(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ヘッドレストブッシュ及びヘッドレスト装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/815 20180101AFI20250130BHJP
B60N 2/818 20180101ALI20250130BHJP
B60N 2/897 20180101ALI20250130BHJP
【FI】
B60N2/815
B60N2/818
B60N2/897
(21)【出願番号】P 2021148799
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】迫田 享大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幸信
(72)【発明者】
【氏名】杉村 拓郎
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/142063(WO,A1)
【文献】特開2006-346343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0179474(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0060061(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/80-2/897
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストのステーが軸方向に挿入されるステー挿入孔が形成されると共に、前記軸方向と直交するステー直交方向の一方側に開口し且つ前記ステー挿入孔と交差するロック収容孔が形成されるホルダと、
前記ロック収容孔に挿入され、前記ステー直交方向に付勢されて前記ステーと係合するロックと、
を備え、
前記ロック収容孔は、前記ロック収容孔の開口側へ向かって前記軸方向に拡大するテーパ状に形成され、
前記ロックは、前記ロック収容孔の手前側で前記軸方向の一方側に突出した手前側凸部を有し、前記軸方向の寸法が前記ロック収容孔の手前側で前記ロック収容孔の奥側よりも大きく設定されるヘッドレストブッシュ。
【請求項2】
前記軸方向の一方側は、前記ヘッドレストの上方側である請求項1に記載のヘッドレストブッシュ。
【請求項3】
前記ロックは、前記軸方向及び前記ステー直交方向と直交する並び方向に並ぶ二つの前記手前側凸部とを有する請求項1又は請求項2に記載のヘッドレストブッシュ。
【請求項4】
前記ロックは、前記ロック収容孔の奥側で前記軸方向の一方側に突出した奥側凸部を有し、前記手前側凸部の突出高さが前記奥側凸部の突出高さよりも大きく設定される請求項1~請求項3の何れか1項に記載のヘッドレストブッシュ。
【請求項5】
前記ロックは、前記軸方向及び前記ステー直交方向と直交する並び方向に並ぶ二つの前記奥側凸部と、前記並び方向に並ぶ二つの前記手前側凸部とを有する請求項4に記載のヘッドレストブッシュ。
【請求項6】
シートバックの上端部にシート左右方向に並んで設けられる左右一対のヘッドレストブッシュと、
電気機器が搭載される本体部から延出される左右一対のステーが前記左右のヘッドレストブッシュを介して前記シートバックに支持されるヘッドレストと、
を備え、
前記左右のヘッドレストブッシュのうちの一方は、請求項1~請求項5の何れか1項に記載のヘッドレストブッシュであり、
前記一方のヘッドレストブッシュが備える前記ホルダの前記ステー挿入孔には、前記左右のステーのうちの一方が挿入され、
前記一方のステーには、前記一方のヘッドレストブッシュが備える前記ロックが嵌合可能なノッチが一つだけ形成されるヘッドレスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストブッシュ及びヘッドレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、軸方向に沿って複数の高さ調整溝を有するステーが突設されたヘッドレストをシートバックに支持するヘッドレストブッシュが開示されている。このヘッドレストブッシュでは、シートバックの上端部に取り付けられるホルダに、ヘッドレストのステーが挿入される貫通穴(ステー挿入孔)が形成されている。このホルダは、ロックが挿入された操作部拘束穴(ロック収容孔)を有しており、ロックは、ステーとの係合方向に付勢されている。このロックがステーの高さ調整溝に嵌ることで、ヘッドレストブッシュに対するステーの変位が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ヘッドレストにスピーカー等の電気機器が搭載される場合がある。そのようなヘッドレストは質量が大きくなるため、車両走行時の振動等によりヘッドレストがシートバックに対して相対的に変位しようとすると、ホルダに対してロックがガタつき、異音が発生する場合がある。