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特許7627575粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20250130BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250130BHJP
   C09J 143/04 20060101ALI20250130BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20250130BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250130BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J7/38
C09J143/04
C09J183/04
C09J11/06
G02B5/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021021946
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124275
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池元 智拾
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕也
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 彬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-050716(JP,A)
【文献】特開2014-224227(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163115(WO,A1)
【文献】特開2020-143248(JP,A)
【文献】特開2019-035066(JP,A)
【文献】特開2009-132867(JP,A)
【文献】特開2016-216624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)と、
オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%~10質量%含み、ガラス転移温度が20℃~50℃であり、かつ、重量平均分子量が1万~40万である(メタ)アクリル系共重合体(B)と、
側鎖にエポキシ基及びポリエーテル基の少なくとも一方を有し、かつ、25℃における動粘度が2000mm/s以下であるシリコーン化合物(C)と、
架橋剤と、
を含み、
前記架橋性官能基が、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)における前記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、4000以上20000未満の範囲であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~21質量部であり、
前記シリコーン化合物(C)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~10質量部である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記オルガノシロキサン骨格を有する単量体が、下記式(I)で表される化合物である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化1】

式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、1価の有機基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、0又は1以上の整数を表すが、m及びnが同時に0を表すことはない。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ディスプレイ装置に用いられる粘着剤組成物に対しては、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を形成できることが求められる。このような要求に対し、種々の粘着剤組成物が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、官能基当量が1000g/mol以上15000g/mol未満の範囲であるオルガノシロキサン骨格を有するモノマー、及び、ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマーをモノマー単位として含み、重量平均分子量が10000以上100000未満の範囲である共重合体(B)0.1質量部~20質量部と、を含む粘着剤組成物が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、官能基当量が1000g/mol以上4600g/mol以下の範囲であるオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)、及び、ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマー(B2)をモノマー単位として含み、重量平均分子量が10000以上100000未満の範囲である共重合体(B)0.1質量部~20質量部と、を含み、共重合体(B)が、モノマー(B1)を10質量%~20質量%、及び、モノマー(B2)を30質量%~50質量%含む共重合体である粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/163115号
【文献】特開2017-203164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各種ディスプレイ装置の製造に際しては、各種部材を、粘着剤層を介して被着体に貼り合わせた後、輸送、保管等を行うことがあり、次工程に移行するまでに時間を要する場合がある。そのため、各種ディスプレイ装置に用いられる粘着剤組成物には、貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できることも求められる。
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を備える粘着シートを提供することにある。
また、本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を備える光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)と、
オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%~10質量%含み、かつ、重量平均分子量が1万~40万である(メタ)アクリル系共重合体(B)と、
側鎖にエポキシ基及びポリエーテル基の少なくとも一方を有し、かつ、25℃における動粘度が2000mm/s以下であるシリコーン化合物(C)と、
架橋剤と、
を含み、
上記(メタ)アクリル系共重合体(B)における上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、4000以上20000未満の範囲であり、
上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~21質量部であり、
上記シリコーン化合物(C)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~10質量部である粘着剤組成物。
【0008】
<2> 上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体が、下記式(I)で表される化合物である<1>に記載の粘着剤組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、1価の有機基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、0又は1以上の整数を表すが、m及びnが同時に0を表すことはない。
【0011】
<3> <1>又は<2>に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート。
<4> <1>又は<2>に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える光学部材。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一実施形態によれば、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる粘着剤組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を備える粘着シートが提供される。
また、本開示の他の実施形態によれば、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を備える光学部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材について、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0014】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、粘着剤組成物中の各成分の量は、粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本開示において、「(メタ)アクリル系(共)重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系(共)重合体の全構成単位〕の50質量%以上である(共)重合体を意味する。ここで、「(共)重合体」とは、重合体又は共重合体を意味する。
【0017】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0018】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0019】
本開示において、「加温後」とは、例えば、50℃以上の温度を加えた後を意味する。なお、温度の上限としては、例えば、300℃が挙げられる。
【0020】
本開示では、特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を「特定(メタ)アクリル系重合体」と総称する。
【0021】
[粘着剤組成物]
本開示の粘着剤組成物は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)〔以下、「特定(メタ)アクリル系重合体(A)」ともいう。〕と、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%~10質量%含み、かつ、重量平均分子量が1万~40万である(メタ)アクリル系共重合体(B)〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体(B)」ともいう。〕と、側鎖にエポキシ基及びポリエーテル基の少なくとも一方を有し、かつ、25℃における動粘度が2000mm/s以下であるシリコーン化合物(C)〔以下、「特定シリコーン化合物(C)」ともいう。〕と、架橋剤と、を含み、上記(メタ)アクリル系共重合体(B)における上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、4000以上20000未満の範囲であり、上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~21質量部であり、上記シリコーン化合物(C)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~10質量部である。
本開示の粘着剤組成物によれば、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる。
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0022】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体は、その構造に由来する極性の低さから、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を、粘着剤層の接着面に偏在させる傾向がある。ここで、「粘着剤層の接着面」としては、例えば、粘着剤層と被着体との界面が挙げられる。
本開示の粘着剤組成物では、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率及びオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量、並びに、特定(メタ)アクリル系重合体(A)に対する特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有割合の調整により、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を粘着剤層の接着面に適度に偏在させることを可能とした。
