(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】二重管
(51)【国際特許分類】
F16L 9/18 20060101AFI20250130BHJP
F16L 59/14 20060101ALI20250130BHJP
F16L 59/153 20060101ALI20250130BHJP
F16L 11/115 20060101ALI20250130BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20250130BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
F16L9/18
F16L59/14
F16L59/153
F16L11/115
B32B7/027
B32B1/08 Z
(21)【出願番号】P 2021158054
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000174909
【氏名又は名称】三井金属エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100215267
【氏名又は名称】古屋 秀人
(72)【発明者】
【氏名】中田 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 光智
(72)【発明者】
【氏名】小池 穂波
(72)【発明者】
【氏名】福本 祐介
(72)【発明者】
【氏名】石原 篤
(72)【発明者】
【氏名】富田 優
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-122568(JP,A)
【文献】特開2010-269584(JP,A)
【文献】特開2016-070456(JP,A)
【文献】特開2016-205440(JP,A)
【文献】中国実用新案第212361084(CN,U)
【文献】特開2001-029297(JP,A)
【文献】実開平02-094998(JP,U)
【文献】特開昭61-084490(JP,A)
【文献】特開平05-269950(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0019916(KR,A)
【文献】実開昭54-161614(JP,U)
【文献】国際公開第2016/171144(WO,A1)
【文献】特開2002-228085(JP,A)
【文献】特開2009-074657(JP,A)
【文献】特開昭62-101996(JP,A)
【文献】特開2007-205503(JP,A)
【文献】中国実用新案第202371317(CN,U)
【文献】特開2021-030726(JP,A)
【文献】特開昭58-029650(JP,A)
【文献】特開2002-243071(JP,A)
【文献】特開2004-300940(JP,A)
【文献】特開2018-001546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管および前記外管と間隔を空けて当該外管の内部に配置される内管を備え、
前記外管および前記内管の間には断熱層が形成されており、
前記外管の最外層には防食層として樹脂が被覆されており、前記樹脂は白色材料を含むことにより前記防食層の外表面が白色であ
り、
前記外管および前記内管は金属製である、二重管。
【請求項2】
外管および前記外管と間隔を空けて当該外管の内部に配置される内管を備え、
前記外管および前記内管の間には断熱層が形成されており、
前記外管の最外層には防食層として樹脂が被覆されており、前記樹脂は白色材料を含むことにより前記防食層の外表面が白色であ
り、
前記外管および前記内管はそれぞれ長手方向に沿って波形状となっている、二重管。
【請求項3】
前記外管が波形状である場合の前記樹脂の厚さは、前記外管の波の深さの10%~100%の範囲内の大きさである、請求項
1または2記載の二重管。
【請求項4】
前記外管がストレート形状である場合の前記樹脂の厚さは、前記外管の外径の0.05%~15%の範囲内の大きさである、請求項
1記載の二重管。
【請求項5】
前記白色材料は顔料を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の二重管。
【請求項6】
前記顔料は酸化チタンを含む、請求項5記載の二重管。
【請求項7】
