(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
A47C 7/50 20060101AFI20250130BHJP
B60N 3/06 20060101ALI20250130BHJP
B60N 2/30 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A47C7/50 A
B60N3/06
B60N2/30
(21)【出願番号】P 2021211098
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓司
(72)【発明者】
【氏名】志村 慎太朗
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-187821(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1902332(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0295353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/50
B60N 3/06
B60N 2/30,2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上下方向に変位可能とされ、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
後端部が回転可能に前記シートクッションに取り付けられ、前記着座乗員の脚部をシート下方側から支持するオットマンと、
前記オットマンに設けられたオットマン側軸部と、前記シートクッションの変位に伴って変位する変位部材に設けられた変位側軸部と、前記オットマン側軸部と前記変位側軸部とに取り付けられた弾性部材と、を有し、前記シートクッションがシート下方側に変位にすると前記オットマン側軸部と前記変位側軸部との軸間距離が広がり、前記軸間距離が広がることで大きくなった前記弾性部材の引張力で前記オットマンの前端部をシート上方側に回転させて持ち上げる持上機構と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記シートクッションは、乗員が着座可能な着座位置と前記着座位置よりもシート下方側の格納位置との間において変位可能とされ、
前記変位部材は、一端部が前記シートクッションに回転可能に接続され、他端部が車両のフロア側に回転可能に接続されたリンク部材である、
請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記持上機構は、前記シートクッションが前記着座位置に配置された状態では、前記オットマンの前端部をシート上方側に持ち上げる前記弾性部材の引張力は、前記オットマンの前端部を自重によってシート下方側に押し下げる押下力よりも小さく、
前記シートクッションの前記着座位置から前記格納位置への変位に伴って引張力が押下力よりも大きくなる、
請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記持上機構は、前記シートクッションのシート下方側への変位に伴って、前記軸間距離が徐々に広がり、前記オットマンの前端部を徐々に持ち上げる、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記弾性部材は、引張コイルバネである、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、オットマンを備えた車両用シート構造が開示されている。この文献に記載された車両用シート構造では、シートクッションが下方側へ移動した際に、格納位置にあるオットマンの先端位置がシートクッションに対して相対的に高くなるようにオットマン位置を規制するスライド板を設けている。これにより、シートクッションの高さを下げたときに、オットマンの先端がフロアに当たらないようにすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成は、シートクッションの変位に伴いオットマンがフロア等に当たることを抑制するという観点では有用な構成である。しかし、スライド板をフロアに設けること等が必要となり、オットマンの周辺の構造が複雑化する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、構造が複雑化すること抑制しつつ、シートクッションを変位させた際にオットマンの前端部を持ち上げることができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、シート上下方向に変位可能とされ、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、後端部が回転可能に前記シートクッションに取り付けられ、前記着座乗員の脚部をシート下方側から支持するオットマンと、前記オットマンに設けられたオットマン側軸部と、前記シートクッションの変位に伴って変位する変位部材に設けられた変位側軸部と、前記オットマン側軸部と前記変位側軸部とに取り付けられた弾性部材と、を有し、前記シートクッションがシート下方側に変位にすると前記オットマン側軸部と前記変位側軸部との軸間距離が広がり、前記軸間距離が広がることで大きくなった前記弾性部材の引張力で前記オットマンの前端部をシート上方側に回転させて持ち上げる持上機構と、を備えた車両用シートである。
