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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】イオン源を有するガス分析器システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/28 20060101AFI20250130BHJP
   H01J 49/12 20060101ALI20250130BHJP
   H01J 49/06 20060101ALI20250130BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20250130BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20250130BHJP
   H01J 49/02 20060101ALI20250130BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H01J49/28 800
H01J49/12
H01J49/06 100
H01J37/08
H01J37/244
H01J49/02 500
H01J37/147 D
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022530928
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020062048
(87)【国際公開番号】W WO2021108424
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】16/698,178
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原(橋詰) 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ブラッカー・ジェラルド・エー
(72)【発明者】
【氏名】スウィニー・ティモシー・シー
(72)【発明者】
【氏名】パーシー・クリントン・エル
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-511614(JP,A)
【文献】特開2013-127976(JP,A)
【文献】特表2014-527275(JP,A)
【文献】米国特許第05401963(US,A)
【文献】特開昭51-089789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01J 49/00-49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源のイオン化領域内に源電界を発生させるように構成された前記イオン源であって、前記イオン化領域は、監視対象チャンバからガスを受け取り、前記ガスのイオンが前記イオン源内で形成される、イオン源と、
前記ガスの前記イオンの一部を前記イオン源の外に放出する為に配置された源アパーチャであって、前記イオンは、前記源電界によって、前記源アパーチャに向かう方向に加速される、源アパーチャと、
前記イオンの前記放出分を前記ガスのイオンの質量電荷比に基づいて角度変位させる磁界を画定するように配置された磁石アセンブリと、
前記イオンの前記放出分のうちの変位したイオン成分を検出する為に配置された検出器と、
前記源アパーチャと前記検出器との間に配置されたイオンビーム偏向器であって、前記イオンビーム偏向器は偏向電界を画定し、前記偏向電界は、前記磁界を横切り、前記イオンの前記放出分の移動方向を横切る、イオンビーム偏向器と、
前記変位したイオン成分を前記検出器において受けたことによって発生する電流を測定する為に電気的に接続されたイオン電流測定回路と、を含み、
前記イオンビーム偏向器が、様々なエネルギを有する前記変位したイオン成分と共通イオン成分質量とを方向付けて、前記検出器の検出器アパーチャを通ってフォーカスされるように、構成され、
前記ガスの前記イオンの、前記イオン源からの放出分が、前記イオンビーム偏向器の、前記イオンビーム偏向器のジオメトリ中心よりも前記イオンビーム偏向器の一方の側部に近いほうに入るように、前記源アパーチャが配置されている、ガス分析器システム。
【請求項2】
前記イオン源は冷陰極イオン源を含む、請求項1に記載のガス分析器システム。
【請求項3】
前記イオン源は熱陰極イオン源を含む、請求項1に記載のガス分析器システム。
【請求項4】
前記熱陰極イオン源は、熱フィラメント及び電子コレクタを含み、前記熱フィラメント及び前記電子コレクタは、前記イオン源内の前記熱フィラメントと前記電子コレクタとの間を通る電子ビームを発生させるように構成されている、請求項3に記載のガス分析器システム。
【請求項5】
前記熱フィラメント及び前記電子コレクタは、前記源アパーチャに平行な方向に前記電子ビームを発生させるように構成されており、前記源アパーチャは、前記電子ビームに平行な方向に細長く延びたアパーチャを含む、請求項4に記載のガス分析器システム。
【請求項6】
エネルギフィルタを更に含む、請求項1に記載のガス分析器システム。
【請求項7】
前記源アパーチャは細長アパーチャを含み、前記エネルギフィルタは、前記イオンの前記放出分のイオンビーム経路中に配置されたエネルギフィルタグリッドを含み、前記エネルギフィルタグリッドは、前記源アパーチャの前記細長アパーチャにほぼ垂直な向きの導電性フィラメントを含み、前記源アパーチャの前記細長アパーチャにほぼ平行な向きの導電性フィラメントを含まない、請求項6に記載のガス分析器システム。
【請求項8】
前記エネルギフィルタは入口グリッドを含み、前記入口グリッドは、前記源アパーチャと、前記イオンの前記放出分のイオンビームが前記イオンビーム偏向器に入る入口との間に配置されている、請求項6に記載のガス分析器システム。
【請求項9】
前記エネルギフィルタは出口グリッドを含み、前記出口グリッドは、前記イオンの前記放出分のイオンビームが前記イオンビーム偏向器から出る出口と、前記検出器アパーチャとの間に配置されている、請求項6に記載のガス分析器システム。
【請求項10】
前記イオンビーム偏向器は、前記イオンの前記放出分のイオンビームを前記検出器上にアライメントするように構成されている、請求項1に記載のガス分析器システム。
【請求項11】
前記イオンビーム偏向器は平行板のペアを含む、請求項1に記載のガス分析器システム。
【請求項12】
前記イオンビーム偏向器は曲面板のペアを含む、請求項1に記載のガス分析器システム。
【請求項13】
前記イオンビーム偏向器の偏向板のペアの間に前記偏向電界を発生させる為に前記イオンビーム偏向器に電気的に接続されている偏向器電源を更に含む、請求項1に記載のガス分析器システム。
【請求項14】
前記偏向器電源が電気的に接続されているのは、(i)前記イオンビーム偏向器の第2の偏向板の接地電圧に対して、前記イオンビーム偏向器の第1の偏向板に正の偏向器バイアス電圧を与えること、又は(ii)前記第2の偏向板の前記接地電圧に対して、前記第1の偏向板に負の偏向器バイアス電圧を与えること、又は(iii)前記第1の偏向板に第1の偏向器バイアス電圧を与え、前記第2の偏向板に第2の偏向器バイアス電圧を与えることの為である、請求項13に記載のガス分析器システム。
【請求項15】
前記偏向器電源に偏向器制御信号を供給するように構成された偏向器制御回路を更に含む、請求項13に記載のガス分析器システム。
【請求項16】