前記顔料の含有率は25質量%以下の大きさである、請求項5または6記載の二重管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外管および外管と間隔を空けて当該外管の内部に配置される内管を備えた二重管に関する。
【背景技術】
【0002】
液体窒素等の極低温流体の輸送を行うにあたり、管内の極低温流体の温度が上昇しないように真空断熱を利用した二重管が用いられる。このような二重管は外管および外管と間隔を空けて当該外管の内部に配置される内管を備えており、内管の内部で極低温流体が流れる。また、外管と内管との間に真空空間等の断熱層が形成されることにより外管と内管との間で断熱が行われる。このような二重管として例えば特許文献1等に開示されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/021509号(WO2018/021509A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二重管を直射日光が当たるような屋外に配置した場合は、外管の表面の温度が上昇する。ここで、二重管が曲がったり、自重のたるみによる芯ずれが生じたりした場合には、外管と内管とが接触してしまい、外管の表面の熱が内管に伝わってしまい、内管の内部を流れる極低温流体が加熱されてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、内管の内部を流れる流体が加熱されてしまうことを防止することができる二重管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の二重管は、
外管および前記外管と間隔を空けて当該外管の内部に配置される内管を備え、
前記外管および前記内管の間には断熱層が形成されており、
前記外管の最外層には防食層として樹脂が被覆されており、前記樹脂は白色材料を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の二重管によれば、直射日光による外管の表面の温度上昇を抑制でき、外管の表面の熱が内管に伝わることで内管の内部を流れる流体が加熱されてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態による二重管を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す二重管のA-A矢視による断面図である。
【
図3】
図2に示す二重管のB-B矢視による断面図である。
【
図4】外管の最外層に白色防食層および黒色防食層がそれぞれ被覆された場合の時間経過による外表面および内表面の温度の変化を示すグラフである。
【
図5】外管の最外層に被覆される防食層に使われる樹脂を板状に圧縮成形したシートにおける酸化チタンの含有率が0質量%、0.25質量%、0.5質量%、2質量%である場合の可視光の波長と反射率の関係を示すグラフである。
【
図6】外管の最外層に被覆される防食層に使われる樹脂を板状に圧縮成形したシートにおける酸化チタンの含有率が5質量%、10質量%、25質量%である場合の引張試験における伸びと応力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図3は、本発実施の形態による二重管を示す斜視図および断面図である。
【0010】
図1乃至
図3に示すように、本実施の形態による二重管2は、外管10および内管20を備えており、外管10および内管20の間には真空空間30が形成されている。内管20は外管10と間隔を空けて当該外管10の内部に配置されている。外管10の最外層には防食層12として樹脂が被覆されている。また、内管20の最外層には断熱部材22が被覆されている。このような断熱部材22および真空空間30により断熱層が形成されている。内管20の内部で流体(具体的には、液体窒素等の極低温流体)が流れるようになっている。二重管2の各構成要素について以下に説明する。
【0011】
外管10の材料は金属であり、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鋼、ステンレス鋼、Ni基合金およびCo基合金からなる群から外管10の材料が選択されるようになっている。外管10の材料としてはステンレス鋼を用いることがより好ましい。また、
図1および
図3等に示すように、外管10は長手方向に沿って波形状となっており可撓性を有している。
【0012】
図1乃至