【0007】
第一態様の車両用シートでは、シートクッションがシート下方側に変位されると、シートクッションと共に変位部材が変位する。これにより、持上機構におけるオットマン側軸部と変位側軸部との軸間距離が広がり、弾性部材の引張力が大きくなる。そして、大きくなった弾性部材の引張力によってオットマンの前端部がシート上方側に回転して持ち上がる。このように簡単な機構でシートクッションがシート下方側に変位にするとオットマンの前端部がシート上方側に持ち上げられる。
【0008】
第二態様は、前記シートクッションは、乗員が着座可能な着座位置と前記着座位置よりもシート下方側の格納位置との間において変位可能とされ、前記変位部材は、一端部が前記シートクッションに回転可能に接続され、他端部が車両のフロア側に回転可能に接続されたリンク部材である、第一態様の車両用シートである。
【0009】
第二態様の車両用シートでは、シートクッションが着座位置からシート下方側の格納位置に変位すると変位部材が回転する。これにより、持上機構におけるオットマン側軸部と変位側軸部との軸間距離が広がり、弾性部材の引張力でオットマンの前端部がシート上方側に回転して持ち上がる。このように簡単な機構でシートクッションが着座位置からシート下方側の格納位置に変位にするとオットマンの前端部がシート上方側に持ち上げられる。
【0010】
なお、「リンク部材の他端部が車両のフロア側に回転可能に接続」とは、リンク部材の他端部が、フロアに直接回転可能に接続される構成だけでなく、フロア上に固定された部材等に回転可能に接続される構成が含まれる。
【0011】
第三態様は、前記持上機構は、前記シートクッションが前記着座位置に配置された状態では、前記オットマンの前端部をシート上方側に持ち上げる前記弾性部材の引張力は、前記オットマンの前端部を自重によってシート下方側に押し下げる押下力よりも小さく、前記シートクッションの前記着座位置から前記格納位置への変位に伴って引張力が押下力よりも大きくなる、第二態様に記載の車両用シートである。
【0012】
第三態様の車両用シートでは、シートクッションが着座位置に配置された状態では、オットマンの前端部をシート上方側に持ち上げる弾性部材の引張力がオットマンの前端部を自重によってシート下方側に下げる押下力よりも小さい。よって、シートクッションが着座位置に配置された状態では、弾性部材の引張力でオットマンが持ち上がらない。
【0013】
第四態様は、前記持上機構は、前記シートクッションのシート下方側への変位に伴って、前記軸間距離が徐々に広がり、前記オットマンの前端部を徐々に持ち上げる、第一態様~第三態様のいずれか一態様に記載の車両用シートである。
【0014】
第四態様の車両用シートでは、シートクッションのシート下方側への変位に伴って、軸間距離が徐々に広がってオットマンの前端部が徐々に持ち上がる。よって、オットマンの前端部が急に持ち上がる場合と比較し、オットマンの挙動がスムーズである。
【0015】
第五態様は、前記弾性部材は、引張コイルバネである、第一態様~第四態様のいずれか1項に記載の車両用シートである。
【0016】
第五態様の車両用シートでは、弾性部材が引張コイルバネであるので、弾性部材がゴムの場合と比較し、経時変化が少なく、長期間に亘り引張力が安定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両用シートは、構造が複雑化すること抑制しつつ、シートクッションを変位させた際にオットマンをシートクッションに対して変位させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態の車両用シートをシート左側から見た側面図であり、シートクッションが着座位置に位置している状態を示している。
【
図2】一実施形態の車両用シートをシート左側から見た側面図であり、シートクッションが着座位置から格納位置へ移動される際の中間位置に位置している状態を示している。
【
図3】一実施形態の車両用シートをシート左側から見た側面図であり、シートクッションが格納位置に位置している状態を示している。
【
図4】
図1のシートクッションが着座位置に位置している状態における(A)はオットマンが格納位置の状態の側面図であり、(B)はオットマンが水平状態の側面図であり、(C)はオットマンの前端部を最も高く持ち上げた状態の側面図である。
【
図5】変形例の持上機構を備えた車両用シートをシート左側から見た
図1に対応する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
本発明の一実施形態の車両用シートについて説明する。なお、図中における矢印FRはシート前方側を示し、矢印UPはシート上方側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、前後はシート前後方向の前後を示し、上下はシート上下方向の上下を示し、左右はシート幅方向の左右を示すものとする。
