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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ATS地上子の遮熱構造
(51)【国際特許分類】
   B61L 3/12 20060101AFI20250130BHJP
   E01B 19/00 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
B61L3/12 Z
E01B19/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021067146
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162353
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144348
【氏名又は名称】株式会社三工社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平良 公洋
(72)【発明者】
【氏名】今西 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】桐生 英夫
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】成嶋 崇
(72)【発明者】
【氏名】岸本 剣一郎
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-10892(JP,A)
【文献】特開2015-228661(JP,A)
【文献】特開2000-174543(JP,A)
【文献】実開昭58-97572(JP,U)
【文献】実公昭49-13607(JP,Y1)
【文献】特開2005-290862(JP,A)
【文献】特開2018-50744(JP,A)
【文献】特開2002-331935(JP,A)
【文献】特開2009-184408(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3623254(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
E01B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上子本体が取付台を介して枕木上のレールに沿って設置されたATS地上子に用いられる遮熱構造であって、
平面視で前記地上子本体の全体を上方から覆う屋根部と、該屋根部から連続して形成され、前記地上子本体の、前記レールの延在方向と平行な方向の両側の少なくとも一部を覆う前後部と、を含むカバー部材を含み、
前記前後部に、開口部或いは切欠きから成る通気口が設けられていることを特徴とするATS地上子の遮熱構造。
【請求項2】
前記地上子本体に干渉することなく、前記カバー部材を前記取付台に対して固定するための固定手段を含むことを特徴とする請求項1記載のATS地上子の遮熱構造。
【請求項3】
前記取付台は、前記枕木に対して前記地上子本体を固定するものであり、
前記固定手段は、前記取付台に固定されたねじ座と、一端側が前記屋根部に接続されると共に、他端側が前記枕木を避ける位置で前記ねじ座に貫入される複数の長尺ボルトと、を含み、
該複数の長尺ボルトは、前記ねじ座に対する貫入長さが調整可能になっていることを特徴とする請求項2記載のATS地上子の遮熱構造。
【請求項4】
前記屋根部は、前記枕木の延在方向と平行な折り曲げ線で、該折り曲げ線が上端に位置するように折り曲げられた板状をなしていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のATS地上子の遮熱構造。
【請求項5】
前記カバー部材は、その平面視での略中心位置を上端とする球面状をなしていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のATS地上子の遮熱構造。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記屋根部から連続して形成され、前記地上子本体の、前記枕木の延在方向と平行な方向の両側の少なくとも一部を覆う側部を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のATS地上子の遮熱構造。
【請求項7】
