(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10H 20/856 20250101AFI20250130BHJP
H10H 20/851 20250101ALI20250130BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2021025975
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 憲
(72)【発明者】
【氏名】梁 吉鎬
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283281(JP,A)
【文献】特開2015-220307(JP,A)
【文献】特開2014-135400(JP,A)
【文献】特開2017-108091(JP,A)
【文献】特開2012-059939(JP,A)
【文献】特開2020-202341(JP,A)
【文献】特開2018-125509(JP,A)
【文献】特開2013-062500(JP,A)
【文献】特開2016-224105(JP,A)
【文献】特開2013-239536(JP,A)
【文献】特開平11-192696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0239325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面上に配され、前記基板の周囲に沿って伸長する枠体と、
前記基板上に配された支持基板及び前記支持基板の上面に形成された半導体発光層を有する発光素子と、
前記発光素子の上面上に配された波長変換体と、
前記発光素子及び前記波長変換体の側面を覆いかつ光反射性の粒状フィラーを含む透光性樹脂からなる光反射部と、を有し、
前記光反射部は、前記光反射部の上面に沿って延在する第1の領域と、前記第1の領域の下に配されかつ前記第1の領域よりも前記粒状フィラーの含有率の低い第2の領域と、前記第2の領域の下に配されかつ前記第2の領域よりも前記粒状フィラーの含有率の低い第3の領域と、を含
み、
前記第2の領域の前記粒状フィラーの含有率は、上方に向かって漸次増加しており、前記第3の領域の前記粒状フィラーの含有率は、前記第2の領域の前記粒状フィラーの含有率より低い所定の含有率であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1の領域は、薄膜状の前記透光性樹脂に覆われた前記粒状フィラーが凝集状態となっていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1の領域の前記粒状フィラーの含有率は、70質量パーセント以上であることを特徴とする請求項1
または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1の領域は、空気との屈折率差が0.5以上であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の領域の上面は、表面粗さがRa<1.0um以下であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1の領域は、下向きに凸の下面形状を有していることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記粒状フィラーは、二酸化チタンからなり、
前記透光性樹脂は、シリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記波長変換体は、前記半導体発光層の上面全体を覆う底面と前記底面よりも小さい上面とを有し、前記底面から前記上面に向かうに従って前記基板に平行な方向の幅が小さくなる側面形状を有することを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
発光装置の製造方法であって、
上面上に配されかつ周囲に沿って上方に伸長する枠体を備えた基板を準備する基板準備工程と、
支持基板及び前記支持基板の上面に形成された半導体発光層を有する発光素子を前記基板上に接合する素子接合工程と、
波長変換体を前記発光素子の上面上に接合する波長変換体接合工程と、
光反射性の粒状フィラーを含む透光性樹脂前駆体からなる原料樹脂を前記発光素子及び前記波長変換体の側面を覆うように前記枠体内に注入して充填する原料樹脂充填工程と、
前記原料樹脂の上方から前記粒状フィラーと同一の材料からなる粒状体を散布して前記原料樹脂上に前記粒状体を堆積させ、当該堆積された粒状体間に前記透光性樹脂前駆体を含浸させるフィラー堆積工程と、
前記フィラー堆積工程の後に、前記堆積された粒状体に流体を吹き付けることで、表面の前記粒状体の一部を除去する余剰フィラー除去工程と、
前記透光性樹脂前駆体を硬化させて光反射部とする樹脂硬化工程と、を含み、
前記光反射部は、前記光反射部の上面に沿って延在する第1の領域と、前記第1の領域の下に配されかつ前記第1の領域よりも前記粒状フィラーの含有率の低い第2の領域と、前記第2の領域の下に配されかつ前記第2の領域よりも前記粒状フィラーの含有率の低い第3の領域と、を含
み、
前記第2の領域の前記粒状フィラーの含有率は、上方に向かって漸次増加しており、前記第3の領域の前記粒状フィラーの含有率は、前記第2の領域の前記粒状フィラーの含有率より低い所定の含有率であることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記フィラー堆積工程において、前記原料樹脂の上方から前記粒状体をスプレー塗布して前記粒状体を堆積させることを特徴とする請求項
9に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記フィラー堆積工程において、前記原料樹脂の上方から前記粒状体をふるいを用いて散布して前記粒状体を堆積させることを特徴とする請求項
