保持リングを精度良く上記アセンブリ内に組み込む必要があることから手間とコストを要する。また、上記アセンブリとハブ輪とを組み合わせるのに伴って脱落する保持リングを回収するための回収機構を追加的に設ける必要が生じるため、組立装置の複雑化および大型化、並びにこれに伴う高コスト化が不可避となる。そのため、第3世代のハブベアリングのコスト低減対策としては不十分であり、改善の余地がある。
【0009】
上記の実情に鑑み、本発明は、いわゆる第3世代のハブベアリングのコスト低減に寄与することができる技術手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、内周面に第1外側軌道面および第2外側軌道面が形成された外輪と、外周面に第2外側軌道面に対向する第2内側軌道面が形成された内輪と、外周面に第1外側軌道面に対向する第1内側軌道面が形成された筒部、および第1内側軌道面の軸方向一方側に配置されたフランジを一体に有するハブ輪と、第1外側軌道面と第1内側軌道面の間に介在する複数の円すいころ、および複数の円すいころを周方向所定間隔で保持する保持器からなるローラカセットと、外輪の軸方向一方側の端部開口を密封するシール部材と、を備えたハブベアリングの組立方法であって、外輪、ハブ輪およびローラカセットが組み合わされた第1アセンブリを得る第1工程と、第1アセンブリおよびシール部材が組み合わされた第2アセンブリを得る第2工程と、を含み、この第2工程では、
(1)ハブ輪のフランジ下方に外輪が配置された縦姿勢の第1アセンブリのうち、外輪およびローラカセットを第1支持具により下方側から支持すると共に、ハブ輪の筒部を第1支持具との分離が規制された状態で第1支持具に対して相対的に昇降可能な第2支持具により下方側から支持し、次いで、
(2)縦姿勢の第1アセンブリからハブ輪を分離させるのに追従して第2支持具を第1支持具に対して相対的に上昇移動させることにより、第2支持具に設けた円筒状のころ支持面をローラカセットの径方向内側に導入し、その後、
(3)外輪にシール部材を装着してから、外輪の内周にハブ輪の筒部を再挿入するのに追従して第2支持具を第1支持具に対して相対的に下降移動させることにより、ころ支持面をローラカセットの下側に排出しながら、ローラカセットの径方向内側に第1内側軌道面を導入する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るハブベアリング(第3世代ハブベアリング)の組立方法によれば、保持器として特許文献1に記載の専用保持器を採用せず、図2および図3に示す構造を有する汎用保持器8を採用した場合でも、構造上、円すいころが保持器の径方向内側に脱落する可能性が実質的になくなる第2アセンブリが作製されるまでの間、保持器からの円すいころの脱落を防止しながらハブベアリングの組立作業を実施することができる。
【0012】
具体的に説明すると、まず、外輪、ハブ輪およびローラカセットが組み合わされた第1アセンブリを得る第1工程では、ローラカセットの径方向内側に配置されるハブ輪の筒部外周面(に形成された第1内側軌道面)によって円すいころの脱落を防止することができる。また、第2工程の上記(1)の作業段階では、第1工程と同様にハブ輪の筒部外周面(第1内側軌道面)によって円すいころの脱落を防止することができ、第2工程の上記(2)の作業段階では、ハブ輪の筒部外周面(第1内側軌道面)および第2支持具のころ支持面によって円すいころの脱落を防止することができ、さらに、第2工程の上記(3)の作業段階では、第2支持具のころ支持面およびハブ輪の筒部外周面(第1内側軌道面)によって円すいころの脱落を防止することができる。従って、保持器に汎用保持器を採用することによる部品コストの低減と、組立作業中の円すいころの脱落防止が実現されることによる組立作業性の向上とを同時に実現することができる。
【0013】
また、第2工程で使用する支持具(第1および第2支持具)は、外輪、ハブ輪およびローラカセットが組み合わされた第1アセンブリを下方側から支持するものであることから、特許文献2に記載された保持リングを採用する場合のような組み付けの手間がなく、さらに、ころ支持面が設けられた第2支持具は、第1支持具に対する分離が規制された状態で第1支持具に対して相対的に昇降移動することから、上記保持リングを採用する場合に必要不可欠となる保持リングの回収工程や回収装置を設ける必要がない。以上のことから、本発明に係るハブベアリングの組立方法であれば、当該ハブベアリングのコスト低減に寄与することができる。