この異音の発生を防止するため、ホルダやロックの精度を高めようとすると、製造が煩雑になる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、異音の発生を防止でき且つ製造が容易なヘッドレストブッシュ及び該ヘッドレストブッシュを備えたヘッドレスト装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のヘッドレストブッシュは、ヘッドレストのステーが軸方向に挿入されるステー挿入孔が形成されると共に、前記軸方向と直交するステー直交方向の一方側に開口し且つ前記ステー挿入孔と交差するロック収容孔が形成されるホルダと、前記ロック収容孔に挿入され、前記ステー直交方向に付勢されて前記ステーと係合するロックと、を備え、前記ロック収容孔は、前記ロック収容孔の開口側へ向かって前記軸方向に拡大するテーパ状に形成され、前記ロックは、前記ロック収容孔の手前側で前記軸方向の一方側に突出した手前側凸部を有し、前記軸方向の寸法が前記ロック収容孔の手前側で前記ロック収容孔の奥側よりも大きく設定される。
【0007】
第1の態様のヘッドレストブッシュによれば、ホルダには、ヘッドレストのステーが軸方向に挿入されるステー挿入孔が形成されると共に、ステーの軸方向と直交するステー直交方向の一方側に開口し且つステー挿入孔と交差するロック収容孔が形成される。ロックは、ロック収容孔に挿入され、ステー直交方向に付勢されてステーと係合する。ロック収容孔は、ロック収容孔の開口側へ向かって軸方向に拡大するテーパ状に形成される。これにより、ホルダを射出成形によって製造する場合の抜きテーパを設定することができる。ロックは、ロック収容孔の手前側で上記軸方向の一方側に突出した手前側凸部を有し、前記軸方向の寸法が前記ロック収容孔の手前側で前記ロック収容孔の奥側よりも大きく設定される。これにより、テーパ状のロック収容孔内でのロックのガタつきを効果的に抑制することができるので、異音の発生を防止できる。しかも、手前側凸部の突出高さの精度をピンポイントで確保すれば上記のガタつきを抑制できるので、製造が容易である。
【0008】
第2の態様のヘッドレストブッシュは、第1の態様において、前記軸方向の一方側は、前記ヘッドレストの上方側である。
【0009】
第2の態様のヘッドレストブッシュでは、ロックに形成された手前側凸部は、ヘッドレストの上方側に突出している。これにより、手前側凸部が通常時にホルダと接触しないようにすることができるので、手前側凸部の変形を防止又は抑制することができる。
【0010】
第3の態様のヘッドレストブッシュは、第1の態様又は第2の態様において、前記ロックは、前記軸方向及び前記ステー直交方向と直交する並び方向に並ぶ二つの前記手前側凸部とを有する。
【0011】
第3の態様のヘッドレストブッシュでは、二つの手前側凸部が上記の並び方向に並ぶので、ホルダに対するロックのガタつきを二つの手前側凸部により良好に抑制することができる。しかも、例えば手前側凸部を並び方向に長尺状に形成する場合と比較して、各手前側凸部の精度の確保が容易である。
【0012】
第4の態様のヘッドレストブッシュは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様において、前記ロックは、前記ロック収容孔の奥側で前記軸方向の一方側に突出した奥側凸部を有し、前記手前側凸部の突出高さが前記奥側凸部の突出高さよりも大きく設定される。
【0013】
第4の態様のヘッドレストブッシュでは、ロックは、ロック収容孔の手前側で上記軸方向の一方側に突出した手前側凸部と、ロック収容孔の奥側で上記軸方向の一方側に突出した奥側凸部とを有する。手前側凸部の突出高さは、奥側凸部の突出高さよりも大きく設定される。これにより、ロックの軸方向の寸法が、ロック収容孔の手前側でロック収容孔の奥側よりも大きく設定される。これらの手前側凸部及び奥側凸部の突出高さの精度をピンポイントで確保すれば前述のガタつきを抑制できるので、製造が容易である。
【0014】
第5の態様のヘッドレストブッシュは、第4の態様において、前記ロックは、前記軸方向及び前記ステー直交方向と直交する並び方向に並ぶ二つの前記奥側凸部と、前記並び方向に並ぶ二つの前記手前側凸部とを有する。
【0015】
第5の態様のヘッドレストブッシュでは、二つの奥側凸部と二つの手前側凸部とがそれぞれ上記の並び方向に並ぶので、ホルダに対するロックのガタつきを四つの凸部により良好に抑制することができる。しかも、例えば奥側凸部及び手前側凸部を並び方向に長尺状に形成する場合と比較して、各凸部の精度の確保が容易である。
【0016】