本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が接着面に適度に偏在するため、被着体に対して、貼り合わせ初期に軽剥離性を示すと推測される。
【0023】
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を含み、形成される粘着剤層は、被着体に対して濡れ性を示す。
特定シリコーン化合物(C)は、その構造に由来する極性の低さから、粘着剤層の接着面に偏在する傾向がある。本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、特定シリコーン化合物(C)が、接着面に適度に偏在し、粘着剤層の被着体への過度な濡れ広がりを抑制すると考えられる。このため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難いと推測される。
【0024】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が偏在する粘着剤層の接着面は、硬くなりやすく、加温しても粘着剤層が高い粘着力を示し難くなる傾向がある。本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層の接着面には、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)に加えて、特定シリコーン化合物(C)が適度に偏在する。特定シリコーン化合物(C)が偏在する粘着剤層の接着面は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が偏在する粘着剤層の接着面とは異なり、硬くなり難いと考えられる。このため、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、加温後に高い粘着力を示すと推測される。
【0025】
本開示の粘着剤組成物に対し、特許文献1(国際公開第2015/163115号;以下、同じ。)及び特許文献2(特開2017-203164号公報;以下、同じ。)に記載された粘着剤組成物は、本開示における特定シリコーン化合物(C)を含まないため、粘着剤層の被着体への濡れ広がりが抑制されないと考えられる。このため、特許文献1及び特許文献2に記載された粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれやすいと推測される。
【0026】
なお、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、従来の温度(70℃程度)よりも低い温度(50℃)で加温した場合でも十分に高い粘着力を発現し得る。
【0027】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕
本開示の粘着剤組成物は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含み、かつ、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕を含む。
【0028】
<架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の架橋性官能基は、後述の架橋剤との架橋に寄与し得る。
【0029】
本開示において、「架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位」とは、架橋性官能基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0030】
架橋性官能基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つの架橋性官能基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基の種類は、特に限定されない。
エチレン性不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0031】
架橋性官能基の種類は、特に限定されない。
架橋性官能基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基、及びアミノ基が挙げられる。
ここでいう「アミノ基」とは、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を指す。
架橋性官能基は、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方であることが好ましい。
【0032】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、例えば、他の単量体との共重合性が良好であるとの観点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、他の単量体との相溶性が良好であるとの観点、及び、架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)との反応性が良好であるとの観点から、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が特に好ましい。
【0033】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びネオデカン酸ビニルが挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)との反応性が良好であるとの観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0034】
アミノ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
一級アミノ基を有する単量体の具体例としては、アクリルアミド及びメタクリルアミドが挙げられる。
二級アミノ基を有する単量体の具体例としては、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、及びN-メトキシエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0035】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0036】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、1質量%~40質量%であることが好ましく、1質量%~35質量%であることがより好ましく、2質量%~30質量%であることが更に好ましく、2質量%~25質量%であることが更に好ましく、3質量%~20質量%であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して上記範囲内であると、貼り合わせ初期における軽剥離性が経時でより損なわれ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0037】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与し得る。
【0038】
本開示において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。なお、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、架橋性官能基を有する単量体に該当する単量体は、包含されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系共重合体を製造しやすいとの観点から、n-ブチルアクリレート(n-BA)、メチルアクリレート(MA)、及び2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0041】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0042】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~99質量%であることがより好ましく、60質量%~99質量%であることが更に好ましく、65質量%~99質量%であることが更に好ましく、70質量%~98質量%であることが更に好ましく、75質量%~98質量%であることが更に好ましく、80質量%~97質量%であることが特に好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0043】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、既述の構成単位、即ち、必須の構成単位である架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位、及び、任意の構成単位である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0044】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0045】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0046】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、適宜設定できる。
【0047】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう。)は、0℃未満であり、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましく、-30℃以下であることが更に好ましく、-40℃以下であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度が0℃未満であると、加温後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。このような傾向を示す理由としては、形成される粘着剤層に適度な濡れ性が付与されるためと考えられる。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度の下限は、特に限定されないが、例えば、-70℃以上であることが好ましい。
【0048】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K;以下、同じ。)をセルシウス温度(単位:℃;以下、同じ。)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0049】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0050】
本開示において、「単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度で表されるガラス転移温度をいう。
単独重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)〔型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)製〕を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0051】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度で表されるガラス転移温度」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が107℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が48℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBXMA)が155℃、イソボニルアクリレート(IBXA)が96℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、メタクリル酸(MAA)が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)が-7℃、アクリル酸(AA)が163℃、n-オクチルアクリレート(n-OA)が-65℃、i-オクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、i-デシルアクリレートが-62℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、及び2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0052】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0053】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、40万~200万であることが好ましく、40万~150万であることがより好ましく、40万~100万であることが更に好ましく、40万~80万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が40万以上であると、貼り合わせ初期に、より良好な軽剥離性を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が200万以下であると、加温後に、より高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0054】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系重合体(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系重合体(A)の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量を測定する。
