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特許7627614アンカーバッグを用いる爆薬自動装填方法
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  • 特許-アンカーバッグを用いる爆薬自動装填方法 図1
  • 特許-アンカーバッグを用いる爆薬自動装填方法 図2A
  • 特許-アンカーバッグを用いる爆薬自動装填方法 図2B
  • 特許-アンカーバッグを用いる爆薬自動装填方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】アンカーバッグを用いる爆薬自動装填方法
(51)【国際特許分類】
   F42D 1/16 20060101AFI20250130BHJP
   F42D 1/24 20060101ALI20250130BHJP
   F42D 3/04 20060101ALI20250130BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F42D1/16
F42D1/24
F42D3/04
E21D9/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021082178
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175609
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】513248957
【氏名又は名称】株式会社アンカー
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】藤居 誠
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-303999(JP,A)
【文献】特開2020-003145(JP,A)
【文献】実開昭58-154400(JP,U)
【文献】特開2001-050700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42D 1/16
F42D 1/24
F42D 3/04
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ANFO爆薬装填パイプ先端に起爆剤となる親ダイを取り付け、該装填パイプを発破孔より大径の、発破孔より全長が長いフレキシブルなアンカーバッグに挿入する準備工程と、2)前記アンカーバッグに挿入した、先端に親ダイを取り付けた装填パイプをアンカーバッグとともに発破孔内に挿入する工程と、3)発破孔の奥に前記アンカーバッグを介して親ダイを配置する工程と、4)前記親ダイと前記装填パイプとを切り離し、前記装填パイプを前記アンカーバッグから引き抜きつつ、装填パイプ先端から発破孔奥から発破孔口に至るアンカーバッグ内にANFO爆薬を圧送充填する工程と、5)前記アンカーバッグの端部を発破孔口に詰め込んで封止する工程を備え、アンコで発破孔を封止する必要のないことを特徴とする発破孔へのANFO爆薬の自動装填方法。
【請求項2】
前記4)ANFO爆薬を圧送充填する工程で、アンコで発破孔を封止する必要のない、ほぼ100%の、充填密度を得る請求項1記載のANFO爆薬の自動装填方法。
【請求項3】
前記2)の工程において、 前記装填パイプに代えて込み棒を用い、その先端に親ダイを取り付け、前記アンカーバッグ内に挿入して発破孔内奥に配置し、その後前記装填パイプを奥まで挿入する請求項1記載のANFO爆薬の自動装填方法。
【請求項4】
ANFO爆薬の一部をその他の流動性爆薬に代えて用いる請求項1記載のANFO爆薬の自動装填
方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発破孔への爆薬自動装填方法に関し、アンカーバッグを用い、ANFO爆薬の自動装填でのみで、発破孔封止を行うことができる、爆薬装填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事における災害の多くは切羽付近で発生している。特に 発破方式における爆薬の装填作業では切羽に近接した作業を強いられることから,鏡面肌落ち等の切羽崩落により重大災害につながる事例が多い。また,装薬作業はすべての孔に爆薬及びアンコ(粘土)を挿入し,込め棒で突いて装填する単純作業の繰り返しであり,作業環境や姿勢なども厳しい状況での作業となるため,かなり苦渋性の高い作業といえる. さらに、トンネル群の地質は面構造の発達した剥離しやすい場合もあり,施工計画当初より安全重点項目として切羽での肌落ち災害防止対策の検討がなされる。