特許 7627646 振動低減装置及び車両用シート

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2025-01-29

(45)【発行日】2025-02-06

(54)【発明の名称】振動低減装置及び車両用シート

(51)【国際特許分類】

   F16F 15/02 20060101AFI20250130BHJP

   B60N 2/90 20180101ALI20250130BHJP

   F16F 1/12 20060101ALI20250130BHJP

【ＦＩ】

F16F15/02 C

B60N2/90

F16F1/12 F

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2021189570

(22)【出願日】2021-11-22

(65)【公開番号】P2023076252

(43)【公開日】2023-06-01

【審査請求日】2024-06-10

(73)【特許権者】

【識別番号】000004640

【氏名又は名称】日本発條株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001519

【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】楠 新

(72)【発明者】

【氏名】青木 健朗

【審査官】杉山 豊博

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１８－０６５５０８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１２－０５７７５２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１６－００７６７７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１５２３３２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２１－０２０５９０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ１６Ｆ １５／０２

Ｂ６０Ｎ ２／９０

Ｆ１６Ｆ １／１２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

軸部材と、
前記軸部材の軸方向に沿って伸びる柱状に形成され、前記軸部材のまわりに配置された複数の錘と、
筒状に形成された筒状部と、複数の前記錘を支持する錘支持部と、を有し、前記軸部材が前記筒状部に挿入された状態で複数の前記錘と共に前記軸部材の軸方向に移動する錘支持部材と、
を備えた振動低減装置。

【請求項2】

前記錘支持部材は、前記軸部材の軸方向を厚み方向とする円板状に形成されていると共に前記軸部材の軸方向に間隔をあけて配置された一対の前記錘支持部を備えており、
一方の前記錘支持部には、複数の前記錘の一方側の端部が嵌合する錘嵌合部が形成され、
他方の前記錘支持部には、複数の前記錘の他方側の端部が嵌合する錘嵌合部が形成されている請求項１に記載の振動低減装置。

【請求項3】

一対の前記錘支持部は、前記筒状部によって前記軸部材の軸方向に接続されており、
前記筒状部は、前記軸部材の軸方向に二分割構造となっており、
一方の前記筒状部における他方の前記筒状部側には、第１嵌合部が設けられていると共に、他方の前記筒状部における一方の前記筒状部側には、第２嵌合部が設けられ、
前記第１嵌合部と前記第２嵌合部とが嵌合することで、一方の前記筒状部と他方の前記筒状部とが接続される請求項２に記載の振動低減装置。

【請求項4】

前記錘支持部材に対して前記軸部材の軸方向一方側及び他方側には、コイルスプリングがそれぞれ設けられ、
一方の前記錘支持部には、一方の前記コイルスプリングが当接するコイルスプリング当接部と、前記コイルスプリング当接部のまわりに設けられた環状溝と、が形成され、
他方の前記錘支持部には、他方の前記コイルスプリングが当接するコイルスプリング当接部と、前記コイルスプリング当接部のまわりに設けられた環状溝と、が形成されている請求項３に記載の振動低減装置。

【請求項5】

着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、
着座乗員の背部を支持するシートバックと、
前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方に設けられた請求項１～請求項４のいずれか１項に記載の振動低減装置と、
を備えた車両用シート。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、振動低減装置及び車両用シートに関する。

【背景技術】

【0002】

下記特許文献１には、第１の錘と第２の錘とを含んで構成された制振装置（振動低減装置）が開示されている。この文献に記載された振動低減装置は、基部と、この基部に対して振動可能な第１の錘及び第２の錘とを備えている。第１の錘及び第２の錘は、径方向に重複するように多重的に配置されている。また、基部と第１の錘とは、連結部材によって連結され、第１の錘と第２の錘とは、連結部材によって連結されている。そして、第１の錘と第２の錘とは、互いに異なる方向に振動することが可能となっている。これにより、多方向の振動を抑制することが可能となっている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１３－６８２９５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところで、複数の錘を含んで構成された振動低減装置及びこれを備えた車両用シートでは、錘の製造コストを低減できることが望ましいが上記特許文献に記載された構成には、この点で改善の余地がある。

