IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清紡ケミカル株式会社の特許一覧

特許7627663ポリオール組成物、難燃性硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、難燃性硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20250130BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20250130BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20250130BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20250130BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20250130BHJP
   C08L 75/06 20060101ALI20250130BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20250130BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20250130BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/00 K
C08G18/08 038
C08G18/42 008
C08G18/50 033
C08G18/40 009
C08L75/06
C08K5/5313
C08K5/521
C08G101:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021565626
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020047016
(87)【国際公開番号】W WO2021125237
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2019227554
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 達也
(72)【発明者】
【氏名】江原 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】久保田 幸雄
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073607(JP,A)
【文献】特開2019-065227(JP,A)
【文献】特開2019-031652(JP,A)
【文献】特開2019-031651(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110332(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 75/00- 75/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物であって、
ポリオール化合物及び難燃剤を含有し、
前記ポリオール化合物は、芳香族系ポリエステルポリオール及びマンニッヒ系ポリオールを含み、
前記難燃剤は、下記式(1)で表されるホスフィン酸系金属塩と、リン酸系金属塩とからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含み、
前記リン酸系金属塩がリン酸エステル金属塩であり、
前記難燃剤の合計100質量部のうち、前記難燃剤中の固形分が50質量部以上であり、
前記マンニッヒ系ポリオールが、前記難燃剤中の固形分の合計100質量部に対して、20~95質量部含まれる
ポリオール組成物。
【化1】

(式(1)中、Mは、Mg、Al、Ca、Ti又はZnであり、R1は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基又はフェニル基であり、nは、2、3又は4である。)
【請求項2】
発泡剤を含む、請求項に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンのうちのいずれか1種以上を含む、請求項に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
触媒を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
整泡剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール組成物、及びポリイソシアネート化合物との反応生成物である、難燃性硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を混合して、発泡及び硬化させて、難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物、並びに、これを用いた難燃性硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、優れた断熱性能を有し、施工性や経済性等にも優れており、省エネルギー化や居住性の向上等の観点から、建築物の断熱材として広く普及している。
【0003】
一方で、硬質ポリウレタンフォームは、有機高分子材料であり、燃焼しやすいという特徴を有している。建築施工や改修工事、解体工事中の溶接溶断作業における火花が原因となり、硬質ポリウレタンフォームが延焼する火災事故もしばしば発生している。
このような火災事故を低減する対策として、硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与する様々な工夫が検討されている。
【0004】
例えば、硬質ポリウレタンフォームに、難燃剤として赤リンやリン酸エステルを添加して、難燃化させる技術が知られている。
