(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ジエンを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 1/24 20060101AFI20250130BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20250130BHJP
C12P 7/18 20060101ALN20250130BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
C07C1/24
C07C11/167
C12P7/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022529934
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 IB2020062177
(87)【国際公開番号】W WO2021124242
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】102019000025000
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508128303
【氏名又は名称】ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】タリサ セラソリ
(72)【発明者】
【氏名】ステーファノ ラメロ
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ヴィットーリア パストリ
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197458(JP,A)
【文献】特開2016-094402(JP,A)
【文献】特開2017-197459(JP,A)
【文献】特表2018-513111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/24
C07C 11/167
C12P 7/18
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエ
ンを製造するためのプロセスであって、
シリカ(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3
)をベースとする少なくとも1つの酸触媒を含む少なくとも1つの触媒材料の存在下で少なくとも1つのアルケノールを脱水することを含み、
当該触媒のアルミナ含有量(Al
2O
3)が、当該触媒総重量に対して12重量%以
下であり(当該アルミナ含有量は、結合剤を含まない当該触媒総重量を指す)、細孔モード径が
100nm~120nmである、プロセス。
【請求項2】
前記アルケノールが、3-ブテン-2-オール(メチルビニルカルビノール)、3-ブテン-1-オール(アリルカルビノール)、2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)又はこれらの混合
物から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アルケノールが、生合成プロセスから直接得られる、又は少なくとも1つのジオー
ルの接触脱水プロセスによって得られる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アルケノールが、少なくとも1つのジオー
ルの接触脱水に由来する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ジオールが、バイオマ
スに由来する糖の発酵に由来するバイオ-1,3-ブタンジオールであ
る、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれか一項に記載のプロセスであって、シリカ(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)をベースとする前記酸触媒が初期湿潤含浸によって得られ、アルミニウムアルコキシ
ド、可溶性アルミニウム
塩、アルミン酸
塩から選択される少なくとも1つのアルミナ前駆体を適切な濃度で含む溶液の容量が、固体支持
体の細孔容積に相当するか、又はそれよりわずかに小さい、プロセス。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセスであって、シリカ(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒を含む前記触媒材料が、
アルミナ(Al
2O
3)の水溶液もしくは水性懸濁液又はアルミニウムアルコキシ
ド、可溶性アルミニウム
塩、アルミン酸
塩から選択される少なくとも1つのその前駆体の水溶液もしくは水性懸濁液を調製することと、
アルミナ(Al
2O
3)の前記水溶液もしくは前記水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液もしくは前記水性懸濁液に、シリカ(SiO
2)の水溶液もしくは水性懸濁液又はケイ
酸、ケイ酸アルカリ金属
塩から選択される少なくとも1つのその前駆体の水溶液もしくは水性懸濁液を添加することと、
沈殿又はゲル化によって得られた固体を回収し、それを任意に、
当該得られた固体の表面とイオン交換可能な、アンモニウムイオン含有
塩の水溶液から選択される少なくとも1つの化合物とのイオン交換工程に供し;及び/又は
コロイダルシリ
カ、シリカアルコキシ
ドから選択される少なくとも1つのシリカ前駆体(SiO
2);またはベーマイト若しくは擬ベーマイ
トから選択される少なくとも1つのアルミナ前駆体(Al
2O
3)との結合工程に供し;及び/又は
押出、球形化、打錠、造粒などの成形工程に供することと、
それを、前述の工程のいずれか、すなわちイオン交換及び/若しくは結合及び/若しくは成形の前又は後に行われる任意の熱処理及び/又は任意の焼成に供すること、
を含むプロセスによって得られ、
結合及び/又は成形後に得られるシリカ(SiO
2
)及びアルミナ(Al
2
O
3
)をベースとする少なくとも1つの酸触媒を含む前記触媒材料の細孔モード径が、100nm~120nmである、プロセス。
【請求項8】
シリカ(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)をベースとする前記酸触媒の比表面積が、40m
2/g~800m
2/
gである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒材料が、シリカ(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒と、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、酸化ジルコニウム
および酸化チタンか
ら選択され
る少なくとも1つの結合剤とを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
シリカ(SiO
2)およびアルミナ(Al
2O
3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒と、アルミナ(Al
2O
3)またはシリカ(SiO
2)から選択される少なくとも1つの結合剤とを含む及び/又は成形に供された前記触媒材料が、25m
2/g~700m
2/
gの比表面積を有する、請求項
9に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項
1~10のいずれか一項に記載のプロセスであって、ジエンを製造するための前記プロセスが
、不活性ガ
ス;又は50℃以上の沸点及び40℃以下の融点を有する化合
物から選択される希釈
剤を用いて実施される、プロセス。
【請求項12】
請求項
1~11のいずれか一項に記載のプロセスであって、ジエンを製造するための前記プロセスが、
前記希釈剤が不活性ガスから選択される場合は、0.3
超の希釈剤対アルケノールのモル比で、
前記希釈剤が50℃以上の沸点及び40℃以下の融点を有する化合
物から選択される場合は、0.01~10
0の希釈剤対アルケノールのモル比で、
実施される、プロセス。
【請求項13】
請求項
1~12のいずれか一項に記載のプロセスであって、ジエンを製造するための前記プロセスが、
150℃~500
℃の温度で;及び/又は
0.05bara~50bar
a(bara=絶対bar)の圧力で;及び/又は
0.01秒~10
秒の、供給容量に対する充填された前記触媒材料の比率として計算される接触時間(τ)の操作により、
実施される、プロセス。
【請求項14】
請求項
1~13のいずれか一項に記載のプロセスであって、シリカ(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒を含む前記触媒材料が、ジエンを製造するための前記プロセスが実施される温度
で前処理される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエンを製造するためのプロセスに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ジエン、好ましくは共役ジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンを製造するためのプロセスであって、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒(好ましくはシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3))を含む少なくとも1つの触媒材料の存在下で少なくとも1つのアルケノールを脱水することを含み、前記触媒が特定のアルミナ含有量(Al2O3)及び特定の細孔特性、特に特定の細孔モード径を有する、プロセスに関する。
【0003】
好ましくは、前記アルケノールは、生合成プロセスから直接得ることができ、又は少なくとも1つのジオール(好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオール、さらにより好ましくは生合成プロセスに由来するバイオ-1,3-ブタンジオール)の接触脱水プロセスによって得ることができる。好ましくは、前記1,3-ブタジエンは、バイオ-1,3-ブタジエンである。
【0004】
1,3-ブタンジオール、1,3-ブタジエン及びアルケノールの工業生産は、現在、古典的な石油化学プロセスに基づいていることが知られている。
【0005】
実際、一般に4つの炭素原子を有するジオール、特に1,3-ブタンジオール(一般に1,3-BDOとも呼ばれる)は、例えばGrafje H.らの“Butanediols,Butenediol,and Butynediol”,“Ulmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry”(2000)に記載されているように、複雑な石油化学プロセスによって通常得られる。特に、1,3-ブタンジオールは、アセトアルデヒド、ヒドロキシブチルアルデヒド及びその後の還元を経て製造され、一般に樹脂の成分又は溶剤として使用される。
【0006】
アルケノールを製造するためのプロセスも、当該技術分野で知られている。
【0007】
例えば、米国特許第5,406,007号には、アリルアルコール、ホモアリルアルコール又はこれらの混合物を製造するためのプロセスであって、エポキシ基とエチレン性不飽和が共役しているエポキシアルケンを、硫黄若しくは硫化物で変性したニッケル触媒の存在下で、水素化に典型的な温度及び圧力の条件下で操作しながら水素化することを含むプロセスが記載されている。好ましくは、当該プロセスは、2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)及び3-ブテン-1-オールの混合物を調製するのに有用である。