【0005】

本発明は上記事実を考慮し、錘の製造コストを低減することができる振動低減装置及び車両用シートを得ることが目的である。

【課題を解決するための手段】

【0006】

第１の態様の振動低減装置は、軸部材と、前記軸部材の軸方向に沿って伸びる柱状に形成され、前記軸部材のまわりに配置された複数の錘と、筒状に形成された筒状部と、複数の前記錘を支持する錘支持部と、を有し、前記軸部材が前記筒状部に挿入された状態で複数の前記錘と共に前記軸部材の軸方向に移動する錘支持部材と、を備えている。

【0007】

第１の態様の振動低減装置によれば、複数の錘を支持する錘支持部材が、複数の錘と共に軸部材の軸方向に移動する。これにより、振動低減装置が取付けられた部材の振動が低減される。ここで、複数の錘は、柱状に形成されている。この構成では、例えば、長尺状の部材を所定の長さに切断することにより、複数の錘を得ることができる。その結果、錘の製造コストを低減することができる。

【0008】

第２の態様の振動低減装置は、第１の態様の振動低減装置において、前記錘支持部材は、前記軸部材の軸方向を厚み方向とする円板状に形成されていると共に前記軸部材の軸方向に間隔をあけて配置された一対の前記錘支持部を備えており、一方の前記錘支持部には、複数の前記錘の一方側の端部が嵌合する錘嵌合部が形成され、他方の前記錘支持部には、複数の前記錘の他方側の端部が嵌合する錘嵌合部が形成されている。

【0009】

第２の態様の振動低減装置によれば、複数の錘の一方側の端部を一方の錘支持部に形成された錘嵌合部に嵌合させると共に、複数の錘の他方側の端部を他方の錘支持部に形成された錘嵌合部に嵌合させることにより、複数の錘を錘支持部材に支持させることができる。また、この構成では、複数の錘の全体が錘支持部材内に配置される構成と比べて、錘支持部材の体積を削減することができる。

【0010】

第３の態様の振動低減装置は、第２の態様の振動低減装置において、一対の前記錘支持部は、前記筒状部によって前記軸部材の軸方向に接続されており、前記筒状部は、前記軸部材の軸方向に二分割構造となっており、一方の前記筒状部における他方の前記筒状部側には、第１嵌合部が設けられていると共に、他方の前記筒状部における一方の前記筒状部側には、第２嵌合部が設けられ、前記第１嵌合部と前記第２嵌合部とが嵌合することで、一方の前記筒状部と他方の前記筒状部とが接続される。

【0011】

第３の態様の振動低減装置によれば、先ず、複数の錘の一方側の端部を一方の錘支持部に形成された錘嵌合部に嵌合させる。次に、第１嵌合部と第２嵌合部とを嵌合させると共に、複数の錘の他方側の端部を他方の錘支持部に形成された錘嵌合部に嵌合させる。このように、第３の態様の振動低減装置では、上記の手順で複数の錘を錘支持部材に支持させることができる。

【0012】

第４の態様の振動低減装置は、第３の態様の振動低減装置において、前記錘支持部材に対して前記軸部材の軸方向一方側及び他方側には、コイルスプリングがそれぞれ設けられ、一方の前記錘支持部には、一方の前記コイルスプリングが当接するコイルスプリング当接部と、前記コイルスプリング当接部のまわりに設けられた環状溝と、が形成され、他方の前記錘支持部には、他方の前記コイルスプリングが当接するコイルスプリング当接部と、前記コイルスプリング当接部のまわりに設けられた環状溝と、が形成されている。

【0013】

第４の態様の振動低減装置によれば、一方のコイルスプリングが一方の錘支持部のコイルスプリング当接部に当接していると共に、他方のコイルスプリングが他方の錘支持部のコイルスプリング当接部に当接している。また、各々の錘支持部のコイルスプリング当接部のまわりには、環状溝が形成されている。これにより、コイルスプリングがコイルスプリング当接部からズレ動いたとしても、コイルスプリングが環状溝に係止されることにより、コイルスプリングのこれ以上のズレ動きを抑制することができる。