しかしながら、赤リンは、発火性を有する物質であり、取り扱いの際には、安全確保のために十分な注意を要する。
また、赤リンやリン酸エステルでは、硬質ポリウレタンフォームの難燃性の向上の程度には限界があり、より優れた難燃性を付与し、硬質ポリウレタンフォームを不燃性材料に近づけることができる難燃剤が求められていた。
【0005】
このような課題に対して、本発明者らは、より効果的な難燃剤として、例えば、特許文献1において合成皮革用のポリウレタン樹脂の難燃剤として用いられているホスフィン酸系金属塩を含む難燃剤を適用することを検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-79375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているホスフィン酸系金属塩を含む難燃剤も、赤リン等の従来の難燃剤と同様に、硬質ポリウレタンフォームの原料となるポリオール化合物やポリイソシアネート化合物には溶解し難く、かつ、比重の大きい粉体状の難燃剤であり、硬質ポリウレタンフォームの原料液中で沈降や凝集を生じやすいものであった。
【0008】
難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造においては、製造現場で難燃剤を配合することは、現場作業の負担が増大することとなるため、一般的に、難燃剤が予め添加されたポリオール組成物(ポリオールプレミックス)や硬質ポリウレタンフォームの原料液が用いられる。
上記のような粉体状の難燃剤を予め分散させて調製したポリオール組成物や硬質ポリウレタンフォームの原料液は、使用時には、沈降物が生じ、また、凝集や固化している場合もあり、再分散のために多大な作業負担を要したり、また、均一な再分散が困難となることもあった。
【0009】
したがって、前記ホスフィン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤を使用するのに際し、ポリオール組成物や硬質ポリウレタンフォームの原料液中で、粉体(固体)が沈降したり、凝集したりすることが抑制され、均一な原料組成物を得る上での取り扱い性に優れていることが求められる。リン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤についても、同様のことが言える。
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、所定のホスフィン酸系金属塩及び/又はリン酸系金属塩を含む難燃剤を含有するポリオール組成物及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液において、粉体の沈降や凝集が抑制され、かつ、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができるポリオール組成物、並びに、これを用いた難燃性硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、所定のホスフィン酸系金属塩を含む難燃剤を含有するポリオール組成物において、所定のポリオール化合物を用いることにより、粉体状の難燃剤の沈降及び凝集を効果的に抑制することができ、しかも、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームが得られることを見出したことに基づくものである。
また、リン酸系金属塩を含む難燃剤を含有するポリオール組成物においても、同様のポリオール化合物を用いることにより、粉体状の難燃剤の沈降及び凝集を効果的に抑制することができ、しかも、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームが得られることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供するものである。
[1]難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物であって、ポリオール化合物及び難燃剤を含有し、前記ポリオール化合物は、芳香族系ポリエステルポリオール及びマンニッヒ系ポリオールを含み、前記難燃剤は、下記式(1)で表されるホスフィン酸系金属塩と、リン酸系金属塩とからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む、ポリオール組成物。
【0013】
【化1】
【0014】
(式(1)中、Mは、Mg、Al、Ca、Ti又はZnであり、R1は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基又はフェニル基であり、nは、2、3又は4である。)
[2]前記マンニッヒ系ポリオールが、前記難燃剤中の固形分の合計100質量部に対して、20~95質量部含まれる、上記[1]に記載のポリオール組成物。
[3]発泡剤を含む、上記[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記発泡剤が、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンのうちのいずれか1種以上を含む、上記[3]に記載のポリオール組成物。
[5]触媒を含む、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
[6]整泡剤を含む、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【0015】
[7]上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオール組成物、及びポリイソシアネート化合物との反応生成物である、難燃性硬質ポリウレタンフォーム。
