(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】N-Tert-ブチル-4[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミドの固体形態
(51)【国際特許分類】
C07D 213/81 20060101AFI20250130BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20250130BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20250130BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250130BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20250130BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250130BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250130BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C07D213/81 CSP
A61K31/44
A61K45/00
A61P1/00
A61P1/02
A61P1/10
A61P1/16
A61P11/00
A61P11/06
A61P27/02
A61P29/00
A61P31/12
(21)【出願番号】P 2022505329
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(86)【国際出願番号】 GB2020051779
(87)【国際公開番号】W WO2021014167
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-07-20
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521541952
【氏名又は名称】ティエムイーエム16エー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コリングウッド, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】メリング, ロバート
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/145726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/81
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
7.25(±0.2度、2θ値)に主要なピークを含み、14.44、20.42、21.68、24.38、27.21、29.01、30.82、36.46及び41.49(±0.2度、2θ値)の位置にピークの少なくとも3
個を含むXRPDディフラクトグラムを特徴とする
、以下の構造式:
を有する、N-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド(化合物1)である化合物の形態Aの結晶多形の形態の
結晶。
【請求項2】
7.25(±0.2度、2θ値)に主要なピークを含み、10.20、14.44、17.79、20.42、20.69、21.68、24.22、24.38、26.13、27.21、29.01、30.82、36.46及び41.49(±0.2度、2θ値)の位置にピークの少なくとも3
個を含むXRPDディフラクトグラムを特徴とする、請求項
1に記載の
結晶。
【請求項3】
7.25(±0.2度、2θ値)に主要なピークを含み、10.20、14.44、16.13、17.79、20.42、20.69、21.07、21.68、24.09、24.22、24.38、26.13、27.21、29.01、29
.30、30.82、32.50、36.46及び41.49(±0.2度、2θ値)の位置にピークの少なくとも3
個を含むXRPDディフラクトグラムを特徴とする、請求項
1又は
2に記載の
結晶。
【請求項4】
前記XRPDディフラクトグラムが、21.68及び29.01(±0.2度、2θ値)の位置にピークを含み、24.09、24.22及び24.3801(±0.2度、2θ値)にピークのクラスタを含む、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の
結晶。
【請求項5】
微粒子化されている、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の
結晶。
【請求項6】
アセトン、ブタノール、エタノール、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、
酢酸エチル、酢酸メチル、ニトロメタン、2-プロパノール、プロピオニトリル及びアセトニトリルから選択される溶媒から化合物1を結晶化することを含む、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の
結晶の調製方法。
【請求項7】
以下:
i
.50~70℃の温度で溶媒中の化合物1の飽和溶液を調製する工程;
ii.溶液
を5~20℃の温度に冷却する工程;
iii.冷却した溶液を、化合物1の結晶が形成されるまで放置する工程;及び
iv.結晶化された生成物を単離する工程
を含み、
前記溶媒が、アセトン、ブタノール、エタノール、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、
酢酸エチル、酢酸メチル、ニトロメタン、2-プロパノール、プロピオニトリル及びアセトニトリルから選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、アセトニトリル、エタノール、酢酸エチル、酢酸メチル、ブタノール、2-プロパノール又は酢酸イソプロピルから選択される、請求項
6又は
7に記載の方法。
【請求項9】
11.03(±0.4
度、2θ値)の位置に主要なピークを含み、5.56、14.04、17.28、18.03、18.86、22.08、23.69、24.12及び24.93(±0.4
度、2θ値)の位置にピークの少なくとも3
個を含むXRPDディフラクトグラムを特徴とする
、以下の構造式:
を有する、N-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド(化合物1)である化合物の形態Bの水和物固体結晶多形の形態の
結晶。
【請求項10】
11.03(±0.4
度、2θ値)の位置に主要なピークを含み、5.56、14.04、17.28、18.03、18.86、19.34、22.08、23.69、24.12、24.93、25.98、26.53、27.28及び28.79(±0.4
度、2θ値)の位置にピークの少なくとも3
個を含むXRPDディフラクトグラムを特徴とする、請求項
9に記載の
結晶。
【請求項11】
5.
56及び22.08(±0.4
度、2θ値)の位置にピークを含むXRPDディフラクトグラムを有する、請求項
9又は請求項
10に記載の
結晶。
【請求項12】
微粒子化されている、請求項
9から
11のいずれか一項に記載の
結晶。
【請求項13】
前記形態Bの多形が形態B(I)偽多形であり、単峰性脱水を受けることを特徴とする、請求項
9から
12のいずれか一項に記載の
結晶。
【請求項14】
水性溶媒から化合物1を結晶化することを含む、請求項
9から
13のいずれか一項に記載の
結晶の調製方法。
【請求項15】
前記水性溶媒が、水、又はアセトニトリルと混合された水である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
以下:
i
.60~80℃の温度で溶媒中の化合物1の飽和溶液を調製する工程;
ii.溶液
を5~20℃の温度に冷却する工程;
iii.冷却した溶液を、化合物1の結晶が形成されるまで放置する工程;及び
iv.結晶化された生成物を単離する工程
を含み、
前記溶媒が
、水性溶媒である、請求項
14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記水性溶媒が、水、又はアセトニトリルと混合された水である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記水性溶媒が、5:1~1:5 v/vのアセトニトリル/水の比でアセトニトリルと混合された水である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
以下の構造式:
を有する、N-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド(化合物1)である化合物の無水非晶形の
固体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム活性化塩化物チャネル(CaCC)、TMEM16Aの正のモジュレータとしての活性を有する化合物の、結晶形態を含む新規な形態に関する。本発明はまた、新規な形態及びそれらを含有する医薬組成物を調製する方法、並びにTMEM16Aが役割を果たす疾患及び症状、特に呼吸器の疾患及び症状を治療する際のそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、毎日最大12,000Lの空気を吸入することができ、それにより、空気中の病原体(細菌、ウイルス及び真菌胞子など)が気道に入る可能性がある。これらの空中浮遊病原体から保護するために、肺は、気道の感染及びコロニー形成の可能性を最小限に抑えるための自然防御機構を進化させている。そのような機構の1つは粘液クリアランス系であり、それにより、分泌された粘液が咳の排出とともに繊毛の協調的な拍動によって気道の内外に推進される。肺のこの進行中の「洗浄」は、吸入された粒子及び微生物を絶えず除去し、それによって感染のリスクを低減する。
【0003】
近年、粘液ゲルの水和が粘液クリアランスを可能にするために重要であることが明らかになっている(Boucher 2007;Matsuiら、1998)。正常で健康な気道では、粘液ゲルは、典型的には97%の水及び3%w/vの固体であり、その条件下では、粘液は粘液線毛作用によって除去される。気道粘膜の水和は、いくつかのイオンチャネル及びトランスポーターの協調活性によって調節される。嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)及びカルシウム活性化塩化物コンダクタンス(CaCC;TMEM16A)を介して媒介されるアニオン(Cl-/HCO3
-)分泌と、上皮Na+チャネル(ENaC)を介したNa+吸収とのバランスが、気道粘膜の水和状態を決定する。イオンが上皮を横切って輸送されるとき、水は浸透圧的に追従せざるを得ず、したがって流体は分泌又は吸収される。
【0004】
慢性気管支炎及び嚢胞性線維症などの呼吸器疾患では、水和が減少し、粘液クリアランスが減少するにつれて、粘液ゲルの固形分%が増加する(Boucher,2007)。CFTRの機能喪失変異が気道の体液分泌能を減弱させる嚢胞性線維症では、固形分%を15%に増加させることができ、これは、小気道の閉塞及び粘液排出不全に寄与すると考えられている。気道粘液の水和を増加させる戦略には、陰イオン分泌の刺激、それによる体液分泌又はNa+吸収の阻害のいずれかが含まれる。この目的のために、TMEM16Aチャネルの活性を刺激することは、アニオン分泌を増加させ、したがって気道粘膜への体液蓄積を増加させ、粘液を水和させ、粘液クリアランス機構を増強する。
【0005】
TMEM16Aは、アノクタミン-1(Ano1)とも呼ばれ、カルシウム活性化塩化物チャネルと同一の分子である(Caputoら、2008;Yangら、2008)。TMEM16Aチャネルは、細胞内カルシウムレベルの上昇に応答して開き、塩化物、重炭酸及び他のアニオンが細胞膜を横切る双方向の流れを可能にする。機能的TMEM16Aチャネルは、経上皮イオン輸送、胃腸蠕動、侵害受容及び細胞遊走/増殖を調節することが提案されている(Pedemonte&Galietta、2014)。
【0006】
TMEM16Aチャネルは、肺、肝臓、腎臓、膵臓及び唾液腺を含む異なる器官の上皮細胞によって発現される。気道上皮において、TMEM16Aは、粘液産生杯細胞、線毛細胞及び粘膜下腺において高レベルで発現される。生理学的には、TMEM16Aは、呼吸及び咳などの他の機械的刺激によって引き起こされる周期的剪断応力に応答して呼吸上皮によって放出される細胞内カルシウム、特にプリン作動性アゴニスト(ATP、UTP)を動員する刺激によって活性化される。気道の水和の増強につながるアニオン分泌の増加に加えて、TMEM16Aの活性化は、重炭酸分泌において重要な役割を果たす。重炭酸分泌は、粘液特性の重要な調節因子であり、気道内腔pHの制御、したがってデフェンシンなどの天然抗菌剤の活性の制御において重要であると報告されている(Pezzuloら、2012)。
【0007】
細胞内カルシウムの上昇を介したTMEM16Aの間接的調節は、例えばデヌホソール(Kunzelmann&Mall、2003)で臨床的に検討されている。小さな患者コホートで有望な初期結果が観察されたが、このアプローチは、より大きな患者コホートでは臨床的利益をもたらさなかった(Accursoら2011;Kellermanら2008)。この臨床効果の欠如は、陰イオン分泌の一過性のみの上昇、上皮の表面でのデヌホソールの短い半減期及び受容体/経路脱感作の結果、並びに杯細胞からの粘液の放出の増加などの細胞内カルシウムの上昇の望ましくない効果に起因すると考えられた(Moss,2013)。TMEM16Aに直接作用して低レベルのカルシウム上昇でチャネル開口を増強する化合物は、患者のアニオン分泌及び粘液線毛クリアランスを持続的に増強し、先天性防御を改善すると予想される。TMEM16A活性はCFTR機能とは無関係であるので、TMEM16Aの正のモジュレータは、慢性気管支炎及び重度の喘息を含む粘液鬱血を特徴とする全てのCF患者及び非CF呼吸器疾患に臨床的利益をもたらす潜在性を有する。
【0008】
TMEM16A調節は、シェーグレン症候群における唾液腺機能不全及び放射線療法から生じる口渇(口腔乾燥症)、ドライアイ、胆汁うっ滞並びに胃腸運動障害の治療法として関与している。
【0009】
本発明者らは、TMEM16Aの正のモジュレータであり、したがってTMEM16Aが役割を果たす疾患及び症状、特に呼吸器の疾患及び症状の治療に使用される新規な化合物及びこれらの化合物の新規な形態を開発した。これらの化合物は、本発明者らの先の出願である国際公開第2019/145726号に初めて記載され、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に、国際公開第2019/145726号は、以下の構造式を有するN-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド(化合物1)を開示している:
【発明の概要】
【0010】
本発明者らはここで、新規な形態の化合物1を開発した。
【0011】
本発明の第1の態様では、形態Aの無水固体結晶多形の形態の化合物1が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様では、形態Bの水和物固体結晶多形、特に形態B(I)水和物固体結晶偽多形又は形態B(II)水和物固体結晶偽多形の形態の化合物1が提供される。
【0013】
本発明の第3の態様において、無水固体非晶質化合物1が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1aは、5~60の2θ、ステップサイズ0.02s(反射モード、オフセット500カウント)の範囲の化合物1の固体結晶多形形態AのXRPDディフラクトグラムである。
図1bは、
図1aの拡大図である。
【
図2】
図2は、12.7mgの化合物1(形態A)の投入重量で+10℃/分のランプ速度で得られた化合物1の多形形態AのDSCサーモグラムであり、積分値-378.65mW℃、融解開始192.94℃及び終了202.19℃を示す図である。
【
図3】
図3a及び
図3bは、化合物1の多形形態Aの動的蒸気収着(DVS)プロットである。
図3aはDVS等温線プロットであり、■は脱着を表し、◆は収着を表す。
図3bは、質量プロットの変化を示す。
【
図4】
図4は、5~60の2θ、ステップサイズ0.02s(反射モード、オフセット500カウント)の範囲の化合物1の固体結晶多形形態BのXRPDディフラクトグラムである。
【
図5】
図5は、+10℃/分のランプ速度で得られた化合物1の多形形態BのDSCサーモグラムであり、水和物からの水の損失に起因し得る吸熱を示す:積分-96.97mW℃、開始90.90℃;終了114.65℃。
【
図6】
図6は、実施例3においてトリフルオロトルエン(上のトレース)及びトルエン(下のトレース)から再結晶された化合物1の非溶媒和多形形態CのXRPDディフラクトグラムである。
【
図7】
図7は、化合物1のエーテル性溶媒和物多形形態D:実施例3においてTHF(上のトレース)及びtert-ブチルメチルエーテル(下のトレース)から単離された等構造形態のXRPDディフラクトグラムである。
【
図8】
図8は、メチルエチルケトンヘミ溶媒和物:実施例3においてメチルエチルケトンから単離された化合物1の多形形態EのXRPDディフラクトグラムである。
【
図9】
図9は、実施例3においてエタノールから単離された化合物1の無水多形形態FのXRPDディフラクトグラムである。
【
図10】
図10は、実施例4においてクメンから単離された化合物1の溶媒和物形態HのXRPDディフラクトグラムである。
【
図11】
図11は、オーブン乾燥前の実施例3の非晶質生成物のXRPDディフラクトグラムである。
【
図12】
図12は、オーブン乾燥後の実施例3の非晶質生成物のXRPDディフラクトグラムである。
【
図13】
図13は、実施例4において水(上のトレース)、DCM/ヘプタン(中央のトレース)及びアセトニトリル/水(下のトレース)から単離された化合物1のXRPDディフラクトグラムであり、これらの生成物は全て同じであり、形態Bの水和物と一致することを示す(
図4との比較による)。DCM/ヘプタンからの水和物形成は、水の進入又は湿性ヘプタンの存在に起因するはずである。
【
図14】
