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特許7627682認知症又は脳機能の判定のためのキット及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】認知症又は脳機能の判定のためのキット及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6883 20180101AFI20250130BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20250130BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20250130BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20250130BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20250130BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250130BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20250130BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20250130BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z ZNA
C12Q1/48 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6876 Z
C07K16/28
C07K16/40
C07K16/18
G01N33/53 D
G01N33/53 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022504476
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008722
(87)【国際公開番号】W WO2021177447
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2020038991
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】300061835
【氏名又は名称】公益財団法人神戸医療産業都市推進機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 明彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】沖中 由佳
(72)【発明者】
【氏名】友野 潤
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/135639(WO,A2)
【文献】特表2004-504366(JP,A)
【文献】Altered energy metabolism pathways in the posterior cingulate in young adult apolipoprotein E ε4 carriers,Journal of Alzheimer’s Disease,2016年,Vol.53,p.95-106
【文献】Role of monocarboxylate transporter 4 in Alzheimer disease,Neurotoxicology,2019年11月16日,Vol.76,p.191-199
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知症の判定又は脳機能の判定のためのキットであって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質をコードする遺伝子発現を測定するための試薬を含み、
前記1以上のタンパク質が、配列番号4で示すアミノ酸配列からなるヒトGlut1、配列番号8で示すアミノ酸配列からなるヒトGlut3、配列番号12で示すアミノ酸配列からなるヒトMCT4、配列番号16で示すアミノ酸配列からなるヒトPHD3及び配列番号20で示すアミノ酸配列からなるヒトPDK1から選択され
前記試料が、末梢血試料であ
前記認知症の判定が、認知症の罹患の有無の判定、認知症の発症の危険性の判定、又は認知症の重症度の判定であり、
前記脳機能の判定が、脳機能の低下の有無の判定、脳機能の低下の危険性の判定、又は脳機能の低下の程度の判定であり、
前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量のハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対的発現量が参照値と比較して高いことが、認知症に罹患していること、認知症を発症する危険性を有すること、若しくは認知症の重症度を示すか、又は脳機能の低下を有すること、脳機能の低下の危険性を有すること、若しくは脳機能の低下の程度を示す、キット。
【請求項2】
前記脳機能の低下が、記憶障害、運動障害、視覚の障害、平衡覚の障害、又はうつ病である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記試薬が、前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子を含む核酸の少なくとも一部を増幅するためのプライマー対、前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子を含む核酸とハイブリダイズするプローブ、又は、前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体である、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記キットが、前記試料から単核細胞を分離するための試薬及び/又はカラムを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記参照値が、
正常検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量を、前記被検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量の測定と同様の条件で測定した場合の測定値のハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対的発現量、又は該相対的発現量から設定された基準値、又は
認知症を有すること又はその重症度が既知の患者に由来する試料中の前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量を、前記被検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量の測定と同様の条件で測定した場合の測定値のハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対的発現量、又は該相対的発現量から設定された基準値
である、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記ハウスキーピング遺伝子が、配列番号22に示す塩基配列からなるヒト18SリボソームRNA遺伝子である、請求項1~5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質をコードする遺伝子発現を測定することを含み、
前記1以上のタンパク質が、配列番号4で示すアミノ酸配列からなるヒトGlut1、配列番号8で示すアミノ酸配列からなるヒトGlut3、配列番号12で示すアミノ酸配列からなるヒトMCT4、配列番号16で示すアミノ酸配列からなるヒトPHD3、及び配列番号20で示すアミノ酸配列からなるヒトPDK1から選択され
前記試料が、末梢血試料
前記認知症の判定が、認知症の罹患の有無の判定、認知症の発症の危険性の判定、又は認知症の重症度の判定であり、
前記脳機能の判定が、脳機能の低下の有無の判定、脳機能の低下の危険性の判定、又は脳機能の低下の程度の判定であり、
前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量のハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対的発現量が参照値と比較して高いことが、認知症に罹患していること、認知症を発症する危険性を有すること、若しくは認知症の重症度を示すか、又は脳機能の低下を有すること、脳機能の低下の危険性を有すること、若しくは脳機能の低下の程度を示す、方法。
【請求項8】
前記脳機能の低下が、記憶障害、運動障害、視覚の障害、平衡覚の障害、又はうつ病である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記被検体由来の試料中の、前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子発現を測定することが、以下に示す(a)及び(b)を含む、請求項7又は8に記載の方法:
(a)前記試料から単核細胞を分離することにより単核細胞含有試料を得ること、
(b)前記単核細胞含有試料中の、前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子発現を測定すること。
【請求項10】
前記参照値が、
正常検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量を、前記被検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量の測定と同様の条件で測定した場合の測定値のハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対的発現量、又は該相対的発現量から設定された基準値、又は
認知症を有すること又はその重症度が既知の患者に由来する試料中の前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量を、前記被検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質をコードする遺伝子の発現量の測定と同様の条件で測定した場合の測定値のハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対的発現量、又は該相対的発現量から設定された基準値
である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ハウスキーピング遺伝子が、配列番号22に示す塩基配列からなるヒト18SリボソームRNA遺伝子である、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得する方法に関する。
本発明はまた、認知症の判定又は脳機能の判定のためのキットに関する。
本発明はまた、被検体における老化現象の程度の判定のための指標を取得する方法に関する。
本発明はまた、老化現象の程度の判定のためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化の進展に伴い認知症の発症数は増加しており、治療薬の研究開発が盛んにおこなわれている。認知症は、アルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型に分類できる。このうちアルツハイマー型認知症が最も患者数が多く、全体の6割以上と報告されている。1999年にアルツハイマー型認知症に塩酸ドネペジル(商品名アリセプト等)(記憶障害や認知障害が改善されて病気の進行抑制)、2011年にガランタミン(同レミニール)、リバスチグミン(同イクセロンパッチ、リバスチグミンパッチ)、メマンチン(同メマリー)の3剤が発売されている。これらの医薬は認知症の進行を遅延するものである。しかし、認知症の治療薬は現在のところ提供されておらず、開発はなお困難である。そこで現在では早期発見と生活習慣改善により認知症を治療することも試みられている。
【0003】
認知症を診断するための画像検査法としてPET(陽電子放出断層撮像法)及びSPECT(単光子放出断層撮像法)が知られている。しかしこれらの画像検査法は高コストであることに加え、症状が進行している場合のみ判別が可能な方法であるため、認知症の早期判定には適していない。
【0004】
また、認知症を判別するための、長谷川式簡易知能評価スケール等の認知機能テストが知られているが、認知機能テストは患者本人が症状進行を認識した後に用いられるテストであり、発症初期での認知症、脳機能の判定には利用することができない。また認知機能テストは結果が曖昧であるという問題もある。
【0005】
そのほか脳脊髄液中のタンパク質検査により認知症を判定する方法も知られているが、侵襲性が高く、早期診断のために利用することができないという課題がある。
【0006】
認知症の発症予測のために、被検体の血中マイクロRNAの網羅解析を行う方法も開発されている。被検試料の前処理として血中マイクロRNAを回収する操作が煩雑であることや、高価な測定システムが必要であるという課題がある。
【0007】
また、高齢化の進展に伴い、高齢者の健康維持が喫緊の課題となっており、アンチエイジング医学に対する期待が高まっている。例えば、皮膚のシミやしわなどの種々の老化現象の程度の判定方法として、従来から外観の目視判定が行われてきた。しかし、目視判定は客観的且つ定量的な判定結果を得ることが困難であることから、老化現象の程度を適切に評価できる新規バイオマーカーの探索が進められている。
【0008】
特定のタンパク質の遺伝子発現レベル(バイオマーカー)に基づいて脳機能障害を判定する方法を開示する特許文献として特許文献1~3を例示することができる。
【0009】
特許文献1では、被験者由来の中枢神経系組織における、インスリン等の、インスリン/IGFシグナル伝達経路中の少なくとも1つの因子のレベル又は機能の低下をインビトロで検出することを含む、アルツハイマー病を検査する方法が記載されている。
【0010】
特許文献2では、被検体におけるMARCKS等の少なくとも1つの基質タンパク質のリン酸化を検出し、リン酸化の程度が正常検体よりも高い場合に、被検体はアルツハイマー病を罹患している又は発症する危険性を有していると判定する方法が記載されている。
【0011】
特許文献3では、認知機能障害疾患を検出するためのバイオマーカーが記載されている。特許文献3に記載のバイオマーカーは、Complement C4、Prothrombin、Complement C3及びGelsolin等に依拠するタンパク質であると記載されている。
【0012】
また、特定のタンパク質の遺伝子発現レベル(バイオマーカー)に基づいて老化現象の程度を判定する方法を開示する特許文献として特許文献4~6を例示することができる。
【0013】
特許文献4では、皮膚細胞及び/又は皮膚組織における分泌タンパク質及び/又は細胞内タンパク質の発現及び/又はその遺伝子発現を測定することを含む、皮膚の老化度を判定する方法であって、前記分泌タンパク質及び/又は細胞内タンパク質は皮膚の老化度により発現が変化するものである前記方法が記載されている。特許文献4に記載のバイオマーカーは、Kallikrein 7、Keratin 7等であると記載されている。
【0014】
特許文献5では、生体試料におけるGREM1タンパク質及び/又はGREM2タンパク質、又は、GREM1タンパク質をコードする遺伝子及び/又はGREM2タンパク質をコードする遺伝子の発現量を指標として、細胞及び/又は個体の老化度を評価する方法が記載されている。
【0015】
特許文献6では、生物学的試料中のOLFML2A及び/又はCRLF1の遺伝子産物の発現量eを決定するステップを含むことを特徴とする、線維芽細胞の細胞老化状態の評価方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特表2008-522199号公報
【文献】国際公開WO2015/099094
【文献】国際公開WO2019/012671
【文献】特開2012-189602号公報
【文献】特開2019-007759号公報
【文献】特開2013-116088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の一以上の実施形態は、簡便な操作により認知症を早期に判定することができる方法及びそのためのキット、簡便な操作により脳機能を判定することができる方法及びそのためのキットを提供することを目的とする。
本発明の別の一以上の実施形態は、簡便な操作により老化現象の程度を早期に判定することができる方法及びそのためのキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の発明を完成するに至った。
(1)被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することを含む方法。
(2)前記認知症の判定が、認知症の罹患の有無の判定、認知症の発症の危険性の判定又は認知症の重症度の判定である、(1)に記載の方法。
(3)前記試料が、体液試料又は骨髄試料であり、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することを更に含み、
前記参照値よりも高い、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値が、前記被検体が認知症に罹患していること、前記被検体が認知症を発症する危険性を有すること、又は、前記被検体の認知症の重症度を示す、(2)に記載の方法。
(4)前記参照値に対する前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値の比率が、1.1以上、50.0以下である、(3)に記載の方法。
(5)前記試料が、中枢神経組織試料であり、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することを更に含み、
前記参照値よりも低い、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値が、前記被検体が認知症に罹患していること、前記被検体が認知症を発症する危険性を有すること、又は、前記被検体の認知症の重症度を示す、(2)に記載の方法。
(6)前記脳機能の判定が、脳機能の低下の有無の判定、脳機能の低下の危険性の判定、脳機能の低下の程度の判定、自律神経系の障害の有無の判定、自律神経系の障害の危険性の判定、自律神経系の障害の程度の判定、記憶障害の有無の判定、記憶障害の危険性の判定、記憶障害の程度の判定、運動障害の有無の判定、運動障害の危険性の判定、運動障害の程度の判定、協調運動の障害の有無の判定、協調運動の障害の危険性の判定、協調運動の障害の程度の判定、不随意運動の障害の有無の判定、不随意運動の障害の危険性の判定、不随意運動の障害の程度の判定、感覚障害の有無の判定、感覚障害の危険性の判定、感覚障害の程度の判定、視覚の障害の有無の判定、視覚の障害の危険性の判定、視覚の障害の程度の判定、嗅覚の障害の有無の判定、嗅覚の障害の危険性の判定、嗅覚の障害の程度の判定、聴覚の障害の有無の判定、聴覚の障害の危険性の判定、聴覚の障害の程度の判定、平衡覚の障害の有無の判定、平衡覚の障害の危険性の判定、平衡覚の障害の程度の判定、睡眠障害の有無の判定、睡眠障害の危険性の判定、睡眠障害の程度の判定、言語障害の有無の判定、言語障害の危険性の判定、言語障害の程度の判定、情動調節障害の有無の判定、情動調節障害の危険性の判定、情動調節障害の程度の判定、頭痛の有無の判定、頭痛の危険性の判定、頭痛の程度の判定、痙攣の有無の判定、痙攣の危険性の判定、痙攣の程度の判定、震えの有無の判定、震えの危険性の判定、震えの程度の判定、幻覚の有無の判定、幻覚の危険性の判定、幻覚の程度の判定、妄想の有無の判定、妄想の危険性の判定、妄想の程度の判定、錯覚の有無の判定、錯覚の危険性の判定、錯覚の程度の判定、異常行動の有無の判定、異常行動の危険性の判定、異常行動の程度の判定、うつ病の罹患の有無の判定、うつ病の発症の危険性の判定又はうつ病の重症度の判定である、(1)に記載の方法。
(7)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(1)~(6)のいずれか一に記載の方法。
(8)認知症の判定又は脳機能の判定のためのキットであって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定するための試薬を含むキット。
(9)前記認知症の判定が、認知症の罹患の有無の判定、認知症の発症の危険性の判定又は認知症の重症度の判定である、(8)に記載のキット。
(10)前記脳機能の判定が、脳機能の低下の有無の判定、脳機能の低下の危険性の判定、脳機能の低下の程度の判定、自律神経系の障害の有無の判定、自律神経系の障害の危険性の判定、自律神経系の障害の程度の判定、記憶障害の有無の判定、記憶障害の危険性の判定、記憶障害の程度の判定、運動障害の有無の判定、運動障害の危険性の判定、運動障害の程度の判定、協調運動の障害の有無の判定、協調運動の障害の危険性の判定、協調運動の障害の程度の判定、不随意運動の障害の有無の判定、不随意運動の障害の危険性の判定、不随意運動の障害の程度の判定、感覚障害の有無の判定、感覚障害の危険性の判定、感覚障害の程度の判定、視覚の障害の有無の判定、視覚の障害の危険性の判定、視覚の障害の程度の判定、嗅覚の障害の有無の判定、嗅覚の障害の危険性の判定、嗅覚の障害の程度の判定、聴覚の障害の有無の判定、聴覚の障害の危険性の判定、聴覚の障害の程度の判定、平衡覚の障害の有無の判定、平衡覚の障害の危険性の判定、平衡覚の障害の程度の判定、睡眠障害の有無の判定、睡眠障害の危険性の判定、睡眠障害の程度の判定、言語障害の有無の判定、言語障害の危険性の判定、言語障害の程度の判定、情動調節障害の有無の判定、情動調節障害の危険性の判定、情動調節障害の程度の判定、頭痛の有無の判定、頭痛の危険性の判定、頭痛の程度の判定、痙攣の有無の判定、痙攣の危険性の判定、痙攣の程度の判定、震えの有無の判定、震えの危険性の判定、震えの程度の判定、幻覚の有無の判定、幻覚の危険性の判定、幻覚の程度の判定、妄想の有無の判定、妄想の危険性の判定、妄想の程度の判定、錯覚の有無の判定、錯覚の危険性の判定、錯覚の程度の判定、異常行動の有無の判定、異常行動の危険性の判定、異常行動の程度の判定、うつ病の罹患の有無の判定、うつ病の発症の危険性の判定又はうつ病の重症度の判定である、(8)に記載のキット。
(11)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(8)~(10)のいずれか一に記載のキット。
(12)前記試薬が、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸とハイブリダイズするプローブ、又は、前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体である、(8)~(11)のいずれか一に記載のキット。
(13)被検体における老化現象の程度の判定のための指標を取得する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することを含む方法。
(14)前記老化現象の程度の判定が、齢の判定、脳組織の老化現象の程度の判定、末梢血の老化現象の程度の判定、又は骨髄細胞の老化現象の程度の判定である、(13)に記載の方法。
