(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】急速充電可能な長寿命型二次電池、電池モジュール、電池パック、電気装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20250130BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20250130BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250130BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20250130BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20250130BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20250130BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0569
H01M50/533
(21)【出願番号】P 2022557637
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 CN2021119110
(87)【国際公開番号】W WO2023039845
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2022-09-21
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳培培
(72)【発明者】
【氏名】彭暢
(72)【発明者】
【氏名】鄒海林
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/031315(WO,A1)
【文献】特開2018-035059(JP,A)
【文献】特開2019-040722(JP,A)
【文献】特開2019-040721(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
10/05-10/0587
10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極アッセンブリーと電解液とを含み、前記電極アッセンブリーが正極板と、負極板と、セパレータとを含み、前記正極板が正極タブを含み、前記負極板が負極タブを含み、前記正極タブの温度上昇係数α Ah/mmは、以下の式で表され、
【数3】
S1は、正極タブの全横断面積であり、その単位がmm
2であり、Cは、前記電極アッセンブリーの容量であり、その単位がAhであり、
前記電解液に熱安定性塩とリチウム塩の分解を抑制する添加剤とが含まれており、
前記熱安定性塩の分子式が、
(M
y+)
x/yR
1(SO
2N)
xSO
2R
2であり、
M
y+が、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、Mg
2+、Ca
2+、Ba
2+、Al
3+、Fe
2+、Fe
3+、Ni
2+、Ni
3+から選択された1種または複数種であり、任意で、My
+が、Li
+、K
+、Cs
+、Ba
2+から選択された1種または複数種であり、yが前記Mの原子価であり、
前記R
1、R
2がそれぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数1-20のフルオロアルキル基、炭素原子数1-20のフルオロアルコキシ基、炭素原子数1-20のアルキル基から選択され、
xが1、2、3から選択された整数であり、
質量パーセントで、前記熱安定性塩の前記電解液における含有量がw%であり、
リチウム塩の分解を抑制する添加剤が、RSO
3Fのうちの1種または複数種であり、RがLi
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+から選択された1種または複数種であり、
質量パーセントで、リチウム塩の分解を抑制する添加剤の前記電解液における含有量がm
1%であり、
前記w、m
1およびαが、0.5<m
1w/α<20を満たし、
αは2~9.5であり、m
1%は、
0.2%~5%であり、w%は、
10%~23%である、二次電池。
【請求項2】
前記熱安定性塩は、5%の失重率に対応する温度が200℃超である、
請求項
1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記熱安定性塩の分子式において、x=1かつy=1であり、またはx=1かつy=2であり、または、x=2かつy=1である、
請求項1
または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記熱安定性塩の分子式において、R
1、R
2がそれぞれ独立して、フッ素原子およびトリフルオロメチル基から選択され、任意で、R
1、R
2が、ともにフッ素原子であり、またはともにトリフルオロメチル基である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記熱安定性塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミドセシウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドバリウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、Li
2F(SO
2N)