【0020】
(構造)
まず、車両用シート10の構造について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバック14と、着座乗員の脚部をシート下方側から支持するオットマン50と、を備えている。
【0022】
図1~
図3に示すように、本実施形態の車両用シート10は、シートバック14を前方側へ向けて傾倒させることで、当該シートバック14とシートクッション12とを上下方向に重ねることが可能となっている。また、シートバック14を前方側へ向けて傾倒させる際にシートクッション12及びシートバック14が下方側へ変位される機構を有している。なお、この機構をチルトダウン機構と呼ぶこととする。
【0023】
本実施形態の車両用シート10は、チルトダウン機構によって、シートクッション12が下方側へ変位される際、オットマン50の下端部が車両のフロア18に当接することを抑制するために、オットマン50の前端部52を持ち上げる持上機構100を備えている。なお、持上機構100についての説明は、後述する。
【0024】
図1に示すように、シートクッション12は、当該シートクッション12の骨格を構成するシートクッションフレーム22を備えている。このシートクッションフレーム22には、表皮材に覆われたシートクッションパッド16が取り付けられている。
【0025】
シートクッションフレーム22は、左右方向に間隔をあけて配置されていると共に前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム24を備えている。左右一対のサイドフレーム24の後端部には、シートバック14が前後方向に傾動可能(回転可能)に支持されている。また、左右一対のサイドフレーム24の前端部24Aには、オットマン支持部26の後端部が固定されている。このオットマン支持部26の前端部には、オットマン50の後端部54が回転可能に支持されている。
【0026】
左右一対のサイドフレーム24の前端部24Aは、チルトダウン機構を構成する部材であると共に変位部材の一例としての左右一対のリンク部材30を介して、車体フロアに固定された左右一対のベース部材28と接続されている。リンク部材30の一端部32(
図1では上端部)は、サイドフレーム24の前端部24Aに左右方向に沿ったシート側回転軸33を回転中心に回転するように設けられている。また、リンク部材30の他端部34(
図1では下端部)は、ベース部材28に設けられた左右一対の固定部29に左右方向に沿った固定側回転軸35を回転中心に回転するように設けられている。
【0027】
これにより、リンク部材30が、他端部34の固定側回転軸35を回転中心として、一端部32側がシート下方側に回転することで、シートクッション12を
図1に示された着座位置A1と
図3に示された格納位置A2との間において移動させることが可能となっている。なお、本実施形態では、シートクッション12が着座位置A1(
図1参照)から格納位置A2(
図3参照)へ移動する際に、シートクッション12が下降すると共に前方側へ移動するようになっている。
【0028】
シートバック14は、当該シートバック14の骨格を構成するシートバックフレーム(図示略)を備えている。このシートバックフレームに表皮材で覆われたシートバックパッド15が取付けられている。シートバック14は、着座位置B1(
図1参照)と格納位置B2(
図3参照)との間において移動させることが可能となっている。なお、本実施形態では、シートバック14が着座位置B1(
図1参照)から格納位置B2(
図3参照)へ移動する際に、シートバック14が前方側へ傾動すると共に下降するようになっている。
【0029】
オットマン50は、当該オットマン50の骨格を構成するオットマンフレーム(図示略)を備えている。このオットマンフレームに表皮材で覆われたクッション部材51が取付けられている。オットマン50は、後端部54がサイドフレーム24の前端部24Aに取り付けられたオットマン支持部26に回転可能に取り付けられている。具体的には、オットマン50は、後端部54の左右方向に沿ったオットマン側回転軸55を回転中心として前端部52がシート上下方向に回転する。
【0030】
ここで、
図1に示すオットマン50は、格納位置Cに位置している。シートクッション12が着座位置A1に位置している状態で、且つオットマン50が格納位置Cに位置している状態では、オットマン50がシートクッション12に着座した乗員の脚部に接触することが抑制されている。また、シートクッション12が着座位置A1に位置している状態で、且つオットマン50が格納位置Cに位置している状態では、オットマン50の前端部52が車両のフロア18と間隔があいている。
【0031】
図1に示されたシートクッション12が着座位置A1において、
図4に示すように、オットマン50は、格納位置C(
図4(A))から前端部52を上方側へ傾動されることにより、着座乗員の脚部をシート下方側から支持可能な所望の支持位置に配置することが可能となっている。オットマン50を格納位置C(
図4(A))から所望の支持位置へ傾動させる構成は、手動の構成であってもよいし電動の構成であってもよい。なお、
図4(B)はオットマン50を水平にした状態の図であり、