前記偏向器制御回路は、前記イオンビーム偏向器が、様々なエネルギを有する前記変位したイオン成分と前記共通イオン成分質量とを方向付けて、前記検出器の前記検出器アパーチャを通ってフォーカスされるように、前記偏向器電源の電圧を制御するように構成されている、請求項15に記載のガス分析器システム。
【請求項17】
前記偏向器制御回路は、前記イオンビーム偏向器が、前記イオンの前記放出分のうちの前記変位したイオン成分の偏向を変化させるように、前記偏向器電源の電圧を変化させるように構成されている、請求項15に記載のガス分析器システム。
【請求項18】
前記偏向器制御回路は、(i)時間に対する前記電圧の三角のこぎり歯状変化、又は(ii)前記変位したイオン成分のピーク幅及び時間的位置を他のイオン成分に対して制御する為の電圧波形に基づいて前記偏向器電源の前記電圧を変化させるように構成されている、請求項17に記載のガス分析器システム。
【請求項19】
前記偏向器制御回路は、前記偏向器電源の前記電圧がスキャンされたときに複数のイオン成分を、前記検出器によって順次検出されるように偏向させることを前記イオンビーム偏向器に行わせる為に前記偏向器電源の電圧をスキャンするように構成されている、請求項15に記載のガス分析器システム。
【請求項20】
前記偏向器制御回路は、前記複数のイオン成分の質量スペクトルの検出を可能にする為に前記偏向器電源の前記電圧をスキャンするように構成されている、請求項19に記載のガス分析器システム。
【請求項21】
前記イオン源の総イオン電流を測定する為に電気的に接続されている総電流測定回路を更に含む、請求項1に記載のガス分析器システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年11月27日に出願された米国特許出願第16/698,178号の継続出願である。上記出願の教示全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
高真空プロセスにおけるトラブルシューティングを容易化することが常に必要とされている。高真空プロセスは、典型的には、真空チャンバを大気圧からポンプダウンすることから始まるワークフローをたどる。ユーザは、ポンプダウン中の真空チャンバの圧力を追跡し、全圧が目標圧力に達したら、真空プロセス又は真空実験を開始することが可能である。一般的には、あらかじめ指定された時間の範囲内に目標圧力に達すると予想される。予想された時間が経過しても目標圧力に達していない場合、或いは、目標圧力に達するのに普段よりも時間がかかる場合、真空システムのユーザは真空チャンバのトラブルシューティングを行う必要がある。多くの場合、トラブルシューティングでは、電離真空計を使用することが必要であるのみならず、ヘリウム漏れ検出器を使用する為に真空を破壊することも必要であり、ときには高価な残留ガス分析器を使用して水位を測定することも必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、高真空プロセスのトラブルシューティングに関わる時間及びコストを低減する機器を提供することが目下必要とされている。更に、ヘリウム漏れ検出システム、水含有率測定システム、磁気セクタ、四重極マスフィルタ、又は他の、イオン源を使用するシステムの改良が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ガス分析器システムは、熱陰極イオン源であってもよいイオン源と、磁界を画定する為に配置され、これにより、イオン成分をそれらの質量電荷比に基づいて分離することが可能になる磁石アセンブリと、検出器を横切るイオン成分をスキャンすることが可能である偏向板のペアなどのイオンビーム偏向器とを使用する。イオンビーム偏向器は偏向電界を画定し、この偏向電界は、磁界を横切り、イオン源から放出されるイオンの移動方向を横切る。この構成により、イオンは狭いエネルギ分布で生成可能であり、これにより、鋭いピークを持つ質量スペクトルが得られ、これは高い分解能を有する。後で更に、他の利点も説明する。
【0005】
ガス分析器システムはイオン源を含み、イオン源は、イオン源のイオン化領域内に源電界を発生させるように構成されている。イオン化領域は、監視対象チャンバからガスを受け取り、そのガスのイオンがイオン源内で形成される。源アパーチャが、ガスのイオンの一部をイオン源の外に放出する為に配置されており、イオンは、源電界によって、源アパーチャに向かう方向に加速される。イオンの放出分をガスのイオンの質量電荷比に基づいて角度変位させる磁界を画定するように、磁石アセンブリが配置されている。源アパーチャと検出器との間にイオンビーム偏向器が配置されており、イオンビーム偏向器は偏向電界を画定し、偏向電界は、磁界を横切り、イオンの放出分の移動方向を横切る。イオンの放出分のうちの変位したイオン成分を検出する為に検出器が配置されている。変位したイオン成分を検出器において受けたことによって発生する電流を測定する為にイオン電流測定回路が電気的に接続されている。
【0006】
イオン源は、冷陰極イオン源又は熱陰極イオン源を含んでよい。熱陰極イオン源は、熱フィラメント及び電子コレクタを含んでよく、熱フィラメント及び電子コレクタは、イオン源内の熱フィラメントと電子コレクタとの間を通る電子ビームを発生させるように構成されている。熱フィラメント及び電子コレクタは、源アパーチャに平行な方向に電子ビームを発生させるように構成されてよく、源アパーチャは、電子ビームに平行な方向に細長く延びたアパーチャを含む。本システムは更に、エネルギフィルタを含んでよい。源アパーチャは細長アパーチャを含んでよく、エネルギフィルタは、イオンの放出分のイオンビーム経路中に配置されたエネルギフィルタグリッドを含んでよく、エネルギフィルタグリッドは、源アパーチャの細長アパーチャにほぼ垂直な向きの導電性フィラメントを含み、源アパーチャの細長アパーチャにほぼ平行な向きの導電性フィラメントをほぼ含まない。エネルギフィルタは入口グリッドを含んでよく、入口グリッドは、源アパーチャと、イオンの放出分のイオンビームがイオンビーム偏向器に入る入口との間に配置されている。又、エネルギフィルタは出口グリッドを含んでよく、出口グリッドは、イオンの放出分のイオンビームがイオンビーム偏向器から出る出口と、検出器アパーチャとの間に配置されている。
【0007】
イオンビーム偏向器は、イオンの放出分のイオンビームを検出器上にアライメントするように構成されてよい。イオンビーム偏向器は、平行板のペアを含んでよく、曲面板のペアを含んでよい。ガスのイオンの、イオン源からの放出分が、イオンビーム偏向器の、イオンビーム偏向器のジオメトリ中心よりもイオンビーム偏向器の一方の側部に近いほうに入るように、源アパーチャが配置されてよい。イオンビーム偏向器の偏向板のペアの間に偏向電界を発生させる為に、偏向器電源がイオンビーム偏向器に電気的に接続されてよい。偏向器電源が電気的に接続されているのは、(i)イオンビーム偏向器の第2の偏向板の接地電圧に対して、イオンビーム偏向器の第1の偏向板に正の偏向器バイアス電圧を与えること、又は(ii)第2の偏向板の接地電圧に対して、第1の偏向板に負の偏向器バイアス電圧を与えること、又は(iii)第1の偏向板に第1の偏向器バイアス電圧を与え、第2の偏向板に第2の偏向器バイアス電圧を与えることの為であってよい。
【0008】