図3に示すように、外管10の最外層には防食層12として樹脂が被覆されている。このような樹脂としては、特に材料が限定されることはなく、任意の樹脂を用いることができる。ここで、樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましく、とりわけポリエチレン樹脂の低密度ポリエチレン樹脂を用いることが特に好ましい。このような樹脂の厚さは、外管10の内面における波の深さの10%~100%の範囲内の大きさ、好ましくは30%~70%の範囲内の大きさ、特に好ましくは40%~60%の範囲内の大きさとなっている。防食層12としての樹脂の厚みが外管10の内面における波の深さの10%よりも小さい場合は、防食層12が薄すぎることにより破れやすくなるので外管10の摩耗、腐食が生じやすいという問題がある。一方、防食層12としての樹脂の厚みが外管10の内面における波の深さの100%よりも大きい場合は、防食層12が厚すぎることにより外管10が曲がりにくくなるという問題がある。また、防食層12の外周面には外管10の波形状に対応する凹凸が形成されていてもよく、あるいは防食層12の外周面が円周面となっていてもよい。このような防食層12により、損傷や摩耗、腐食、紫外線劣化といった外的要因から外管10を保護することができ、また、二重管2の用途の識別や周囲環境との調和を図ることができるようになる。
【0013】
本実施の形態では、防食層12としての樹脂は白色材料を含んでいる。白色材料は顔料を含んでおり、この顔料はC.I.ピグメントホワイト、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸や合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属化合物、タルク、クレイ等からなる群から選択された材料を含んでいる。ここで、顔料は酸化チタンを含むことが特に好ましい。酸化チタンは屈折率が高く、化学的に安定しており、安全性が高い等の特徴を有しているため、白色材料としての顔料に特に適している。より詳細には、酸化チタンは粒子径が0.2~0.3μmと小さく、可視光の散乱を大きくすることができるため、防食層12の外表面における光の反射率を大きくすることができる。また、酸化チタンは広く流通しており入手が容易である。このように、酸化チタンは白色材料の顔料として様々な優位点を有している。
【0014】
本実施の形態では、白色材料を含む樹脂が防食層12に含まれているため、防食層12の外周面を白色にすることができる。よって、二重管2を直射日光が当たるような屋外に配置した場合でも、防食層12の外表面が白色であり、光の反射率が大きくなるため、外管10の表面の温度の上昇が抑制される。このため、二重管2が曲がったり、自重のたるみによる芯ずれが二重管2で生じたりした場合に、外管10と内管20とが接触しても、外管10の温度の上昇が抑制されるため、内管20の内部を流れる極低温流体が大きく加熱されてしまうことを防止することができる。
【0015】
また、樹脂における顔料の含有率は25質量%以下の大きさとなっている。なお、樹脂における顔料の含有率は0.25質量%~25質量%の範囲内の大きさであることが好ましく、0.25質量%~10質量%の範囲内の大きさであることが更に好ましく、0.5質量%~10質量%の範囲内の大きさであることが特に好ましい。ここで、樹脂における顔料の含有率が25質量%より大きい場合は、樹脂における顔料の分散にばらつきが生じるため、特に外部温度が低い場合に、防食層12の伸びにばらつきが発生するようになり、よって外管10を曲げたときに防食層12が破断する可能性があるという問題がある。また、樹脂における顔料の含有率が0.25質量%より小さい場合は、顔料の含有量が少ないことにより防食層12に照射される可視光を十分に散乱させることができず、防食層12の表面における光の反射率が低下するため二重管2に直射日光が当たったときに外管10の表面が加熱してしまう可能性がある。
【0016】
内管20の材料は金属であり、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鋼、ステンレス鋼、ステンレス鋼、Ni基合金およびCo基合金からなる群から内管20の材料が選択されるようになっている。内管20の材料としてはステンレス鋼を用いることがより好ましい。内管20の材料は外管10の材料と同じであってもよく、あるいは内管20の材料が外管10の材料と異なっていてもよい。また、
図1および