第6の態様のヘッドレスト装置は、シートバックの上端部にシート左右方向に並んで設けられる左右一対のヘッドレストブッシュと、電気機器が搭載される本体部から延出される左右一対のステーが前記左右のヘッドレストブッシュを介して前記シートバックに支持されるヘッドレストと、を備え、前記左右のヘッドレストブッシュのうちの一方は、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様のヘッドレストブッシュであり、前記一方のヘッドレストブッシュが備える前記ホルダの前記ステー挿入孔には、前記左右のステーのうちの一方が挿入され、前記一方のステーには、前記一方のヘッドレストブッシュが備える前記ロックが嵌合可能なノッチが一つだけ形成される。
【0017】
第6の態様のヘッドレスト装置によれば、左右一対のヘッドレストブッシュは、シートバックの上端部にシート左右方向に並んで設けられる。ヘッドレストは、電気機器が搭載される本体部から延出される左右一対のステーが、左右のヘッドレストブッシュを介してシートバックに支持される。左右のヘッドレストブッシュのうちの一方は、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様のヘッドレストブッシュである。この一方のヘッドレストブッシュが備えるホルダのステー挿入孔には、左右のステーのうちの一方が挿入され、一方のステーには、一方のヘッドレストブッシュが備えるロックが嵌合可能なノッチが一つだけ形成される。このヘッドレスト装置では、例えば他方のヘッドレストブッシュをヘッドレストの高さ調整用とし、一方のヘッドレストブッシュをシートバックからのヘッドレストの抜止用とすることができる。これにより、本体部に電気機器が搭載されて質量が大きくなるヘッドレストが、衝撃等によりシートバックから不用意に外れることを防止できる。しかも、一方のヘッドレストブッシュは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のものであるため、当該何れか1つの態様と同一の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係るヘッドレストブッシュでは、異音の発生を防止でき且つ製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るヘッドレスト装置を含んで構成された車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】同ヘッドレスト装置が備えるヘッドレストを示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るヘッドレストブッシュを示す斜視図である。
【
図4】同ヘッドレストブッシュを示す分解斜視図である。
【
図5】
図3のF5-F5線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図6】
図3のF6-F6線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図7】ヘッドレストブッシュが備えるロックを示す斜視図である。
【
図8】ホルダに形成されたロック収容孔とロックとの間の隙間の寸法関係を説明するための模式図である。
【
図9】ロック収容孔の管理寸法について説明するための模式図である。
【
図10】ロックの管理寸法について説明するための模式図である。
【
図11】ヘッドレストがシートバックに対して最上位置に拘束され且つ左右のヘッドレストブッシュが何れもロックしていない状態を示す斜視図である。
【
図12】実施形態に係る右側のヘッドレストブッシュがロックした状態を示す斜視図である。
【
図13】ヘッドレストが高さ調整範囲の最上位置に位置し且つ左側の高さ調整用のヘッドレストブッシュがロックした状態を示す斜視図である。
【
図14】ヘッドレストが高さ調整範囲の最下位置に位置し且つ左側の高さ調整用のヘッドレストブッシュがロックした状態を示す斜視図である。
【
図15】ロックの第1変形例を示す
図10に対応した模式図である。
【
図16】ロックの第2変形例を示す
図7に対応した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~
図15を参照して本発明の実施形態に係るヘッドレスト装置16及びヘッドレストブッシュ30Rについて説明する。なお各図においては、図面を見易くする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0021】
図1には、本実施形態に係るヘッドレスト装置16を含んで構成された車両用シート10が斜視図にて示されている。この車両用シート10は、シートクッション12と、シートバック14と、ヘッドレスト装置16を備えている。ヘッドレスト装置16は、ヘッドレスト18と、左右一対のヘッドレストブッシュ30L、30Rと、によって構成されている。なお、
図1では左右のヘッドレストブッシュ30L、30Rを概略的に図示している。また、各図中に示される矢印FRは、車両用シート10の前方向を示し、矢印UPは、車両用シート10の上方向を示し、矢印LHは、車両用シート10の左方向を示している。車両用シート10の前後方向は、本発明における「並び方向」に相当し、車両用シート10の上下方向は、本発明における「軸方向」に相当し、車両用シート10の左右方向は、本発明における「ステー直交方向」に相当する。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0022】