9に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を含む発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、端子及び配線などの導電パターンが設けられた基板と、当該基板上に実装された半導体発光層を有する発光素子と、発光素子から放出された光の波長を変換する波長変換体と、を含む発光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発光素子と、発光素子の上面に接着された透光性部材と、当該透光性部材の上面を露出させるように発光素子の側面及び透光性部材の側面を覆うように形成された酸化チタン等の反射性物質を含有する樹脂からなる第1及び第2の光反射性部材と、を有する発光装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような発光素子においては、光反射性部材の遮光性を高め、光反射性部材から外に光が漏れないことが好ましい。しかし、光反射性部材の遮光性を高めるために反射性粒子の濃度を高くしようとすると、当該光反射性部材の材料の流動性が下がることで製造がしにくくなる、又は、出来上がった光反射性部材にクラックが入りやすくなることで信頼性が損なわれる恐れがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、製造容易性及び信頼性を担保しつつ意図しない部分からの光漏れを低減することが可能な発光装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置は、基板と、前記基板の上面上に配され、前記基板の周囲に沿って伸長する枠体と、前記基板上に配された支持基板及び前記支持基板の上面に形成された半導体発光層を有する発光素子と、前記発光素子の上面上に配された波長変換体と、前記発光素子及び前記波長変換体の側面を覆いかつ光反射性の粒状フィラーを含む透光性樹脂からなる光反射部と、を有し、前記光反射部は、前記光反射部の上面に沿って延在する第1の領域と、前記第1の領域の下に配されかつ前記第1の領域よりも前記粒状フィラーの含有率の低い第2の領域と、前記第2の領域の下に配されかつ前記第2の領域よりも前記粒状フィラーの含有率の低い第3の領域と、を含むことを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る発光装置の製造方法は、上面上に配されかつ周囲に沿って上方に伸長する枠体を備えた基板を準備する基板準備工程と、支持基板及び前記支持基板の上面に形成された半導体発光層を有する発光素子を前記基板上に接合する素子接合工程と、波長変換体を前記発光素子の上面上に接合する波長変換体接合工程と、光反射性の粒状フィラーを含む透光性樹脂前駆体からなる原料樹脂を前記発光素子及び前記波長変換体の側面を覆うように前記枠体内に注入して充填する原料樹脂充填工程と、前記原料樹脂の上方から前記粒状フィラーと同一の材料からなる粒状体を散布して前記原料樹脂上に前記粒状体を堆積させ、当該堆積された粒状体間に前記透光性樹脂前駆体を含浸させるフィラー堆積工程と、前記堆積された粒状体に流体を吹き付けることで、表面の前記粒状体の一部を除去する余剰フィラー除去工程と、前記透光性樹脂前駆体を硬化させる樹脂硬化工程と、を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例に係る発光装置の上面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る発光装置の断面図である。
【
図4】本発明の実施例に係る発光装置の製造フローを示す図である。
【
図5】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
【
図6】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
【
図7】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
【
図8】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
【
図9】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
【
図10】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
【
図11】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
【
図12】本発明の実施例に係る発光装置の製造時の断面図である。
【
図13】本発明の変形例に係る発光装置の上面図である。
【
図14】本発明の変形例に係る発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0011】
図1及び
図2を参照しつつ、実施例に係る発光装置10の構成について説明する。
【0012】
図1は、実施例に係る発光装置10の上面図である。また、
図2は、
図1に示した発光装置10のCS1-CS1線に沿った断面図である。なお、
図1においては、発光装置10の光反射部50の内側の構造を図示するため、その図示を省略している。
【0013】
発光装置10は、基板11と、基板11の上面の外周部に設けられた枠体13を有する。また、発光装置10は、基板11の上面上に配された発光素子20と、発光素子20の上面上に配された波長変換体30と、を有する。また、発光装置10は、基板11上面と枠体13内部に充填されかつ発光素子20及び波長変換体30の側面を覆うように形成された光反射部50を有する。
【0014】
基板11は、例えば、絶縁性を有する基材からなる平板形状を有する基板である。基板11は、例えば、高い熱伝導性を有する窒化アルミニウム(AlN)等の基材からなる。また、基板11は、上面上に互いに離間するように形成された第1の配線電極15及び第2の配線電極17を有する。第1の配線電極15及び第2の配線電極17は、金属からなる電極であり、例えば、基板11上にパターニングされて形成された銅(Cu)を主部材とした金属膜からなる。また、第1の配線電極15は、その上面上に発光素子20が載置される素子載置部として機能する。また、基板11は、上面視において、第1の配線電極15及び第2の配線電極17の各々の形成領域に上面と下面との間を貫通する図示しない貫通孔を有している。また、貫通孔の内部には、例えば、Cuを主部材とした柱状の貫通電極が形成されている。第1の配線電極15及び第2の配線電極17の各々は、貫通電極を介して、それぞれ基板11の下面に形成された図示しないアノード及びカソードとしてそれぞれ機能する実装電極に接続されている。すなわち、基板11は、第1の配線電極15及び第2の配線電極17が形成されている基板11の上面が素子載置面として機能し、基板11の下面が実装基板への実装面として機能する。