【0008】
米国特許第6,278,031号には、式(I)
H2R1-R2C=CR3-CR4R5-OR6 (I)
を有する2-ブテン-1-オール化合物を調製するためのプロセスが記載されており、
式中、基R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素であり、又は任意にOH若しくはOR基で置換された脂肪族基であり、Rは、脂肪族基、ハロゲンまたはカルボキシル基であり、さらにR2は、-CHO基を表し、又はR2及びR5は、それらの間に位置する炭素原子とともに脂環式環を形成し、さらにR6は、環式脂肪族、芳香脂肪族、芳香族基又は-C(=O)-R7基を表し、R7は、脂肪族、環式脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族基であることを特徴とし、前記プロセスは、式(II)
HR1C=CR2-CHR3-CR4R5-OR6 (II)
を有する3-ブテン-1-オール化合物を異性化することを含み、
式中、基R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、上記と同じ意味を有し、水素及び触媒の存在下で、このプロセスは、固定床触媒上で連続して行われ、触媒は、二酸化ケイ素担体にパラジウム及びセレン又はテルル又はセレンとテルルの混合物を含み、80m2/g~380m2/gのBET表面積及び細孔直径が3nm~300nmである0.6cm3/g~0.95cm3/gの細孔容積を有し、当該細孔容積の80%~95%の細孔直径が10nm~100nmであることを特徴とする。
【0009】
あるいは、2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)は、例えば、“Merck Index”(1976),9thに記載されているように、クロトンアルデヒドを還元することによって調製され得る。さらに、2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)は、例えば、国際公開第2013/130481号(1,3-ブタジエンの合成における中間体として)、又は米国特許出願第2013/109064号に記載されているような生合成プロセスによって調製され得る。
【0010】
米国特許第4,400,562号には、液相で1,3-ブタンジオールからアルケノールを合成するための方法であって、触媒として、硫酸アルミニウム、硫酸クロム、硫酸鉄及びこれらの混合物から選択される三価金属の硫酸塩を、有効量の1,3-ブタンジオールと混合することと、1,3-ブタンジオールに懸濁した当該触媒の混合物を得ることと、当該混合物を1,3-ブタンジオールの沸点より約70℃低い温度~約100℃高い温度に加熱し、1,3-ブタンジオールの部分的な脱水反応を行い、反応混合物から蒸発する3-ブテン-1-オールを得ることと、当該蒸気を凝縮し、3-ブテン-1-オールを単離することを含む方法が記載されている。
【0011】
あるいは、3-ブテン-1-オールは、例えば、米国特許出願第2013/109064号に記載されているように、プロピレン及びホルムアルデヒドから、触媒を用いて、高温で操作することにより調製され得る。
【0012】
3-ブテン-2-オール(メチルビニルカルビノール)及びブタジエンは、例えば、Winfield M. E.の“The catalytic Dehydration of 2,3-butanediol to Butadiene. II. Adsorption Equilibria”, “Australian Journal of Scientific Research” (1950),Vol.3(2),pages 290-305に記載されるように、酸化トリウムを用いた2,3-ブタンジオールの脱水により得ることができる。
【0013】
あるいは、3-ブテン-2-オール(メチルビニルカルビノール)は、単独で又は他のブテノールとの混合物で、例えば、ドイツ特許第1,150,671号などに記載されているように、ポリオール若しくはその誘導体(例えば1,3-ブチレングリコールジアセテート)の熱分解によって、又は例えば、ロシア特許第396312号若しくは日本特許出願第63/222135号に記載されているように、アセチレン若しくは不飽和カルボニル化合物の還元によって得ることも可能である。
【0014】
2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)は、例えば、ハロゲン化物、クロチルエステル又はクロチルエーテルの前駆体として使用され得るため、これらは、例えば、中間体として、モノマーの製造、ファインケミストリー(例えば、ソルビン酸、トリメチルヒドロキノン、クロトン酸、3-メトキシブタノールの製造)、農芸化学、薬化学において使用され得る。
【0015】
3-ブテン-1-オール(アリルカルビノール)は、例えば、薬化学、農芸化学、香水、樹脂の原料として使用され得る。例えば、パラジウムによって触媒される3-ブテン-1-オール(アリルカルビノール)とハロゲン化アリールのカップリング反応から、アリール置換アルデヒドが得られ、これは、例えば、抗不安薬として、薬化学において使用され得る。
【0016】
3-ブテン-2-オール(メチルビニルカルビノール)は、溶媒として、精密化学において、例えばポリオレフィンなどのポリマーの改質における成分として使用され得る(例えば、ドイツ特許第1,908,620号に記載されているように)。
【0017】
上記アルケノールは、1,3-ブタジエンの製造にも使用され得る。
【0018】
1,3-ブタジエンは、石油化学の主要製品である。年間約1000万トンの1,3-ブタジエンが製造され、好ましくは、合成ゴム、樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー(ABS)、ヘキサメチレンジアミン、ブタンジオール、特に、1,4-ブタンジオールなど、様々な製品の製造に使用されている。年間製造される1,3-ブタジエンの95%超は、エチレンその他のオレフィンを製造するための水蒸気分解プロセスに由来する副産物であり、抽出蒸留により分離される。1,3-ブタジエンを製造する目的別プロセスとしては、例えば、ブタン及び/又はブテンの脱水素化が挙げられる。
【0019】
1,3-ブタジエンの製造コストを削減し、環境負荷を低減した、効率的で製造性の高い代替製造プロセスの開発の可能性は、依然として大きな関心事である。特に、生合成プロセスに由来する材料、例えばバイオアルケノール、特にバイオ1,3-ブタンジオールの接触脱水に由来するバイオアルケノールを使用して、さらなる接触脱水によりバイオ1,3-ブタジエンを作ることができる新規プロセスは、大きな関心事となっている。
【0020】
前記生合成プロセスにおける炭素源としては、再生可能資源、バイオマス、合成ガスその他のガス状炭素源が使用され得る。
【0021】
合成ガスは、炭素含有材料(例えば、石炭、バイオマス、廃棄物、天然ガス等)のガス化により、当該技術分野で知られているプロセスを通じて得ることができる。
【0022】
前記生合成プロセスは、一般に、例えば、炭水化物などの炭素源を利用することができる微生物を介して実施される。炭水化物源としては、例えば、糖(グルコース、キシロース、アラビノース、フルクトース等)、バイオマス(セルロース系、ヘミセルロース系、リグニン等)、好ましくは炭水化物含有物、その他の再生可能資源を挙げることができる。
【0023】
ジオールからの1,3-ブタジエンの製造は当該技術分野で知られているが、工業的用途を見出した手法は、たとえ特殊及び/又は従来とは異なる状況であっても、リン酸塩ベースの触媒を使用するレッペ型技術に基づくものであり、この点に関しては、Bender M., “An Overview of Industrial Processes for the Production of Olefins - C4 Hydrocarbons”, “ChemBioEng Reviews” (2014), Vol. 1. No. 4, pages 136-147 (DOI:10.1002/cben.201400016)の論文を参照のこと。しかしながら、前記手法は、例えば、以下に報告する文献から分かるように、製造性が低いこと、使用される反応条件が特定であること及び使用される触媒の減衰が速いことから、今日では工業化可能とは考えられていない。
【0024】
米国特許第2,310,809号には、少なくとも4個の炭素原子を有する脂肪族グリコールの接触脱水によってジオレフィン、特に1,3-ブタジエンを製造する方法が記載されており、これは前記グリコールを蒸気の形態で、好ましくは蒸気又は他の希釈ガスと、高温で作用することができるリン含有化合物から選択された脱水触媒を接触させることを含む。前記プロセスは、ジオレフィンの収率を高め、副生成物の生成を抑え、触媒の寿命を長期間維持すると言われている(特に、実施例1及び実施例2は、1,3-ブタンジオールから出発する1,3-ブタジエンの収率が、それぞれ85%及び90%に相当することを示している)。しかしながら、前述のプロセスでは、非常に低い供給速度(実施例1では、n-ヘキサンの存在下で、0.060kgxh-1xl-1、1,3-ブタンジオール60部及び水40部に相当;実施例2では、テトラヒドロフランとともに、0.060kgxh-1xl-1、1,3-ブタンジオール40部、水40部及び1,4-ブタンジオル20部に相当)が使用される結果、触媒の製造性が低くなるため、工業的適用が困難であった。さらに、触媒の安定性を向上させるために、n-ヘキサンなどの通常の条件下で液体の有機物質を触媒上で気化させたものが使用される。
【0025】
米国特許第2,237,866号には、蒸気相にリン含有物質(例えば、リン含有酸エステル、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン)から選択される触媒の存在下で、対応するグリコール及びアルコールの接触脱水を通じて、ジオレフィン、特に1,3-ブタジエンを製造するプロセスが記載されている。
【0026】
米国特許第2,426,678号には、リン酸塩、好ましくはリン酸アンモニウムをベースとする脱水触媒を、リン酸の揮発性エステル及びアンモニア(NH3)を用いて再生する方法が記載されている。
【0027】
ドイツ特許第132126号には、1,3-ブタンジオールの1,3-ブタジエンへの脱水が約90%の収率で記載されているが、製造性が非常に低く、供給速度が低くなっている(実施例2では、0.0375kg×h-1×l-1に相当)。
【0028】
他の手法では、これ以上良い結果は得られていない。例えば、モリブデン酸ビスマス型触媒を用いて、酸化性環境下で、2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)及び3-ブテン-2-オール(メチルビニルカルビノール)から1,3-ブタジエンを製造する反応性に関する研究は、Adams C. R., in “Exploratory catalytic oxidations with bismuth molybdate”, “Journal of catalysis” (1968), Vol. 10, pages 355-361)で 報告されている。しかしながら、モリブデン酸ビスマスは、例えば、Adams C. R., in “Selectivity Effects in Some Catalytic Oxidation Processes”, “Industrial & Engineering Chemistry” (1969), Vol.61(6), pages 30-38 (DOI:10.1021/ie50714a006)で報告されているように、1,3-ブタンジオールを脱水して2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)経由で1,3-ブタジエンにする触媒としては選択性に劣るとされている。