図4(B)はオットマン50の前端部52を最も上方に持ち上げた状態の図である。
【0032】
また、オットマン50を所望の支持位置に保持する構成は、後述する持上機構100の動作を妨げない構成であればよい。一例として、オットマン50を格納位置Cから支持位置側へ傾動させる際においては、格納位置Cから所望の角度まで傾動されたオットマン50の下方側への傾動のみがロックされ、上方側への傾動は自由に行える構成である。なお、傾動されたオットマン50を下方側(格納位置C側)へ戻す際においては、保持解除部を操作することにより、オットマン50の下方側への傾動が許容される構成とすればよい。一例としてあげると、特開2010-5216のように、オットマン50を下方に回転させる場合はオットマン側回転軸55に設けられたコイルバネが締まって回転がロックされ、オットマン50を上方に回転させる場合はコイルバネが開き自由に回転できる機構である。
【0033】
オットマン50を持ち上げる持上機構100は、オットマン側軸部102と、変位部材の一例としてのリンク部材30と、変位側軸部の一例としてのリンク側軸部104と、弾性部材の一例としての引張コイルバネ110と、を含んで構成されている。
【0034】
オットマン側軸部102は、オットマン50の後端部54の側部から左右方向に突出するように設けられている。本実施形態では、オットマン側軸部102は、オットマン50の後端部54の側部におけるオットマン側回転軸55の後方側斜め上方に隣接して設けられている。
【0035】
リンク側軸部104は、リンク部材30の一端部32の側部から左右方向に突出するように設けられている。本実施形態では、オットマン側軸部102は、オットマン側回転軸55の略前方側に間隔をあけて設けられている。
【0036】
引張コイルバネ110は、オットマン側軸部102とのリンク側軸部104とに端部が取り付けられている。
【0037】
なお、本実施形態では、左右両方にオットマン側軸部102とリンク側軸部104と引張コイルバネ110とが設けられているが、これに限定されるものではない。左右いずれか一方にオットマン側軸部102とリンク側軸部104と引張コイルバネ110とが設けられていてもよい。
【0038】
オットマン側軸部102とリンク側軸部104とに端部が取り付けられた引張コイルバネ110の引張力は、オットマン側軸部102とリンク側軸部104との軸間距離が狭くなる方向に力が作用している。そして、この引張コイルバネ110の引張力は、オットマン50の前端部52を上方側に持ち上げる方向に作用する。
【0039】
ここで、前述したように、
図1に示す着座位置A1において、
図4に示すように、オットマン50は、前端部52を上方側へ傾動されることにより、オットマン50の下方側への傾動のみがロックされ、上方側への傾動は自由に行える。
【0040】
このとき、オットマン50の前端部52を上方側に持ち上げる方向に作用する引張コイルバネ110の引張力は、オットマン50の前端部52を自重が下方に押し下げる押下力よりも小さい。よって、
図1に示された着座位置A1において、
図4(A)に示すように、格納位置Cのオットマン50の前端部52が持ち上がることがない。また、
図4(A)~
図4(C)に示すようにオットマン50を回転させても引張力よりも押下力の方が大きい。よって、
図1に示された着座位置A1においては、オットマン50を自由に回転させることができる。
【0041】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
図1、
図2及び
図3に示すように、本実施形態の車両用シート10のシートバック14が着座位置B1(
図1参照)から格納位置B2(
図3参照)へ変位されることにより、シートクッション12が着座位置A1(
図1参照)から格納位置A2(
図3参照)に変位される。これにより、リンク部材30の一端部32が他端部34の固定側回転軸35を中心に前側下方に傾動される。
【0043】
図2及び
図3に示すように、リンク部材30の一端部32が前側下方に傾動されると、オットマン側軸部102とリンク側軸部104との軸間距離が徐々に広がる。軸間距離が徐々に広がることで引張コイルバネ110が延び引張力が徐々に大きくなる。これによりオットマン50の前端部52を上方側に持ち上げる方向に作用する引張コイルバネ110の引張力は、オットマン50の前端部52を自重によって下方に押し下げる押下力よりも徐々に大きくなる。そして、徐々に大きくなる引張力によって、オットマン50の前端部52が徐々に持ち上がり、オットマン50の前端部52を車両のフロア18と離間させる。
【0044】
すなわち、本実施形態では、シートクッション12が着座位置A1(
図1参照)から格納位置A2(
図3参照)への変位に伴ってオットマン50が下方に移動しても、オットマン50の前端部52が徐々に持ち上がり、前端部52が車両のフロア18に当接することが防止される。
【0045】