2SO
2F、LiCF
3SO
2NSO
2Fから選択された1種または複数種である、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
リチウム塩の分解を抑制する添加剤は、LiSO
3F、NaSO
3FまたはKSO
3Fから選択された1種または複数種である、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電解液にフッ素系溶剤がさらに含まれており、前記フッ素系溶剤が、フッ素化カーボネート、フルオロベンゼン、フルオロエーテルから選択された1種または複数種である、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記フッ素系溶剤は、前記電解液における含有量がm
2%であり、m
2とαとの比m
2/αが1~8である、
請求項
7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるもののいずれかであり、
【化23】
および/または、
前記フルオロベンゼンは、以下の化学式で表わされるものであり、
【化24】
および/または、
前記フルオロエーテルは、R
1’-O-R
2’であり、
R
3、R
4、R
5、R
6、R
1’、R
2’がそれぞれ独立して-C
x’F
y’H
z’であり、ただし、1≦x’≦6、y’>0、z’>0を満たし、かつ0≦y’≦2x’、0≦z’≦2x’を満たし、
R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12がそれぞれ独立してFまたはHのうちの1種である、
請求項
7または8に記載の二次電池。
【請求項10】
R
1’、R
2’はそれぞれ独立して、-C
2F
4H、-CF
3、-C
3F
6H、-C
2F
3H
2、-C
3F
4H
3から選択され、
任意で、R
1’、R
2’はそれぞれ独立して、-CF
2-CF
2H、-CF
3、-CF
2-CFH-CF
3、-CH
2-CF
3、-CH
2-CF
2-CHF
2から選択され、
任意で、前記フルオロエーテルは、以下の化学式で表されるものから選択される、
【化25】
請求項
9に記載の二次電池。
【請求項11】
R
5、R
6はそれぞれ独立して、-C
2F
3H、-CFH、-CH
2から選択され、
任意で、R
5、R
6はそれぞれ独立して、-CH-CF
3、-CHF、-CH
2から選択され、
任意で、前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるものから選択される、
【化26】
請求項
9または10に記載の二次電池。
【請求項12】
R
5、R
6はそれぞれ独立して、-CH
3、-C
2F
3H
2、-CFH
2、-C
2FH
4から選択され、
任意で、R
5、R
6はそれぞれ独立して、-CH
3、-CH
2-CF
3、-CH
2-F、-CH
2-CH
2-Fから選択され、
任意で、前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるものから選択される、
【化27】
請求項
9または10に記載の二次電池。
【請求項13】
前記電解液には、電子を失いやすい添加剤がさらに含まれ、電子を失いやすい添加剤が、亜リン酸エステル、ホウ酸エステルおよびリン酸エステルから選択された1種または複数種である、
請求項1~
12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項14】
電子を失いやすい添加剤は、前記電解液における含有量がm
3%であり、m
3とαとの比m
3/αが0.1~0.9である、
請求項
13に記載の二次電池。
【請求項15】
前記亜リン酸エステルは、以下の化学式で表わされるものであり、
【化28】
および/または、
前記リン酸エステルは、以下の化学式で表わされるものであり、
【化29】
および/または、
前記ホウ酸エステルは、以下の化学式で表わされるものであり、
【化30】
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21がそれぞれ独立して、アルキル基、フルオロアルキル基、シラン基、アルケニル基、フェニル基から選択される、
請求項
13または14に記載の二次電池。
【請求項16】
R
13、R
14、R
15はそれぞれ独立して、C
1-6アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、C
1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH
2-CF
3)から選択され、
任意で、前記亜リン酸エステルは、以下の化学式で表されるものから選択される、
【化31】
請求項
15に記載の二次電池。
【請求項17】
R
16、R
17、R
18はそれぞれ独立して、C
1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH
2-CF
3)、C
1-6アルケニル基(例えばアリル基)から選択され、
任意で、前記リン酸エステルは、以下の化学式で表されるものから選択される、
【化32】
請求項
15に記載の二次電池。
【請求項18】
R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立して、C
1-6アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、C
1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH
2-CF
3)から選択され、
任意で、前記ホウ酸エステルは、以下の化学式で表されるものから選択される、
【化33】
請求項
15に記載の二次電池。
【請求項19】
請求項1~
18のいずれか1項に記載の二次電池を備える、電池モジュール。
【請求項20】
請求項
19に記載の電池モジュールを備える、電池パック。
【請求項21】
請求項1~
18のいずれか1項に記載の二次電池、請求項
19に記載の電池モジュールまたは請求項
20に記載の電池パックを備える、電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池の技術分野に属し、殊に、急速充電可能な長寿命型二次電池、電池モジュール、電池パック、電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、長い使用寿命、省エネ、環境にやさしいなどのメリットがあり、新エネルギー自動車、エネルギー貯蔵発電所などのさまざまな分野で広く使用されている。生活のペースの加速と電子製品の発展に伴い、消費者は、リチウムイオン電池の充電時間を短縮し、放電電力を高め、つまり電池の充放電レートを高めることが強く求められている。しかしながら、電池の充放電レートを高める場合、電池セル内部のタブの温度上昇係数が大幅に増加し、タブの温度上昇が大きくなり、タブの周囲の電解液の分解が加速され、HFおよびPF5などの活性の高い物質に分解され、リチウム塩の含有量が減少するだけでなく、さらにSEIが破壊され、電解液の消耗が加速される。これにより、電池セルが一定期間サイクルされた後、電解液の含有量が不十分になり、電池セルの動力学的性能が不足になり、対応するSEIのインピーダンスが急激に増大し、最終的にサイクル後の電池セルの電力性能が低下し、電池セルの内部抵抗が急激に増大してしまう。また、高エネルギー密度の電池セルに対する消費者側の要求に応じて、同レートで充放電するとき、電池セルのタブでの電流がさらに大きくなり、タブの温度上昇係数がさらに大きくなる。
【発明の概要】
【0003】
本出願は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、サイクルの中後期でも高い電力性能を維持できる急速充電可能な長寿命型二次電池を提供することを目的とする。
【0004】
上記の目的を達成するため、本出願は、二次電池、前記二次電池を備える電池モジュール、前記電池モジュールを備える電池パック、前記二次電池、電池モジュールまたは電池パックを備える電気装置を提供する。
【0005】
本出願の第1局面は、二次電池を提供する。該二次電池は、電極アッセンブリーと電解液とを含み、前記電極アッセンブリーが正極板と、負極板と、セパレータとを含み、前記正極板が正極タブを含み、前記負極板が負極タブを含み、前記正極タブの温度上昇係数α Ah/mmは、以下の式で表され、
【数1】
ただし、S1は、正極タブの全横断面積であり、その単位がmm
2であり、Cは、前記電極アッセンブリーの容量であり、その単位がAh(ampere-hour)であり、
前記電解液に熱安定性塩とリチウム塩の分解を抑制する添加剤とが含まれており、
前記熱安定性塩の分子式が、
(M
y+)
x/yR
1(SO
2N)
xSO
2R
2であり、
M
y+が、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、Mg
2+、Ca
2+、Ba
2+、Al
3+、Fe
2+、Fe
3+、Ni
2+、Ni
3+から選択された1種または複数種であり、任意で、M
y+が、Li
+、K
+、Cs
+、Ba
2+から選択された1種または複数種であり、yが前記Mの原子価であり、
前記R
1、R
2がそれぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数1~20のフルオロアルキル基、炭素原子数1~20のフルオロアルコキシ基、炭素原子数1~20のアルキル基から選択され、
xが1、2、3から選択された整数であり、
質量パーセントで、前記熱安定性塩の前記電解液における含有量がw%であり、
リチウム塩の分解を抑制する添加剤が、RSO
3Fのうちの1種または複数種であり、RがLi
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+から選択された1種または複数種であり、
質量パーセントで、リチウム塩の分解を抑制する添加剤の前記電解液における含有量がm
1%であり、
w、m
1およびαが、0.5<m
1w/α<20を満たし、任意で、1<m
1w/α<14を満たす。
【0006】
いくつかの実施形態において、αは2~9.5である。前記αを上記の数値範囲内に収めると、下記のことを避けることができ、αが大きすぎると、正極タブが高レートで放電するときの電流値に耐えられず、タブの溶断が発生しやすく、αが小さすぎると、タブの電池セルに占める体積が大きくなり、電池セルの体積エネルギー密度が小さすぎる。
【0007】