【0029】
1,3-ブタジエン以外の共役ジエンに対するアルケノールの反応性についての研究も知られている。
【0030】
例えば、米国特許出願第3,714,285号には、3-メチル-3-ブテン-1-オール(メチルブテノール)の接触脱水を通じてイソプレンを調製するプロセスであって、当該3-メチル-3-ブテン-1-オール(メチルブテノール)を、高温で、軽石に担持されたリン酸などの酸触媒と接触させることを含むものが記述されている。
【0031】
しかしながら、反応中に失われたリン酸の置換を必要とする担持されたリン酸をベースとする触媒の使用に関連する欠点がよく知られている。これらの問題は、例えば、米国特許出願第2005/075239号に記載されているような芳香族化合物のアルキル化などの他の状況でも知られており、当該触媒が、使用済み触媒の腐食及び廃棄による環境への影響及び安全性の問題を引き起こすという事実が強調されている。
【0032】
また、様々な脱水触媒を使用することも当該技術分野で知られている。
【0033】
例えば、Weissermel K., Arpe H. J. in “Industrial Organic Chemistry” (2008), 3rd Ed., John Wiley & Sons, page117には、1980年代までイタリアで用いられていた、アルミナ(Al2O3)存在下でアセトン-アセチレンからイソプレンを製造するためのSnamprogettiプロセスが報告されている。
【0034】
英国特許第935631号には、蒸気相において、200m2/gより大きい表面積を有するアルミナ(Al2O3)から本質的になる触媒を用い、260℃~270℃の温度で、1秒~5秒間の時間、3-メチル-3-ブテン-1-オール(メチルブテノール)を接触脱水することによりイソプレンを調製するプロセスが記載されている。
【0035】
また、例えば、Sato S. and others, in “Catalytic reaction of 1,3-butanediol over solid catalyst”, “Journal of Molecular Catalysis A: Chemical” (2006), Vol. 256, pages 106-112に記載されているように、アルケノールから1,3-ブタジエンを製造する際にシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)を触媒として用いることも知られている。特に、表5は、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)を触媒として、250℃で操作して、3-ブテン-1-オール、2-ブテン-1-オール及び3-ブテン-2-オールについて得られた1,3-ブタジエンへの変換率及び選択率の値を示している。得られた値は以下の通りである。
3-ブテン-1-オール変換率=41.5%、1,3-ブタジエンへの選択率=12.8%。
2-ブテン-1-オール変換率=76.7%、1,3-ブタジエンへの選択率=92.8%。
3-ブテン-2-オール変換率=70.8%、1,3-ブタジエンへの選択率=93.0%。
【0036】
Sato S.らが使用しているシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、Nikki Chemical社の商品名N631-Lで知られている製品であり、420m2/gに相当する表面積及び5.4に相当するSi/Al比を有し、約13%のアルミナ含有量(Al2O3)に相当する(米国特許第3,689,477号の実施例1及びUemichi Y. and others, in “Chemical recycling of poly(ethylene) by catalytic degradation into aromatic hydrocarbons using H-Ga-silicate”, “Chemical communications” (1998), 1975-1976 DOI:10.1039/A804927K)の報告による)。
【0037】
しかしながら、上記の文献は、単に正確なデータを報告するだけで、触媒の減衰の問題を扱っておらず、低い変換率(80%未満)を報告し、先の脱水反応(例えば、ジオールを接触脱水してアルケノールを作ること)に由来する市販及び非商用のアルケノールの使用から得られた理想的な供給物を使用しているため、産業用途を対象とした有益な教示を得ることはできない。
【0038】
同様の結論は、例えば、Makshina E. V. and others, “Review of old chemistry and new catalytic advances in the on-purpose synthesis of butadiene”, “Chemical Society Review” (2014), Vol. 43, pages 7917-7953 (DOI:10.1039/C4CS00105B)などの最近のレビューを参考にすることから導き出すことができる。
【0039】
国際特許出願WO2013/130481号には、当該明細書中で記載されている組換え宿主細胞によって産生された2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)を、例えばシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)から選択される固体酸触媒と適切な操作条件の下で接触させ、1,3-ブタジエンを調製するプロセスが記載されている。しかしながら、この場合であっても、特定の触媒及び/又は当該触媒の特定の使用方法に関する教示はない。
【0040】
さらに、上記から、アルケノールの脱水における酸触媒の失活に関する情報はほとんどないと推測される。この点に関して、アルコールの脱水が酸触媒を介して起こり得、得られる主生成物は、出発アルコールに対応する炭素原子数を有するオレフィン又は当該アルコールのエーテルであるが、当該主反応に加えて、例えばオレフィンの脱水素化及び/若しくはオリゴマー化並びに/又は分解現象などの副反応も起こり得ることが知られていることに留意されたい。これらの副反応から、例えば、Bartholomew C. H., in “Mechanisms of catalyst deactivation” (2001), “Applied Catalysis A: General” Vol.212, p.17-60で報告されるような脱水触媒の失活につながる副生成物が得られる。
【0041】
触媒系及び反応条件の最適化は、例えばMoulijn J. A. and others, in “Catalyst deactivation: is it predictable? What to do?”, “Applied Catalysis A: General” (2001), Vol. 212, pages 3-16に記載されているように、触媒の失活につながるプロセスを制限するために一般的に行われる手法である。
【0042】
本出願人名義の国際公開第2016/135609号には、ジエン、好ましくは共役ジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンを製造するためのプロセスであって、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒(好ましくはシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3))を含む少なくとも1つの触媒材料の存在下で少なくとも1つのアルケノールを脱水することを含み、当該触媒のアルミナ含有量が、当該触媒総重量に対して12重量%以下、好ましくは0.1重量%~10重量%であるプロセスが記載されている。前述の触媒材料を使用することで、多くの利点を得ることができると言われている。例えば、当該触媒材料によって、高い変換率及び選択率の値を得ることができると言われている。さらに、当該触媒材料は、寿命が長く、広い範囲で含まれるアルケノール:希釈剤比でも作用すると言われている。さらに、当該利点は、広範囲の操作条件、すなわち、様々な温度、様々な接触時間(τ)で作用し続け、アルケノールの様々な混合物、すなわち、市販のアルケノールの混合物及び先の脱水プロセス又は直接生合成プロセスに由来するアルケノールの混合物の両方の使用を可能にすると言われている。さらに、当該触媒材料は、再生されると、ジエンを製造するための前述のプロセスにおいて再び使用することができ、優れた結果をもたらすと言われている。
【0043】
前述の利点を向上させることができる、アルケノール、より好ましくはブテノール、さらに好ましくは生合成プロセス又は生合成プロセスで得られた前駆体に由来するバイオブテノールを脱水して1,3-ブタジエン、特にバイオ-1,3-ブタジエンを得る新規プロセスの発見は、依然として大きな関心を集めている。
【0044】
そこで、本出願人は、ジエン、特に共役ジエン、より具体的には1,3-ブタジエン、さらに具体的にはバイオ-1,3-ブタジエンを製造するプロセスであって、少なくとも1つのアルケノール、特に生合成プロセスに由来する少なくとも1つのアルケノールの脱水により、前述の利点を、特に、ジエン、特に共役ジエン、より具体的には1,3-ブタジエン、さらにより具体的にはバイオ-1,3-ブタジエンの製造性の観点でさらに向上させることができるプロセスを見出すという課題を提起した。
【0045】
本出願人は、前述の国際公開第2016/135609号に記載されている触媒材料の一部、特にシリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒、特にシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)を含む触媒材料であって、その中で報告された特定のアルミナ含有量に加えて、特定の細孔特性、特に特定の細孔モード径を有する前記触媒が、ジエン、特に共役ジエン、より具体的には特定の1,3-ブタジエン、さらにより具体的にはバイオ-1,3-ブタジエンを製造するための前述のプロセスにおいて有利に使用され得、前述の利点をさらに向上させ得ることを見出した。
【0046】
特に、本出願人は、前記触媒材料を使用することにより、持続時間及びその結果としての各反応サイクルの製造性の点で高いパフォーマンスを得ることができ、あるサイクルと別のサイクルとの間で高いコストと製造損失を伴う再生の必要性を低減できることを見いだした。より具体的には、前記触媒材料を使用することにより、変換率が80%を下回る前に到達する単一サイクルにおいて、グラムで表される触媒材料の使用量に対する、グラムで表されるジエンの製造量、すなわち(gジエン/g触媒)として定義されるジエン製造性を向上させることができる。さらにより具体的には、以下の実施例で報告されるように、前記触媒材料を使用することにより、変換率が80%を下回る前に到達する単一サイクルにおいて、グラムで表される触媒材料の使用量に対する、グラムで表される1,3-ブタジエンの製造量、すなわち(g1,3-BDE/g触媒)として定義される1,3-ブタジエンの製造性を向上させることができる。単一サイクルの製造性は、時間の点でも製造損失の点でもコストのかかる触媒再生を最小限にできるため、重要なものである。さらに、前記触媒材料は、再生されると、ジエンを製造するための前述のプロセスにおいて再び使用することができ、優れた結果をもたらすことができる。