また、本実施形態では、シートクッション12と共に変位するリンク部材30を設けると共に、オットマン50及びリンク部材30に、オットマン側軸部102、リンク側軸部104及び引張コイルバネ110を設けるという単純な構成により、シートクッション12を変位させた際にオットマン50の前端部52を持ち上げることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、変位部材の一例としてのリンク部材30は、持上機構100を構成する部材であると共にチルトダウン機構を構成する部材である。よって、持上機構100を構成する変位部材を別途設ける場合と比較し、部品点数が削減されている。
【0047】
また、本実施形態の持上機構100は、前述したようにシートクッション12のシート下方側への変位に伴って、オットマン側軸部102とリンク側軸部104との徐々に広がり、オットマン50の前端部52が徐々に持ち上がる。よって、例えば、シートクッション12が所定の位置よりもシート下方側に下がるとオットマン50の前端部52が急に持ち上がる場合と比較し、オットマン50の挙動がスムーズである。
【0048】
また、本実施形態では、
図3に示すシートクッション12が格納位置A2に配置された状態では、持上機構100を構成するオットマン側軸部102とリンク側軸部104と引張コイルバネ110とはシート上方に突出していないので、シート側面視で、シートクッション12の上面側のフラット化を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態の車両用シート10では、前述したように、シートクッション12が着座位置A1(
図1参照)に配置された状態では、オットマン50の前端部52をシート上方側に持ち上げる引張コイルバネ110の引張力がオットマン50の前端部52を自重によってシート下方側に下げる押下力よりも小さい。よって、シートクッション12が着座位置A1(
図1参照)に配置された状態では、オットマン50の前端部52を自由に持ち上げることができる。
【0050】
また、本実施形態では、引張コイルバネ110によって引張力を発生させている。よって、例えば、ゴムで引張力を発生する場合と比較し、経時変化が少なく、長期間に亘って引張力が安定する。
【0051】
[変形例]
次に、持上機構の変形例について説明する。
【0052】
図5に示すように、変形例の持上機構200では、リンク部材30の長手方向の中間部に設けられた連結軸部202と、サイドフレーム24の前後方向との中間部に設けられた連結軸204と、を連結する連結リンク部材210が設けられている。変位部材の一例としての連結リンク部材210の前端部のリンク孔212は長孔になっている。そして、連結リンク部材210にリンク側軸部214が設けられている。
【0053】
オットマン側軸部102とリンク側軸部214とには引張コイルバネ220が取り付けられている。
【0054】
シートクッション12が着座位置A1(
図1参照)から格納位置A2(
図3参照)へ変位されると、連結リンク部材210が下方側に移動し、オットマン側軸部102とリンク側軸部214との軸間距離が広がり、引張コイルバネ220の引張力が大きくなり、オットマン50の前端部52が持ち上がり、オットマン50の前端部52が車両のフロア18と離間する。
【0055】
<その他>
尚、本発明は、上記実施形態及び変形に限定されるものでなない。
【0056】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、弾性部材として引張コイルバネ110、220を用いていたが、これに限定されるものではない。例えば、弾性部材としてゴムを用いてもよい。
【0057】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、リンク部材30の他端部34は、車体フロア上に固定されたベース部材28に回転可能に接続されていたが、これに限定されるものではない。リンク部材30の他端部34は、車体フロア上に固定された他の部材、例えばスライドレールのアッパレールに回転可能に接続されていてもよいし、車体フロアに直接、回転可能に接続されていてもよい。
【0058】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、持上機構100、200は、車両用シート10の左右方向の両側に設けていたが、これに限定されるものではない。例えば、持上機構100、200は、車両用シート10の左右方向の一方のみ設けてもよいし、左右方向の中間部に設けてもよい。
【0059】
また、例えば、上記実施形態及び変形例における変位側リンク部材の一例としてのリンク側軸部104は、持上機構100では変位部材の一例としてのリンク部材30に設けられ、変形例の持上機構200では変位部材の一例としての連結リンク部材210に設けられているが、これらに限定されるものではない。変位側軸部は、シートクッションの変位に伴って変位する変位部材に設けられていればよい。
【0060】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 車両用シート
12 シートクッション
30 リンク部材(変位部材の一例)
50 オットマン
52 前端部
54 後端部
100 持上機構
102 オットマン側軸部
104 リンク側軸部(変位側軸部の一例)
110 引張コイルバネ(弾性部材の一例)
200 持上機構
210 連結リンク部材(変位部材の一例)
214 リンク側軸部(変位側軸部の一例)
220 引張コイルバネ(弾性部材の一例)