偏向器制御回路が、偏向器電源に偏向器制御信号を供給するように構成されてよい。偏向器制御回路は、イオンビーム偏向器が、様々なエネルギを有する変位したイオン成分を方向付けるように、且つ、共通イオン成分質量が検出器の検出器アパーチャを通ってフォーカスされるように、偏向器電源の電圧を制御するように構成されてよい。偏向器制御回路は、イオンビーム偏向器が、イオンの放出分のうちの変位したイオン成分の偏向を変化させるように、偏向器電源の電圧を変化させるように構成されてよい。偏向器電源の電圧は、(i)時間に対する電圧の三角のこぎり歯状変化、又は(ii)変位したイオン成分のピーク幅及び時間的位置を他のイオン成分に対して制御する為の電圧波形に基づいて変化させてよい。偏向器制御回路は、偏向器電源の電圧がスキャンされたときに複数のイオン成分を、検出器によって順次検出されるように偏向させることをイオンビーム偏向器に行わせる為に偏向器電源の電圧をスキャンするように構成されてよく、複数のイオン成分の質量スペクトルの検出を可能にする為に偏向器電源の電圧をスキャンするように構成されてよい。イオン源の総イオン電流を測定する為に総電流測定回路が電気的に接続されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述の内容は、以下の、添付図面に示した例示的実施形態のより具体的な説明から明らかになるであろう。添付図面では、類似の参照符号は様々な図面の全体を通して同じ要素を参照する。図面は、必ずしも正確な縮尺では示しておらず、それよりも実施形態を説明することに重点を置いている。
図1】本発明の一実施形態によるガス分析器システムの上面図であり、エンクロージャの切欠図内に内部構成要素を示している図である。
図2】本発明の一実施形態による、図1のガス分析器システムのエンクロージャの外側の斜視図であり、ガス分析器システムとともに使用される磁石アセンブリを示している図である。
図3】本発明の一実施形態による、図1のガス分析器システムの内部構成要素及び側壁の側面斜視図である。
図4】本発明の一実施形態による、図1のガス分析器システムのイオン源の斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による、図1のガス分析器システムの内部構成要素及び側壁の側面図である。
図6】本発明の一実施形態による、図1のガス分析器システムの内部構成要素及び側壁の上面図である。
図7】本発明の一実施形態による、偏向板のオフセンター動作を示す概略図である。
図8】本発明の一実施形態によるガス分析器システムの概略図であり、電気構成要素と、磁界を通るイオンビーム経路とを示している図である。
図9】本発明の一実施形態によるガス分析器システムの概略斜視図であり、このシステムはイオンビーム偏向器を使用してイオン成分を、検出器で検出されるように偏向させる。
図10】本発明の一実施形態による、偏向板を使用するエネルギフォーカシングを示す概略図である。
図11】本発明の一実施形態によるガス分析器システムの概略斜視図であり、このシステムは、反転マグネトロン冷陰極放電電極構成とイオンビーム偏向器とを使用して、イオン成分を、検出器で検出されるように偏向させる。
図12】本発明の一実施形態による、曲面板のペアを含むイオンビーム偏向器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的実施形態を説明する。
【0011】
本願発明者等のうちの何人かが名を連ねる先行出願では、ガス分析器システム用の冷陰極イオン源が開示されていた。これについては、参照によってその教示全体が本明細書に組み込まれている、2019年4月29日に出願された米国特許出願第16/397,436号明細書(Brucker et al.)、件名「Gas Analysis with an Inverted Magnetron Source」を参照されたい。その出願の開示では、磁界が電界を横切る方向である冷陰極イオン源を使用することと、イオンビーム偏向器を使用して、イオンビーム及びイオン成分の、検出器アパーチャを横切るスイープを可能にすることによって、イオン成分のスペクトルの発生を可能にすることと、が教示されていた。
【0012】
その出願で教示されている冷陰極イオン源には多くの利点があるが、その出願の教示は熱陰極イオン源に拡張することが可能である。又、熱陰極イオン源及び冷陰極イオン源の両方に更なる特徴が適用されうる。本明細書において教示されるのは、イオン源を使用するガス分析器システムであり、イオン源は熱陰極イオン源であってよい。磁界を画定する為に磁石アセンブリが配置され、これにより、イオン成分をそれらの質量電荷比に基づいて分離することが可能になる。イオンビーム偏向器(例えば、偏向板のペア)が使用され、これは、検出器を横切るイオン成分をスキャンすることが可能である。イオンビーム偏向器は偏向電界を画定し、この偏向電界は、磁界を横切り、イオン源から放出されるイオンの移動方向を横切る。幾つかある潜在的利点の中でも特に、イオンは狭いエネルギ分布で生成され、これにより、質量スペクトル中に鋭いピークが形成されて、高い分解能が得られる。本明細書では他の潜在的利点も教示されている。
【0013】
最初に図1~3を参照して、ガス分析器システムについて説明する。図1はガス分析器システム100の上面図であり、エンクロージャ180の切欠図内に内部構成要素を示している。図2はエンクロージャ180の外側の斜視図であり、磁石アセンブリ264を示している。図3は、本システムの内部構成要素及び側壁382の側面斜視図である。
【0014】
図1では、ガス分析器システム100はイオン源104を含み、イオン源104は、イオン源104のイオン化領域110内に源電界を発生させるように構成されている。図1では、例えば、源電界は、源プッシャ電極108と陽極電極106との間を右から左に方向付けられてよい。イオン化領域110は、監視対象チャンバからガスを受け取り、そのガスのイオンがイオン源104内で形成される。そのガスのイオンの一部をイオン源104の外に放出する為に源アパーチャ114が配置されており、源アパーチャ114は、陽極電極106の一部に形成されたアパーチャであってよい。イオンは、源電界によって、源アパーチャ114に向かう方向に加速される。源アパーチャ114(図1)から放出されるイオンをイオンの質量電荷比に基づいて角度変位させる磁界を画定するように磁石アセンブリ264(図2を参照)が配置されており、この角度変位は、例えば、後述の図8の860に示すように、放出されたイオンの飛行領域を横切る磁界を画定することによって行われる。後で図3及び4に関して示すように、図1のイオン源104によって電子ビーム326が生成される。電子ビームは、ガス分子と衝突して、イオン源104内にガスのイオンを形成する。陽極電極106を拡張して、源プッシャ電極108以外のイオン源104をほぼ取り囲む壁を形成してよい。別の実施形態では、イオン源104はワイヤメッシュ材料で作られてよく、それによってイオン源104はガスを通すことが可能である。この場合は、イオン源104の中実な壁が、穴あき金属又は焼結ワイヤメッシュに置き換えられる。図1の源アパーチャ114は、例えば、幅が約0.005インチであってよいが、当然のことながら、他の寸法も使用されてよい。
【0015】