【0055】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0056】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0057】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、75質量%~99.75質量%であることが好ましく、80質量%~99.7質量%であることがより好ましく、80質量%~99質量%であることが更に好ましく、80質量%~98質量%であることが特に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率が、粘着剤組成物中の全固形分量に対して75質量%以上であると、加温後に、より高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率が、粘着剤組成物中の全固形分量に対して99.75質量%以下であると、貼り合わせ初期に、より良好な軽剥離性を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。また、本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率が、粘着剤組成物中の全固形分量に対して99.75質量%以下であると、貼り合わせ初期における軽剥離性が経時でより損なわれ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0058】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%~10質量%含み、かつ、重量平均分子量が1万~40万である(メタ)アクリル系共重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕を含む。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、4000以上20000未満の範囲であり、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~21質量部である。
【0059】
<オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%~10質量%含み、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、4000以上20000未満の範囲である。
本開示において、「オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位」とは、オルガノシロキサン骨格を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0060】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、4000以上20000未満の範囲であり、4200以上20000未満の範囲であることが好ましく、4500以上20000未満の範囲であることがより好ましく、5000以上15000未満の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、例えば、オルガノシロキサン骨格を有する単量体の入手容易性の観点から、20000未満である。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が4000以上であると、貼り合わせ初期における軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。このような傾向を示す理由としては、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の極性が十分に低くなり、粘着剤層の接着面への(メタ)アクリル系共重合体(B)の偏在が十分に維持されるためと考えられる。
【0061】
本開示において、オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)及び(2)に従って測定する。
(1)オルガノシロキサン骨格を有する単量体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占めるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の質量割合を意味する。
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量を測定する。
【0062】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0063】
なお、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が数平均分子量の異なる2種以上のオルガノシロキサン骨格を有する単量体を含む場合、「特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量」は、算術平均した値を意味し、具体的には、下記の式により計算される値をいう。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量 = 〔単量体1の数平均分子量×単量体1の配合量+単量体2の数平均分子量×単量体2の配合量+・・・+単量体nの数平均分子量×単量体nの配合量〕/〔単量体1の配合量+単量体2の配合量+・・・+単量体nの配合量〕
【0064】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の種類は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が4000以上20000未満の範囲となるものであれば、特に限定されない。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の具体例としては、下記の式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化2】

【0066】
式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
【0067】
式(I)中、Rは、1価の有機基を表す。
で表される1価の有機基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状であってもよい。
1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアリール基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
がアルキル基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、及びt-ブチル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
がアルケニル基を表す場合のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及び2-プロペニル基が挙げられ、ビニル基が好ましい。
がアルキニル基を表す場合のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基が挙げられ、エチニル基が好ましい。
がアリール基を表す場合のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、及びピリジル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0068】
式(I)中、m及びnは、それぞれ独立に、0又は1以上の整数を表すが、m及びnが同時に0を表すことはない。
mは、1~10の整数であることが好ましく、1~6の整数であることがより好ましい。nは、1~250の整数であることが好ましく、5~200の整数であることがより好ましく、10~200の整数であることが更に好ましい。
【0069】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体としては、市販品を使用できる。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の市販品の例としては、X-22-2404〔商品名、数平均分子量:420、信越化学工業(株)製〕、X-22-174ASX〔商品名、数平均分子量:1100、信越化学工業(株)製〕、サイラプレーン(登録商標) FM-0711〔商品名、数平均分子量:1200、JNC(株)製〕、サイラプレーン(登録商標) FM-0721〔商品名、数平均分子量:6500、JNC(株)製〕、サイラプレーン(登録商標) FM-0725〔商品名、数平均分子量:15000、JNC(株)製〕、KF-2012〔商品名、数平均分子量:5400、信越化学工業(株)製〕、及びX-22-2426〔商品名、数平均分子量:13800、信越化学工業(株)製〕が挙げられる。
以上の市販品は、いずれも式(I)で表される化合物に該当する。
【0070】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0071】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%~10質量%である。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して0.1質量%以上であることは、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)がオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を積極的に含むことを意味する。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して10質量%以下であると、加温後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、10質量%以下であり、9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましい。
【0072】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与し得る。
【0073】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましい。
【0074】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)、及びエチルアクリレート(EA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0075】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0076】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~99.9質量%であることがより好ましく、60質量%~99.5質量%であることが更に好ましく、70質量%~99質量%であることが更に好ましく、80質量%~98質量%であることが更に好ましく、90質量%~97質量%であることが特に好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0077】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、既述の構成単位、即ち、必須の構成単位であるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位、及び、任意の構成単位である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0078】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0079】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0080】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、適宜設定できる。
【0081】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、特に限定されないが、例えば、20℃~50℃であることが好ましく、20℃~45℃であることがより好ましく、20℃~40℃であることが更に好ましい。