そこで,早期完成を目指すトンネル工事を安全かつ効率的に進めるため,切羽での危険性回避,作業姿勢の改善による苦渋作業の軽減を目的に一連の爆薬装填作業を自動化で行える爆薬の遠隔装填装置が提案されている(非特許文献1)。 このシステムにより従来の人力作業に比べ,装薬作業時の作業員の安全性が向上,苦渋作業からの軽減をしただけでなく,装薬作業時間の短縮が図れ,作業員の切羽への張り付き時間も低減することができるとされている。その結果、安定した掘削進行を確保することができる。
【0003】
しかしながら、その爆薬装填作業は、図3に示すように、発破孔の孔底に、爆薬を紙やプラスチックフィルムなどで包装したカートリッジ爆薬を親ダイとして装填した後、カートリッジ爆薬の周囲に、シュートから圧縮空気+水を用いて硝安油剤爆薬(ANFO)、バルクエマルション爆薬、スラリー爆薬などの流動性爆薬(増ダイ)を装填し、その流動性爆薬の背後にアンコ供給フィーダからアンコを供給し、アンコ成形装置で成型後、装填ホースの装填パイプから発破孔に供給し、アンコ(粘土)で填塞した後、親ダイを起爆させて流動性爆薬を爆発させる必要があり、従来の爆薬装填方式では複雑な爆薬装填装置を使用する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】爆薬の遠隔装填システムによる装填作業の完全自動化への取り組み(熊谷組)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように爆薬装填作業は、自動化装填装置を使ってもパッケージされた増ダイやアンコを使う限り、装填作業の簡易化は難しい。そればかりでなく、発破孔の内壁が荒れていると、パイプが発破孔内壁の突起にぶつかって充填密度が向上せず、所定の発破効率が得られないという問題があった。 そこで、本発明はかかる問題点に鑑み、爆薬装填の作業性を大幅に向上できるようにした爆薬装填方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、爆薬装填作業に発破孔内を覆うアンカーバッグを用い、起爆剤となる親ダイを装填パイプの先端に取り付けてアンカーバッグ内に挿入して発破孔の奥の孔底に装填し、その背後にANFO(Ammonium Nitrate Fuel Oil explosive)爆薬を圧送すれば、アンカーバッグが軟質の合成樹脂材料を用いて製作されたフレキシブルで、先端が封鎖され、後端が開口された発破孔よりも大径のホースであることにより、ANFO爆薬の性質上、アンカーバッグが発破孔よりも大径のフレキシブルなホースであることと相まって、発破孔へのANFO爆薬の充填率が100%に限りなく近くなり、十分な発破孔の封止を行うことができ、所定の発破効率が得られることを見出し、完成したものであって、
ANFO装填パイプ先端に起爆剤となる親ダイを取り付け、これを発破孔より大径で、発破孔より全長が長いフレキシブルなアンカーバッグに挿入する準備工程と、アンカーバッグに挿入した先端に親ダイを取り付けた装填パイプをアンカーバッグとともに発破孔内に挿入する工程と、発破孔の奥にアンカーバッグを介して親ダイを配置する工程と、親ダイと装填パイプとを切り離し、装填パイプをアンカーバッグから引き抜きつつ、装填パイプ先端からアンカーバッグ内にANFO爆薬を圧送充填する工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の特徴は起爆剤となる親ダイ又は爆薬の装填に、発破孔よりも大径の軟質樹合成脂製アンカーバッグを用い、しかも親ダイ背後の発破孔にANFO爆薬を圧送充填して封止することにある。通常、45cm径の発破孔において、親ダイの背後にパッケージされたANFO爆薬(30cmΦ)を止め込んでも、発破孔の流動性爆薬の装填率は十分でなく、アンコを使って発破孔を封止する必要がある。本発明では装填パイプの先端に起爆剤となる親ダイ又は爆薬を取り付け、装填パイプをアンカーバッグとともに、発破孔に挿入し、親ダイ設定後、装填パイプをアンカーバッグから引き抜きつつ、ANFO爆薬を装填パイプから親ダイのその背後に圧送充填することにより、発破孔の充填率は100%近くまで向上するので、アンコでの封止と同等の十分な発破効率を得ることができる。したがって、本発明を用いると、安全で能率のよい爆薬自動装填を行うことができるので、画期的である。もちろんANFO爆薬の装填後アンコを用いて発破孔の封止強化を行ってもよいのはもちろんである。