【0014】
上記構成において、第2支持具を第1支持具に対して相対的に昇降移動させるための技術手段としては、例えば、第1支持具と第2支持具の間に弾性部材を介在させ、この弾性部材を伸縮変形させることが考えられる。
【0015】
第2工程での第1支持具によるローラカセットの下方側からの支持は、複数の円すいころを支持せずに、保持器(のみ)を支持することにより行うのが好ましい。
【0016】
また、上記の目的は、本発明に係るハブベアリングの組立装置を採用した場合にも同様に達成することができる。すなわち、本発明に係るハブベアリングの組立装置は、上記の外輪、内輪、ハブ輪、ローラカセットおよびシール部材を備えたハブベアリングの組立装置であって、
ハブ輪のフランジ下方に外輪を配置した縦姿勢の状態で外輪、ハブ輪およびローラカセットが組み合わされた第1アセンブリのうち、外輪およびローラカセットを下方側から支持する第1支持具と、第1支持具との分離が規制された状態で第1支持具に対して相対的に昇降可能に設けられ、縦姿勢の第1アセンブリのうちハブ輪の筒部を下方側から支持する第2支持具と、を備えており、第2支持具は、縦姿勢の第1アセンブリからハブ輪が分離されるのに追従して、その外周面に設けられたころ支持面がローラカセットの径方向内側に配置されるまで第1支持具に対して相対的に上昇移動すると共に、外輪の内周にハブ輪の筒部を再挿入するのに追従して、上記ころ支持面がローラカセットの下側に排出されるように第1支持具に対して相対的に下降移動することを特徴とする。
【0017】
以上の構成を有するハブベアリングの組立装置であれば、本発明に係るハブベアリングの組立方法を採用することができるので、本発明に係るハブベアリングの組立方法を採用した場合と同様の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のことから、本発明によれば、いわゆる第3世代のハブベアリングのコスト低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ハブベアリングの縦断面図である。
図2】第1ローラカセットを構成する汎用保持器の概略斜視図である。
図3】第1ローラカセットの部分横断面図である。
図4図1に示すハブベアリングの組立工程の手順を示すフロー図である。
図5】第1工程の途中段階を示す縦断面図である。
図6】第1工程の終了間際の状態を示す縦断面図である。
図7】組立装置の全体構成を示す縦断面図である。
図8】第2工程の開始段階を示す縦断面図である。
図9】第2工程の途中段階を示す縦断面図である。
図10】第2工程の途中段階を示す縦断面図である。
図11図10の部分拡大図である。
図12図11を、同図中の矢印F方向から見た部分平面図である。
図13】第2アセンブリの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
まず、図1に基づき、本発明に係る組立方法を適用して得られるハブベアリングの一例を説明する。同図に示すハブベアリング1は、外輪2、内輪3、ハブ輪4、本発明でいう「ローラカセット」としての第1ローラカセット9A、第2ローラカセット9B、本発明でいう「シール部材」としての第1シール部材7A、および第2シール部材7Bを主な構成部材として備える。内輪3およびハブ輪4と外輪2との間に画成された環状空間にはグリース等の潤滑剤(図示省略)が充填されている。
【0022】
外輪2は、円筒状の筒部2aおよびその外周面から径方向外向きに延びたフランジ2bを一体に有する。フランジ2bは、外輪2を図示外の車体(車体の懸架装置から延びるナックル)に取り付けるための取付部として機能する。筒部2aの内周面には、第1外側軌道面2cおよび第2外側軌道面2dが形成されている。第1外側軌道面2cは、軸方向一方側(アウトボード側)の端部が軸方向他方側(インボード側)の端部よりも径方向外側に位置した傾斜面(円すい面)状をなし、第2外側軌道面2dは、軸方向一方側の端部が軸方向他方側の端部よりも径方向内側に位置した円すい面状をなしている。なお、上記の「アウトボード側」および「インボード側」とは、それぞれ、ハブベアリング1を車両に取り付けた状態で車両の車幅方向外側および内側となる側を意味する。図1においては紙面左側がアウトボード側、紙面右側がインボード側である。