ヘッドレスト18は、電気機器であるスピーカー22(
図1以外では図示省略)が搭載された本体部20と、該本体部20から下方側へ延出された左右一対のステー24L、24Rとを有している。左右のヘッドレストブッシュ30L、30Rは、シートバック14の上端部に左右方向に並んで設けられている。ヘッドレスト18の左右のステー24、26は、左右のヘッドレストブッシュ30L、30Rに形成されたステー挿入孔38L、38Rに挿入されており、左右のヘッドレストブッシュ30L、30Rを介してシートバック14に支持(連結)されている。
図2に示されるように、左側のステー24Lの右側面には、複数(ここでは4つ)のノッチ26が上下方向に並んで形成されており、右側のステー24Rの右側面には、一つのノッチ28が形成されている。右側のステー24Rに形成されたノッチ28は、左側のステー24Lに形成された複数のノッチ26のうちの最下のノッチ26よりも若干下方側に位置している。
【0023】
左側のヘッドレストブッシュ30Lは、シートバック14に対するヘッドレスト18の高さ位置を調整するための高さ調整用とされている。右側のヘッドレストブッシュ30Rは、本発明における「ヘッドレストブッシュ」に相当するものであり、ヘッドレスト18が車両衝突時の衝撃等によってシートバック14から不用意に外れることを防止するための抜止用とされている。左側の高さ調整用のヘッドレストブッシュ30Lは一般的なものであるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、本実施形態において各構成要素の左右方向の配置は単なる一例であり、本実施形態とは左右対称に形成された構成にしてもよい。
【0024】
図3~
図6に示されるように、右側のヘッドレストブッシュ30R(以下、単に「ヘッドレストブッシュ30R」と称する)は、ホルダ32と、ロック42と、ばね54と、カバー56とによって構成されている。ホルダ32は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、筒状に形成された筒部34と、筒部34の軸方向の一端部に形成されたロック収容部36とを有している。このホルダ32には、筒部34及びロック収容部36を筒部34の軸方向に貫通したステー挿入孔38Rが形成されている。
【0025】
筒部34は、シートバック14が備える図示しないフレームの上端部に設けられる筒状のブラケットに上方側から挿入され、筒部34の下部に形成された弾性変形可能な爪部34Aが上記ブラケットの下端部に引っ掛かる。これにより、ヘッドレストブッシュ30Rがシートバック14のフレームに装着される。このヘッドレストブッシュ30Rは、筒部34の軸方向が上下方向に沿い、ロック収容部36が上端部に位置する姿勢でシートバック14のフレームに支持される。ロック収容部36は、筒部34の上端部に鍔状に形成されており、シートバック14の上面から上方に突出して配置される。このロック収容部36には、左右方向の一方側(ここでは左方側)に開口し且つステー挿入孔38Rと交差するロック収容孔40が形成されている。このロック収容孔40内にはロック42が挿入されている。
【0026】
ロック42は、ロック本体44と、ストッパ50とによって構成されている。ロック本体44は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、左右方向を長手とし且つ上下方向を厚さ方向とする板状(略矩形枠状)に形成されている。ロック本体44の中央部には、ヘッドレスト18の右側のステー24Rを挿通させるためのステー挿通孔52が形成されている。ロック本体44の前後方向の両端部には、前後方向の両側へ突出した弾性変形可能な抜止爪44Aが形成されている。ロック本体44がロック収容孔40に挿入される際には、前後の抜止爪44Aが一旦前後方向の内側へ弾性変形した後に弾性復帰する。これにより、ロック収容孔40の前後の壁部に形成された段部40A(
図6参照)に前後の抜止爪44Aが引っ掛かり、ロック収容孔40からのロック本体44の抜け出しが規制される。
【0027】
ロック収容孔40の右壁部とロック本体44の右端部との間には、ばね54が配置されている。ばね54は、左右方向を軸線方向とする圧縮コイルばねであり、ロック本体44を左方側へ付勢している。ロック本体44の右端部には、前後方向に沿った貫通孔45が形成されている。この貫通孔45には、前後方向を軸方向とする角棒状のストッパ50が挿入されている。このストッパ50は、例えば金属によって構成されている。ストッパ50の前後方向中央部は、ロック本体44のステー挿通孔52の内側に露出している。このストッパ50の上記露出部分は、ヘッドレスト18の右側のステー24Rに形成されたノッチ28に嵌合可能とされている。このストッパ50は、例えばインサート成形によってロック本体44と一体化されたものである。