【0015】
なお、本実施例においては、基板11がAlNを基材とする場合について説明するが、基板11の基材はこれに限定されない。例えば、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物、窒化ケイ素等の金属窒化物からなるセラミック等の材料から形成されていてもよい。また、例えば、金属又は合金等の表面及び貫通孔内壁に絶縁膜を形成したものを基材としてもよい。
【0016】
枠体13は、基板11の上面の外周部に設けられ、第1の配線電極15及び第2の配線電極17を囲繞するように形成された上面形状が環状の枠体である。枠体13は、例えば、基板11と同一材料であるAlNからなる。基板11は、枠体13を設けることによって上方に向かって開口した凹形状のキャビティを形成する。下記に示す発光装置10の各構成要素は、当該キャビティ内に配される。なお、枠体13は、樹脂等の接着剤を用いて基板11の上面上に接合されていてもよいし、基板11と枠体13とが一体的に形成されていてもよい。
【0017】
言い換えれば、発光装置10は、基板11と、基板11の上面上に配され、基板11の周囲に沿って伸長する枠体13と、を有する。
【0018】
発光素子20は、基板11の第1の配線電極15上に載置された、例えば、シリコン等の導電性の半導体を主材料とする支持基板21上に積層された発光部を含む半導体層22を有する半導体発光素子である。半導体層22は、例えば、p型半導体層、発光層及びn型半導体層を積層させた構造からなる。また、n型半導体層の上面は、半導体層22の上面であり、発光素子20における光取り出し面として機能する。本実施例においては、p型半導体層、発光層及びn型半導体層は、例えば、窒化ガリウム(GaN)等を主材料とする窒化物半導体であり、多重量子井戸構造を有する発光層から青色の光を放射する青色発光ダイオード(LED)である。言い換えれば、発光装置10は、基板11上に配された支持基板21及び支持基板21の上面に形成された半導体層22を有する発光素子20を有する。
【0019】
支持基板21と半導体層22との間には、光反射層22Eが形成されている。当該光反射層22Eは、半導体層22の発光層から放射された光や波長変換体30からの戻り光を反射することにより、半導体層22の上面である光取り出し面からの光取り出し効率を向上させることが可能となる。
【0020】
また、半導体層22の上面には、図示しない約2~3μmの凹凸からなるマイクロコーンが形成されている。当該マイクロコーンを形成することによって半導体層22からの光取り出し効率を向上させることが可能となる。
【0021】
また、発光素子20の支持基板21は、半導体層22のn型半導体層と電気的に接続されており、発光素子20の下面がカソード電極として機能する。発光素子20の下面であるカソード電極は、図示しない導電性の素子接合層を介して基板11の第1の配線電極15と電気的に接続されている。
【0022】
また、発光素子20は、支持基板21上に半導体層22と離間して形成された電極パッド23を有する。電極パッド23は、半導体層22のp型半導体層と電気的に接続されており、発光素子20のアノード電極として機能する。電極パッド23は、例えば、金(Au)からなる導電性のボンディングワイヤBWを介して基板11の第2の配線電極17と電気的に接続されている。
【0023】
波長変換体30は、発光素子20の半導体層22上に接着樹脂40を介して配されている。また、波長変換体30は、上面視において、半導体層22の上面形状よりも大きい外形形状を有しかつ半導体層22の上面を覆うように配置されている。本実施例においては、上面視における半導体層22の中心点と波長変換体30の中心点が一致する位置に当該波長変換体30が配されている。波長変換体30は、発光素子20の各々からの放出光に対して波長変換を行う。言い換えれば、発光装置10は、発光素子20の上面上に配された波長変換体30を有する。
【0024】
波長変換体30は、例えば、セリウム(Ce)をドープしたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Y3Al5O12)を主材料とする蛍光体粒子と、発光素子20の放射光及び蛍光体粒子の放射光を透光するガラス又はアルミナ等のセラミックのバインダとを含む板状の部材を含む。本実施例においては、波長変換体30は、YAG蛍光体を混合したアルミナを焼結して形成された蛍光体プレートからなる。また、本実施例1においては、波長変換体30は、発光素子20が放射する青色の光の一部の波長変換を行い、白色の光を放射する波長変換体である。
【0025】
波長変換体30は、
図2に示すように、下面の側から、幅広の第1の部分31、第2の部分32、第3の部分33を一体的に備えた形状を有する。第1の部分31は、半導体層22の上面と対向する下面を有しかつ上方に向かって延伸し、柱状に形成されている。第2の部分32は、第1の部分31の上面端から上方に向かって窄むような傾斜側面を有する錐台形状に形成されている。第3の部分33は、第2の部分32の上面から上方に向かって延伸し、波長変換体30の上面としての上面30Tを有し、柱状に形成されている。言い換えれば、波長変換体30は、半導体層22の上面全体を覆う底面と底面よりも小さい上面30Tとを有し、底面から上面30Tに向かうに従って基板11に平行な方向の幅が小さくなる側面形状を有する。
【0026】
波長変換体30は、発光素子20の半導体層22が放射する光を透過する接着樹脂40を介して、下面が半導体層22の上面上に接合される。また、上面30Tが発光装置10の外部に露出するように面する。すなわち、波長変換体30は、その下面が発光素子20によって放出された光を接着樹脂40を介して受光する受光面として機能し、上面30Tが発光装置10の光取り出し面として機能する。
【0027】
波長変換体30が上記のように、光取り出し面である上面が光入射面である下面よりも小さいサイズで形成される。これにより、波長変換体30は、波長変換体30の下面から入射した光を上面30Tに集光することができ、高輝度な光を出射させることが可能となる。