[8]上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物を混合して、発泡及び硬化させて、難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所定のホスフィン酸系金属塩を含む難燃剤を含有するポリオール組成物及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液において、液中での粉体の沈降や凝集が抑制され、取り扱い性に優れたポリオール組成物を提供することができる。
また、前記ポリオール組成物を用いることにより、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
また、本発明によれば、リン酸系金属塩を含む難燃剤を含有するポリオール組成物でも、液中の粉体の沈降及び凝集を効果的に抑制することができ、しかも、優れた難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のポリオール組成物、並びに、これを用いた難燃性硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法について詳細に説明する。
【0018】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール組成物であって、所定のポリオール化合物及び所定の難燃剤を含有するものである。
前記ポリオール化合物は、芳香族系ポリエステルポリオール及びマンニッヒ系ポリオールを含み、また、前記難燃剤は、下記式(1)で表されるホスフィン酸系金属塩と、リン酸系金属塩とからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む。
【0019】
【化2】
【0020】
前記式(1)中、Mは、Mg、Al、Ca、Ti又はZnであり、R1は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基又はフェニル基であり、nは、2、3又は4である。
【0021】
前記ポリオール組成物を用いることにより、前記式(1)で表されるホスフィン酸系金属塩及び/又はリン酸系金属塩を含む難燃剤を含有する難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液において、液中の粉体の沈降や凝集を効果的に抑制することができる。これにより、難燃性硬質ポリウレタンフォーム製造時に、ポリオール組成物及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液を均一に混合するための作業負担を軽減させることができ、また、前記原料液中の粉体の均一分散性を高めることができる。また、前記原料液を用いて製造された難燃性硬質ポリウレタンフォームにおいて、前記難燃剤による優れた難燃性も保持される。
【0022】
<ポリオール化合物>
ポリオール化合物は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料化合物であり、本発明のポリオール組成物を構成する。前記ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有するアルコール化合物であり、ポリイソシアネート化合物との重付加反応により、ポリウレタン樹脂を生成する。
【0023】
難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール化合物としては、良好な難燃性の観点から、主として、芳香族系ポリオールが用いられる。芳香族系ポリオールは、一般的なポリウレタンフォーム原料として用いられるポリプロピレングリコール等と比較して、より優れた難燃性を付与し得る。
【0024】
前記芳香族系ポリオールは、良好な難燃性及び硬度等を有する難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、水酸基価が100~900mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは150~800mgKOH/g、さらに好ましくは180~700mgKOH/gである。
【0025】
本発明におけるポリオール化合物は、芳香族系ポリエステルポリオール及びマンニッヒ系ポリオールを含む。
【0026】
前記ポリオール化合物の合計含有量は、良好な難燃性及び硬度等を有する難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、前記ポリオール組成物100質量部中、好ましくは10.0~60.0質量部、より好ましくは20.0~55.0質量部、さらに好ましくは30.0~50.0質量部である。
【0027】
(芳香族系ポリエステルポリオール)
芳香族系ポリエステルポリオールとしては、例えば、芳香族系多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合により得られる化合物が挙げられる。前記芳香族系ポリエステルポリオールは、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
芳香族系多価カルボン酸の具体例としては、フタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族系多価カルボン酸等が挙げられる。多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA等が挙げられる。
また、芳香族系ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを、多価アルコールでエステル交換したもの等も挙げられる。
【0028】
前記芳香族系ポリエステルポリオールは、良好な難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、前記ポリオール化合物のうち、最も多い割合で含まれていることが好ましい。