真空ポート148により、監視対象チャンバからのガスが、監視対象チャンバからガス分析器システムに入ることが可能であり、それによって、ガスはイオンビームの向流方向に移動する。即ち、ガスは、検出器116から源アパーチャ114に向かう方向に移動する。イオン源104においては、ガスは(例えば、イオン源104の上部の開口を通って、又は場合によっては、イオン源104の開放側部又は穴あき側部を通って)イオン源104に入り、その後、イオン源104内でイオン化されてイオンビームが形成され、イオンビームは逆方向に放出される。即ち、イオンビームは、源アパーチャ114から検出器116に向かって移動する。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態による、図1のガス分析器システムのエンクロージャの外側の斜視図であり、ガス分析器システムとともに使用される磁石アセンブリ264を示している。磁石アセンブリ264は一体型磁石を含んでよく、この磁石は、イオン源の上を延び、源アパーチャから検出器に向かって長手方向に延びる方向に延びる。図2の例では、(上部及び下部の)2つの一体型磁石を示しており、これらの磁石は、源アパーチャと検出器との間のイオンの飛行経路の領域を挟んでおり、これは、飛行経路領域に均一磁界を発生させることに役立つ。磁石アセンブリ264によって与えられる磁界は、例えば、全域にわたって1キロガウスであってよく、水が他の残りのガスと分離して見えるほどイオン成分を分離することが可能である。更なる質量分離の為に、飛行経路の上の別の磁石266、又は磁気ヨーク、又はその両方を追加することによって、飛行経路における磁気強度を増強することが可能である。図1~3の熱陰極イオン源実施形態では、磁石アセンブリ264は、源アパーチャと検出器との間のイオンの飛行領域だけでなくイオン源104(図1を参照)の上を延びてもよいが、それは必須ではない。磁石アセンブリ264をイオン源104の上に延ばすことの利点は、電子ビーム326(図3を参照)の上に磁界を追加することによって、電子の円軌道が増え、それによって、電子の軌道が長くなることである。しかしながら、幾つかの熱陰極イオン源実施形態では、磁石アセンブリ264は、源アパーチャと検出器との間のイオンの飛行領域の上を延びているだけである。一方、後の図11に示す冷陰極イオン源実施形態では、磁石アセンブリ264は、イオンの質量分離を促進する為に、冷陰極イオン源内の電界を横切るクロスフィールド配置を画定することを必要とされ、源アパーチャと検出器との間のイオンの飛行領域の上を延びてよい。又、図2には電気フィードスルー240も示しており(図5及び6も参照)、これらは全て、1つの側壁を貫通して延びてよい。
【0017】
検出器116(図1を参照)は、イオンの放出分のうちの変位したイオン成分を検出する為に配置されている。検出器116は、例えば、検出器アパーチャ120を含んでよく、その幅は約0.010インチであってよいが、当然のことながら、他の寸法も使用されてよい。検出器116は、ファラデーコレクタ122を含んでもよい。検出器アパーチャ120は、イオンのエネルギフィルタとして働くように電圧バイアスされてよい。他のタイプのエネルギフィルタも使用されてよく、例えば、後でエネルギフィルタグリッド124a/124bに関して述べるように使用されてよく、(後述の、図11の)検出器シールド1198をバイアスすることによって使用されてよい。
【0018】
源アパーチャ114と検出器116との間にイオンビーム偏向器118が配置されている。イオンビーム偏向器118は、磁界(図8の方向860を参照)を横切る偏向電界であって、源アパーチャから放出されたイオンの移動方向を横切る(即ち、図1の源アパーチャ114から検出器アパーチャ120までの移動の方向を横切る)偏向電界を画定する。例えば、図1では、偏向器118は、図1の上から下の方向に偏向電界を画定することが可能である。変位したイオン成分を検出器116において受けたことによって発生する電流を測定する為に、イオン電流測定回路(図1には示しておらず、図9の970を参照)が電気的に接続されている。
【0019】
更に、図1のシステムは、イオンビーム経路中に配置されたエネルギフィルタ(例えば、エネルギフィルタグリッド124a及び124b)を含む。エネルギフィルタグリッド124aは入口グリッドであり、これは、源アパーチャ114と、イオンビームがイオンビーム偏向器118に入る入口との間に配置されている。エネルギフィルタグリッド124bは出口グリッドであり、これは、イオンビームがイオンビーム偏向器118から出る出口と、検出器アパーチャ120との間に配置されている。当然のことながら、入口グリッド124a及び出口グリッド124bの一方又は両方が使用されてよい。
【0020】
図3は、本システムの内部構成要素及び側壁382の側面斜視図である。ここで、幾つかの実施形態では、本システムの内部構成要素は、組み立てを簡単にする為に都合よく側壁382にマウントされていてよく、電気フィードスルー(図2、5、及び6の240を参照)が全て、1つの側壁を貫通して延びていてよいことに注目されたい。更に、側壁382(図3~7を参照)及びベースプレート480(例えば、図4を参照)がエンクロージャ180(図1及び2を参照)の一部を形成してよいことに注目されたい。
【0021】
図4は、本発明の一実施形態による、図1のガス分析器システムのイオン源104の斜視図である。イオン源104は熱陰極イオン源であってよく、これは、熱フィラメント428(又は他の熱陰極イオン源)及び電子コレクタ430を含んでよく、熱フィラメント428及び電子コレクタ430は、イオン源104内の熱フィラメント428と電子コレクタ430との間を通る電子ビーム326を発生させるように構成されている。フィラメント偏向器432が電子ビーム326をフォーカスする。電子ビーム326中の電子は、イオン源を横切る磁界によって、円軌道を描く歳差運動をする。イオン源104の底部を形成するインシュレータ436に出口穴434が形成されている。熱フィラメント428及び電子コレクタ430は、源アパーチャ114に平行な方向に電子ビーム326を発生させるように構成されてよく、源アパーチャ114は電子ビームに平行な方向に細長く延びており、例えば、図4では、電子ビーム326及び源アパーチャ114の両方が図4での垂直方向に並んでいる。最も効率的な電子イオン化設計では、電子は、磁界及び源アパーチャの向きに平行に投入される。源アパーチャに到達できるイオンは、狭い範囲のポテンシャルエネルギの中で、即ち、源の平坦な等ポテンシャル領域の中で発生するはずであり、これはモデリングにより明らかにできる。
【0022】
図4に示すように、入口グリッド124aは、源アパーチャ114の細長アパーチャにほぼ垂直な向きの、即ち、図4での水平方向の向きの導電性フィラメント438を含んでよく、源アパーチャ114は図4での垂直方向を向いており、源アパーチャ114には、源アパーチャ114の細長アパーチャにほぼ平行な向きの導電性フィラメントは存在せず(又はほぼ存在せず)、即ち、図4での垂直方向の向きのフィラメントは存在しない。このように、源アパーチャと検出器アパーチャとの間の経路に干渉するグリッド線は存在せず、例えば、垂直方向のリボンビームがグリッドメッシュ全体にわたって水平方向にスキャンされている場合には存在せず、導電性メッシュ内で垂直方向のフィラメントに使用される場合には干渉に遭遇するであろう。この配置により、例えば、分解能又はピーク位置に影響を及ぼすことなく信号感度を倍増することが可能である。出口グリッド(図1の124bを参照)では、源アパーチャ114の細長アパーチャにほぼ垂直な向きの、同じ配置の導電性フィラメント438(図4)を使用してよい。
【0023】
図5は、図1のガス分析器システムの内部構成要素及び側壁の側面図である。幾つかの電気フィードスルー240(個々には列挙せず)が、電気信号及び電力をガス分析器システムのエンクロージャに出し入れすることを可能にしている。フィラメント電源供給542及びフィラメント電源戻り544が熱フィラメントに電力を出し入れする。
【0024】