【0008】
本発明によれば、親ダイはアンカーバックにカバーされ、発破孔内に装入されることになる。また、親ダイの雷管からの0.4~0.42mmΦのリード線の損傷を軟質のアンカーバッグが守る。それだけでなく、フレキシブルなバッグを発破孔径よりやや大きい任意の外径にするので、発破孔内壁が荒れていても、アンカーバッグで被覆されるので、親ダイの爆薬背後にANFO爆薬を圧送することで、充填率を100%に近いものとすることができる。通常、ANFOを使わないと、火薬の自動装填では発破孔内の少しの突起等の抵抗で、発破孔奥まで火薬が届かない場合があるが、本発明ではこのような突起があってもアンカーバッグでフラットになり、しかもスリップ剤が添加してあるので、さらに奥までの装填が可能となる。よって、特にアンコによる発破孔の入り口を封止する必要ないだけでなく、充填率の向上が図れ、発破孔への爆薬の自動装填を安全かつ簡易により実現することができる。
【0009】
また、トンネル下半は水穴が多く、バラANFOには耐水性がないが、本発明によれば、自動装填にアンカーバッグを使用することで、バラANFOを使って現場で最大径のピースANFOを作成するのと同様の効果を発揮するので、最大限の孔径でANFO爆薬の装填を得ることができるので、充填率が高く、発破効率が高い。
【0010】
本発明方式で用いるアンカーバッグは、軟質合成樹脂材料を用いてフレキシブルに作成するのがよい。材料は特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどを採用することができる。そして、帯電防止処理を行うのが好ましい。例えば、バッグの合成樹脂材料に、導電性繊維、導電性粉末、金属繊維、金属粉粒又は金属線を混入し、分散し又は内蔵することによって帯電防止処理を行うことができる。また、必要に応じてスリップ剤をバッグに添加し、バッグ表面に塗布するのが好ましい。
【0011】
バッグの外径は通常、発破孔の径が45φmmであるので、それより10~15%大きい外径のものが好ましく、アンカーバッグを用いるANFOの圧送充填でほぼ100%の充填密度が得られることが見出されている。先端は斜めにし、発破孔に挿入しやすくする一方、装入口は折り返して強度を持たせるのが、装填パイプが挿入しやすいので好ましい。また、バッグの厚みは薄すぎると破れやすく、厚すぎると発破孔内に沿わず、圧送されるANFO爆薬の充填率を低下させる。アンカーバッグは、厚み0.02mm~0.2mm程度のフィルムが適当であり、発破孔の状態及びANFO爆薬の流動性などを考慮し、圧送充填により高い充填効率が得られる好ましい形態が選択される。
【0012】
本発明で用いるANFO爆薬は硝酸アンモニウムと燃料油(引火点50℃以上)からなり、他の火薬、爆薬、金属粉等を含まない爆薬で工業雷管又は電気雷管では起爆しないものをいい、広く市販されている。配合例としては硝安94%と燃料油6%からなるものが挙げられる。通常、起爆には他の爆薬(ダイナマイト等)を雷管として起爆し、伝爆するものとして通常供給されている。親ダイ又はカートリッジ爆薬の周囲には硝安油剤爆薬(ANFO)とともに、バルクエマルション爆薬、スラリー爆薬などの流動性爆薬をANFO爆薬の一部に代えて混合し、流動性を調整し、装填することもできる。本発明においては、かかるANFO爆薬に代表される流動性爆薬の物性を利用して充填率を上げ、発破孔のアンコによる封止を解消することができるが、アンコ封止は従来通り行ってもよい。ANFO爆薬の充填密度は一様であってもよいし、奥から入り口にかけて充填密度を上げるようにしてもよい。ANFO充填によりアンコによる発破孔封止の効果を得るためである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明で用いる爆薬自動装填システムの概要を示す全体図である。
図2A】本発明の爆薬自動装填方式の工程(1)から(4)を示す工程図で、(1)装填パイプ10の先端に親ダイ20を取り付け、(2)プラスチック製アンカーバック20を用意し、(3)このアンカーバッグ20に親ダイ21を取り付けた装填パイプ10を挿入し、(4)アンカーバッグ20とともにそこに挿入された親ダイ付装填パイプ10を発破孔30に装填する。
図2B】本発明の爆薬自動装填方式の工程(5)から(7)を示す工程図で、(5)装填パイプ10の先端から親ダイ20を取り外し、(6)装填パイプを発破孔から引き抜きつつバラANFO爆薬をアンカーバック20内に圧送し、親ダイ21の背後にANFO爆薬を充填していく。そして(7)十分にANFO爆薬を充填し、そのままで、又はアンコを詰めるようにして起爆してもよい。