【0028】
接着樹脂層としての接着樹脂40は、発光素子20から放射される光及び波長変換体30から放射される光を透過する透光性の樹脂材料からなる接着剤である。接着樹脂40は、例えば、シリコーン系樹脂からなる熱硬化性の樹脂である。
【0029】
接着樹脂40は、半導体層22の上面と波長変換体30の第1の部分31の下面の間に所定の厚さで形成されかつ、半導体層22の上面並びに側面及び波長変換体30の底面の各々の面を覆うように形成されている。また、接着樹脂40は、半導体層22及び波長変換体30の各々と接着することにより、発光素子20と波長変換体30とを固着させている。
【0030】
光反射部50は、基板11と枠体13とで形成されたキャビティ内部に、発光素子20を封止しかつ波長変換体30の側面を覆うように形成されている。光反射部50は、発光素子20から放出される光及び波長変換体30から出射される光に対して反射性を有する被覆部材である。また、光反射部50は、波長変換体30の上面30Tの端部から枠体13の上面の端部に亘る上面50Tを有する。すなわち、光反射部50は、波長変換体30の光取り出し面である上面30Tを露出するようにキャビティ内に充填されている。
【0031】
光反射部50は、例えば、光散乱性の粒状フィラーPを含有する透光性樹脂REからなる白色樹脂として構成される。粒状フィラーPは、例えば、二酸化チタン(TiO2)粒子等の光散乱性を有する粒子である。また、透光性樹脂REは、例えば、シリコーン樹脂等の熱硬化性の透光性を有する樹脂である。言い換えれば、発光装置10は、発光素子20及び波長変換体30の側面を覆いかつ光反射性の粒状フィラーPを含む透光性樹脂REからなる光反射部50を有する。また、粒状フィラーPは、二酸化チタンからなり、透光性樹脂REは、シリコーン樹脂からなる。
【0032】
粒状フィラーPは、例えば、平均粒径0.25μmの粒度分布を有するTiO2粒子である。粒状フィラーPの平均粒径を0.25μmとすることにより、青色の光(例えば、波長450nm)、緑色の光(例えば、波長555nm)及び赤色の光(例えば、波長600nm)の各々の光を効率的に散乱させることが可能となる。なお、粒状フィラーPは、粒度分布0.1μm~0.4μmの範囲で分布するものを用いることが好ましい。
【0033】
図3を用いて、光反射部50について詳細に説明する。
【0034】
図3は、
図2の一点破線領域Aで示した光反射部50の断面拡大図である。
【0035】
光反射部50は、上面に沿って延在している第1の領域としての第1の光反射層51、及び第1の光反射層51の下に配され、第1の光反射層51よりも粒状フィラーPの含有率の低い第2の光反射層52を含む。
【0036】
第1の領域としての第1の光反射層51は、薄膜状の透光性樹脂REに覆われた粒状フィラーPが凝集するように形成されている。また、第2の光反射層52は、透光性樹脂REに粒状フィラーPが分散されるように形成されている。また、第2の光反射層52は、下方の側(基板11上面側)に配された第3の領域としての低濃度層52A及び上方の境界面BSに沿って配された第2の領域としての遷移層52Bで構成されている。言い換えれば、第1の光反射層51は、薄膜状の透光性樹脂REに覆われた粒状フィラーPが凝集状態となっている。
【0037】
また、遷移層52Bの上面(第2の光反射層52の上面)である境界面BSは、波長変換体30の上面30Tの端部から枠体13の上面の端部に亘りかつ、凹状の面形状を有するように形成されている。また、第1の光反射層51は、第2の光反射層52の上面上に境界面BSの凹状の表面形状を均すような上面50Tを有するように形成されている。言い換えれば、第1の光反射層51は、下向きに凸の下面形状を有している。なお、境界面BSの凹状の表面形状において、当該凹部の波長変換体30の上面30T及び枠体13の上面からの最大深さは約50~100μmで形成されている。すなわち、第1の光反射層51は、最大厚みが約50~100μmで形成されている。また、第1の光反射層51の上面である上面50Tは、平坦であることが好ましい。上面50Tが平坦、つまり表面積が小さいことにより、光漏れを低減することができる。本実施例においては、第1の光反射層51の上面50Tの表面粗さは、Ra<1.0μm以下である。
【0038】
第2の光反射層52は、下方の側(基板11上面側)に配された第3の領域としての低濃度層52A及び上方の境界面BSに沿って配された第2の領域としての遷移層52Bで構成されている。
【0039】
第3の領域としての低濃度層52Aは、例えば、透光性樹脂REに粒状フィラーPが所定の濃度で分散された白色樹脂である。低濃度層52Aは、例えば、粒状フィラーPが透光性樹脂REに20~60wt%のフィラー濃度で分散され、第2の光反射層52の下方の側に形成されている。
【0040】
第2の領域としての遷移層52Bは、第2の光反射層52の境界面BS近傍に、フィラー濃度が境界面BSに向かって低濃度層52Aのフィラー濃度から漸次増加するように形成されている。言い換えれば、第2の光反射層52の粒状フィラーPの含有率は、上方に向かって漸次増加している。
【0041】
すなわち、光反射部50は、上面の側から順に、上面に沿って延在しかつ粒状フィラーPが凝集するように形成されている第1の領域としての第1の光反射層51と、第1の光反射層の下層に配されかつ第1の光反射層51との境界面BSに向かってフィラー濃度から漸次増加するように形成されている第2の領域としての遷移層52Bと、遷移層52Bの下層に配されかつ遷移層52Bよりもフィラー濃度が低い第3の領域としての低濃度層52Aからなる。言い換えれば、光反射部50は、光反射部50の上面に沿って延在する第1の領域としての第1の光反射層51と、第1の光反射層51の下に配され、かつ第1の光反射層51よりも粒状フィラーの含有率の低い第2の領域としての遷移層52Bと、遷移層52Bの下に配されかつ遷移層52Bよりも粒状フィラーの含有率の低い第3の領域としての低濃度層52Aと、を含む。
【0042】
後述の製造方法において、粒状フィラーPを分散させた液状の透光性樹脂REの前駆体を含む原料樹脂を、基板11及び枠体13からなるキャビティ内に充填する。この時、原料樹脂は、表面張力によって波長変換体30の側面上端(上面端部)及び枠体13の内側面上端(上面端部)まで這い上がり、メニスカスによって境界面BSと同様の形状の上面を形成する。