【0028】
ロック本体44の左端部には、左方側へ突出した操作部44Bが形成されている。この操作部44Bは、カバー56に形成された貫通孔58に挿通されている。カバー56は、例えば樹脂の射出成型によって製造されたものであり、右方側が開口した略箱状をなしている。カバー56の開口部における前後方向の両端部には、ロック収容部36の左端部における前後方向の両端部に形成された係止爪36Aが嵌合した図示しない係止溝が形成されており、上記の嵌合によりカバー56がロック収容部36に固定されている。このカバー56によりロック収容孔40の開口部が塞がれている。
【0029】
図4、
図5及び
図7に示されるように、ロック本体44は、ロック収容孔40の奥側(ここでは右方側)で上方側に突出した前後二つの奥側凸部46と、ロック収容孔40の手前側(ここでは左方側)で上方側に突出した前後二つの手前側凸部48とを有している。前後二つの奥側凸部46は、ロック本体44の上面の右端部における前後方向の両端部において前後方向に並んで形成されており、前後二つの手前側凸部48は、ロック本体44の上面の左端部における前後方向の両端部において前後方向に並んで形成されている。これらの奥側凸部46及び手前側凸部48は、一例として略半球状に形成されており、上面が球面状をなしている。
【0030】
図8及び
図9に模式的に示されるように、ロック収容孔40は、その開口側(ここでは左方側)へ向かって上下方向に拡大するテーパ状に形成されている。これにより、ホルダ32を射出成形によって製造する際のスライド型の抜きテーパが設定されている。また、
図8及び
図10に示されるように、手前側凸部48の突出高さは、奥側凸部46の突出高さよりも大きく設定されており、ロック本体44における上下方向の寸法が、ロック収容孔40の手前側でロック収容孔40の奥側よりも大きく設定されている。これにより、ロック収容孔40の上面と奥側凸部46との間の隙間S1(
図8参照)と、ロック収容孔40の上面と手前側凸部48との間の隙間S2(
図8参照)とが、同等になるように構成されている。これらの隙間S1、S2は、ロック収容孔40の奥側の高さ寸法H1(
図9参照)、ロック収容孔40の手前側の高さ寸法H2(
図9参照)、ロック42における奥側凸部46の形成箇所の高さ寸法h1(
図10参照)、及びロック42における手前側凸部48の形成箇所の高さ寸法h2(
図10参照)を管理することにより調整される。なお、
図8~
図10では、説明の都合上、ロック収容孔40のテーパと、奥側凸部46及び手前側凸部48の突出高さの差を誇張して図示している。
【0031】
上記構成のヘッドレスト装置16では、
図11~
図14に示されるように、ヘッドレスト18の左右のステー24、26が、左右のヘッドレストブッシュ30L、30Rのステー挿入孔38L、38Rに挿入される。
図11には、ヘッドレスト18がシートバック14に対して最上位置に拘束され且つ左右のヘッドレストブッシュ30Rが何れもロックしていない状態が図示されている。この状態からヘッドレスト18がシートバック14に対して
図12に示される位置まで押し下げられると、右側のヘッドレストブッシュ30Rがロックする。
【0032】
具体的には、
図12に示される状態では、右側のステー24Rに形成されたノッチ28が、右側のヘッドレストブッシュ30Rが備えるロック42のストッパ50に対して左方側から対向する。これにより、ばね54の付勢力でロック42が左方側へ変位し、ストッパ50がノッチ28に嵌合する。これにより、シートバック14に対するヘッドレスト18の上方側への変位が規制される。この規制は、ロック42の操作部44Bを右方側へ押圧操作することにより解除できる。また、ロック42のストッパ50がノッチ28に嵌合した状態でも、シートバック14に対するヘッドレスト18の下方側への変位は許容されるようにノッチ28に傾斜面が設定されており、当該傾斜面とストッパ50との摺動によってストッパ50とノッチ28との嵌合状態が解除される。
【0033】
図12に示される状態から
図13に示される状態までヘッドレスト18がシートバック14に対して押し下げられると、ヘッドレスト18が高さ調整範囲の最上位置に位置する状態で左側のヘッドレストブッシュ30Lがロックする。これにより、ヘッドレスト18が高さ調整範囲の最上位置に拘束される。
図13に示される状態から
図14に示される状態までヘッドレスト18がシートバック14に対して押し下げられると、ヘッドレスト18が高さ調整範囲の最下位置に位置する状態で左側のヘッドレストブッシュ30Lがロックする。これにより、ヘッドレスト18が高さ調整範囲の最下位置に拘束される。ヘッドレスト18が
図13に示される位置から
図14に示される位置までの範囲に位置する状態では、右側のヘッドレストブッシュ30Rのロックが解除された状態、すなわち、右側のステー24Rにおけるノッチ28以外の箇所にロック42のストッパ50が接触した状態となる。