【0082】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、窒素気流中、測定試料を8mgとし、測定開始温度-70℃、測定終了温度150℃、及び昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度としたものである。
示差走査熱量測定装置としては、例えば、ティーエイ・インスツルメント(株)製のDSC2500(型番)を好適に用いることができる。但し、示差走査熱量測定装置は、これに限定されない。
【0083】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0084】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、1万~40万である。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が1万以上であると、加温後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、1万以上であり、2万以上であることが好ましく、3万以上であることがより好ましく、5万以上であることが更に好ましく、7万以上であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が40万以下であると、貼り合わせ初期に軽剥離性を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。また、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が40万以下であると、貼り合わせ初期における軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
このような観点から、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、40万以下であり、35万以下であることが好ましく、30万以下であることがより好ましく、25万以下であることが更に好ましく、20万以下であることが特に好ましい。
【0085】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定される。
【0086】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0087】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量>>
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~21質量部である。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上であることは、本開示の粘着剤組成物が特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を積極的に含むことを意味する。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して21質量部以下であると、加温後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
このような観点から、本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、21質量部以下であり、18質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることが更に好ましい。
【0088】
〔特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体〕の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本開示の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0089】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、窒素気流中、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0090】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0091】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0092】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0093】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0094】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0095】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0096】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0097】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0098】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0099】
〔特定シリコーン化合物(C)〕
本開示の粘着剤組成物は、側鎖にエポキシ基及びポリエーテル基の少なくとも一方を有し、かつ、25℃における動粘度が2000mm/s以下であるシリコーン化合物(C)〔即ち、特定シリコーン化合物(C)〕を含む。
本開示の粘着剤組成物における特定シリコーン化合物(C)の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~10質量部である。
【0100】
特定シリコーン化合物(C)は、シロキサン結合を主骨格とし、側鎖にエポキシ基及びポリエーテル基の少なくとも一方の基を有する化合物であれば、その構造は、特に限定されない。
【0101】
特定シリコーン化合物(C)は、例えば、側鎖に下記式(a)で表される基を有する化合物であることが好ましい。
【0102】
【化3】

【0103】
式(a)中、Rは、鎖状脂肪族基を表す。
で表される鎖状脂肪族基は、直鎖状脂肪族基であってもよく、分岐鎖状脂肪族基であってもよい。
で表される鎖状脂肪族基の炭素数は、1~18であることが好ましい。
【0104】
で表される鎖状脂肪族基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ビニレン基、エチリデン基、ビニリデン基、プロペニレン基、及びブタジエニレン基が挙げられる。
これらの中でも、Rで表される鎖状脂肪族基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基から選ばれる置換基が好ましい。
【0105】
特定シリコーン化合物(C)は、例えば、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0106】
【化4】

【0107】
式(1)中、R1aは、それぞれ独立に、炭素数1~18の1価の炭化水素基を表し、R1bは、それぞれ独立に、式(a)で表される基を表し、mは、0又は1以上の整数を表し、nは、1以上の整数を表す。
【0108】
式(1)中、R1aで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基は、置換されていてもよく、非置換であってもよい。
式(1)中、R1aで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基は、炭素数1~18の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数1~18の1価の脂環式炭化水素基、及び、炭素数1~18の1価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を含むことが好ましい。
【0109】
炭素数1~18の1価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、及びビニル基が挙げられる。
炭素数1~18の1価の脂肪族炭化水素基は、上記脂肪族炭化水素基を、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基、ハロゲン原子、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基等の置換基で置換したものであってもよい。
【0110】
炭素数1~18の1価の脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基が挙げられる。
炭素数1~18の1価の脂環式炭化水素基は、上記脂環式炭化水素基を、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基等の置換基で置換したものであってもよい。
【0111】
炭素数1~18の1価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基等のアリール基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、及び、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基が挙げられる。
炭素数1~18の1価の芳香族炭化水素基は、上記芳香族炭化水素基を、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基等の置換基で置換したものであってもよい。
【0112】
式(1)中、R1aで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基としては、アルキル基及びアリール基から選ばれる1価の炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシドキシプロピル基、クロロプロピル基、メタクリルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基、N-フェニルアミノプロピル基、N-アミノプロピル基、ウレイドプロピル基等のアルキル基;フェニル基、p-トリル基、m-トリル基、o-トリル基、p-メトキシフェニル基、m-メトキシフェニル基、o-メトキシフェニル基等のアリール基などがより好ましい。
【0113】
式(1)中、mは、0又は1~100の整数であることが好ましい。
式(1)中、nは、1~100の整数であることが好ましい。
【0114】
式(1)で表される化合物である特定シリコーン化合物(C)の市販品の例としては、KF-101〔商品名、25℃における動粘度:1500mm/s、信越化学工業(株)製〕、X-22-343〔商品名、25℃における動粘度:25mm/s、信越化学工業(株)製〕、及びX-22-2000〔商品名、25℃における動粘度:190mm/s、信越化学工業(株)製〕が挙げられる。
【0115】
特定シリコーン化合物(C)は、例えば、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0116】
【化5】

【0117】
式(2)中、R2aは、それぞれ独立に、炭素数1~18の1価の炭化水素基を表し、R2bは、それぞれ独立に、式(a)で表される基を表し、R2cは、ポリエーテル基を有する1価の有機基を表し、pは、0又は1以上の整数を表し、qは、1以上の整数を表し、rは、1以上の整数を表す。
【0118】
式(2)中、R2aで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基は、置換されていてもよく、非置換であってもよい。
式(2)中、R2aで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基は、炭素数1~18の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数1~18の1価の脂環式炭化水素基、及び、炭素数1~18の1価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を含むことが好ましい。
【0119】
式(2)における炭素数1~18の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数1~18の1価の脂環式炭化水素基、及び、炭素数1~18の1価の芳香族炭化水素基の具体例は、既述の式(1)における炭素数1~18の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数1~18の1価の脂環式炭化水素基、及び、炭素数1~18の1価の芳香族炭化水素基の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0120】
また、式(2)中、R2aで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基の好ましい例は、式(1)中、R1aで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基の好ましい例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0121】
式(2)中、pは、0又は1~100の整数であることが好ましい。
