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  • 特許-油圧ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】油圧ユニット
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/26 20060101AFI20250130BHJP
   F04B 23/02 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F15B1/26
F04B23/02 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021065561
(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公開番号】P2022161048
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】三浦 恵史
(72)【発明者】
【氏名】高木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀記
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和希
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-042501(JP,A)
【文献】特開2020-170797(JP,A)
【文献】特開昭62-266245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0124059(US,A1)
【文献】実開昭62-089501(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/02
F15B 1/00
F15B 1/26
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作動油を貯蔵する油タンクの上部開口を天板で閉塞し、天板の上面に電動機およびこの電動機により回転駆動されて油タンクの貯蔵作動油を吸入吐出する油圧ポンプを軸心を水平方向にして載置して設け、天板には重量を有する重りを電動機の垂直方向の下方位置で上面と反対となる裏面に設け、重りは中心位置を天板において電動機の軸心と水平方向で略同一位置に備え、重りの重量が天板における電動機の軸心と水平方向で略同一位置に作用することを特徴とする油圧ユニット。
【請求項2】
内部に作動油を貯蔵する油タンクの上部開口を天板で閉塞し、天板の上面に電動機およびこの電動機により回転駆動されて油タンクの貯蔵作動油を吸入吐出する油圧ポンプを軸心を水平方向にして載置して設け、天板には重量を有する重りを電動機の垂直方向の下方位置で上面と反対となる裏面に設け、重りは2個設け、2個の重りは電動機の軸心を介して水平方向の対称位置に備え、重りの重量が天板における電動機の軸心と水平方向で略同一位置に作用することを特徴とする油圧ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油タンク上に電動機および油圧ポンプを載置した油圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧ユニットは、作動油を貯蔵する油タンクの上方開口を天板で閉塞し、天板の上面に防振ゴムを介して架台を固定し、架台の上面にポンプを一体的に連結した電動機を固定し、天板の上面には吸音材を貼付している。そして、吸音材により電動機および油圧ポンプの放射音および反射音を吸収して騒音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-42501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の油圧ユニットは、電動機および油圧ポンプの回転駆動で発生する振動周波数が天板の固有振動数と近い値となって共振が発生するため、いまだ満足のいく騒音の低減を図ることができないという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、電動機および油圧ポンプの回転駆動で発生する振動と天板の振動との共振を抑制して騒音を低減する油圧ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
内部に作動油を貯蔵する油タンクの上部開口を天板で閉塞し、天板の上面に電動機およびこの電動機により回転駆動されて油タンクの貯蔵作動油を吸入吐出する油圧ポンプを軸心を水平方向にして載置して設け、天板には重量を有する重りを電動機の垂直方向の下方位置で上面と反対となる裏面に設け、重りは中心位置を天板において電動機の軸心と水平方向で略同一位置に備え、重りの重量が天板における電動機の軸心と水平方向で略同一位置に作用することを特徴とする油圧ユニットがそれである。
【0007】
また、内部に作動油を貯蔵する油タンクの上部開口を天板で閉塞し、天板の上面に電動機およびこの電動機により回転駆動されて油タンクの貯蔵作動油を吸入吐出する油圧ポンプを軸心を水平方向にして載置して設け、天板には重量を有する重りを電動機の垂直方向の下方位置で上面と反対となる裏面に設け、重りは2個設け、2個の重りは電動機の軸心を介して水平方向の対称位置に備え、重りの重量が天板における電動機の軸心と水平方向で略同一位置に作用することを特徴とする油圧ユニットがそれである。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1および請求項2に記載の発明は、天板には重量を有する重りを電動機の垂直方向の下方位置に設け、重りの重量が天板における電動機の軸心と水平方向で略同一位置に作用する。このため、天板の固有振動数を、電動機および油圧ポンプの回転駆動で発生する振動周波数とずらして近似することなくできるから、電動機および油圧ポンプの回転駆動で発生する振動と天板の振動との共振を抑制できて騒音を低減することができる。
【0009】
また、請求項1および請求項2に記載の発明は、重りは天板の上面と反対となる裏面に取付けた。このため、重りは油タンク内部にあって外部に露呈しないから、天板の上面に載置する電動機等の障害とすることなくできる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明は、重りは中心位置を天板において電動機の軸心と水平方向で略同一位置に備えた。このため、重りを単一として一個所にとりまとめて配置することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、重りは2個設け、2個の重りは電動機の軸心を介して水平方向の対称位置に備えた。このため、2個の重りは電動機の軸心と水平方向で略同一位置に備えなくてもよく、重りを備える位置の自由度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示した油圧ユニットの一部を断面にした正面図である。