いくつかの実施形態において、リチウム塩の分解を抑制する添加剤RSO3Fの質量分率m1%は、0.1%~10%であり、任意で、0.2%~5%である。前記m1を上記の数値範囲内に収めると、下記のことを避けることができ、m1が低すぎると、リチウム塩の分解を抑制できなくて、電解液の熱安定性が劣り、m1が高すぎると、電解液の導電率が顕著に悪化し、電解液の動力学的性能が不足であり、高レートでの充放電時に分極が大きく、放電電力が悪化し、ひどくなった場合に電池セルのリチウム析出にも影響を与え、サイクル性能が悪化する。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記の安定なリチウム塩の濃度w%は、8%~30%であり、任意で、10%~23%である。前記w%を上記の数値範囲内に収めると、下記のことを避けることができ、安定なリチウム塩の濃度が低すぎると、電解液の熱安定性を向上させることができなく、濃度が高すぎると、電解液の濃度が高すぎてしまい、電解液の動力学的性能が悪化し、電池セルの充放電電力が悪化してしまう。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記熱安定性塩は、5%の失重率に対応する温度が200℃超である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記熱安定性塩の分子式において、x=1かつy=1であり、またはx=1かつy=2であり、または、x=2かつy=1である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記熱安定性塩の分子式において、R1、R2がそれぞれ独立して、フッ素原子およびトリフルオロメチル基から選択され、任意で、R1、R2が、ともにフッ素原子であり、またはともにトリフルオロメチル基である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記熱安定性塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミドセシウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドバリウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、Li2F(SO2N)2SO2F、LiCF3SO2NSO2Fから選択された1種または複数種である。
【0013】
いくつかの実施形態において、リチウム塩の分解を抑制する添加剤は、LiSO3F、NaSO3FまたはKSO3Fから選択された1種または複数種である。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記電解液にフッ素系溶剤がさらに含まれており、前記フッ素系溶剤が、フッ素化カーボネート、フルオロベンゼン、フルオロエーテルから選択された1種または複数種である。フッ素系溶剤は、安定なリチウム塩の電子雲密度を低下させ、溶媒和にされた安定なリチウム塩の電気化学的安定性を高めることに用いられ、したがって電解液の分解および消耗を減少させる。フッ素系溶剤の電解液における含有量はm2%であり、m2とαとの比m2/αが1~8である。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるもののいずれかであり、
【化1】
および/または、前記フルオロベンゼンは、以下の化学式で表されるものであり、
【化2】
および/または、前記フルオロエーテルはR
1’-O-R
2’であり、R
3、R
4、R
5、R
6、R
1’、R
2’がそれぞれ独立して-C
x’F
y’H
z’であり、ただし、1≦x’≦6、y’>0、z’>0を満たし、かつ0≦y’≦2x’、0≦z’≦2x’を満たし、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12がそれぞれ独立してFまたはHのうちの1種である。
【0016】
いくつかの実施形態において、R
1’、R
2’はそれぞれ独立して、-C
2F
4H、-CF
3、-C
3F
6H、-C
2F
3H
2、-C
3F
4H
3から選択され、任意で、R
1’、R
2’はそれぞれ独立して、-CF
2-CF
2H、-CF
3、-CF
2-CFH-CF
3、-CH
2-CF
3、-CH
2-CF
2-CHF
2から選択され、任意で、前記フルオロエーテルは、以下の化学式で表されるものから選択される。
【化3】
【0017】
いくつかの実施形態において、R
5、R
6はそれぞれ独立して、-C
2F
3H、-CFH、-CH
2から選択され、任意で、R
5、R
6はそれぞれ独立して、-CH-CF
3、-CHF、-CH
2から選択され、任意で、前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるものから選択される。
【化4】
【0018】
いくつかの実施形態において、R
5、R
6はそれぞれ独立して、-CH
3、-C
2F
3H
2、-CFH
2、-C
2FH
4から選択され、任意で、R
5、R
6はそれぞれ独立して、-CH
3、-CH
2-CF
3、-CH
2-F、-CH
2-CH
2-Fから選択され、任意で、前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるものから選択される。
【化5】
【0019】
いくつかの実施形態において、前記電解液には、電子を失って酸化しやすい添加剤がさらに含まれ、電子を失いやすい添加剤が、亜リン酸エステル、ホウ酸エステルおよびリン酸エステルから選択された1種または複数種である。電子を失って酸化しやすい添加剤が安定なリチウム塩よりも先に酸化して膜にすることができ、安定なリチウム塩の分解を抑えることができる。電子を失いやすい添加剤は、前記電解液における含有量がm3%であり、m3とαとの比m3/αが0.1~0.9である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記亜リン酸エステルは、以下の化学式で表されるものであり、
【化6】
および/または、前記リン酸エステルは、以下の化学式で表されるものであり、
【化7】
および/または、前記ホウ酸エステルは、以下の化学式で表されるものであり、
【化8】