(15)前記試料が、体液試料、骨髄試料又は中枢神経組織試料である、(13)又は(14)に記載の方法。
(16)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(13)~(15)のいずれか一に記載の方法。
(17)被検体における老化現象の程度の判定のためのキットであって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定するための試薬を含むキット。
(18)前記老化現象の程度の判定が、齢の判定、脳組織の老化現象の程度の判定、末梢血の老化現象の程度の判定、又は骨髄細胞の老化現象の程度の判定である、(17)に記載のキット。
(19)前記試料が、体液試料、骨髄試料又は中枢神経組織試料である、(17)又は(18)に記載のキット。
(20)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(17)~(19)のいずれか一に記載のキット。
(21)前記試薬が、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸とハイブリダイズするプローブ、又は、前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体である、(17)~(20)のいずれか一に記載のキット。
【0019】
(22)前記被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することが、以下に示す(a)及び(b)を含む、(1)~(7)、(13)~(16)のいずれか一に記載の方法:
(a)前記試料から単核細胞を分離することにより単核細胞含有試料を得ること、
(b)前記単核細胞含有試料中の、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること。
(23)前記キットが、前記試料から単核細胞を分離するための試薬及び/又はカラムを更に含む、(8)~(12)、(17)~(21)のいずれか一に記載のキット。
【0020】
(24)被検体における認知症又は脳機能を判定する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること、及び、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値に基づき、前記被検体における認知症又は脳機能を判定すること
を含む方法。
ここで前記被検体は、好ましくは、ヒト又は非ヒト動物である。
ここで前記試料は、好ましくは、前記被検体から単離された試料である。
(25)前記認知症の判定が、認知症の罹患の有無の判定、認知症の発症の危険性の判定又は認知症の重症度の判定である、(24)に記載の方法。
(26)前記試料が、体液試料又は骨髄試料であり、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することを更に含み、
前記参照値よりも高い、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値が、前記被検体が認知症に罹患していること、前記被検体が認知症を発症する危険性を有すること、又は、前記被検体の認知症の重症度を示す、(25)に記載の方法。
(27)前記参照値に対する前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値の比率が、1.1以上、50.0以下である、(26)に記載の方法。
(28)前記試料が、中枢神経組織試料であり、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することを更に含み、
前記参照値よりも低い、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値が、前記被検体が認知症に罹患していること、前記被検体が認知症を発症する危険性を有すること、又は、前記被検体の認知症の重症度を示す、(25)に記載の方法。
(29)前記脳機能の判定が、(6)に記載の判定である、(24)に記載の方法。
(30)被検体における老化現象の程度を判定する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること、及び、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値に基づき、前記被検体における老化現象の程度を判定すること
を含む方法。
ここで前記被検体は、好ましくは、ヒト又は非ヒト動物である。
ここで前記試料は、好ましくは、前記被検体から単離された試料である。
(31)前記老化現象の程度の判定が、(14)に記載の判定である、(30)に記載の方法。
(32)前記試料が、体液試料、骨髄試料又は中枢神経組織試料である、(30)又は(31)に記載の方法。
(33)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(24)~(32)のいずれか一に記載の方法。
(34)前記被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することが、以下に示す(a)及び(b)を含む、(24)~(33)のいずれか一に記載の方法:
(a)前記試料から単核細胞を分離することにより単核細胞含有試料を得ること、
(b)前記単核細胞含有試料中の、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること。
【0021】
(35)エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質、又は、前記1以上のタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸を含む、認知症又は脳機能を判定するためのバイオマーカー。
(36)エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質、又は、前記1以上のタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸を含む、老化現象の程度を判定するためのバイオマーカー。
(37)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(35)又は(36)に記載のバイオマーカー。
(38)前記核酸がmRNA又は前記mRNAから調製されたcDNAである、(35)~(37)のいずれか一に記載のバイオマーカー。
【0022】
(39)認知症の判定又は脳機能の判定のためのキットの製造における、
エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定するための試薬の使用。
(40)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(39)に記載の使用。
(41)前記試薬が、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸とハイブリダイズするプローブ、又は、前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体である、(39)又は(40)に記載の使用。
(42)前記キットが、(8)~(12)、(23)のいずれか一に記載のキットの特徴を備える、(39)~(41)のいずれか一に記載の使用。
【0023】
(43)老化現象の程度の判定のためのキットの製造における、
エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定するための試薬の使用。
(44)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(43)に記載の使用。
(45)前記試薬が、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸とハイブリダイズするプローブ、又は、前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体である、(43)又は(44)に記載の使用。
(46)前記キットが、(17)~(21)、(23)のいずれか一に記載のキットの特徴を備える、(43)~(45)のいずれか一に記載の使用。
【0024】
(47)被検体におけるエネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することを含む方法。
ここで前記被検体は、好ましくは、ヒト又は非ヒト動物であり、より好ましくはヒトである。
ここで前記被検体は、好ましくは、認知症が疑われる被検体、認知症に罹患した被検体、認知症の治療を受けた被検体、認知症の発症の危険性の判定を望む又は必要とする被検体、脳機能の低下が疑われる被検体、脳機能が低下した被検体、脳機能の低下を治療するための処置を受けた被検体、脳機能の判定を望む又は必要とする被検体、老化現象が疑われる被検体、老化現象を有する被検体、老化現象を回復するための処置を受けた被検体、又は、老化現象の程度の判定を望む又は必要とする被検体である。
前記試料は、好ましくは、前記被検体から単離された試料である。
(48)前記試料が、体液試料、骨髄試料、又は、中枢神経組織試料である、(47)に記載の方法。
(49)前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することを更に含む、(47)又は(48)に記載の方法。
(50)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(47)~(49)のいずれか一に記載の方法。
(51)前記被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することが、以下に示す(a)及び(b)を含む、(47)~(50)のいずれか一に記載の方法:
(a)前記試料から単核細胞を分離することにより単核細胞含有試料を得ること、
(b)前記単核細胞含有試料中の、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること。
【0025】
(52)被検体における認知症又は脳機能を判定し、前記被検体における認知症又は脳機能を改善又は治療する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値に基づき、前記被検体における認知症又は脳機能を判定すること、及び、
前記判定の結果が、認知症又は脳機能を改善又は治療することが必要であることを示す前記被検体に対して、認知症又は脳機能を改善又は治療する処置を施すこと
を含む方法。
ここで前記被検体は、好ましくは、ヒト又は非ヒト動物である。
ここで前記試料は、好ましくは、前記被検体から単離された試料である。
(53)前記認知症の判定が、認知症の罹患の有無の判定、認知症の発症の危険性の判定又は認知症の重症度の判定である、(52)に記載の方法。
(54)前記試料が、体液試料又は骨髄試料であり、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することを更に含み、
前記参照値よりも高い、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値が、前記被検体が認知症に罹患していること、前記被検体が認知症を発症する危険性を有すること、又は、前記被検体の認知症の重症度を示す、(53)に記載の方法。
(55)前記参照値に対する前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値の比率が、1.1以上、50.0以下である、(54)に記載の方法。
(56)前記試料が、中枢神経組織試料であり、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することを更に含み、
前記参照値よりも低い、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値が、前記被検体が認知症に罹患していること、前記被検体が認知症を発症する危険性を有すること、又は、前記被検体の認知症の重症度を示す、(53)に記載の方法。
(57)前記脳機能の判定が、(6)に記載の判定である、(52)に記載の方法。
(58)被検体における老化現象の程度を判定し、前記被検体における老化現象を改善又は治療する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値に基づき、前記被検体における老化現象の程度を判定すること、及び、
前記判定の結果が、老化現象を改善又は治療することが必要であることを示す前記被検体に対して、老化現象を改善又は治療する処置を施すこと
を含む方法。
ここで前記被検体は、好ましくは、ヒト又は非ヒト動物である。
ここで前記試料は、好ましくは、前記被検体から単離された試料である。
(59)前記老化現象の程度の判定が、(14)に記載の判定である、(58)に記載の方法。
(60)前記試料が、体液試料、骨髄試料又は中枢神経組織試料である、(58)又は(59)に記載の方法。
(61)前記1以上のタンパク質が、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上のタンパク質である、(52)~(60)のいずれか一に記載の方法。
(62)前記被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することが、以下に示す(a)及び(b)を含む、(52)~(61)のいずれか一に記載の方法:
(a)前記試料から単核細胞を分離することにより単核細胞含有試料を得ること、
(b)前記単核細胞含有試料中の、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること。
【0026】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2020-038991号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一以上の実施形態によれば、認知症を簡便な操作で判定することができる。認知症の早期判定が可能である。
本発明の一以上の実施形態によれば、脳機能を簡便な操作で判定することができる。
本発明の一以上の実施形態によれば、老化現象の程度を簡便な操作で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施例1及び比較例1の各マウスの体液試料中における、18SリボソームRNA遺伝子の発現量に対する各標的遺伝子の平均相対発現量を示す。
図2図2は、実施例2の各マウスの体液試料中における、18SリボソームRNA遺伝子の発現量に対する各標的遺伝子の平均相対発現量を示す。
図3図3は、実施例2のマウスの体液試料中の各々の標的遺伝子の平均相対発現量とマウスの週齢との関係を示す。図3Aは、実施例2のマウスの体液試料中のGlut1遺伝子の平均相対発現量とマウスの週齢との関係を示す。図3Bは、実施例2のマウスの体液試料中のGlut3遺伝子の平均相対発現量とマウスの週齢との関係を示す。図3Cは、実施例2のマウスの体液試料中のMCT4遺伝子の平均相対発現量とマウスの週齢との関係を示す。図3Dは、実施例2のマウスの体液試料中のPHD3遺伝子の平均相対発現量とマウスの週齢との関係を示す。図3Eは、実施例2のマウスの体液試料中のPDK1遺伝子の平均相対発現量とマウスの週齢との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<1.用語>
<1.1.被検体由来の試料>
本明細書において「被検体」とは、認知症、脳機能又は老化現象の程度の判定の対象となるヒト又は非ヒト動物を指す。非ヒト動物としては、霊長類動物、ラット、マウス、スナネズミ、モルモット、ハムスター、フェレット、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ等の非ヒト哺乳動物を例示することができる。
【0030】
被検体に由来する試料としては、被検体の末梢血、唾液、尿、喀痰、汗、咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液等の体液試料、骨髄試料、及び脳組織等の中枢神経組織試料を利用することができる。特に、試料採取時の非侵襲性の観点から、体液試料又は骨髄試料が好ましく、体液試料、特に末梢血試料、が最も好ましい。末梢血試料としては、血清、血漿、全血等の各種形態の末梢血試料を利用することができる。骨髄試料としては骨髄液試料を利用することができる。被検体に由来する試料は、好ましくは、被検体から単離された試料である。実施例に示す通り、後述するタンパク質の遺伝子発現量又は酵素活性は、認知症に罹患した被検体、認知症を将来的に発症する可能性のある被検体、脳機能が低下した被検体、或いは、脳機能が将来的に低下する可能性のある被検体では、正常検体と比較して、末梢血等の体液又は骨髄において高いことが確認されており、実施例には示していないが脳組織などの中枢神経組織において低いことが確認されている。また、実施例に示す通り、後述するタンパク質の遺伝子発現量又は酵素活性は、高齢の被検体では、若齢検体と比較して、末梢血等の体液又は骨髄において高いことが確認されており、実施例には示していないが脳組織などの中枢神経組織において低いことが確認されている。また、実施例に示す通り、後述するタンパク質の遺伝子発現量又は酵素活性は、脳組織の老化現象が認められる被検体、脳組織の老化現象が進行する可能性のある被検体、末梢血の老化現象が認められる被検体、末梢血の老化現象が進行する可能性のある被検体、骨髄細胞の老化現象が認められる被検体、或いは、骨髄細胞の老化現象が進行する可能性のある被検体では、正常検体と比較して、末梢血等の体液又は骨髄において高いことが確認されており、実施例には示していないが脳組織などの中枢神経組織において低いことが確認されている。
【0031】
また、被検体に由来する体液試料又は骨髄試料として、被検体の体液又は骨髄から分離された単核細胞(Mononuclear Cells;MNC)を含有する単核細胞含有試料を利用することができる。本明細書において「単核細胞」とは、リンパ球及び/又は単球を指す。また、本明細書において「白血球」とは、好中球、好塩基球、好酸球、リンパ球及び単球の総称を指す。
【0032】
<1.2.認知症>
本明細書において「認知症」とは、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症のいずれであってもよいが、特に好ましくはアルツハイマー型認知症である。
【0033】
認知症を判定することには、被検体における認知症の罹患の有無を判定すること、被検体における認知症の発症の危険性を判定すること、被検体における認知症の重症度を判定すること等が包含される。
【0034】
<1.3.脳機能>
本明細書において「脳機能」とは、記憶、運動、感覚、睡眠、言語等に関与する脳組織の機能を指す。
【0035】
脳機能を判定することには、被検体における脳機能の低下の有無を判定すること、被検体における脳機能の低下の危険性を判定すること、被検体における脳機能の低下の程度を判定すること、被検体における自律神経系の障害の有無を判定すること、被検体における自律神経系の障害の危険性を判定すること、被検体における自律神経系の障害の程度を判定すること、被検体における記憶障害の有無を判定すること、被検体における記憶障害の危険性を判定すること、被検体における記憶障害の程度を判定すること、被検体における運動障害の有無を判定すること、被検体における運動障害の危険性を判定すること、被検体における運動障害の程度を判定すること、被検体における協調運動の障害の有無を判定すること、被検体における協調運動の障害の危険性を判定すること、被検体における協調運動の障害の程度を判定すること、被検体における不随意運動の障害の有無を判定すること、被検体における不随意運動の障害の危険性を判定すること、被検体における不随意運動の障害の程度を判定すること、被検体における感覚障害の有無を判定すること、被検体における感覚障害の危険性を判定すること、被検体における感覚障害の程度を判定すること、被検体における視覚の障害の有無を判定すること、被検体における視覚の障害の危険性を判定すること、被検体における視覚の障害の程度を判定すること、被検体における嗅覚の障害の有無を判定すること、被検体における嗅覚の障害の危険性を判定すること、被検体における嗅覚の障害の程度を判定すること、被検体における聴覚の障害の有無を判定すること、被検体における聴覚の障害の危険性を判定すること、被検体における聴覚の障害の程度を判定すること、被検体における平衡覚の障害の有無を判定すること、被検体における平衡覚の障害の危険性を判定すること、被検体における平衡覚の障害の程度を判定すること、被検体における睡眠障害の有無を判定すること、被検体における睡眠障害の危険性を判定すること、被検体における睡眠障害の程度を判定すること、被検体における言語障害の有無を判定すること、被検体における言語障害の危険性を判定すること、被検体における言語障害の程度を判定すること、被検体における情動調節障害の有無を判定すること、被検体における情動調節障害の危険性を判定すること、被検体における情動調節障害の程度を判定すること、被検体における頭痛の有無を判定すること、被検体における頭痛の危険性を判定すること、被検体における頭痛の程度を判定すること、被検体における痙攣の有無を判定すること、被検体における痙攣の危険性を判定すること、被検体における痙攣の程度を判定すること、被検体における震えの有無を判定すること、被検体における震えの危険性を判定すること、被検体における震えの程度を判定すること、被検体における幻覚の有無を判定すること、被検体における幻覚の危険性を判定すること、被検体における幻覚の程度を判定すること、被検体における妄想の有無の判定、被検体における妄想の危険性の判定、被検体における妄想の程度を判定すること、被検体における錯覚の有無を判定すること、被検体における錯覚の危険性を判定すること、被検体における錯覚の程度を判定すること、被検体における異常行動の有無を判定すること、被検体における異常行動の危険性を判定すること、被検体における異常行動の程度を判定すること、被検体におけるうつ病の罹患の有無を判定すること、被検体におけるうつ病の発症の危険性を判定すること又は被検体におけるうつ病の重症度を判定すること等が包含される。
【0036】
<1.4.老化現象>
本明細書において「老化現象」とは、加齢に伴う身体的変化及び/又は生理的変化を指す。老化現象としては、例えば、シミ、しわ、たるみ、くすみ等の皮膚の変化、白髪、薄毛、脱毛等の毛髪の変化、脳の形態変化、脳の萎縮等の脳組織の変化、末梢血の変化、骨髄細胞の変化、骨の変化、筋肉の変化等を例示することができる。
【0037】
本明細書において「老化現象の程度」とは、加齢に伴う身体的変化及び/又は生理的変化の程度を指す。本明細書において、「老化現象の程度」は「老化度」と記載されることがある。
【0038】
本明細書において「老化現象の程度の判定」とは、加齢に伴う身体的変化及び生理的変化の程度の判定を指す。老化現象の程度を判定することには、例えば、被検体における齢を判定すること、脳組織の老化現象の程度を判定すること、末梢血の老化現象の程度を判定すること、骨髄細胞の老化現象の程度を判定すること等が包含される。
【0039】
<1.5.エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質>