【0023】
ハブ輪4は、外周面に外輪2の第1外側軌道面2cに対向する円すい面状の第1内側軌道面4c、および円筒面状の内輪装着面4dが形成された筒部4aと、筒部4aの外周面から径方向外向きに延びたフランジ4bとを一体に有する。フランジ4bおよび内輪装着面4dは、第1内側軌道面4cの軸方向一方側および他方側にそれぞれ設けられている。フランジ4bには、ボルト部材10が装着されたボルト装着孔4eが形成されており、ハブ輪4はボルト部材10を用いて図示外の車輪に取り付けられる。図示は省略しているが、ハブ輪4の中心孔には、等速自在継手を構成する外側継手部材の軸部がトルク伝達可能に連結される。
【0024】
ハブ輪4の内輪装着面4dに装着された内輪3の外周面には、外輪2の第2外側軌道面2dに対向する円すい面状の第2内側軌道面3aが形成されている。内輪3は、ハブ輪4の筒部4aの軸方向他方側の端部に形成された加締め部11と、ハブ輪4の肩面(第1内側軌道面4cと内輪装着面4dとの間に設けられた段差面)4fとで軸方向両側から挟持されることによりハブ輪4に対して固定されている。
【0025】
「ローラカセット」としての第1ローラカセット9Aは、第1外側軌道面2cと第1内側軌道面4cとの間の第1軌道12に介在する複数の円すいころ5、および当該複数の円すいころ5を周方向所定間隔で保持した第1保持器6Aからなる。第2ローラカセット9Bは、第2外側軌道面2dと第2内側軌道面3aとの間の第2軌道13に介在する複数の円すいころ5、および当該複数の円すいころ5を周方向所定間隔で保持した第2保持器6Bからなる。
【0026】
第1保持器6Aおよび第2保持器6Bには、円すいころ用の保持器として広く流通している一般的な保持器(汎用保持器8)を採用している。汎用保持器8とは、例えば図2に示すように、軸方向に離間して設けられた大径環状部8aおよび小径環状部8bと、両環状部8a,8bを接続する複数の柱部8cと、小径環状部8bの径方向内側の端部に径方向内向きに突設された環状リブ8dとを一体に備え、周方向で隣り合う2つの柱部8c,8c間に円すいころ5を収容(保持)する台形窓状のポケット部8eが形成された保持器である。
【0027】
図3に、第1保持器6A(汎用保持器8)および複数の円すいころ5からなる第1ローラカセット9Aの部分横断面図を示す。同図に示すように、汎用保持器8の柱部8cは、ポケット部8eに収容された円すいころ5の中心(転動中心)同士を結んで形成される円軌道Xよりも径方向外側に配置されている。また、ポケット部8eの開口寸法(周方向で隣り合う2つの柱部8c,8cの離間距離)は径方向外側に向けて漸次縮小し、ポケット部8eの軸方向各部における内径端部の開口寸法W1は、対応する円すいころ5の軸方向各部における直径寸法W2よりも小さくなっている。以上の構成により、第1ローラカセット9Aにおいて、円すいころ5が径方向外側に移動(脱落)することはないものの、第1ローラカセット9Aの姿勢によっては円すいころ5が径方向内側に脱落する。第2ローラカセット9Bについても、第1ローラカセット9Aと同様である。
【0028】
第1シール部材7Aは、外輪2の軸方向一方側の端部開口を密封し、第2シール部材7Bは、外輪2の軸方向他方側の端部開口を密封する。これにより、外輪2と内輪3およびハブ輪4の間の環状空間に充填されたグリースの外部漏洩、並びに上記環状空間への異物侵入が防止される。第1シール部材7Aおよび第2シール部材7Bには、いわゆる接触タイプまたは非接触タイプの何れを採用しても構わないが、ここでは両シール部材7A,7B共に接触タイプを採用している。
【0029】
以上の構成を有するハブベアリング1は、図4に示すように、
・外輪2、ハブ輪4および第1ローラカセット9Aが組み合わされた第1アセンブリA1(図8参照)を得る第1工程P1、