図2図1の矢視Aから見た平面図である。
図3】他実施形態の油圧ユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2において、1は内部に作動油を貯蔵するタンクで、上部を開口した略直方体形状に形成している。油タンク1は上部開口の周縁にシール部材3を備えている。4は油タンク1の上部開口を閉塞する天板で、シール部材3上に載置して複数のボルト5で油タンク1へ着脱自在に取付け、油タンク1内部を密封している。天板4は周縁を垂直方向(図1紙面平行の下方向、図2紙面直交の奥行方向)の下方に屈曲形成している。6は油圧ポンプ7を回転駆動する電動機で、天板4の上面4Aに軸心6Lを水平方向(図2紙面平行方向)にして4個の防振部材8を介して載置固定している。各防振部材8は円柱形状でゴム材から形成し、電動機6の下方で対角線上に配置している。油圧ポンプ7は天板4上で電動機6の一側面に同芯状に固定し、電動機6と一体的に設けている。油圧ポンプ7は電動機6の回転駆動で油タンク1の貯蔵作動油を吸入流路9より吸入して吐出流路10に吐出する。
【0014】
11は作動油の貯蔵量を外部から視認する油面計で、油タンク1の一側面上方に配置している。12は貯蔵作動油を排出する排出口を着脱自在に閉塞する栓部材で、油タンク1の一側面下方に設けている。13は作動油を油タンク1内部に注油する注油口兼エアブリーザで、油タンク1の天板4に備えている。14は油圧ポンプ4のドレンを冷却する冷却器で、油圧ポンプ7を固定した電動機6の一側面と反対となる他側面に対向して油タンク1の天板4に立設し、ドレン導入管路15より導入したドレンを電動機6の図示しない冷却ファンにより生ずる風で冷却し、冷却したドレンをドレン導出管路16より油タンク1に還流する。17は天板4の四隅に備えた4個のフック部材で、油圧ユニットを吊り上げて移動する際に用いる。
【0015】
18は長方形で薄板状の制振シートで、ゴム材から形成し、天板4の上面4Aに貼付して天板4の振動を抑制している。制振シート18は電動機4の下方位置で大部分を4個の防振部材8の内方に位置すると共に、両端部を防振部材8より若干外方に延在している。19は約400グラムの重量を有する重りで、電動機6の垂直方向の下方位置に天板4の上面4Aと反対となる裏面4Bに溶接で取付けている。重り19は天板4において中心位置Cを電動機6の軸心6Lと水平方向で略同一位置に備え、重り19の重量が天板4において電動機6の軸心6Lと水平方向で略同一位置に作用する。そして、重り19は制振シート18の一端部18Aと冷却器14との間に位置している。
【0016】
次に、かかる構成の作動を説明する。
電動機6によって油圧ポンプ7を回転駆動すると、油圧ポンプ7は吸入流路9より油タンク1に貯蔵した作動油を吸入して吐出流路10に吐出する。この吐出した作動油は、図示しないアクチュエータに供給される。アクチュエータからの戻り油は、図示しない戻り流路を流れて油タンク1に還流する。
【0017】
このとき、電動機6、油圧ポンプ7の回転駆動に伴い発生する振動は、防振部材8で油タンク1の天板4に伝わるのを抑制する。さらに、制振シート18により天板4の振動を抑制する。また、油圧ポンプ7のドレンは冷却器14で冷却してドレン導出管路16より油タンク1に還流する。
【0018】
かかる作動で、天板4には重量を有する重り19を電動機6の垂直方向の下方位置に設け、重り19の重量が天板4における電動機6の軸心6Lと水平方向で略同一位置に作用する。このため、天板4の固有振動数を、電動機6および油圧ポンプ7の回転駆動で発生する振動周波数とずらして近似することなくできるから、電動機6および油圧ポンプ7の回転駆動で発生する振動と天板4の振動との共振を抑制できて騒音を低減することができる。
【0019】
また、重り19は天板4の上面4Aと反対となる裏面4Bに取付けた。このため、重り19は油タンク1内部にあって外部に露呈しないから、天板4の上面4Aに載置する電動機6等の障害となることなくできる。
【0020】
また、重り19は中心位置Cを天板4において電動機6の軸心6Lと水平方向で略同一位置に備えた。このため、重り19を単一として一個所にとりまとめて配置することができる。
【0021】
図3は本発明の他実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる箇所についてのみ説明する。
重り19A、19Bは2個設け、電動機6の垂直方向の下方位置で天板4の裏面4Bに溶接で取付けている。2個の重り19A、19Bは電動機6の軸心6Lを介して水平方向の対称位置に備えている。
【0022】
作動は、電動機6によって油圧ポンプ7を回転駆動し、油圧ポンプ7は油タンク1に貯蔵した作動油を吸入して吐出する。吐出した作動油は、図示しないアクチュエータに供給され、アクチュエータからの戻り油は、図示しない戻り流路を流れて油タンク1に還流する。
【0023】
かかる作動で、天板4には重量を有する重り19A、19Bを電動機6の垂直方向の下方位置に設け、重り19A、19Bの重量が天板4における電動機6の軸心6Lと水平方向で略同一位置に作用する。このため、一実施形態と同様に、天板4の固有振動数を、電動機6および油圧ポンプ7の回転駆動で発生する振動周波数とずらして近似することなくできるから、電動機6および油圧ポンプ7の回転駆動で発生する振動と天板4の振動との共振を抑制できて騒音を低減することができる。
【0024】
また、重り19A、19Bは天板4の上面4Aと反対となる裏面4Bに取付けた。このため、重り19A、19Bは油タンク1内部にあって外部に露呈しないから、一実施形態と同様に、天板4の上面4Aに載置する電動機6等の障害となることなくできる。
【0025】
また、重り19A、19Bは2個設け、2個の重り19A、19Bは電動機6の軸心6Lを介して水平方向の対称位置に備えた。このため、2個の重り19A、19Bは電動機6の軸心6Lと略同一位置に備えなくてもよく、重り19A、19Bを備える位置の自由度を増すことができる。
【0026】
なお、前述の各実施形態では、天板4の上面4Aに制振シート18を貼付したが、制振シートは必要に応じて設けなくてもよい。この場合には、重りを対角線上に配置した4個の防振部材の中央に配置してもよい。また、油圧ポンプ7は電動機6の一側面に同芯状に固定し、電動機6と一体的に設けたが、油圧ポンプの入力軸と電動機の出力軸とをカップリングで結合し、油圧ポンプと電動機とを別体に設けてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1:油タンク
4:天板
4A:上面
6:電動機
6L:軸心
7:油圧ポンプ
19、19A、19B:重り
図1
図2
図3