本明細書において、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質としては、グルコース輸送、乳酸輸送、エネルギー代謝制御、ミトコンドリア生合成、解糖系、ペントースリン酸経路、TCA回路、電子伝達系、脂肪酸代謝、ギャップ結合、又はナトリウム・カリウムポンプに関与する1以上のタンパク質を例示することができる。
【0040】
グルコース輸送に関与するタンパク質としては、細胞でのエネルギー代謝に用いられるグルコースを細胞外から細胞内に輸送するグルコース輸送に関与する膜タンパク質(グルコース輸送体)を構成するタンパク質が例示でき、具体的には、Glut(glucose transporter)ファミリー(Glut1~12)に属するタンパク質が挙げられる。Glutファミリーに属するタンパク質の中でもGlut1、Glut2、Glut3及びGlut4、特にGlut1及びGlut3の遺伝子発現又は酵素活性が好ましい。マウスのGlut1の塩基配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示す。ヒトのGlut1の塩基配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に示す。マウスのGlut3の塩基配列を配列番号5に、アミノ酸配列を配列番号6に示す。ヒトのGlut3の塩基配列を配列番号7に、アミノ酸配列を配列番号8に示す。配列番号1、3、5及び7の塩基配列は、いずれも、タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(CDS)と、CDSの上流及び下流に位置する非翻訳領域(UTR)の塩基配列とを含む。
【0041】
乳酸輸送に関与するタンパク質としては、細胞でのエネルギー代謝により生成される乳酸を細胞内から細胞外に輸送する乳酸輸送に関与する膜タンパク質(乳酸輸送体)を構成するタンパク質が例示でき、具体的には、MCT(monocarboxylate transport protein)ファミリーに属するタンパク質が挙げられる。MCTファミリーに属するタンパク質の中でもMCT1、MCT2、MCT3及びMCT4、特にMCT4の遺伝子発現又は酵素活性が好ましい。マウスのMCT4の塩基配列を配列番号9に、アミノ酸配列を配列番号10に示す。ヒトのMCT4の塩基配列を配列番号11に、アミノ酸配列を配列番号12に示す。配列番号9及び11の塩基配列は、いずれも、タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(CDS)と、CDSの上流及び下流に位置する非翻訳領域(UTR)の塩基配列とを含む。
【0042】
エネルギー代謝制御に関与するタンパク質としては、PHD(prolyl hydroxylase domain-containing protein)ファミリーに属するタンパク質が挙げられる、PHDファミリーに属するタンパク質の中でもPHD2及びPHD3、特にPHD3の遺伝子発現又は酵素活性が好ましい。マウスのPHD3の塩基配列を配列番号13に、アミノ酸配列を配列番号14に示す。ヒトのPHD3の塩基配列を配列番号15に、アミノ酸配列を配列番号16に示す。配列番号13及び15の塩基配列は、いずれも、タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(CDS)と、CDSの上流及び下流に位置する非翻訳領域(UTR)の塩基配列とを含む。また、エネルギー代謝制御に関与するタンパク質としては、HIF1a(hypoxia-inducible factor 1 alpha)、Sirt1(sirtuin 1)、PPARa(peroxisome proliferator-activated receptor alpha)及びERRa(estrogen-related receptor a)も例示できる。
【0043】
ミトコンドリア生合成に関与するタンパク質としては、PGC1a(peroxisome proliferators-activated receptor-ganma co-activator-1 alpha)を例示することができる。
【0044】
解糖系に関与するタンパク質としては、LDHa(lactate dehydrogenase A)、LDHb(lactate dehydrogenase B)、HK1(hexokinase 1)、PFK(phosphofructokinase)、PKR(pyruvate kinase isozyme R)及びPkm1(pyruvate kinase isozymes M1)も例示できる。
【0045】
ペントースリン酸経路に関与するタンパク質としては、G6PD(glucose-6-phosphate dehydrogenase)、RPI(ribose-5-phosphate isomerase)、RPE(ribulose-5-phosphate epimerase)、6PGL(6-phosphogluconolactonase)及びTALDO(transaldolase)を例示することができる。
【0046】
TCA回路に関与するタンパク質としては、PDK(pyruvate dehydrogenase kinase)ファミリーに属するタンパク質が挙げられる、PDKファミリーに属するタンパク質の中でもPDK1、PDK3及びPDK4、特にPDK1の遺伝子発現又は酵素活性が好ましい。マウスのPDK1の塩基配列を配列番号17に、アミノ酸配列を配列番号18に示す。ヒトのPDK1の塩基配列を配列番号19に、アミノ酸配列を配列番号20に示す。配列番号17及び19の塩基配列は、いずれも、タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(CDS)と、CDSの上流及び下流に位置する非翻訳領域(UTR)の塩基配列とを含む。また、TCA回路に関与するタンパク質としては、IDH2(isocitrate dehydrogenase 2)、OGDH(2-oxoglutarate dehydrogenase)及びCS(citrate synthase)も例示できる。
【0047】
電子伝達系に関与するタンパク質としては、AMPK(AMP-activated protein kinase)を例示することができる。
【0048】
脂肪酸代謝に関与するタンパク質としては、FABP1(fatty acid binding protein 1)、FABP4(fatty acid binding protein 4)、CD36(fatty acid translocase:FAT)、CPT1(carnitine palmitoyltransferase 1)、OXCT1(3-oxo acid CoA-transferase 1)及びACC(acetyl-CoA carboxylase)を例示することができる。
【0049】
ギャップ結合に関与するタンパク質としては、Cx37(connexin 37)及びCx43(connexin 43)を例示することができる。
【0050】
ナトリウム・カリウムポンプに関与するタンパク質としては、ATP1A1(sodium/potassium-transporting ATPase subunit alpha-1)、ATP1A2(sodium/potassium-transporting ATPase subunit alpha-2)及びATP1A3(sodium/potassium-transporting ATPase subunit alpha-3)を例示することができる。
【0051】
<2.被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得する方法>
本発明の一以上の実施形態は、
被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することを含む方法に関する。
【0052】
本発明の一以上の実施形態は、
被検体における認知症又は脳機能を判定する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること、及び、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値に基づき、前記被検体における認知症又は脳機能を判定すること
を含む方法に関する。
【0053】
より好ましくは、前記方法はそれぞれ、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較すること、
を更に含む。
【0054】
本実施形態において「参照値」とは、正常検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を、被検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性と同様の条件で測定した場合の測定値又は該測定値から設定された基準値であってもよいし、認知症の有無又は重症度が既知の患者に由来する試料中の前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を、被検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性と同様の条件で測定した場合の測定値又は該測定値から設定された基準値であってもよい。
【0055】
本発明の一以上の実施形態は、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、認知症に罹患した被検体、認知症を将来的に発症する可能性のある被検体、脳機能が低下した被検体、或いは、脳機能が将来的に低下する可能性のある被検体では、正常検体と比較して、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低いという予想外の知見に基づいている。また、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、被検体の認知症の重症度が高いほど、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低い。また、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、被検体における脳機能が低いほど、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低い。このため、本発明の前記実施形態において、前記試料が体液試料又は骨髄試料、特に単核細胞含有試料、である場合に、前記参照値よりも前記測定値が高いことは、前記被検体が認知症に罹患していること、前記被検体が認知症を発症する危険性を有すること、前記被検体の認知症の重症度がより高いこと、前記被検体の脳機能が低下していること、前記被検体の脳機能が低下する危険性を有すること、或いは、前記被検体の脳機能の低下の程度がより顕著であることを示す指標となる。また、本発明の前記実施形態において、前記試料が中枢神経組織試料である場合に、前記参照値よりも前記測定値が低いことは、前記被検体が認知症に罹患していること、前記被検体が認知症を発症する危険性を有すること、前記被検体の認知症の重症度がより高いこと、前記被検体の脳機能が低下していること、前記被検体の脳機能が低下する危険性を有すること、或いは、前記被検体の脳機能の低下の程度がより顕著であることを示す指標となる。
【0056】
本発明の一以上の実施形態において、前記試料が体液試料又は骨髄試料、特に単核細胞含有試料、である場合に、前記参照値に対する前記測定値の比率の下限は、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3.0以上、3.2以上、3.4以上、3.6以上、3.8以上、4.0以上、4.2以上、4.4以上、4.6以上、4.8以上、5.0以上、5.2以上、5.4以上、5.6以上、5.8以上、又は6.0以上であることが好ましい。また、前記試料が体液試料又は骨髄試料、特に単核細胞含有試料、である場合に、前記参照値に対する前記測定値の比率の上限は、特に限定されないが、例えば50.0以下、45.0以下、40.0以下、35.0以下、30.0以下、25.0以下、20.0以下、15.0以下、14.0以下、13.0以下、12.0以下、11.0以下、10.0以下、9.8以下、9.6以下、9.4以下、9.2以下、又は9.0以下とすることができる。これらの比率は、前記参照値が、正常検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を、被検体由来の試料中の前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性と同様の条件で測定した場合の測定値又は該測定値から設定された基準値である場合に特に好ましい。
【0057】
本発明の一以上の実施形態において、前記エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質として、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上、2以上、3以上、4以上又は全てのタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することが好ましい。前記試料が体液試料又は骨髄試料、特に単核細胞含有試料、であり、前記5つのタンパク質のうち2以上5以下のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定する実施形態では、測定したタンパク質のうち半数以上(例えば1/2以上、2/3以上、2/4以上、3/5以上)の遺伝子発現又は酵素活性の測定値が、参照値と比較して高い場合に、前記被検体が認知症に罹患している、前記被検体が認知症を発症する危険性を有する、前記被検体の認知症の重症度がより高い、前記被検体の脳機能が低下している、前記被検体の脳機能が低下する危険性を有する、或いは、前記被検体の脳機能の低下の程度がより顕著である、と判定することが好ましい。
【0058】
本発明の前記実施形態では、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現及び酵素活性の一方のみを測定してもよいし、両方を測定してもよい。より好ましくは前記1以上のタンパク質の遺伝子発現を測定する。
【0059】
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現は、試料中における、前記1以上のタンパク質の遺伝子のmRNA(コーディング領域及び非翻訳領域を含む)を検出することにより測定してもよいし、試料中における、前記1以上のタンパク質のタンパク質量を検出することにより測定してもよい。
【0060】
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現の測定値は、試料中における、1以上の内在性コントロールの遺伝子発現量に対する前記1以上のタンパク質の遺伝子発現の相対発現量であってもよい。内在性コントロールとしては、TBP(TATA-binding protein)、GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)、β-アクチン、β2M(β2 microglobuline)、HPRT1(hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1)、18SリボソームRNA、特に18SリボソームRNAに代表されるハウスキーピング遺伝子を利用することができる。マウスの18SリボソームRNAの塩基配列を配列番号21に示す。ヒトの18SリボソームRNAの塩基配列を配列番号22に示す。
【0061】
前記1以上のタンパク質のアミノ酸配列をコードする遺伝子のmRNAの検出には、ノーザンブロッティング、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、DNAマイクロアレイ法(DNAチップを利用した方法)、ドットブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法等を利用することができる。これらの方法は公知の方法で行うことができる。
【0062】
前記1以上のタンパク質のタンパク質量の検出は、前記1以上のタンパク質を特異的に認識し結合する抗体を用いる免疫測定法により行うことができる。抗体は、公知の方法により作製することができる。免疫測定法としては、検出しようとする前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体を固定した固相担体を用いる方法や、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング等が挙げられる。固相担体を用いる方法として、例えば、固定化マイクロタイタープレートを用いる酵素免疫測定法(ELISA)、固定化粒子を用いる凝集法(免疫沈降法)等が挙げられるが、これらには限定されず、公知の免疫学的測定法を採用して、試料中の前記1以上のタンパク質のタンパク質量を検出することができる。また、前記1以上のタンパク質のタンパク質量の検出は、抗体を用いないタンパク質質量分析技術であるLC-MS/MS MRM等を用いる方法により行うこともできる。これらの検出方法についても、常法のプロトコルによって実施することができる。
【0063】
試料中の前記1以上のタンパク質の酵素活性は、測定しようとするタンパク質の酵素活性に応じた方法で測定することが可能である。
【0064】
前記試料中の単核細胞の比率は、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上又は100%であることが好ましい。本明細書において「試料中の単核細胞の比率」とは、試料に含まれる全ての白血球の数に対して単核細胞の数が占める割合を指す。試料中の単核細胞の比率は、例えば、血球分析装置、血球計算盤、フローサイトメトリー等により測定することができるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明の一以上の実施形態において、前記被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することが、以下に示す(a)及び(b)を含むことが好ましい。
(a)前記試料から単核細胞を分離することにより単核細胞含有試料を得ること、
(b)前記単核細胞含有試料中の、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること。
【0066】
被検体由来の試料には、顆粒球が含まれていることがあり、前記試料中の顆粒球は、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値の測定精度を低下させる要因となることがある。よって、前記試料から単核細胞を分離する、或いは顆粒球を除去することにより単核細胞の比率を高めた単核細胞含有試料を取得し、得られた単核細胞含有試料を測定に供することによって、精度の高い測定値を得ることができる。
【0067】
前記単核細胞含有試料中の単核細胞の比率は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上又は100%であることが好ましい。また、前記単核細胞含有試料中の顆粒球の比率は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、2%未満又は0%であることが好ましい。本明細書において「単核細胞含有試料中の単核細胞又は顆粒球の比率」とは、単核細胞含有試料に含まれる全ての細胞の数に対して単核細胞又は顆粒球の数が占める割合を指す。単核細胞含有試料中の単核細胞又は顆粒球の比率は、例えば、血球分析装置、血球計算盤、フローサイトメトリー等により測定することができるが、これらに限定されない。
【0068】
被検体由来の試料から単核細胞含有試料を得る方法としては、単核細胞を分離するための試薬及び/又はカラムを用いる方法が好ましい。前記試薬及び/又はカラムとしては、例えば、Ficoll-Paque PLUS(GEヘルスケア社製)、Lymphoprep(Abbott Diagnostics Technologies社製)、Human Peripheral Blood Mononuclear Cell Isolation and Viability Kit(BioVision社製)、BD バキュテイナ(登録商標)CPT 単核球分離用採血管(ベクトン・ディッキンソン社製)、pluriMate(pluriSelect社製)、SepMate(STEMCELL Technologies社製)等を挙げることができる。前記試薬及び/又はカラムを用いることにより、前記試料中の単核細胞と顆粒球とを分離し、測定に供するための単核細胞含有試料を効率的に取得することができる。
【0069】
<3.被検体における老化現象の程度の判定のための指標を取得する方法>
本発明の一以上の実施形態は、
被検体における老化現象の程度の判定のための指標を取得する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することを含む方法に関する。
【0070】
本発明の一以上の実施形態は、
被検体における老化現象の程度を判定する方法であって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること、及び、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値に基づき、前記被検体における老化現象の程度を判定すること
を含む方法に関する。
【0071】
より好ましくは、前記方法はそれぞれ、
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較すること、
を更に含む。
【0072】
本発明の一以上の実施形態は、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、高齢の被検体では、若齢検体と比較して、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低いという予想外の知見に基づいている。また、本発明の一以上の実施形態は、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、脳組織の老化現象が認められる被検体、脳組織の老化現象が進行する可能性のある被検体、末梢血の老化現象が認められる被検体、末梢血の老化現象が進行する可能性のある被検体、骨髄細胞の老化現象が認められる被検体、或いは、骨髄細胞の老化現象が進行する可能性のある被検体では、正常検体と比較して、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低い。また、本発明の一以上の実施形態は、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、脳組織の老化現象の程度が大きい被検体、末梢血の老化現象の程度が大きい被検体、或いは、骨髄細胞の老化現象の程度が大きい被検体では、正常検体と比較して、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低い。また、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、被検体の脳組織の老化現象の程度が大きいほど、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低い。また、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、被検体の末梢血の老化現象の程度が大きいほど、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低い。また、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性は、被検体の骨髄細胞の老化現象の程度が大きいほど、末梢血、尿、唾液等の体液又は骨髄において高く、脳組織等の中枢神経組織において低い。このため、本発明の前記実施形態において、前記試料が体液試料、骨髄試料又は中枢神経組織試料である場合に、前記測定値は、前記被検体の齢の判定、前記被検体の脳組織の老化現象が進行する可能性、前記被検体の脳組織の老化現象の程度、前記被検体の末梢血の老化現象が進行する可能性、前記被検体の末梢血の老化現象の程度、或いは、前記被検体の骨髄細胞の老化現象の程度を示す指標となる。