【0047】
したがって、本発明の目的は、ジエン、好ましくは共役ジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンを製造するためのプロセスであって、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒(好ましくはシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3))を含む少なくとも1つの触媒材料の存在下で少なくとも1つのアルケノールを脱水することを含み、当該触媒のアルミナ含有量(Al2O3)が、当該触媒総重量に対して12重量%以下、好ましくは0.1重量%~10重量%であり(当該アルミナ含有量は、結合剤を含まない当該触媒総重量を指す)、細孔モード径が9nm~170nm、好ましくは10nm~150nm、さらにより好ましくは12nm~120nmであることを特徴とする、プロセスである。
【0048】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、数値区間の定義は、特に断りのない限り、常に末端の値を含む。
【0049】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、用語「含む」は、用語「から本質的になる」又は「から成る」をも包含する。
【0050】
前記細孔モード径は、Barrett E. P.、Joyner L. G.およびHaklenda P.P.らの“Journal of the American Chemical Society” (1951),Vol.73(1),373~380頁(1951)に記載のBJH法及びASTM D4641-17規格に従って決定した。特に、前記細孔モード径は、-196.15℃(77K)に相当する液体窒素の温度で、窒素の吸脱着(BET法)により測定した脱着等温線から、上記BJH法に従って計算した細孔径分布曲線をプロットして求めた。得られた実験データは、Micrometrics社のASAP2010装置を用いて記録したものであり、前述のASTM D4641-17規格に記載の計算は、添付のマニュアル(D-15ページ)に記載の所定のパラメーターを前提として、当該装置に付属のDataMasterソフトウェア(商標)(V4.03 2008年3月)により自動的に実行したものであった。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記アルケノールは、例えば、3-ブテン-2-オール(メチルビニルカルビノール-CAS番号598-32-3)、3-ブテン-1-オール(アリルカルビノール-CAS番号627-27-0)、2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)又はこれらの混合物、好ましくは2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)、3-ブテン-2-オール(メチルビニルカルビノール-CAS番号598-32-3)又はこれらの混合物から選択可能である。
【0052】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、用語2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)とは、シス及びトランス異性体の混合物と、シス異性体自体(CAS番号4088-60-2)並びにトランス異性体自体(CAS番号504-61-0)の両方を意味する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記アルケノールは、生合成プロセスから直接得ることができ、又は少なくとも1つのジオール、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオール、さらにより好ましくは生合成プロセスに由来するバイオ-1,3-ブタンジオールの接触脱水プロセスによって得ることができる。
【0054】
アルケノールを直接製造することができる生合成プロセスは、例えば、上記で報告した国際公開第2013/130481号、又は米国特許出願第2013/109064号に記載されている。
【0055】
本発明において、前記アルケノールは、酸化セリウムをベースとする少なくとも1つの触媒の存在下で、少なくとも1つのジオール、好ましくは少なくとも1つのブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオール、さらにより好ましくは生合成プロセスに由来するバイオ-1,3-ブタンジオールの接触脱水により得ることができ、この場合、酸化セリウムをベースとする当該触媒は、少なくとも1つの塩基の存在下で、少なくとも1つのセリウム含有化合物を沈殿させることにより得られるものである。前記プロセスに関するさらなる詳細は、本出願人名義の国際公開第2015/173780号に見出すことができ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、前記アルケノールは、少なくとも1つのジオール、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオール、さらにより好ましくは、糖発酵、好ましくはバイオマスに由来する糖の発酵に由来するバイオ-1,3-ブタンジオールの接触脱水に由来する。
【0057】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、用語「バイオマス」は、以下を含む植物由来の任意の有機材料を示す:例えば、グアユール、アザミ、トウモロコシ、大豆、綿、亜麻、菜種、サトウキビ、ヤシなどの農業由来の生産物(当該生産物に由来する断片、残渣及び廃棄物又はそれらの処理に由来する断片、残渣及び廃棄物を含む);例えば、ススキ、キビ、ヨシなどのエネルギー利用のために特に栽培される作物に由来する製造物(当該製造物に由来する断片、残渣及び廃棄物又はそれらの処理に由来する断片、残渣及び廃棄物を含む);植林又は林業に由来する製造物(当該製造物に由来する断片、残渣及び廃棄物又はそれらの処理に由来する断片、残渣及び廃棄物を含む);ヒトの食用又は畜産用の農産物から生じる断片;製紙業から生じる残渣;例えば、植物由来の都市ゴミ、紙などの都市固形廃棄物の分別収集から生じる廃棄物。
【0058】
好ましくは、前記ジオールは、バイオマス(当該バイオマスに由来する断片、残渣、廃棄物又はそれらの処理に由来する断片、残渣、廃棄物を含む)に由来する糖の発酵に由来するバイオ-1,3-ブタンジオールである。
【0059】
さらにより好ましくは、前記ジオールは、グアユール(当該グアユールに由来する断片、残渣、廃棄物又はそれらの処理に由来する断片、残渣、廃棄物を含む)に由来する糖の発酵に由来するバイオ-1,3-ブタンジオールである。
【0060】
植物由来のリグニンセルロース系バイオマスを使用する場合、糖を生成するために、当該バイオマスは、物理的処理(例えば、押出、「蒸気爆発」等)並びに/又は化学的加水分解及び/若しくは酵素的加水分解にかけられ、バイオマス中に存在するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンに由来する炭水化物、芳香族化合物の混合物およびその他の生成物の混合物が得られる。特に、得られる炭水化物は、例えば、スクロース、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース及びフルクトースが挙げられる5及び6個の炭素原子を有する糖の混合物であり、これは発酵に使用されることになる。バイオマスからの糖の製造に関するプロセスは、例えば、本出願人名義の国際公開第2015/087254号などにおいて、当該技術分野で説明されている。当該発酵は、一般に、目的とするアルコールを製造することができる微生物、特に遺伝子組み換え微生物によって行われる。1,3-ブタンジオール、特に再生可能資源から出発するバイオ-1,3-ブタンジオールの合成のためのプロセスに関するさらなる詳細は、例えば、米国特許出願第2010/330635号、米国特許出願第2012/0329113号及び米国特許出願第2013/0109064号において見ることができる。
【0061】
ジオールが生合成プロセスに、例えば、糖の発酵に由来する場合、得られたアルケノールの水性混合物は、例えば、全蒸留又は部分蒸留などの当該技術分野で知られた分離プロセスにかけることができる。あるいは、アルケノールの当該水性混合物をそれ自体で使用し、水を希釈剤として効果的に使用することができ、当該水性混合物を高価な水除去プロセスにかける必要がなく、又は、いずれにせよ、当該除去を制限することができる。
【0062】
前記アルケノールが少なくとも1つのジオールの接触脱水に由来する場合、前記少なくとも1つのジオールを脱水して少なくとも1つのアルケノールを得る工程及びその後前記少なくとも1つのアルケノールを脱水してジエンを得る工程が、
同じ反応器内又は異なる反応器内において、好ましくは異なる反応器内において、
連続的又は不連続的に、好ましくは不連続的に、
実施され得ることに留意されたい。
【0063】
本発明において、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする前記酸触媒は、当該技術分野で知られているプロセスによって得ることができ、例えば、本出願人名義の上記に報告されている、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/135069号に記載の通り、様々な形態で使用することができる。前記触媒を調製するためのプロセスに関するさらなる詳細は、以下の実施例においても見出すことができる。
【0064】
本発明において、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする前記酸触媒は、それ自体で使用することができ、又は、当該技術分野で知られている任意のプロセスに従って操作することにより結合及び/又は形成することができる。当該プロセスに関するさらなる詳細は、例えば、米国特許第3,974,099号、米国特許第4,226,743号、米国特許第6,451,200号、米国特許第4,499,197号、米国特許第4,175,118号、米国特許第5,045,519号、米国特許第6,642,172号又はCampanati M.ら,“Fundamentals in the preparation of heterogeneous catalysts”,“Catalysis Today” (2003), Vol.77,299-314ページ;Haber J.ら,“Manual of methods and procedures for catalyst characterization”,“Pure & Applied Chemistry”(1995), Vol.67.No.8-9,1257-1306ページにおいて見ることができる。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする前記酸触媒は「初期湿潤含浸(incipient wetness impregnation)」によって得られ、例えば、アルミニウムアルコキシド(例えば、トリ-sec-アルミニウムブトキシド)、可溶性アルミニウム塩(例えば、硫酸アルミニウム)、アルミン酸塩(例えば、アルミン酸ナトリウム)から選択され得る少なくとも1つのアルミナ前駆体を適切な濃度で含む溶液の容量が、固体支持体(例えば、シリカ)の細孔容積と等しいか、又はそれよりわずかに小さい。