・第1アセンブリA1、および外輪2の軸方向一方側の端部開口を密封する第1シール部材7Aが組み合わされた第2アセンブリA2(図13参照)を得る第2工程P2、
・第2アセンブリA2、内輪3および第2ローラカセット9Bが組み合わされた第3アセンブリを得る第3工程P3、および
・第3アセンブリに第2シール部材7Bを組み付ける第4工程P4、を順に経ることで組み立てられる。
なお、実際には、第1軌道12にグリースを充填する第1のグリース充填工程が第2工程P2と第3工程P3との間で実施され、また、第2軌道13にグリースを充填する第2のグリース充填工程が第3工程P3と第4工程P4との間で実施されるが、図4においては両グリース充填工程の図示を省略している。
【0030】
以下、本発明に係る組立方法の要旨である第1工程P1および第2工程P2について、図面(図5図13)を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
[第1工程P1]
この第1工程P1では、まず、第1ローラカセット9Aを作製する。第1ローラカセット9Aは、図5に示すように、第1保持器6Aとしての汎用保持器8を小径環状部8bが下側に配置された縦姿勢で配置してから、汎用保持器8の各ポケット部8eに円すいころ5を1個ずつ組み込むことにより完成する。係る態様でローラカセット9Aを作製することにより、円すいころ5が汎用保持器8の径方向内側に脱落するのを防止することができる。なお、第2ローラカセット9Bも第1ローラカセット9Aと同様の手順で作製される。
【0032】
次いで、図5に示すように、第1ローラカセット9Aの上側開口を介してハブ輪4の筒部4aを第1ローラカセット9Aの内周に挿入することにより、第1ローラカセット9Aとハブ輪4とが組み合わされたサブアセンブリ14を作製する。サブアセンブリ14は、これが分解する(ハブ輪4と第1ローラカセット9Aが相対的に離反移動する)のを規制された状態(例えば、ハブ輪4のフランジ4bと第1保持器6Aとをチャック機構で挟み込んだ状態)で上下を反転させられる。これにより、サブアセンブリ14は、図6に示すように、ハブ輪4のフランジ4bが下側に配置された状態となる。なお、上述した第1ローラカセット9Aの作製作業、およびサブアセンブリ14の作製作業は、支持部材15によって汎用保持器8の小径環状部8bを下方側から支持した状態で行う。支持部材15は、チャック機構の爪部材であっても良いし、その他の部材であっても良い。
【0033】
そして、図6に示すように、ハブ輪4のフランジ4bが下側に配置された縦姿勢のサブアセンブリ14の上側に、第1外側軌道面2cが下側に配置された縦姿勢の外輪2を配置してから両者を相対的に接近移動させることにより、第1外側軌道面2cと第1内側軌道面4cとの間に第1ローラカセット9Aが配置されるようにして外輪2とサブアセンブリ14とを組み合わせる。これにより、外輪2、ハブ輪4および第1ローラカセット9Aが組み合わされた第1アセンブリA1(図8等を参照)が得られる。
【0034】
[第2工程P2]
第2工程P2は、図7に示す組立装置20を用いて実行される。組立装置20は、ベース部材21と、スペーサ部材22を介してベース部材21に支持された静止側の第1支持具23と、第1支持具23に対して昇降移動する可動側の第2支持具24と、弾性部材としてのコイルばね(圧縮コイルばね)25と、ナット部材26とを備える。
【0035】
第1支持具23は、筒部23aと、筒部23aの外周面から径方向外側に延びたフランジ部23bと、筒部23aの内周面から径方向内側に延び、ナット部材26と係合可能な係合部23cとを有する。フランジ部23bには、組立装置20にセットされる第1アセンブリA1(詳細には、図8に示す、ハブ輪4のフランジ4b下方に外輪2を配置した縦姿勢の第1アセンブリA1。)のうち、外輪2の筒部2aの軸方向他方側の端部を下方側から支持可能な外輪支持面Saが設けられている。また、筒部23aには、第1アセンブリA1を構成する第1ローラカセット9Aのうち、第1保持器6Aの軸方向他方側の端部を下方側から支持可能な保持器支持面Sbが設けられている。なお、第1支持具23には、第1ローラカセット9Aを構成する円すいころ5を支持する支持面が設けられていない。つまり、第1アセンブリA1を構成する円すいころ5は、第2工程P2の実施中、第1支持具23によって支持されない。