【0073】
本発明の一以上の実施形態において、前記エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質として、Glut1、Glut3、MCT4、PHD3及びPDK1から選択される1以上、2以上、3以上、4以上又は全てのタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することが好ましい。前記試料が体液試料又は骨髄試料、特に単核細胞含有試料、であり、前記5つのタンパク質のうち2以上5以下のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定する実施形態では、測定したタンパク質のうち半数以上(例えば1/2以上、2/3以上、2/4以上、3/5以上)の遺伝子発現又は酵素活性の測定値が、参照値と比較して高い場合に、前記被検体の老化現象がより進行している、と判定することが好ましい。
【0074】
本発明の前記実施形態では、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現及び酵素活性の一方のみを測定してもよいし、両方を測定してもよい。より好ましくは前記1以上のタンパク質の遺伝子発現を測定する。
【0075】
前記1以上のタンパク質の遺伝子発現は、試料中における、前記1以上のタンパク質の遺伝子のmRNA(コーディング領域及び非翻訳領域を含む)を検出することにより測定してもよいし、試料中における、前記1以上のタンパク質のタンパク質量を検出することにより測定してもよい。
【0076】
前記1以上のタンパク質の遺伝子のmRNAの検出には、ノーザンブロッティング、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、DNAマイクロアレイ法(DNAチップを利用した方法)、ドットブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法等を利用することができる。これらの方法は公知の方法で行うことができる。
【0077】
前記1以上のタンパク質のタンパク質量の検出は、前記1以上のタンパク質を特異的に認識し結合する抗体を用いる免疫測定法により行うことができる。抗体は、公知の方法により作製することができる。免疫測定法としては、検出しようとする前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体を固定した固相担体を用いる方法や、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング等が挙げられる。固相担体を用いる方法として、例えば、固定化マイクロタイタープレートを用いる酵素免疫測定法(ELISA)、固定化粒子を用いる凝集法(免疫沈降法)等が挙げられるが、これらには限定されず、公知の免疫学的測定法を採用して、試料中の前記1以上のタンパク質のタンパク質量を検出することができる。また、前記1以上のタンパク質のタンパク質量の検出は、抗体を用いないタンパク質質量分析技術であるLC-MS/MS MRM等を用いる方法により行うこともできる。これらの検出方法についても、常法のプロトコルによって実施することができる。
試料中の前記1以上のタンパク質の酵素活性は、測定しようとするタンパク質の酵素活性に応じた方法で測定することが可能である。
【0078】
<4.認知症の判定又は脳機能の判定のためのキット>
本発明の別の一以上の実施形態は、
認知症の判定又は脳機能の判定のためのキットであって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定するための試薬を含むキットに関する。
前記試薬としては、上述の、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定する方法に用いることができる試薬が好ましい。
【0079】
具体的には、測定しようとする前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸(ゲノムDNA、mRNA又はmRNAに基づき調製されるcDNA)を増幅するためのプライマー対、測定しようとする前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸(ゲノムDNA、mRNA又はmRNAに基づき調製されるcDNA)とハイブリダイズするプローブ、前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、前記1以上のタンパク質の酵素活性を測定するための反応基質等を例示することができる。前記核酸は非翻訳領域、イントロン領域、シグナル配列領域等も含み得る。好ましくは、前記核酸は、mRNA又はcDNAである。前記mRNA又はcDNAは、前記1以上のタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(CDS)及びその上流及び下流に位置する非翻訳領域(UTR)の塩基配列のうち少なくとも一部を含んでいればよい。前記プライマー対の一例は、CDS及びUTRの塩基配列のうち少なくとも一部の領域を増幅できるプライマー対である。前記プローブの一例は、CDS及びUTRの塩基配列のうち少なくとも一部の領域にハイブリダイズできるプローブである。
【0080】
前記プライマー対の一例として、Glut1遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対であって、以下の(A1)~(A4)に示されるいずれかの塩基配列と同一又は相同な塩基配列Afを3’末端に含むGlut1フォワードプライマーと、以下の(A5)~(A8)に示されるいずれかの塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同な塩基配列Arを3’末端に含むGlut1リバースプライマーと、を含むGlut1プライマー対が例示できる。
(A1)配列番号1の塩基配列のうち、第101位~第180位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(A2)配列番号3の塩基配列のうち、配列番号3の塩基配列と配列番号1の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(A1)の塩基配列に対応する塩基配列
(A3)配列番号3の塩基配列のうち、第256位~第336位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(A4)配列番号1の塩基配列のうち、配列番号1の塩基配列と配列番号3の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(A3)の塩基配列に対応する塩基配列
(A5)配列番号1の塩基配列のうち、第213位~第292位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(A6)配列番号3の塩基配列のうち、配列番号3の塩基配列と配列番号1の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(A5)の塩基配列に対応する塩基配列
(A7)配列番号3の塩基配列のうち、第339位~第418位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(A8)配列番号1の塩基配列のうち、配列番号1の塩基配列と配列番号3の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(A7)の塩基配列に対応する塩基配列。
【0081】
前記(A1)において、「第101位~第180位の塩基配列」は、好ましくは「第111位~第170位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第121位~第160位の塩基配列」であり、より好ましくは「第121位~第155位の塩基配列」、より好ましくは「第126位~第150位の塩基配列」である。
【0082】
前記(A3)において、「第256位~第336位の塩基配列」は、好ましくは「第266位~第326位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第276位~第316位の塩基配列」であり、より好ましくは「第276位~第311位の塩基配列」、より好ましくは「第281位~第306位の塩基配列」である。
【0083】
前記(A1)及び(A3)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(A1)及び(A3)において、「連続した」は、好ましくは「3’末端から連続した」を指す。
【0084】
前記塩基配列Afは、前記(A1)の塩基配列、(A2)の塩基配列、(A3)の塩基配列又は(A4)の塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Afのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(A1)の塩基配列、(A2)の塩基配列、(A3)の塩基配列又は(A4)の塩基配列と同一であり、前記塩基配列Afの残部が前記(A1)の塩基配列、(A2)の塩基配列、(A3)の塩基配列又は(A4)の塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Afは、前記(A1)の塩基配列、(A2)の塩基配列、(A3)の塩基配列又は(A4)の塩基配列と同一である。
【0085】
Glut1フォワードプライマーは、前記塩基配列Afを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Afの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。Glut1フォワードプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0086】
前記(A1)の塩基配列の具体例としては配列番号25の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Afの具体例としては配列番号25の塩基配列が例示できる。
【0087】
前記(A3)の塩基配列の具体例としては配列番号37の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Afの具体例としては配列番号37の塩基配列が例示できる。
【0088】
前記(A5)において、「第213位~第292位の塩基配列」は、好ましくは「第223位~第282位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第233位~第272位の塩基配列」であり、より好ましくは「第238位~第272位の塩基配列」、より好ましくは「第243位~第267位の塩基配列」である。
【0089】
前記(A7)において、「第339位~第418位の塩基配列」は、好ましくは「第349位~第408位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第359位~第398位の塩基配列」であり、より好ましくは「第364位~第398位の塩基配列」、より好ましくは「第369位~第393位の塩基配列」である。
【0090】
前記(A5)及び(A7)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(A5)及び(A7)において、「連続した」は、好ましくは「5’末端から連続した」を指す。
【0091】
前記塩基配列Arは、前記(A5)の塩基配列、(A6)の塩基配列、(A7)の塩基配列又は(A8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Arのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(A5)の塩基配列、(A6)の塩基配列、(A7)の塩基配列又は(A8)の塩基配列の相補塩基配列と同一であり、前記塩基配列Arの残部が前記(A5)の塩基配列、(A6)の塩基配列、(A7)の塩基配列又は(A8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Arは、前記(A5)の塩基配列、(A6)の塩基配列、(A7)の塩基配列又は(A8)の塩基配列の相補塩基配列と同一である。
【0092】
Glut1リバースプライマーは、前記塩基配列Arを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Arの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。Glut1リバースプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0093】
前記(A5)の塩基配列の具体例としては配列番号26の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Arの具体例としては配列番号26の塩基配列が例示できる。
【0094】
前記(A7)の塩基配列の具体例としては配列番号38の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Arの具体例としては配列番号38の塩基配列が例示できる。
【0095】
前記プライマー対の一例として、Glut3遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対であって、以下の(B1)~(B4)に示されるいずれかの塩基配列と同一又は相同な塩基配列Bfを3’末端に含むGlut3フォワードプライマーと、以下の(B5)~(B8)に示されるいずれかの塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同な塩基配列Brを3’末端に含むGlut3リバースプライマーと、を含むGlut3プライマー対が例示できる。
(B1)配列番号5の塩基配列のうち、第250位~第329位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(B2)配列番号7の塩基配列のうち、配列番号7の塩基配列と配列番号5の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(B1)の塩基配列に対応する塩基配列
(B3)配列番号7の塩基配列のうち、第224位~第303位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(B4)配列番号5の塩基配列のうち、配列番号5の塩基配列と配列番号7の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(B3)の塩基配列に対応する塩基配列
(B5)配列番号5の塩基配列のうち、第375位~第454位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(B6)配列番号7の塩基配列のうち、配列番号7の塩基配列と配列番号5の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(B5)の塩基配列に対応する塩基配列
(B7)配列番号7の塩基配列のうち、第288位~第367位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(B8)配列番号5の塩基配列のうち、配列番号5の塩基配列と配列番号7の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(B7)の塩基配列に対応する塩基配列。
【0096】
前記(B1)において、「第250位~第329位の塩基配列」は、好ましくは「第260位~第319位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第270位~第309位の塩基配列」であり、より好ましくは「第270位~第304位の塩基配列」、より好ましくは「第275位~第299位の塩基配列」である。
【0097】
前記(B3)において、「第224位~第303位の塩基配列」は、好ましくは「第234位~第293位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第244位~第283位の塩基配列」であり、より好ましくは「第244位~第278位の塩基配列」、より好ましくは「第249位~第273位の塩基配列」である。
【0098】
前記(B1)及び(B3)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(B1)及び(B3)において、「連続した」は、好ましくは「3’末端から連続した」を指す。
【0099】
前記塩基配列Bfは、前記(B1)の塩基配列、(B2)の塩基配列、(B3)の塩基配列又は(B4)の塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Bfのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(B1)の塩基配列、(B2)の塩基配列、(B3)の塩基配列又は(B4)の塩基配列と同一であり、前記塩基配列Bfの残部が前記(B1)の塩基配列、(B2)の塩基配列、(B3)の塩基配列又は(B4)の塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Bfは、前記(B1)の塩基配列、(B2)の塩基配列、(B3)の塩基配列又は(B4)の塩基配列と同一である。
【0100】
Glut3フォワードプライマーは、前記塩基配列Bfを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Bfの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。Glut3フォワードプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0101】
前記(B1)の塩基配列の具体例としては配列番号27の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Bfの具体例としては配列番号27の塩基配列が例示できる。
【0102】
前記(B3)の塩基配列の具体例としては配列番号39の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Bfの具体例としては配列番号39の塩基配列が例示できる。
【0103】
前記(B5)において、「第375位~第454位の塩基配列」は、好ましくは「第385位~第444位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第395位~第434位の塩基配列」であり、より好ましくは「第400位~第434位の塩基配列」、より好ましくは「第405位~第429位の塩基配列」である。
【0104】
前記(B7)において、「第288位~第367位の塩基配列」は、好ましくは「第298位~第357位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第308位~第347位の塩基配列」であり、より好ましくは「第313位~第347位の塩基配列」、より好ましくは「第318位~第342位の塩基配列」である。
【0105】
前記(B5)及び(B7)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(B5)及び(B7)において、「連続した」は、好ましくは「5’末端から連続した」を指す。
【0106】
前記塩基配列Brは、前記(B5)の塩基配列、(B6)の塩基配列、(B7)の塩基配列又は(B8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Brのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(B5)の塩基配列、(B6)の塩基配列、(B7)の塩基配列又は(B8)の塩基配列の相補塩基配列と同一であり、前記塩基配列Brの残部が前記(B5)の塩基配列、(B6)の塩基配列、(B7)の塩基配列又は(B8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Brは、前記(B5)の塩基配列、(B6)の塩基配列、(B7)の塩基配列又は(B8)の塩基配列の相補塩基配列と同一である。
【0107】
Glut3リバースプライマーは、前記塩基配列Brを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Brの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。Glut3リバースプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0108】
前記(B5)の塩基配列の具体例としては配列番号28の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Brの具体例としては配列番号28の塩基配列が例示できる。
【0109】
前記(B7)の塩基配列の具体例としては配列番号40の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Brの具体例としては配列番号40の塩基配列が例示できる。
【0110】
前記プライマー対の一例として、MCT4遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対であって、以下の(C1)~(C4)に示されるいずれかの塩基配列と同一又は相同な塩基配列Cfを3’末端に含むMCT4フォワードプライマーと、以下の(C5)~(C8)に示されるいずれかの塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同な塩基配列Crを3’末端に含むMCT4リバースプライマーと、を含むMCT4プライマー対が例示できる。
(C1)配列番号9の塩基配列のうち、第40位~第118位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(C2)配列番号11の塩基配列のうち、配列番号11の塩基配列と配列番号9の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(C1)の塩基配列に対応する塩基配列