前記カバー部材に、遮熱塗料が塗布されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のATS地上子の遮熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATS地上子に用いられる遮熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、列車運行上の安全装置の1つとして、ATS(自動列車停止装置)が利用されている。ATSは、概略的には、レールに沿って地上側に設置される地上子から、列車に設置された車上子を介して信号を受信し、この受信信号から得られる情報に基づいて、警報の発報や、列車のブレーキ装置の動作制御を行うものである。そのうちの地上子は、屋外の環境に曝されることから、例えば特許文献1の発明のように、落雪などの対策が施されたものも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-039457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ATS地上子の中には、その想定される耐用寿命よりも短い使用期間で故障が発生するものがあり、それによって交換周期が短くなってしまい、多額の修繕費が発生することが懸念されている。そのような原因の1つとして、ATS地上子の周囲や内部が、直射日光に曝されるなどの屋外環境の影響で高温化し、それによってATS地上子に使用されている一部の電子部品が故障することで、ATS地上子の故障に至ることが判明した。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ATS地上子の温度上昇を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)地上子本体が取付台を介して枕木上のレールに沿って設置されたATS地上子に用いられる遮熱構造であって、平面視で前記地上子本体の全体を上方から覆う屋根部と、該屋根部から連続して形成され、前記地上子本体の、前記レールの延在方向と平行な方向の両側の少なくとも一部を覆う前後部と、を含むカバー部材を含み、前記前後部に、開口部或いは切欠きから成る通気口が設けられているATS地上子の遮熱構造。
【0007】
本項に記載のATS地上子の遮熱構造は、屋根部及び前後部を備えたカバー部材を含み、このカバー部材の屋根部が、平面視でATS地上子の地上子本体全体を上方から覆う大きさ及び形状を有している。このため、少なくとも上方から地上子本体への直射日光が遮られるものとなり、直射日光に起因する地上子本体の温度上昇が抑制されるものである。又、カバー部材の前後部は、屋根部から連続して形成され、地上子本体の、レールの延在方向と平行な方向の両側の少なくとも一部を覆うものであるため、レールの延在方向からの直射日光も遮られるものとなる。しかも、前後部には、開口部或いは切欠きから成る通気口が設けられているため、特にATS地上子上を列車が通過した場合などに、一方の前後部の通気口から他方の前後部の通気口へと、カバー部材の内側に位置する地上子本体の周囲を通る空気の流れが発生する。これにより、放熱性能が向上されるため、地上子本体の温度上昇がより効果的に抑制されるものとなる。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記地上子本体に干渉することなく、前記カバー部材を前記取付台に対して固定するための固定手段を含むATS地上子の遮熱構造。
本項に記載のATS地上子の遮熱構造は、 固定手段を更に含み、この固定手段は、地上子本体を設置しているATS地上子の取付台に対して、地上子本体に干渉することなくカバー部材を固定するものである。これにより、地上子本体が取付台を介して設置された構造の既設のATS地上子に対して、地上子本体には何ら変更を施すことなく、カバー部材が容易に取り付けられるものとなる。
【0009】
(3)上記(2)項において、前記取付台は、前記枕木に対して前記地上子本体を固定するものであり、前記固定手段は、前記取付台に固定されたねじ座と、一端側が前記屋根部に接続されると共に、他端側が前記枕木を避ける位置で前記ねじ座に貫入される複数の長尺ボルトと、を含み、該複数の長尺ボルトは、前記ねじ座に対する貫入長さが調整可能になっているATS地上子の遮熱構造。
【0010】
本項に記載のATS地上子の遮熱構造は、取付台が枕木に対して地上子本体を固定する構造のATS地上子に適用されるものであり、固定手段がねじ座と複数の長尺ボルトとを含んでいる。ねじ座は、ATS地上子の取付台に固定され、複数の長尺ボルトの各々は、一端側が屋根部に接続され、他端側が枕木を避ける位置でねじ座に貫入される。すなわち、取付台を介して枕木上に設置されている地上子本体の更に上方に屋根部が配置されるように、ねじ座に貫入された複数の長尺ボルトによって屋根部が支持される。更に、複数の長尺ボルトは、ねじ座に対する他端側の貫入長さが調整可能になっており、その貫入した部分が枕木に接触することはない。このため、長尺ボルトの他端側の貫入長さの調整によって、一端側に接続されている屋根部の設置高さが、任意の高さに調整されるものである。これにより、ねじ座が固定された取付台と屋根部との間の空間の高さが調整されるため、その空間に設置される様々な大きさ及び形状の地上子本体に対応するものとなり、汎用性が向上するものである。
【0011】