図6は、本発明の一実施形態による、図1のガス分析器システムの内部構成要素及び側壁の上面図である。この図では、電気フィードスルー240は、ガス分析器システムのエンクロージャの外側からエンクロージャの内部に延びている。又、この上面図には、源プッシャ電極108と、フィラメント電源供給542及びフィラメント電源戻り544(それぞれがそれぞれの電気フィードスルーを有する)と、フィラメント偏向器432と、が示されている。又、図6には偏向板646aが示されており、これは、(図1の)イオンビーム偏向器118を形成する平行板のペアの一方である。もう一方の板(図7の746bを参照)は、図6には示していない。図6に示すように、入口グリッド124a及び出口グリッド124bは、それぞれ、イオンビームがイオンビーム偏向器を出入りする入口及び出口に配置される。即ち、ここでは、電極偏向板646aとこれに対応する平行板(図7の746bを参照、図6には示さず)との間に配置される。
【0025】
図7は、本発明の一実施形態による、偏向板646a/746bのオフセンター動作を示す概略図である。ここでは、イオン源104から放出されたイオンビーム758が、イオンビーム偏向器118の、イオンビーム偏向器118のジオメトリ中心750よりもイオンビーム偏向器118の一方の側部に近いほうに入るように、源アパーチャ114が配置されている。この配置には幾つかの潜在的利点がある。電圧が印加される偏向板までの距離を短くすることにより、偏向板上で必要とされる電圧が低くなり、これによって、電源のコストを節約でき、電気フィードスルーに必要な定格が低くなり、構成要素の信頼性が高まる。更に、等ポテンシャル線がより平坦になり、偏向板により近くなり、それによって、イオンビームの、その飛行経路に沿ってのひずみが小さくなる。
【0026】
図8は、本発明の一実施形態によるガス分析器システムの概略図であり、電気構成要素と、磁界を通るイオンビーム経路とを示している。本システムは、電圧VPE=Va+VPUSHでバイアスされた源プッシャ電極108を含み、VPEは源プッシャ電極108の電圧であり、Vaは陽極電極106の電圧であり、VPUSHは源プッシャ電極108のバイアス電圧であり、これは例えば200V程度であってよい。電子ビーム326は、熱フィラメント428と電子コレクタ430との間を移動する。フィラメント加熱器電圧852は、例えば、電流を2Aとして2Vに設定される。フィラメントバイアス電圧854(VFB)は、例えば、0~100Vである。アノードバイアス電圧856(Va)は、例えば、200~500Vである。イオンビーム758は、入口グリッド124aを通って放出され、偏向板646a/746b間を移動する。磁界方向860が示されており、磁界の大きさは、例えば、約1キロガウスであってよい(なお、説明を簡単にする為に、図8の電子ビーム326の向きは、ページ上で垂直方向であるように示しているが、本明細書に示した他の実施形態では、ページから出てくる向きになるであろう。これは、本明細書の他の場所に示した細長源アパーチャと平行であるようにする為である)。一方の偏向板646a(プッシャ偏向板)は電圧862(V(t))でバイアスされ(この電圧は、この例では、ピークが約1000Vののこぎり歯状パターン電圧である)、他方の偏向板746bは接地電圧である。出口グリッド124bは、例えば、VF=0~500Vでバイアスされている。検出器アパーチャ120は、接地電圧でバイアスされている。別の例では、出口グリッド124bを接地電位に保ち、代わりに検出器アパーチャ120をバイアスすることによって、エネルギフィルタリングが実現されてよい。ファラデーコレクタ122は、イオンビーム758の検出分を受け、検出されたイオン電流IPP(G)を生成し、これは、例えば、イオン構成要素の、検出器アパーチャ120で検出された分圧を測定することに使用されてよい。
【0027】
図8の実施形態では、高エネルギ源設計により、高電圧でバイアスされたイオン化ボリューム内にイオンが生成される。源プッシャ電極108によって、イオンは、源アパーチャの細いアパーチャから出て磁気セクタに入る。イオンは、源から出て、高運動エネルギを得てから、質量分離器内を飛行する。質量分離器は、偏向板646a/746bがオフのときには接地ポテンシャルで保持されている。源のバイアスを調節することにより、磁気セクタを通るイオンのエネルギを制御することが可能である。この設計の利点として、飛行経路全体が接地ポテンシャルで保持され、源だけをフロートすればよい。イオン化領域の電圧バイアスによっては、フィラメントを接地ポテンシャル近くで動作させることが可能な場合が多く、電子は源に入るときに高エネルギを取得する。
【0028】
図8では、イオンは、電子ビーム326によって画定されたイオン化領域の中の陽極内部で生成される。ポテンシャルはイオン化バンド内で明確に画定されているので、イオンエネルギ分布は非常に狭い。イオン化の効率を最大化する為に、電子ビーム326は磁界860に平行であってよく(なお、ここでも説明を簡単にする為に、図8の源をページの面内に示しているが、これは磁界の方向860に平行であってよい)、それによって電子は、円軌道を描く歳差運動をし、イオン化軌道が長くなる。陽極106内で形成されたイオンは、源プッシャ電極108によって源アパーチャに向けてプッシュされる。電子は、陽極106に向かうにつれて加速し、陽極106とフィラメントバイアス854との間の電位差に等しいエネルギに達する。電子ビーム326は、陽極アパーチャ114(図1を参照)の近くに位置するバンドにあるイオン化領域を横切る。これにより、イオンは、エネルギ分布を狭くする等ポテンシャル領域で形成される。
【0029】
図9は、本発明の一実施形態によるガス分析器システムの概略斜視図であり、このシステムはイオンビーム偏向器118を使用してイオン成分を、検出器で検出されるように偏向させる。イオンビーム偏向器118(例えば、平行板646a及び746bのペア、又は曲面板のペア(図12の646a及び746bを参照))は、源アパーチャ114と検出器116との間に配置される。そのようなイオンビーム偏向器118を使用して、イオン成分を偏向させることが可能であり、エネルギフォーカシングを実施することが可能である(これについては後で詳述する)。変位したイオン成分968は様々なイオン成分に分離され、それらは、源アパーチャ114から遠ざかるにつれて互いに広がって分散する。源アパーチャ114(例えば垂直スリット)により、イオン成分968の薄いスライバが源から出ることが可能である。磁石264(図2を参照)による、源アパーチャ114と検出器116との間のイオン飛行領域における磁界によって、イオンの質量依存偏向が行われて、イオンがイオン成分968b~dに分離される。軽いイオンは重いイオンよりも大きく偏向される。例えば、変位したイオン成分の968bはヘリウムイオンでできており、968cは水イオンでできており、968dは残留ガス(例えば窒素及び酸素)でできている。追加磁石でイオン成分をそのように大きく偏向させることにより、例えば、水イオンと他の残留ガスイオン968dとを分離することを可能にできる。検出器116は金属製のファラデーコレクタ122を含み、これは、検出器アパーチャ120を通って検出器116に達したイオン束に比例するイオン電流を生成する。このイオン電流は、検出器に達するイオン成分968dの分圧電流(IPP)である。分圧電流の測定にはイオン電流測定回路970が使用される。この分圧は、監視対象チャンバからのガスの分圧、具体的には、検出器に達する質量分離されたイオン成分968dの分圧を示す為に使用されてよい。更に、イオン源の総イオン電流を測定する為に総電流測定回路901が電気的に接続されてよい。例えば、総電流測定回路901は、イオン源から流れる総イオン電流に比例する総電流を測定することが可能であり、これを使用して、監視対象チャンバからのガスの全圧を決定することが可能である。例えば、図9に示すように、総電流測定回路901は、イオン源(ここでは熱源(hot source)の熱フィラメント)に流れ込む総電流を測定することが可能であるが、その代わりに別の方法で総電流を測定することも可能であり、例えば、陽極106を通って流れる電流を測定することによって総電流を測定することも可能である。分圧電流及び全圧電流に基づいて、総電流測定回路901と電気的に関連する全圧ディスプレイが、監視対象チャンバからのガスの全圧を示す(例えば視覚的に示す)ことが可能であり、イオン電流測定回路970と電気的に関連する分圧ディスプレイが、監視対象チャンバからのガスの分圧を示す(例えば視覚的に示す)ことが可能である。