(C3)配列番号11の塩基配列のうち、第146位~第225位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(C4)配列番号9の塩基配列のうち、配列番号9の塩基配列と配列番号11の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(C3)の塩基配列に対応する塩基配列
(C5)配列番号9の塩基配列のうち、第107位~第186位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(C6)配列番号11の塩基配列のうち、配列番号11の塩基配列と配列番号9の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(C5)の塩基配列に対応する塩基配列
(C7)配列番号11の塩基配列のうち、第225位~第304位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(C8)配列番号9の塩基配列のうち、配列番号9の塩基配列と配列番号11の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(C7)の塩基配列に対応する塩基配列。
【0111】
前記(C1)において、「第40位~第118位の塩基配列」は、好ましくは「第50位~第108位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第60位~第98位の塩基配列」であり、より好ましくは「第60位~第93位の塩基配列」、より好ましくは「第65位~第88位の塩基配列」である。
【0112】
前記(C3)において、「第146位~第225位の塩基配列」は、好ましくは「第156位~第215位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第166位~第205位の塩基配列」であり、より好ましくは「第166位~第200位の塩基配列」、より好ましくは「第171位~第195位の塩基配列」である。
【0113】
前記(C1)及び(C3)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(C1)及び(C3)において、「連続した」は、好ましくは「3’末端から連続した」を指す。
【0114】
前記塩基配列Cfは、前記(C1)の塩基配列、(C2)の塩基配列、(C3)の塩基配列又は(C4)の塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Cfのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(C1)の塩基配列、(C2)の塩基配列、(C3)の塩基配列又は(C4)の塩基配列と同一であり、前記塩基配列Cfの残部が前記(C1)の塩基配列、(C2)の塩基配列、(C3)の塩基配列又は(C4)の塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Cfは、前記(C1)の塩基配列、(C2)の塩基配列、(C3)の塩基配列又は(C4)の塩基配列と同一である。
【0115】
MCT4フォワードプライマーは、前記塩基配列Cfを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Cfの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。MCT4フォワードプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0116】
前記(C1)の塩基配列の具体例としては配列番号29の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Cfの具体例としては配列番号29の塩基配列が例示できる。
【0117】
前記(C3)の塩基配列の具体例としては配列番号41の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Cfの具体例としては配列番号41の塩基配列が例示できる。
【0118】
前記(C5)において、「第107位~第186位の塩基配列」は、好ましくは「第117位~第176位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第127位~第166位の塩基配列」であり、より好ましくは「第132位~第166位の塩基配列」、より好ましくは「第137位~第161位の塩基配列」である。
【0119】
前記(C7)において、「第225位~第304位の塩基配列」は、好ましくは「第235位~第294位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第245位~第284位の塩基配列」であり、より好ましくは「第250位~第284位の塩基配列」、より好ましくは「第255位~第279位の塩基配列」である。
【0120】
前記(C5)及び(C7)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(C5)及び(C7)において、「連続した」は、好ましくは「5’末端から連続した」を指す。
【0121】
前記塩基配列Crは、前記(C5)の塩基配列、(C6)の塩基配列、(C7)の塩基配列又は(C8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Crのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(C5)の塩基配列、(C6)の塩基配列、(C7)の塩基配列又は(C8)の塩基配列の相補塩基配列と同一であり、前記塩基配列Crの残部が前記(C5)の塩基配列、(C6)の塩基配列、(C7)の塩基配列又は(C8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Crは、前記(C5)の塩基配列、(C6)の塩基配列、(C7)の塩基配列又は(C8)の塩基配列の相補塩基配列と同一である。
【0122】
MCT4リバースプライマーは、前記塩基配列Crを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Crの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。MCT4リバースプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0123】
前記(C5)の塩基配列の具体例としては配列番号30の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Crの具体例としては配列番号30の塩基配列が例示できる。
【0124】
前記(C7)の塩基配列の具体例としては配列番号42の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Crの具体例としては配列番号42の塩基配列が例示できる。
【0125】
前記プライマー対の一例として、PHD3遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対であって、以下の(D1)~(D4)に示されるいずれかの塩基配列と同一又は相同な塩基配列Dfを3’末端に含むPHD3フォワードプライマーと、以下の(D5)~(D8)に示されるいずれかの塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同な塩基配列Drを3’末端に含むPHD3リバースプライマーと、を含むPHD3プライマー対が例示できる。
(D1)配列番号13の塩基配列のうち、第864位~第943位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(D2)配列番号15の塩基配列のうち、配列番号15の塩基配列と配列番号13の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(D1)の塩基配列に対応する塩基配列
(D3)配列番号15の塩基配列のうち、第863位~第942位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(D4)配列番号13の塩基配列のうち、配列番号13の塩基配列と配列番号15の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(D3)の塩基配列に対応する塩基配列
(D5)配列番号13の塩基配列のうち、第991位~第1072位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(D6)配列番号15の塩基配列のうち、配列番号15の塩基配列と配列番号13の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(D5)の塩基配列に対応する塩基配列
(D7)配列番号15の塩基配列のうち、第1004位~第1083位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(D8)配列番号13の塩基配列のうち、配列番号13の塩基配列と配列番号15の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(D7)の塩基配列に対応する塩基配列。
【0126】
前記(D1)において、「第864位~第943位の塩基配列」は、好ましくは「第874位~第933位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第884位~第923位の塩基配列」であり、より好ましくは「第884位~第918位の塩基配列」、より好ましくは「第889位~第913位の塩基配列」である。
【0127】
前記(D3)において、「第863位~第942位の塩基配列」は、好ましくは「第873位~第932位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第883位~第922位の塩基配列」であり、より好ましくは「第883位~第917位の塩基配列」、より好ましくは「第888位~第912位の塩基配列」である。
【0128】
前記(D1)及び(D3)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(D1)及び(D3)において、「連続した」は、好ましくは「3’末端から連続した」を指す。
【0129】
前記塩基配列Dfは、前記(D1)の塩基配列、(D2)の塩基配列、(D3)の塩基配列又は(D4)の塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Dfのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(D1)の塩基配列、(D2)の塩基配列、(D3)の塩基配列又は(D4)の塩基配列と同一であり、前記塩基配列Dfの残部が前記(D1)の塩基配列、(D2)の塩基配列、(D3)の塩基配列又は(D4)の塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Dfは、前記(D1)の塩基配列、(D2)の塩基配列、(D3)の塩基配列又は(D4)の塩基配列と同一である。
【0130】
PHD3フォワードプライマーは、前記塩基配列Dfを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Dfの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。PHD3フォワードプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0131】
前記(D1)の塩基配列の具体例としては配列番号31の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Dfの具体例としては配列番号31の塩基配列が例示できる。
【0132】
前記(D3)の塩基配列の具体例としては配列番号43の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Dfの具体例としては配列番号43の塩基配列が例示できる。
【0133】
前記(D5)において、「第991位~第1072位の塩基配列」は、好ましくは「第1001位~第1062位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第1011位~第1052位の塩基配列」であり、より好ましくは「第1016位~第1047位の塩基配列」、より好ましくは「第1021位~第1042位の塩基配列」である。
【0134】
前記(D7)において、「第1004位~第1083位の塩基配列」は、好ましくは「第1014位~第1073位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第1024位~第1063位の塩基配列」であり、より好ましくは「第1029位~第1063位の塩基配列」、より好ましくは「第1034位~第1058位の塩基配列」である。
【0135】
前記(D5)及び(D7)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(D5)及び(D7)において、「連続した」は、好ましくは「5’末端から連続した」を指す。
【0136】
前記塩基配列Drは、前記(D5)の塩基配列、(D6)の塩基配列、(D7)の塩基配列又は(D8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Drのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(D5)の塩基配列、(D6)の塩基配列、(D7)の塩基配列又は(D8)の塩基配列の相補塩基配列と同一であり、前記塩基配列Drの残部が前記(D5)の塩基配列、(D6)の塩基配列、(D7)の塩基配列又は(D8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Drは、前記(D5)の塩基配列、(D6)の塩基配列、(D7)の塩基配列又は(D8)の塩基配列の相補塩基配列と同一である。
【0137】
PHD3リバースプライマーは、前記塩基配列Drを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Drの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。PHD3リバースプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0138】
前記(D5)の塩基配列の具体例としては配列番号32の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Drの具体例としては配列番号32の塩基配列が例示できる。
【0139】
前記(D7)の塩基配列の具体例としては配列番号44の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Drの具体例としては配列番号44の塩基配列が例示できる。
【0140】
前記プライマー対の一例として、PDK1遺伝子を含む核酸を増幅するためのプライマー対であって、以下の(E1)~(E4)に示されるいずれかの塩基配列と同一又は相同な塩基配列Efを3’末端に含むPDK1フォワードプライマーと、以下の(E5)~(E8)に示されるいずれかの塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同な塩基配列Erを3’末端に含むPDK1リバースプライマーと、を含むPDK1プライマー対が例示できる。
(E1)配列番号17の塩基配列のうち、第445位~第528位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(E2)配列番号19の塩基配列のうち、配列番号19の塩基配列と配列番号17の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(E1)の塩基配列に対応する塩基配列
(E3)配列番号19の塩基配列のうち、第981位~第1060位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(E4)配列番号17の塩基配列のうち、配列番号17の塩基配列と配列番号19の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(E3)の塩基配列に対応する塩基配列
(E5)配列番号17の塩基配列のうち、第545位~第624位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(E6)配列番号19の塩基配列のうち、配列番号19の塩基配列と配列番号17の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(E5)の塩基配列に対応する塩基配列
(E7)配列番号19の塩基配列のうち、第1078位~第1157位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(E8)配列番号17の塩基配列のうち、配列番号17の塩基配列と配列番号19の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(E7)の塩基配列に対応する塩基配列。
【0141】
前記(E1)において、「第445位~第528位の塩基配列」は、好ましくは「第455位~第518位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第465位~第508位の塩基配列」であり、より好ましくは「第465位~第503位の塩基配列」、より好ましくは「第470位~第498位の塩基配列」である。
【0142】
前記(E3)において、「第981位~第1060位の塩基配列」は、好ましくは「第991位~第1050位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第1001位~第1040位の塩基配列」であり、より好ましくは「第1001位~第1035位の塩基配列」、より好ましくは「第1006位~第1030位の塩基配列」である。
【0143】
前記(E1)及び(E3)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(E1)及び(E3)において、「連続した」は、好ましくは「3’末端から連続した」を指す。
【0144】
前記塩基配列Efは、前記(E1)の塩基配列、(E2)の塩基配列、(E3)の塩基配列又は(E4)の塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Efのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(E1)の塩基配列、(E2)の塩基配列、(E3)の塩基配列又は(E4)の塩基配列と同一であり、前記塩基配列Efの残部が前記(E1)の塩基配列、(E2)の塩基配列、(E3)の塩基配列又は(E4)の塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Efは、前記(E1)の塩基配列、(E2)の塩基配列、(E3)の塩基配列又は(E4)の塩基配列と同一である。
【0145】
PDK1フォワードプライマーは、前記塩基配列Efを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Efの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。PDK1フォワードプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0146】
前記(E1)の塩基配列の具体例としては配列番号33の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Efの具体例としては配列番号33の塩基配列が例示できる。
【0147】
前記(E3)の塩基配列の具体例としては配列番号45の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Efの具体例としては配列番号45の塩基配列が例示できる。
【0148】
前記(E5)において、「第545位~第624位の塩基配列」は、好ましくは「第555位~第614位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第565位~第604位の塩基配列」であり、より好ましくは「第570位~第604位の塩基配列」、より好ましくは「第575位~第599位の塩基配列」である。
【0149】
前記(E7)において、「第1078位~第1157位の塩基配列」は、好ましくは「第1088位~第1147位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第1098位~第1137位の塩基配列」であり、より好ましくは「第1103位~第1137位の塩基配列」、より好ましくは「第1108位~第1132位の塩基配列」である。
【0150】
前記(E5)及び(E7)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(E5)及び(E7)において、「連続した」は、好ましくは「5’末端から連続した」を指す。
【0151】
前記塩基配列Erは、前記(E5)の塩基配列、(E6)の塩基配列、(E7)の塩基配列又は(E8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Erのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(E5)の塩基配列、(E6)の塩基配列、(E7)の塩基配列又は(E8)の塩基配列の相補塩基配列と同一であり、前記塩基配列Erの残部が前記(E5)の塩基配列、(E6)の塩基配列、(E7)の塩基配列又は(E8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Erは、前記(E5)の塩基配列、(E6)の塩基配列、(E7)の塩基配列又は(E8)の塩基配列の相補塩基配列と同一である。
【0152】
PDK1リバースプライマーは、前記塩基配列Erを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Erの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。PDK1リバースプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0153】
前記(E5)の塩基配列の具体例としては配列番号34の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Erの具体例としては配列番号34の塩基配列が例示できる。
【0154】
前記(E7)の塩基配列の具体例としては配列番号46の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Erの具体例としては配列番号46の塩基配列が例示できる。
【0155】
前記キットには、プライマー対として、内在性コントロール遺伝子の核酸を増幅するためのプライマー対を含むことができる。このようなプライマー対の一例として、18SリボソームRNAをコードする核酸を増幅するためのプライマー対であって、以下の(F1)~(F4)に示されるいずれかの塩基配列と同一又は相同な塩基配列Ffを3’末端に含む18SリボソームRNAフォワードプライマーと、以下の(F5)~(F8)に示されるいずれかの塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同な塩基配列Frを3’末端に含む18SリボソームRNAリバースプライマーと、を含む18SリボソームRNAプライマー対が例示できる。