【0036】
このようにすれば、図11に示すように、円すいころ5と外輪2の第1外側軌道面2cとの間にすきまZを介在させた状態で外輪2および第1ローラカセット9Aを第1支持具23によって下方側から支持することが可能となる。このため、例えば、当該第2工程P2で外輪2の内周にハブ輪4の筒部4aを再挿入する際(詳細は後述する)に、円すいころ5が第1外側軌道面2cに強く押し付けられ、その結果、円すいころ5および/または第1外側軌道面2cにキズ等の欠陥が生じる可能性を効果的に減じることができる。
【0037】
第2支持具24は、上側が開口した有底円筒状のカップ部24aと、カップ部24aの外底面から軸方向外向き(下方)に延びた軸部24bとを有し、その全体が第1支持具23の筒部23aの径方向内側に配置されている。軸部24bの自由端は第1支持具23の係合部23cの下側に突出しており、この突出部の外周にナット部材26が固定されている。係る構成により、第1支持具23と第2支持具24の分離が規制される。弾性部材としてのコイルばね25は、軸部24bに外嵌され、カップ部24aと第1支持具23の係合部23cの間に介在している。係る構成により、第2支持具24は、コイルばね25を介して第1支持具23に対して弾性的に支持されている。
【0038】
第2支持具24には、第1アセンブリA1を構成するハブ輪4の筒部4aを下方側から支持可能なハブ輪支持面Scが設けられている。本実施形態のハブ輪支持面Scは、カップ部24aの上端面(開口側端面)で構成され、ハブ輪4の肩面4fを支持する。また、カップ部24aには、円筒状のころ支持面Sdが設けられている。本実施形態では、カップ部24aの外周面のうち、第2支持具24に鉛直荷重が負荷されていない状態(第2支持具24でハブ輪4を支持していない状態)で第1支持具23の保持器支持面Sbよりも上側に突出した領域がころ支持面Sdとして機能する。
【0039】
ころ支持面Sdとは、第1ローラカセット9Aを構成する複数の円すいころ5を径方向内側から支持可能な面、換言すると、複数の円すいころ5が径方向内側に脱落するのを防止する面である。そのため、ころ支持面Sdとして機能するカップ部24aの外周面の外径寸法Dは、図12に示すころ内接円Yの直径寸法と同一寸法、あるいはころ内接円Yの直径寸法よりも僅かに小さい寸法に設定されている。ころ内接円Yとは、各円すいころ5の軸方向他方側(小端面側)の内径端部を結ぶ円軌道である。
【0040】
組立装置20は概ね以上の構成を有し、第1工程P1で得られた第1アセンブリA1は、以下のようにして第1シール部材7Aと組み合わされる。
【0041】
まず、図8に示すように、ハブ輪4のフランジ4b下方に外輪2が配置された縦姿勢の第1アセンブリA1(より詳細には、外輪2とハブ輪4の相対的な離反移動が規制された状態で上記縦姿勢で保持された第1アセンブリA1。)を組立装置20の上方に配置してから、第1アセンブリA1を下降移動させることにより、第1アセンブリA1を組立装置20にセットする。
【0042】
組立装置20の上方に配置した第1アセンブリA1を下降移動させると、まず、ハブ輪4の肩面4fが第2支持具24のハブ輪支持面Scに当接する。前述のとおり、第2支持具24は、コイルばね25を介して第1支持具23に対して弾性的に支持されている。そのため、ハブ輪4が第2支持具24に当接した後には、第1アセンブリA1が下降移動するのに追従して第2支持具24が第1支持具23に対して相対的に下降移動すると共に、第1支持具23と第2支持具24の間に介在するコイルばね25が圧縮される(図9参照)。そして、図9に示すように、第1アセンブリA1のうち、外輪2の筒部2aの軸方向他方側の端部が第1支持具23の外輪支持面Saに当接すると共に、第1ローラカセット9A(第1保持器6A)の軸方向他方側の端部が第1支持具23の保持器支持面Sbに当接した時点で第1アセンブリA1の下降移動が停止される。これにより、外輪2および第1ローラカセット9Aが第1支持具23により下方側から支持されると共に、ハブ輪4の筒部4aが第2支持具24により下方側から支持された状態で、第1アセンブリA1が組立装置20にセットされる。
【0043】