図14は、10℃/分で加熱した、実施例4のDCM/ヘプタンから単離した生成物のDSCサーモグラムである(温度範囲20~300℃)。これは、水和物からの水の損失に起因し得る吸熱を示し、懸濁液平衡化中の水の進入を示す形態Bと一致し、おそらくバルクヘプタンによるものである。ローブ1:積分-114.32mW℃、開始98.45℃、ピーク110.50℃、終了115.32℃;イベント2:積分9.95mW℃、開始115.33℃、ピーク116.17℃、終了117.26℃;ローブ3:積分-132.83mW℃、開始194.49℃、ピーク197.17℃、終了199.06℃。
【
図15】
図15aは、実施例4のテトラヒドロフランから単離したエーテル性溶媒和物形態Dの重ね合わせたDSCとTGAのサーモグラムを示し、約97.27℃での第1の重量減少転移を示し、これは約14~15%w/wに相当し、溶媒放出に起因した(試料は
1H NMRにより12.5%w/wのTHFを含有していた)。DSC、ローブ1:積分-90.50J/g、開始98.44℃、ピーク118.9℃;ローブ2:積分-101.8J/g、開始194.06℃、ピーク196.72℃。
図15bは、実施例4のtert-ブチルメチルエーテルから単離したエーテル性溶媒和物形態Dの重ね合わせたDSCとTGAのサーモグラムを示し、約15~16%w/wに相当し溶媒放出に起因する約95.92℃での第1の重量減少転移を示す(試料は
1H NMRにより14.8%w/wのtBMEを含有していた)。DSC、ローブ1:積分-151.4J/g、開始98.56℃、ピーク106.35℃;ローブ2:積分-130.1J/g、開始194.82℃、ピーク196.82℃。
【
図16】
図16は、実施例4のメチルエチルケトンから単離した部分溶媒和物形態Eの重ね合わせDSCとTGAのサーモグラムを示す。試料は、
1H NMRによって6.9%w/wのMEKを含有していた。著しい重量減少転移が融解時に起こり、溶媒の放出を伴う。DSC、ローブ:積分-102.8J/g、開始191.06℃、ピーク194.36℃。
【
図17】
図17は、実施例5においてクメンから単離された形態HのDSCサーモグラムを示す。温度範囲20~300℃、10℃/分で加熱;ローブ1:積分-26.14mW℃、開始94.78℃、終了111.97℃;ローブ2:積分17.72mW℃、開始112.79℃、終了117.25℃;ローブ3:積分-47.09mW℃、開始183.96℃、終了190.15℃。
【
図18】
図18は、実施例7のTHFから単離された形態GのXRPDディフラクトグラムである。
【
図19】
図19は、実施例1から得られた材料の、195.0℃での重量減少転移の開始を示すTGAプロット(上のトレース)及びローブ1:積分-3J/g;開始112.5℃;ピーク121.1℃;ローブ2:積分12J/g;開始124.2℃;ピーク130.4℃;ローブ3:積分-91J/g、開始192℃;ピーク194.2℃を示すDSCサーモグラム(下の線)である。
【
図20】
図20は、実施例1から得られた材料の、調製時(下のトレース)及び40℃及び75%相対湿度で7日間貯蔵した後のXRPDディフラクトグラム(上のトレース)である。
【
図21】
図21aは、20~350℃の温度範囲;10℃/分の加熱;ローブ1:積分-23.23W℃g
-1、開始107.16℃、ピーク119.83℃、終了125.41℃;ローブ2:積分5.21W℃g
-1、開始125.42℃、ピーク129.50℃、終了136.09℃;ローブ3:積分-26.07W℃g
-1、開始196.66℃、ピーク199.83℃、終了201.37℃での、形態B(I)のDSCプロットである。
図21bは、20~350℃の温度範囲;10℃/分の加熱;ローブ1:積分-4.90W℃g
-1、開始75.22℃、ピーク90.50℃、終了111.38℃;ローブ2:積分-8.37W℃g
-1、開始102.87℃、ピーク115.50℃、終了120.74℃;ローブ3:積分1.59W℃g
-1、開始121.83℃、ピーク131.42℃、終了135.55℃;ローブ4:積分-13.35W℃g
-1、開始194.06℃、ピーク195.92℃、終了196.70℃での、形態B(II)のDSCプロットである。
【
図22】
図22aは、5℃/分の速度で20~600℃の加熱;工程1:-4.9539%、-0.1498mg;工程2:-95.1942%、-2.8792mgを用いて得られた形態B(I)のTGAプロットを示す。
図22bは、5℃/分の速度で20~600℃の加熱;工程1:-0.8685%、-0.02707mg;工程2-3.8748%、-0.1208mg;工程3:-95.1186%、-2.9649mgを用いて得られた形態B(II)のTGAプロットを示す。
【
図23】
図23aは、形態B(I)のXRPDプロットである。
図23bは、形態B(II)のXRPDプロットである。
【
図24】
図24は、10トン下で20分間圧縮した後の形態B(II)のDSCプロットである(5℃/分の速度で20~350℃にわたって加熱)。単一の脱水ローブへの復帰は、試料が形態B(I)に変換されたことを示すことに留意されたい。ローブ1:積分-127.53J/g、開始87.12℃、ピーク103.67℃、終了114.36℃;ローブ2:積分11.64J/g、開始118.97℃、ピーク128.08℃、終了134.72℃;ローブ3:積分-168.37J/g、開始193.86℃、ピーク195.75℃、終了196.80℃。
【
図25】
図25は、25~280℃の温度範囲にわたるDSCプロットである。アセトニトリル/水(4対1v/v)中での23時間の懸濁液平衡化後、形態B(II)について5℃/分で加熱することにより、試料が形態B(I)に変換されたことが示される。ローブ1:積分-189.83J/g、開始106.25℃、ピーク113.92℃、終了116.65℃;ローブ2:積分-9.99J/g、開始117.12℃、ピーク118.25℃、終了120.00℃;ローブ3積分11.82J/g、開始120.98℃、ピーク127.25℃、終了132.87℃;ローブ4:積分-239.87J/g、開始194.78℃、ピーク196.25℃、終了197.08℃。
【
図26】
図26aは、25~350℃の温度範囲にわたるDSCプロットである。精製水中での2時間の懸濁液平衡化後、形態B(II)について5℃/分で加熱することにより、試料が形態B(I)に変換されたことが示される。ローブ1:積分-154.53J/g、開始101.15℃、ピーク113.92℃、終了120.00℃;ローブ2:積分46.14J/g、開始120.27℃、ピーク129.42℃、終了132.79℃;ローブ3:積分-144.408℃、開始194.51℃、ピーク195.92℃、終了196.80℃。
図26bは、試料が依然として形態Bであることを示す、精製水中で2時間の懸濁液平衡化後の形態B(II)のXRPDプロットである。上のトレース:投入材料;下のトレース:産出材料。
図26cは、25~280℃の温度範囲にわたるDSCプロットである。精製水中での200時間の懸濁液平衡化後、形態B(II)について5℃/分で加熱することにより、試料が形態B(I)に変換されたことが示される。ローブ1:積分-109.07J/g;開始100.76℃、ピーク109.92℃、終了114.05℃;ローブ2積分5.54J/g、開始114.05℃、ピーク114.58℃、終了116.23℃;ローブ3:積分25.08J/g、開始116.86℃、ピーク126.25℃、終了131.82℃;ローブ4:積分-147.30J/g、開始193.90℃、ピーク195.92℃、終了197.01℃。
図26dは、精製水中で20時間の懸濁液平衡化後の形態B(II)のXRPDプロットであり、試料が依然として結晶形態Bを有することを示す図である;上トレース:投入材料;中央のトレース:精製水中で2時間後の試料;下のトレース:産出材料。
【
図27】
図27は、試料が形態Aに変換されたことを示す、無水アセトニトリル中で3時間の懸濁液平衡化後の形態B(II)のXRPDプロットである。上のトレース:投入材料;中央のトレース:産出材料;下のトレース:参照としての真の形態A。
【
図28】
図28は、試料が形態Aに変換されたことを示す、無水アセトニトリル中で5時間の懸濁液平衡化後の形態B(I)のXRPDプロットである。上のトレース:真の形態A(参照);下のトレース:無水アセトニトリル中に懸濁した5時間後の形態B(I)
【
図29】
図29は、真の形態A(下のトレース)及び真の形態B(I)(上のトレース)のXRPDと比較した、1℃/分の変化率で-10℃~+40℃で14日間の熱サイクリング後のクエン酸緩衝Tween(登録商標)80中に懸濁した形態AのXRPDプロットであり(中央のトレース)、試料が形態Bに変換されたことを示す。
【
図30】
図30は、真の形態A(下のトレース)及び真の形態B(I)(上のトレース)のXRPDと比較した、1℃/分の変化率で-10℃~+40℃で14日間の熱サイクリング後のクエン酸緩衝Tween(登録商標)20/Span(登録商標)22中に懸濁した形態AのXRPDプロットであり(中央のトレース)、試料が形態Bに変換されたことを示す。
【
図31】
図31は、実施例14から得られた材料のXRPDプロットである。上のトレース:形態A;中央のトレース:実施例14から単離された生成物;下のトレース:形態B(I)。
【
図32】
図32は、実施例14から得られた材料について、5°C/分で加熱する25~280℃の温度範囲にわたるDSCプロットである。ローブ1:積分-134J/g、開始105.21℃、ピーク115.92℃、終了121.05℃;ローブ2:積分13.47J/g、開始121.05℃、ピーク122.58℃、終了126.45℃;ローブ3:積分23.1J/g、開始127.43℃、ピーク130.17℃、終了134.67℃;ローブ4:積分-125.89J/g、開始190.72℃、ピーク193.08℃、終了194.16℃。
【
図33】
図33は、形態B(I)の結晶中の化合物1の分子構造と水との間に見られる水素結合を示す図であり、熱楕円体が50%の確率レベルで描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、文脈が明示的な言語又は必要な含意のためにそうでないことを必要とする場合を除いて、「含む(comprises)」という単語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、包括的な意味で使用され、すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除しない。
【0016】
本明細書で言及される全ての文献及び特許文献は、可能な限り最大限に参照により組み込まれる。
【0017】
本明細書が化合物1の単位質量あたりの溶媒の体積を指す場合、これは、20体積の溶媒中の50mgの化合物1が1mL体積の試料であるような化合物1のmg及び溶媒のμLを指し;60体積の溶媒中の30mgの化合物1は1.8mL体積の試料であり、70体積の溶媒中の30mgの化合物1は2.1mL体積の試料である。
【0018】
本明細書において、「医薬用途」への言及は、疾患又は症状を治療又は予防するための、ヒト又は動物、特にヒト又は哺乳動物、例えば飼育哺乳動物又は家畜哺乳動物への投与のための使用を指す。「医薬組成物」という用語は、医薬用途に適した組成物を指し、「薬学的に許容される」は、医薬組成物での使用に適した薬剤を指す。他の同様の用語は、それに応じて解釈されるべきである。
【0019】
本明細書に開示される化合物1は、上記の構造を有するN-Tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミドである。この化合物は、本発明者らの先の出願である国際公開第2019/145726号に例示されており、その文献に例示されている方法は、少なくとも2つの結晶形態の混合物として化合物1の製造をもたらす(実施例1参照)。
【0020】
本発明者らは、多数の異なる結晶形態及び非結晶形態の化合物1、すなわち形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、形態G及び形態H並びに非晶形を見出した。多形形態A及び多形形態Bは、熱力学的に安定であるため、特に有用である。
【0021】
したがって、本発明の1つの態様において、例えば、実質的に
図1a及び1bに示されるようなXRPDディフラクトグラムによって特徴づけられる形態Aの無水固体結晶多形(形態Aの多形)の形態の化合物1が提供される。
【0022】
化合物1の形態Aの多形のXRPDディフラクトグラムの7.25(±0.2度、2θ値)位のピークは、それを化合物1の形態Bの水和物固体結晶多形と区別するのに特に有用である。
【0023】
適切には、7.25の主要なピーク(±0.2度、2θ値)並びに14.44、20.42、21.68、24.38、27.21、29.01、30.82、36.46及び41.49(±0.2度、2θ値)の位置のピークから選択される少なくとも3個のさらなるピーク(例えば、3、4、5、6、7、8又は9個全て)が、化合物1の形態Aの多形のXRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0024】
これらのうち、21.68及び29.01(±0.2度、2θ値)の位置のピークも形態Aの結晶多形に特に特徴的であり、したがって、これらの少なくとも一方、好ましくは両方が観察可能であることが典型的である。
【0025】
適切には、24.09、24.22及び24.38(±0.2度、2θ値)のピークのクラスタもまた、形態Aの結晶多形の特徴であるため、XRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0026】
より通常には、7.25における主要なピーク(±0.2度、2θ値)並びに10.20、14.44、17.79、20.42、20.69、21.68、24.22、24.38、26.13、27.21、29.01、30.82、36.46及び41.49(±0.2度、2θ値)の位置のピークから選択される少なくとも3個のさらなるピーク(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14個全て)が、化合物1の形態Aの多形のXRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0027】
再び、21.68及び29.01(±0.2度、2θ値)の位置にピークの少なくとも一方、好ましくは両方、並びに適切にはまた、24.09、24.22及び24.38(±0.2度、2θ値)におけるピークのクラスタが観察可能であることが典型的である。
【0028】
一部の場合では、7.25における主要なピーク(±0.2度、2θ値)、並びに10.20、14.44、16.13、17.79、20.42、20.69、21.07、21.68、24.09、24.22、24.38、26.13、27.21、29.01、29、30、30.82、32.50、36.46及び41.49(±0.2度、2θ値)の位置のピークから選択される少なくとも3個のさらなるピーク(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19個全て)が、化合物1の形態Aの多形のXRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0029】
再び、21.68及び29.01(±0.2度、2θ値)の位置にピークの少なくとも一方、好ましくは両方、並びに適切にはまた、24.09、24.22及び24.38(±0.2度、2θ値)におけるピークのクラスタが観察可能であることが典型的である。
【0030】
形態Aの多形のXRPDディフラクトグラムは、7.25、10.20、12.64、14.44、14.81、15.27、16.13、16.47、16.90、17.79、19.86、20.42、20.69、21.07、21.68、24.09、24.22、24.38、25.46、26.13、26.69、27.21、27.71、29.01、29.30、30.16、30.82、31.55、32.50、33.02、34.14、34.42、36.46、36.96、38.92、39.82、40.26、41.49、42.28、44.76、47.34、47.92、51.61及び51.84(±0.2度、2θ値)にピークを有し、適切には、7.25にあるピーク及び残りのピークの少なくとも3個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42又は43個全て)が、得られたXRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0031】
再び、21.68及び29.01(±0.2度、2θ値)の位置にピークの少なくとも一方、好ましくは両方、並びに適切にはまた、24.09、24.22及び24.3801(±0.2度、2θ値)におけるピークのクラスタが観察可能であることが典型的である。
【0032】
形態AのXRPDピークの2θ値及びそれらの強度は、以下の表1に示す通りである。
【0033】
形態Aの多形は、微粒子化されてもよく、本発明者らは、結晶構造が微粒子化時に維持されることを実証した。微粒子化は、適切には、5μm以下、より適切には3μm以下のD50、及び、10μm以下、より適切には5μm以下のD90を有する粒子をもたらす。例えば、D50は、約1~5μm、より適切には約1~3μmであってよく;
【0034】
D50は、体積基準のメジアン粒径を表し;したがって、粒子の総体積の50%がD50以下の粒子径を有する。同様に、D90は、粒子体積の90%がD90以下の粒径を有するように定義される。
【0035】
D50及びD90の測定には、いくつかの適切な方法、例えばレーザー回折法が利用可能である。これらの方法は周知であり、当業者によく知られている。
【0036】
XRPDディフラクトグラムのピークのいくつかは、微粒子化に際して強度が増加又は減少する場合がある。特に、14.44及び29.01のピーク(±0.2度、2θ値)は強度が低下し得るが、17.79及び27.21のピーク(±0.2度、2θ値)は強度が上昇し得る。これは、配向効果並びにテクスチャ及び結晶子サイズ及び分布の変化から生じると考えられる。
【0037】
XRPD分析は、LynxEye検出器を備えたBruker D2 Phaser粉末回折計を使用して行うことができる。
【0038】
適切には、形態Aの多形は、他の形態の化合物1を実質的に含まず、例えば、化合物1の試料において、少なくとも97重量%、97.5重量%、98重量%、98.5重量%、99重量%、99.5重量%、99.6重量%、99.7重量%、99.8重量%又は99.9重量%の化合物1が形態Aの多形として存在する。
【0039】