【0043】
原料樹脂を充填後、原料樹脂を加熱硬化させる前に上方から粒状フィラーPのみを散布して当該原料樹脂の上面上に粒状フィラーPを堆積させた堆積部を形成する。原料樹脂に含まれる透光性樹脂REの前駆体は、表面張力による毛細管現象が生じ、堆積部に引き込まれる。また、堆積部に引き込まれた前駆体は、堆積部の粒状フィラーPの各々の粒子間に含浸する。これにより、堆積部の粒状フィラーPは、薄膜状の透光性樹脂REの前駆体によって覆われる。なお、この時散布する粒状フィラーPは、原料樹脂に含まれる粒状フィラーPと同一のものであり、例えば、平均粒径0.25μmの粒度分布を有するTiO2粒子である。
【0044】
また、原料樹脂の透光性樹脂REの前駆体の含浸時、原料樹脂の境界面BS近傍においては、前駆体が堆積部に含浸しつつ移動する。この時、前駆体の移動に伴って粒状フィラーPも境界面BSへ向かって移動するが、粒状フィラーPは堆積部に含浸しない。よって、当該原料樹脂内の前駆体の移動領域においては、原料樹脂内の粒状フィラーPが原料樹脂の上面(境界面BS位置相当)近傍に集まりかつ、原料樹脂の上面に近いほど多く集まる。これにより、原料樹脂の前駆体が移動する領域においては、境界面BSに沿ってかつ上方に向かって粒状フィラーPの濃度が漸次増加する領域が形成される。
【0045】
これを加熱し、前駆体を透光性樹脂REに熱硬化させる。これにより、原料樹脂においては、透光性樹脂REに粒状フィラーPが所定の濃度で分散された低濃度層52A及び境界面BSに沿ってかつフィラー濃度が上方に向かって漸次増加するように形成された遷移層52Bを含む第2の光反射層52が形成される。また、堆積部においては、薄膜状の透光性樹脂REに覆われた粒状フィラーPが凝集するように形成された第1の光反射層51が形成される。なお、遷移層52Bにおいては、原料樹脂硬化後の発光装置10にて、運用上クラックの発生しない濃度となるように原料樹脂のフィラー濃度を調整することが好ましい。
【0046】
また、上述の通り、堆積部は、原料樹脂の透光性樹脂REの前駆体が含浸するものである。よって、加熱硬化後の第1の光反射層51及び第2の光反射層52の透光性樹脂REは、連続して一体的に形成されたものである。すなわち、境界面BSは、透光性樹脂REの接合界面(例えば、シリコーン樹脂の架橋構造が途切れる界面)ではなく、粒状フィラーPの濃度差が表れる濃度境界面である。
【0047】
第1の光反射層51は、上述の通り、薄膜状の透光性樹脂REに覆われた粒状フィラーPが凝集するように形成されている。すなわち、第1の光反射層51は、非常に濃度の高いフィラー濃度を有する層である。従って、第1の光反射層51は、非常に高い屈折率を有する層である。
【0048】
これにより、例えば、波長変換体30の側面から第2の光反射層52に入射したLM1のような光は、第1の光反射層51の凝集した粒状フィラーPの表面により、下方へ反射又は散乱される。また、例えば、第2の光反射層52から第1の光反射層51に入射し、第1の光反射層51の上面50Tに達したLM2のような光は、第1の光反射層51と発光装置10の外部の空気との屈折率差により、界面である第1の光反射層51の上面50Tで全反射される。
【0049】
なお、第1の光反射層51と発光装置10の外部の空気との屈折率差は、Δn>0.5以上、より好ましくはΔn>1.0以上である。発明者らの検証によれば、第1の光反射層51のフィラー濃度を70wt%以上とすることにより、十分な光漏れの低減性能を有することが確認された。具体的には、本実施例の発光装置10は、波長変換体30の上面30Tから0.2mm外方の点において、従来品である第1の光反射層51を形成せずかつ遷移層52Bも形成されない発光装置と比較して、漏れ光の相対輝度を約75%低減する結果が得られた。言い換えれば、第1の光反射層51の粒状フィラーPの含有率は、70質量パーセント以上である。また、第1の光反射層51は、空気との屈折率差が0.5以上である。
【0050】
従って、発光装置10は、光反射部50において、上面に亘って延在するフィラー濃度が70wt%以上かつ空気との屈折率差がΔn>0.5以上の第1の光反射層51を有する。これにより、発光装置10は、意図しない部分である、光反射部50の上面50Tからの光漏れを低減することが可能となる。言い換えれば、光反射部50においては、第1の光反射層51が光散乱性の粒状フィラーPが凝集状態となっていることにより、光反射部50の遮光性を高め、当該光反射部50から発光装置10の外部に光を漏れにくくすることが可能となる。
【0051】
また、第2の光反射層52は、境界面BSに向かってフィラー濃度が漸次増加する遷移層52Bが形成されている。従って、遷移層52Bは、境界面BSに向かって屈折率が漸次増加する。すなわち、第1の光反射層51及び第2の光反射層52は、境界面BSにおいて、第1の光反射層51と空気との屈折率差よりも小さい屈折率差である。加えて、第1の光反射層51及び第2の光反射層52の透光性樹脂REは、連続して一体的に形成されている。
【0052】
これにより、LM2のように、第1の光反射層51に入射した光は、第1の光反射層51内で多重反射されず、戻り光として再度第2の光反射層52に再入射しやすい。
【0053】
LM1の境界面BSで反射された光、及び第1の光反射層51から戻り光として第2の光反射層52に再入射した光は、再度波長変換体30に入射する可能性が高まる。波長変換体30の側面から再度入射された光が波長変換体30の上面30Tから出射されることで発光装置10の発光効率を向上させることが可能となる。
【0054】
すなわち、発光装置10は、境界面BSに向かってフィラー濃度が漸次増加する遷移層52Bが形成されている。これにより、発光装置10は、意図しない部分である、光反射部50の上面50Tからの光漏れを低減しかつ発光効率を向上することが可能となる。
【0055】
なお、通常、透光性樹脂REが含有する粒状フィラーPのフィラー濃度が高くなると、原料樹脂の流動性が乏しくなり、例えば、キャビティ内全体に原料樹脂が行き渡らずキャビティ内への充填が不十分となり空孔が発生する未充填等の問題が生じる。
【0056】