図3等に示すように、内管20は長手方向に沿って波形状となっており可撓性を有している。このように、外管10および内管20がそれぞれ長手方向に沿って波形状となっており可撓性を有している場合には、外部環境に合わせて二重管2を布設することができ、例えば建物の柱や梁等を回避したりコーナーに沿って布設したりするために二重管2を曲げることができる。
【0017】
図1乃至
図3に示すように、内管20の最外層には断熱部材22が被覆されている。より詳細には、断熱部材22として、輻射による熱伝達をカットするスーパーインシュレーション(具体的には、金属箔または金属メッキされたプラスチックフィルム等)や、外管10と内管20とが接触したときの熱の伝達量を小さくするための熱伝導率の低いスペーサー(具体的には、棒状の樹脂等)が内管20の最外層に巻き付けられる。
【0018】
上述したように、外管10と内管20の断熱部材22との間には真空空間30が形成されている。真空空間30は完全な真空状態を意味するのではなく、真空空間30に存在する空気の大半を外へ排出することで、輻射による熱伝達をカットする断熱部材22とともに、空気を介した熱の移動を防いでいる。このように、断熱部材22および真空空間30から構成される断熱層によって、外管10と内管20との間で断熱が行われ、外管10の温度の上昇によって内管20を流れる流体の温度が上昇するのを抑制するようになっている。
【0019】
以上のような構成からなる本実施の形態の二重管2によれば、外管10および内管20の間には断熱層が形成されており、外管10の最外層には防食層12として樹脂が被覆されており、樹脂は白色材料を含んでいる。この場合は、外管10の最外層に被覆される防食層12としての樹脂が白色材料を含んでいるため、二重管2を直射日光が当たるような屋外に配置した場合でも、防食層12の外表面における光の反射率が大きくなる。よって、外管10の表面の温度の上昇が抑制される。このため、二重管2が曲がったり、自重のたるみによる芯ずれが二重管2で生じたりした場合に、外管10と内管20とが接触しても、外管10の温度の上昇が抑制されるため、内管20の内部を流れる極低温流体が大きく加熱されてしまうことを防止することができる。
【0020】
また、本実施の形態の二重管2においては、外管10および内管20はそれぞれ長手方向に沿って波形状となっている。この場合は、外部環境に合わせて二重管2を布設することができ、例えば建物の柱や梁等を回避したりコーナーに沿って布設したりするために二重管2を曲げることができる。また、二重管2を曲げることにより外管10と内管20とが接触しても、防食層12としての樹脂が白色材料を含んでいるため、外管10の温度の上昇が抑制され、よって内管20の内部を流れる極低温流体が大きく加熱されてしまうことを防止することができる。
【0021】
また、本実施の形態の二重管2においては、外管10が波形状である場合の樹脂の厚さは、外管10の波の深さの10%~100%の範囲内の大きさである。この場合は、樹脂の厚みが外管10の内面における波の深さの10%以上であることにより外管10の摩耗、腐食が生じることを抑制することができ、また、樹脂の厚みが外管10の内面における波の深さの100%以下であることにより、外管10が曲がりにくくなってしまうことを抑制することができる。
【0022】
また、本実施の形態の二重管2においては、白色材料は顔料を含んでいる。また、顔料は酸化チタンを含んでいる。上述したように、酸化チタンは粒子径が0.2~0.3μmと小さく、可視光の散乱を大きくすることができるため、防食層12の外表面における光の反射率を大きくすることができる。また、酸化チタンは広く流通しており入手が容易である。このように、酸化チタンは白色材料の顔料として様々な優位点を有している。また、顔料の含有率は25質量%以下の大きさである。樹脂における顔料の含有率が25質量%以下であることにより、外部温度が低い場合でも、防食層12の伸びにばらつきが発生することが抑制されるため、防食層12が破断してしまうことを抑制することができる。
【0023】
なお、本発明による二重管は上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0024】