以上で説明した組立装置20に対する第1アセンブリA1のセッティング作業は、第1ローラカセット9Aの径方向内側にハブ輪4の第1内側軌道面4cを配置した状態(第1ローラカセット9Aを外輪2の第1外側軌道面2cとハブ輪4の第1内側軌道面4cとの間に配置した状態)で実行される。そのため、当該作業の実行時に、汎用保持器8からなる第1保持器6Aの径方向内側に円すいころ5が脱落することはない。
【0044】
次に、図10に示すように、組立装置20にセットされた第1アセンブリA1のうちハブ輪4(のみ)を上昇移動させることにより、組立装置20にセットされた第1アセンブリA1からハブ輪4を分離する(抜き取る)。ハブ輪4を上昇移動させると、これと同時に、第2支持具24に負荷されていた鉛直荷重、すなわちコイルばね25に作用していた圧縮荷重が除去されるので、コイルばね25が弾性的に伸長変形し、第2支持具24のカップ部24aに第2支持具24を上昇移動させる力(コイルばね25の弾性復元力)が作用する。そのため、ハブ輪4を上昇移動させると、第2支持具24は、ハブ輪4の上昇移動に追従するかたちで原点(図7に示す位置)復帰するまで第1支持具23に対して相対的に上昇移動する。これに伴い、図11および図12にも示すように、第1ローラカセット9Aの径方向内側に、第2支持具24のカップ部24aに設けられた円筒状のころ支持面Sdが導入される。
【0045】
以上で説明したハブ輪4の分離(抜き取り)作業は、まず、第1ローラカセット9Aの径方向内側にハブ輪4の筒部4aの外周面が配置された状態で実行された後、これに続いて第1ローラカセット9Aの径方向内側に第2支持具24のころ支持面Sdが配置された状態で実行されることになる。そのため、当該作業の実行時にも、第1保持器6Aの径方向内側に円すいころ5が脱落することはない。
【0046】
図示は省略しているが、第1アセンブリA1からハブ輪4を分離した後には、図10および図11に示す状態、すなわち第1ローラカセット9Aの径方向内側に円筒状のころ支持面Sdを配置した状態のままで外輪2の軸方向一方側の端部に第1シール部材7Aを装着する。
【0047】
図示は省略しているが、外輪2に対する第1シール部材7Aの装着作業が完了すると、ハブ輪4(第1アセンブリA1から分離させたハブ輪4)の筒部4aを外輪2の内周に再挿入する。これにより、図13に示す第2アセンブリA2、すなわち、外輪2、ハブ輪4、第1シール部材7Aおよび第1ローラカセット9Aが組み合わされた第2アセンブリA2が得られる。
【0048】
前述したとおり、本実施形態では第2支持具24と第1支持具23の間に弾性部材としてのコイルばね25を介在させているので、外輪2の内周にハブ輪4の筒部4aを再挿入するのに伴って第2支持具24に鉛直荷重が作用すると、第2支持具24は、組立装置20に第1アセンブリA1をセットする場合(図8および図9参照)と同様に、ハブ輪4の筒部4aの再挿入に追従して下降移動する。そのため、外輪2内周へのハブ輪4の筒部4aの再挿入時には、第2支持具24に設けられた円筒状のころ支持面Sdが第1ローラカセット9Aの下側に排出されながら、第1ローラカセット9Aの径方向内側にハブ輪4の筒部4a(に形成された第1内側軌道面4c)が導入されることになる。
【0049】
以上で説明した第1シール部材7Aの装着作業、およびハブ輪4の筒部4aの再挿入作業は、まず、第1ローラカセット9Aの径方向内側に円筒状のころ支持面Sdが配置された状態で実行された後、これに続いて第1ローラカセット9Aの径方向内側にハブ輪4の筒部4aの外周面が配置された状態で実行されることになる。そのため、これらの作業実行時にも、第1保持器6Aの径方向内側に円すいころ5が脱落することはない。
【0050】
[第3工程P1および第4工程]
図示は省略するが、第3工程P1では、以上のようにして得られた第2アセンブリA2に第2ローラカセット9Bおよび内輪3を組み付ける。具体的には、まず、第2アセンブリA2の上下を反転させてから、第2ローラカセット9Bおよび内輪3を外輪2の第2外側軌道面2dとハブ輪4の内輪装着面4dとの間に挿入する。次いで、ハブ輪4の筒部4aの軸方向他方側の端部を径方向外側に折り曲げて加締め部11を形成する。これにより、第2アセンブリA2に第2ローラカセット9Bおよび内輪3が組み付けられた第3アセンブリが得られる。そして、第4工程P4では、第3アセンブリを構成する外輪2と内輪3の間に第2シール部材7Bを組み込む。これにより、図1に示すハブベアリング1が完成する。