式(2)中、qは、1~100の整数であることが好ましい。
式(2)中、rは、1~100の整数であることが好ましい。
【0122】
式(2)中、R2cで表されるポリエーテル基を有する1価の有機基は、下記式(b)で表される有機基であることが好ましい。
【0123】
【化6】

【0124】
式(b)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~18の2価の炭化水素基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~18の1価の炭化水素基を表し、sは、2以上の整数を表す。
【0125】
式(b)中、Rで表される炭素数1~18の2価の炭化水素基は、炭素数1~18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数1~18の2価の脂環式炭化水素基、及び、炭素数1~18の2価の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基を含むことが好ましい。
【0126】
炭素数1~18の2価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ビニレン基、エチリデン基、ビニリデン基、プロペニレン基、ブタジエニレン基等が挙げられる。
炭素数1~18の2価の脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキシリデン基等が挙げられる。
炭素数1~18の2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられる。
【0127】
式(b)中、Rで表される炭素数1~18の2価の炭化水素基としては、アルキレン基及びアリーレン基から選ばれる2価の炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基から選ばれる2価の炭化水素基がより好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる2価の炭化水素基が更に好ましい。
すなわち、式(2)中、R2cで表されるポリアルキレンエーテル基を有する1価の有機基は、下記の式(c)で表される繰り返し単位及び式(d)で表される繰り返し単位の少なくとも一方の繰り返し単位を含む1価の有機基であることが好ましい。
【0128】
【化7】

【0129】
式(c)中、tは、2以上の整数を表す。
【0130】
【化8】

【0131】
式(d)中、uは、2以上の整数を表す。
【0132】
式(c)中、tは、2~100の整数であることが好ましい。
式(d)中、uは、2~100の整数であることが好ましい。
【0133】
式(b)中、Rで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基の好ましい例は、式(1)中、R1aで表される炭素数1~18の1価の炭化水素基の好ましい例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0134】
式(b)中、sは、2~100の整数であることが好ましい。
【0135】
式(2)で表される化合物である特定シリコーン化合物(C)の市販品の例としては、X-22-4741〔商品名、25℃における動粘度:350mm/s、信越化学工業(株)製〕、DOWSIL(登録商標) BY16-869〔商品名、25℃における動粘度:1000mm/s、ダウ・東レ(株)製〕、DOWSIL(登録商標) BY16-870〔商品名、25℃における動粘度:550mm/s、ダウ・東レ(株)製〕、DOWSIL(登録商標) BY16-760〔商品名、25℃における動粘度:1500mm/s、ダウ・東レ(株)製〕が挙げられる。
【0136】
特定シリコーン化合物(C)は、例えば、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0137】
【化9】
【0138】
式(3)中、pは、ジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数であって、0又は1~100の整数を表し、qは、ポリエチレンオキシド鎖を有するメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数であって、2~100の整数を表し、aは、エチレンオキシド構造単位の繰り返し数であって、2~100の整数を表す。
式(3)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q、及びaは、化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0139】
式(3)中、aで表されるエチレンオキシド構造単位の繰り返し数は、10~100の整数であることが好ましい。
式(3)中、pで表されるジメチルシロキサン構造単位の繰り返し数は、1~80の整数であることが好ましい。
式(3)中、qで表されるメチルプロピレンシロキサン構造単位の繰り返し数は、2~80の整数であることが好ましい。
【0140】
式(3)で表される化合物である特定シリコーン化合物(C)の市販品の例としては、DOWSIL(登録商標) FZ-2110〔商品名、25℃における動粘度:130mm/s、ダウ・東レ(株)製〕、及びDOWSIL(登録商標) L-7002〔商品名、25℃における動粘度:1200mm/s、ダウ・東レ(株)製〕
が挙げられる。
【0141】
特定シリコーン化合物(C)の25℃における動粘度は、2000mm/s以下であり、1900mm/s以下であることが好ましく、1800mm/s以下であることがより好ましく、1700mm/s以下であることが更に好ましく、1600mm/s以下であることが特に好ましい。
特定シリコーン化合物(C)の25℃における動粘度が2000mm/s以下であると、加温後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定シリコーン化合物(C)の25℃における動粘度の下限は、特に限定されないが、例えば、5mm/s以上であることが好ましく、10mm/s以上であることがより好ましく、15mm/s以上であることが更に好ましく、20mm/s以上であることが特に好ましい。
【0142】
特定シリコーン化合物(C)の25℃における動粘度は、JIS K7367-1:2002に準拠した方法により、キャピラリー粘度計を用いて測定される値である。
【0143】
特定シリコーン化合物(C)の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、15万以下であることが好ましく、10万以下であることがより好ましく、8万以下であることが更に好ましく、6万以下であることが特に好ましい。
特定シリコーン化合物(C)の重量平均分子量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.1万以上であることが好ましい。
【0144】
特定シリコーン化合物(C)の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定される値である。
【0145】
本開示の粘着剤組成物は、特定シリコーン化合物(C)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0146】
本開示の粘着剤組成物における特定シリコーン化合物(C)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部~10質量部である。
本開示の粘着剤組成物における特定シリコーン化合物(C)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上であることは、本開示の粘着剤組成物が特定シリコーン化合物(C)を積極的に含むことを意味する。
本開示の粘着剤組成物における特定シリコーン化合物(C)の含有量は、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物における特定シリコーン化合物(C)の含有量は、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して10質量部以下であると、加温後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
このような観点から、本開示の粘着剤組成物における特定シリコーン化合物(C)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下であり、8質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることが更に好ましい。
【0147】
〔架橋剤〕
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を含む。
架橋剤の種類は、特に限定されない。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤が挙げられる。
これらの中でも、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤又は金属キレート系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0148】
本開示において、「イソシアネート系架橋剤」とは、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。また、「エポキシ系架橋剤」とは、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ化合物)を指す。また、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物を指す。
【0149】
イソシアネート系架橋剤の種類は、特に限定されない。
イソシアネート系架橋剤としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族ポリイソシアネート化合物又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、イソシアネート系架橋剤としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、3量体、又は5量体、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネート化合物のビウレット体なども挙げられる。
【0150】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2037」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)製〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)製〕、「デュラネート(登録商標) E-405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)製〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)製〕が挙げられる。
【0151】
エポキシ系架橋剤の種類は、特に限定されない。
エポキシ系架橋剤の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)が挙げられる。
【0152】
エポキシ系架橋剤としては、市販品を使用できる。
エポキシ系架橋剤の市販品の例としては、「TETRAD(登録商標)-X」及び「TETRAD(登録商標)-C」〔以上、三菱ガス化学(株)製〕が挙げられる。
【0153】
金属キレート系架橋剤の種類は、特に限定されない。
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)に代表されるアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、並びに、コバルトキレート化合物が挙げられる。
【0154】
金属キレート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
金属キレート系架橋剤の市販品の例としては、アルミキレート A〔商品名、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、川研ファインケミカル(株)製〕、アルミキレート D〔商品名、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)製〕、及びALCH-TR〔商品名、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)製〕が挙げられる。
【0155】
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0156】
本開示の粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~5質量部であることがより好ましく、0.1質量部~3質量部であることが更に好ましく、0.1質量部~1質量部であることが更に好ましく、0.1質量部~0.5質量部であることが特に好ましい。