(4)上記(1)から(3)項において、前記屋根部は、前記枕木の延在方向と平行な折り曲げ線で、該折り曲げ線が上端に位置するように折り曲げられた板状をなしているATS地上子の遮熱構造。
本項に記載のATS地上子の遮熱構造は、カバー部材の屋根部が、枕木の延在方向と平行な折り曲げ線で折り曲げられた板状をなし、その折り曲げ線の部位が上端に位置するものである。すなわち、枕木の延在方向を妻側とする所謂切妻屋根の形状をなしている。これにより、屋根部が平坦な場合と比較して、付着した汚れが雨水などで流れ易くなると共に、カバー部材の内部で空気の対流が発生し易くなるため、汚れの付着と温度上昇との双方が抑制されるものである。
【0012】
(5)上記(1)から(3)項において、前記カバー部材は、その平面視での略中心位置を上端とする球面状をなしているATS地上子の遮熱構造。
本項に記載のATS地上子の遮熱構造は、カバー部材が、その平面視での略中心位置を上端とする球面状をなすものである。すなわち、カバー部材は、その平面視での略中心位置から周縁に向かって、湾曲しながら斜め下方ないし下方へと延び、地上子本体の上方だけでなく、地上子本体の平面視での全周囲を、少なくとも上方からの一部の範囲で覆うものである。これにより、屋根部や前後部が一体的に形成され、直射日光がより効率よく遮られると共に、付着した汚れが雨水などで流れ易くなるため、温度上昇と汚れの付着との双方が抑制されるものである。しかも、カバー部材が湾曲した球面状であることで、剛性が向上されるものである。
【0013】
(6)上記(1)から(4)項において、前記カバー部材は、前記屋根部から連続して形成され、前記地上子本体の、前記枕木の延在方向と平行な方向の両側の少なくとも一部を覆う側部を含むATS地上子の遮熱構造。
本項に記載のATS地上子の遮熱構造は、カバー部材が、屋根部及び前後部に加えて側部を含み、この側部は、屋根部から連続して形成され、地上子本体の、枕木の延在方向と平行な方向の両側の少なくとも一部を覆うものである。これにより、枕木の延在方向からの直射日光も遮られるばかりか、カバー部材の内部で空気の対流が発生し易くなるため、地上子本体の温度上昇がより抑制されるものとなる。
【0014】
(7)上記(1)から(6)項において、前記カバー部材に、遮熱塗料が塗布されているATS地上子の遮熱構造。
本項に記載のATS地上子の遮熱構造は、カバー部材に遮熱塗料が塗布されていることで、カバー部材の内部に配置された地上子本体の温度上昇が、より一層抑制されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のような構成であるため、ATS地上子の温度上昇を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造を示しており、(a)がATS地上子に適用された状態の斜視図、(b)が同状態の側面図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造を示しており、(a)がATS地上子に適用された状態の斜視図、(b)が同状態の側面図である。
図3】本発明の第3の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造を示しており、(a)がカバー部材の斜視図、(b)がATS地上子に適用された状態の概略的な側面図である。
図4】本発明の第4の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造を示しており、(a)がカバー部材の斜視図、(b)がATS地上子に適用された状態の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体を通して、同一部分若しくは相当する部分は、同一の符号で示している。
図1には、地上子本体62が取付台64を介して枕木82に固定された構造のATS地上子60に対して適用された、本発明の第1の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造2を示している。なお、図1では、枕木82上のレール80を破断して図示している。図示のように、ATS地上子の遮熱構造2は、地上子本体62を覆うカバー部材12と、カバー部材12を固定する固定手段30とで大略構成されている。
【0018】
本実施形態において、カバー部材12は、屋根部14と2つの前後部16とを含んでいる。屋根部14は、平面視でATS地上子60の地上子本体62を覆う大きさを有すると共に、所謂切妻屋根の形状を有しており、枕木82の延在方向と平行な折り曲げ線Lで折り曲げられた平面視矩形の板状をなしている。更に、屋根部14の平面視での中心近傍に、屋根部14の形状に沿って折り曲げられた板状の補強材42が取り付けられていることで、強度が高められている。2つの前後部16は、屋根部14の図1(b)における左右両側の端縁から連続して一体的に形成され、それらの端縁から下方へ延びた矩形の板状をなしている。
【0019】