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21がそれぞれ独立して、アルキル基、フルオロアルキル基、シラン基、アルケニル基、フェニル基から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、R
13、R
14、R
15はそれぞれ独立して、C
1-6アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、C
1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH
2-CF
3)から選択され、
任意で、前記亜リン酸エステルは、以下の化学式で表されるもの、から選択される。
【化9】
【0022】
いくつかの実施形態において、R
16、R
17、R
18はそれぞれ独立して、C
1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH
2-CF
3)、C
1-6アルケニル基(例えばアリル基)から選択され、任意で、前記リン酸エステルは、以下の化学式で表されるもの、から選択される。
【化10】
【0023】
いくつかの実施形態において、R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立して、C
1-6アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、C
1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH
2-CF
3)から選択され、任意で、前記ホウ酸エステルは、以下の化学式で表されるもの、から選択される。
【化11】
【0024】
本出願の第2局面において、本出願の第1局面に係る二次電池を備える電池モジュールを提供する。
【0025】
本出願の第3局面において、本出願の第2局面に係る電池モジュールを備える電池パックを提供する。
【0026】
本出願の第4局面において、本出願の第1局面に係る二次電池、本出願の第2局面に係る電池モジュールまたは本出願の第3局面に係る電池パックを備える電気装置を提供する。
【0027】
本出願に係る二次電池は、タブ付近の電解液の分解を抑制し、電解液の熱安定性を顕著に高め、電解液の高温下での分解を抑え、電池セルの寿命を延ばすことができ、電池セルの急速充電時にタブの発熱に起因した電池セルの寿命が短縮される問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本出願の一実施形態による二次電池の模式図である。
【
図2】
図1に示される本出願の一実施形態による二次電池の分解図である。
【
図3】本出願の一実施形態による電池モジュールの模式図である。
【
図4】本出願の一実施形態による電池パックの模式図である。
【
図5】
図4に示される本出願の一実施形態による電池パックの分解図である。
【
図6】電源として本出願の一実施形態による二次電池を用いた電気装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施例を用いて本出願の実施形態を詳細に説明する。下記の実施例に対する詳細な説明は、本出願の原理を例示的に説明するものであり、本出願の範囲を限定するものではなく、つまり、本出願は、説明された実施例に限定されない。
【0030】
以下、本出願に係る二次電池およびその製造方法、電池モジュール、電池パック、電気装置の実施形態が詳細な説明により具体的に開示されるが、不必要な詳細説明が省略されることがある。例えば、周知の事項に対する詳細説明、実際に同様な構成に対する重複説明が省略されることがある。これは、下記の説明が必要以上に長くなってしまうことを避け、当業者が容易に理解できるためである。
【0031】
本出願に開示された「範囲」は、下限値および上限値により定義される。所定範囲は、下限値および上限値を選択することにより定義される。選択された下限値および上限値により、特定の範囲の限界が定義される。このように定義された範囲は、限界値を含む場合があるし、限界値を含まない場合があり、任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限値と任意の上限値との組み合わせで範囲を定義することが可能である。例えば、特定のパラメータについて、60~120および80~110の範囲が挙げられた場合、60~110および80~120の範囲も予測可能なものであると理解されるべきである。また、下限値として1および2が挙げられ、上限値として3、4および5が挙げられた場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5のいずれかの範囲も予測可能なものである。本出願では、別途の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、実数aと実数bの間の実数の任意の組み合わせの省略表現である。例えば数値範囲「0~5」は、明細書に記載の「0~5」の間のすべての実数を含み、「0~5」がこれらの数値の組み合わせの省略表現にすぎない。また、パラメータは、2以上の整数で表された場合、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数が開示されたことに相当する。
【0032】
別途の説明がない限り、本出願のすべての実施形態および選択可能な実施形態を組み合わせて新たな技術案とすることが可能である。
【0033】
別途の説明がない限り、本出願のすべての技術的特徴および選択可能な技術的特徴を組み合わせて新たな技術案とすることが可能である。