前記ポリオール化合物中の前記芳香族系ポリエステルポリオールの含有量は、前記ポリオール化合物100質量部中、好ましくは50.0質量部以上、より好ましくは52.0~90.0質量部、さらに好ましくは55.0~85.0質量部である。
【0029】
(マンニッヒ系ポリオール)
本発明におけるマンニッヒ系ポリオールとは、フェノール化合物、アルデヒド化合物及びアミン化合物のマンニッヒ反応により得られる生成物(マンニッヒ縮合物)である芳香族系ポリオールに、アルキレンオキサイドを付加重合させた芳香族系ポリエーテルポリオールを言う。前記マンニッヒ系ポリオールは、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
前記フェノール化合物としては、例えば、フェノール;クレゾール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール等が一般的に用いられる。
前記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が一般的に用いられる。
前記アミン化合物としては、例えば、脂肪族第一級又は第二級のモノアミン類が挙げられ、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール等のアルカノールアミン;メチルアミン、ジエチルアミン等のアルキルアミン等が一般的に用いられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が一般的に用いられる。
前記マンニッヒ系ポリオールは、具体的には、国際公開第2010/147091号等に記載されている製造方法により製造することができる。
【0030】
前記マンニッヒ系ポリオールの含有量は、前記ポリオール組成物における粉体の沈降や凝集の抑制、また、良好な難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、前記ポリオール組成物100質量部中、好ましくは1.0~20.0質量部、より好ましくは2.0~18.0質量部、さらに好ましくは3.0~16.0質量部である。
また、同様の観点から、前記マンニッヒ系ポリオールの含有量の前記芳香族系ポリエステルポリオールの含有量に対する比率が、0.10~1.00であることが好ましく、より好ましくは0.15~0.90、さらに好ましくは0.20~0.80である。
【0031】
前記ポリオール化合物は、前記芳香族系ポリエステルポリオール及び前記マンニッヒ系ポリオール以外に、例えば、前記マンニッヒ系ポリオール以外の芳香族系ポリエーテルポリオール等を含んでいてもよいが、良好な難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、脂肪族系ポリオールは含まないことが好ましい。同様の観点から、前記ポリオール化合物100質量部中の前記芳香族系ポリエステルポリオール及び前記マンニッヒ系ポリオールの合計含有量は、好ましくは90質量部以上、より好ましくは95質量部以上、さらに好ましくは100質量部である。
【0032】
<難燃剤>
本発明のポリオール組成物において用いられる難燃剤は、下記式(1)で表されるホスフィン酸系金属塩と、リン酸系金属塩とからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む。
【0033】
【化3】
【0034】
前記式(1)中、Mは、Mg、Al、Ca、Ti又はZnであり、好ましくはAl又はZn、より好ましくはAlである。MがMg、Ca又はZnのときn=2であり、MがAlのときn=3であり、MがTiのときn=4である。
1は、水素原子、炭素数1~6の直鎖状アルキル基又はフェニル基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基又はフェニル基である。
【0035】
前記難燃剤は、前記ホスフィン酸系金属塩及びリン酸系金属塩のいずれかを含むものであっても、両者を含むものであってもよい。前記難燃剤は、本発明の効果の観点から、前記ホスフィン酸系金属塩を含むものであることが好ましい。
【0036】
前記ホスフィン酸系金属塩は、無機ホスフィン酸塩又は有機ホスフィン酸塩であり、粉体状である。前記ホスフィン酸系金属塩は、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
前記ホスフィン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤は、従来の赤リンやリン酸エステル等による難燃剤に比べて、硬質ポリウレタンフォームに、より優れた難燃性を付与することができる。
【0037】
前記リン酸系金属塩は、無機リン酸塩又は有機リン酸塩であり、粉体状である。前記リン酸系金属塩としては、リン酸エステル金属塩であることが好ましい。前記リン酸系金属塩における金属原子(イオン)は、前記ホスフィン酸系金属塩と同様の金属原子(イオン)の塩であることが好ましい。前記リン酸系金属塩は、1種単独でも、2種以上が併用されてもよい。
前記リン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤も、前記ポリオール化合物を用いることにより、ポリオール組成物中における良好な沈降抑制及び凝集抑制効果が得られる。
【0038】
前記難燃剤は、さらなる難燃性向上の観点から、前記ホスフィン酸系金属塩やリン酸系金属塩の他に、難燃助剤として作用し得る成分を含んでいてもよく、例えば、窒素含有化合物を含んでいることが好ましい。
前記窒素含有化合物としては、例えば、メラミン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、フタル酸メラミン、シアヌル酸メラミン、ベンゾグアナミン等が挙げられる。これらのうち、1種のみでも、2種以上が含まれていてもよい。
前記難燃剤中に前記窒素含有化合物が含まれる場合、その含有量は、前記ホスフィン酸系金属塩100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0039】