本実施例においては、十分な流動性を有するフィラー濃度の原料樹脂をキャビティ内に充填した後、当該原料樹脂の上面上に粒状フィラーPを散布することで光反射部の形成を行う。よって、発光装置10の製造時において、フィラー濃度の高い第1の光反射層51を形成しても、原料樹脂のキャビティ内への未充填等の問題は発生しない。従って、発光装置10は、製造容易性を担保することが可能となる。
【0057】
また、透光性樹脂REが含有する粒状フィラーPのフィラー濃度が高くなると、発光装置10を繰り返し駆動した際の発光素子20の発熱等による温度変化、または物理的衝撃により、光反射部50内でクラック等の信頼性不良が発生する可能性がある。
【0058】
本実施例においては、特に、遷移層52Bにおいて運用上クラックの発生しない濃度となるように原料樹脂のフィラー濃度が調整されている。従って、仮に、第1の光反射層51にクラックが発生したとしても、光反射部50は、第2の光反射層52にクラックが伸展することを防ぐことができる。また、第2の光反射層52の上面(境界面BS)が波長変換体30の側面を覆うように形成されている。よって、例え第1の光反射層51にクラックが発生しても、当該クラックが波長変換体30の側面と光反射部50との界面まで伸展することを防ぐことができ、波長変換体30の側面と光反射部50との剥離等の発生を防ぐことができる。従って、波長変換体周縁におけるクラックによる光漏れ故の発光装置10の色ムラ、発光ムラ等を防ぐことができる。従って、発光装置10によれば、発光装置の信頼性を担保することが可能となる。
【0059】
本実施例によれば、発光装置10は、製造容易性及び信頼性を担保しつつ意図しない部分からの光漏れを低減することが可能な発光装置及びその製造方法を提供することが可能となる。
【0060】
次に、
図4~
図12を用いて、発光装置10の製造手順の一例について説明する。
【0061】
図4は、本発明の実施例に係る発光装置10の製造フローを示す図である。また、
図5~12は、
図4に示す製造手順の各ステップにおける発光装置10の断面図を示す。なお、
図5~12においては、
図1の発光装置10のCS1-CS1線に沿った断面図を示している。
【0062】
まず、
図5に示すように、上面に配された環状の枠体13を備えた基板11を用意する基板準備工程を行う(ステップS11)。基板11には、予め第1の配線電極15及び第2の配線電極17が形成されている。また、枠体13は、基板11の上面の外周部に設けられ、第1の配線電極15及び第2の配線電極17を囲繞するように配される。なお、枠体13は、樹脂等の接着剤を用いて基板11の上面上に接合されていてもよいし、基板11と枠体13とが一体的に形成されていてもよい。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、上面上に配されかつ周囲に沿って上方に伸長する枠体13を備えた基板11を準備する基板準備工程を含む。
【0063】
次に、
図6に示すように、第1の配線電極15上に発光素子20を接合する素子接合工程を行う(ステップS12)。本ステップでは、発光素子20は、図示しない導電性の接着剤等を介して第1の配線電極15と接合される。具体的には、例えば、第1の配線電極15の上面上にAuSnペーストを充填したディスペンサを用いてAuSnペーストを塗布する。当該塗布したAuSnペースト上に、発光素子20の下面に設けられたカソード電極(図示せず)とAuSnペーストとが接するように第1の配線電極15上に載置する。
【0064】
この状態の基板11を、例えば、窒素雰囲気中で300℃まで過熱しAuSnペースト内のAuSn合金粒子を溶融させた後冷却し発光素子20と第1の配線電極15とが固着される。また、発光素子20と第1の配線電極15とは、AuSn合金により共晶接合され且つ、電気的に接続される。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、支持基板21及び支持基板21の上面に形成された半導体層22を有する発光素子20を基板11上に接合する素子接合工程を含む。
【0065】
なお、発光素子20の固定される位置及び配向は、溶融したAuSn合金の表面張力によってセルフアライメントがなされる。具体的には、加熱溶融したAuSn合金と発光素子20との間において、溶融したAuSn合金の界面エネルギーが最小となる表面張力によって発光素子20がセルフアライメントされる。
【0066】
なお、発光素子20と第1の配線電極15との接合は、これに限定されず、フラックスを含まないAuSnバンプ、AuSnシート又は各々の素子の下面に予め形成されたAuSn蒸着層を原料とした導電性の接着剤を用いてもよい。また、銀ペースト又ははんだ等の導電性の接着剤を用いてもよい。
【0067】
次に、
図1に示したように、発光素子20の電極パッド23と第2の配線電極17とをボンディングワイヤBWでそれぞれ接続する(ステップS13)。本ステップでは、発光素子20が接合された基板11をワイヤボンディング装置セットし、Auワイヤ等のボンディングワイヤBWを電極パッド23及び第2の配線電極17にボンディングする。これにより、電極パッド23及びボンディングワイヤBWを介して、発光素子20のアノード電極と第2の配線電極17とを電気的に接続する。
【0068】
次に、
図7に示すように、発光素子20の半導体層22上に接着樹脂40を介して波長変換体30を接合する波長変換体接合工程を行う(ステップS14)。本ステップでは、発光素子20の半導体層22上に接着樹脂40の原料を充填したディスペンサを用いて接着樹脂40の原料を塗布する。接着樹脂40の原料を塗布する。その後、波長変換体30を当該接着樹脂40の原料と波長変換体30の下面とが接するように半導体層22上に載置する。なお、波長変換体30の載置位置を、半導体層22を覆うような位置に位置合わせする。また、波長変換体30の上面30Tには、予めマスクMKが施してある。この状態の基板11を、加熱することで接着樹脂40の原料を硬化させて発光素子20と波長変換体30とを接合する。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、波長変換体30を発光素子20の上面上に接合する波長変換体接合工程を含む。
【0069】
次に、