本発明者らは、形態Aの多形が、例えば、アセトン、ブタノール、エタノール、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、ニトロメタン、2-プロパノール、プロピオニトリル及びアセトニトリルを含む多数の溶媒のいずれか1つから結晶化することによって得られ得ることを見出した。いくつかの結晶化条件を使用することができる。
【0040】
結晶化は、以下の工程を含む加熱冷却法によって達成され得る:
i.約50~70℃の温度で溶媒中の化合物1の飽和溶液を調製する工程;
ii.溶液を約5~20℃の温度に冷却する工程;
iii.冷却した溶液を、化合物1の結晶が形成されるまで放置する工程;及び
iv.結晶化された生成物を単離する工程を含み、
溶媒は、アセトン、ブタノール、エタノール、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、ニトロメタン、2-プロパノール、プロピオニトリル及びアセトニトリルから選択される。
【0041】
より好適には、溶媒は、アセトニトリル、エタノール、酢酸エチル、酢酸メチル、ブタノール、2-プロパノール又は酢酸イソプロピルである。
【0042】
エタノール、ブタノール及び2-プロパノールは、化合物1の単位質量当たり4~7、より好適には約4~6体積の量で好適に使用される。
【0043】
酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルは、化合物1の単位質量当たり10~20体積の量で好適に使用される。例えば、酢酸メチルは、化合物1の単位質量当たり約10~12体積、特に約10.5~11.5体積、例えば11体積の量で使用され得る。酢酸エチルは、化合物1の単位質量当たり約19~21体積、特に約19.5~20.5体積、例えば約20体積の量で使用され得、酢酸イソプロピルは、化合物1の単位質量当たり約15~17体積、特に約15.6~16.5体積、例えば約16体積の量で使用され得る。
【0044】
最も適切には、結晶化溶媒は、適切には上記の濃度で、エタノール、酢酸エチル又は酢酸メチルである。
【0045】
アニソール、ブチルメチルエーテル、クメン、クロロベンゼン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、プロピオニトリル、トルエン、トリフルオロトルエンテトラヒドロフラン、ジクロロメタン又はジクロロメタン/ヘプタンは、他の形態の化合物1の生成をもたらすので、これらで結晶化を行なわないことが適切である。
【0046】
また、水性溶媒は、化合物1の形態Bの水和物固体結晶多形の生成をもたらすので、水性溶媒中で結晶化を行わないことが適切である。
【0047】
適切には、工程(i)において飽和溶液を調製するために使用される化合物1は、非晶質の化合物1である。
【0048】
あるいは、結晶化は、以下の工程を含む方法における二元溶媒からの拡散法によるものであってよい:
i.化合物1の飽和溶液を調製する工程(より揮発性の低い溶媒中で調製される);
及び
ii.飽和溶液を第1の容器に移す工程;
iii.第1の容器よりも大きく、第1の溶媒よりも揮発性の高い第2の溶媒を含む第2の容器内に、第1の容器を配置する工程;
iv.容器を覆い、第2の溶媒が第1の容器中に拡散し、化合物1の結晶化が第1の容器中で起こるように、15~25℃、好ましくは18~23℃の温度で1~10日間放置する工程;及び
v.結晶化された生成物を第1の容器から単離する工程を含み、
第1の溶媒がエタノールであり、第2の溶媒がペンタンである。
【0049】
あるいは、形態Aの多形は、非晶質化合物1を、97℃を超える温度に加熱し、冷却させることを含む冷結晶化方法によって調製され得る。
【0050】
特に適切な結晶化方法は:
i.酢酸エチル中の化合物1の混合物を調製することと;
ii.混合物を55~70℃、特に55~65℃、より特に約60℃に加熱し、酢酸エチル中の化合物1の溶液が得られるまで撹拌することと;
iii.溶液を40~50℃、特に約45~49℃、より特に約47℃に冷却することと;
iv 溶液を濃縮することと;
v.1~4時間、特に約2~3時間にわたって、約15~30℃、特に約20~25℃、より特に約23℃まで一定速度で冷却し、4~6時間、例えば5時間放置することと;
vi.n-ヘプタンを0.75~2.5時間、例えば1~2時間にわたって、15~30℃、特に約20~25℃、より特に約23℃の温度で添加し、20~80分間、例えば約30~60分間放置することと;
vii.1~5時間、特に約2~4時間、典型的には約3時間にわたって混合物を-5~10℃、特に約0~5℃、より特に約2.5℃の温度まで一定速度で冷却し、放置して固体結晶の形態Aの多形の化合物1を得ることと;
viii.固体結晶の形態Aの多形の化合物1を単離し、乾燥させることと、を含む。
【0051】
この方法において、工程(i)において、化合物1の単位質量当たりの酢酸エチルの体積は、好適には約15~25、より好適には約20体積の化合物1の単位質量当たりの酢酸エチルである。
【0052】
適切には、工程(ii)において、撹拌は少なくとも10分間行われる。化合物1の溶液は濁った溶液であり、工程(iii)の後、溶液は濾過によって、例えば1μmフィルタを通して清澄化され得る。この方法は、適切には、酢酸エチルですすぐ、さらなる工程を含む。適切には、すすぎ体積は、工程(i)で使用される酢酸エチルの元の量の約10~20%、例えば約15%体積である。
【0053】
工程(iv)において、溶液は、工程(i)で使用される酢酸エチルの体積の約40~60%、例えば約50%まで適切に濃縮される。濃縮は、真空蒸留を使用して達成され得、約40~50℃、典型的には約45℃の温度で適切に行われる。
【0054】
多形の形態Aは、化合物1の最も熱力学的に安定な形態である。それは、
図2のDSCサーモグラムから分かるように、溶融開始が約193℃で起こる比較的高い融点を有する。
【0055】
多形の形態Aは、
図3のDVSプロットによって示されるように、低い水分親和性を有し、吸湿性ではない。
図3から、90%相対湿度(RH)での質量変化(水の取り込みを表す)はわずか0.02%であることが分かる。また、DVS試験後にXRPD解析を繰り返したところ、DVS解析前の試料と同じ結果であり、水和物は形成されなかった。このことは、形態Aが水分に対して安定であることを示し、実際、本発明者らは、水和物の形態Bを生成するためには、水が結晶格子に侵入しなければならないことを示している。これが、以下により詳細に議論されるように、化合物1が水性溶媒から再結晶されるときに水和物の形態Bが形成される理由である。
【0056】
しかし、驚くべきことに、形態Aは低水分活性で最も熱力学的に安定な結晶形態であり、DVSによって水分に対して動的に安定であるが、例えば水性溶媒に懸濁した場合、水分活性が上昇した条件下で熱力学的に安定ではないことが分かった。これらの条件下で、数日間にわたって形態Bの水和物結晶多形に変換される。
【0057】
形態Aの結晶多形の水性懸濁液では、24時間の時点で形態Bを検出することはできない。しかしながら、8日後、化合物1の実質的に全てが形態Bの水和物結晶形態として存在した。
【0058】
本発明のさらなる態様において、例えば、実質的に
図4に示されるようなXRPDディフラクトグラムによって特徴づけられる形態Bの水和物固体結晶多形(形態Bの多形)の形態の化合物1が提供される。
【0059】
形態Bは、化合物1が水性溶媒から結晶化される場合、又は水が溶媒媒介条件下で十分な活性で侵入する場合、形態A又は非晶形に由来する水和物である。
【0060】
水和物のXRPDパターンは、構造内の水の量の変動が面間距離の変動、したがって、特により小さい角度への反射角のシフトをもたらし得るので、無水結晶形態のXRPDパターンよりも幾分変動しやすい。したがって、以下の値は、±0.4度、2θ値の誤差を有するが、誤差は、より適切には±0.3度、2θ値、又はさらには±0.2度、2θ値である。
【0061】
XRPDディフラクトグラムの11.03(±0.4度、2θ値)のピークは、化合物1の形態Bの水和物結晶多形を化合物1の形態Aの多形から区別するのに特に有用である。
【0062】
適切には、11.03(±0.4度、より好適には±0.3度又は±0.2度、2θ値)の位置の主要なピーク並びに5.56、14.04、17.28、18.03、18.86、22.08、23.69、24.12及び24.93(±0.4度、より好適には±0.3度又は±0.2度、2θ値)の位置のピークから選択される少なくとも3個のピーク(例えば、3、4、5、6、7、8又は9個全て)が、化合物1の形態Bの多形のXRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0063】
これらのうち、5.56及び22.08(±0.4度、より好適には±0.3度又は±0.2度、2θ値)の位置のピークも形態Aの結晶多形に特に特徴的であり、したがって、これらの少なくとも一方、好ましくは両方が観察可能であることが典型的である。
【0064】
より通常には、11.03(±0.2度、2θ値)の位置の主要なピーク並びに5.56、14.04、17.28、18.03、18.86、19.34、22.08、23.69、24.12、24.93、25.98、26.53、27.28及び28.79(±0.4度、より好適には±0.3度又は±0.2度、2θ値)の位置のピークから選択される少なくとも3個のピーク(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14個全て)が、化合物1の形態Bの多形のXRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0065】
このように、5.56及び22.08(±0.4度、より好適には±0.3度又は±0.2度、2θ値)の位置にピークの少なくとも一方、好ましくは両方が観察可能であることが好ましい。
【0066】
さらにより通常には、11.03(±0.2度、2θ値)の位置の主要なピーク並びに5.56、14.04、16.58、17.28、18.03、18.86、19.34、21.19、22.08、23.69、24.12、24.93、25.98、26.53、27.28、28.22、28.79、30.69及び30.90(±0.4度、より好適には±0.3度又は±0.2度、2θ値)の位置のピークから選択される少なくとも3個のピーク(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19個全て)が、化合物1の形態Bの多形のXRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0067】
このように、5.56及び22.08(±0.4度、より好適には±0.3度又は±0.2度、2θ値)の位置のピークに少なくとも一方、好ましくは両方が観察可能であることが好ましい。
【0068】
形態Bの多形のXRPDディフラクトグラムは、5.56、11.03、14.04、16.58、17.28、18.03、18.86、19.34、20.51、21.19、22.08、23.69、24.12、24.93、25.98、26.53、27.28、28.22、28.79、30.69、30.90、32.07、32.40、35.69、36.54、37.95、38.11、38.77、38.85及び40.09(±0.2度、2θ値)にピークを有し、適切には、11.03のピーク及び残りのピークの少なくとも3個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個全て)が、得られたXRPDディフラクトグラムにおいて観察可能である。
【0069】
このように、位置11.03の主要なピーク、並びに適切には位置5.56及び22.08(±0.2度、2θ値)のピークの少なくとも一方又は好ましくは両方が観察可能である。
【0070】
形態B(I)及び形態B(II)のXRPDスペクトルを再実行し、2θ値及びピーク強度を以下の表2に示す。上記の値からいくらかの変動があるが、既に論じたように、これは水和物のXRPDスペクトルに通常見られる実験変動の範囲内である。
【0071】
実験変動を考慮すると、5.4903、10.9682、17.0775、17.8749、18.6669、19.1626、21.9937、23.5468、23.9220、24.7841、25.7789、26.3371、27.0946及び28.5839の2θ値を有する表2のピークは、上記の5.56、11.03、14.04、17.28、18.03、18.86、19.34、22.08、23.69、24.12、24.93、25.98、26.53、27.28及び28.79(±0.4度、より好適には±0.3度又は±0.2度、2θ値)のピークに対応することが明らかである。
【0072】
表2中の他のピークも同様に、上記のピークに対応する。
【0073】
形態Bの多形は、微粒子化されてもよく、本発明者らは、結晶構造が微粒子化時に維持されることを実証した。微粒子化は、適切には、5μm以下、より適切には3μm以下のD50、及び、10μm以下、より適切には5μm以下のD90を有する粒子をもたらす。例えば、D50は、約1~5μm、より適切には約1~3μmであってよく;
【0074】
適切には、形態Bの多形は、他の形態の化合物1を実質的に含まず、例えば、化合物1の試料において、少なくとも97重量%、97.5重量%、98重量%、98.5重量%、99重量%、99.5重量%、99.6重量%、99.7重量%、99.8重量%又は99.9重量%の化合物1が形態Bの多形として存在する。
【0075】
本発明者らは、形態Bの多形が、例えば、水性溶媒、典型的には水又はアセトニトリルと混合された水から化合物1を結晶化することによって得られ得ることを見出した。
【0076】
結晶化は、以下の工程を含む加熱冷却法によって達成され得る:
i.約60~80℃の温度で溶媒中の化合物1の飽和溶液を調製する工程;
ii.溶液を約5~30℃の温度に冷却する工程;
iii.冷却した溶液を、化合物1の結晶が形成されるまで放置する工程;及び
iv.結晶化された生成物を単離する工程を含み、
溶媒は、水、又は、アセトニトリル、クメン、ジクロロメタン、ニトロメタン、トリフルオロトルエン若しくはジクロロメタンとヘプタンとの混合物などの1種以上のさらなる溶媒と混合された水などの水性溶媒である。
【0077】
好ましくは、溶媒は純水ではない。
【0078】
任意の他の形態の化合物1を結晶化のための出発材料として使用することができる。例えば、工程(i)において飽和溶液を調製するために使用される化合物1は、非晶質化合物1又はその形態Aの結晶多形の形態の化合物1であってもよい。
【0079】
特に適切な溶媒は、アセトニトリルと水の混合物、例えば5:1~1:5 v/v、適切には5:1~3:1、典型的には約4:1のアセトニトリル/水の比のアセトニトリル/水である。
【0080】
アニソール、ブチルメチルエーテル、クメン、クロロベンゼン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、プロピオニトリル、トルエン、トリフルオロトルエンテトラヒドロフラン、ジクロロメタン又はジクロロメタン/ヘプタンは、他の形態の化合物1の生成をもたらすので、これらで結晶化を行なわないことが適切である。また、アセトン、ブタノール、エタノール、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、ニトロメタン、2-プロパノール、プロピオニトリル又はアセトニトリルは、化合物1の多形の形態Aの生成をもたらすので、結晶化を行なわないことが適切である。
【0081】
驚くべきことに、本発明者らは、化合物1の形態Bの多形が2つの偽多形形態をとり得ることを見出した。これらの形態は等構造であり、XRPDによって区別できない。しかしながら、それらは、熱重量分析及び示差走査熱量測定によって測定されるように、それらの脱水特性が異なる。第1の偽多形は単峰性脱水を受け、形態B(I)と命名され、第2の偽多形は二峰性脱水を受け、形態B(II)と命名される。形態B(I)のDSCプロットは単一の脱水ローブを示すのに対して、形態B(II)のDSCプロットは2つの脱水ローブを示し、その最初のものは形態B(I)の脱水ローブよりも低い開始で起こる(
図21a及び
図21b参照)。形態B(II)の2つのローブのエンタルピーの合計は、形態B(I)の単一ローブのエンタルピーにほぼ等しい。同様に、(
図22a)形態B(I)のTGAプロットは、水損失に起因する単一の重量変化(-4.95%mg)を示すが、(
図22b)形態B(II)のTGAプロットは、小さい重量変化(-0.87%)とそれに続くより大きな重量損失(-3.87%)を示す。
【0082】
2つの形態の脱水挙動は、関連する水分子の異なる位置及び結合から生じると考えられる。それらが安定であるかどうかを決定するために、両方の形態を10トンの圧縮に供し、その後、圧縮された形態B(II)の脱水吸熱が、形態B(I)によって示される単峰性事象と同様に、広範な単峰性事象として示されることが見出された。したがって、2つの形態は、それらの構成水分子の配向及び位置がわずかに異なるだけの等構造の偽多形によって関連すると考えられる。
【0083】
形態B(I)は、形態B(II)の圧縮後に出現し、形態B(I)は、同処理後に変化しなかった。さらに、DSCプロット(
図21a及び
図21b)では、形態B(II)に存在するローブIの脱水は、形態B(I)の脱水ローブ(I)よりも低い開始温度で起こり、形態B(II)が安定性の低い水和物形態(準安定の水和物形態)であり、高い圧縮力が加えられた場合に、より安定な水和物形態B(I)に向かって駆動されることを示している。
【0084】
形態B(I)及び形態B(II)の安定性階層をさらに調べるために、形態B(I)及び形態B(II)の両方の等量を4対1のMeCN/水(w/w)で3日間競合的にスラリー熟成させた。得られた固体は、DSCによって形態B(I)であることが確認され、これは形態Bの単峰性偽多形が、2つのうちでより安定であることを示している。
【0085】
上記のように、形態A及び形態Bの両方は、それらが保存される条件に応じて熱力学的に安定である。形態Aは、固体形態で貯蔵した場合、湿った状態であっても熱力学的に安定である。したがって、形態Aは、固体、好適には微粒子化固体としての輸送及び貯蔵に特に適している。
【0086】
しかし、水性懸濁液中の場合は、形態Aは形態Bに、より具体的には形態B(I)に変換される。この変換は、形態Aの結晶の表面上への水分子の吸着が先行すると思われ、速度決定工程は、形態B無水物への形態Aの変換を介して進行するのではなく、水に対して二分子性であり、その後水和される。形態Aの水性懸濁液を含む医薬組成物が必要とされる場合、懸濁液は、形態Bの水和物としての化合物1の再結晶が投与前に起こらないように、患者への投与直前に最も適切に構成される。