【0014】

第５の態様の車両用シートは、着座乗員の臀部を支持するシートクッションと、着座乗員の背部を支持するシートバックと、前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方に設けられた第１の態様～第４の態様のいずれか１つの態様の振動低減装置と、を備えている。

【0015】

第５の態様の車両用シートの一部を構成する振動低減装置では、複数の錘を支持する錘支持部材が、複数の錘と共に軸部材の軸方向に移動する。これにより、振動低減装置が取付けられた車両用シートの振動が低減される。ここで、複数の錘は、柱状に形成されている。この構成では、例えば、長尺状の部材を所定の長さに切断することにより、複数の錘を得ることができる。その結果、錘の製造コストを低減することができる。

【発明の効果】

【0016】

本発明に係る振動低減装置及び車両用シートは、錘の製造コストを低減することができる、という優れた効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【0017】

【図1】本実施形態の振動低減装置を備えた車両用シートを示す側面図である。

【図2】本実施形態の振動低減装置を示す斜視図である。

【図3】本実施形態の振動低減装置を分解して示す分解斜視図である。

【図4】本実施形態の振動低減装置を軸部材の軸方向に沿って切断した断面を示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0018】

図１～図４を用いて、本実施形態の振動低減装置１０を備えた車両用シート１２について説明する。

【0019】

図１には、本実施形態の振動低減装置１０を備えた車両用シート１２をシート左側から見た側面図が示されている。なお、図中における矢印ＦＲはシート前方側、矢印ＵＰはシート上方側、矢印ＲＨはシート幅方向右側、矢印ＬＨはシート幅方向左側をそれぞれ示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート幅方向の左右を示すものとする。

【0020】

図１に示されるように、車両用シート１２は、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション１４と、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバック１６と、着座乗員の頭部をシート後方側から支持するヘッドレスト１８と、を備えている。シートバック１６は、シートクッション１４の後端部に取付けられており、前後方向に傾動させることが可能となっている。また、ヘッドレスト１８は、シートバック１６の上端部に取付けられている。ここで、振動低減装置１０は、シートバック１６の上方側の部位の内部に設けられており、シートバック１６の骨格を形成するシートバックフレームに固定されている。なお、振動低減装置１０は、シートクッション１４及びシートバック１６のどちらか一方に設けられていてもよいし、シートクッション１４及びシートバック１６の両方に設けられていてもよい。

【0021】

図２及び図３に示されるように、振動低減装置１０は、シートバックフレームに固定される軸部材２０と、軸部材２０のまわりに配置された複数の錘５２と、複数の錘５２を支持する錘支持部材２５と、を備えている。また、振動低減装置１０は、錘支持部材２５の両側に設けられた一対のコイルスプリング２６を備えている。

【0022】

図３に示されるように、軸部材２０は、金属材料を用いて生成された段付ボルトであり、ボルト軸部２８と、螺子部３０と、ボルト頭部３２と、を備えている。ボルト軸部２８は、円柱状に形成されていると共に軸部材２０の軸方向の中間部を構成している。螺子部３０は、軸部材２０の軸方向一方側の端部を構成している。この螺子部３０の外周部には、雄ネジが形成されている。また、螺子部３０の外径Ｄ２は、ボルト軸部２８の外径Ｄ１よりも小さな外径に設定されている。これにより。螺子部３０とボルト軸部２８との境目には、段差部３４が形成されている。ボルト頭部３２は、軸部材２０の軸方向他方側の端部を構成している。このボルト頭部３２の外径Ｄ３は、ボルト軸部２８の外径Ｄ１よりも大きな外径に設定されている。また、ボルト頭部３２におけるボルト軸部２８とは反対側には、六角レンチ等の工具が係合する工具係合部３６が形成されている。なお、図中に適宜示す矢印Ｚ方向、矢印Ｒ方向及び矢印Ｃ方向は、軸部材２０の軸方向一方側、径方向外側及び周方向一方側をそれぞれ示すものとする。また、以下、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、軸部材２０の軸方向、径方向、周方向を示すものとする。