本開示の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.05質量部以上であると、貼り合わせ初期における軽剥離性が経時でより損なわれ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
本開示の粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して10質量部以下であると、加温後に、より高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0157】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比〔即ち、架橋剤中の架橋性官能基のモル数/特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数〕は、特に限定されないが、例えば、0.001~0.1であることが好ましく、0.001~0.08であることがより好ましく、0.001~0.05であることが更に好ましく、0.001~0.03であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比が0.001以上であると、貼り合わせ初期に、より良好な軽剥離性を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。また、特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比が0.001以上であると、貼り合わせ初期における軽剥離性が経時でより損なわれ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比が0.1以下であると、加温後に、より高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0158】
本開示において、「架橋剤中の架橋性官能基」とは、架橋剤が有する官能基であって、特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基と架橋反応可能な基を意味し、例えば、架橋剤がイソシアネート系架橋剤である場合には、イソシアネート基を意味し、架橋剤がエポキシ架橋剤である場合には、エポキシ基を意味する。
【0159】
本開示において、架橋性官能基のモル数は、架橋性官能基が複数ある場合には、全ての架橋性官能基の合計モル数を意味する。
【0160】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比〔即ち、架橋剤中の架橋性官能基のモル数/特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数〕は、以下の計算式(1)~(3)により求められる。
【0161】
架橋剤中の架橋性官能基のモル数〔単位:mmol〕
=[架橋剤中の架橋性官能基の含有率(単位:質量%)/架橋剤の固形分濃度(単位:質量%)×架橋剤の配合量〔固形分としての量〕(単位:g)]/架橋性官能基の化学式量(単位:g/mol)×1000・・・(1)
【0162】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数〔単位:mmol〕
=[特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/100×特定(メタ)アクリル系重合体(A)の配合量(単位:g)/架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位中の架橋性官能基の個数(価数)×1000]・・・(2)
【0163】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比
=計算式(1)により求めた値/計算式(2)により求めた値・・・(3)
【0164】
なお、架橋剤が金属キレート系架橋剤である場合には、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる架橋性官能基は、金属キレート系架橋剤である金属キレート化合物における中心金属と配位結合することから、中心金属の価数を官能基の数と置き換えることで、特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比の計算に用いる架橋剤中の架橋性官能基のモル数を求めることができる。
例えば、金属キレート系架橋剤であるアルミニウムキレート化合物における中心金属の価数は、3であることから、アルミニウムキレート化合物については、1モル当たり3モルの官能基を有するものと置き換えて計算することができる。
【0165】
架橋剤が金属キレート系架橋剤である場合の架橋剤中の架橋性官能基のモル数は、以下の計算式(4)により求められる。架橋剤が金属キレート系架橋剤である場合には、上記式(3)において、計算式(1)により求めた値を、以下の計算式(4)より求めた値に置き換えることで、特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比を求めることができる。
架橋剤中の架橋性官能基のモル数〔単位:mmol〕
=A×B/C×1000・・・(4)
A=金属キレート系架橋剤の金属の価数
B=金属キレート系架橋剤の配合量〔固形分としての量〕(単位:g)
C=金属キレート系架橋剤の分子量(単位:g/mol)
【0166】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗布性が向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0167】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0168】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0169】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系重合体以外の重合体、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0170】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0171】
<架橋後のゲル分率>
本開示の粘着剤組成物の架橋後のゲル分率(所謂、粘着剤層のゲル分率)は、特に限定されないが、例えば、50質量%以上であることが好ましく、50質量%~90質量%であることがより好ましく、50質量%~85質量%であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物は、架橋後のゲル分率が50質量%以上であると、貼り合わせ初期に、より良好な軽剥離性を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。また、本開示の粘着剤組成物は、架橋後のゲル分率が50質量%以上であると、貼り合わせ初期における軽剥離性が経時でより損なわれ難い粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0172】
本開示において、「粘着剤組成物の架橋後のゲル分率」とは、酢酸エチルを抽出溶媒に用いて測定される溶媒不溶分の割合を意味する。粘着剤組成物の架橋後のゲル分率は、具体的には、下記の(1)~(4)に従って測定する。
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、架橋後の粘着剤組成物(即ち、粘着剤層)を約0.15g貼付し、ゲル分が漏れないように、貼付した粘着剤層を内側にして、金網を5回折り畳み、試料とする。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mLに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下記の式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(単位:質量%)=(Z-X)/(Y-X)×100
但し、Xは金網の質量(単位:g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(単位:g)、Zは浸漬後乾燥させた、粘着剤層を貼付した金網の質量(単位:g)である。
【0173】
<用途>
本開示の粘着剤組成物の用途は、特に限定されない。
本開示の粘着剤組成物は、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、かつ、加温後は高い粘着力を示す粘着剤層を形成できるため、例えば、光学部材に好適に用いることができる。具体的には、本開示の粘着剤組成物は、ディスプレイと光学部材とを貼り合わせる用途に好適である。
【0174】
[粘着シート]
本開示の粘着シートは、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。
本開示の粘着シートは、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、かつ、加温後は高い粘着力を示す。
本開示の粘着シートの被着体は、特に限定されないが、例えば、ディスプレイ、及び光学部材が好適である。
【0175】
本開示の粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の片面又は両面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートでもよい。
本開示の粘着シートにおいて、露出した粘着剤層の面は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。
【0176】
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤(例えば、シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例えば、パラフィンワックス)、フッ素系剥離処理剤(例えば、フッ素系樹脂)等が挙げられる。
剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0177】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、一般には、1μm~100μmであり、3μm~50μmであることが好ましく、5μm~30μmであることがより好ましい。
【0178】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。
粘着剤層の平均厚さは、以下の方法により測定される値である。
粘着剤層の厚み方向において、無作為に選択した10箇所で測定される粘着剤層の厚さの算術平均値を求め、得られた値を粘着剤層の平均厚さとする。粘着剤層の厚さは、膜厚計を用いて測定される。
【0179】
本開示の粘着シートが基材を備える場合、基材は、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0180】
基材の粘着剤層が設けられる側の面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0181】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0182】
基材の厚さは、特に限定されないが、一般には、10μm~500μmであり、10μm~300μmであることが好ましく、10μm~200μmであることがより好ましく、10μm~100μmであることが更に好ましい。
【0183】
本開示における「基材の厚さ」は、基材の平均厚さを意味する。
基材の平均厚さは、既述の粘着剤層の平均厚さの測定方法に準拠した方法により測定される値である。
【0184】
[粘着シートの作製方法]
本開示の粘着シートの作製方法は、特に限定されない。
本開示の粘着シートは、公知の方法により作製できる。
本開示の粘着シートを作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
無基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、別途、準備した剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、無基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0185】
有基材タイプの粘着シートの場合、まず、本開示の粘着剤組成物を基材の易接着処理面に塗布することにより、基材上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、剥離フィルムの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離フィルム/粘着剤層/基材の積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0186】
別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
本開示の粘着剤組成物を剥離フィルムの易剥離処理面に塗布することにより、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、基材の易接着処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを作製できる。