【0066】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒を含む前記触媒材料は、以下を含むプロセスによって得ることができる:
アルミナ(Al2O3)又は例えば、アルミニウムアルコキシド(例えば、トリ-sec-アルミニウムブトキシド)、可溶性アルミニウム塩(例えば、硫酸アルミニウム)、アルミン酸塩(例えば、アルミン酸ナトリウム)から選択され得る少なくとも1つのその前駆体の水溶液又は水性懸濁液を調製することと、
アルミナ(Al2O3)又は少なくとも1つのその前駆体の当該水溶液又は水性懸濁液に、シリカ(SiO2)の水溶液又は水性懸濁液、又はケイ酸(例えば、オルトケイ酸)、ケイ酸アルカリ金属塩(例えば、ケイ酸ナトリウム)から選択され得る少なくとも1つのその前駆体の水溶液又は水性懸濁液を添加することと、
沈殿又はゲル化によって得られた固体を回収し、それを任意に、
当該得られた固体の表面とイオン交換可能な、例えば、アンモニウムイオン含有塩(例えば、酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム)の水溶液から選択され得る少なくとも1つの化合物とのイオン交換工程に供し;及び/又は
例えば、コロイダルシリカ(例えば、Sigma-Aldrich社のLudox(登録商標)TMA”)、シリカアルコキシド(例えば、テトラエチルオルトシリケート)から選択され得る少なくとも1つのシリカ前駆体(SiO2)若しくは、例えば、ベーマイト若しくは擬ベーマイト(UOP社のVersal(商標)V-250など)から選択され得る少なくとも1つのアルミナ前駆体(Al2O3)との結合工程に供し;及び/又は
例えば、押出、球形化、打錠、造粒などの成形工程に供することと、
それを、任意の熱処理及び/又は任意の焼成であって、前述の工程のいずれか、すなわちイオン交換及び/若しくは結合及び/若しくは成形の前又は後に行われる当該任意の熱処理及び/又は任意の焼成に供すること。
【0067】
本発明において、アルミナ(Al2O3)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液を、1つ以上の工程で、シリカ(SiO2)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液に添加できることに留意されたい。
【0068】
本発明において、アルミナ(SiO2)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液を、1つ以上の工程で、シリカ(Al2O3)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液に添加できることに留意されたい。
【0069】
上述した添加は、当該技術分野で知られている方法を用いて実施することができ、また、通常の試験規範(例として、本発明の範囲を限定するものではないが、秤量による、容量投与による、等)を参照することもできる。しかしながら、添加工程は、臨界性を構成することなく、したがって、本発明の制限を構成することなく、2つより多くすることができる。
【0070】
本発明において、アルミナ(Al2O3)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液は、アルミナ(Al2O3)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液の総重量に対して、0.1重量%~70重量%、好ましくは0.3重量%~60重量%、さらにより好ましくは0.5重量%~50重量%を構成し得る。
【0071】
あるいは、アルミナ(Al2O3)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液の代わりに、水性アルコール溶液(前記水性アルコール溶液の総重量に対して、0.1重量%~95重量%、好ましくは0.3重量%~60重量%、さらにより好ましくは0.5重量%~30重量%の少なくとも1つのアルコール(例えば、エタノール、2-メトキシエタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール又はこれらの混合液から選択される)を含むもの)を使用することができる。
【0072】
本発明において、シリカ(SiO2)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液は、シリカ(SiO2)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液の総重量に対して、5重量%~70重量%、好ましくは10重量%~60重量%、さらにより好ましくは15重量%~50重量%のシリカ(SiO2)又は少なくとも1つのその前駆体を含み得る。
【0073】
あるいは、シリカ(SiO2)の前記水溶液又は水性懸濁液又は少なくとも1つのその前駆体の前記水溶液又は水性懸濁液の代わりに、水性アルコール溶液(前記水性アルコール溶液の総重量に対して、5重量%~95重量%、好ましくは15重量%~60重量%、さらにより好ましくは20重量%~30重量%の少なくとも1つのアルコール(例えば、エタノール、2-メトキシエタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール又はこれらの混合物から選択される)を含むもの)を使用することができる。
【0074】
前述のプロセスで得られた固体は、例えば、濾過、デカンテーション等の当該技術技術分野で知られているプロセスを経て回収され得る。
【0075】
前述の可能な熱処理は、100℃~200℃、好ましくは105℃~150℃の温度で、2時間~72時間、好ましくは3時間~18時間行われ得る。
【0076】
前述の任意の焼成は、150℃~1500℃、好ましくは200℃~1400℃、さらにより好ましくは300℃~1200℃の温度で、1時間~24時間、好ましくは2時間~10時間、さらにより好ましくは4時間~8時間行われ得る。一般に、前記焼成は、空気中又は不活性ガス[窒素(N2)など]中又は制御された雰囲気(酸化性又は還元性)中で、好ましくは空気中で行われ得る。
【0077】
上記のように、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする酸触媒は、初期湿潤含浸で得られない場合、種々の形態で使用され得る。例えば、前記触媒は、それ自体で使用され得、又は、例えば、押出、球状化、打錠、造粒などの当該技術分野で知られている任意の成形プロセスに従って操作して成形され得る。上記で報告した任意の熱処理及び任意の焼成は、当該成形プロセスのいずれかの前又は後に行われ得る。
【0078】
好ましくは、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする前記酸触媒は、初期湿潤含浸で得られない場合、例えば、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、酸化ジルコニウム、酸化チタン、好ましくはシリカ(SiO2)又はアルミナ(Al2O3)、さらにより好ましくはアルミナ(Al2O3)などの従来の結合剤を任意に含む押出形態で使用され得る。
【0079】
前記従来の結合剤が存在する場合、押出は、通常、例えば、酢酸、硝酸又は水酸化アンモニウムの水溶液などである解膠剤の使用も提供し、これらは、押出前に、触媒及び結合剤と、均質な混合物が得られるまで混合され得る。前記押出の最後に、得られたペレットは、通常、上記のような操作により焼成に供される。
【0080】
結合及び/又は成形後に得られる固体は、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする前記酸触媒の総重量に対して、5重量%~90重量%、好ましくは10重量%~75重量%、より好ましくは20重量%~55重量%の結合剤を含み得る。
【0081】
結合及び/又は成形後には、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒を含む前記触媒材料の細孔モード径は、上記で報告された範囲、すなわち9nm~170nm、好ましくは10nm~150nm、さらにより好ましくは12nm~120nmであることに留意されたい。
【0082】
本発明の好ましい実施形態によれば、結合及び/又は成形後に得られる、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒を含む前記触媒材料の細孔モード径は、9nm~170nm、好ましくは10nm~150nm、さらにより好ましくは12nm~120nmである。
【0083】
本発明の好ましい実施形態によれば、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする前記酸触媒の比表面積は、40m2/g~800m2/g、好ましくは45m2/g~700m2/g、さらにより好ましくは50m2/g~600m2/gであり得る。
【0084】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記触媒材料は、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒と、例えば、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、酸化ジルコニウム、酸化チタン、好ましくはシリカ(SiO2)又はアルミナ(Al2O3)、さらにより好ましくはアルミナ(Al2O3)から選択され得る少なくとも1つの結合剤とを含む。
【0085】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、シリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒と、アルミナ(Al2O3)若しくはシリカ(SiO2)から選択される少なくとも1つの結合剤とを含む、及び/又は成形に供された前記触媒材料の比表面積は、25m2/g~700m2/g、好ましくは100m2/g~600m2/g、さらにより好ましくは110m2/g~500m2/gであり得る。
【0086】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、用語「比表面積」は、ASTM D3663-03(2008)規格に従い、Micromeritics社のASAP 2010装置を用いて、-196.15℃(77K)に相当する液体窒素の温度での窒素(N2)の静的吸着によって決定されるBET比表面積を示す。
【0087】
シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする前記酸触媒の元素分析は、ロジウム(Rh)陽極を持つ4KW X線管を備えたPANalytical Axios Advanced分光計を用い、WD-XRF(「波長分散型蛍光X線」)によって行った。
【0088】
本発明の好ましい実施形態によれば、ジエンを製造するための前記プロセスの実施は、例えば、窒素(N2)、アルゴン(Ar)などの不活性ガス、好ましくは窒素(N2);又は50℃以上の沸点及び40℃以下の融点を有する化合物、好ましくは、周囲温度(25℃)及び周囲圧力(1atm)において液体状態にある化合物であって、例えば、水、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、ベンゼンなどから選択され得る希釈剤を用いてなされ得る。窒素(N2)、水が好ましく、水が特に好ましい。
【0089】
本発明の好ましい実施形態によれば、ジエンを製造するための前記プロセスの実施は、希釈剤が不活性ガスから選択される場合は、0.3超、好ましくは0.5~2の希釈剤対アルケノールのモル比においてなされ得る。