【0087】
形態B(I)は、長期間にわたって水性懸濁液中で熱力学的に安定であることが示されている。このことは、水性懸濁液である医薬製剤における使用に特に有用にさせる。
【0088】
形態B(I)の偽多形について単結晶データを得た。結晶は、以下の格子パラメータを有する斜方晶系の空間群Pna2
1であった:
【0089】
本発明のさらに別の態様では、化合物1が固体非晶形で提供される。
【0090】
適切には、化合物1の非晶形は、他の形態の化合物1を実質的に含まず、例えば、化合物1の試料において、少なくとも97重量%、97.5重量%、98重量%、98.5重量%、99重量%、99.5重量%、99.6重量%、99.7重量%、99.8重量%又は99.9重量%の化合物1が非晶形として存在してよい。
【0091】
固体非晶質化合物1は、例えば、化合物1を酢酸エチルなどの溶媒に溶解し、約30~45℃の温度で減圧下で溶媒を除去することによって調製され得る。
【0092】
適切には、出発物質として使用される化合物1は、形態A又は形態Eである(以下に記載される)。
【0093】
化合物1の他の多形形態としては、以下のものが挙げられる:
● 形態C、
図6に示すXRPDディフラクトグラムを有する、トリフルオロトルエン又はトルエンから単離された非溶媒和形態;
● 形態D、
図7に示すXRPDディフラクトグラムを有する、エーテル性溶媒和物;
● 形態E、
図8に示すXRPDディフラクトグラムを有する、メチルエチルケトンヘミ溶媒和物;
● 形態Fは、エタノール処理による無水形態であり、
図9に示すようなXRPDディフラクトグラムを有する;
【0094】
● 形態Gは、40℃でのTHFにおける形態Aの懸濁液平衡化によって得られ、
図18に示すXRPDディフラクトグラムを有する、溶媒和物形態である。
【0095】
● 形態Hは、クメン中での再結晶から得られ、
図10に示すようなXRPDディフラクトグラムを有する溶媒和物形態である。
【0096】
化合物1は、TMEM16Aのモジュレータであり、したがって、本発明のさらなる態様では、TMEM16Aの調節によって影響を受ける疾患及び症状の治療又は予防に使用するための、上で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1が提供される。
【0097】
また、TMEM16Aの調節によって影響を受ける疾患及び症状の治療又は予防のための医薬の製造における、上で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1が提供される。
【0098】
また、TMEM16Aの調節によって影響を受ける疾患及び症状を治療又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を投与することを含む、方法も提供される。
【0099】
TMEM16Aの調節によって影響を受ける疾患及び症状には、呼吸器の疾患及び症状、口渇(口腔乾燥症)、腸運動過剰、胆汁うっ滞及び眼の症状が含まれる。
【0100】
また、以下も提供される:
● 呼吸器の疾患及び症状の治療又は予防に使用するための、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1。
● 口渇(口腔乾燥症)の治療又は予防に使用するための、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1。
● 腸運動過剰の治療又は予防に使用するための、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1。
● 胆汁うっ滞の治療又は予防に使用するための、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1。
● 眼の症状の治療又は予防に使用するための、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1。
【0101】
本発明はまた、以下も提供する:
● 呼吸器の疾患及び症状の治療又は予防のための医薬の製造における、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の使用。
● 口渇(口腔乾燥症)の治療又は予防のための医薬の製造における、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の使用。
● 腸運動過剰の治療又は予防のための医薬の製造における、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の使用。
● 胆汁うっ滞の治療又は予防のための医薬の製造における、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の使用。
● 眼の症状の治療又は予防のための医薬の製造における、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の使用。
【0102】
さらに、以下が提供される:
● 呼吸器の疾患及び症状を治療又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を投与することを含む、方法。
● 口渇(口腔乾燥症)を治療又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を投与することを含む、方法。
● 腸運動過剰を治療又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を投与することを含む、方法。
● 胆汁うっ滞を治療又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を投与することを含む、方法。
● 眼の症状を治療又は予防する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を投与することを含む、方法。
【0103】
上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1によって治療又は予防され得る呼吸器の疾患及び症状には、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、気腫、非嚢胞性線維症の気管支拡張症を含む気管支拡張症、喘息及び原発性毛様体ジスキネジアが含まれる。
【0104】
上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1によって治療又は予防され得る口渇(口腔乾燥症)は、シェーグレン症候群、放射線療法治療及び乾性薬(xerogenic drug)に起因し得る。
【0105】
化合物1は一般に、医薬組成物の一部として投与され、したがって、本発明は、上記に定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を、薬学的に許容される添加物と共に含む医薬組成物をさらに提供する。
【0106】
医薬組成物は、経口、直腸、経鼻、局所(肺、皮膚、経皮、点眼剤、口腔及び舌下への局所投与を含む)、膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与用に製剤化されてよく、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製されてもよい。経口投与又は肺への局所投与のための組成物が特に適している。
【0107】
組成物は、上記で定義された活性薬剤を添加物と関連させることによって調製され得る。一般に、製剤は、活性薬剤を液体担体若しくは微細に分けられた固体担体、又はその両方と均一かつ密接に関連させ、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。本発明は、化合物1を、上記で定義される形態Aの多形若しくは形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態で、又は非晶形で、薬学的に許容される担体又はビヒクルと組み合わせる又は関連させることを含む、医薬組成物を調製するための方法に及ぶ。
【0108】
本発明における経口投与のための製剤は、それぞれが所定量の活性薬剤を含有するカプセル、サシェ又は錠剤などの個別の単位として;粉末又は顆粒として;水性液体又は非水性液体中の活性薬剤の溶液又は懸濁液として;又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンとして;又はボーラスなどとして提供される。
【0109】
経口投与用の組成物(例えば、錠剤及びカプセル)の場合、「許容される担体」という用語は、一般的な添加物、例えば結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース及びデンプンなどのビヒクル;充填剤及び担体、例えばコーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウム及びアルギン酸;及び潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム及び他の金属ステアリン酸塩、ステアリン酸グリセロール、ステアリン酸、シリコーン流体、タルクワックス、油及びコロイド状シリカを含む。ペパーミントなどの香味剤、イチヤクソウ油、サクランボ香味剤なども使用することができる。剤形を容易に識別可能にするために着色剤を添加することが望ましい場合がある。錠剤はまた、当技術分野で良く知られた方法によってコーティングされ得る。
【0110】
錠剤は、圧縮又は成形によって、任意に1種以上の補助成分と共に作製され得る。圧縮された錠剤は、好適な機械内で、任意で、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、表面活性剤、又は分散剤などと混合された、粉末又は顆粒としての自由流動形態の活性薬剤を圧縮することより調製され得る。成形された錠剤は、好適な機械内で湿らせた粉末化化合物と不活性液体希釈剤との混合物を成形することにより作製され得る。錠剤は、任意で、コーティングされるか、又は溝を入れられてもよく、活性薬剤の緩徐化された、又は制御された放出を提供するように製剤化されてもよい。
【0111】
経口投与に適した他の製剤には、風味付けされた基剤、通常スクロース及びアラビアゴム又はトラガカント中に活性薬剤を含む薬用キャンディー、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアゴム等の不活性基剤中に活性薬剤を含む香錠、並びに好適な液体担体中に活性薬剤を含む洗口剤が含まれる。
【0112】
経口投与のための特に好適な組成物は、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の水性懸濁液を含む。化合物1が形態Aの多形として存在する場合、形態Bの水和物多形としての再結晶を回避するために、患者への投与直前に水性溶媒に最も適切に懸濁される。一方、化合物1がその形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形として存在する場合、形態B(I)の偽多形は水性懸濁液中で熱力学的に安定であるので、水性懸濁液は長期間保存され得る。水性懸濁液はまた、以下で論じられるような他の添加剤を含んでもよい。
【0113】
皮膚への局所適用のために、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、クリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液などに構成され得る。薬物に使用され得るクリーム又は軟膏製剤は、例えば、英国薬局方などの薬学の標準的な教科書に記載されているような当技術分野で良く知られた従来の製剤である。
【0114】
肺への局所投与は、エアロゾル製剤の使用によって達成され得る。エアロゾル製剤は、典型的には、クロロフルオロカーボン(CFC)又はヒドロフルオロカーボン(HFC)などの適切なエアロゾル噴射剤に懸濁又は溶解された活性成分を含む。適切なCFC噴射剤には、トリクロロモノフルオロメタン(噴射剤11)、ジクロロテトラフルオロメタン(噴射剤114)、及びジクロロジフルオロメタン(噴射剤12)が含まれる。適切なHFC噴射剤には、テトラフルオロエタン(HFC-134a)及びヘプタフルオロプロパン(HFC-227)が含まれる。噴射剤は、典型的には、全吸入組成物の40重量%~99.5重量%、例えば40重量%~90重量%を構成する。製剤は、共溶媒(例えばエタノール)及び界面活性剤(例えば、レシチン、ソルビタントリオレエートなど)を含む添加物を含み得る。他の可能な添加物としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、グリセリンなどが挙げられる。エアロゾル製剤はキャニスタに包装され、適切な用量が計量弁(例えば、Bespak、Valois又は3Mによって供給され、あるいはAptar、Coster又はVariによって供給される)によって送達される。
【0115】
肺への局所投与は、水溶液又は懸濁液などの非加圧製剤の使用によっても達成され得る。これらは、ネブライザー、例えば手持ち式で携帯可能なネブライザー、又は家庭用若しくは病院用(すなわち非携帯型)ネブライザーによって投与することができる。製剤は、水、緩衝剤、等張性調整剤、pH調整剤、界面活性剤及び共溶媒などの添加物を含み得る。懸濁液及びエアロゾル製剤(加圧又は非加圧のいずれであっても)は、典型的には、例えば0.5~10μm、例えば約1~5μmのD50を有する微細に分けられた形態の本発明の化合物を含有する。粒径分布は、D10、D50及びD90値を使用して表すことができる。粒径分布のD50中央値は、分布を半分に分けるミクロン単位の粒径として定義される。レーザー回折に由来する測定は、体積分布としてより正確に説明され、したがって、この手順を使用して得られたD50値は、Dv50値(体積分布の中央値)として、より意味がある。本明細書で使用される場合、Dv値は、レーザー回折を使用して測定された粒径分布を指す。同様に、レーザー回折の文脈で使用されるD10及びD90値は、Dv10及びDv90値を意味すると解釈され、粒径を指し、それにより、分布の10%がD10値を下回り、分布の90%がD90値を下回る。
【0116】
化合物1が形態Aの多形として存在する場合、形態Bの水和物多形としての再結晶を回避するために、患者への投与直前に水性溶媒に最も適切に懸濁される。一方、化合物1がその形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形として存在する場合、形態B(I)の偽多形は水性懸濁液中で熱力学的に安定であるので、水性懸濁液は長期間保存され得る。水性懸濁液はまた、以下で論じられるような他の添加剤を含んでもよい。
【0117】
肺への局所投与は、乾燥粉末製剤の使用によっても達成され得る。乾燥粉末製剤は、典型的には1~10μmの質量平均直径(MMAD)又は0.5~10μm、例えば約1~5μmのD50を有する、微細に分けられた形態の本開示の化合物を含有する。微細に分けられた形態の本発明の化合物の粉末は、微粒子化プロセス又は同様のサイズ縮小プロセスによって調製され得る。微粒子化は、Hosokawa Alpine製のものなどのジェットミルを使用して行なってもよい。得られた粒径分布は、レーザー回折(例えば、Malvern Mastersizer 2000S機器を用いて、)を用いて測定することができる。製剤は、典型的には、通常比較的大きな粒径、例えば50μm以上、例えば100μm以上の質量平均直径(MMAD)又は40~150μmのD50の、ラクトース、グルコース又はマンニトール(好ましくはラクトース)などの局所的に許容される希釈剤を含有する。本明細書で使用される場合、「ラクトース」という用語は、α-ラクトース一水和物、β-ラクトース一水和物、α-ラクトース無水物、β-ラクトース無水物及び非晶質ラクトースを含むラクトース含有成分を指す。ラクトース成分は、微粒子化、ふるい分け、粉砕、圧縮、凝集又は噴霧乾燥によって処理され得る。様々な形態のラクトースの市販形態、例えば、Lactohale(登録商標)(吸入グレードのラクトース;DFE Pharma)、InhaLac(登録商標)70(乾燥粉末吸入用のふるい分けされたラクトース;Meggle)、Pharmatose(登録商標)(DFE Pharma)及びRespitose(登録商標)(ふるい分けした吸入グレードのラクトース;DFE Pharma)製品も包含される。一実施形態において、ラクトース成分は、α-ラクトース一水和物、α-ラクトース無水物及び非晶質ラクトースからなる群から選択される。好ましくは、ラクトースはα-ラクトース一水和物である。
【0118】
乾燥粉末製剤はまた、他の添加物を含有し得る。したがって、一実施形態では、本開示による乾燥粉末製剤は、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウムを含む。そのような製剤は、特にそのような製剤がラクトースも含有する場合、優れた化学的及び/又は物理的安定性を有し得る。
【0119】
乾燥粉末製剤は、典型的には、乾燥粉末吸入器(DPI)装置を使用して送達される。乾燥粉末送達システムの例には、SPINHALER(登録商標)、DISKHALER(登録商標)、TURBOHALER(登録商標)、DISKUS(登録商標)、SKYEHALER(登録商標)、ACCUHALER(登録商標)及びCLICKHALER(登録商標)が含まれる。乾燥粉末送達システムのさらなる例としては、ECLIPSE、NEXT、ROTAHALER、HANDIHALER、AEROLISER、CYCLOHALER、BREEZHALER/NEOHALER、MONODOSE、FLOWCAPS、TWINCAPS、X-CAPS、TURBOSPIN、ELPENHALER、MIATHALER、TWISTHALER、NOVOLIZER、PRESSAIR、ELLIPTA、ORIEL乾燥粉末吸入器、MICRODOSE、PULVINAL、EASYHALER、ULTRAHALER、TAIFUN、PULMOJET、OMNIHALER、GYROHALER、TAPER、CONIX、XCELOVAIR及びPROHALERが挙げられる。
【0120】
一実施形態では、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、例えば適切なグレードのラクトースを含む微粒子化乾燥粉末製剤として提供される。
【0121】