【0187】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0188】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で30秒間~180秒間乾燥させる条件が挙げられる。
【0189】
養生は、例えば、雰囲気温度20℃~50℃、相対湿度45%~55%(即ち、45%RH~55%RH)の環境下で、2日間~7日間行う。
【0190】
[光学部材]
本開示の光学部材は、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。
本開示の光学部材は、既述の本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、かつ、加温後は高い粘着力を示す。
本開示の光学部材の被着体は、特に限定されないが、例えば、他の光学部材、及びディスプレイが好適である。
【0191】
光学部材としては、特に限定されず、例えば、画像表示装置、入力装置等の機器(所謂、光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられる。
光学部材の具体例としては、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板、1/2、1/4等の波長板を含む位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ITO(Indium-Tin Oxide)フィルム等の透明導電フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板などが挙げられる。
光学部材の材質としては、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、及びポリエステル系樹脂)、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【実施例
【0192】
以下、本開示の粘着剤組成物等を実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0193】
[(メタ)アクリル系重合体Aの製造]
〔製造例A-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置に、酢酸エチル(重合用有機溶剤)116.0質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に、n-ブチルアクリレート(n-BA)93.0質量部及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)7.0質量部からなる単量体混合物100.0質量部を準備した。この準備した単量体混合物のうちの20質量%を反応装置内に仕込んだ後、加熱して、還流温度で10分間還流を行った。次いで、還流温度条件下で、上記単量体混合物の残りの80質量%と、酢酸エチル(重合用有機溶剤)45.0質量部と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.026質量部と、を120分間かけて反応装置内に逐次滴下し、滴下終了後に30分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分濃度が32.0質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液を得た。
【0194】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液に占める、(メタ)アクリル系重合体A-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系重合体A-2~A-6の各溶液についても同様である。
【0195】
〔製造例A-2~A-6〕
製造例A-2~A-6では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を、表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を、表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が32.0質量%である(メタ)アクリル系重合体A-2~A-6の各溶液を得た。
【0196】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6の単量体組成(単位:質量%)、(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6のガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6の重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10」と表記)〕を表1に示す。
【0197】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6のガラス転移温度は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度の計算方法と同様の方法により計算した。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0198】
上記にて得られた(メタ)アクリル系重合体A-1~A-6のうち、(メタ)アクリル系重合体A-1~A-4は、本開示における特定(メタ)アクリル系重合体(A)に相当する。
【0199】
【表1】
【0200】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BA」n-ブチルアクリレート
「MA」メチルアクリレート
「2EHA」2-エチルヘキシルアクリレート
<架橋性官能基を有する単量体>
「2HEA」2-ヒドロキシエチルアクリレート
〔架橋性官能基:水酸基、分子量:116〕
「AA」アクリル酸
〔架橋性官能基:カルボキシ基、分子量:72〕
【0201】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を使用していないことを意味する。
【0202】
[(メタ)アクリル系共重合体Bの製造]
〔製造例B-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置に、酢酸エチル(重合用有機溶剤)45.0質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に、メチルメタクリレート(MMA)45.0質量部、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)25.0質量部、エチルアクリレート(EA;単独重合体としたときのガラス転移温度-27℃)29.0質量部、オルガノシロキサン骨格を有する単量体〔商品名:KF-2012、数平均分子量:5400、信越化学工業(株)製〕1.0質量部、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル〔重合開始剤〕0.4質量部、及び酢酸エチル(重合用有機溶剤)35.0質量部からなる溶液を準備した。この準備した溶液を、還流温度条件下で、180分間かけて反応装置内に逐次滴下し、滴下終了後に180分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分が48.0質量%になるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液を得た。
【0203】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液に占める、(メタ)アクリル系共重合体B-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系共重合体B-2~B-14の各溶液についても同様である。
【0204】
〔製造例B-2~B-14〕
製造例B-2~B-14では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を、表2に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を、表2に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が48.0質量%である(メタ)アクリル系共重合体B-2~B-14の各溶液を得た。
【0205】
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-14の単量体組成(単位:質量%)、(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-14におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量(Mn)、及び(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-14の重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10」と表記)〕を表2に示す。
【0206】
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-14におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量の計算方法と同様の方法により計算した。
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-14の重量平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0207】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-14のうち、(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-7は、本開示における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)に相当する。
【0208】
【表2】
【0209】
表2に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「MMA」:メチルメタクリレート
「n-BMA」:n-ブチルメタクリレート
「EA」:エチルアクリレート
【0210】
<オルガノシロキサン骨格を有する単量体>
「KF-2012」〔商品名、数平均分子量:5400、式(I)で表される化合物、信越化学工業(株)製〕
「X-22-2426」〔商品名、数平均分子量:13800、式(I)で表される化合物、信越化学工業(株)製〕
「FM-0711」〔商品名:サイラプレーン(登録商標) FM-0711、数平均分子量:1200、JNC(株)製〕
【0211】
表2中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を使用していないことを意味する。
【0212】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液100質量部(固形分換算値)と、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液8質量部(固形分換算値)と、側鎖にエポキシ基を有するシリコーン化合物〔商品名:KF-101、25℃における動粘度:1500mm/s、信越化学工業(株)製〕2質量部と、架橋剤〔商品名:タケネート(登録商標) D-110N、キシリレンジイソシアネート(XDI)化合物、固形分濃度:75質量%、三井化学(株)製〕0.4質量部(固形分換算値)と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物における、(メタ)アクリル系重合体A-1中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比〔即ち、架橋剤中の架橋性官能基のモル数/(メタ)アクリル系重合体A-1中の架橋性官能基のモル数〕は、0.025であった。
【0213】
(メタ)アクリル系重合体A-1中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比と同様の方法により計算したものである。具体的には、次のようにして計算した。なお、イソシアネート系架橋剤であるタケネート(登録商標) D-110Nは、固形分が75質量%であり、イソシアネート基の含有率が11.5質量%である。また、イソシアネート基の化学式量は、42である。また、架橋性官能基を有する単量体である2-ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構成単位の分子量は、116である。
【0214】
計算式(1)
架橋剤中の架橋性官能基のモル数〔単位:mmol〕
=架橋剤中の架橋性官能基の含有率(単位:質量%)/架橋剤の固形分濃度(単位:質量%)×架橋剤の配合量〔固形分としての量〕(単位:g)/架橋性官能基の化学式量(単位:g/mol)×1000
=11.5(質量%)/75(質量%)×0.4(g)/42(g/mol)×1000=1.46・・・≒1.5
【0215】
計算式(2)
(メタ)アクリル系重合体A-1中の架橋性官能基のモル数〔単位:mmol〕