ただし、ポリリン酸アンモニウムは、硬質ポリウレタンフォームを製造する際のウレタン化反応を遅延させる傾向があるため、好ましくない。ポリリン酸アンモニウムは、ポリオール組成物中でゲル化しやすく、凝集抑制の点で好ましくない。また、ポリオール組成物中でリン酸イオンが遊離しやすく、遊離酸がウレタン化反応における触媒活性に影響を及ぼし、ウレタン化反応が十分に促進されず、良好な難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームが得られないものと推測される。
【0040】
本発明においては、前記ホスフィン酸系金属塩及び窒素含有化合物を含む粉体状の難燃剤として、例えば、大和化学工業株式会社製の「フランCM」シリーズ等の市販品を好適に用いることができる。
【0041】
また、前記ホスフィン酸系金属塩及び/又はリン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤は、良好な難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得る観点から、前記ポリオール組成物中の難燃剤の合計100質量部のうち、50質量部以上であることが好ましく、より好ましくは52~100質量部、さらに好ましくは55~100質量部である。
また、前記ホスフィン酸系金属塩及び/又はリン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤が沈降及び凝集しやすいことに鑑みて、該粉体状の難燃剤、すなわち、前記難燃剤のうちの固形分は、前記ポリオール組成物100質量部中、10.0~40.0質量部であることが好ましく、より好ましくは12.0~35.0質量部、さらに好ましくは15.0~30.0質量部である。同様の観点から、前記ポリオール組成物中の難燃剤のうちの固形分の合計100質量部に対して、前記マンニッヒ系ポリオールの含有量が、20~95質量部であることが好ましく、より好ましくは30~90質量部、さらに好ましくは35~80質量部である。
【0042】
前記難燃剤は、硬質ポリウレタンフォームの加熱や燃焼時の初期の炭化抑制効果を得る観点から、液体状のリン酸エステルを含んでいてもよく、例えば、含ハロゲン系リン酸エステルであるトリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等が一般的に用いられる。トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートは、液体であり、粉体状の前記ホスフィン酸系金属塩やリン酸系金属塩、赤リンのように、硬質ポリウレタンフォームの原料液中での沈降や凝集等を生じることはないものの、硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与する効果は、前記ホスフィン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤の方が優れている。したがって、前記難燃剤中に液体状のリン酸エステルが含まれる場合、その含有量は、該難燃剤100質量部中、好ましくは50質量部以下、より好ましくは50質量部未満、さらに好ましくは45質量部以下である。
【0043】
<その他の成分>
難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造原料としては、主原料である、ポリオール化合物、難燃剤及びポリイソシアネート化合物以外に、発泡剤、触媒、整泡剤等も配合される。これらの成分は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造時に、ポリオール組成物とは別に添加されてもよいが、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造現場における作業負担を軽減する観点から、前記ポリオール組成物中に配合されていることが好ましい。
さらに、前記ポリオール組成物中には、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲内において、溶剤や、着色剤、酸化防止剤等の添加剤等が含まれていてもよい。
【0044】
(発泡剤)
発泡剤は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とが反応してウレタン結合を形成する樹脂化反応の発熱により気体を発生させ、ポリウレタン樹脂を発泡させる作用を有するものである。
前記発泡剤としては、例えば、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、水等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、HFOやHCFOは、地球温暖化抑制効果等の観点から、HFCに代わり、今後、需要の増加が見込まれる発泡剤であり、これらを用いることが好ましい。具体的には、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234ze)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロぺン(HCFO-1233zd)等が挙げられる。
【0045】
ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、水と反応してウレア結合及び炭酸ガスを発生する泡化反応も生じる。水は、硬質ポリウレタンフォームの生成反応の初期段階における発泡の誘因となり、また、製造される硬質ポリウレタンフォームの密度を低減させることができることから、発泡剤として水が含まれていることが好ましい。
【0046】
前記発泡剤の配合量は、適度にポリウレタン樹脂を発泡させる観点から、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、合計で、好ましくは5.0~40.0質量部、より好ましくは10.0~30.0質量部、さらに好ましくは12.0~25.0質量部である。