【0034】
別途の説明がない限り、本出願のすべてのステップは、順に実行されてもよいし、ランダムに実行されてもよい。順に実施されることが好ましい。例えば、前記方法がステップ(a)とステップ(b)とを含む場合、前記方法は、順に実行するステップ(a)とステップ(b)とを含んでもよく、順に実行するステップ(b)とステップ(a)とを含んでもよい。例えば、前記方法はステップ(c)をさらに含む場合、ステップ(c)が任意の順番で前記方法に組み込まれることができ、例えば、前記方法は、ステップ(a)、ステップ(b)およびステップ(c)の順のものを含んでもよく、ステップ(a)、ステップ(c)および(b)の順のものを含んでもよく、ステップ(c)、ステップ(a)およびステップ(b)などの順のものを含んでもよい。
【0035】
別途の説明がない限り、本出願に記載の「含む」および「包含」で指し示されるものは、開放形式の記載であってもよく、閉鎖形式の記載であってもよい。例えば、前記「含む」および「包含」で記載した場合、リストしていない要素を含みまたは包含してもよく、リストした要素だけを含みまたは包含してもよい。
【0036】
別途の説明がない限り、本出願では、用語「または」は、広義な表現である。例えば、フレーズ「AまたはB」は、「A、B、またはAとB」を意味する。より具体的に、Aが成立(または存在)、Bが不成立(または非存在)である場合、Aが不成立(または非存在)、Bが成立(または存在)である場合、または、AとBがいずれも成立(または存在)である場合は、いずれも「AまたはB」という条件を満たす。
【0037】
二次電池
【0038】
背景技術の記載のように、二次電池は例えばリチウムイオン電池であり得る。一般的なリチウムイオン電池は、急速充電過程において、タブがひどく発熱し、タブ付近の電解液が分解してHFおよびPF5などの酸性の活性の高い物質を発生し、電池セルのサイクル使用寿命が顕著に悪化してしまう。また、電池セルの体積エネルギー密度の増大に従って、電池のタブの温度上昇係数がさらに大きくなり、タブ付近の電解液の分解がさらに加速されて電池セルの寿命が悪化してしまう。
【0039】
通常、充放電過程において、電解液の分解とタブの温度上昇とが比例し、タブの温度上昇が高いほど、電解液の分解がより進行する。一定の充放電レートで、電池セルのタブの温度上昇が主にタブの抵抗率および電池セルの容量に比例し、正極タブが一般的にアルミニウム基材のものであり、その抵抗率が負極タブ(一般的に銅基材のものである)よりはるかに大きいため、充放電過程において、一般的に、正極タブの温度上昇が比較的に高い。
本出願の一実施形態による二次電池は、電極アッセンブリーと電解液とを含み、前記電極アッセンブリーが正極板と、負極板と、セパレータとを含み、前記正極板が正極タブを含み、前記負極板が負極タブを含み、前記正極タブの温度上昇係数α Ah/mmは、以下の式で表され、
【数2】
ただし、S1は、正極タブの全横断面積であり、その単位がmm
2であり、Cは、前記電極アッセンブリーの容量であり、その単位がAhである。当分野の従来の方法による測定またはテストでS1およびCを得ることができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、αは2~9.5(例えば、2~2.5、2.5~3、3~3.5、3.5~4、4~4.5、4.5~5、5~5.5、5.5~6、6~6.5、6.5~7、7~7.5、7.5~8、8~8.5、8.5~9または9~9.5)である。前記αを上記の数値範囲内に収めると、下記のことを避けることができ、αが大きすぎると、正極タブが高レートで放電するときの電流値に耐えられず、タブの溶断が発生しやすく、αが小さすぎると、タブの電池セルに占める体積が大きくなり、電池セルの体積エネルギー密度が小さすぎる。
【0041】
本出願に係る二次電池は、電解液に熱安定性塩とリチウム塩の分解を抑制する添加剤とが含まれる。熱安定性塩は、電解液の熱安定性を顕著に高め、電解液の高温下での分解を抑えることができる。しかし、熱安定性塩は、酸化に弱く、分解して消耗されやすいので、電解液におけるリチウム塩の濃度および電解液の総量が低減し続けてしまう。本願発明者は、リチウム塩の分解を抑制する添加剤としてRSO3Fを用いることにより、高熱安定性リチウム塩の分解を顕著に抑制することができる。
【0042】
本出願に使用する熱安定性塩の分子式が、
(My+)x/yR1(SO2N)xSO2R2であり、
My+が、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Ni3+から選択された1種または複数種であり、任意で、My+が、Li+、K+、Cs+、Ba2+から選択された1種または複数種であり、yが前記Mの原子価であり、
前記R1、R2はそれぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数1~20(例えば1~6)のフルオロアルキル基、炭素原子数1~20(例えば1~6)のフルオロアルコキシ基、および炭素原子数1~20(例えば1~6)のアルキル基から選択され、
xが1、2、3から選択された整数である。
【0043】
質量パーセントで、前記熱安定性塩は、前記電解液における含有量がw%である。いくつかの実施形態において、w%は、8%~30%であり、任意で、10%~23%(例えば8%~9%、9%~10%、10%~11%、11%~12%、12%~13%、13%~14%、14%~15%、15%~16%、16%~17%、17%~18%、18%~19%、19%~20%、20%~21%、21%~22%、22%~23%、23%~24%、24%~25%、25%~26%、26%~27%、27%~28%、28%~29%または29%~30%)である。前記w%を上記の範囲内に収めると、下記のことを避けることができ、熱安定性リチウム塩の濃度が低すぎると、電解液の熱安定性を向上させることができなく、濃度が高すぎると、電解液の濃度が高すぎてしまい、電解液の動力学的性能が悪化し、電池セルの充放電電力が悪化してしまう。