すなわち、2つの前後部16は、レール80の延在方向と直交する面、換言すれば、レール80上を走行する列車の進行方向と直交する面を有しており、それらの面に裏面まで貫通した通気口20が形成されている。本実施形態の通気口20は、前後部16の形状に対応した矩形の開口部から成り、2つの前後部16の通気口20同士が、列車の進行方向に沿って対向した位置関係にある。このようなカバー部材12は、ATSの車上子と地上子60との通信を妨げず、遮熱性、断熱性、放熱性、及び強度などが考慮された素材で形成されることが好ましく、例えばポリカーボネート樹脂により形成される。更に、本実施形態のカバー部材12は、屋根部14及び2つの前後部16に遮熱塗料40が塗布されており、そのような遮熱塗料40には、遮熱性やカバー部材12の素材などが考慮された任意の遮熱塗料が使用される。
【0020】
一方、本実施形態の固定手段30は、4本の長尺ボルト32、2つのねじ座34、及び4つの調整用スペーサ36などを含んでいる。4本の長尺ボルト32の各々は、その上端側が調整用スペーサ36を介してカバー部材12の屋根部14に接続されており、4つの調整用スペーサ36の各々は、屋根部14を貫通して屋根部14に取り付けられている。2つのねじ座34は、地上子本体62を枕木82に固定している取付台64の裏面側の、枕木82から離れた図1(b)における左右両端近傍に、ボルトやナットなどにより固定されている。ねじ座34の各々には、2つの貫入孔が設けられており、それらの貫入孔に長尺ボルト32の下端側が貫入されている。ねじ座34に対する長尺ボルト32の貫入量は、長尺ボルト32の回転などにより調整可能になっており、ねじ座34上のナットなどによって長尺ボルト32の貫入深さが保持される。
【0021】
特に図1(b)で確認できるように、ねじ座34から下方へ突出している長尺ボルト32の下端部分は枕木82から離れており、長尺ボルト32が貫入されるねじ座34の貫入孔と枕木82との間には、長尺ボルト32がより深く貫入されても枕木82に接触しないように、十分な距離が確保されている。固定手段30を構成する各部材には、カバー部材12を支持するために必要十分な強度を発揮し得る任意の素材が用いられる。
参考として、上記のような構成のATS地上子の遮熱構造2は、誤ってカバー部材12上に人が乗っても壊れない強度が確保されることが好ましく、例えば耐荷重は200kg以上である。又、ATS地上子の遮熱構造2は、保線用機械のマルチプルタイタンパーの爪に干渉しないような全体形状及び大きさになっている。
【0022】
続いて、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造4について説明する。図2において、本発明の第1の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造2と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第2の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造4について、図1に示したATS地上子の遮熱構造2との相違部分のみ説明をすることとし、ATS地上子の遮熱構造2と同様の部分の構成や作用効果については、説明を省略する。又、図1と同様に、図2では、枕木82上のレール80を破断して図示している。
【0023】
図2に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造4は、カバー部材12と固定手段30とで大略構成されており、カバー部材12の形状が、図1のATS地上子の遮熱構造2と大きく異なっている。すなわち、本実施形態のカバー部材12は、平面視での中心位置Cを上端とするような、レール80の延在方向と平行な方向に長く偏倚した球面状をなしており、中心位置Cを含む屋根部14から2つの前後部16及び2つの側部24までが、滑らかに湾曲した板材で一体的に形成されている。このような滑らかな球面状のカバー部材12は、例えば削り出しやハンドレイアップ成形など、カバー部材12の素材などに応じた任意の方法で形成される。
【0024】
2つの前後部16は、屋根部14の図2(b)における左右両側(レール80の延在方向と平行な方向の両側)に位置し、屋根部14から斜め下方へ突出しており、本実施形態では、下方側から設けられた切欠きから成る通気口20が形成されている。2つの側部24は、屋根部14の、枕木82の延在方向と平行な方向の両側に位置し、屋根部14から斜め下方へ突出している。このようにしてカバー部材12を構成する屋根部14、2つの前後部16、及び2つの側部24には、遮熱塗料40が塗布されている。又、カバー部材12は、4箇所に窪みが設けられており、それらの窪みに取り付けられた調整用スペーサ36を介して、固定手段30の4本の長尺ボルト32の上端側と接続されている。固定手段30のその他の構成は、図1に示したATS地上子の遮熱構造2と同様である。
【0025】