したがって、本発明の一態様として、粒子形態ラクトースと組み合わせて、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を粒子形態で含む医薬組成物であって、ステアリン酸マグネシウムを任意に含む、医薬組成物が提供される。
【0122】
一実施形態では、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、DISKUSなどの装置に充填された、適切なグレードのラクトース及びステアリン酸マグネシウムを含む微粒子化乾燥粉末製剤として提供される。適切には、そのような装置は、複数回投与装置であり、例えば、製剤は、DISKUSなどの複数単位投与装置で使用するためのブリスターに充填される。
【0123】
別の実施形態では、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、例えばAEROLISERなどの単回投与装置で使用するための硬質シェルカプセルに充填された適切なグレードのラクトースを含む微粒子化乾燥粉末製剤として提供される。
【0124】
別の実施形態では、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、AEROLISERなどの単回投与装置で使用するための硬質シェルカプセルに充填された適切なグレードのラクトース及びステアリン酸マグネシウムを含む微粒子化乾燥粉末製剤として提供される。
【0125】
別の実施形態では、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、ジェットミル微粒子化以外のサイズ縮小プロセス、例えば噴霧乾燥、噴霧凍結、微小流動化、高圧均質化、超臨界流体結晶化、超音波結晶化若しくはこれらの方法の組み合わせ、又は空気力学的粒径0.5~10μmの微細な粒子を製造するために使用される当技術分野で公知の他の適切な粒子形成方法によって製造された、0.5~10μm、例えば約1~5μmのD50を有する微細な粒子である吸入剤形で使用するための微細な粉末として提供される。得られた粒径分布は、レーザー回折(例えば、Malvern Mastersizer 2000S機器を用いて、)を用いて測定することができる。粒子は、化合物を単独で、又は処理を補助し得る適切な他の添加物と組み合わせて含み得る。得られた微粒子は、ヒトへの送達のための最終製剤を形成してもよく、又は任意に、許容される剤形での送達を容易にするために他の適切な添加物と共にさらに製剤化されてもよい。
【0126】
上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、例えば、水性又は油性溶液並びに懸濁液及びエマルジョン及びフォームを含む坐剤又は浣腸の形態で直腸投与することもできる。そのような組成物は、当業者に良く知られた標準的な手順に従って調製される。例えば、坐剤は、活性成分をカカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤と混合することによって調製することができる。この場合、薬物は、常温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性添加物と混合される。そのような材料は、ココアバター及びポリエチレングリコールである。
【0127】
一般に、点眼剤又は眼軟膏の形態で眼に局所投与されることが意図される組成物について、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の総量は、約0.0001~4.0%未満(w/w)である。
【0128】
好ましくは、眼局所投与のために、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を含む組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン及び他の剤形として製剤化される。水性溶液は、一般に、製剤化の容易さ、並びに罹患眼に1~2滴の溶液を滴下することによってそのような組成物を患者が容易に投与することができるので、好ましい。しかしながら、組成物は、懸濁液、粘性若しくは半粘性ゲル、又は他の種類の固体若しくは半固体組成物であってもよい。懸濁液は、水に難溶性の化合物に好ましい場合がある。
【0129】
眼への投与のための代替法は、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の溶液又は懸濁液の硝子体内注射である。さらに、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、眼インプラント又はインサートによって導入されてもよい。
【0130】
上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、限定されないが、等張剤、緩衝剤、界面活性剤、安定化ポリマー、保存剤、共溶媒及び粘度上昇剤を含む様々な他の成分を含んでもよい。上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、等張剤及び緩衝液を用いて製剤化され得る。上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の医薬組成物は、界面活性剤及び/又は緩和剤及び/又は安定化ポリマーを任意にさらに含んでいてもよい。
【0131】
様々な等張剤を使用して、眼科用組成物のために、組成物の等張性を、好ましくは天然涙液の等張性に調整することができる。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロース、フルクトース、ガラクトースなどの単純糖、及び/又は糖アルコールマンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、イソマルチトール、マルチトール、及び水素化デンプン加水分解物などの単純ポリオールを組成物に添加して、生理学的等張性を近似することができる。そのような等張剤の量は、添加される特定の薬剤に応じて変化する。しかしながら、一般に、組成物は、最終組成物が眼科的に許容される重量オスモル濃度(一般に約150~450mOsm、好ましくは250~350mOsm、最も好ましくは約290mOsm)を有するのに十分な量の等張剤を有する。一般に、本発明の等張化剤は、2~4%(w/w)の範囲で存在する。本発明の好ましい等張化剤としては、単純糖又は糖アルコール、例えばD-マンニトールが挙げられる。
【0132】
適切な緩衝系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸)を組成物に添加して、貯蔵条件下でのpHドリフトを防ぐことができる。特定の濃度は、使用される薬剤に応じて変化する。しかしながら、好ましくは、緩衝液は、標的pHをpH5~8の範囲内に、より好ましくはpH5~7の標的pHに維持するように選択される。
【0133】
より高濃度の上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を送達するために、界面活性剤が任意に使用され得る。界面活性剤は、化合物を可溶化し、ミセル溶液、マイクロエマルジョン、エマルジョン及び懸濁液などのコロイド分散液を安定化するように機能する。任意に使用される界面活性剤の例としては、ポリソルベート、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオシル40、ポリオキシルヒマシ油、チロキサポール、トリトン及びソルビタンモノラウレートが挙げられる。本発明で使用される好ましい界面活性剤は、12.4~13.2の範囲の親水性/親油性/バランス「HLB」を有し、TritonX114及びチロキサポールなどの眼科使用に許容される。
【0134】
上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の眼科用組成物に添加され得るさらなる薬剤は、安定化ポリマーとして機能する解乳化剤である。安定化ポリマーは、眼局所使用を優先するイオン性/荷電性の例であるべきであり、より具体的には、物理的安定性のために(-)10~50mVのゼータ電位を示すことができ、水(すなわち、水溶性)中に分散液を作製することができる負電荷をその表面に有するポリマーであるべきである。本発明の好ましい安定化ポリマーは、0.1~0.5%w/wの、カルボマー及びペムレン(登録商標)、特にカルボマー974p(ポリアクリル酸)などの架橋ポリアクリレートのファミリーからの高分子電解質、又は複数の場合は複数の高分子電解質である。
【0135】
担体の粘度を高めるために、他の化合物を、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の眼科用組成物に添加してもよい。増粘剤の例としては、ヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩、デキストラン、セルロースファミリーの様々なポリマー、ビニルポリマー、及びアクリル酸ポリマーなどの多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
局所眼科用製品は、典型的には、複数回投与形態で包装される。したがって、防腐剤は、使用中の微生物汚染を防ぐために必要とされる。適切な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、臭化ベンゾドデシニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデンテート二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム-1、又は当業者に公知の他の薬剤が含まれる。このような防腐剤は、典型的には、0.001~1.0%w/vのレベルで使用される。上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の単位用量組成物は無菌であるが、典型的には保存されない。したがって、そのような組成物は、一般に、保存剤を含有しない。
【0137】
非経口製剤は一般に無菌である。
【0138】
医療従事者又は他の当業者は、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1の適切な投与量、したがって任意の特定の医薬製剤(単位剤形であるかどうかにかかわらず)に含まれるべき本発明の化合物の量を決定することができる。
【0139】
上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1は、呼吸器の疾患及び症状の治療又は予防に有用な1種以上の他の活性薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0140】
このタイプのさらなる活性薬剤は、上記の医薬組成物に含まれていてもよいが、代わりに、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1と同時に、又はより早い時間若しくはより遅い時間に、別々に投与されてもよい。
【0141】
したがって、本発明のさらなる態様では、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1と、TMEM16Aの調節によって影響を受ける疾患又は症状、特に呼吸器の疾患又は症状、例えば上記の疾患及び症状の1つの治療における同時、逐次又は個別の使用のための組み合わせ製剤として、呼吸器の症状の治療又は予防に有用なさらなる薬剤とを含む製品が提供される。
【0142】
TMEM16Aの調節によって影響を受ける疾患又は症状、特に呼吸器の疾患又は症状、例えば上記の疾患及び症状の1つの治療における同時、逐次又は個別の使用のための組み合わせ製剤として、呼吸器の症状の治療又は予防に有用なさらなる薬剤と組み合わせた、上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1が提供される。
【0143】
上記で定義される形態Aの多形又は形態Bの多形、特に形態B(I)の偽多形の形態の、又は非晶形の化合物1を含む、医薬組成物又は組み合わせ製剤に含まれ得る適切なさらなる活性薬剤には、以下が含まれる:
β2アドレナリン受容体アゴニスト、例えば、メタプロテレノール、イソプロテレノール、イソプレナリン、アルブテロール、サルブタモール、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、テルブタリン、オルシプレナリン、メシル酸ビトルテロール、ピルブテロール、オロダテロール、ビランテロール及びアベジテロール;
抗ヒスタミン薬、例えばロラタジン、セチリジン、デスロラタジン、レボセチリジン、フェキソフェナジン、アステミゾール、アゼラスチン及びクロルフェニラミンなどのヒスタミンH1受容体拮抗薬又はH4受容体拮抗薬;
ドルナーゼα;
プレドニゾン、プレドニゾロン、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン及びフロ酸フルチカゾンなどのコルチコステロイド;
モンテルカスト及びザフィルルカストなどのロイコトリエン拮抗薬;
抗コリン作動性化合物、特にイプラトロピウム、チオトロピウム、グリコピロレート、アクリジニウム及びウメクリジニウムなどのムスカリン拮抗薬;
【0144】
アイバカフトール、QBW251、バマカフトール(VX659)、エレキサカフトール(VX445)、VX561/CPT-656、VX152、VX440、GLP2737、GLP2222、GLP2451、PTI438、PTI801、PTI808、FDL-169及びFDL-176などのCFTR修復療法(例えば、CFTR増強剤、補正剤又はky剤)並びにルマカフトール及びテザカフトールなどのCFTR補正剤又はそれらの組み合わせ(例えば、アイバカフトール、テザカフトール及びエレキサカフトールの組み合わせ);
ENaCモジュレータ、特にENaC阻害剤;
抗生物質;
抗ウイルス剤、例えばリバビリン及びノイラミニダーゼ阻害剤、例えばザナミビル;
PUR1900などの抗真菌剤;
高張性生理食塩水及びマンニトール(Bronchitol(登録商標))等の気道用水和剤(浸透圧調節物質(osmoloytes));及び
粘液溶解剤、例えばN-アセチルシステイン。
【0145】
さらなる活性薬剤がENaCモジュレータである場合は、アミロライド、VX-371、AZD5634、QBW276、SPX-101、BI443651、BI265162及びETD001などのENaC阻害剤であり得る。他の適切なENaC遮断薬は、本発明者らの出願である国際公開第2017/221008号、国際公開第2018/096325号、国際公開第2019/077340号及び国際公開第2019/220147号に開示されており、これらの出願の例示化合物のいずれも一般式(I)の化合物と組み合わせて使用することができる。一般式(I)の化合物と組み合わせて使用するのに特に適した化合物としては、以下から選択されるカチオンを有する化合物が挙げられる:
2-[({3-アミノ-5H-ピロロ[2,3-b]ピラジン-2-イル}ホルムアミド)エチル]-6-(4-{ビス[(2S,3R,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル]アミノ}ピペリジン-1-カルボニル)-1,3-ジエチル-1H-1,3-ベンゾジアゾール-3-イウム;
2-[({3-アミノ-5H-ピロロ[2,3-b]ピラジン-2-イル}ホルムアミド)メチル]-6-{[2-(4-{ビス[(2S,3R,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル]アミノ}ピペリジン-1-イル)エチル]カルバモイル}-1,3-ジエチル-1H-1,3-ベンゾジアゾール-3-イウム;
2-[({3-アミノ-5H-ピロロ[2,3-b]ピラジン-2-イル}ホルムアミド)メチル]-5-[4-({ビス[(2S,3R,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル]アミノ}メチル)ピペリジン-1-カルボニル]-1,3-ジエチル-1H-1,3-ベンゾジアゾール-3-イウム;
2-[({3-アミノ-5H-ピロロ[2,3-b]ピラジン-2-イル}ホルムアミド)メチル]-6-[(3R)-3-{ビス[(2S,3R,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル]アミノ}ピロリジン-1-カルボニル]-1,3-ジエチル-1H-1,3-ベンゾジアゾール-3-イウム;
2-[({3-アミノ-5H-ピロロ[2,3-b]ピラジン-2-イル}ホルムアミド)メチル]-6-[(3S)-3-{ビス[(2S,3R,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル]アミノ}ピロリジン-1-カルボニル]-1,3-ジエチル-1H-1,3-ベンゾジアゾール-3-イウム;
2-[({3-アミノ-5H-ピロロ[2,3-b]ピラジン-2-イル}ホルムアミド)メチル]-1,3-ジエチル-6-{[(1r,4r)-4-{ビス[(2S,3R,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル]アミノ}シクロヘキシル]カルバモイル}-1H-1,3-ベンゾジアゾール-3-イウム;
2-[({3-アミノ-5H-ピロロ[2,3-b]ピラジン-2-イル}ホルムアミド)メチル]-1,3-ジエチル-6-{[(1s,4s)-4-{ビス[(2S,3R,4R,5R)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル]アミノ}シクロヘキシル]カルバモイル}-1H-1,3-ベンゾジアゾール-3-イウム;
【0146】
及び、適切なアニオン、例えば、ハロゲン化物、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、マンデル酸、メタンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸。
【0147】
次に、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0148】
器具及び一般条件
実施例1及び2について:
出発材料及び中間体並びに化合物1は、沈殿、濾過、結晶化、蒸発、蒸留及びクロマトグラフィなどの従来の技術を用いて単離及び精製することができる。特に明記しない限り、全ての出発材料は商業的供給業者から得られ、さらなる精製を行わずに使用される。塩は、既知の塩形成手順によって化合物から調製され得る。
【0149】
MS