例えば、本発明による二重管において、外管および内管は、それぞれ長手方向に沿って波形状となっており可撓性を有しているものに限定されることはない。他の態様として、外管および内管がそれぞれ直管(ストレート管)であってもよい。外管および内管が波形状である場合は可撓性を有するため外部環境に合わせた敷設を行うことができるが、外管および内管がそれぞれ直管である場合でも本願発明を適用することができる。具体的には、外管および内管がそれぞれ直管である場合でも、外管の最外層には防食層として樹脂が被覆されており、樹脂は白色材料を含むときには、二重管を直射日光が当たるような屋外に配置した場合でも、外管の温度が上昇してしまうことを防止することができる。とりわけ、外管および内管が直管である場合は、自重のたるみによる芯ずれにより、外管と内管とが接触することで外管の表面の熱が内管に伝わってしまうおそれがある。また、内管を支持するために外管の内面と内管の外面との間にスペーサーを設ける場合は、このスペーサーを介して外管の表面の熱が内管に伝わってしまうおそれがある。これらの問題に対して、外管の最外層に被覆される樹脂に白色材料を含ませることにより、外管の温度が上昇してしまうことを防止することができる。なお、外管および内管がそれぞれ直管である場合は、可撓性は有さないが外管の表面積が小さくなるので、外管の温度が上昇してしまうことをより一層防止することができる。
【0025】
また、外管がストレート形状である場合の防食層としての樹脂の厚さは、外管の外径の0.05%~15%の範囲内の大きさであることが好ましい。樹脂の厚さが外管の外径の0.05%より小さい場合は、防食層が薄すぎることにより破れやすくなるので外管に摩耗や腐食が生じやすくなるという問題がある。一方、樹脂の厚さが外管の外径の15%よりも大きい場合は、外管の重量が大きくなり、持ち運びが不便になるという問題がある。また、この場合は、樹脂材料を過剰に使用することになるという問題がある。これに対し、防食層としての樹脂の厚さが外管の外径の0.05%~15%の範囲内の大きさである場合は上述した問題が生じることを抑制することができる。
【0026】
また、防食層に含まれる顔料は酸化チタンに限定されない。防食層の外表面を白色にすることができるものであれば、防食層に含まれる顔料として酸化チタン以外のものが用いられてもよい。
【実施例】
【0027】
〔実施例1〕
金属の材料が冷間圧延鋼(SPCD)であり長手方向に沿って波形状となっている外管(管長1000mm、外径150mm、厚さ0.7mm、波深さ5.8mm)を作製した。また、外管には防食層として白色材料を含む樹脂を2.9mm(波深さの50%の厚さ)被覆した。樹脂として株式会社ENEOS NUC製のポリエチレン樹脂(NUCG-7641)を使用した。また、樹脂には顔料として酸化チタンを含有した大日精化工業株式会社製のマスターバッチ(PE-M 20N3127C WH)を使用し、成型品の酸化チタン濃度が1.56~2.19質量%となるように配合し、押出成形した。このような外管を直射日光の当たる場所に設置し、外管10の外表面の温度および内表面の温度を午前11時から午後3時まで経時的に測定した。外気温の平均は28.4℃であった。
図4において参照符号50で示される線は外管の外表面の温度の変化を示し、
図4において参照符号52で示される線は外管の内表面の温度の変化を示している。
【0028】
〔比較例1〕
金属の材料が冷間圧延鋼(SPCD)であり長手方向に沿って波形状となっている外管(管長1000mm、外径150mm、厚さ0.7mm、波深さ5.8mm)を作製した。また、外管には防食層として黒色材料を含む樹脂を2.9mm(波深さの50%の厚さ)被覆した。樹脂としてポリエチレン樹脂(NUCG-7641)を使用した。また、樹脂には顔料としてカーボンを含有した株式会社ENEOS NUC製のマスターバッチ(M-1535)を使用し、成型品の酸化チタン濃度が0.8~2.5質量%となるように配合し、押出成形した。このような外管を直射日光の当たる場所に設置し、外管10の外表面の温度および内表面の温度を午前11時から午後3時まで経時的に測定した。外気温の平均は28.4℃であった。
図4のグラフにおいて参照符号54で示される線は外管の外表面の温度の変化を示し、参照符号56で示される線は外管の内表面の温度の変化を示している。
【0029】
比較例1に係る外管では、直射日光が外表面に当たることにより、外管の外周面および内周面の温度が45℃~60℃まで上昇した。この場合は、外管と内管とが接触したときに、内管が加熱させられることにより内管の内部を流れる流体も加熱してしまうおそれがある。これに対し、実施例1に係る外管では、直射日光が外表面に当たっても、外管の外周面および内周面の温度が30℃~40℃の範囲内に維持された。とりわけ、外管の内周面の温度が30℃~35℃の範囲内に維持され、外気温の平均である28.4℃から大きく上昇しなかった。この場合は、外管と内管とが接触しても、内管の内部を流れる流体の温度が大きく上昇してしまうことが抑制されると考えられる。
【0030】
〔実施例2~4〕