【0051】
以上で説明したように、本発明に係るハブベアリング1の組立方法(および組立装置)によれば、第1ローラカセット9Aを構成する第1保持器6Aとして図2および図3に示す汎用保持器8を採用した場合でも、構造上、第1ローラカセット9Aを構成する円すいころ5が第1保持器6Aの径方向内側に脱落する可能性が実質的になくなる第2アセンブリA2が作製されるまでの間、第1保持器6Aからの円すいころ5の脱落を防止しながらハブベアリング1の組立作業を実施することができる。そのため、第1保持器6Aに汎用保持器8を採用することによる部品コストの低減と、ハブベアリング1の組立作業中の円すいころ5の脱落防止が実現されることによる組立作業性の向上とを同時に実現することができる。
【0052】
また、第2工程P2で使用する第1支持具23および第2支持具24は、外輪2、ハブ輪4および第1ローラカセット9Aが組み合わされた第1アセンブリA1を下方側から支持するものであることから、特許文献2に記載された保持リングを採用する場合のような組み付けの手間がなく、さらに、円筒状のころ支持面Sdが設けられた第2支持具24は、第1支持具23に対する分離が規制された状態で第1支持具23に対して相対的に昇降移動することから、上記保持リングを採用する場合に必要不可欠となる保持リングの回収工程や回収装置を設ける必要がない。以上のことから、本発明に係るハブベアリング1の組立方法および組立装置は、ハブベアリング1のコスト低減に大きく寄与することができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限られない。
【0054】
例えば、以上で説明した実施形態では、静止側の第1支持具23と可動側の第2支持具24の間にコイルばね25を介在させ、このコイルバネ25の伸縮変形に伴って第2支持具24を昇降移動させるようにしたが、これとは異なる方法で第2支持具24を昇降移動させることも可能である。具体的には、例えば、第2支持具24を直動アクチュエータの出力部材に連結し、この出力部材を直線運動させることによって第2支持具24を昇降移動させることが考えられる。なお、本発明の構成上、第2支持具24に鉛直荷重が負荷されるのと同時に第2支持具24を下降移動させ、その後上記鉛直荷重が除去されるのと同時に第2支持具24を上昇移動させることが肝要であることから、弾性部材(コイルばね25)に替えて直動アクチュエータを採用する場合には、例えば圧力センサや荷重センサ等を第2支持具24に設置しておくのが好ましい。
【0055】
第1支持具23と第2支持具24を相対的に昇降移動させるために上記のような直動アクチュエータを採用する場合には、第1支持具23を可動側とし、第2支持具24を静止側とすることも可能である。すなわち、直動アクチュエータを第1支持具23に連結し、適当なタイミングで第1支持具23を第2支持具24に対して昇降移動させれば、以上で説明した実施形態と同様にしてハブベアリング1(第2アセンブリA2)を組み立てることができる。
【0056】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得る。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0057】
1 ハブベアリング
2 外輪
2c 第1外側軌道面
2d 第2外側軌道面
3 内輪
3a 第2内側軌道面
4 ハブ輪
4a 筒部
4b フランジ
4c 第1内側軌道面
4f 肩面
5 円すいころ
6A 第1保持器(保持器)
7A 第1シール部材(シール部材)
8 汎用保持器
9A 第1ローラカセット
20 組立装置
23 第1支持具
24 第2支持具
25 コイルばね(弾性部材)
A1 第1アセンブリ
A2 第2アセンブリ
P1 第1工程
P2 第2工程
Sa 外輪支持面
Sb 保持器支持面
Sc ハブ輪支持面
Sd ころ支持面
Y ころ内接円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13