質量スペクトルは、エレクトロスプレーイオン化を使用してLC-MSシステムで実行した。これらは、Waters PDA及びELS検出器を備えたWaters Acquity uPLCシステム又はShimadzu LCMS-2010EVシステムのいずれかを使用して実行した。[M+H]+は、モノ同位体分子量を指す。
【0150】
NMR
NMRスペクトルは、内部重水素ロックとして溶媒を使用して、Bruker Avance III HD 500MHz又はBruker Avance III HD 250MHzで記録した。特に明記しない限り、スペクトルは室温で記録し、溶媒ピークを用いて参照した。
HPLC
分析HPLC条件は以下の通りである:
方法A
カラム:Phenomenex Kinetix-XB C18 2.1x100mm,1.7μm
カラム温度 40℃
溶離液:A:H20 0.1%ギ酸、B:アセトニトリル、0.1%ギ酸
流量:0.6mL/分
勾配:0~5.3分 5~100%B、5.3~5.8分 100%B、5.8~5.82分 100~5%B、5.82~7.00分 5%B
方法E
カラム:Kinetex Core-Shell C18 2.1×50mm 5μm
カラム温度:40℃
溶離液:A:H20+0.1%ギ酸、B:アセトニトリル+0.1%ギ酸
流量:1.2mL/分
勾配:0~1.20分 5~100%B、1.20~1.30分 100%B、1.30~1.31分 100~5%B
方法F
カラム:Phenomenex Gemini-NX C18 2×50mm 3μm
カラム温度:40℃
溶離液:A:pH10に緩衝した2mM重炭酸アンモニウム、B:アセトニトリル
流量:1mL/分
勾配:0~1.80分 1~100%B、1.80~2.10分 100%B、2.10~2.30分 100~1%B
【0151】
実施例3~12について:
DSC
Mettler Toledo DSC 821機器を、STARe(商標)ソフトウェアで動作する熱分析に使用した。分析は、40μLの開放アルミニウムパン中、窒素下で行い、サンプルサイズは1~10mgの範囲であった。典型的な分析方法は、10℃/分で20~250であった。
【0152】
DVS
供給APIの水分収着特性をDVS(DVS Intrinsic,Surface Measurement System)によって分析した。約50mgのAPIをアルミニウムパンに秤量し、25℃で機器に充填した。試料を乾燥雰囲気(0%相対湿度)下で1時間平衡化させた後、湿度を5%段階増分で0%から30%に、及び10%段階増分で30%から90%に上昇させた。脱着サイクルも90%から30%(10%段階)及び30%から0%(5%段階)適用した。時間による変化率を平衡パラメータとして設定した(各段階1時間)。速度及び等温線のグラフを計算した。
【0153】
FT-IR
FT-IRスペクトルは、PerkinElmer Spectrum One FT-IR分光計を使用して取得した。試料は、周波数範囲4000~600cm-1でユニバーサルATRアタッチメントを使用して直接分析した。スペクトルは、Spectrum CFD(対4.0 PerkinElmer Instruments LLC)を使用して処理した。
【0154】
LC-MS
1260 Infinity II DAD HS及びAgilentシリーズ1260 Infinity IIバイナリポンプとインターフェースされたAgilent 1260 Infinity IIを使用して、日常的な液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)データを収集した。
【0155】
機器は、単一の四重極InfinityLab MSDを使用した。機器を2000Daまで較正した。
【0156】
1H NMR
1H NMRスペクトルは、Bruker 400MHz分光計を用いて取得し、データはTopSpin(商標)(Bruker)を用いて処理した。1H NMR w/wアッセイのために、試料をDMSO-D6中、10~20mg/mL及び最大50mg/mLの典型的な濃度で調製し、2.50ppmの対応する非重水素化溶媒残留物に較正した。
【0157】
1H NMR w/wアッセイ
1H NMR分光法によるAPIのアッセイ(w/w)をプロジェクト化学者が測定した。
【0158】
内部標準2,3,5,6-テラクロロニトロベンゼン(TCNB)、(約20mg、F.W.260.89)及びAPI(約20mg)をDMSO-D6(2.0ml)に溶解し、拡張緩和法を用いて1H NMRスペクトルを取得し、以下の式に従ってアッセイを測定した:
% w/w=[m(std.)/M.w.(std.)* ∫(std.)で割った∫(試料)* M.w.(試料)/m(試料))
【0159】
光学(偏光)顕微鏡法
デジタルキャプチャに使用した機器は、デジタルカメラアタッチメントを備えたOlympus BX41顕微鏡であった。倍率は100倍及び400倍であった。試料は、平面偏光及び交差偏光下で観察された。
【0160】
熱顕微鏡法
デジタルキャプチャに使用した機器は、デジタルカメラ及びLinkamホットステージ・アタッチメントを備えたOlympus BX41顕微鏡であった。倍率は100倍及び400倍であった。試料は、平面偏光及び交差偏光下で観察された。
【0161】
TG分析
熱重量分析を、TGAシグナルとDSCシグナルとを組み合わせる同時示差技術(SDT、Q600、TA機器)を使用して行った。約5mgの試料をセラミックパンに入れた。試料を窒素雰囲気下で、室温から600℃まで、10℃/分の速度で加熱した。TGAシグナル及びDSCシグナルを、TA Universal分析ソフトウェアを用いて分析した。
【0162】
XRPD分析
X線粉末回折(XRPD)分析は、LynxEye検出器を備えたBruker D2 Phaser粉末回折計を使用して行った。検体は最小限の調製を行ったが、必要に応じて、取得前に乳棒及び乳鉢で軽く粉砕した。検体を、5mmのポケット内のシリコンサンプルホルダの中心に配置した(約5~10mg)。
【0163】
データ収集中、試料は静止しており、4°~40°及び5°~60°の2シータの範囲の0.02°の2シータ(2θ)のステップサイズを使用してスキャンした。データは、3分又は20分の取得方法のいずれかを使用して取得した。Bruker Diffrac.Suiteを用いてデータを処理した。
【0164】
実施例13~17について:
DSC
Mettler Toledo DSC 3機器を、STARe(商標)ソフトウェアで動作する熱分析に使用した。分析は、40μLの開放アルミニウムパン中、窒素下で行い、サンプルサイズは1~10mgの範囲であった。典型的な分析方法は、10℃/分で20~250であった。
【0165】
DVS
これは、実施例3~12について上述したようにして行った。
【0166】
FT-IR
FT-IRスペクトルは、PerkinElmer Frontier FT-IR分光計を使用して取得した。試料は、中周波及び遠周波数範囲4000~30cm-1でユニバーサルATRアタッチメントを使用して直接分析した。スペクトルは、Spectrum IR(商標)ソフトウェア(PerkinElmer Instruments LLC)を使用して処理した。標準的なKBr窓は、中赤外(mid-IR)の用途に使用される。遠赤外(far-IR)での操作にはポリエチレン及びポリエチレン/ダイヤモンド窓が使用される。機器のさらなる能力には、反応の迅速な監視に使用されるZnSe窓を有する液体フローセルが含まれる。これは、時間分解測定を行うことを可能にするSpectrum(商標)TimeBaseソフトウェア(PerkinElmer)と連結する。
【0167】
LC-MS
これは、実施例3~12について上述したようにして行った。
【0168】
1H NMR
これは、実施例3~12について上述したようにして行った。
【0169】
1H NMR w/wアッセイ
これは、実施例3~12について上述したようにして行った。
【0170】
光学(偏光)顕微鏡法
これは、実施例3~12について上述したようにして行った。
【0171】
熱顕微鏡法
これは、実施例3~12について上述したようにして行った。
【0172】
TG分析
Mettler Toledo TGA 2装置を使用して、25~500℃の温度の関数として重量損失を測定した。走査速度は、典型的には5又は10℃/分であった。STARe(商標)ソフトウェアを使用して実験及び分析を行った。分析は、100μLの開放アルミニウムパン中、窒素下で行い、サンプルサイズは1~10mgの範囲であった。
【0173】
XRPD分析
X線粉末回折(XRPD)分析は、LynxEye検出器を備えたBruker D2 Phaser粉末回折計を使用して行った。検体は最小限の調製を行ったが、必要に応じて、取得前に乳棒及び乳鉢で軽く粉砕した。検体を、5mmのポケット内のシリコンサンプルホルダの中心に配置した(約5~10mg)。
【0174】
データ収集中、試料は静止しており、4°~40°の2シータの範囲の0.02°の2シータ(2θ)のステップサイズを使用してスキャンした。データは、3分又は20分の取得方法のいずれかを使用して取得した。Bruker Diffrac.Suiteを用いてデータを処理した。
【0175】
略語
br ブロード
d 二重項
dd 二重項の二重項
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DSC 示差走査熱量測定
EtOAc 酢酸エチル
h 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィ
IR 赤外分光法(FT-IRはフーリエ変換赤外分光法)
m 多重項
MeCN アセトニトリル
mg ミリグラム
min 分
mL ミリリットル
mol モル
MS 質量分析法
m/z 質量電荷比
N/A 該当なし
NMR 核磁気共鳴
Rt 保持時間
s 一重項
sat 飽和
t 三重項
TBTU N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)ウラニウムテトラフルオロボレート
TEA トリエチルアミン
TGA 熱重量分析
【0176】
実施例1-N-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド(化合物1)の調製-国際公開第2019/145726号の方法
工程1:4-アミノ-N-tert-ブチル-ピリジン-2-カルボキサミド
【0177】
DMF(100mL)中、4-アミノピリジン-2-カルボン酸(8.0g、57.92mmol)、TBTU(22.32g、69.5mmol)及びTEA(24.22mL、173.76mmol)の混合物に、2-メチルプロパン-2-アミン(1.69mL、69.5mmol)を添加した。得られた混合物を室温で22時間撹拌し、次いで、真空中で濃縮した。粗物質をDCM中3.5Mメタノール性アンモニアで溶出するシリカ上のクロマトグラフィによって精製し、生成物分画を合わせ、真空中で濃縮すると、標記化合物が淡黄色固体として得られた。
【0178】
1H NMR(500MHz、メタノール-d4)δ7.99(d,J=5.6Hz,1H)、7.23(d,J=2.2Hz,1H)、6.62(dd,J=5.6,2.4Hz,1H)、1.45(s,9H)。
LC-MS(方法F):Rt 1.47分;MS m/z 194.3=[M+H]+(215nmで100%)
工程2:N-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド
【0179】
塩化チオニル(8.13mL、92.21mmol)中の2-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)酢酸(2.26g、11.27mmol)の溶液を70℃で30分間加熱した。室温に冷却した後、過剰の塩化チオニルを真空中で除去し、トルエンと共沸させた。得られた残渣をDCM(5mL)に溶解し、DCM(25mL)中、4-アミノ-N-tert-ブチル-ピリジン-2-カルボキサミド(工程1)(2.0g、10.25mmol)及びDIPEA(2.15mL、12.29mmol)の溶液に添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで、水(50mL)で希釈し、DCMで抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗残渣を、ヘプタン中0~50%EtOAcで溶出するシリカ上のクロマトグラフィによって精製すると、標記化合物が淡橙色粉末として得られた。
【0180】
1H NMR(500MHz、クロロホルム-d)δ8.39(d,J=5.6Hz,1H)、8.20(dd,J=5.6,2.2Hz,1H)、8.10(br s、1H)、7.98(br s、1H)、7.56(d,J=2.1Hz,1H)、7.29-7.26(m、2H)、6.89(d,J=9.5Hz,1H)、3.94(s,3H)、3.70(s,2H)、1.47(s,9H)。
LC-MS(方法E):Rt 1.21分;MS m/z 376.1/378.1=[M+H]+(215nmで92%)
工程3:N-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド
【0181】
0℃のDCM(10mL)中、N-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-メトキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド(工程2)(2.7g、6.82mmol)の溶液に、DCM中の1M BBr3(27.3mL、27.3mmol)を滴下した。添加が完了したら、混合物を室温まで温め、1時間撹拌した。水(10mL)をゆっくり添加することによって反応をクエンチし、DCMを真空中で除去した。得られた残渣をEtOAcに溶解し、飽和NaHCO3溶液(50mL)及びブライン(50mL)で洗浄した。有機部分を分離し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗残渣を、ヘプタン中0~70%EtOAcで溶出するシリカ上のクロマトグラフィによって精製すると、橙色粉末として生成物が得られた。これを、0.1%ギ酸を含む0~100%MeCN水溶液で溶出する逆相クロマトグラフィによってさらに精製すると、生成物が無色粉末として得られた。生成物をMeCNから再結晶させて、表題化合物を得た。MeCN濾液に水を滴下し、続いて混合物を加熱及び冷却することによって、第2の収穫物を単離した。
【0182】
1H NMR(500MHz、DMSO-d6)δ10.69(br s、1H)、9.82(br s、1H)、8.44(d,J=5.5Hz,1H)、8.17(d,J=1.9Hz,1H)、8.03(s,1H)、7.82(dd,J=5.5,2.2Hz,1H)、7.22(d,J=2.7Hz,1H)、7.12(dd,J=8.6,2.7Hz,1H)、6.80(d,J=8.6Hz,1H)、3.67(s,2H)、1.40(s,9H)。
【0183】
LC-MS(方法A):Rt 3.28分;MS m/z 362.1/364.1=[M+H]+(215nmで99%)。
【0184】
XRPD分析(
図20参照)は、この方法によって調製された化合物1が結晶性であり、形態Aを含む少なくとも2つの異なる多形形態の混合物を示唆するいくつかの固有のピークに加えて、形態Aと一致するいくつかのピークを共有することを示した。DSCサーモグラム(
図19)は、特に112.5℃~130.4℃の発熱及び吸熱事象によって示されるように、材料が形態Aではない少なくとも1つの多形を含むことを示す。熱重量分析はまた、生成物が水和物又は他の溶媒和物ではないことを示す。
【0185】
実施例2-結晶多形の形態Aの調製
実施例1に記載の方法に従って、化合物1のバッチを調製した(14.6g)。材料をMeCN(200mL)に懸濁し、全ての固体が溶解するまで加熱還流することによって再結晶した。これに続いて、数時間又は一晩かけて室温まで徐冷した。得られた結晶性固体をフィルタにかけ、真空オーブン中で乾燥させて、N-tert-ブチル-4-[[2-(5-クロロ-2-ヒドロキシ-フェニル)アセチル]アミノ]ピリジン-2-カルボキサミド(化合物1)(12.9g、353mmol、収率33%)を無色結晶性固体として得た(多形A)。この材料のXRPDディフラクトグラム、DSCサーモグラム及びDVSプロットを
図1a、
図1b、
図2、
図3a及び
図3bに示す。
【0186】
実施例3-非晶質化合物1の調製
化合物1の形態A(1.50g、1.0重量)を酢酸エチル(30ml、20体積)に溶解した。溶液をPTFE膜を通してフィルタにかけ、40℃で減圧下で急速に蒸発させ、XRPD及び
1H NMRによって分析した。粗生成物を減圧下40℃で一晩乾燥させた。生成物をXRPDによって分析して(
図11及び
図12)、非晶質の生成物がオーブン乾燥後に再結晶化していないことを確認し、1H NMRによって溶媒含有量の減少を確認した。
【0187】
実施例4-20℃での非晶質相の無水懸濁液平衡化
非晶質化合物1(約50mg、1.0wt.)及び適切な溶媒(1000μl、20体積)を別々の容器に仕込み、20℃で7日間撹拌した。この時間の後、生成物を冷却し、濾過によって単離し、再生熟成溶媒で洗浄し、40℃で減圧下で乾燥させ、代替結晶形態の証拠についてXRPDによって分析した。結果を表3に示す。
【0188】
全ての生成物の化学的同一性を1H NMRにより化合物1として確認した。有意な化学分解は観察されなかった;したがって、観察された異なる回折パターンは、異なる化学物質の存在に起因するものではなかった。
【0189】
● 形態Aは、最も豊富に単離された形態であった。いくつかの他の回折パターンが観察され、その一部は無水であり、一部は溶媒和であった。
【0190】
● このスクリーニングでは、水が存在する場合に形態B(水和物)が生成された(
図5に示される形態BのDSCは、水和物からの水の損失に起因し得る90.90℃~114.65℃の吸熱を有する)。これに対する例外は、DCM/ヘプタンから単離された生成物であり、共溶媒としての水がないにもかかわらず形態Bが形成された。水和物形成は、水の浸入又は湿性ヘプタンの存在に起因し得る。溶媒は
1H NMRによって検出されず、XRPD(
図13参照)は等構造の形態B水和物と一致した(
図4参照)。DSC分析(
図14)は、形態BIと一致した(
図21a参照)。
【0191】
● 形態Cをトリフルオロトルエン及びトルエンから単離し、XRPDディフラクトグラムを
図6に示す。得られた生成物は両方とも非溶媒和であり、DSC分析は、融解事象及び形態Aへの結晶化及びその後の融解事象を示した。