【0023】

複数の錘５２は、軸方向に沿って伸びる円柱状に形成されている。なお、本実施形態では、８個の錘５２が設けられている。また、複数の錘５２の外径Ｄ１０及び軸方向への長さＬ３は、互いに同じ外径及び長さに設定されている。ここで、本実施形態の錘５２は、外径がＤ１０の長尺状の部材（一例として棒状の鋼材）を長さＬ３毎に切断することにより製造されている。また、複数の錘５２の軸方向一方側の端部５２Ａ及び軸方向他方側の端部５２Ｂは、後述する錘支持部材２５に支持されている。なお、錘５２の数や形状（複数の錘５２の質量）は、振動を低減する周波数等を考慮して適宜設定すればよい。

【0024】

錘支持部材２５は、樹脂材料を用いて形成されている。図３及び図４に示されるように、この錘支持部材２５は、筒状に形成された筒状部４０を備えている。この筒状部４０の内径Ｄ６は、ボルト軸部２８の外径Ｄ１よりもやや大きな内径に設定されている。これにより、筒状部４０の内側には、ボルト軸部２８がクリアランスを有して挿入されるようになっている。

【0025】

また、錘支持部材２５は、筒状部４０における軸方向一方側の端部から径方向外側へ向けて突出する錘支持部としての第１錘支持部５４を備えている。また、錘支持部材２５は、筒状部４０における軸方向他方側の端部から径方向外側へ向けて突出する錘支持部としての第２錘支持部５６を備えている。第１錘支持部材５４及び第２錘支持部５６は、軸方向を厚み方向とする円板状に形成されていると共に軸方向に間隔をあけて配置されている。また、第１錘支持部材５４と第２錘支持部５６とは、筒状部４０によって軸方向に接続された構成となっている。

【0026】

また、第１錘支持部５４の外周部には、複数の錘５２の軸方向一方側の端部５２Ａがそれぞれ嵌合する複数（本実施形態では８個）の錘嵌合部５８が形成されている。複数の錘嵌合部５８は、軸方向他方側が開放された凹状の窪みであり、周方向に沿って等間隔に配置されている。

【0027】

また、第２錘支持部５６の外周部には、複数の錘５２の軸方向他方側の端部５２Ｂがそれぞれ嵌合する複数（本実施形態では８個）の錘嵌合部５８が形成されている。複数の錘嵌合部５８は、軸方向一方側が開放された凹状の窪みであり、周方向に沿って等間隔に配置されている。

【0028】

図４に示されるように、第１錘支持部５４の内周部における軸方向一方側の面は、一方のコイルスプリング２６が当接するコイルスプリング当接部６０となっている。また、第１錘支持部５４のコイルスプリング当接部６０のまわりには、当該コイルスプリング当接部６０を囲むように設けられた環状溝６２が形成されている。この環状溝６２は、軸方向一方側が開放された凹状の窪みとなっている。

【0029】

図３及び図４に示されるように、第２錘支持部５６の内周部における軸方向他方側の面は、他方のコイルスプリング２６が当接するコイルスプリング当接部６０となっている。また、第２錘支持部５６のコイルスプリング当接部６０のまわりには、当該コイルスプリング当接部６０を囲むように設けられた環状溝６２が形成されている。この環状溝６２は、軸方向一方側が開放された凹状の窪みとなっている。また、図３に示されるように、環状溝６２を軸方向から見て、当該環状溝６２の径方向内側の縁は円形状に形成されている。また、環状溝６２を軸方向から見て、当該環状溝６２の径方向外側の縁は星形の形状に形成されている。これにより、環状溝６２の溝幅（径方向への寸法）は、周方向に沿って狭い部分と広い部分とが交互に配置された構成となっている。なお、第１錘支持部５４に形成された環状溝６２も第２錘支持部５６に形成された環状溝６２と同様の構成となっている。