【0030】
更に、図9の実施形態では、検出器アパーチャ120に入るイオン成分968b~dを操舵することにイオンビーム偏向器118が使用される。磁界がイオン成分の軌道を(図9に関して)下向きに曲げるのに対し、偏向板646a及び746bの間の電界は、接地された偏向板746bに対して偏向板646aが正にバイアスされた「プッシャ」配置であるとすれば、イオン成分の軌道を(図9に関して)上向きに静電的に操舵する。図9では、例えば、偏向板646a及び746bの間の電位差は、残留ガス成分968dが検出されるように設定される。両偏向板646a及び746bが接地されていれば、源アパーチャの角度、及び磁界によるイオン成分の偏向の大きさに応じて、全てのイオンが検出器アパーチャ120から外れることになるであろう。しかし、一方の偏向板(ここではプッシャ偏向板646a)の電圧が、他方の偏向板746b(この例では接地されている)に対して変化している(ここでは正の方向に高くなっている)為、イオン成分968b~dは上向きに操舵されて(又は電圧変化に応じて下向きに操舵されて)、様々なイオン成分が検出器アパーチャ120を無事通過することが可能になる。図9では、プッシャ偏向板646aは、残留ガスイオン成分968dが検出器アパーチャ120に達するような電圧に設定されている。偏向板646aの電圧が更に高くなると、水イオン成分968c又はヘリウムイオン成分968bが検出器アパーチャ120に達して信号が生成されるであろう。このように、偏向器118はイオン成分の操舵可能を可能にする為、複数のイオン成分種を検出器116に順次届けることが可能である。図9の例では、偏向板646aはプッシャ偏向板であり、これは、接地された偏向板746bに対して正の電圧でスイープされる。他の構成も使用されてよく、例えば、一方の板が、接地されている他方の板に対して負の電圧であってよく、或いは両方の板が異なる電圧でバイアスされてもよい。図9の例では、プッシャ偏向板の場合、イオン成分は、例えば、磁界によって引き起こされる偏向に基づいて、源アパーチャ114から現れて、プッシャ偏向板646aに向かって飛行することが可能である。この例では、偏向板646a、746bがオフになると、検出器アパーチャ120に達するイオン成分はなくなる。プッシャ偏向板646aの電圧が正電圧でスイープされると、イオン成分が検出器アパーチャ120に対してプッシュされ始める。まず重いイオンが検出器アパーチャ120に入り、軽いイオン成分は、軽いイオン成分が検出器アパーチャ120に達するようにそのイオン成分をスイープする為の高い電圧を必要とする。
【0031】
一方又は両方の偏向板の電圧をスキャンして(例えば、プッシャ偏向板646aの電圧をスキャンして)、偏向板の電圧に対するイオン成分信号(例えば、分圧電流)をプロットすることにより、リアルタイム質量スペクトルを生成することが可能である。例えば、視覚ディスプレイ装置上にグラフィック表示を生成することが可能であり、ピコ電流計から電圧変換器に与えられた、検出された分圧電流をボルト単位で縦軸に示し、(偏向器電圧がのこぎり歯状波形でスイープされる為に)偏向板の電圧に対して直線性を有する時間を秒単位で横軸に示すことが可能である。更に、自動ゼロベースライン減算が行われてよい。
【0032】
図9では、イオンビーム偏向器646aの偏向板646a、746bの間に偏向電界を発生させる為に、偏向器電源972がイオンビーム偏向器646aに電気的に接続されている。偏向器電源972が電気的に接続されているのは、(i)イオンビーム偏向器の第2の偏向板746bの接地電圧に対して、イオンビーム偏向器の第1の偏向板646aに正の偏向器バイアス電圧を与えること、又は(ii)第2の偏向板746bの接地電圧に対して、第1の偏向板646aに負の偏向器バイアス電圧を与えること、又は(iii)第1の偏向板646aに第1の偏向器バイアス電圧を与え、第2の偏向板746bに第2の偏向器バイアス電圧を与えることの為であってよい。
【0033】
図9では、偏向器制御回路974が、偏向器電源972に偏向器制御信号を供給するように構成されてよい。制御回路974は、イオンビーム偏向器118が、様々なエネルギを有する変位したイオン成分を方向付けるように、且つ、後で図10に示すように、共通イオン成分質量が検出器の検出器アパーチャを通ってフォーカスされるように、偏向器電源972の電圧を制御するように構成されてよい。更に、偏向器制御回路974は、イオンビーム偏向器が、イオンの放出分のうちの変位したイオン成分の偏向を変化させるように、偏向器電源972の電圧を変化させるように構成されてよい。偏向器電源972の電圧は、(i)(図8に示したような)時間に対する電圧の三角のこぎり歯状変化、又は(ii)変位したイオン成分のピーク幅及び時間的位置を他のイオン成分に対して制御する為の電圧波形に基づいて変化させてよい。偏向器制御回路974は、偏向器電源972の電圧がスキャンされたときに複数のイオン成分968b~dを、検出器によって順次検出されるように偏向させることをイオンビーム偏向器に行わせる為に偏向器電源972の電圧をスキャンするように構成されてよく、上述のように複数のイオン成分の質量スペクトルの検出を可能にする為に偏向器電源972の電圧をスキャンするように構成されてよい。
【0034】
図9の実施形態の別のバージョンでは、イオンビーム偏向器118は、イオンの放出分のイオンビーム758(図7を参照)を検出器上にアライメントするように構成されてよい。(例えばヘリウムセンサにおける)現行のビームアライメントは、熱陰極イオン源における電子ビームの機械的調整に頼っており、これは、時間のかかる退屈なプロセスである場合がある。しかしながら、本明細書に記載のイオンビーム偏向器118を使用してイオンビームを再アライメントすることにより、機械的調整は不要である。
【0035】
更に、イオンビーム偏向器118を使用すれば、複数のスペクトルピークの最上部及び側部での測定により、スペクトルベースラインオフセットを決定することが可能である。この点も又、従来式のヘリウム漏れ検出器に対して有利でありうる。
【0036】
図10は、本発明の一実施形態による、偏向板を使用するエネルギフォーカシングを示す概略図である。エネルギフォーカシングでは、様々なエネルギを有するイオン成分と、共通イオン成分質量とが、検出器の検出器アパーチャ120を通ってフォーカスされる。例えば、共通イオン成分の低エネルギイオン1076及び高エネルギイオン1078(例えば、低エネルギの水イオン及び高エネルギの水イオン)が、検出器アパーチャ120を通ってフォーカスされることが可能である。別の例では、低エネルギ残留ガスイオン及び高エネルギ残留ガスイオンが、検出器アパーチャ120を通ってフォーカスされることが可能である。そのようなエネルギフォーカシングを実施する為に、(図9の)偏向器制御回路974は、イオンビーム偏向器が、様々なエネルギを有するイオン成分1076及び1078を方向付けるように、且つ、共通イオン成分質量が検出器アパーチャ120を通ってフォーカスされるように、(図9の)偏向器電源972の電圧を制御するように構成されている。各イオン成分質量ごとに、エネルギフォーカシングを実現する、偏向器電源の特定の電圧が存在する。関心対象質量に対応するイオンビームの向きは、そのイオンビームが検出器に達する為の偏向器電圧が、その関心対象質量に対してエネルギフォーカシングが実施される為の電圧とも同じであるように決定される。熱陰極イオン源又は冷陰極イオン源の実施形態では、これは、検出器アパーチャ又は源アパーチャ(又はその両方)を横方向に変位させることによって実施可能である。更に、冷陰極イオン源の実施形態では、源は回転してよい。