(F1)配列番号21の塩基配列のうち、第1216位~第1297位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(F2)配列番号22の塩基配列のうち、配列番号22の塩基配列と配列番号21の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(F1)の塩基配列に対応する塩基配列
(F3)配列番号22の塩基配列のうち、第1216位~第1297位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(F4)配列番号21の塩基配列のうち、配列番号21の塩基配列と配列番号22の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(F3)の塩基配列に対応する塩基配列
(F5)配列番号21の塩基配列のうち、第1317位~第1396位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(F6)配列番号22の塩基配列のうち、配列番号22の塩基配列と配列番号21の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(F5)の塩基配列に対応する塩基配列
(F7)配列番号21の塩基配列のうち、第1317位~第1396位の塩基配列に含まれる連続した10塩基以上の塩基配列
(F8)配列番号21の塩基配列のうち、配列番号21の塩基配列と配列番号22の塩基配列とをアライメントしたときに、前記(F7)の塩基配列に対応する塩基配列。
【0156】
前記(F1)において、「第1216位~第1297位の塩基配列」は、好ましくは「第1226位~第1287位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第1236位~第1277位の塩基配列」であり、より好ましくは「第1241位~第1272位の塩基配列」、より好ましくは「第1241位~第1267位の塩基配列」である。
【0157】
前記(F3)において、「第1216位~第1297位の塩基配列」は、好ましくは「第1226位~第1287位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第1236位~第1277位の塩基配列」であり、より好ましくは「第1236位~第1272位の塩基配列」、より好ましくは「第1241位~第1267位の塩基配列」である。
【0158】
前記(F1)及び(F3)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(F1)及び(F3)において、「連続した」は、好ましくは「3’末端から連続した」を指す。
【0159】
前記塩基配列Ffは、前記(F1)の塩基配列、(F2)の塩基配列、(F3)の塩基配列又は(F4)の塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Ffのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(F1)の塩基配列、(F2)の塩基配列、(F3)の塩基配列又は(F4)の塩基配列と同一であり、前記塩基配列Ffの残部が前記(F1)の塩基配列、(F2)の塩基配列、(F3)の塩基配列又は(F4)の塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Ffは、前記(F1)の塩基配列、(F2)の塩基配列、(F3)の塩基配列又は(F4)の塩基配列と同一である。
【0160】
18SリボソームRNAフォワードプライマーは、前記塩基配列Ffを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Ffの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。18SリボソームRNAフォワードプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0161】
前記(F1)の塩基配列の具体例としては配列番号23の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Ffの具体例としては配列番号23の塩基配列が例示できる。
【0162】
前記(F3)の塩基配列の具体例としては配列番号35の塩基配列が例示できる。前記塩基配列Ffの具体例としては配列番号35の塩基配列が例示できる。
【0163】
前記(F5)において、「第1317位~第1396位の塩基配列」は、好ましくは「第1327位~第1386位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第1337位~第1376位の塩基配列」であり、より好ましくは「第1342位~第1376位の塩基配列」、より好ましくは「第1347位~第1371位の塩基配列」である。
【0164】
前記(F7)において、「第1317位~第1396位の塩基配列」は、好ましくは「第1327位~第1386位の塩基配列」であり、より好ましくは、「第1337位~第1376位の塩基配列」であり、より好ましくは「第1342位~第1376位の塩基配列」、より好ましくは「第1347位~第1371位の塩基配列」である。
【0165】
前記(F5)及び(F7)において、「10塩基以上」は、好ましくは「15塩基以上」、より好ましくは「17塩基以上」、より好ましくは「19塩基以上」である。前記(F5)及び(F7)において、「連続した」は、好ましくは「5’末端から連続した」を指す。
【0166】
前記塩基配列Frは、前記(F5)の塩基配列、(F6)の塩基配列、(F7)の塩基配列又は(F8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同であればよいが、前記塩基配列Frのうち、3’末端から、好ましくは2塩基以上、より好ましくは3塩基以上、より好ましくは5塩基以上、より好ましくは10塩基以上、より好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の連続した塩基配列が、前記(F5)の塩基配列、(F6)の塩基配列、(F7)の塩基配列又は(F8)の塩基配列の相補塩基配列と同一であり、前記塩基配列Frの残部が前記(F5)の塩基配列、(F6)の塩基配列、(F7)の塩基配列又は(F8)の塩基配列の相補塩基配列と同一又は相同である。「相同」の範囲は後述する通りである。特に好ましくは、前記塩基配列Frは、前記(F5)の塩基配列、(F6)の塩基配列、(F7)の塩基配列又は(F8)の塩基配列の相補塩基配列と同一である。
【0167】
18SリボソームRNAリバースプライマーは、前記塩基配列Frを3’末端に含むポリヌクレオチドを含むものであればよく、前記塩基配列Frの5’末端側に更に他の塩基配列を含むものであってもよい。18SリボソームRNAリバースプライマーに含まれるポリヌクレオチドの塩基数は特に限定されないが、好ましくは50塩基以下、より好ましくは40塩基以下、より好ましくは30塩基以下である。
【0168】
前記(F5)の塩基配列の具体例としては配列番号24の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Frの具体例としては配列番号24の塩基配列が例示できる。
【0169】
前記(F7)の塩基配列の具体例としては配列番号36の塩基配列の相補塩基配列が例示できる。前記塩基配列Frの具体例としては配列番号36の塩基配列が例示できる。
【0170】
本明細書において「塩基配列Xと相同な塩基配列Y」、或いは、「塩基配列Xと塩基配列Yとが相同である」、というとき、塩基配列Xの相補配列からなるポリヌクレオチドと、塩基配列Yからなるポリヌクレオチドとが、核酸増幅反応のアニーリング条件においてハイブリダイズして安定な二本鎖を形成するのに十分な水素結合を形成することができる組み合わせである限り、塩基配列XとYとが部分的に異なっていてもよい。例えば、塩基配列Xの相補配列からなるポリヌクレオチドと、塩基配列Yからなるポリヌクレオチドとが、10ヌクレオチド中に1ミスマッチ、20ヌクレオチド中に1ミスマッチ、または30ヌクレオチド中に1ミスマッチなど、いくつかのミスマッチが存在していてもよい。典型的には、塩基配列Xと「相同な」塩基配列Yというとき、塩基配列XとYとが以下の関係のいずれかを満たすことを指す。
【0171】
(A)塩基配列Yが、塩基配列Xにおいて1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基配列である。
(B)塩基配列Yが、塩基配列Xと70%以上の同一性を有する塩基配列である。
(C)塩基配列Yからなるポリヌクレオチドが、配列番号Xと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下においてハイブリダイズすることができる。
(D)塩基配列Xと塩基配列Yの一方における任意の位置のチミン(T)が、他方におけるウラシル(U)に置換されている。
【0172】
前記(A)において「1若しくは数個」とは好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、特に好ましくは1個又は2個を指し、最も好ましくは1個である。前記(A)において「1若しくは数個」とは、欠失、置換、付加及び/又は挿入された塩基の合計数を指す。
【0173】
前記(B)において、同一性の値は、複数の塩基配列間の同一性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DNASIS、及びBLAST)を用いてデフォルトの設定で算出した値を示す。塩基配列の同一性の値は、一致度が最大となるように一対の塩基配列をアライメントした際に一致する塩基の数を算出し、当該一致する塩基の数の、比較した塩基配列の全塩基数に対する割合として算出される。ここで、ギャップがある場合、上記の全塩基数は、1つのギャップを1つの塩基として数えた塩基数である。同一性の決定方法の詳細については、例えばAltschul et al,Nuc.Acids.Res.25,3389-3402,1977及びAltschul et al,J.Mol.Biol.215,403-410,1990を参照されたい。
【0174】
前記(B)において、同一性はより好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性である。
【0175】
前記(C)において、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばGreen and Sambrook,Molecular Cloning,4th Ed (2012),Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェントな条件を設定することができる。より詳細には、ストリンジェントな条件としては、例えば、ハイブリダイゼーション工程では、ナトリウム濃度が25~500mM、好ましくは25~300mMであり、温度が40~68℃、好ましくは40~65℃である。より具体的には、ハイブリダイゼーションは、1~7×SSC、0.02~3% SDS、温度40℃~60℃で行うことができる。また、ハイブリダイゼーションの後に洗浄工程を行っても良く、洗浄工程は、例えば0.1~2×SSC、0.1~0.3% SDS、温度50~65℃で行うことができる。
前記の各プライマー対は一方又は両方が標識物質等の他の物質により修飾されていてもよい。
【0176】
前記プローブは、前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸の塩基配列、例えば、Glut1遺伝子の配列番号1又は配列番号3の塩基配列(特に、配列番号1の塩基配列のうち第131位~第262位の塩基配列;配列番号3の塩基配列のうち、配列番号3の塩基配列と配列番号1の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号1の塩基配列のうち第131位~第262位の塩基配列に対応する塩基配列;配列番号3の塩基配列のうち第286位~第388位の塩基配列;或いは、配列番号1の塩基配列のうち、配列番号1の塩基配列と配列番号3の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号3の塩基配列のうち第286位~第388位の塩基配列に対応する塩基配列)、Glut3遺伝子の配列番号5又は配列番号7の塩基配列(特に、配列番号5の塩基配列のうち第280位~第424位の塩基配列;配列番号7の塩基配列のうち、配列番号7の塩基配列と配列番号5の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号5の塩基配列のうち第280位~第424位の塩基配列に対応する塩基配列;配列番号7の塩基配列のうち第254位~第337位の塩基配列;或いは、配列番号5の塩基配列のうち、配列番号5の塩基配列と配列番号7の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号7の塩基配列のうち第254位~第337位の塩基配列に対応する塩基配列)、MCT4遺伝子の配列番号9又は配列番号11の塩基配列(特に、配列番号9の塩基配列のうち第70位~第156位の塩基配列;配列番号11の塩基配列のうち、配列番号11の塩基配列と配列番号9の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号9の塩基配列のうち第70位~第156位の塩基配列に対応する塩基配列;配列番号11の塩基配列のうち第176位~第274位の塩基配列;或いは、配列番号9の塩基配列のうち、配列番号9の塩基配列と配列番号11の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号11の塩基配列のうち第176位~第274位の塩基配列に対応する塩基配列)、PHD3遺伝子の配列番号13又は配列番号15の塩基配列(特に、配列番号13の塩基配列のうち第894位~第1042位の塩基配列;配列番号15の塩基配列のうち、配列番号15の塩基配列と配列番号13の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号3の塩基配列のうち第894位~第1042位の塩基配列に対応する塩基配列;配列番号15の塩基配列のうち第893位~第1053位の塩基配列;或いは、配列番号13の塩基配列のうち、配列番号13の塩基配列と配列番号15の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号15の塩基配列のうち第893位~第1053位の塩基配列に対応する塩基配列)、又はPDK1遺伝子の配列番号17又は配列番号19の塩基配列(特に、配列番号17の塩基配列のうち第475位~第594位の塩基配列;配列番号19の塩基配列のうち、配列番号19の塩基配列と配列番号17の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号17の塩基配列のうち第475位~第594位の塩基配列に対応する塩基配列;配列番号19の塩基配列のうち第1011位~第1127位の塩基配列;或いは、配列番号17の塩基配列のうち、配列番号17の塩基配列と配列番号19の塩基配列とをアライメントしたときに、配列番号19の塩基配列のうち第1011位~第1127位の塩基配列に対応する塩基配列)に含まれる10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは17塩基以上、より好ましくは20塩基以上の連続した部分塩基配列又はその相補塩基配列と相同な塩基配列を含む核酸断片を含むことができる。前記部分塩基配列の長さの上限は特に限定されないが例えば50塩基以下、40塩基以下又は30塩基以下であることができる。前記プローブは、前記核酸断片が、標識物質等の他の物質により修飾されたものであってもよい。
【0177】
前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体は、抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。また抗体は、測定しようとするタンパク質に特異的に結合し得る限り断片として使用することもできる。抗体の断片としては、例えば、Fab断片、F(ab’)2断片、単鎖抗体(scFv)等が挙げられる。前記抗体は、マイクロタイタープレート、粒子等の固相担体に固定化されていてもよい。
【0178】
前記1以上のタンパク質の酵素活性を測定するための反応基質は、測定しようとするタンパク質の活性に応じて適宜選択することができる。
【0179】
前記実施形態に係るキットは、更に、測定に必要な成分を含む希釈用又は反応用の緩衝液、洗浄液、発色試薬、反応容器等を含んでも良い。
【0180】
前記実施形態に係るキットは、前記試料から単核細胞を分離するための試薬及び/又はカラムを更に含むことが好ましい。前記試薬及び/又はカラムとしては、例えば、Ficoll-Paque PLUS(GEヘルスケア社製)、Lymphoprep(Abbott Diagnostics Technologies社製)、Human Peripheral Blood Mononuclear Cell Isolation and Viability Kit(BioVision社製)、BD バキュテイナ(登録商標)CPT 単核球分離用採血管(ベクトン・ディッキンソン社製)、pluriMate(pluriSelect社製)、SepMate(STEMCELL Technologies社製)等を挙げることができる。前記試料中の単核細胞と顆粒球とを分離し、測定に供するための単核細胞含有試料を効率的に取得することができる。
【0181】
<5.被検体における老化現象の程度の判定のためのキット>
本発明の別の一以上の実施形態は、
被検体における老化現象の程度の判定のためのキットであって、
被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定するための試薬を含むキットに関する。
【0182】
前記老化現象の程度の判定は、齢の判定、脳組織の老化現象の程度の判定、末梢血の老化現象の程度、又は骨髄細胞の老化現象の程度の判定であることが好ましい。
【0183】
前記骨髄細胞は、造血幹細胞、間葉系幹細胞、未成熟細胞であることが好ましい。
【0184】
前記試薬としては、上述の、前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定する方法に用いることができる試薬が好ましい。
【0185】
具体的には、測定しようとする前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸(ゲノムDNA、mRNA又はmRNAに基づき調製されるcDNA)を増幅するためのプライマー対、測定しようとする前記1以上のタンパク質の遺伝子を含む核酸(mRNA又はmRNAに基づき調製されるcDNA)とハイブリダイズするプローブ、前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体、前記1以上のタンパク質の酵素活性を測定するための反応基質等を例示することができる。前記ゲノムDNAは非翻訳領域、イントロン領域、シグナル配列領域等も含み得る。好ましくは、前記核酸は、mRNA又はcDNAである。前記mRNA又はcDNAは、前記1以上のタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列(CDS)及びその上流及び下流に位置する非翻訳領域(UTR)の塩基配列のうち少なくとも一部を含んでいればよい。前記プライマー対の一例は、CDS及びUTRの塩基配列のうち少なくとも一部の領域を増幅できるプライマー対である。前記プローブの一例は、CDS及びUTRの塩基配列のうち少なくとも一部の領域にハイブリダイズできるプローブである。
【0186】
前記プライマー対は、上記の「4.認知症の判定又は脳機能の判定のためのキット」に関して記載したプライマー対の好適な例と同様の範囲から選択できる。
【0187】
プローブは、上記の「4.認知症の判定又は脳機能の判定のためのキット」に関して記載したブロー部の好適な例と同様の範囲から選択できる。
【0188】
前記1以上のタンパク質に特異的に結合する抗体は、抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。また抗体は、測定しようとするタンパク質に特異的に結合し得る限り断片として使用することもできる。抗体の断片としては、例えば、Fab断片、F(ab’)2断片、単鎖抗体(scFv)等が挙げられる。前記抗体は、マイクロタイタープレート、粒子等の固相担体に固定化されていてもよい。
【0189】
前記1以上のタンパク質の酵素活性を測定するための反応基質は、測定しようとするタンパク質の活性に応じて適宜選択することができる。
【0190】
前記実施形態に係るキットは、更に、測定に必要な成分を含む希釈用又は反応用の緩衝液、洗浄液、発色試薬、反応容器等を含んでも良い。
【実施例
【0191】
以下の実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0192】
後述される全ての動物実験は、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構の動物実験審査委員会から承認を得て、文部科学省が定めた研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針に準拠して実施された。実験と結果は、英国3Rsセンター(NC3Rs)が作成したARRIVEガイドラインに従って報告される。
【0193】
1.比較例1
<方法>
比較例1では、健常なマウスに由来する体液試料を用いて、被検体における認知症及び脳機能を判定するための指標を検討した。
【0194】
1-1.実験動物の準備
5週齢以下の雄のCB-17系統マウス(オリエンタル酵母工業株式会社)を、以下の実験に供した。
【0195】
1-2.行動試験
マウスにおける認知症及び/又は脳機能を評価するために、5つの行動試験(オープンフィールド試験、ワイヤーハング試験、受動的回避試験、オープンスペース水泳試験及びロータロッド試験)を実施した。
【0196】
1-2-1.オープンフィールド試験
オープンフィールド試験(Open field test)は、明状態及び暗状態におけるマウスの平均移動回数(水平移動回数及び垂直移動回数の総和の平均値)を指標として、明暗の変化に対するマウスの反応性を評価する行動試験である。オープンフィールド試験は、以下の方法により実施された。
【0197】
透明なアクリルボックス(底面:縦30cm×横30cm)の中にマウスを入れた。白色照明を点灯させた状態(明状態)で、アクリルボックス内のマウスを30分間自由に探索させた。次いで、照明を消し、30分間暗状態を維持した。マウスの水平移動回数は、床から2cmの高さにおいて縦軸及び横軸に沿って10cm間隔で設けられた赤外線ビームをマウスが遮った回数を測定することにより評価した。また、マウスの垂直移動回数(立ち上がり回数)は、床から5cmの高さにおいて縦軸に沿って3cm間隔で設けられた赤外線ビームをマウスが遮った回数を測定することにより評価した。試験を9回以上実施し、それらの平均移動回数を算出した。