【0030】

図３及び図４に示されるように、本実施形態では、筒状部４０が軸方向に二分割構造となっている。詳述すると、筒状部４０は、軸方向の中央部分において分割された構成となっている。なお、説明の都合上、分割された筒状部４０の軸方向一方側の部分を一方の筒状部４０と呼び、分割された筒状部４０の軸方向他方側の部分を他方の筒状部４０と呼ぶことにする。

【0031】

一方の筒状部４０における軸方向他方側の端部は、第１嵌合部６４となっている。なお、一方の筒状部４０の外径Ｄ１１は、軸方向一方側の端部から第１嵌合部６４である軸方向他方側の端部にかけてほぼ一定の外径となっている。また、第１嵌合部６４の外周部には、径方向外側へ向けて突出する係止凸部６８が形成されている。

【0032】

他方の筒状部４０における軸方向一方側の端部は、第２嵌合部６６となっている。他方の筒状部４０の外径Ｄ１２は、軸方向他方側の部分に対して第２嵌合部６６である軸方向一方側の端部のほうが大きな外径となっている。また、第２嵌合部６６の内径Ｄ１３は、第１嵌合部６４の外径Ｄ１１とほぼ同じ外径となっている。これにより、第１嵌合部６４を第２嵌合部６６に挿入することが可能となっている。また、第２嵌合部６６の内周部には、係止凹部７０が形成されている。そして、第１嵌合部６４の第２嵌合部６６への挿入が完了した状態では、第１嵌合部６４から突出する係止凸部６８が係止凹部７０の内部に配置される。これにより、第１嵌合部６４と第２嵌合部６６との嵌合状態が保たれて、一方の筒状部４０と他方の筒状部４０との接続状態が保たれるようになっている。

【0033】

一対のコイルスプリング２６は、互いに同じ寸法及びばね定数に設定された圧縮コイルスプリングであり、その内周部には軸部材２０が挿入されている。錘支持部材２５に対して軸方向一方側に配置されたコイルスプリング２６は、第１錘支持部５４のコイルスプリング当接部６０に当接している。また、錘支持部材２５に対して軸方向他方側に配置されたコイルスプリング２６は、第２錘支持部５６のコイルスプリング当接部６０に当接している。

【0034】

錘支持部材２５に対して軸方向一方側に配置されたコイルスプリング２６は、段差部３４に接触した状態で軸部材２０に固定された仮ワッシャ４８と錘支持部材２５との間で軸方向に圧縮されている。なお、仮ワッシャ４８は、車両用シート１２に取付けられる前の状態の振動低減装置１０を組立体として流通等させるために用いられる部材である。軸部材２０の螺子部３０が仮ワッシャ４８に挿入された状態で、ナット５０が螺子部３０に螺合されることで、仮ワッシャ４８が軸部材２０に固定されている。また、振動低減装置１０が車両用シート１２に取付けられた状態では、仮ワッシャ４８は取り外され、仮ワッシャ４８と対応する部分には、シートバックフレームの一部分が配置される。

【0035】

錘支持部材２５に対して軸方向他方側に配置されたコイルスプリング２６は、ボルト頭部３２と錘支持部材２５との間で軸方向に圧縮されている。

【0036】

（本実施形態の作用並びに効果）
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。

【0037】

図２～図４に示されるように、本実施形態の振動低減装置１０では、錘支持部材２５の筒状部４０には、軸部材２０のボルト軸部２８が挿入されている。これにより、複数の錘５２を軸部材２０に錘支持部材２５を介して支持させることができると共に、複数の錘５２を軸部材２０に沿って移動可能に支持することができる。そして、図１～図４に示されるように、以上説明した本実施形態の振動低減装置１０を備えた車両用シート１２が軸部材２０の軸方向に振動すると、複数の錘５２が錘支持部材２５と共に軸部材２０に沿って移動する。これにより、車両用シート１２の共振が抑制される。