【0037】
図12は、本発明の一実施形態による、曲面板のペアを含むイオンビーム偏向器の概略図である。ここで、板646a及び746bは、本明細書の別の場所に示した平行板646a及び746bと異なり、湾曲している。動作は、本明細書に記載の平行板の動作とほぼ同等でありうる。当然のことながら、イオンビーム偏向器並びに板646a及び746bには様々な形状及び配置が用いられてよく、曲面板646a及び746bの長さ及び曲率は最適化されてよい。
【0038】
別の実施形態では、イオン源は冷陰極イオン源を含んでよい。図11は、本発明の一実施形態によるガス分析器の概略斜視図であり、このガス分析器は、反転マグネトロン冷陰極放電電極構成とイオンビーム偏向器118とを使用して、イオン成分を、検出器で検出されるように偏向させる。イオンビーム偏向器118(例えば、平行板646a及び746bのペア、又は曲面板のペア(図12に示したものと同等))は、源アパーチャ114と検出器116との間に配置される。熱陰極イオン源の実施形態と同様に、イオンビーム偏向器118を使用して、イオン成分を偏向させることが可能であり、エネルギフォーカシングを実施することが可能である。
【0039】
熱陰極イオン源の実施形態と同様に、変位したイオン成分968は様々なイオン成分に分離され、それらは、源アパーチャ114から遠ざかるにつれて互いに広がって分散する。反転マグネトロン冷陰極放電電極構成では、陰極電極アセンブリ1184は、陽極電極1186を取り囲む。(図11には示していない磁石アセンブリ264によって生成される)軸方向磁界の中心が陽極電極1186上にあり、陽極電極1186に高電圧ポテンシャル(Vanode)を印加することによって径方向電界が確立される。(電界の方向1188と磁界の方向1190とによって示される)電界及び磁界のクロスフィールド配置により、陽極電極1186を取り巻く純電子プラズマ1192が確立される。純電子プラズマ1192に入ったガス分子は、歳差電子によってイオン化されてイオンを形成し、これらのイオンは、直ちに径方向電界によって陰極電極アセンブリ1184に向けて加速される。源の内部の磁界は、電子がタイトな円軌道で歳差運動をするのに十分な強さ(例えば1キロガウス)であるが、重いイオンに対しては影響が小さい為、重いイオンが陰極電極アセンブリ1184に向かって飛行するにつれて、それらの軌道の微小質量依存磁気偏向が行われる。源アパーチャ114(例えば、陰極壁上に位置する垂直スリット)により、イオン成分968の薄いスライバが源から出ることが可能である。追加磁石(図2の264を参照、図11には示さず)により、磁界は源アパーチャ114と検出器116との間のイオン飛行領域まで延ばされ、それによって、イオンの質量依存偏向が大きくなって、イオンがイオン成分968b~dに分離される。軽いイオンは重いイオンよりも大きく偏向される。例えば、変位したイオン成分の968bはヘリウムイオンでできており、968cは水イオンでできており、968dは残留ガス(例えば窒素及び酸素)でできている。追加磁石でイオン成分をそのように大きく偏向させることにより、例えば、水イオンと他の残留ガスイオン968dとを分離することを可能にできる。検出器116は金属製のファラデーコレクタ半円筒122を含み、これは、検出器アパーチャ1194を通って検出器116に達したイオン束に比例するイオン電流を生成する。このイオン電流は、検出器に達するイオン成分968dの分圧電流(IPP)である。又、図11には全圧電流(IT)を示している。
【0040】
更に、図11の実施形態では、検出器アパーチャ1194に入るイオン成分968b~dを操舵することにイオンビーム偏向器118が使用される。又、検出器シールド1198と、検出器シールド1198に検出器シールドバイアス電圧を印加している電圧源1199との間に検出器シールド電気コネクタ1196が電気的に接続されており、それによって検出器シールド1198はハイパスイオンエネルギフィルタになっている。ハイパスイオンエネルギフィルタにより、検出器シールドバイアス電圧を超えるエネルギを有するイオンだけが検出器アパーチャ1194の面を横切ることが可能であり、他のイオンは方向を変えることが可能である。検出器シールドバイアス電圧を高くすると、偏向器電圧スイープ中に検出器116に達することが可能なイオンのエネルギの分布又は拡散が狭くなり、結果として、電圧が高くなるにつれて質量ピークが狭くなる。図1の実施形態ではエネルギフィルタグリッド124a/124bを使用しているが、他の種類のエネルギフィルタも使用されてよい。例えば、図11の実施形態では、検出器シールド1198が(接地から隔離された状態で)検出器シールドバイアス電圧を印加されることにより、検出器シールド1198はハイパスイオンエネルギフィルタになる。図11の冷陰極イオン源の実施形態では、イオンのエネルギはガスの圧力に依存し、一般に、分析器の有効圧力範囲(例えば、10-10~10-3Torrでありうる)にわたって圧力が高くなるにつれて、イオンのエネルギは低下し、イオンのエネルギ拡散は小さくなる。これに対し、本明細書に教示の熱陰極イオン源では、イオンのエネルギ拡散は小さく、イオンのエネルギは圧力に対して変化しない。
【0041】
本明細書では、熱陰極イオン源は、白熱フィラメントをベースとするもの、及び熱電子放出を使用するものを含め、あらゆる熱陰極イオン源を包含してよい。更に、他のイオン源も使用されてよく、例えば、電子発生器アレイ(Electron Generator Arrays)や電界エミッタのような冷陰極イオン化エミッタも使用されてよい。熱陰極イオン源は一般に、冷陰極イオン源よりも複雑である。しかしながら、熱陰極イオン源から提供されるイオンはエネルギ分布がより小さく、これは分解能の向上につながりうる。
【0042】
本明細書に教示のシステムは様々な可能なコンテキストにおいて使用されてよく、例えば、ヘリウム漏れ検出器におけるヘリウムセンサとして、又は質量分析計において、又は磁気セクタにおいて、又はマルチガス検出用として使用されてよい。
【0043】
本明細書に教示の実施形態を使用すれば、様々な可能な利点が実現可能である。イオンの生成は、より狭いエネルギ分布で行われてよく、これは、質量スペクトル中ではより鋭いピークになる。これにより、分解能が高くなる。更に、イオンのエネルギは圧力に無関係でありうる。イオン信号は、圧力に対して直線性を有する為、定量化が容易である。これは、複雑な非線形ルックアップテーブルを必要としない為である。圧力に対してイオンエネルギは変化しない為、圧力に対してピーク位置及びフィルタ電圧を調節する必要がない。即ち、調節はよりわずかである。ヘリウム漏れ検出器にはより小型のヘリウムセンサを用意してよく、これにより、現行の質量分析計をより小型にする機会が得られる。ヘリウム漏れ検出器における標準的なヘリウムセンサと比較すると、スキャンが可能であることにより、180度の曲げが不要になり、検出器が格段にコンパクトになる。更に、フィラメント位置の調節が不要になる。これは、ヘリウム漏れ検出器の調整時に共通で行われる為である。その代わりに、偏向板の支援により、イオンビームの位置が変化しても、その変化を、偏向板電圧の調節によって補償することが可能である。