ただし、水は、芳香族系ポリエステルポリオールを加水分解させるおそれがあるため、他の発泡剤よりも含有量が少ないことが好ましい。水以外の発泡剤の合計100質量部に対して、20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.8~15.0質量部、さらに好ましくは1.0~10.0質量部である。
【0047】
(触媒)
硬質ポリウレタンフォームの生成反応においては、前記樹脂化反応及び泡化反応を促進する観点から第三級アミン触媒が好適に用いられる。また、一部ヌレート化による難燃性向上の観点から、ヌレート化触媒も用いることができる。これらの触媒としては、硬質ポリウレタンフォームの製造における公知の触媒を用いることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記第三級アミン触媒としては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチレンジアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジエチルメチルベンゼンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
前記第三級アミン触媒の配合量は、硬質ポリウレタンフォームの樹脂化反応及び泡化反応を適度に促進させる観点から、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~10.0質量部、より好ましくは0.2~8.0質量部、さらに好ましくは0.5~5.0質量部である。
【0049】
前記ヌレート化触媒としては、例えば、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物;酢酸カリウム、2-エチルヘキシル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の第三級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
前記ヌレート化触媒の配合量は、イソシアネートのヌレート化反応を適度に促進させる観点から、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは0.05~10.0質量部、より好ましくは0.1~8.0質量部、さらに好ましくは0.2~5.0質量部である。
【0050】
(整泡剤)
整泡剤は、均質な難燃性硬質ポリウレタンフォームを得る観点から配合されるものであり、硬質ポリウレタンフォームの製造における公知の整泡剤を用いることができる。一般的には、シリコーン系整泡剤が好適に用いられ、例えば、シロキサン-ポリアルキレンオキサイド共重合体等が挙げられる。
前記整泡剤の配合量は、生成するポリウレタン樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、好ましくは0.05~10.0質量部、より好ましくは0.1~8.0質量部、さらに好ましくは0.2~5.0質量部である。
【0051】
さらに、前記ポリオール組成物中には、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲内において、溶剤や、フィラー、着色剤、酸化防止剤等の添加剤等が含まれていてもよい。
なお、前記ポリオール組成物における粉体の凝集をより効果的に抑制する観点から、前記フィラーのうち、分散剤として、粒子状の陰微晶質及び非晶質シリカと板状のカオリナイトとの天然結合物であるノイブルグ珪土粒子(シリチンやシリコロイドとも呼ばれる。)を前記ポリオール組成物中に配合しておくことが好ましい。ノイブルグ珪土粒子自体は、前記ポリオール組成物中で溶解しないが、ノイブルグ珪土粒子が配合されていることにより、前記ホスフィン酸系金属塩及び/又はリン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤が沈降した場合であっても、沈降した粉体は固化しにくく、容易に再分散させることができる。これにより、難燃性硬質ポリウレタンフォームを製造する際に、該ポリオール組成物の取り扱い容易性を向上させることができる。
【0052】
[難燃性硬質ポリウレタンフォーム]
本発明の難燃性硬質ポリウレタンフォームは、前記ポリオール組成物と、ポリイソシアネート化合物とが反応して得られた反応生成物である。
十分に均一でないポリオール組成物を用いた場合には、全体的に良好な難燃性を有する均質な硬質ポリウレタンフォームが得られ難い。
これに対して、本発明のポリオール組成物によれば、上述したように、沈降しやすい前記ホスフィン酸系金属塩及び/又はリン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤を用いる場合に、ポリオール組成物及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液において、粉体の沈降や凝集を効果的に抑制することができる。したがって、難燃性硬質ポリウレタンフォーム製造時に、前記ポリオール組成物及び難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液を均一に分散させるための作業負担が軽減され、また、前記原料液中の粉体の均一分散性を高めることができる。また、得られた難燃性硬質ポリウレタンフォームにおける前記難燃剤による良好な難燃性も保持される。
【0053】
<ポリイソシアネート化合物>
ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物であり、前記ポリオール化合物との重付加反応によりポリウレタン樹脂を生成する。