=[(メタ)アクリル系重合体A-1中の架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(単位:質量%)/100×(メタ)アクリル系重合体A-1の配合量(単位:g)/架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の分子量(単位:g/mol)×架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位中の架橋性官能基の個数(価数)×1000]
=[7.0(質量%)/100×100(g)/116(g/mol)×1×1000]=60.34・・・≒60.3
【0216】
計算式(3)
(メタ)アクリル系重合体A-1中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比〔即ち、架橋剤中の架橋性官能基のモル数/(メタ)アクリル系重合体A-1中の架橋性官能基のモル数〕
=計算式(1)で求めた値/計算式(2)で求めた値
=1.5/60.3=0.0248・・・≒0.025
【0217】
〔実施例2~19〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~19の各粘着剤組成物を得た。
【0218】
〔比較例1~16〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~16の各粘着剤組成物を得た。
【0219】
実施例1~19及び比較例1~16の粘着剤組成物の組成、及び、(メタ)アクリル系重合体A中の架橋性官能基のモル数に対する架橋剤中の架橋性官能基のモル数の比〔即ち、架橋剤中の架橋性官能基のモル数/(メタ)アクリル系重合体A中の架橋性官能基のモル数〕を表3及び表4に示す。
【0220】
【表3】
【0221】
【表4】
【0222】
表3及び/又は表4に記載の架橋剤の詳細は、以下に示すとおりである。
「XDI」〔商品名:タケネート(登録商標) D-110N、キシリレンジイソシアネート化合物(キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体)、イソシアネート基の含有率:11.5質量%、固形分濃度:75質量%、三井化学(株)製〕
「TDI」〔商品名:コロネート(登録商標) L-45E、トリレンジイソシアネート化合物(トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体)、イソシアネート基の含有率:7.9質量%、固形分濃度:45質量%、東ソー(株)製〕
「HMDI」〔商品名:スミジュール(登録商標) N75、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のビウレット体)、イソシアネート基の含有率:16.5質量%、固形分濃度:75質量%、住化コベストロウレタン(株)製〕
「アルミキレート」〔川研ファインケミカル(株)製のアルミキレートA(商品名、化学名:アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、分子量:324)をアセチルアセトン及び酢酸エチルを用いて希釈したアルミキレートAの希釈物、固形分濃度:3.24質量%〕
上記「タケネート」、「コロネート」、及び「スミジュール」は、いずれも登録商標である。
【0223】
表3及び/又は表4に記載のシリコーン化合物の詳細は、以下に示すとおりである。
<側鎖にエポキシ基を有するシリコーン化合物>
「KF-101」〔商品名、25℃における動粘度:1500mm/s、信越化学工業(株)製、特定シリコーン化合物(C)〕
「X-22-343」〔商品名、25℃における動粘度:25mm/s、信越化学工業(株)製、特定シリコーン化合物(C)〕
<側鎖にポリエーテル基を有するシリコーン化合物>
「FZ-2110」〔商品名:DOWSIL(登録商標) FZ-2110、25℃における動粘度:130mm/s、ダウ・東レ(株)製、特定シリコーン化合物(C)〕
<側鎖にエポキシ基及びポリエーテル基を有するシリコーン化合物>
「BY16-760」〔商品名:DOWSIL(登録商標) BY 16-760、25℃における動粘度:1500mm/s、ダウ・東レ(株)製、特定シリコーン化合物(C)〕
「BY16-876」〔商品名:DOWSIL(登録商標) BY 16-876、25℃における動粘度:2400mm/s、ダウ・東レ(株)製〕
<側鎖にアミノ基を有するシリコーン化合物>
「SF8417」〔商品名:DOWSIL(登録商標) SF 8417、25℃における動粘度:1200mm/s、ダウ・東レ(株)製〕
【0224】
表3及び表4中、(メタ)アクリル系重合体A、(メタ)アクリル系共重合体B、及び架橋剤の「配合量」の欄に記載の数値は、いずれも固形分換算値である。
表3及び表4中、シリコーン化合物の「配合量」の欄に記載の数値は、有効成分換算値である。
表4中、「-」は、その欄に該当する成分を配合していないことを意味する。
【0225】
[評価用粘着シートの作製]
上記にて調製した粘着剤組成物を、易接着処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、型番:G2P2、厚さ:50μm、帝人フィルムソリューション(株)製〕の易接着処理面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃、乾燥時間1分間の乾燥条件で乾燥させ、PETフィルム上に粘着膜を形成した。次いで、粘着膜が露出した面を、別途準備したシリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置し、養生を行い、評価用粘着シートを作製した。作製した評価用粘着シートは、剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルムの積層構造を有する。
【0226】
[測定及び評価]
1.ゲル分率
上記にて調製した粘着剤組成物を用いて、架橋後のゲル分率(即ち、粘着剤層のゲル分率)を測定した。具体的には、以下の方法により測定した。
シリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の剥離処理面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃、乾燥時間1分間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルム上に粘着膜を形成した。次いで、粘着膜の露出した面を、別途準備したシリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010 No.23、厚さ:100μm、藤森工業(株)製〕の剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置し、養生を行い、無基材タイプの粘着シートを作製した。作製した粘着シートは、剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する。
【0227】
得られた粘着シートから剥離した粘着剤層を用いて、下記の(1)~(4)に従い、ゲル分率を測定した。結果を表5及び表6に示す。
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、粘着剤層を約0.15g貼付し、ゲル分が漏れないように、貼付した粘着剤層を内側にして、金網を5回折り畳み、試料とする。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mLに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(単位:質量%)=(Z-X)/(Y-X)×100
但し、Xは金網の質量(単位:g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(単位:g)、Zは浸漬後乾燥させた、粘着剤層を貼付した金網の質量(単位:g)である。
【0228】
2.初期の粘着力
上記にて作製した評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。準備した評価用粘着シート片(構成:剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルム)から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ステンレス(所謂、SUS)板に貼り合わせたポリイミド(PI)シート〔商品名:カプトン(登録商標) 100H、東レ・デュポン(株)製〕(以下、単に「PI」と称する。)の面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片X-1を作製した。作製した試験片X-1を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に30分間静置した。静置後の試験片X-1について、PIから評価用粘着シート片(構成:粘着剤層/PETフィルム)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表5及び表6に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、貼り合わせ初期に軽剥離性を示す粘着剤層であると判断した。
【0229】
-評価基準-
A:粘着力が0.01N/25mm以上0.40N/25mm未満である。
B:粘着力が0.40N/25mm以上1.00N/25mm未満である。
C:粘着力が1.00N/25mm以上である。
【0230】
3.経時後の粘着力
上記にて作製した評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。準備した評価用粘着シート片(構成:剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルム)から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、SUS板に貼り合わせたPIの面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片X-2を作製した。作製した試験片X-2を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置した。静置後の試験片X-2について、PIから評価用粘着シート片(構成:粘着剤層/PETフィルム)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表5及び表6に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、貼り合わせ初期の軽剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層であると判断した。
【0231】
-評価基準-
A:粘着力が0.01N/25mm以上0.75N/25mm未満である。
B:粘着力が0.75N/25mm以上1.00N/25mm未満である。
C:粘着力が1.00N/25mm以上である。
【0232】
4.加温後の粘着力
上記にて作製した評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。準備した評価用粘着シート片(構成:剥離フィルム/粘着剤層/PETフィルム)から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、SUS板に貼り合わせたPIの面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片X-3を作製した。作製した試験片X-3を、50℃の温度に設定した乾燥機内に20分間静置した後、乾燥機内から取り出し、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に30分間静置した。静置後の試験片X-3について、PIから評価用粘着シート片(構成:粘着剤層/PETフィルム)を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、評価を行った。結果を表5及び表6に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、加温後に高い粘着力を示す粘着剤層であると判断した。
【0233】
-評価基準-
A:粘着力が9.00N/25mm以上である。
B:粘着力が7.00N/25mm以上9.00N/25mm未満である。
C:粘着力が7.00N/25mm未満である。
【0234】
【表5】
【0235】
【表6】
【0236】
表5に示すように、実施例1~19の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、この軽剥離性が経時で損なわれ難く、加温後は高い粘着力を示すことが確認された。
【0237】
一方、表6に示すように、比較例1~16の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、貼り合わせ初期の軽剥離性、貼り合わせ経時での軽剥離性、及び加温後の粘着力の少なくとも1つの評価において、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層よりも劣る結果を示すことが確認された。