【0044】
更に、本明細書に教示の高エネルギ源は、本システムの構成要素同士がよく連携して働く点で非常に効率的でありうる。イオンにエネルギを与える同じ陽極ポテンシャルが又、電子をイオン化領域に引きつける。飛行経路が接地されているという事実は、アーク発生又は電気ショックの可能性を減らす。必要とされる電圧はかなり小さく、電子回路での実装が容易である。低いポテンシャルから開始される為、イオンのエネルギ分布の範囲を確実に小さくすることが可能であり、それによって十分なスペクトル分解能が得られる。
【0045】
本明細書で引用されている全ての特許、公開出願、及び参考文献の教示は、参照によって完全な形で組み込まれている。
【0046】
ここまで例示的実施形態を具体的に図示及び説明してきたが、当業者であれば理解されるように、添付の特許請求項によって包含される実施形態の範囲から逸脱しない限り、形態及び細部の様々な変更がその中で行われてよい。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
イオン源のイオン化領域内に源電界を発生させるように構成された前記イオン源であって、前記イオン化領域は、監視対象チャンバからガスを受け取り、前記ガスのイオンが前記イオン源内で形成される、イオン源と、
前記ガスの前記イオンの一部を前記イオン源の外に放出する為に配置された源アパーチャであって、前記イオンは、前記源電界によって、前記源アパーチャに向かう方向に加速される、源アパーチャと、
前記イオンの前記放出分を前記ガスのイオンの質量電荷比に基づいて角度変位させる磁界を画定するように配置された磁石アセンブリと、
前記イオンの前記放出分のうちの変位したイオン成分を検出する為に配置された検出器と、
前記源アパーチャと前記検出器との間に配置されたイオンビーム偏向器であって、前記イオンビーム偏向器は偏向電界を画定し、前記偏向電界は、前記磁界を横切り、前記イオンの前記放出分の移動方向を横切る、イオンビーム偏向器と、
前記変位したイオン成分を前記検出器において受けたことによって発生する電流を測定する為に電気的に接続されたイオン電流測定回路と、
を含むガス分析器システム。
[態様2]
前記イオン源は冷陰極イオン源を含む、態様1に記載のガス分析器システム。
[態様3]
前記イオン源は熱陰極イオン源を含む、態様1に記載のガス分析器システム。
[態様4]
前記熱陰極イオン源は、熱フィラメント及び電子コレクタを含み、前記熱フィラメント及び前記電子コレクタは、前記イオン源内の前記熱フィラメントと前記電子コレクタとの間を通る電子ビームを発生させるように構成されている、態様3に記載のガス分析器システム。
[態様5]
前記熱フィラメント及び前記電子コレクタは、前記源アパーチャに平行な方向に前記電子ビームを発生させるように構成されており、前記源アパーチャは、前記電子ビームに平行な方向に細長く延びたアパーチャを含む、態様4に記載のガス分析器システム。
[態様6]
エネルギフィルタを更に含む、態様1に記載のガス分析器システム。
[態様7]
前記源アパーチャは細長アパーチャを含み、前記エネルギフィルタは、前記イオンの前記放出分のイオンビーム経路中に配置されたエネルギフィルタグリッドを含み、前記エネルギフィルタグリッドは、前記源アパーチャの前記細長アパーチャにほぼ垂直な向きの導電性フィラメントを含み、前記源アパーチャの前記細長アパーチャにほぼ平行な向きの導電性フィラメントをほぼ含まない、態様6に記載のガス分析器システム。
[態様8]
前記エネルギフィルタは入口グリッドを含み、前記入口グリッドは、前記源アパーチャと、前記イオンの前記放出分のイオンビームが前記イオンビーム偏向器に入る入口との間に配置されている、態様6に記載のガス分析器システム。
[態様9]
前記エネルギフィルタは出口グリッドを含み、前記出口グリッドは、前記イオンの前記放出分のイオンビームが前記イオンビーム偏向器から出る出口と、前記検出器アパーチャとの間に配置されている、態様6に記載のガス分析器システム。
[態様10]
前記イオンビーム偏向器は、前記イオンの前記放出分のイオンビームを前記検出器上にアライメントするように構成されている、態様1に記載のガス分析器システム。
[態様11]
前記イオンビーム偏向器は平行板のペアを含む、態様1に記載のガス分析器システム。
[態様12]
前記イオンビーム偏向器は曲面板のペアを含む、態様1に記載のガス分析器システム。
[態様13]
前記ガスの前記イオンの、前記イオン源からの放出分が、前記イオンビーム偏向器の、前記イオンビーム偏向器のジオメトリ中心よりも前記イオンビーム偏向器の一方の側部に近いほうに入るように、前記源アパーチャが配置されている、態様1に記載のガス分析器システム。
[態様14]
前記イオンビーム偏向器の偏向板のペアの間に前記偏向電界を発生させる為に前記イオンビーム偏向器に電気的に接続されている偏向器電源を更に含む、態様1に記載のガス分析器システム。
[態様15]
前記偏向器電源が電気的に接続されているのは、(i)前記イオンビーム偏向器の第2の偏向板の接地電圧に対して、前記イオンビーム偏向器の第1の偏向板に正の偏向器バイアス電圧を与えること、又は(ii)前記第2の偏向板の前記接地電圧に対して、前記第1の偏向板に負の偏向器バイアス電圧を与えること、又は(iii)前記第1の偏向板に第1の偏向器バイアス電圧を与え、前記第2の偏向板に第2の偏向器バイアス電圧を与えることの為である、態様14に記載のガス分析器システム。
[態様16]
前記偏向器電源に偏向器制御信号を供給するように構成された偏向器制御回路を更に含む、態様14に記載のガス分析器システム。
[態様17]
前記偏向器制御回路は、前記イオンビーム偏向器が、様々なエネルギを有する変位したイオン成分を方向付けるように、且つ、共通イオン成分質量が前記検出器の検出器アパーチャを通ってフォーカスされるように、前記偏向器電源の電圧を制御するように構成されている、態様16に記載のガス分析器システム。
[態様18]
前記偏向器制御回路は、前記イオンビーム偏向器が、前記イオンの前記放出分のうちの前記変位したイオン成分の偏向を変化させるように、前記偏向器電源の電圧を変化させるように構成されている、態様16に記載のガス分析器システム。
[態様19]
前記偏向器制御回路は、(i)時間に対する前記電圧の三角のこぎり歯状変化、又は(ii)前記変位したイオン成分のピーク幅及び時間的位置を他のイオン成分に対して制御する為の電圧波形に基づいて前記偏向器電源の前記電圧を変化させるように構成されている、態様18に記載のガス分析器システム。
[態様20]
前記偏向器制御回路は、前記偏向器電源の前記電圧がスキャンされたときに複数のイオン成分を、前記検出器によって順次検出されるように偏向させることを前記イオンビーム偏向器に行わせる為に前記偏向器電源の電圧をスキャンするように構成されている、態様16に記載のガス分析器システム。
[態様21]
前記偏向器制御回路は、前記複数のイオン成分の質量スペクトルの検出を可能にする為に前記偏向器電源の前記電圧をスキャンするように構成されている、態様20に記載のガス分析器システム。
[態様22]
前記イオン源の総イオン電流を測定する為に電気的に接続されている総電流測定回路を更に含む、態様1に記載のガス分析器システム。
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