前記ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネートのいずれでもよく、これらのうち1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルエーテル-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、4,6-ジメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)等のモノメリックMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI又はポリメリックMDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、非環式又は脂環式のポリイソシアネートのいずれでもよく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
これらのうち、反応性、及び製造される硬質ポリウレタンフォームの難燃性等の観点から、2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI等のモノメリックMDI、クルードMDI又はポリメリックMDIが好ましく、また、この中でも、入手容易性やコスト等の観点からは、クルードMDI又はポリメリックMDIが好適に用いられる。
【0055】
前記難燃性硬質ポリウレタンフォームの原料液中のポリイソシアネート化合物の配合量は、ポリイソシアネート化合物の種類に応じて適宜設定されるが、前記ポリオール化合物との十分な反応性や前記原料液の混合時の取り扱い容易性等の観点から、前記ポリオール組成物100質量部に対して、好ましくは50~200質量部、より好ましくは70~150質量部、さらに好ましくは80~120質量部である。
【0056】
<難燃性硬質ポリウレタンフォーム製造方法>
前記難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法における成形発泡方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スラブ成形、モールド成形、ラミネート成形、注入成形、スプレー発泡等の公知の方法を適用することができる。これらの各成形発泡方法において、前記ポリオール組成物と、前記ポリイソシアネート化合物とを混合して、発泡及び硬化させることにより、全体的に良好な難燃性を有する均質な硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0057】
前記ポリオール組成物は、上述したように、含有する粉体の沈降や凝集が抑制されているため、ポリイソシアネート化合物と混合する際の再分散は、例えば、撹拌羽根等による一般的な撹拌機を用いて、大きな剪断力等を要することなく、容易に均一化させることかできる。すなわち、少ない作業負担で、容易に均一に再分散させることができる。このため、前記ポリオール組成物を用いることにより、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造の効率化が図られる。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0059】
[ポリオール組成物の調製]
下記実施例及び比較例のポリオール組成物の調製に用いた各原料の詳細を以下に示す。
<ポリオール化合物>
(ポリエステルポリオール(a1))
(a1-1)RFK-556:テレフタル酸系ポリエステルポリオール;「マキシモール(登録商標) RFK-556」、川崎化成工業株式会社製;水酸基価224mgKOH/g
(a1-2)RFK-087:テレフタル酸系ポリエステルポリオール;「マキシモール(登録商標) RFK-087」、川崎化成工業株式会社製;水酸基価200mgKOH/g
(マンニッヒ系ポリオール(a2))
(a2-1)NB-622:「エクセノール(登録商標) NB-622」、AGC株式会社製、水酸基価500mgKOH/g
(a2-2)FB-800:「エクセノール(登録商標) FB-800」、AGC株式会社製、水酸基価300mgKOH/g
(ポリエーテルポリオール)
・GR-30:TDA(トリレンジアミン)系ポリエーテルポリオール;「アクトコ-ル(登録商標) GR-30」、三井化学SKCポリウレタン株式会社製、水酸基価400mgKOH/g
<難燃剤>
(ホスフィン酸系金属塩又はリン酸系金属塩(b))
(b1)CM-6R:ホスフィン酸系金属塩を含む粉体状の難燃剤;「フランCM-6R」、大和化学工業株式会社製
(b2)OP935:ホスフィン酸系金属塩;「エクソリット(登録商標) OP935」、クラリアントケミカルズ株式会社製
(b3)R098-5:リン酸エステル金属塩(粉体状);「ノンネン(登録商標) R098-5」、丸菱油化工業株式会社製
(ポリリン酸アンモニウム)
・TK-1000:ポリリン酸アンモニウム;「TK-1000」、マナック株式会社製
・APP201:ポリリン酸アンモニウム;「KYLIN(登録商標) APP201」、SHIFANG CHANGFENG CHEMICAL社製
・TMCPP:トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート;「TMCPP」、大八化学工業株式会社製
<発泡剤>
・HCFO:トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロぺン(HCFO-1233zd);「ソルスティス(登録商標)LBA」、ハネウェル・インターナショナル・インク製
・水
<触媒>
・SX60:第三級アミン触媒;「TOYOCAT(登録商標)-SX60」、東ソー株式会社製
・DM70:第三級アミン触媒;「TOYOCAT(登録商標)-DM70」、東ソー株式会社製
・K-15:2-エチルヘキシル酸カリウム;「Dabco(登録商標) K-15」、エボニック社製、ヌレート化触媒
<整泡剤>
・L-6100:シリコーン系整泡剤;「Niax(登録商標) silicone L-6100」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク製