【0192】
● 形態Dは、XRPDスペクトルが
図7に示されている等構造のエーテル性溶媒和物に対応した。両方とも、整数化学量論のすぐ下、すなわち、0.8*THF(
図15a)及び0.8*tBME(
図15b)を示した。
【0193】
● MEKから単離した形態Eを部分的に溶媒和した(0.4*MEK)。
図16は、対応するTG分析を示しており、明らかな重量減少転移は融解前事象ではなく、したがって、結合したMEKは、母体結晶の著しい再組織化が起こった後にのみ放出された(すなわち、融解後にMEK溶媒蒸気を遊離させ、化合物分解に関連する著しい重量損失を伴う)。XRPDディフラクトグラムを
図8に示す。
【0194】
● 形態Fをエタノールから単離し、
図9に示すXRPDディフラクトグラムを有していた。形態Eは無水形態であり、DSC分析は形態Aと同様の融解事象を示したが、回折パターンは異なっていた。形態Aと形態Fとの等モル混合物の競合的懸濁液平衡化は形態Aのみを生成し、形態Aが2つの形態のうちでより安定であることを示す。
【0195】
実施例5-40℃での非晶質相の無水懸濁平衡
非晶質化合物1の別個の部分(約50mg、1.0wt.)及び適切な溶媒(1000μl、20体積)を別々の容器に仕込み、40℃で7日間撹拌した。この時間の後、生成物を冷却し、濾過によって単離し、再生熟成溶媒で洗浄し、40℃で減圧下で乾燥させ、代替結晶形態の証拠についてXRPDによって分析した。結果を表4に示す。
【0196】
20℃で非晶形に対して行った懸濁平衡と同じパターンが出現した(実施例3)。
【0197】
● 形態Aは、主要な形態であった
● 形態B、又は形態Aと形態Bの混合物は、水が存在する場合に生成された。
● 形態Cは、トルエン及びトリフルオロトルエンから観察され、生成された。
● 形態D(等構造の溶媒和物)は、エーテル溶媒から観察された:THF及びtBME。
● 形態Hと命名された新たな無秩序な形態が観察された(
図10に示されるXRPD及び
図17に示されるDSCを参照)。形態Hは部分的に溶媒和され、約0.4*溶媒和物に等しい9.0%w/wのクメンを含有した。DSCにより、発熱事象が開始94℃で明らかであり、これはクメンの沸点(152℃)よりも有意に低かった。94℃での吸熱事象は、形態H溶媒和物から無水形態への推定転移温度であり、その後、結晶化に起因する発熱事象が続く。
【0198】
実施例6-20℃での非晶質相の水性懸濁液平衡化
非晶質の化合物1の別個の部分(約50mg、1.0wt.)、並びに適切な溶媒(950μl、19体積)及び精製水(50μl)を別個の容器に仕込み、20℃で7~10日間撹拌した。この時間の後、生成物を冷却し、濾過によって単離し、再生熟成溶媒で洗浄し、40℃で減圧下で乾燥させ、代替結晶形態の証拠についてXRPDによって分析した。結果を表5に示す。
【0199】
新しい形態は観察されなかった。形態Bは、観察された最も一般的な形態であった。
【0200】
実施例7-さらなる懸濁平衡
さらなる懸濁平衡実験を以下のように行った。
【0201】
A.20℃での形態Aの無水懸濁液平衡化
化合物1の形態A(約50mg、1.0wt.)及び適切な溶媒(1000μl、20体積)を別々の容器に仕込み、20℃で7日間撹拌した。この時間の後、生成物を冷却し、濾過によって単離し、再生熟成溶媒で洗浄し、40℃で減圧下で乾燥させ、代替結晶形態の証拠についてXRPDによって分析した。N.B.水及びアセトニトリル/水もこの試験に含めた。
● 水が存在しない限り、生成物は形態Aと一致し、水和物形態Bの形成を促進した。
● tBMEの存在下で形態Dが生成し、他のエーテルTHF及び2-MeTHFから、XRPD分析のために不十分な試料を回収した。
● したがって、形態Aは、無水条件下で、20℃での長期溶媒媒介処理に対して弾力性があった。
【0202】
B.40℃での形態Aの無水懸濁液平衡化
化合物1の形態Aの別個の部分(約50mg、1.0wt.)及び適切な溶媒(1000μl、20体積)を別々の容器に仕込み、40℃で7日間撹拌した。この時間の後、生成物を冷却し、濾過によって単離し、再生熟成溶媒で洗浄し、40℃で減圧下で乾燥させ、代替結晶形態の証拠についてXRPDによって分析した。N.B.水もこのスクリーニングに含めた。
● tBME(形態D)及びTHF(形態G;
図18を参照されたい)から単離された生成物を除いて、全ての生成物は形態Aに相当した。THFの存在下で通常遭遇する生成物は形態Dである。
● 実験を精製水中で行い、形態Aを予想外に生成し、形態Bは明らかではなかった。
【0203】
C.20℃での形態Aの水性懸濁液平衡化
化合物1の形態Aの別個の部分(約50mg、1.0wt.)、並びに適切な溶媒(950μl、19体積)及び精製水(50μl、1.0体積)を別個の容器に仕込み、20℃で7~10日間撹拌した。この時間の後、生成物を冷却し、濾過によって単離し、再生熟成溶媒で洗浄し、40℃で減圧下で乾燥させ、代替結晶形態の証拠についてXRPDによって分析した。
● 予想通り、水の存在は形態Aの形態Bへの変換を促進し、これらの条件下での相互変換速度は比較的遅かった。
● 精製水のみの存在下では、形態Bへの部分的な変換が観察された。この知見は、生成したばかりの形態Aの40℃で観察された結果と矛盾しており、溶媒媒介条件下で転移温度が存在し得ることを示唆している。
● 異常にも、形態Cは、アセトン、アニソール、エタノール及び2-プロパノールからも生成した。形態Cは無水形態であり、時に芳香族溶媒(トルエン及びトリフルオロトルエン)の存在下で生じる。形態Aの存在下でのこの形態の競合的懸濁液平衡化を後で使用して、どの形態が周囲の無水条件下で最も安定であるかを決定した。
【0204】
実施例8-臨界ミセル濃度(CMC)超及び未満での形態Aの水性界面活性剤平衡化
形態Aの試料を、粉砕ガス圧力5.0bar(18℃)及び注入ガス圧力6.0bar(18℃)で、ZD9スクリュー投入システムを備えたAS100スパイラルジェットミル(Alpine)を使用して微粒子化した。供給速度は350g/時間であった。
【0205】
D50及びD90値は、Beckman Coulter LS(商標)13 320粒径分析器を使用して、投入材料及び産出材料について測定した。
投入:D50 35.74μm、D90 77.74μm。
産出:D50 1.14μm、D90 2.44μm。
【0206】
形態A及び微粒子化形態Aを、表6に示す界面活性剤を含有する精製水に添加し、混合物を20℃で撹拌した。
【0207】
サブ試料(300~500μl)を適切な時点で取り出した。混合物を遠心分離し、清澄化された上清をデカントし、ペレットをオーブン乾燥させ(20℃、24時間)、XRPDによって分析した。変換率を、各形態からの選択された反射のピーク面積のおおよその変化率を測定することによって監視して、形態Aの消費(約7.1 2-θで強い反射を示した、
図1a参照)及び形態Bの形成(約11 2-θで強い反射を示した、
図4を参照)を計算した。形態Aの形態Bへの完全な変換に要した時間は、形態AがもはやXRPDによって検出できなくなったときに結論付けられた。結果を表8~表11に示す。
【0208】
定義:
ミセルは、液体コロイド中に分散した界面活性剤分子の集合体である。界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度(CMC)より高い場合にのみミセルが形成される。
Surf 1:TWEEN(登録商標)80(ポリソルベート80;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)臨界ミセル濃度(CMC)13~15mg/リットル[使用した実際の濃度=1mg/ml、1000mg/リットル>CMC]
Surf 2:TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート20;ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)20臨界ミセル濃度(CMC)約61mg/リットル[使用した実際の濃度=0.5mg/ml、500mg/リットル>CMC]
Surf 3:SPAN(登録商標)20(ソルビタンモノラウレート)水中でCMCがなく、疎水性すぎるが、それでもなお、形態変換に対して阻害効果を発揮した
Surf 4:TWEEN(登録商標)80臨界ミセル濃度(CMC)13~15mg/リットル[使用した実際の濃度=0.01mg/ml、10mg/リットル<CMC]
【0209】
TWEEN(登録商標)界面活性剤は水に可溶性であり、SPAN(登録商標)界面活性剤は油に可溶性であり、水中でミセルを形成することができない。SPAN(登録商標)は二相性であり、したがって、水性相と界面活性剤相との共存を示す。
【0210】
Surf 5:TWEEN(登録商標)80臨界ミセル濃度(CMC)13~15mg/リットル[使用した実際の濃度=0.1mg/ml、100mg/リットル>CMC]
Surf 6:TWEEN(登録商標)80臨界ミセル濃度(CMC)13~15mg/リットル[使用した実際の濃度=0.01mg/ml、10mg/リットル<CMC]。
【0211】
表8及び表9に示すように:
● 形態Bに対応する反射は、20℃で24後に精製水中で実施された対照実験でのみ検出可能であり、40℃で+96時間後に増加した。
● 形態Aから形態Bへの変換は、20℃で24時間にわたり、40℃で+96時間、3つの界面活性剤を含む実験では起こらなかった。したがって、形態Aの水性製剤中のTween(登録商標)80、5ml(1mg/mlで10体積)の使用は、形態Aの形態Bへの変換を促進するようには見えず、代わりに反対の効果を発揮するように見える。
● さらなる実験を、Tween(登録商標)80水溶液(0.01mg/ml、<CMC)(Surf 4)を使用して行った。形態Aの形態Bへの変換は、これらの条件下で、20℃で24後又は40℃で+96時間後に行われなかった。
【0212】
したがって、界面活性剤(TWEEN(登録商標)80)の存在は、サブCMC濃度で存在する場合でさえ、形態Aから形態Bへの形態変換速度に対して阻害効果を発揮したと思われる。したがって、予め作製された組成物中の形態Aの貯蔵は、20~40℃の貯蔵条件下で120時間安定でなければならない。
【0213】
表10及び表11に示すように:
● 形態Bに対応する反射は、全ての実験において20℃で72時間後に検出可能であり(>CMC、<CMC、精製水)、20℃で146時間後に増加した。
● 形態Aから形態Bへの変換は、界面活性剤を含む実験において20℃で24時間にわたって行われなかった。しかし、微粒子化された形態A(粒径2μm)は、調査した条件下で、48時間後に形態Bに変換し始め、146時間後に形態Bにほぼ完全に変換した。
● したがって、微粒子化された形態Aは、形態変化しやすく、形態変化は、20℃で146時間後に界面活性剤の有無にかかわらず完了に進む。
【0214】
実施例9-競合的懸濁液平衡化
形態Aの化合物1及び適切な他の形態(単数又は複数)の化合物1をアセトニトリル(20体積)に懸濁した。白色懸濁液を40℃で7日間撹拌した。完了したら、生成物を単離し、オーブン乾燥させ、XRPDによって分析した。結果を表11に示す。
【0215】
表11に提示された結果は、以下のことを示している。
● 無水条件下、40oCで撹拌すると、形態A及び適切な形態(単数又は複数)が形態Aに変換された。
● 無水条件下で、形態Aと形態B(水和物)の混合物は、形態Aに変換された。
● 全ての形態の複合を40℃で撹拌し、形態Aに変換された。
● 無水条件下、20℃及び40℃で撹拌した場合、複合の形態A+Fは両方とも、真の形態Aと一致する形態に変換された。
● 等モル量の形態F及び形態Aを無水アセトニトリル中で競合的に懸濁液平衡化して、2つの起源物質の運命を決定した。単離された生成物は、真の形態Aと一致しており、これらの条件下での形態Fの形態Aへの変換を確認するのに役立つ形態Fのトレースは回折パターンにおいて明らかではなかった。
【0216】
したがって、製造条件下では、形態A以外の化合物1の形態は、形態Aに対して準安定であるはずであり、必然的に単相Aに変換されるはずである。
【0217】
実施例10-拡散による形態Aの結晶化
適切な低揮発性溶媒中で化合物1の形態A(約50mg、1.0重量)の溶液を調製し、2μmのPTFE膜を通して清澄化した。次いで、飽和溶液を別々の容器に移し、各容器をより大きな容器内に配置した。揮発性沈殿剤溶媒をより大きな容器に添加して、より小さな容器の外側の周りに堀を形成し、次いで、大きな容器に蓋をした。容器の設定を18~23℃で数日間静置した。その間、揮発性溶媒は、溶媒堀が枯渇し、溶液の溶媒組成がET003861の結晶化を促進するのに十分に飽和するまで、より小さな容器へ拡散した。単離した生成物を濾過によって回収し、減圧下40℃で約20時間オーブン乾燥させた。
【0218】
以下の組み合わせ:
エタノール(低揮発性)及びジクロロメタン(高揮発性);
エタノール(低揮発性)及びtert-ブチルメチルエーテル(高揮発性);
は、結晶の形成をもたらさなかった。
【0219】
エタノール(低揮発性)とペンタン(高揮発性)との組み合わせを使用して、8日後、バイアル壁上の単一の点から針状物が成長した。固体を遠心分離によって単離し、母液をデカントし、生成物を40℃で一晩乾燥させた。試料を1H NMR分光法及びXRPDによって分析し、化合物1の形態Aの結晶多形であることが示された。
【0220】
実施例11-加熱冷却による結晶化
19部の非晶質化合物1(約70mg、1.0重量)を仕込み、シンチレーションバイアルを分離した。関連溶媒(表12の溶媒A)のアリコートを、完全に溶解するまで各バイアルに温度(約70℃)で仕込んだ。溶液を冷却し、周囲温度未満で静置して結晶化を促進した。生成物を濾過によって単離し、再生熟成溶媒で洗浄し、40℃で減圧下で乾燥させ、結晶化の証拠について平板XRPDによって分析した。結果を表10に示す。
【0221】
新しい結晶形態は同定されなかった。
【0222】
形態Aはこのスクリーニングからの主要な形態であり、スクリーニングは形態Aを生成する代替の結晶化条件を提供する。
【0223】
したがって、代替的な溶媒条件又は加熱/冷却結晶化研究の将来の開発は、約5体積のエタノール及び約11体積の酢酸メチルを含むべきである。現在好ましい結晶化溶媒は酢酸エチルである(実施例12参照)。
【0224】
実施例12-酢酸エチルからの形態Aの結晶化
プロセスを以下に示す。
1.化合物1(1.00重量、1.0当量)を容器に入れる。(この工程での総体積1.0)
2.酢酸エチル(20体積、18重量)を容器に入れる。(この工程での総体積
3.混合物を55~65℃、適切には60℃に加熱する。
4.混合物を55~65℃、好ましくは60℃で少なくとも10分間撹拌して濁った溶液を得る。
5.混合物を45~50℃、好ましくは47℃に、30分~1時間かけて冷却する。温度になった時点で、遅延なく工程6に進む。
6.混合物を45~50℃で1μmフィルタを通して清澄化する。
7.酢酸エチル(2体積、1.8重量)でラインのすすぎを行う(この工程での総体積23.0であるが、酢酸エチルの体積は、次に留去されるため、必要に応じて増加させることができる)。
8.真空下、40~50℃、好ましくは45℃で約10体積まで蒸留する。この体積に達すると沈殿が観察され得る。(この工程後の総体積は約10.0である)
9.35~40℃、好ましくは37℃まで、30~60分間かけて冷却する。最大2時間熟成させ、結晶化が観察されたら、工程10に進む。
10.スラリーを35~40℃で1~2時間熟成する。
11.(任意)反応混合物をサンプリングし、生成された結晶形態が形態Aであることを確実にするために、XRPDによる分析のためにフィルタにかける。
12.容器の内容物を、23℃を目標として、一定速度で2~3時間かけて20~25℃に冷却する。
13.混合物を、23℃を目標として20~25℃で、5時間を目標として4~6時間、熟成する。
14.清澄化n-ヘプタン(5体積、3.4重量)を、23℃を目標とし、1.5時間を目標として、20~25℃で1~2時間にわたって仕込む。
15.混合物を、23℃を目標として20~25℃で、30分~60分間、熟成する。
16.容器の内容物を、1.5時間を目標として1~2時間にわたって、一定速度で、2.5℃を目標として0~5℃に冷却する。
17.混合物を、2.5℃を目標として0~5℃で、3時間を目標として2~4時間、熟成する。
18.20μmの布を用いて反応混合物をフィルタにかける。材料がフィルタを通過する場合は、液体を再循環させることができる。濾過ケークの体積:2体積
19.濾過ケークを清澄化酢酸エチル(1.3体積、1.17重量)と清澄化n-ヘプタン(0.7体積、0.48重量)の混合物で0~5℃で洗浄する。
20.濾過ケークを20~25℃で乾燥させ、必要に応じて温度を40℃まで上げることができる。13、14は、加熱せずに容易にフィルタ上で乾燥させることができる。
21.溶媒含有量を決定し、酢酸エチル含有量が≦0.3%w/wであり、n-ヘプタン含有量が≦0.3%w/wである場合、工程22に進む。溶媒のいずれかが指定値を超える場合、乾燥を継続し、少なくとも4時間後に再サンプリングする。
22.生成物を排出する。
【0225】
実施例13-形態Bのさらなる特性評価
化合物1の形態B水和物多形の2つの別個のバッチをXRPD、DSC、TGA、FT-IR及びSEMによって分析した。バッチは、DSC及びTGAによって異なる脱水活性を示した(
図21及び
図22参照)。第1のバッチは単峰性脱水事象を示し、形態B(I)と命名され、第2のバッチは二峰性脱水を特色とし、形態B(II)と命名された。XRPDスペクトルを
図23a及び
図23bに示すが、これらの2つの形態は等構造であり、XRPDによって区別することができないことが分かる。角度、d値及び強度を上記の表2に示す。
【0226】
二つのバッチの脱水挙動間の不一致がそれらの水占有率の異なる位置及び結合に起因すると仮定して、それらの脱水特性が等しい圧力処理の適用後に保存又は変更されたかどうかを決定するために、10トンの圧縮後に両方を試験した。
【0227】
脱水特性の保存は、圧縮後に格子の残りの部分で利用可能な空間が少ないことを意味するが、DSCによる脱水特性の基本的なトポグラフィへの変化は、高い圧縮力の適用による隣接する結晶子の破砕を示す可能性があり、これらのより小さい結晶は、おそらく格子残部の空間を占めることができる。
【0228】
i.形態B(I)及び形態B(II)の圧縮
形態B(II)の微細に分けられた検体を、圧縮セル装置の内側に位置する下側試料アンビルの平滑な表面に均一に塗布した。第2の平滑面アンビルを第1のアンビルの上方に配置し、指の圧力を用いて試料を所定の位置に押し込んだ。次いで、密閉された試料セルを、ハウス真空圧力下で少なくとも5分間排気した。上部アンビルに約10メートルトンの軸方向荷重を加え、検体を片側圧縮状態で少なくとも15分間維持した。その後、装置を解体し、生成物を試料ホルダから取り出し、相の変更が行われたかどうかを判定するために分析した。