次に、図3及び図4を参照して、本発明の第3及び第4の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造6、8について説明する。図3及び図4において、本発明の第1及び第2の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造2、4と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第3及び第4の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造6、8について、図1及び図2に示したATS地上子の遮熱構造2、4との相違部分のみ説明をすることとし、ATS地上子の遮熱構造2、4と同様の部分の構成や作用効果については、説明を省略する。又、図3(b)及び図4(b)では、図中の左右方向がレール80の延在方向に相当し、図中の紙面と直交する方向が枕木82の延在方向に相当する。
【0026】
まず、図3に示すように、本発明の第3の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造6は、カバー部材12と固定手段30とで大略構成され、図1のATS地上子の遮熱構造2との比較において、カバー部材12の屋根部14の形状のみが異なっている。すなわち、本実施形態のカバー部材12の屋根部14は、平面視矩形の板状をなし、特に折り曲げなどの加工が施されていない。そして、屋根部14の、レール80の延在方向と平行な方向(図3(b)における左右方向)の両側の端縁から、矩形の板状をなす前後部16が下方へ延び、そこへ矩形の開口部から成る通気口20が形成されている。なお、図3(b)では簡略化して図示しているが、固定手段30の構成や、固定手段30によるカバー部材12の固定方法は、図1図2の固定手段30と概ね同様であり、貫入量が調整可能な複数の長尺ボルト32により、地上子本体62の上方でカバー部材12が支持されている。
【0027】
続いて、図4に示すように、本発明の第4の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造8は、カバー部材12と固定手段30とで大略構成され、図3のATS地上子の遮熱構造6との比較において、カバー部材12に更に2つの側部24が設けられている点のみが異なっている。すなわち、本実施形態のカバー部材12は、平面視矩形の板状の屋根部14の、枕木82の延在方向と平行な方向(図4(b)における紙面と直交する方向)の両側の端縁から、矩形の板状をなす側部24が下方へ延びている。2つの側部24には、屋根部14や2つの前後部16と同様に、遮熱塗料40が塗布されている。なお、図4(b)では簡略化して図示しているが、固定手段30の構成や、固定手段30によるカバー部材12の固定方法は、図1図2の固定手段30と概ね同様であり、貫入量が調整可能な複数の長尺ボルト32により、地上子本体62の上方でカバー部材12が支持されている。
【0028】
ここで、本発明の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造2、4、6、8は、図1図4に示したような構成に限定されるものではなく、例えば、通気口20を成す開口部や切欠きの形状及び大きさが、図1図4と異なっていてもよい。又、カバー部材12の形状は、地上子本体62全体を覆う大きさの屋根部14と、通気口20が設けられた2つの前後部16とを有していれば任意である。更に、固定手段30の構成も、地上子本体62に干渉することなくカバー部材12を固定できるものであれば、任意の構成であってよく、長尺ボルト32を利用する構成の場合も、その本数などが図1図4と異なっていてもよい。又、必要とされる遮熱効果が十分に得られるのであれば、カバー部材12に遮熱塗料40が塗布されていなくてもよい。
【0029】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、図1図4に示すように、本発明の第1~第4の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造2、4、6、8は、屋根部14及び前後部16を備えたカバー部材12を含み、このカバー部材12の屋根部14が、平面視でATS地上子60の地上子本体62全体を上方から覆う大きさ及び形状を有している。このため、少なくとも上方から地上子本体62への直射日光を遮ることができ、直射日光に起因する地上子本体62の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
又、カバー部材12の前後部16は、屋根部14から連続して形成され、地上子本体62の、レール80の延在方向と平行な方向の両側の少なくとも一部を覆うものであるため、レール80の延在方向からの直射日光も遮ることができる。しかも、前後部16には、開口部或いは切欠きから成る通気口20が設けられているため、特にATS地上子60上を列車が通過した場合などに、一方の前後部16の通気口20から他方の前後部16の通気口20へと、カバー部材12の内側に位置する地上子本体62の周囲を通る空気の流れを発生させることができる。これにより、放熱性能を向上させることができるため、地上子本体62の温度上昇をより効果的に抑制することが可能となる。