【0090】
本発明の好ましい実施形態によれば、ジエンを製造するための前記プロセスの実施は、希釈剤が50℃以上の沸点及び40℃以下の融点を有する化合物、好ましくは、周囲温度(25℃)及び周囲圧力(1atm)において液体状態にある化合物から選択される場合は、0.01~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは1~10の希釈剤対アルケノールのモル比においてなされ得る。
【0091】
本発明の好ましい実施形態によれば、ジエンを製造するための前記プロセスの実施は、150℃~500℃、好ましくは200℃~450℃、より好ましくは250℃~400℃の温度でなされ得る。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、ジエンを製造するための前記プロセスの実施は、0.05bara~50bara、好ましくは0.3bara~3,5bara、より好ましくは0.8bara~2.5bara(bara=絶対bar)の圧力でなされ得る。
【0093】
本発明の好ましい実施形態によれば、ジエンを製造するための前記プロセスの実施は、0.01秒~10秒、好ましくは0.05秒~8秒、より好ましくは0.1秒~4秒の、触媒材料の充填量と供給容量の比として計算される接触時間(τ)の操作によりなされ得る。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、シリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)をベースとする少なくとも1つの酸触媒、好ましくはシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)を含む前記触媒材料の前処理は、ジエンを製造するための前記プロセスの実施温度で、すなわち150℃~500℃、好ましくは200℃~450℃、より好ましくは250℃~400℃で、好ましくは上記で報告されたものから選択される少なくとも1つの希釈剤の存在下で、より好ましくは水の存在下でなされ得る。
【0095】
本発明において、ジエンを製造するための前記プロセスは、気相又は液体/気体の混合相、好ましくは気相で、不連続的に(例えば、撹拌および加熱されたオートクレーブ内で)又は連続的に(例えば、1つ以上の直列の触媒反応器内で)、好ましくは連続的に実施され得る。当該反応器は、固定床であっても、流動床であってもよいが、好ましくは固定床である。それらが固定床である場合、触媒材料は、いくつかの床に分配され得る。当該反応器は、再循環反応器を構成することにより、反応流出物又は触媒材料の一部の再利用を期待することができる。液相が存在する場合、ジエンを製造するためのプロセスは、分散された触媒材料を含む連続撹拌反応器において実施され得る。
【0096】
本発明をよりよく理解し、実行するために、そのいくつかの例示的で非限定的な実施例を以下に報告する。
【0097】
(例1(比較例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が7nmに相当するシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の調製)
シリカ前駆体(SiO2)として、シリカ含有量(SiO2)が26.5%に相当するケイ酸ナトリウムの水溶液(Aldrich)3360.3gを、第1の5Lフラスコに導入した。第2の2Lフラスコに、アルミナ前駆体(Al2O3)としてのアルミン酸ナトリウム(Aldrich)26.6g及び脱塩水650.9gを導入し、第2水溶液を得た。当該第2水溶液を前記5Lフラスコに注ぎ、得られた溶液を、周囲温度(25℃)で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持し、懸濁液を得て、これをその後80℃に加熱し、当該温度で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持した。周囲温度(25℃)に冷却した後、96%硫酸溶液(Aldrich)を加えることにより、得られた懸濁液のpHをpH13からpH12にし、無色ゲルを得た。得られたゲルを造粒し、12Lのプラスチック容器に移し、10%硫酸アンモニウム水溶液(Aldrich)500mLで4回処理した。この物質を濾過し、10Lの脱塩水で洗浄し、120℃で一晩乾燥させ、その後500℃で5時間焼成して、無色粉末の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(936g)を得て、その元素分析を上記のように行ったところ、アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当することが示された。当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)では、上述で報告したように決定したBET比表面積が259m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が7nmに相当した。
【0098】
(例2(比較例))
(アルミナ結合剤(Al2O3)を含む、アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が3nmに相当するシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)をベースとする触媒の調製)
例1で得たシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の一部63.8gと、結合剤のアルミナ前駆体(Al2O3)としての擬ベーマイトVersal(商標) V-250(UOP)30.8gと、酢酸の4%溶液(Aldrich)300mLとを500mLビーカー中で混合した。得られた混合物を、激しく撹拌(500rpm)しながら、60℃で約2時間保持した。その後、ビーカーを加熱プレート上に移し、その混合物を激しく撹拌(500rpm)しながら、150℃で一晩、乾燥するまで保持した。得られた固体を550℃で5時間焼成し、アルミナ結合剤(Al2O3)を含む無色固体の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(84g)を得て、これをその後機械的に造粒し、寸法が0.5mm~1.0mmである顆粒の画分を触媒材料として使用した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が254m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が3nmに相当した。
【0099】
(例3(発明例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が14nmに相当するシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の調製)
シリカ前駆体(SiO2)として、シリカ含有量が26.5%に相当するケイ酸ナトリウムの水溶液(Aldrich)1056.8gと、脱塩水786.6gとを第1の5Lフラスコに導入した。第2の2Lフラスコに、アルミナ前駆体(Al2O3)としてのアルミン酸ナトリウム(Aldrich)8.5gと、脱塩水1199.1gとを導入し、第2の水溶液を得た。当該第2の水溶液を前記5Lフラスコに注ぎ、得られた溶液を、周囲温度(25℃)で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持し、懸濁液を得て、これをその後80℃に加熱し、当該温度で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持した。周囲温度(25℃)に冷却した後、96%硫酸溶液(Aldrich)を加えることにより、得られた懸濁液のpHをpH13からpH8.5にし、無色ゲルを得た。得られたゲルを12Lのプラスチック容器に移し、10%硫酸アンモニウム(Aldrich)水溶液5kgで4回処理し、固体を得た。当該固体を濾過し、10kgの脱塩水で洗浄し、120℃で一晩乾燥させ、その後500℃で5時間焼成して、無色粉末の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(236g)を得て、その元素分析を上記のように行ったところ、アルミナ含有量(Al2O3)は1.8%に相当した。当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が262m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が14nmに相当した。
【0100】
(例4(発明例))
(アルミナ結合剤(Al2O3)を含む、アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が14nmに相当するシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)をベースとする触媒の調製)
例3で得られたシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の一部26.6gを、結合剤のアルミナ前駆体(Al2O3)としての擬ベーマイトVersal(商標) V-250(UOP)14.7gと、酢酸の4%溶液(Aldrich)300mLと、500mLビーカー中で混合した。得られた混合物を、激しく撹拌(500rpm)しながら、60℃で約2時間保持した。その後、ビーカーを加熱プレート上に移し、その混合物を激しく撹拌(500rpm)しながら、150℃で一晩、乾燥するまで保持した。得られた固体を550℃で5時間焼成し、アルミナ結合剤(Al2O3)を含む無色固体の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(34g)を得て、これをその後機械的に造粒し、寸法が0.5mm~1.0mmである顆粒の画分を触媒材料として使用した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が255m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が14nmに相当した。
【0101】
(例5(発明例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が40nmに相当するシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の調製)
シリカ前駆体(SiO2)として、シリカ含有量(SiO2)が26.5%に相当するケイ酸ナトリウムの水溶液(Aldrich)1057.3gと、脱塩水787.0gとを第1の5Lフラスコに導入した。第2の2Lフラスコに、アルミナ前駆体(Al2O3)としてのアルミン酸ナトリウム(Aldrich)9.0gと、脱塩水1219.8gとを導入し、第2の水溶液を得た。当該第2の水溶液を前記5Lフラスコに注ぎ、得られた溶液を、周囲温度(25℃)で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持し、懸濁液を得て、これをその後80℃に加熱し、当該温度で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持した。周囲温度(25℃)に冷却した後、96%硫酸溶液(Aldrich)を加えることにより、得られた懸濁液のpHをpH13からpH8.5にし、全体を、周囲温度(25℃)で、撹拌しながら72時間保持し、無色ゲルを得た。得られた無色ゲルを12Lのプラスチック容器に移し、10%硫酸アンモニウム(Aldrich)水溶液5kgで4回処理し、固体を得た。当該固体を濾過し、10kgの脱塩水で洗浄し、120℃で一晩乾燥させ、その後500℃で5時間焼成して、無色粉末の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(252.8g)を得て、その元素分析を上記のように行ったところ、アルミナ含有量(Al2O3)は1.8%に相当した。当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が221m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が40nmに相当した。