図8に示すように、基板11及び枠体13からなるキャビティ内に、第2の光反射層52の原料となる光反射樹脂原料としての原料樹脂52Mを充填する原料樹脂充填工程を行う(ステップS15)。原料樹脂52Mは、粒状フィラーPを分散させた液状の透光性樹脂前駆体としての透光性樹脂REの前駆体RMからなる。また、原料樹脂52Mは、硬化後に低濃度層52Aの所定のフィラー濃度となるような含有率で粒状フィラーPが分散されている。本ステップでは、原料樹脂52Mを充填したディスペンサを用いて基板11及び枠体13からなるキャビティ内に注入し、発光素子20及び波長変換体30の側面を覆うように充填する。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、光反射性の粒状フィラーPを含む透光性樹脂REの前駆体RMからなる原料樹脂52Mを発光素子20及び波長変換体30の側面を覆うように枠体13内に注入して充填する原料樹脂充填工程を含む。
【0070】
原料樹脂52Mは、充填された際に表面張力によって波長変換体30及び枠体13の側面上端に這い上がり、凹状の表面形状を有するメニスカスを形成する。波長変換体30の上面30T及び枠体13の上面から当該凹状の表面の最大深さが約50~100μmとなるように充填量を調整する。なお、本ステップでは原料樹脂52Mの加熱硬化を行わない。
【0071】
次に、
図9に示すように、上方から粒状体である粒状フィラーPを原料樹脂52M上に散布して第1の光反射層51の原料となる凝集層51Mを形成するフィラー堆積工程を行う(ステップS16)。本ステップでは、例えば、粒状フィラーPをスプレーを用いた方法でフィラー堆積部SDを形成する。具体的には、原料樹脂52Mの上方に設置したスプレーノズルSNから粒状フィラーPを分散したエアー(空気)又は窒素層を吹き付けてフィラー堆積部SDを形成する。なお、この時吹き付ける粒状フィラーPは、原料樹脂52Mに含まれる粒状フィラーPと同一のものである。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、原料樹脂52Mの上方から粒状フィラーPと同一の材料からなる粒状体を散布して原料樹脂52M上に粒状フィラーPを堆積させるフィラー堆積工程を含む。また、フィラー堆積工程において、原料樹脂52Mの上方から粒状フィラーPをスプレー塗布して粒状フィラーPを堆積させる。
【0072】
なお、フィラー堆積部SDは、
図10に示すように上方からふるいSVを用いて原料樹脂52M上に散布して形成してもよい。ふるいSVを用いることによって、原料樹脂52Mが飛散する又は表面形状が変わる等を防ぐことが可能となる。言い換えれば、フィラー堆積工程において、原料樹脂52Mの上方から粒状フィラーPをふるいSVを用いて散布して粒状フィラーPを堆積させる。
【0073】
上記のようにフィラー堆積部SDを形成した後、5分程度安置させて原料樹脂52Mの透光性樹脂REの前駆体RMをフィラー堆積部SDに含浸させる。これにより、フィラー堆積部SDは、粒状フィラーPが薄膜状の前駆体RMに覆われた第1の光反射層51の原料となる凝集層51Mを含む。また、これにより、前駆体RMが原料樹脂52M及び凝集層51Mに亘って一体的となり、原料樹脂52Mの凹状の表面は粒状フィラーPの濃度差が表れる濃度界面である境界面BSとなる。
【0074】
また、この状態の基板11を約5分程度安置させ、原料樹脂52Mからフィラー堆積部SDに透光性樹脂REの前駆体RMを含浸させる。これにより、原料樹脂52Mには、低濃度層52Aのフィラー濃度となる低濃度原料層52AM及び境界面BSに沿ってかつ上方に向かってフィラー濃度が漸次増加する遷移層52Bの遷移原料層52BMが形成される。なお、本ステップでは原料樹脂52Mの加熱硬化を行わない。言い換えれば、フィラー堆積工程において、堆積された粒状フィラーP間に透光性樹脂REの前駆体RMを含浸させる。
【0075】
次に、
図11に示すように、凝集層51Mにおいて前駆体RMが含浸されてない余剰な粒状フィラーPを除去する余剰フィラー除去工程を行う(ステップS17)。本ステップでは、例えば、基板11の上方又は側方からエアーガン等で空気等の流体を吹き付けることにより、凝集層51Mの前駆体RMが含浸されてない余剰な粒状フィラーPを除去する。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、堆積された凝集層51Mの粒状フィラーPに流体を吹き付けることで、表面の粒状フィラーPの一部を除去する余剰フィラー除去工程を含む。
【0076】
これにより、フィラー堆積部SDのうち、前駆体RMに覆われていない余剰な粒状フィラーPが除去される。すなわち、フィラー堆積部SDは、粒状フィラーPが薄膜状の前駆体RMに覆われた第1の光反射層51の原料となる凝集層51Mのみが原料樹脂52M上に残留する。
【0077】
次に、
図12に示すように、凝集層51Mの余剰な粒状フィラーPを除去した基板11を加熱し、前駆体RMを硬化させる樹脂硬化工程を行う(ステップS18)。加熱により、前駆体RMが透光性樹脂REとなる。また、これにより、低濃度原料層52AMが低濃度層52Aとなり、遷移原料層52BMが遷移層52Bとなることで、第2の光反射層52が形成される。また、凝集層51Mが第1の光反射層51として形成される。言い換えれば、発光装置10の製造方法は、透光性樹脂REの前駆体RMを硬化させる樹脂硬化工程を含む。また、前駆体RMの加熱硬化後、波長変換体30のマスクMKを除去し、波長変換体30の上面30Tを露出させる。
【0078】
上記のステップS11~S18までの工程を処理することにより、発光装置10を製造する。
【0079】
本実施例によれば、発光装置10は、基板11及び枠体13で形成されたキャビティ内に、発光素子20及び波長変換体30の側面を覆うように形成された光反射部50を有する。また、光反射部50は、上面に亘って延在する粒状フィラーPの含有率が70質量パーセント以上の高フィラー濃度でありかつ、下面(境界面BS)の形状が下向きに凸の第1の光反射層51を有する。また、光反射部50は、第1の光反射層51の下面に配され、透光性樹脂REが第1の光反射層51と一体的に形成されている第2の光反射層52を有する。また、第2の光反射層52は、境界面BS近傍に境界面BSに向かって粒状フィラーPの含有率が漸次増加する遷移層52Bと、遷移層52Bの下に配された粒状フィラーPの含有率が第1の光反射層51及び遷移層52Bよりも低い低濃度層52Aと、を有する。