図3】従来の爆薬自動装填装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る爆薬自動装填方式は工程(1)から工程(7)からなり、図2Aおよび図2Bに示される。図2Aに示す工程は、(1)装填パイプ10の先端に親ダイ21を取り付ける工程、(2)装填パイプ10を挿入するアンカーバッグ20を準備する工程、(3)親ダイ21を先端に取り付けた装填パイプ10をアンカーバッグ20内に挿入する工程、(4)発破孔30内に、装填パイプ10を内包したアンカーバッグ20を挿入する工程からなる。このアンカーバッグ20に封入された装填パイプ10は図2Bに示すように、(5)発破孔30に挿入し、その奥に親ダイ21を設置し、この親ダイ21を装填パイプ10から切り離し、装填パイプ10を発破孔30から引き抜きつつ、発破孔30の奥にアンカーバッグ20を介して配置した親ダイ21の背後に、徐々に粒状ANFO爆薬を圧送して充填する工程と、(6)装填パイプ10を引き抜きつつ、親ダイ21の背後にほぼ100%の充填密度でANFO爆薬22を圧送充填する工程、(7)ANFO充填22を完了し、アンカーバック20の端部20aを発破孔30に詰め込んで封止する工程からなる。 以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る爆薬自動装填方式に用いる装置の概要図で、図 に示すとおり,台車40は削岩機41と装填器42を備え、後方車両50に搭載した遠隔装填装置51から装填ホース11,装填パイプ10を操作するようになっており、爆薬の遠隔装填装置51は爆薬供給・アンコ供給・ 装填機の各装置とこれらを制御するコンピュータで構成されている.この装置における現在の装薬手順は,まず親ダイ(爆薬+雷管) を装填パイプの先端に取り付け,発破孔の 孔尻へエア圧送する.次に,増ダイ(爆薬 のみ)は手元の操作ボタンで所定の数量を設定し,増しダイ発射指令ボタンを押すと, 設定数の増ダイが連続的に孔内を圧送・装填される。すべての増ダイの装填が確認されると,次にアンコ装填指令で,所定数の連続整形されたアンコが同じ装填装置を 通って圧送されるようになっているが、本発明では.装填パイプ10の先端にアンカーバッグ20を装着し、図2Aに示す工程(1)から(4)及び図2Bに示す工程(5)から(7)を繰り返し、各発破孔30に爆薬を遠隔操作で自動装填できるようになっている。
以上のように,親ダイ21をパイプ10の先端にセットし,アンカーバッグ20内にセットし、発破孔30内に挿入後は手元の ボタン操作のみで,親ダイ21を装填パイプ10から切り離し、ANFO爆薬を後方の台車よりホースを経由して全自動で圧送・装填が可能である。 従来の人力による装填作業では,作業員は切羽に長時間密着した状況で,木製の込め棒で突きながら親ダイ,増しダイ,アンコ を挿入し,装填するという作業となっていたが、爆薬の遠隔操作による自動装填方式による装填作業は,切羽から 1.5m 程度離れたところから,比較的楽な姿勢で装薬作業を行え、切羽 作業の安全向上はもとより,楽な体勢で装填作業が行えることから肉体的 疲労も軽減される。しかも,ANFO爆薬の充填によりアンコによる発破孔の封止が必要なくなると自動装填作業も軽減されるので、実行容易である。
【0015】
本発明では、爆薬の自動装填において、アンカーバック100を用いる。 バッグ100は軟質の合成樹脂材料、例えば軟質ポリエチレンを用い、帯電防止剤及びスリップ剤を添加し、押出し成形等によって発破孔30の径よりも大径のホース状に製作されるとともに、先端は封鎖され、後端は開口されている。例えば、発破孔40の径が45φmmの場合、外径D48φmm~52φmm、厚み0.02mm~0.2mmのホース状に製作されている。また、装入口20aは発破孔30の径よりも大径に製作されている。例えば、発破孔30の径が45φmmの場合、装入口20aの外径は切削径よりやや大径が採用される。
【0016】
上記実施例では、親ダイを装填パイプの先端に付けて爆薬装填作業を行ったが、親ダイを込み棒で挿入し、その後装填パイプを挿入してもよく、また、親ダイの背後にANFO爆薬のみを装填したが、ANFO爆薬の一部を他の流動性爆薬に代えて爆薬の装填作業を行ってもよく、当業者によれば、本発明の要旨を逸脱することなく、一部変更することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0017】
10 装填パイプ
20 アンカーバッグ
21 親ダイ
22 ANFO爆薬
30 発破孔
図1
図2A
図2B
図3