【0102】
(例6(発明例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が37nmに相当し、アルミナ結合剤(Al2O3)を含む、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)をベースとする触媒の調製)
例5で得られたシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の一部100.1gを、結合剤のアルミナ前駆体(Al2O3)としての擬ベーマイトVersal(商標) V-250(UOP)55.2gと、酢酸の4%溶液(Aldrich)300mLと、500mLビーカー中で混合した。得られた混合物を、激しく撹拌(500rpm)しながら、60℃で約2時間保持した。その後、ビーカーを加熱プレート上に移し、その混合物を激しく撹拌(500rpm)しながら、150℃で一晩、乾燥するまで保持した。得られた固体を550℃で5時間焼成し、アルミナ結合剤(Al2O3)を含む無色固体の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(138g)を得て、これをその後機械的に造粒し、寸法が0.5mm~1.0mmである顆粒の画分を触媒材料として使用した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が212m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が37nmに相当した。
【0103】
(例7(発明例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が37nmに相当するシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の調製)
シリカ前駆体(SiO2)として、シリカ含有量(SiO2)が26.5%に相当するケイ酸ナトリウムの水溶液(Aldrich)1056.9gと、脱塩水787.9gとを第1の5Lフラスコに導入した。第2の2Lフラスコに、アルミナ前駆体(Al2O3)としてのアルミン酸ナトリウム(Aldrich)9.0gと、脱塩水1219.2gとを導入し、第2の水溶液を得た。当該第2の水溶液を前記5Lフラスコに注ぎ、得られた溶液を、周囲温度(25℃)で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持し、懸濁液を得て、これをその後80℃に加熱し、当該温度で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持した。周囲温度(25℃)に冷却した後、70%硝酸溶液(Aldrich)を加えることにより、得られた懸濁液のpHをpH13からpH8.5にし、全体を、周囲温度(25℃)で、撹拌しながら72時間保持し、無色ゲルを得た。得られた無色ゲルを12Lのプラスチック容器に移し、10%硫酸アンモニウム(Aldrich)水溶液5kgで4回処理し、固体を得た。当該固体を濾過し、10kgの脱塩水で洗浄し、120℃で一晩乾燥させ、その後500℃で5時間焼成して、無色粉末の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(254.5g)を得て、その元素分析を上記のように行ったところ、アルミナ含有量(Al2O3)は1.8%に相当した。当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が252m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が37nmに相当した。
【0104】
(例8(発明例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が36nmに相当し、アルミナ結合剤(Al2O3)を含む、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)をベースとする(押出)触媒の調製)
例7で得られたシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の一部を、押出加工に供した。この目的のために、前記シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)100.1gと、結合剤のアルミナ前駆体(Al2O3)としての擬ベーマイトVersal(商標) V-250(UOP)86.6gをErweka AR 402ミキサーに導入し、その粉末を、80rpmの回転速度で2時間混合した。その後、酢酸の5%溶液253.0gを添加し、その混合物を回転速度80rpmでさらに2時間混合した。その後、この混合物をHosokawa-Bepex Pharmapaktor L 200/50G実験用押出機に移し、以下の条件下で操作した。
温度:25℃
スクリューの回転速度:15rpm
加圧力:150kN
【0105】
押出機の出口でペレットを得て、これを空気中で乾燥させた後、550℃で5時間焼成した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む無色固体の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)133.7を得て、これをその後機械的に造粒し、寸法が0.5mm~1.0mmである顆粒の画分を触媒材料として使用した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が260m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が36nmに相当した。
【0106】
(例9(発明例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が100nmに相当するシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の調製)
シリカ前駆体(SiO2)として、シリカ含有量が26.5%に相当するケイ酸ナトリウムの水溶液(Aldrich)251.4gと、脱塩水105.0gとを第1の1Lフラスコに導入した。第2の1Lフラスコに、アルミナ前駆体(Al2O3)としてのアルミン酸ナトリウム(Aldrich)1.8gと、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4・H2O)(Aldrich)11.1gと、脱塩水255.0gとを導入し、第2の水溶液を得た。当該第2の水溶液を1Lのフラスコに注ぎ、得られた溶液を、周囲温度(25℃)で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持し、懸濁液を得て、これをその後80℃に加熱し、当該温度で、激しく撹拌(500rpm)しながら1時間保持した。周囲温度(25℃)に冷却した後、96%硫酸溶液(Aldrich)を加えることにより、得られた懸濁液のpHをpH13からpH8.5にし、無色ゲルを得た。得られたゲルを5Lのプラスチック容器に移し、10%酢酸アンモニウム(Aldrich)水溶液2kgで4回処理し、固体を得た。当該固体を濾過し、500gの脱塩水で洗浄し、120℃で一晩乾燥させ、その後500℃で5時間焼成して、無色粉末の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(54g)を得て、その元素分析を上記のように行ったところ、アルミナ含有量(Al2O3)は1.8%に相当した。当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が57m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が100nmに相当した。
【0107】
(例10(発明例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が100nmに相当し、アルミナ結合剤(Al2O3)を含む、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)をベースとする触媒の調製)
例9で得られたシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の一部20.0gを、結合剤のアルミナ前駆体(Al2O3)としての擬ベーマイトVersal(商標) V-250(UOP)12.0gと、酢酸の4%溶液(Aldrich)300mLと500mLビーカー中で混合した。得られた混合物を、激しく撹拌(500rpm)しながら、60℃で約2時間保持した。その後、ビーカーを加熱プレート上に移し、その混合物を激しく撹拌(500rpm)しながら、150℃で一晩、乾燥するまで保持した。得られた固体を550℃で5時間焼成し、アルミナ結合剤(Al2O3)を含む無色固体の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)(28g)を得て、これをその後機械的に造粒し、寸法が0.5mm~1.0mmである顆粒の画分を触媒材料として使用した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が118m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が100nmに相当した。
【0108】
(例11(比較例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が3nmに相当するシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)をベースとする(押出)触媒の調製)
例1で調製したシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の一部を、押出加工に供した。
この目的のために、前記シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)450.1gと、結合剤のアルミナ前駆体(Al2O3)としての擬ベーマイトVersal(商標) V-250(UOP)217.0gをErweka AR 402プラネタリーミキサーに導入した。その粉末を、80rpmに相当する回転速度で2時間混合した。その後、80rpmに相当するミキサーの回転速度を保ちながら、酢酸の4%溶液(Aldrich)766.1gを供給した。その後、この混合物をHosokawa-Bepex Pharmapaktor L 200/50G実験用押出機に移し、以下の条件下で操作した。
温度:25℃
スクリューの回転速度:15rpm
加圧力:150kN
【0109】