【0080】
これらの構成を有することにより、波長変換体30の側面から第2の光反射層52に入射した光は、第1の光反射層51の密集(凝集)した粒状フィラーPの表面によって下方方向に反射又は散乱される。また、遷移層52Bから第1の光反射層51に入射した光は、第1の光反射層51及び発光装置10外部の空気との界面である第1の光反射層51の上面である上面50Tで全反射される。また、境界面BSにおいて、第1の光反射層51及び遷移層52Bの屈折率差が小さくかつ透光性樹脂REが連続的に形成されている。従って、第1の光反射層51に入射した光は、第1の光反射層51内で多重反射されることなく第2の光反射層52(遷移層52B)に再入射されやすい。また、第1の光反射層51から第2の光反射層52に再入射された光は、波長変換体30に再入射される可能性がある。
【0081】
また、本実施例によれば、発光装置10の製造方法は、粒状フィラーPが所定の含有率で分散された原料樹脂52Mをキャビティ内に充填する。充填された原料樹脂52Mが表面張力によって凹状の上面形状を有するように充填する。また、原料樹脂52Mの上方から粒状フィラーPを散布しフィラー堆積部SDを形成し、原料樹脂52Mに含まれる透光性樹脂REの前駆体RMを当該フィラー堆積部SDに含浸させる。これを加熱して前駆体RMを硬化させることにより、粒状フィラーPの含有率が高い第1の光反射層51と、第1の光反射層51の下に配されかつ上方に向かってフィラー含有率が漸次増加する遷移層52Bと、遷移層52Bの下に配された低濃度層52Aを形成する。
【0082】
また、本実施例によれば、発光装置10を繰り返し駆動させた際に、仮に第1の光反射層51にクラックが発生しても、当該クラックが境界面BSよりも下方(第2の光反射層52)に伸展することを防ぐことができる。
【0083】
これらの構成及び特徴を有することによって、発光装置10は、製造容易性及び信頼性を担保しつつ意図しない部分からの光漏れを低減することが可能な発光装置及びその製造方法を提供することが可能となる。
【0084】
本実施例においては、基板11上に1の発光素子20が配される場合について説明したが、基板11上に複数の発光素子20を配するようにしてもよい。
【0085】
図13は、本実施例の変形例に係る発光装置10Aの上面図である。また、
図14は、
図13に示した発光装置10AのCS2-CS2線に沿った断面図である。なお、
図13においては、発光装置10Aの光反射部50の内側の構造を図示するため、その図示を省略している。
【0086】
発光装置10Aは、実施例の発光装置10と基本的に同様の構成である。発光装置10Aは、基板11A上に複数の発光素子20が1の方向に配列され、当該配列された複数の発光素子20の各々の半導体層22の上面上に亘って一体的に形成された波長変換体60を有する点について発光装置10と異なる。
【0087】
変形例の波長変換体60においては、底面及び光取り出し面である上面60Tがそれぞれ長方形の形状を有するように形成されている。すなわち、波長変換体60の底面は、複数の発光素子20の各々の半導体層22に亘りかつ各々の半導体層22を覆うように配されている。
【0088】
また、変形例の発光装置10Aの製造方法は、実施例と同様である。これにより、
図14に示すように、光反射部50には、上面に亘って延在しかつ下面(境界面BS)の形状が下向きに凸の第1の光反射層51が形成されている。また、第1の光反射層51の下には、境界面BS近傍に境界面BSに向かって粒状フィラーPの含有率が漸次増加する遷移層52B及び遷移層52Bの下に配された粒状フィラーPの含有率が低い低濃度層52Aを含む第2の光反射層52が形成されている。また、発光素子20の向かい合う側面同士の間の領域には、低濃度層52Aが充填されている。
【0089】
このように、第1の光反射層51、低濃度層52A並びに遷移層52Bを含む光反射部50及びその形成方法は、複数の発光素子20を搭載する場合にも適用可能であり、製造容易性及び信頼性を担保しつつ意図しない部分からの光漏れを低減することが可能となる。
【0090】
なお、本実施及び変形例の発光装置の製造方法は、1つの事例に過ぎず、上述の方法に限定されない。例えば、
図4に示したステップS16のフィラー堆積工程において、炉のような閉鎖空間内に発光装置を配置し、当該閉鎖空間内に粒状フィラーPを分散させた窒素等を対流及び循環させてフィラー堆積部SDを形成してもよい。原料樹脂52Mの硬化前に、当該原料樹脂52Mの上面上に粒状フィラーPを堆積できればよい。
【0091】
また、本実施及び変形例においては、発光素子20の半導体層22が窒化物半導体を主材料とする青色LEDである場合について説明した。しかし、半導体層22の材料はこれに限定されず、その他の色の光を放射する種々のLEDやレーザの半導体発光層に適用可能である。
【0092】
また、本実施例及び変形例においては、各々の発光素子の放射する光に励起されて当該放射光の波長変換を行う蛍光体を含む波長変換体30又は60を備える発光装置について説明した。しかし、波長変換体は、蛍光体を含まず、各々の発光素子の放射する光の波長変換を行わない投光板であってもよい。
【0093】
波長変換を行う蛍光体を含む波長変換体30を用いる場合、各々の発光素子の放射光の色及び波長変換体30の波長変換を行う光の色は、発光装置10が放射する光の色が所望の色となるように各々の発光素子20の材料、波長変換体30に含まれる蛍光体の材料及び当該蛍光体の含有量を適宜選択すればよい。
【0094】
また、本実施例及び変形例においては、波長変換体30が光取り出し面である上面が光入射面である下面よりも小さいサイズで形成される場合について説明した。しかし、波長変換体30の形状はこれに限定されず、例えば、矩形の断面形状を有する波長変換体であってもよい。本実施例及び変形例に示された光反射部50は、発光素子20の光取り出し面の上方に配されたいかなる形状の波長変換体であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 発光装置
11 基板
13 枠体
15 第1の配線電極
17 第2の配線電極
20 発光素子
21 支持基板
22 発光部
23 電極パッド
30 波長変換体
40 接着樹脂
50 光反射部
51 第1の光反射層51
52 第2の光反射層52
60 波長変換体