【0198】
1-2-2.ワイヤーハング試験
ワイヤーハング試験(Wire hang test)は、金網から吊り下げられたマウスが落下するまでの時間の平均値(平均落下時間)を指標として、マウスの筋力を評価する行動試験である。ワイヤーハング試験は、以下の方法により実施された。
【0199】
12mm間隔の金網の上にマウスを置いた。次に、金網ごとマウスを裏返し、20cmの高さに吊り下げた。マウスが金網から落下するまでの時間(落下時間)を記録した。試験を8回以上実施し、それらの落下時間の平均値(平均落下時間)を算出した。
【0200】
1-2-3.受動的回避試験
受動的回避試験(Passive avoidance test)は、予め嫌悪刺激を経験させたマウスの、本試験時における反応潜時の平均値(平均反応潜時)を指標として、マウスの学習及び記憶の機能を評価する行動試験である。受動的回避試験は、以下の方法により実施された。
【0201】
受動的回避試験は、マウスが通り抜けられる穴が開いた板によって仕切られた明室及び暗室から構成され、暗室の床に電気刺激装置が設置された箱を用いて実施された。事前段階として、白色照明が点灯した明室にマウスを入れ、箱内を自由に探索させた。マウスは暗所を好むため次第に暗室へ進入するが、暗室へ進入した時にマウスは軽い電気刺激を与えられた。マウスが明室に留まった時間(すなわち、暗室に進入するまでの時間)を測定し記録した。24時間後、本試験として、再び明室にマウスを入れ、マウスが明室に留まった時間(すなわち、暗室に進入するまでの時間)を再度測定した。なお、明室に留まった時間(暗室に進入するまでの時間)の測定は最大180秒とした。反応潜時は、本試験における明室に留まった時間と事前段階における明室に留まった時間との差の絶対値として算出した。試験を5回以上実施し、それらの反応潜時の平均値を算出した。
【0202】
1-2-4.オープンスペース水泳試験
オープンスペース水泳試験(Open space swimming test)は、水の入った大きなプールに入れられたマウスの遊泳距離の平均値(平均遊泳距離)を指標として、マウスの対処行動及びうつ傾向を評価する行動試験である。オープンスペース水泳試験は、以下の方法により実施された。
【0203】
直径120cmのプール内にマウスを入れ、自由に遊泳させた。遊泳の様子をビデオカメラによって撮影し、画像解析ソフトを用いて60秒間の遊泳距離を10分間連続で解析した。
【0204】
1-2-5.ロータロッド試験
ロータロッド試験(Rotarod test)は、回転するロータロッドからマウスが落下するまでの時間の平均値(平均落下時間)を指標として、マウスの運動機能と平衡感覚を評価する行動試験である。ロータロッド試験は、以下の方法により実施された。
【0205】
1分間に20回転するロータロッドのレーンにマウスを置き、回転するロータロッドからマウスが落下するまでの時間(落下時間)を測定した。試験を3回実施し、それらの落下時間の平均値(平均落下時間)を算出した。
【0206】
1-3.定量RT-PCR
上記行動試験に供したマウスから約1mLの末梢血を採取し、そのうち0.4mLを分析対象の体液試料として以下の実験に供した。製造業者のプロトコルに従い、RNA抽出キット(Mouse RiboPure Blood RNA Isolation Kit(Thermo Fisher Scientific社/型番:AM1951))を用いて、上記体液試料からトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNAを鋳型として、製造業者のプロトコルに従い、cDNA合成キット(PrimeScript(登録商標)II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ株式会社/型番:6210B(A×4)))を用いて1μgのトータルRNAからcDNAを合成(逆転写)した。得られたcDNAを鋳型として、核酸増幅試薬(PowerUp SYBR(登録商標)Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社/型番:A25777))を用いてリアルタイムPCR反応を行った。リアルタイムPCRシステムは、Agilent AriaMx Real-Time PCR System(Agilent社)を用いた。リアルタイムPCR反応条件は、50℃3分を1サイクル、95℃3分を1サイクル、95℃5秒及び60℃30秒を40サイクル、95℃30秒を1サイクル、65℃30秒を1サイクル、並びに95℃30秒を1サイクルとした。内在性コントロールとしてハウスキーピング遺伝子である18SリボソームRNA遺伝子を使用し、内在性コントロールに対する各標的遺伝子の相対発現量をPfaffl法により解析した。なお、Pfaffl法は、ハウスキーピング遺伝子と標的遺伝子のPCR増幅効率を加味する、比較Ct法の一種の相対的定量法であり、Pfaffl MW.Nucleic Acids Res.2001;29(9):e45.に記載された方法を使用することができる。試験を5回以上実施し、それらの相対発現量の平均値(平均相対発現量)を算出した。表1に、各遺伝子に対するプライマーの塩基配列を示す。
【0207】
【表1】
【0208】
表1中の「Fw」はフォワードプライマーを、「Rv」はリバースプライマーを示す。また、表1中の各塩基配列において、左端は5’末端を、右端は3’末端を示す。
【0209】
2.実施例1
<方法>
実施例1では、認知症を発症したマウスに由来する体液試料を用いて、被検体における認知症及び脳機能を判定するための指標を検討した。
【0210】
2-1.実験動物の準備
80週齢以上の雄のCB-17系統マウス(オリエンタル酵母工業株式会社)を、以下の実験に供した。
【0211】
2-2.行動試験
比較例1の「1-2.行動試験」と同様にして、5つの行動試験(オープンフィールド試験、ワイヤーハング試験、受動的回避試験、オープンスペース水泳試験及びロータロッド試験)を実施した。
【0212】
2-3.定量RT-PCR
比較例1の「1-3.定量RT-PCR」と同様にして、マウスの体液試料中の各標的遺伝子の相対発現量を解析した。
【0213】
<結果>
実施例1及び比較例1の行動試験の結果について、以下に示す。
オープンフィールド試験において、比較例1のマウスの明状態における平均移動回数は537±106回、暗状態における平均移動回数は747±160回であった。一方、実施例1のマウスの明状態における平均移動回数は358±180回、暗状態における平均移動回数は217±188回であった。よって、明状態から暗状態へ変化させたとき、比較例1のマウスの平均移動回数は増加傾向を示したのに対し、実施例1のマウスの平均移動回数は減少傾向を示した。以上より、比較例1のマウスと比較して、実施例1のマウスの明暗の変化に対する反応性は低下していることが示唆された。
【0214】
ワイヤーハング試験において、比較例1のマウスの平均落下時間は84.9±41.1秒であったのに対し、実施例1のマウスの平均落下時間は25.6±22.9秒であった。よって、比較例1のマウスと比較して、実施例1のマウスの筋力は低下していることが示唆された。
【0215】
受動的回避試験において、比較例1のマウスの事前段階における明室に留まった時間の平均値は31.5±22.9秒であったのに対し、実施例1のマウスの事前段階における明室に留まった時間の平均値は20.0±14.1秒であった。また、比較例1のマウスの本試験における明室に留まった時間の平均値は180.0±0.0秒であったのに対し、実施例1のマウスの事前段階における明室に留まった時間の平均値は47.8±67.4秒であった。よって、比較例1のマウスの平均反応潜時は148.5±22.9秒と算出され、実施例1のマウスの平均反応潜時は32.8±63.5秒と算出された。以上より、比較例1のマウスは暗室への進入と嫌悪刺激の恐怖とを関連付けて学習及び記憶することができたのに対し、実施例1のマウスは学習及び記憶の機能が低下していることが示唆された。
【0216】
オープンスペース水泳試験において、比較例1のマウスの平均遊泳距離は794±192cmであったのに対し、実施例1のマウスの平均遊泳距離は1193±154cmであった。比較例1のマウスと比較して、実施例1のマウスは、不動の姿勢(すなわち、もがくことなく、水面から頭を出すために必要な最小限の動きのみを行って、水に浮いている状態)を示す時間の短縮傾向があり、必要以上に泳ぎ回る傾向があった。以上より、比較例1のマウスと比較して、実施例1のマウスの対処行動は減弱しており、うつ傾向を示すことが示唆された。
【0217】
ロータロッド試験において、比較例1のマウスの平均落下時間は41.6±25.2秒であったのに対し、実施例1のマウスの平均落下時間は6.8±4.5秒であった。よって、比較例1のマウスと比較して、実施例1のマウスの運動機能と平衡感覚は低下していることが示唆された。
【0218】
以上の行動試験の結果より、比較例1のマウスは、認知症を発症しておらず、脳機能も低下していないと判定されたのに対し、実施例1のマウスは、認知症を発症している、及び/又は脳機能が低下していると判定された。
比較例1及び実施例1の定量RT-PCRの結果について、以下に示す。
【0219】
図1及び表2は、比較例1及び実施例1の各マウスの体液試料中における、Pfaffl法により算出された、18SリボソームRNA遺伝子の発現量に対する各標的遺伝子の相対発現量の平均値(平均相対発現量)を示している。
【0220】
【表2】
【0221】
図1及び表2に示すように、比較例1のマウスの体液試料では、Glut1遺伝子の平均相対発現量が0.56、Glut3遺伝子の平均相対発現量が0.67、MCT4遺伝子の平均相対発現量が0.45、PHD3遺伝子の平均相対発現量が0.58、PDK1遺伝子の平均相対発現量が0.43であった。一方、実施例1のマウスの体液試料では、Glut1遺伝子の平均相対発現量が3.39、Glut3遺伝子の平均相対発現量が1.70、MCT4遺伝子の平均相対発現量が3.17、PHD3遺伝子の平均相対発現量が2.33、PDK1遺伝子の平均相対発現量が3.03であった。比較例1のマウスと比較して、実施例1のマウスの体液試料中のGlut1遺伝子、Glut3遺伝子、MCT4遺伝子、PHD3遺伝子及びPDK1遺伝子の遺伝子発現は有意に増加していた。よって、認知症の発症及び/又は脳機能の低下に伴って発現量が顕著に変化する遺伝子として、グルコース輸送に関与するタンパク質の遺伝子(Glut1遺伝子及びGlut3遺伝子)、乳酸輸送に関与するタンパク質の遺伝子(MCT4遺伝子)、解糖系に関与するタンパク質の遺伝子(PHD3遺伝子)、並びにTCA回路に関与するタンパク質の遺伝子(PDK1遺伝子)が同定された。
【0222】
よって、被検体の認知症の発症及び/又は脳機能の低下の判定における指標としての、上記遺伝子及び/又は上記遺伝子によってコードされるタンパク質の使用の可能性が示された。また、被検体の認知症の発症及び/又は脳機能の低下の判定における指標としての、エネルギー代謝に関与するタンパク質の遺伝子、及び/又はエネルギー代謝に関与するタンパク質の使用の可能性が示された。
【0223】
また、実施例1のマウスの体液試料中の各々の標的遺伝子の平均相対発現量は、以下の(a)~(e)に示される各々の基準値よりも高く、比較例1のマウスにおける各々の標的遺伝子の平均相対発現量は、以下の(a)~(e)に示される各々の基準値よりも低いことが分かった。
(a)Glut1遺伝子の遺伝子発現の基準値:1.30
(b)Glut3遺伝子の遺伝子発現の基準値:1.30
(c)MCT4遺伝子の遺伝子発現の基準値:1.40
(d)PHD3遺伝子の遺伝子発現の基準値:1.20
(e)PDK1遺伝子の遺伝子発現の基準値:1.30
【0224】
実施例1のマウスの体液試料中において、上記基準値に対するGlut1遺伝子の平均相対発現量の比率は2.6であった。実施例1のマウスの体液試料中において、上記基準値に対するGlut3遺伝子の平均相対発現量の比率は1.3であった。実施例1のマウスの体液試料中において、上記基準値に対するMCT4遺伝子の平均相対発現量の比率は2.3であった。実施例1のマウスの体液試料中において、上記基準値に対するPHD3遺伝子の平均相対発現量の比率は1.9であった。実施例1のマウスの体液試料中において、上記基準値に対するPDK1遺伝子の平均相対発現量の比率は2.3であった。
【0225】
よって、1以上の上記遺伝子の相対発現量が上記基準値よりも高いことを指標とすることにより、被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得することができる。すなわち、被検体由来の体液試料中の、1以上の上記遺伝子の相対発現量を測定し、前記相対発現量と上記基準値とを比較することによって、被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得することができる。
【0226】
また、被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること、及び前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することによって、被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得することができる。
【0227】
3.実施例2
<方法>
実施例2では、老化現象の程度が既知の複数のマウスに由来する体液試料を用いて、被検体における老化現象の程度を判定するための指標を検討した。
【0228】
3-1.実験動物の準備
1、5、10、52、104週齢の雄のCB-17系統マウス(オリエンタル酵母工業株式会社)を、以下の実験に供した。
【0229】
3-2.定量RT-PCR
上記マウスから約1mLの末梢血を採取し、そのうち0.4mLを分析対象の体液試料として以下の実験に供した。製造業者のプロトコルに従い、RNA抽出キット(Mouse RiboPure Blood RNA Isolation Kit(Thermo Fisher Scientific社/型番:AM1951))を用いて、上記体液試料からトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNAを鋳型として、製造業者のプロトコルに従い、cDNA合成キット(PrimeScript(登録商標)II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ株式会社/型番:6210B(A×4)))を用いて1μgのトータルRNAからcDNAを合成(逆転写)した。得られたcDNAを鋳型として、核酸増幅試薬(PowerUp SYBR(登録商標)Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社/型番:A25777))を用いてリアルタイムPCR反応を行った。リアルタイムPCRシステムは、Agilent AriaMx Real-Time PCR System(Agilent社)を用いた。リアルタイムPCR反応条件は、50℃3分を1サイクル、95℃3分を1サイクル、95℃5秒及び60℃30秒を40サイクル、95℃30秒を1サイクル、65℃30秒を1サイクル、並びに95℃30秒を1サイクルとした。内在性コントロールとしてハウスキーピング遺伝子である18SリボソームRNA遺伝子を使用し、内在性コントロールに対する各標的遺伝子の相対発現量をPfaffl法により解析した。なお、Pfaffl法は、ハウスキーピング遺伝子と標的遺伝子のPCR増幅効率を加味する、比較Ct法の一種の相対的定量法であり、Pfaffl MW.Nucleic Acids Res.2001;29(9):e45.に記載された方法を使用することができる。試験を5回以上実施し、それらの相対発現量の平均値(平均相対発現量)を算出した。表3に、各遺伝子に対するプライマーの塩基配列を示す。
【0230】
【表3】
【0231】
表3中の「Fw」はフォワードプライマーを、「Rv」はリバースプライマーを示す。また、表3中の各塩基配列において、左端は5’末端を、右端は3’末端を示す。
【0232】
<結果>
実施例2の定量RT-PCRの結果について、以下に示す。
【0233】
図2及び表4は、実施例2の各マウスの体液試料中における、Pfaffl法により算出された、18SリボソームRNA遺伝子の発現量に対する各標的遺伝子の相対発現量の平均値(平均相対発現量)を示している。
【0234】
【表4】
【0235】
図2及び表4に示すように、1週齢のマウスの体液試料では、Glut1遺伝子の平均相対発現量が0.42、Glut3遺伝子の平均相対発現量が0.27、MCT4遺伝子の平均相対発現量が0.20、PHD3遺伝子の平均相対発現量が0.35、PDK1遺伝子の平均相対発現量が0.28であった。5週齢のマウスの体液試料では、Glut1遺伝子の平均相対発現量が0.68、Glut3遺伝子の平均相対発現量が0.81、MCT4遺伝子の平均相対発現量が0.54、PHD3遺伝子の平均相対発現量が0.62、PDK1遺伝子の平均相対発現量が0.83であった。10週齢のマウスの体液試料では、Glut1遺伝子の平均相対発現量が1.16、Glut3遺伝子の平均相対発現量が1.18、MCT4遺伝子の平均相対発現量が1.22、PHD3遺伝子の平均相対発現量が1.12、PDK1遺伝子の平均相対発現量が1.17であった。52週齢のマウスの体液試料では、Glut1遺伝子の平均相対発現量が1.47、Glut3遺伝子の平均相対発現量が1.83、MCT4遺伝子の平均相対発現量が2.47、PHD3遺伝子の平均相対発現量が1.74、PDK1遺伝子の平均相対発現量が1.71であった。104週齢のマウスの体液試料では、Glut1遺伝子の平均相対発現量が1.99、Glut3遺伝子の平均相対発現量が1.96、MCT4遺伝子の平均相対発現量が2.82、PHD3遺伝子の平均相対発現量が2.35、PDK1遺伝子の平均相対発現量が1.96であった。週齢の増加に伴い、マウスの体液試料中におけるGlut1遺伝子、Glut3遺伝子、MCT4遺伝子、PHD3遺伝子及びPDK1遺伝子の遺伝子発現は有意に増加していた。よって、老化現象の程度の増加に伴って発現量が顕著に変化する遺伝子として、グルコース輸送に関与するタンパク質の遺伝子(Glut1遺伝子及びGlut3遺伝子)、乳酸輸送に関与するタンパク質の遺伝子(MCT4遺伝子)解糖系に関与するタンパク質の遺伝子(PHD3遺伝子)、並びにTCA回路に関与するタンパク質の遺伝子(PDK1遺伝子)が同定された。
【0236】
よって、被検体における老化現象の程度の判定における指標としての、上記遺伝子及び/又は上記遺伝子によってコードされるタンパク質の使用の可能性が示された。また、被検体における老化現象の程度の判定における指標としての、エネルギー代謝に関与するタンパク質の遺伝子、及び/又はエネルギー代謝に関与するタンパク質の使用の可能性が示された。
【0237】
図3は、実施例2のマウスの体液試料中の各々の標的遺伝子の平均相対発現量とマウスの週齢との関係を示している。図3に示すように、実施例2のマウスの体液試料中の各々の標的遺伝子の平均相対発現量とマウスの週齢との関係式は、以下の関係式(A)~(E)で表された。
(A)Glut1遺伝子の平均相対発現量と週齢との関係式:y=0.3257×ln(x)+0.3316
(B)Glut3遺伝子の平均相対発現量と週齢との関係式:y=0.3788×ln(x)+0.2658
(C)MCT4遺伝子の平均相対発現量と週齢との関係式:y=0.6078×ln(x)-0.0663
(D)PHD3遺伝子の平均相対発現量と週齢との関係式:y=0.4283×ln(x)+0.1677
(E)PDK1遺伝子の平均相対発現量と週齢との関係式:y=0.3626×ln(x)+0.2848
ここで、lnは自然対数、xはマウスの週齢、yはマウスの体液試料中の各標的遺伝子の平均相対発現量を表す。
【0238】
よって、1以上の上記遺伝子の相対発現量を指標として、上記関係式に基づき被検体の週齢を判定することができる。すなわち、被検体由来の体液試料中の、1以上の上記遺伝子の相対発現量を測定し、前記相対発現量と上記関係式とを使用することによって、被検体における齢を判定することができる。
【0239】
また、被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定することによって、被検体における老化現象の程度の判定のための指標を取得することができる。
【0240】
4.実施例3
<認知症/脳機能判定キットの製造>
以下の手順により、認知症の判定又は脳機能の判定のためのキット(認知症/脳機能判定キット)を製造する。
【0241】
表1に示すGlut1遺伝子を増幅するためのプライマー対をTE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に溶解し、終濃度にして10μMのGlut1遺伝子増幅用プライマー対溶液を調製する。表1に示す18SリボソームRNA遺伝子を増幅するためのプライマー対をTE緩衝液に溶解し、終濃度にして10μMの18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液を調製する。前記Glut1遺伝子増幅用プライマー対溶液は、グルコース輸送に関与するタンパク質であるGlut1の遺伝子発現を測定するための試薬として使用される。さらに、前記Glut1遺伝子増幅用プライマー対溶液と、前記18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液と、RNA抽出試薬(Mouse RiboPure Blood RNA Isolation Kit(Thermo Fisher Scientific社/型番:AM1951))と、cDNA合成試薬(PrimeScript(登録商標)II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ株式会社/型番:6210A)と、核酸増幅試薬(PowerUp SYBR(登録商標)Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社/型番:A25777))とを組み合わせて、認知症/脳機能判定キットを構成する。
【0242】
<認知症/脳機能判定キットの使用>
前記認知症/脳機能判定キットは、以下の手順により使用することができる。
【0243】
被検体であるマウスから末梢血を採取し、その一部を分析対象の体液試料として使用する。前記認知症/脳機能判定キットを構成するRNA抽出試薬を用いて、前記体液試料からトータルRNAを抽出する。得られたトータルRNAを鋳型として、前記認知症/脳機能判定キットを構成するcDNA合成試薬を用いてcDNAを合成する。得られたcDNAを鋳型として、前記認知症/脳機能判定キットを構成するGlut1遺伝子増幅用プライマー対溶液、18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液及び核酸増幅試薬を用いてリアルタイムPCR反応を行う。リアルタイムPCRシステムは、Agilent AriaMx Real-Time PCR System(Agilent社)を使用する。リアルタイムPCR反応条件は、50℃3分を1サイクル、95℃3分を1サイクル、95℃5秒及び60℃30秒を40サイクル、95℃30秒を1サイクル、65℃30秒を1サイクル、並びに95℃30秒を1サイクルとする。18SリボソームRNA遺伝子に対するGlut1遺伝子の相対発現量をPfaffl法により解析する。18SリボソームRNA遺伝子に対するGlut1遺伝子の相対発現量と、Glut1遺伝子の遺伝子発現の基準値である1.30とを比較することにより、マウスにおける認知症の罹患の有無を判定することができる。