押出機の出口でペレットを得て、これを空気中で乾燥させた後、550℃で5時間焼成した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む無色固体の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)300.6gを得て、これをその後機械的に造粒し、寸法が0.5mm~1.0mmである顆粒の画分を触媒材料として使用した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が252m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が3nmに相当した。
【0110】
(例12(発明例))
(アルミナ含有量(Al2O3)が1.8%に相当し、細孔モード径が36nmに相当し、アルミナ結合剤(Al2O3)を含む、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)をベースとする(押出)触媒の調製)
例5で調製したシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)の一部を、押出加工に供した。
この目的のために、前記シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)103.0gと、結合剤のアルミナ前駆体(Al2O3)としての擬ベーマイトVersal(商標) V-250(UOP)57.0gをErweka AR 402プラネタリーミキサーに導入した。その粉末を、80rpmに相当する回転速度で2時間混合した。その後、80rpmに相当するミキサーの回転速度を保ちながら、酢酸の4%溶液(Aldrich)450.0gを供給した。その後、この混合物をHosokawa-Bepex Pharmapaktor L 200/50G実験用押出機に移し、以下の条件下で操作した。
温度:25℃
スクリューの回転速度:15rpm
加圧力:150kN
【0111】
押出機の出口でペレットを得て、これを空気中で乾燥させた後、550℃で5時間焼成した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む無色固体の形態のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)98.6g(138g)を得て、これをその後機械的に造粒し、寸法が0.5mm~1.0mmである顆粒の画分を触媒材料として使用した。アルミナ結合剤(Al2O3)を含む当該シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)は、上述で報告したように決定したBET比表面積が226m2/gに相当し、上述で報告したように決定した細孔モード径が36nmに相当した。
【0112】
表1に、例1~12で得られた様々なタイプの触媒を示す。
【表1】
【0113】
例1(比較例)、例3(発明例)、例5(発明例)、例7(発明例)及び例9(発明例)の比較から、適当な手段、例えばシリカ-アルミナ合成(SiO2-Al2O3)のある段階におけるpH変動、合成の別の段階におけるエージングの増大又は、又は最終的に、例えば、リン(P)などのヘテロ原子を含有する化合物などの細孔形成若しくは鋳型機能を有する化合物の使用(例えば、Wen Wenら, “Effect of sol ageing time on the anti-reflective properties of silica coatings templated with phosphoric acid”,“Results in Physics”(2016),1012-1014ページ,https://doi.org/10.1016/j.rinp2016.11.028で報告されている)などによって、本発明に係る細孔モード径を有する触媒を得ることが可能であることが理解されよう。本発明において、当該手段は例として意図されるものであり、その限定ではないことに留意されたい。本発明に係る細孔モード径は、他の方法によって得ることも可能である。
【0114】
例3(発明例)と例4(発明例)との比較から、結合後の細孔モード径は、本発明に従うことが分かる。
【0115】
例7(発明例)と例8(発明例)との比較から、結合及び押出後の細孔モード径は、本発明に従うことが分かる。
【0116】
例5(発明例)、例6(発明例)及び例12(発明例)の比較から、結合後(例6)及び押出後(例12)の細孔モード径は、本発明に従うことが分かる。
【0117】
最後に、本発明の範囲外の細孔モード径を有する触媒から出発した例1(比較例)、例2(比較例)及び例11(比較例)の比較から、結合後(例2)及び押出後(例11)の細孔モード径は、本発明に従わないことが分かる。
【0118】
(例13~18)
(触媒試験)
例1~12で得られた触媒材料を、上記で報告した国際公開第2016/135609号の例8~15に記載のように操作する1,3-ブタンジオールの接触脱水によって得られたブテノールの混合物の接触脱水試験に使用した。
【0119】
反応器の出口で得られたブテノールの混合物を蒸留し、表2に報告する組成を有する異性体ブテノールの水溶液を得た。
【表2】
【0120】
表2に報告したブテノールの水溶液を、表3に報告するように水で希釈し、以下のように操作する接触脱水に供した。
【0121】
前記接触脱水反応を行った反応器は、AISI 316L鋼製の固定床を備えた、長さ350mm、内径9.65mmの管状反応器である。反応器の内部には、その軸に沿って、温度調節用の熱電対を収容する外径3mmに相当するウェルがあった。その反応器を、前述の反応のために選択した温度に到達することを可能にする電気加熱式オーブンに置いた。
【0122】
3gに相当する触媒を、2層の不活性物質(コランダム)の間に挿入し、その触媒床を、ダウンフロー反応器の底部に置いた焼結鋼セプタムによって所定の位置に保持した。
【0123】
蒸発器として機能し、反応物が反応温度に到達してから触媒と接触することを可能にする反応器の上部から、不活性物質で満たされた領域より上で供給を行った。
【0124】
液体試薬を、「高速液体クロマトグラフィー」(HPLC)で使用されるタイプの定量ポンプによって供給した。ガスを、「熱質量流量計」(TMF)を通じて供給した。反応器の下流では、得られた生成物を熱交換器で冷却し、凝縮液を一連の時限バルブによってガラス瓶に回収した。凝縮していないガスを、生成されたガスの体積を測定するために、代わりに体積湿式ガスメーターに送った。ガスの一部は、分析用にオンラインガスクロマトグラフ(GC)でサンプリングした。オンラインガス分析は、Agilent HP7890ガスクロマトグラフ(GC)を用いて、長さ50mのHP-Al/Sカラム(直径0.53mm、膜厚15ミクロン)により行い、使用したキャリアは、流速30cm/秒のヘリウムであり、検出器は火炎検出器であった。ガスの分析は、外部標準を使用して、単一の既知成分の検量線法により行った。
【0125】
回収した液体の特性評価は、“Split/Splitless”インジェクターを高さ25mのQuadrex 007 FFAPカラム(直径0.32mm、膜厚1ミクロン)に装備したAgilent HP6890ガスクロマトグラフ(GC)を使用するガスクロマトグラフ分析により行い、使用したキャリアは50cm/秒に相当する速度のヘリウムであり、検出器は火炎検出器であった。測定は内部標準を使用して、単一の既知成分の検量線法により行った。
【0126】
寸法が0.5mm~1mmである顆粒の形態で、3gに相当する量で使用される触媒材料を、例2(比較例)、4(発明例)、6(発明例)、8(発明例)、10(発明例)、11(比較例)及び12(発明例)において上述したように調製した。
【0127】
表3は、使用した触媒(触媒)と、接触脱水が行われる温度[T(℃)]と、充填された触媒材料の容量と供給容量の比として計算される接触時間[τ(秒)]と、実行した希釈度、すなわちブテノール混合物に適量の水を加えることによって得られる、供給される水:ブテノールのモル比[希釈度(mol/mol)]と、変換率が80%を下回る前に到達する単一サイクルにおいて、グラムで表される触媒材料の使用量に対する、グラムで表される1,3-ブタジエンの製造量として定義される1,3-ブタジエンの製造性(g
1,3-BDE/g
触媒)とを示している。
【表3】
【0128】
表3において報告されたデータから、以下のことが分かる。
例13(比較例)と例14(発明例)との比較から、本発明に係る細孔モード径が10nmより大きいシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)では、より高い製造性(g1,3-BDE/g触媒)が得られることが分かる。
例13(比較例)、例14(発明例)及び例15(発明例)の比較から、合成段階におけるゲルのエージングの増大のおかげで得られる本発明に係る細孔モード径のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)では、高い製造性(g1,3-BDE/g触媒)が得られることが分かる。
例13(比較例)と例16(発明例)との比較から、合成段階におけるNaH2PO4・H2Oの使用のおかげで得られる本発明に係る細孔モード径のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)では、高い製造性(g1,3-BDE/g触媒)が得られることが分かる。
例17(比較例)、例18(発明例)及び例19(発明例)の比較から、押出により得られる本発明に係る細孔モード径のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)では、高い製造性(g1,3-BDE/g触媒)が得られることが分かる。
【0129】
(例19)
(例8の触媒の寿命試験)
例8に記載のように得られた触媒を、一連の反応サイクルと、反応物の変換率が80%を下回った場合のその後の再生からなる寿命試験に供した。
【0130】
再生を、以下の様式で行った:触媒を、AISI 316L製の固定床を備えた、長さ350mm、内径9.65mmの管状反応器に充填し、存在する全ての揮発性有機化合物をそこから除去するために、窒素流(GHSV=1500時間-1)中で450℃の温度に1時間保持した。その後、空気を徐々に当該反応器に送り始め、その濃度を徐々に増加させ、4時間の範囲で空気の供給を完遂した。再生をさらに24時間続け、その最後に触媒を窒素(N2)中でその反応温度まで冷却し、次の反応サイクルに使用した。
【0131】
表4は、実行したいくつかの反応サイクルについて[サイクル数(反応/再生)];反応時間(「Time on Stream」- T.o.S.)(時間)、すなわち、変換率が80%を下回る前に、プロセス条件下で触媒が供給流と接触していた時間と;充填した触媒材料と供給容量との比として計算される接触時間[τ(秒)]と;使用した希釈度、すなわちブテノール混合物に適量の水を加えることによって得られる、供給される水:ブテノールのモル比[希釈度(mol/mol)]と;変換率が80%を下回る前に到達する単一サイクルにおいて、グラムで表される触媒材料の使用量に対する、グラムで表される1,3-ブタジエンの製造量として定義される1,3-ブタジエンの製造性(g
1,3-BDE/g
触媒)とを示している。
【表4】
【0132】
表4において報告されたデータから、本発明に係る細孔モード径を有する例8のシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)では、数回の反応/再生サイクルの後でも良好な製造性(g1,3-BDE/g触媒)が得られることが分かる。さらに、この触媒は、総持続時間が4000時間を超え、38回の再生を経て39回の反応サイクルに達したが、減衰の兆候を一度も示すことなく、上述の反応サイクル当たりの平均製造性が140グラム(g1,3-BDE/g触媒)より高く維持されていることに留意されたい。