【0038】

ここで、振動低減装置１０の一部を構成する複数の錘５２は、外径がＤ１０の長尺状の部材（一例として棒状の鋼材）を長さＬ３毎に切断することにより製造されている。これにより、複数の錘５２の製造コストを低減することができる。また、本実施形態では、軸部材２０と複数の錘５２とが直接摺動しない構成となっている。これにより、軸部材２０と複数の錘５２との接触を考慮した表面処理を軸部材２０及び複数の錘５２に施すことを不要にすることができる。これによっても、複数の錘５２の製造コストを削減することができる。

【0039】

また、本実施形態では、複数の錘５２の軸方向一方側の端部５２Ａを錘支持部材２５の第１錘支持部５４に形成された錘嵌合部５８に嵌合させると共に、複数の錘５２の軸方向他方側の端部５２Ｂを錘支持部材２５の第２錘支持部５６に形成された錘嵌合部５８に嵌合させることにより、複数の錘５２を錘支持部材２５に支持させることができる。また、この構成では、複数の錘の全体が錘支持部材２５内に配置される構成と比べて、錘支持部材２５の体積を削減することができる。

【0040】

また、本実施形態では、錘支持部材２５の筒状部４０が軸方向に二分割構造となっている。本実施形態の錘支持部材２５の構成では、先ず、複数の錘５２の軸方向他方側の端部５２Ｂを第２錘支持部５６に形成された複数の錘嵌合部５８にそれぞれ嵌合させる。次に、第１嵌合部６４と第２嵌合部６６とを嵌合させると共に、複数の錘５２の軸方向一方側の端部５２Ａを第１錘支持部５４に形成された複数の錘嵌合部５８にそれぞれ嵌合させる。このように、本実施形態では、上記の手順で複数の錘５２を錘支持部材２５に支持させることができる。また、上記手順では、複数の錘５２を錘支持部材２５に支持させる際に、複数の錘５２がバラけることを抑制することができる。

【0041】

さらに、本実施形態では、一方のコイルスプリング２６が第１錘支持部５４のコイルスプリング当接部６０に当接していると共に、他方のコイルスプリング２６が第２錘支持部５６のコイルスプリング当接部６０に当接している。また、第１錘支持部５４及び第２錘支持部５６のコイルスプリング当接部６０のまわりには、環状溝６２が形成されている。これにより、コイルスプリング２６がコイルスプリング当接部６０からズレ動いたとしても、コイルスプリング２６が環状溝６２に係止されることにより、コイルスプリング２６のこれ以上のズレ動きを抑制することができる。

【0042】

なお、本実施形態では、第１錘支持部５４及び第２錘支持部５６のコイルスプリング当接部６０のまわりに環状溝６２を形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、コイルスプリング２６のズレ動きを抑制するための他の構成が適用されていれば、環状溝６２が形成されていなくてもよい。

【0043】

また、本実施形態では、錘支持部材２５の筒状部４０が軸方向に二分割構造となっている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。錘支持部材２５の筒状部４０を軸方向に二分割構造とするか否かについては、複数の錘５２を錘支持部材２５に組み付ける際の手順を考慮して、適宜選択すればよい。

【0044】

さらに、本実施形態では、複数の錘５２の軸方向の中央部が錘支持部材２５から露出している例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の錘５２の全体が錘支持部材２５に覆われている構成としてもよい。

【0045】

また、本実施形態では、複数の錘５２が円柱状に形成されている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の錘５２が角柱状に形成されていてもよい。

【0046】

以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。

【符号の説明】

【0047】

１０ 振動低減装置
１２ 車両用シート
１４ シートクッション
１６ シートバック
２０ 軸部材
２５ 錘支持部材
２６ コイルスプリング
４０ 筒状部
５２ 錘
５４ 第１錘支持部（錘支持部）
５６ 第２錘支持部（錘支持部）
５８ 錘嵌合部
６０ コイルスプリング当接部
６２ 環状溝
６４ 第１嵌合部
６６ 第２嵌合部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】