【0229】
圧縮後のFT-IRによって有意な変化は観察されず、3000から3600cm-1の間のシグナルの増幅のみが観察された。
【0230】
圧縮後、DSCプロフィールは、2つの重複する二峰性事象の代わりに単一の広範な脱水事象を示した。さらに、圧縮処理後に脱水温度の上昇が観察された(
図21b及び
図24に示すように、開始値は75.2℃から87.1℃に増加した。より高い脱水温度(107.2℃の開始値)もまた、形態B(I)のDSCプロフィールにおいて特定された-
図21aを参照のこと。さらに、圧縮された材料はより無秩序であり、結晶化度の低下を示し、XRPDにより、圧縮後の結晶化度は、以下の式を使用して近似的なガウシアンピーク面積を計算することにより、87.2%から80.3%に低下した。
【0231】
ピーク反射の強度の低下及び広がりは、結晶子サイズの減少に起因し得る。これらの観察について考えられる説明は、水の占有率の変化であり得る。水は圧縮前、より易動性である。圧縮処理後、形態B(II)は、XRPD又はFT-IRによって有意差を示さなかったが、DSCによって識別可能であった。したがって、2つの形態は、それらの構成水分子の配向及び位置がわずかに異なるだけの等構造の偽多形によって関連すると考えられる。圧縮後の脱水温度の上昇により、形態B(II)は、それほど安定でない水和物形態であり、圧縮されると、より安定な水和物形態である形態B(I)に向かって駆動されると仮定することができる。形態B(I)は、同処理後に変化しなかった。
【0232】
さらに、形態B(II)に存在するローブIの脱水は、形態B(I)の脱水ローブ(I)よりも低い開始温度で起こり、生成バッチからの形態B(II)が安定性の低い水和物形態であり、高い圧縮力が加えられた場合に、より安定な水和物形態B(I)に向かって駆動されることを示している。
【0233】
ii.形態B(I)及び形態B(II)の熱サイクリング
化合物1の形態A、形態B(I)及び形態B(II)の試料を別個のCrystal 16の空のガラスバイアルに仕込み、精製水(1ml、10.0体積)を各バイアルに添加した。各バイアルに、±0.5℃/分のランプ速度で-10~+10℃まで75時間かけて熱サイクリングを行った。
【0234】
対照の微粒子化形態Aは、一定の振幅サイクル-10~+10~-10℃などで±0.5℃/分の速度で熱サイクリングした後、XRPD又はDSCによって変化せず、形態Aがこの温度範囲に対して安定であることを示した。
【0235】
単峰性形態B(I)のバッチもまた、XRPD及びDSCによって変化せず、形態Bの単峰性がこの温度範囲に対して安定であることを同様に示した。
【0236】
二峰性形態B(II)は、75時間の熱サイクリング後にXRPDによって検出される形態Aを有していなかった。これは、バッチ中に存在する低レベルの形態A(約1.1%w/w)が、-10~+10~-10℃などの一定の振幅サイクルで熱サイクリングに供した場合に増加せず、形態Bに戻った可能性があることを示唆している(測定されたレベルは小さかった)。さらに、DSCによって変化が観察され、二峰性事象が形態B(I)で観察される単峰性事象にほとんど全て変換されたことを示している。これは、単峰性形態B(I)が、低温条件下で2つの形態Bの状態のより安定であり、したがって、単峰性形態Bが熱力学的に有利であることを示唆している。
【0237】
iii.アセトニトリル/水における形態B(II)の懸濁液平衡化
形態B(I)及び形態B(II)の安定性階層をさらに調べるために、形態B(I)及び形態B(II)の両方の等量を4対1のMeCN/水(w/w)で3日間競合的にスラリー熟成させた。得られた固体は、DSCによって形態B(I)であることが確認され、これは形態Bの単峰性が、2つのうちでより安定であることを示している。
【0238】
形態B(II)の一部分(1.06g)を、4対1v/vのアセトニトリル/水(15体積、15ml)とともに仕込んだ。これを窒素流と共に室温で撹拌した。混合物をt=4時間及びt=23時間でサブサンプリングした。サブ試料を遠心分離し(13400rpmで15分間)、上清を除去し、減圧下、40℃のオーブンで一晩乾燥させた。
【0239】
形態B(II)を4対1v/vのアセトニトリル/水中で撹拌すると、t=4時間及びt=23時間の時点で形態B(I)が生成された。これはDSC(
図25参照)及びXRPDによって確認され、形態Bの単峰性が2つの形態のうちでより安定であることを示している。DSCスペクトルは、117.12℃の開始で異常な事象を含んでいた。これは、狭い温度範囲にわたる過熱水の衝撃放出に起因し、多形に関連するのではなく、試料の不均一性又はDSCるつぼ内の熱接触に関連すると考えられた。
【0240】
形態Bの研究の一部として、多形スクリーニングに由来する種々雑多なサンプルを再試験した。試料を最初に異なる起源溶媒及び条件から単離し、それらの形態をXRPD及びDSCによって分析して、形態B(II)が存在するかどうかを決定した。単峰性の形態Bの脱水事象のみがDSCによって観察された。
【0241】
iv.精製水中での形態B(II)の懸濁液平衡化
この実験は、形態B(II)が20時間にわたって精製水中で撹拌しながら形態B(I)に変換されるかどうかを調べるために行った。
【0242】
形態B(II)の一部分(1.0g)を精製水(15体積、15ml)とともに仕込んだ。これを窒素流と共に室温で20時間撹拌した。混合物をt=2時間及びt=20時間でサブサンプリングした。サブサンプリングした混合物を遠心分離(13400rpmで15分間)し、上清を除去した。残りの固体を減圧下40℃のオーブン中で一晩(t=3日間)乾燥させた。乾燥した白色固体(A0903-184-C1、0.84g、収率83%、補正なし)。サブ試料及び最終白色固体をXRPD及びDSCによって分析し、サブ試料の結果を
図26a、
図26b、
図26c及び
図26dに示す。3日目の試料の結果は、20時間後に採取したサブ試料と同じであるため、示していない。
【0243】
形態B(II)の精製水への2時間の懸濁後、形態AはXRPDによって検出されず(
図26b)、単峰性事象のみがDSCによって観察された(
図26a)。
【0244】
20時間及び3日後、同じことが観察されたが、DSCによって2つの発熱事象が観察された(20時間後のDSCについては
図26cを参照)。これについて検討する。
【0245】
要約すると、化合物1の形態Bの水和物多形は、2つの偽多形形態、形態B(I)及び形態B(II)をとることができる。上記の実験の結果は、単峰性の形態B(I)が2つの形態のうちより熱力学的に安定であることを示している。
【0246】
実施例14-化合物1の形態A(無水)から形態B(一水和物)への変換
化合物1の形態Aを4:1アセトニトリル:水から再結晶して、一水和物の形態Bを得た。単峰性の形態Bが生成された(225.0gcorr、収率85.7%)。手順中、二峰性の形態Bは生成されなかった。生成物は、必要に応じて、例えばエアジェットミルを用いて微粒子化されてもよい。
【0247】
生成物が形態A又は形態B(II)を含有する場合、純粋な形態B1は、生成物を精製水(約20体積)中、約20℃で一晩撹拌することによって得ることができる。
【0248】
化合物1(250.06g)をフラスコに仕込んだ。4:1アセトニトリル:水(10V、2.5L)を、ガラス繊維フィルタを通してフィルタにかけ、次いでフラスコに仕込んだ。白色スラリーを1時間にわたって加熱還流し(内部77℃)、約55℃の内部温度で溶解が起こった。スラリーをさらに15分間還流して、確実に完全に溶解させた。次いで、溶液を一晩撹拌しながら(111rpm)、15~25℃まで徐々に冷却した。一晩撹拌した後、沈降が遅い微細な白色沈殿が観察された。DSC及びXRPD分析により、単峰性の形態Bが形成されたことが確認された。白色スラリーを0~5℃に冷却し、2時間熟成した。スラリーを真空下でフィルタにかけ、フィルタ上で窒素下、72時間乾燥させて、生成物を得た(225.0gcorr、収率85.7%)。乾燥前後のDSC及びXRPDは、生成物が単峰性の形態Bのままであることを示した。KF分析による含水量は4.89%w/w(一水和物の形態Bとして予想される4.74%w/w)であった。H NMR分析は、0.02%w/wの残留アセトニトリルを示した。
【0249】
結晶化からの生成物の試料を、AS100スパイラルジェットミル(Alpine)を使用して、2.5バール(18℃)の粉砕ガス圧力及び3.5バール(18℃)の注入ガス圧力で微粒子化した。d90<5μm。225gの投入は、207gの材料を戻し、92%の回収率であった。
【0250】
D50及びD90値は、Beckman Coulter LS(商標)13 320粒径分析器を使用して、産出材料について測定した。
産出:D50 1.65μm、D90 3.82μm。
【0251】
HPLCによる化学純度分析を、微粒子化の前後に行った。純度の損失は観察されなかった。微粒子化前後の主な違いは、含水量の4.8から4.1%w/wへの減少であった。
【0252】
化合物1の形態Bはチャネル水和物であり、微粒子化プロセスは結晶のサイズを小さくし、その結果、結晶が水を保持する能力が低下する。生成した固体は形態Bと等構造であり、これはXRPD(
図31)及びDSC(
図32)分析によって確認される。XRPD分析では形態Aは検出されず、非晶質の特徴はない。
【0253】
実施例15-水性懸濁液中での形態Aから形態B(I)への変換
水性懸濁液中では、微粒子化された形態Aは、低温で放置すると形態Bに変換されることが観察された。観察された相転移は、周囲温度未満で起こったので、このプロセスは、形態Aの表面上への水分子の吸着が先行する発熱性である可能性が高いことを意味する。さらに、形態Bの形態Aへの結晶化のエンタルピーは少なくとも部分的に発熱性であり、これは形態BのDSC分析によって裏付けられる(
図21aを参照)。
【0254】
形態Aの形態Bへの結晶化は、低温(熱力学的)の適用によって誘発されるはずであり、一旦開始されると、ターンオーバー速度は、少なくとも短期的には熱(動力学的)の適用によって促進されるはずであることが提案された。対照的な溶解度の2つの多形の生成物も影響を及ぼし得る。さらに、本発明者は、水性条件下での形態Aから形態Bへの速度決定工程が、形態A→形態B(無水物)+水→形態Bを経由して進行するのではなく、水に関して二分子性(形態A+水→形態B)である可能性が高いと推測した。したがって、形態Bへの転換は、一次速度論的同位体効果のために、D2Oの存在下でより低い水和速度論を示すはずである(Thomas and Jennings;Chem.Mater.1999,11,1907-1914)。
【0255】
手順
微粒子化された形態Aの4つの別個の試料(4×100mg、粒径0.6μm<80%<2.5μm、SEMによる支持)を、4つの別個のCrystal 16の空のガラスバイアルに仕込み、精製水(1ml、10.0体積)を4つのバイアルのうちの3つを添加し、重水(1ml、D2O、NMR溶媒、高同位体純度)を4番目に添加した。
【0256】
水中で組み立てられたバイアルの一方に20~40℃の熱サイクリングを行い、残りの3本に-10~+10℃の熱サイクリングを40時間にわたって行った。そのうちの1つに形態Bを10%w/wで播種した(表13参照)。
【0257】
実験A1では、40時間後、熱サイクルT1の水性条件下で形態Bは検出されなかった。
【0258】
実験B1では、形態Bは、水性条件下及び熱サイクルT2で、40時間後に検出され、形態Aの表面上への水吸着が発熱性であるという仮説、すなわち冷却によって熱力学的に好適であり、その後の形態Bへの結晶化も発熱性であると推定されるという仮説を裏付けている。
【0259】
実験C1では、形態Bは、水性条件(D2O)及び熱サイクルT2で、40時間後に検出されず、形態Aの表面上への水吸着が、拡散制御下で制約され、より重い同位体の異なる水素結合強度によって影響を受ける水和の速度決定工程である可能性が高いという推測を裏付けており、形態B水和物の形成は二分子性であり、したがって単分子(すなわち、形態Aが形態Bの無水物に再組織化し、吸収剤が水分子を瞬時に吸収して形態Bを生成する)ではなく2種(すなわち、形態A+水)を含み、水和の速度は、形態Aの濃度を倍増させるか、又は形態Aの有効アクセス可能表面積を増加させることによって倍増することを暗示している。
【0260】
媒体に形態Bを播種した実験D1では、予想通り、実験B1よりも迅速に形態Aが形態Bに変換された。
この実験から以下の結論を引き出すことができた:
● より低い温度は、形態Aの形態Bへの変換に有利である;
● 水和の順序は二分子性である;したがって、形態Aのより高い濃度は、形態Aの形態Bへの変換に有利であるはずである。
● 上記に暗示されるように、形態Aのより大きな表面積は、形態Bへの変換に有利であるはずである。
● 水和形態は、通常、それらの無水対応物よりも水性媒体に難溶性であるので、固有の溶解度の生成物は、平衡に順方向の効果を及ぼし得て、すなわち、形態A溶質を促進して形態Bとして溶液から結晶化させ得る。
【0261】
実施例16-無水アセトニトリル中の形態Bの懸濁液平衡化
形態B(II)の一部分(1.01g)を無水アセトニトリル(15体積、15ml)とともに仕込んだ。これを窒素流と共に室温で撹拌した。混合物IPCをt=3時間及びt=23時間でサブサンプリングした。サブサンプリングした混合物を遠心分離し(13400rpmで15分間)、上清を除去し、減圧下、40℃のオーブンで一晩乾燥させた。残りの固体を減圧下40℃のオーブン中で一晩(t=2日間)乾燥させた。乾燥した白色固体(0.54g、収率54%、補正なし)をXRPD及びDSCによって分析した。t=3時間のサブ試料のXRPDプロットを
図27に示す。無水条件では、形態B(II)は迅速に形態Aに変換されることが分かる。DSCプロットは、この知見と一致していた。23時間後及び3日後のXRPD及びDSCプロットは、
図27に示す3時間プロットと実質的に同じであった。
【0262】
形態B(I)の一部(1.06g)について同様の手順を行った。この場合、混合物をt=5時間でサブサンプリングし、単離をt=5日で行った。未補正収率は66%であった。
【0263】
形態B(II)と同様に、形態B(I)もまた、これらの条件下で迅速に形態Aに変換された。これは、t=5時間で採取したサブ試料のXRPDプロットである
図28から分かる。DSCプロットはこの結果と一致し、5日後のXRPD及びDSCプロットは類似していた。
【0264】
この実験により、無水条件下で、形態Aが、化合物1の熱力学的に安定な形態であることが確認される。
【0265】
実施例17-形態B(I)のさらなる熱サイクリング
形態B(I)を滅菌条件下で関連する製剤中で調製した。サンプルを約202回の完全なサイクルについて熱サイクルした。懸濁液のオフライン分析を偏光顕微鏡法によって行い、エンドポイントのサンプリングを遠心分離後の懸濁液の単離された固体ペレットに対して行った。熱サイクリングは、広い温度範囲(-10℃~+40℃)を組み込んだ。対照として微粒子化形態Aを使用して、並行研究を行った。
【0266】
行った実験を表14に示す。全ての場合において、懸濁液体積は2mlであり、熱サイクリングは、-10℃~+40℃の温度範囲にわたって1℃/分の変化速度で336時間(14日間)及び2020サイクルの持続時間にわたって実施した。
【0267】
以下の表において、界面活性剤TWEEN(登録商標)80、TWEEN(登録商標)20及びSPAN(登録商標)20は、実施例8に記載の通りである。
【0268】
毎日の間隔で、各熱サイクル懸濁液から液滴を取り出し、顕微鏡スライド上に置き、写真撮影した。14日間の定熱サイクリング後、懸濁液をフィルタにかけ、単離可能な固体をオーブン乾燥させ、形態変化及び化学純度の変化の証拠について分析した。
【0269】
形態B(I)は、XRPD、DSC及びTGAプロットによって示されるように、14日間にわたって一定の熱サイクリング処理に対して安定であり、これらは
図23a、
図21a及び
図22aのものと同一であり、偏光顕微鏡法によって変化は検出されなかった。形態A懸濁液は、8日の時点で形態学的変化を示し始め(偏光顕微鏡法によって観察された)、14日の時点で完全に変化していた。単離された材料の分析により、形態Aが形態B(I)に変化したことが確認された。14日間の熱サイクリング後の実験E(クエン酸緩衝Tween(登録商標)80中の形態A)及び実験F(クエン酸緩衝Tween(登録商標)20/Span(登録商標)20中の形態A)からの材料のXRPDスペクトルを
図29及び
図30に示し、形態Bのみが存在したことを確認する。同様に、DSC及びTGAプロットは、材料の形態B(I)への実質的に完全な変換を確認した。形態変化に伴う化学純度の低下はなかった。
【0270】
実施例18-形態B(I)の単結晶の特性評価
形態B(I)の化合物1の小試料をパーフルオロエーテル油に懸濁した。0.110×0.040×0.022mm3のサイズの無色の板状結晶を選択し、ペルフルオロエーテル油を含むMiTeGen(商標)ホルダに取り付け、次いで、VariMax(商標)共焦点ミラー及びAFC11ゴニオメータ及びHyPix 6000(商標)検出器を備えたRigaku AFC11 007-HF(商標)回折計に整列させた。データ収集中、結晶を一定のT=100(2)Kに保った。構造は、固有フェージング解法を使用するShelXT(商標)(Sheldrick,2015)構造解法プログラムを用いて、及びグラフィカルインターフェースとしてOlex2(商標)(Dolomanovら、2009)を使用することによって解明された。最小二乗最小化を使用して、ShelXT(商標)(Sheldrick、2015)のバージョン2018/3でモデルを改良した。
【0271】
結晶データは以下の通りであった:
C18H22ClN3O4,Mr=379.83、斜方晶系、Pna21(No.33),a=32.1319(3)Å,b=5.56259(5)Å,c=10.24568(9)Å,α=β=γ=90°,V=1831.28(3)Å3,T=100(2)K,Z=4,Z’=1,μ(CuKα)=2.099mm-1,30062の反射が測定され、3324は固有であり(Rint=0.0389)、これらを全ての計算で使用した。最終的なwR2は0.0635(全てのデータ)であり、R1は0.0238(I>2(I))であった。
【0272】
X線回折により、形態B(I)水和物では、水分子が化合物1の3つの分子に水素結合していることがさらに決定された。これを
図33に示す。