【0034】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
上記構成のヘッドレスト装置16では、ヘッドレストブッシュ30Rのホルダ32には、ヘッドレスト18のステー24Rが軸方向(上下方向)に挿入されるステー挿入孔38Rが形成されると共に、左方側に開口し且つステー挿入孔38Rと交差するロック収容孔40が形成されている。このロック収容孔40内に挿入されたロック42は、左方側に付勢されてステー24Rと係合する。ロック収容孔40は、その開口側へ向かって軸方向に拡大するテーパ状に形成されている。これにより、ホルダ32を射出成形によって製造する場合の抜きテーパが設定されている。ロック42は、ロック収容孔40の奥側で上方側(ステー24Rの軸方向の一方側)に突出した奥側凸部46と、ロック収容孔40の手前側で上方側に突出した手前側凸部48とを有している。手前側凸部48の突出高さは、奥側凸部46の突出高さよりも大きく設定されており、ロック本体44における上下方向の寸法が、ロック収容孔40の手前側でロック収容孔40の奥側よりも大きく設定されている。これにより、テーパ状のロック収容孔40内でのロック42のガタつきを効果的に抑制することができるので、異音の発生を防止できる。
【0036】
特に本実施形態では、ヘッドレスト18にスピーカー22が搭載されており、ヘッドレスト18は質量が大きくなっているため、車両走行時の振動等によりヘッドレスト18に作用する慣性力が大きくなる。また通常時には、右側のステー24Rにおけるノッチ28以外の箇所にロック42のストッパ50が接触した状態とされる。このため、上記の慣性力によってヘッドレスト18がシートバック14に対して相対的に変位しようとすると、ホルダ32に対してロック42がガタつき、異音発生の原因となる。この点、本実施形態では、ロック収容孔40の上面と奥側凸部46との間の隙間S1、及び、ロック収容孔40の上面と手前側凸部48との間の隙間S2が、最適に設定されることにより、上記のガタ付きを効果的に防止できる。しかも、奥側凸部46及び手前側凸部48の突出高さの精度をピンポイントで確保すれば上記のガタつきを抑制できるので、製造が容易である。
【0037】
また、本実施形態では、ロック42に形成された奥側凸部46及び手前側凸部48が上方側に突出している。これにより、奥側凸部46及び手前側凸部48が通常時にホルダ32と接触しないようにすることができるので、奥側凸部46及び手前側凸部48の変形を防止又は抑制することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、ロック42は、前後方向に並ぶ二つの奥側凸部46と、前後方向に並ぶ二つの手前側凸部48とが左右方向に並んで配置されるので、ホルダ32に対するロック42のガタつきを四つの凸部46、48により良好に抑制することができる。しかも、例えば奥側凸部46及び手前側凸部48が前後方向に長尺状に形成される場合と比較して、各凸部46、48の精度の確保が容易である。
【0039】
なお、上記実施形態では、ロック42の奥側凸部46と手前側凸部48とが別々の凸部とされたが、これに限るものではない。例えば
図15に示される第1変形例のように、奥側凸部46と手前側凸部48とが左右方向に互いに繋がった構成にしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、前後方向に並ぶ二つの奥側凸部46が別々の凸部とされ、前後方向に並ぶ二つの手前側凸部48が別々の凸部とされた構成にしたが、これに限るものではない。例えば
図16に示される第2変形例のように、奥側凸部46及び手前側凸部48が前後方向に長尺なビード状(突条状)に形成された構成にしてもよく、奥側凸部46及び手前側凸部48の形状は、適宜変更可能である。
【0041】
また、上記実施形態では、ロック42の奥側凸部46及び手前側凸部48が上方側へ突出した構成にしたが、これに限らず、奥側凸部46及び手前側凸部48が下方側へ突出した構成にしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、ロック42が奥側凸部46及び手前側凸部48を有する構成にしたが、これに限らず、ロック42が奥側凸部46を有しない構成にしてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、ヘッドレストブッシュ30Rが、スピーカー搭載ヘッドレスト18の抜止用とされた構成にしたが、これに限らず、本発明に係るヘッドレストブッシュは、ヘッドレストの高さ調整用であってもよい。
【0044】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
16 ヘッドレスト装置
18 ヘッドレスト
22 スピーカー(電気機器)
24L、24R ステー
30R ヘッドレストブッシュ
32 ホルダ
38R ステー挿入孔
40 ロック収容孔
42 ロック
46 奥側凸部
48 手前側凸部