白色材料を含む樹脂を板状に圧縮成型したシート(縦168mm、横187mm、厚さ2mm)を作製した。樹脂として株式会社ENEOS NUC製のポリエチレン樹脂(NUCG-7641)を使用した。また、樹脂には顔料として大日精化工業株式会社製のマスターバッチ(PE-M 20N3127C WH)に含有される酸化チタンを使用し、それぞれ0.25質量%(実施例2)、0.5質量%(実施例3)、2質量%(実施例4)となるように配合した。島津製作所製の紫外可視近赤外分光度計(SolidSpec-3700)を用いて、このようなシートの表面に波長が400nm~700nmの可視光を照射したときの反射率を測定した。
図5のグラフにおいて参照符号62で示される線は酸化チタンの含有率が0.25質量%であるときの波長と反射率との関係を示し、参照符号64で示される線は酸化チタンの含有率が0.5質量%であるときの波長と反射率との関係を示し、参照符号66で示される線は酸化チタンの含有率が2質量%であるときの波長と反射率との関係を示している。
【0031】
〔比較例2〕
白色材料を含まない樹脂を板状に圧縮成型したシート(縦168mm、横187mm、厚さ2mm)を作製した。樹脂として株式会社ENEOS NUC製のポリエチレン樹脂(NUCG-7641)を使用した。また、樹脂における酸化チタンの含有率は0質量%であった。島津製作所製の紫外可視近赤外分光度計(SolidSpec-3700)を用いて、このようなシートの表面に波長が400nm~700nmの可視光を照射したときの反射率を測定した。
図5のグラフにおいて参照符号60で示される線は酸化チタンの含有率が0質量%であるときの波長と反射率との関係を示している。
【0032】
比較例2に係るシートでは、シートの表面に波長が400nm~700nmの可視光を照射したときの反射率が15%~30%の範囲内の値となった。このため、比較例2に係るシートの外表面に直射日光が当たると、反射率が小さいことによりシートの温度が上昇するおそれがある。これに対し、実施例2~4に係るシートでは、シートの表面に波長が400nm~700nmの可視光を照射したときの反射率が70%~100%の範囲内の値となった。このため、実施例2~4に係るシートの外表面に直射日光が当たっても、このシートの温度が大きく上昇してしまうことが抑制されると考えられる。
【0033】
〔実施例5~7〕
白色材料を含む樹脂を板状に圧縮成型したシート(縦168mm、横187mm、厚さ2mm)を作製した。樹脂として株式会社ENEOS NUC製のポリエチレン樹脂(NUCG-7641)を使用した。また、樹脂には顔料として大日精化工業株式会社製のマスターバッチ(PE-M 20N3127C WH)に含有される酸化チタンを使用し、それぞれ5質量%(実施例5)、10質量%(実施例6)、25質量%(実施例7)となるように配合した。このようなシートから「JIS K 7161-2 プラスチック-引張特性の求め方-第2部 付属書A 小形試験片
図A.1および表A.1」に基づいたダンベル形状の引張試験片を作成し、「JIS K 7161-1 プラスチック-引張特性の求め方-第1部」の試験方法に基づき引張速度500mm/min、試験温度0℃で各実施例について3回の試験を行った。
図6のグラフにおいて参照符号71、72、73でそれぞれ示される線は酸化チタンの含有率が5質量%であるときの伸びと応力との関係を示し、参照符号74、75、76でそれぞれ示される線は酸化チタンの含有率が10質量%であるときの伸びと応力との関係を示し、参照符号77、78、79でそれぞれ示される線は酸化チタンの含有率が25質量%であるときの伸びと応力との関係を示している。
【0034】
図6のグラフに示すように、酸化チタンの含有率が5質量%、10質量%、25%質量の場合の各々において、3回の引張試験の結果において大きなばらつきが見られなかった。酸化チタンの含有率が大きすぎるときは、樹脂における酸化チタンの分散にばらつきが生じるため、特に外部温度が低い場合に、防食層の伸びにばらつきが発生するようになり、シートを曲げたときに防食層が破断する可能性があるという問題がある。しかしながら、酸化チタンの含有率が5質量%、10質量%、25%質量の場合において、3回の引張試験の結果において大きなばらつきが見られなかったため、これらの含有率では樹脂における酸化チタンの分散に大きなばらつきは生じないと考えられ、よってシートを曲げたときに防食層が破断する可能性が低いと考えられる。
【符号の説明】
【0035】
2 二重管
10 外管
12 防食層
20 内管
22 断熱部材
30 真空空間