【0031】
又、本発明の第1~第4の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造2、4、6、8は、固定手段30を更に含み、この固定手段30は、地上子本体62を設置しているATS地上子60の取付台64に対して、地上子本体62に干渉することなくカバー部材12を固定するものである。これにより、地上子本体62が取付台64を介して設置された構造の既設のATS地上子60に対して、地上子本体62には何ら変更を施すことなく、カバー部材12を容易に取り付けることができる。
【0032】
更に、本発明の第1~第4の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造2、4、6、8は、取付台64が枕木82に対して地上子本体62を固定する構造のATS地上子60に適用されるものであり、固定手段30がねじ座34と複数の長尺ボルト32とを含んでいる。ねじ座34は、ATS地上子60の取付台64に固定され、複数の長尺ボルト32の各々は、一端側が屋根部14に接続され、他端側が枕木82を避ける位置でねじ座34に貫入される。すなわち、取付台64を介して枕木82上に設置されている地上子本体62の更に上方に屋根部14が配置されるように、ねじ座34に貫入された複数の長尺ボルト32によって屋根部14が支持される。
【0033】
更に、複数の長尺ボルト32は、ねじ座34に対する他端側の貫入長さが調整可能になっており、その貫入した部分が枕木82に接触することはない。このため、長尺ボルト32の他端側の貫入長さの調整によって、一端側に接続されている屋根部14の設置高さを、任意の高さに調整することができる。これにより、ねじ座34が固定された取付台64と屋根部14との間の空間の高さを調整することができるため、その空間に設置される様々な大きさ及び形状の地上子本体62に対応することが可能となり、汎用性を向上させることができる。
加えて、カバー部材12に遮熱塗料40が塗布されていることで、カバー部材12の内部に配置された地上子本体62の温度上昇を、より一層抑制することができる。
【0034】
一方、本発明の第1の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造2は、図1に示すように、カバー部材12の屋根部14が、枕木82の延在方向と平行な折り曲げ線Lで折り曲げられた板状をなし、その折り曲げ線Lの部位が上端に位置するものである。すなわち、枕木82の延在方向を妻側とする所謂切妻屋根の形状をなしている。これにより、屋根部14が平坦な場合と比較して、付着した汚れを雨水などで流れ易くすることができると共に、カバー部材12の内部で空気の対流を発生し易くすることができるため、汚れの付着と温度上昇との双方を抑制することが可能となる。
【0035】
他方、本発明の第2の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造4は、図2に示すように、カバー部材12が、その平面視での略中心位置Cを上端とする球面状をなすものである。すなわち、カバー部材12は、その平面視での略中心位置Cから周縁に向かって、湾曲しながら斜め下方ないし下方へと延び、地上子本体62の上方だけでなく、地上子本体62の平面視での全周囲を、少なくとも上方からの一部の範囲で覆うことができる。これにより、屋根部14や前後部16が一体的に形成され、直射日光をより効率よく遮ることができると共に、付着した汚れを雨水などで流れ易くすることができるため、温度上昇と汚れの付着との双方を抑制することができる。しかも、カバー部材12が湾曲した球面状であることで、剛性を向上させることも可能となる。
【0036】
又、本発明の第2及び第4の実施の形態に係るATS地上子の遮熱構造4、8は、図2及び図4に示すように、カバー部材12が、屋根部14及び前後部16に加えて側部24を含み、この側部24は、屋根部14から連続して形成され、地上子本体62の、枕木82の延在方向と平行な方向の両側の少なくとも一部を覆うものである。これにより、枕木82の延在方向からの直射日光も遮ることができるばかりか、カバー部材12の内部で空気の対流を発生し易くすることができるため、地上子本体62の温度上昇をより抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
2、4、6、8:ATS地上子の遮熱構造、12:カバー部材、14:屋根部、16:前後部、20:通気口、24:側部、30:固定手段、32:長尺ボルト、34:ねじ座、40:遮熱塗料、60:ATS地上子、62:地上子本体、64:取付台、80:レール、82:枕木、L:折り曲げ線、C:中心位置
図1
図2
図3
図4