【0060】
(実施例1)
500mLポリ瓶に、ポリエステルポリオール(a1-1)28.5質量部、マンニッヒ系ポリオール(a2-1)8.0質量部、触媒(SX60、DM70及びK-15)各1.6質量部、水(発泡剤)0.3質量部、TMCPP 16.0質量部、及び整泡剤L-6100 1.6質量部を入れ、かご型撹拌子を装着した電気ドリルにて3000rpmで20秒間撹拌した(以下、撹拌の方法は同様。)。
これに、難燃剤(b1)20.0質量部を添加して、20秒間撹拌し、次いで、HCFO 20.8質量部を添加して、さらに20秒間撹拌した後、20℃の恒温水槽にて保温し、ポリオール組成物を調製した。
【0061】
(実施例2~7、比較例1~7)
下記表1に示す原料配合にて、実施例1と同様にして、ポリオール組成物をそれぞれ調製した。
【0062】
[硬質ポリウレタンフォームの製造]
上記各実施例及び各比較例のポリオール組成物を用いて、以下のようにして、硬質ポリウレタンフォームを製造した。
なお、ポリイソシアネート化合物としては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI);「ミリオネート(登録商標) MR-200」、東ソー株式会社製を用いた。
500mLデスカップに、撹拌して均一にした状態のポリオール組成物100質量部、及びポリイソシアネート化合物102.5質量部を入れ、5秒間撹拌した後、得られた混合液(硬質ポリウレタンフォームの原料液)を、15cm四方の角型に流し込み、30分間静置させた後、脱型し、硬質ポリウレタンフォームを得た。
【0063】
[評価]
上記各実施例及び各比較例で調製したポリオール組成物及びこれを用いて製造した硬質ポリウレタンフォームについて、下記の項目について評価を行った。これらの評価結果を、下記表1にまとめて示す。
【0064】
<沈降性>
ポリオール組成物30gを入れた50mLバイアル瓶を室温(25℃)で21日間静置した後、該バイアル瓶を20回上下に振とうし、再度静置した。外観観察にて、1日後の固形分の沈降物の上面の高さ位置(液面からの高さ)を測定した。
これらの測定値を、下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:沈降物の上面の高さ位置が液面から5mm未満
B:沈降物の上面の高さ位置が液面から5mm以上8mm未満
C:沈降物の上面の高さ位置が液面から8mm以上
評価Aの場合、ほとんど沈降は進行していないと見なすことができる。評価Bの場合は、やや沈降が進行しており、評価Cの場合は、著しく沈降が進行しており、当該ポリオール組成物は、実用には適さないものと判定した。
【0065】
<凝集性>
前記沈降性の評価において、21日間静置後の50mLバイアル瓶を横に倒して5分間静置し、さらに、立ててから5分間静置した。目視での外観観察にて、固形分の沈降物の状態を確認した。
これらの観察結果を、下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:バイアル瓶を横に倒すと、沈降物が流動し、再び立てると徐々に元の状態に戻っていく。5分間静置しても、沈降物は、完全には元の状態には戻らないが、バイアル瓶の内壁面には付着していない。
B:バイアル瓶を横に倒すと、沈降物が流動し、再び立てると徐々に元の状態に戻っていく。5分間静置しても、沈降物は、完全には元の状態には戻らず、バイアル瓶の内壁面には、付着物が残る。
C:バイアル瓶を横に倒しても、沈降物が流動しない。
D:固形分がゲル化していた。
評価Aの場合は、粉体の凝集が良好に抑制されていると言える。一方、評価B~Dの場合は、十分な凝集抑制効果が得られず、評価C及びDの場合は、実用に適さないものと判定した。
【0066】
<難燃性>
上記において製造した硬質ポリウレタンフォームから、98mm×98mm×厚さ(高さ)25mmの試料を切り出した。
ISO 5660-1に準じて、コーンカロリーメーター(「コーンカロリーメーターIII」、株式会社東洋精機製作所製;基材の不燃材:石膏ボード(厚さ9.5mm))にて、コーンにより50KW/m2の熱量を試料に加え、同時に、着火プラグにより10秒間着火させ、20分間加熱したときの総発熱量を測定した。
これらの測定値を、下記の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:総発熱量8MJ/m2未満
B:総発熱量8MJ/m2以上11MJ/m2未満
C:総発熱量11MJ/m2以上20MJ/m2未満
D:総発熱量20MJ/m2以上
評価Aの場合、最も難燃性が高く、不燃材料と言えるレベルである。次いで、評価Bの場合も、十分に難燃性は高く、準不燃材料と言えるレベルである。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示した結果から分かるように、ポリオール化合物としてマンニッヒ系ポリオールを添加することにより(実施例1~7)、所定のホスフィン酸系金属塩とリン酸系金属塩とからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含む粉体状の難燃剤の沈降及び凝集が抑制され、かつ、準不燃材料相当以上の難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを得られることが認められた。
一方、マンニッヒ系ポリオールを添加しない場合(比較例1~5)は、硬質ポリウレタンフォームの難燃性は良好であるものの、ポリオール組成物における粉体の沈降及び凝集が十分に抑制されているとは言えないものであった。これらのうち、マンニッヒ系ポリオール以外の芳香族系ポリエーテルポリオールを添加した場合(比較例2及び3)は、ポリオール組成物における粉体の沈降及び凝集の抑制効果に劣り、硬質ポリウレタンフォームの難燃性も劣るものであった。
また、難燃剤がポリリン酸アンモニウムを含む場合(比較例6及び7)は、ポリオール組成物がゲル化を生じ、硬質ポリウレタンフォームの難燃性も劣るものであった。