【0244】
5.実施例4
<老化度判定キットの製造>
以下の手順により、老化現象の程度の判定のためのキット(老化度判定キット)を製造する。
【0245】
表3に示すGlut3遺伝子を増幅するためのプライマー対をTE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に溶解し、終濃度にして10μMのGlut3遺伝子増幅用プライマー対溶液を調製する。表3に示す18SリボソームRNA遺伝子を増幅するためのプライマー対をTE緩衝液に溶解し、終濃度にして10μMの18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液を調製する。前記Glut3遺伝子増幅用プライマー対溶液は、グルコース輸送に関与するタンパク質であるGlut3の遺伝子発現を測定するための試薬として使用される。さらに、前記Glut3遺伝子増幅用プライマー対溶液と、前記18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液と、RNA抽出試薬(Mouse RiboPure Blood RNA Isolation Kit(Thermo Fisher Scientific社/型番:AM1951))と、cDNA合成試薬(PrimeScript(登録商標)II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ株式会社/型番:6210A)と、核酸増幅試薬(PowerUp SYBR(登録商標)Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社/型番:A25777))とを組み合わせて、老化度判定キットを構成する。
【0246】
<老化度判定キットの使用>
前記老化度判定キットは、以下の手順により使用することができる。
週齢が既知の複数のマウスから末梢血を入手し、それらの一部を標準作成用の体液試料として使用する。前記老化度判定キットを構成するRNA抽出試薬を用いて、前記分析試料からトータルRNAを抽出する。得られたトータルRNAを鋳型として、前記老化度判定キットを構成するcDNA合成試薬を用いてcDNAを合成する。得られたcDNAを鋳型として、前記老化度判定キットを構成するGlut3遺伝子増幅用プライマー対溶液、18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液及び核酸増幅試薬を用いてリアルタイムPCR反応を行う。リアルタイムPCRシステムは、Agilent AriaMx Real-Time PCR System(Agilent社)を使用する。リアルタイムPCR反応条件は、50℃3分を1サイクル、95℃3分を1サイクル、95℃5秒及び60℃30秒を40サイクル、95℃30秒を1サイクル、65℃30秒を1サイクル、並びに95℃30秒を1サイクルとする。18SリボソームRNA遺伝子に対するGlut3遺伝子の相対発現量をPfaffl法により解析する。得られた相対発現量と週齢との関係式を求める。
【0247】
次に、被検体であるマウスから末梢血を採取し、その一部を分析対象の体液試料として使用する。前記分析対象の体液試料を用いて、同様の方法により18SリボソームRNA遺伝子に対するGlut3遺伝子の相対発現量を測定する。前記分析対象の体液試料中におけるGlut3遺伝子の相対発現量を指標として、上記関係式に基づき被検体の週齢を判定する。
【0248】
6.比較例2
<方法>
比較例2では、ヒト(ボランティアドナー)に由来する体液試料を用いて、被検体における認知症及び脳機能を判定するための指標を検討した。
【0249】
6-1.被検体の募集
5名のボランティアドナー(ボランティアドナーA~E)の協力を得て、以下の実験を行った。なお、ボランティアドナーA~Eの年齢は、それぞれ85歳、59歳、28歳、27歳及び21歳であった。
【0250】
6-2.認知症スクリーニング検査
認知症及び/又は脳機能を評価するために、ボランティアドナーに対してミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examinaton;MMSE)を実施した。MMSEは、質問形式の計11項目から構成される認知機能検査であり、時間の見当識、場所の見当識、即時想起、注意と計算能力、遅延再生(短期記憶)、言語的能力、図形的能力(空間認知)といった認知機能を評価することができる。MMSEにおいて、MMSEスコアの満点を30点とし、27点以下の場合を軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)疑い、23点以下の場合を認知症疑いと判定した。
【0251】
6-3.血球分析
ボランティアドナーから末梢血を採取し、自動血球計数装置を用いて末梢血試料中の単核細胞の比率を測定した。
【0252】
6-4.定量RT-PCR
RNA単離用採血管(PAXgene(登録商標)RNA採血管)(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いて、ボランティアドナーから末梢血を採取した。採血管を静かに転倒混和した後、室温で静置することにより、ボランティアドナーの末梢血(全血)に由来するトータルRNAを得た。トータルRNAを-20~-80℃で冷凍保存した。得られたトータルRNAを鋳型として、製造業者のプロトコルに従い、cDNA合成キット(PrimeScript(登録商標)II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ株式会社/型番:6210A))を用いて0.3μgのトータルRNAからcDNAを合成(逆転写)した。得られたcDNAを鋳型として、核酸増幅試薬(PowerUp SYBR(登録商標)Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社/型番:A25777))を用いてリアルタイムPCR反応を行った。リアルタイムPCRシステムは、Agilent AriaMx Real-Time PCR System(Agilent社)を用いた。リアルタイムPCR反応条件は、50℃3分を1サイクル、95℃3分を1サイクル、95℃5秒及び60℃30秒を40サイクル、95℃30秒を1サイクル、65℃30秒を1サイクル、並びに95℃30秒を1サイクルとした。内在性コントロールとしてハウスキーピング遺伝子である18SリボソームRNA遺伝子を使用し、内在性コントロールに対する各標的遺伝子の相対発現量をPfaffl法により解析した。なお、Pfaffl法は、ハウスキーピング遺伝子と標的遺伝子のPCR増幅効率を加味する、比較Ct法の一種の相対的定量法であり、Pfaffl MW.Nucleic Acids Res.2001;29(9):e45.に記載された方法を使用することができる。表5に、各遺伝子に対するプライマーの塩基配列を示す。
【0253】
【表5】
【0254】
表5中の「Fw」はフォワードプライマーを、「Rv」はリバースプライマーを示す。また、表5中の各塩基配列において、左端は5’末端を、右端は3’末端を示す。
【0255】
7.実施例5
<方法>
実施例5では、ヒト(ボランティアドナー)に由来する体液試料を用いて、被検体における認知症及び脳機能を判定するための指標を検討した。
【0256】
7-1.被検体の募集
4名のボランティアドナー(ボランティアドナーF~I)の協力を得て、以下の実験を行った。なお、ボランティアドナーF~Iの年齢は、それぞれ82歳、81歳、58歳、51歳であった。
【0257】
7-2.認知症スクリーニング検査
比較例2の「6-2.認知症スクリーニング検査」と同様にして、ボランティアドナーに対するミニメンタルステート検査を実施した。
【0258】
7-3.血球分析
比較例2の「6-3.血球分析」と同様にして、ボランティアドナーの末梢血試料中の単核細胞の比率を測定した。
【0259】
7-4.定量RT-PCR
比較例2の「6-4.定量RT-PCR」と同様にして、ボランティアドナーの末梢血試料中の各標的遺伝子の相対発現量を解析した。
【0260】
<結果>
比較例2及び実施例5のミニメンタルステート検査(MMSE)の結果について、以下に示す。
比較例2のボランティアドナーA~EのMMSEスコアは、29点又は30点であった。一方、実施例5のボランティアドナーF~IのMMSEスコアは、25点又は26点であった。以上より、比較例2のボランティアドナーA~Eは、認知症を発症しておらず、脳機能も低下していないと判定されたのに対し、実施例5のボランティアドナーF~Iは、軽度認知障害疑いと判定され、脳機能の低下が疑われた。
【0261】
比較例2及び実施例5の定量RT-PCRの結果について、以下に示す。
表6は、比較例2及び実施例5の各ボランティアドナーの末梢血試料中における、Pfaffl法により算出された、18SリボソームRNA遺伝子の発現量に対する各標的遺伝子の相対発現量を示している。
【0262】
【表6】
【0263】
表6中の「年齢」は各ボランティアドナーの年齢を、「単核細胞」は各ボランティアドナーの末梢血試料中の単核細胞の比率(末梢血試料に含まれる全ての白血球の数に対して単核細胞の数が占める割合)を、「MMSE」はMMSEスコアを示す。
【0264】
表6に示すように、ボランティアドナーAの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が0.33、Glut3遺伝子の相対発現量が0.25、MCT4遺伝子の相対発現量が0.09、PHD3遺伝子の相対発現量が0.50、PDK1遺伝子の相対発現量が0.72であった。ボランティアドナーBの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が0.45、Glut3遺伝子の相対発現量が0.26、MCT4遺伝子の相対発現量が0.19、PHD3遺伝子の相対発現量が0.24、PDK1遺伝子の相対発現量が0.35であった。ボランティアドナーCの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が0.12、Glut3遺伝子の相対発現量が0.17、MCT4遺伝子の相対発現量が0.72、PHD3遺伝子の相対発現量が0.24、PDK1遺伝子の相対発現量が0.73であった。ボランティアドナーDの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が0.55、Glut3遺伝子の相対発現量が0.32、MCT4遺伝子の相対発現量が1.00、PHD3遺伝子の相対発現量が0.44、PDK1遺伝子の相対発現量が0.58であった。ボランティアドナーEの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が0.92、Glut3遺伝子の相対発現量が0.41、MCT4遺伝子の相対発現量が0.75、PHD3遺伝子の相対発現量が0.76、PDK1遺伝子の相対発現量が0.88であった。
【0265】
表6に示すように、ボランティアドナーFの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が1.14、Glut3遺伝子の相対発現量が1.15、MCT4遺伝子の相対発現量が1.35、PHD3遺伝子の相対発現量が1.11、PDK1遺伝子の相対発現量が1.26であった。ボランティアドナーGの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が2.96、Glut3遺伝子の相対発現量が0.97、MCT4遺伝子の相対発現量が1.44、PHD3遺伝子の相対発現量が2.65、PDK1遺伝子の相対発現量が2.28であった。ボランティアドナーHの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が1.52、Glut3遺伝子の相対発現量が1.56、MCT4遺伝子の相対発現量が1.38、PHD3遺伝子の相対発現量が1.59、PDK1遺伝子の相対発現量が1.27であった。ボランティアドナーIの末梢血試料では、Glut1遺伝子の相対発現量が1.76、Glut3遺伝子の相対発現量が0.62、MCT4遺伝子の相対発現量が2.08、PHD3遺伝子の相対発現量が2.18、PDK1遺伝子の相対発現量が1.28であった。
【0266】
表6に示すように、比較例2のボランティアドナーA~Eと比較して、実施例5のボランティアドナーF~Iの末梢血試料中のGlut1遺伝子、Glut3遺伝子、MCT4遺伝子、PHD3遺伝子及びPDK1遺伝子の遺伝子発現は有意に増加していた。よって、認知症の発症及び/又は脳機能の低下に伴って発現量が顕著に変化する遺伝子として、グルコース輸送に関与するタンパク質の遺伝子(Glut1遺伝子及びGlut3遺伝子)、乳酸輸送に関与するタンパク質の遺伝子(MCT4遺伝子)、解糖系に関与するタンパク質の遺伝子(PHD3遺伝子)、並びにTCA回路に関与するタンパク質の遺伝子(PDK1遺伝子)が同定された。
【0267】
よって、被検体の認知症の発症及び/又は脳機能の低下の判定における指標としての、上記遺伝子及び/又は上記遺伝子によってコードされるタンパク質の使用の可能性が示された。また、被検体の認知症の発症及び/又は脳機能の低下の判定における指標としての、エネルギー代謝に関与するタンパク質の遺伝子、及び/又はエネルギー代謝に関与するタンパク質の使用の可能性が示された。
【0268】
また、実施例5のボランティアドナーF~Iの末梢血試料中の各々の標的遺伝子の相対発現量は、以下の(a)~(e)に示される各々の基準値よりも高く、比較例2のボランティアドナーA~Eにおける各々の標的遺伝子の相対発現量は、以下の(a)~(e)に示される各々の基準値よりも低いことが分かった。
(a)Glut1遺伝子の遺伝子発現の基準値:1.00
(b)Glut3遺伝子の遺伝子発現の基準値:0.50
(c)MCT4遺伝子の遺伝子発現の基準値:1.10
(d)PHD3遺伝子の遺伝子発現の基準値:0.90
(e)PDK1遺伝子の遺伝子発現の基準値:1.00
【0269】
ボランティアドナーFの末梢血試料中において、上記基準値に対するGlut1遺伝子、Glut3遺伝子、MCT4遺伝子、PHD3遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量の比率は、それぞれ1.1、2.3、1.2、1.2及び1.3であった。
【0270】
ボランティアドナーGの末梢血試料中において、上記基準値に対するGlut1遺伝子、Glut3遺伝子、MCT4遺伝子、PHD3遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量の比率は、それぞれ3.0、1.9、1.3、2.9及び2.3であった。
【0271】
ボランティアドナーHの末梢血試料中において、上記基準値に対するGlut1遺伝子、Glut3遺伝子、MCT4遺伝子、PHD3遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量の比率は、それぞれ1.5、3.1、1.3、1.8及び1.3であった。
【0272】
ボランティアドナーIの末梢血試料中において、上記基準値に対するGlut1遺伝子、Glut3遺伝子、MCT4遺伝子、PHD3遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量の比率は、それぞれ1.8、1.2、1.9、2.4及び1.3であった。
【0273】
よって、1以上の上記遺伝子の相対発現量が上記基準値よりも高いことを指標とすることにより、被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得することができる。すなわち、被検体由来の体液試料中の、1以上の上記遺伝子の相対発現量を測定し、前記相対発現量と上記基準値とを比較することによって、被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得することができる。
【0274】
また、被検体由来の試料中の、エネルギー代謝反応に関与する1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性を測定すること、及び前記1以上のタンパク質の遺伝子発現又は酵素活性の測定値を参照値と比較することによって、被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得することができる。
【0275】
8.実施例6
<方法>
実施例6では、比較例2及び実施例5において得られた認知症及び脳機能を判定するための指標に基づき、ヒト(ボランティアドナー)に由来する体液試料から当該ヒトの認知症及び脳機能を判定した。なお、実施例6では、認知症及び脳機能を判定するための指標として、Glut1遺伝子及びPDK1遺伝子を使用した。
【0276】
8-1.被検体の募集
9名のボランティアドナー(ボランティアドナーJ~R)の協力を得て、以下の実験を行った。なお、ボランティアドナーJ~Rの年齢は、それぞれ52歳、81歳、88歳、81歳、53歳、50歳、84歳、53歳及び22歳であった。
【0277】
8-2.定量RT-PCR
比較例2の「6-4.定量RT-PCR」と同様にして、ボランティアドナーの末梢血試料中のGlut1遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量を解析した。
【0278】
8-3.認知症及び脳機能の判定
上記「8-2.定量RT-PCR」にて得られたGlut1遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量と、Glut1遺伝子及びPDK1遺伝子の基準値(いずれも1.00)とを比較することにより、各ボランティアドナーにおける認知症の発症の危険性及び脳機能の低下の有無を判定した。
【0279】
8-4.認知症スクリーニング検査
比較例2の「6-2.認知症スクリーニング検査」と同様にして、ボランティアドナーに対するミニメンタルステート検査を実施した。
【0280】
<結果>
実施例6の定量RT-PCRの結果について、以下に示す。
表7は、実施例6の各ボランティアドナーの末梢血試料中における、Pfaffl法により算出された、18SリボソームRNA遺伝子の発現量に対するGlut1遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量を示している。
【0281】
【表7】
【0282】
表7に示すように、ボランティアドナーK及びMの末梢血試料では、Glut1遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量は、比較例2及び実施例5において得られたGlut1遺伝子及びPDK1遺伝子の基準値(いずれも1.00)よりも高かった。一方、他のボランティアドナー(J、L、N~R)の末梢血試料では、Glut1遺伝子及びPDK1遺伝子の相対発現量は、Glut1遺伝子及びPDK1遺伝子の基準値(いずれも1.00)よりも低かった。以上より、ボランティアドナーK及びMは、認知症の発症の危険性を有し、脳機能の低下が疑われると判定された。
【0283】
実施例6のミニメンタルステート検査(MMSE)の結果について、以下に示す。
ボランティアドナーKのMMSEスコアは22点、ボランティアドナーMのMMSEスコアは25点であった。また、他のボランティアドナー(J、L、N~R)のMMSEスコアは28~30点であった。以上より、ボランティアドナーKは、認知症疑いと判定され、脳機能の低下が疑われた。また、ボランティアドナーMは、軽度認知障害疑いと判定され、脳機能の低下が疑われた。また、他のボランティアドナー(J、L、N~R)は、認知症を発症しておらず、脳機能も低下していないと判定された。
【0284】
よって、1以上の上記遺伝子の相対発現量が上記基準値よりも高いことを指標とすることにより、被検体における認知症の判定又は脳機能の判定のための指標を取得することができた。
【0285】
9.実施例7
<認知症/脳機能判定キットの製造>
以下の手順により、認知症の判定又は脳機能の判定のためのキット(認知症/脳機能判定キット)を製造する。
【0286】
表5に示すPDK1遺伝子を増幅するためのプライマー対をTE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に溶解し、終濃度にして10μMのPDK1遺伝子増幅用プライマー対溶液を調製する。表5に示す18SリボソームRNA遺伝子を増幅するためのプライマー対をTE緩衝液に溶解し、終濃度にして10μMの18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液を調製する。前記PDK1遺伝子増幅用プライマー対溶液は、TCA回路に関与するタンパク質であるPDK1の遺伝子発現を測定するための試薬として使用される。さらに、前記PDK1遺伝子増幅用プライマー対溶液と、前記18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液と、単核細胞分離試薬(Ficoll-Paque PLUS(GEヘルスケア社製/型番:17144002))と、RNA抽出試薬(カネカ簡易RNA抽出キット(RT-PCR用)(株式会社カネカ/型番:KN-T110004))と、cDNA合成試薬(PrimeScript(登録商標)II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ株式会社/型番:6210A)と、核酸増幅試薬(PowerUp SYBR(登録商標)Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific社/型番:A25777))とを組み合わせて、認知症/脳機能判定キットを構成する。
【0287】
<認知症/脳機能判定キットの使用>
前記認知症/脳機能判定キットは、以下の手順により使用することができる。
【0288】
被検体であるヒトから末梢血を採取する。前記認知症/脳機能判定キットを構成する単核細胞分離試薬を用いて、末梢血から単核細胞を分離し、得られた単核細胞の一部を分析対象の体液試料として使用する。前記認知症/脳機能判定キットを構成するRNA抽出試薬を用いて、前記体液試料からトータルRNAを抽出する。得られたトータルRNAを鋳型として、前記認知症/脳機能判定キットを構成するcDNA合成試薬を用いてcDNAを合成する。得られたcDNAを鋳型として、前記認知症/脳機能判定キットを構成するPDK1遺伝子増幅用プライマー対溶液、18SリボソームRNA遺伝子増幅用プライマー対溶液及び核酸増幅試薬を用いてリアルタイムPCR反応を行う。リアルタイムPCRシステムは、Agilent AriaMx Real-Time PCR System(Agilent社)を使用する。リアルタイムPCR反応条件は、50℃3分を1サイクル、95℃3分を1サイクル、95℃5秒及び60℃30秒を40サイクル、95℃30秒を1サイクル、65℃30秒を1サイクル、並びに95℃30秒を1サイクルとする。18SリボソームRNA遺伝子に対するPDK1遺伝子の相対発現量をPfaffl法により解析する。18SリボソームRNA遺伝子の発現量に対するPDK1遺伝子の相対発現量と、PDK1遺伝子の遺伝子発現の基準値とを比較することにより、ヒトにおける認知症の罹患の有無を判定することができる。
【0289】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2
図3
【配列表】
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