【0044】
本出願に使用するリチウム塩の分解を抑制する添加剤が、RSO3Fのうちの1種または複数種であり、RがLi+、Na+、K+、Rb+、Cs+から選択された1種または複数種である。
【0045】
質量パーセントで、リチウム塩の分解を抑制する添加剤の電解液における含有量がm1%である。いくつかの実施形態において、リチウム塩の分解を抑制する添加剤RSO3Fの質量分率m1%は、0.1%~10%であり、任意で、0.2%~5%(例えば0.1%~0.2%、0.2%~0.4%、0.4%~0.6%、0.6%~0.8%、0.8%~1%、1%~1.5%、1.5%~2%、2%~2.5%、2.5%~3%、3%~3.5%、3.5%~4%、4%~4.5%、4.5%~5%、5%~6%、6%~7%、7%~8%、8%~9%または9%~10%)である。前記m1を上記の範囲内に収めると、下記のことを避けることができ、m1が低すぎると、リチウム塩の分解を抑制できなくて、電解液の熱安定性が劣り、m1が高すぎると、電解液の導電率が顕著に悪化し、電解液の動力学的性能が不足であり、高レートでの充放電時に分極が大きく、放電電力が悪化し、ひどくなった場合に電池セルのリチウム析出にも影響を与え、サイクル性能が悪化する。
【0046】
さらに、本願発明者は、大量の実験で、w、m1およびαは、0.5<m1w/α<20を満たす場合、電池セルが高レートで充放電する過程におけるタブの発熱による電解液の分解の問題をよりよく解決でき、電解液の総消耗量が減少し、サイクル中期の電池セルの電力性能が向上できることを発見した。いくつかの実施形態において、w、m1およびαは、1<m1w/α<14を満たす。いくつかの実施形態において、m1w/αは、0.5~0.6、0.6~0.7、0.7~0.8、0.8~0.9、0.9~1、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、14~15、15~16、16~17、17~18、18~19または19~20である。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記熱安定性塩は、5%の失重率に対応する温度が200℃超である。熱重量分析により熱安定性塩の重量と温度との関係を測定し、5%の重量が減少するときの温度を得ることができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記熱安定性塩の分子式において、x=1かつy=1であり、またはx=1かつy=2であり、または、x=2かつy=1である。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記熱安定性塩の分子式において、R1、R2はそれぞれ独立して、フッ素原子およびトリフルオロメチル基から選択される。いくつかの実施形態において、R1、R2が、ともにフッ素原子であり、またはともにトリフルオロメチル基である。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記熱安定性塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(KFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミドセシウム(CsFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミドバリウム(Ba(FSI)2)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、Li2F(SO2N)2SO2F、LiCF3SO2NSO2Fから選択された1種または複数種である。
【0051】
いくつかの実施形態において、リチウム塩の分解を抑制する添加剤は、LiSO3F、NaSO3FまたはKSO3Fから選択された1種または複数種である。
【0052】
本出願に係る二次電池において、電解液にフッ素系溶剤がさらに含まれてもよく、安定なリチウム塩の電子雲密度を低下させ、溶媒和にされた安定なリチウム塩の電気化学的安定性を高め、したがって電解液の分解および消耗を減少させる。フッ素系溶剤は、フッ素化カーボネート、フルオロベンゼン、フルオロエーテルから選択された1種または複数種である。フッ素系溶剤の含有量はm2%であり、そして、m2とαとの比m2/αが1~8であり、例えば、1~1.5、1.5~2、2~2.5、2.5~3、3~3.5、3.5~4、4~4.5、4.5~5、5~6、6~7または7~8である。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるもののいずれかであり、
【化12】
いくつかの実施形態において、前記フルオロベンゼンは、以下の化学式で表されるものであり、
【化13】
いくつかの実施形態において、前記フルオロエーテルはR
1’-O-R
2’であり、R
3、R
4、R
5、R
6、R
1’、R
2’がそれぞれ独立して-C
x’F
y’H
z’であり、ただし、1≦x’≦6、y’>0、z’>0を満たし、かつ0≦y’≦2x’、0≦z’≦2x’を満たし、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12がそれぞれ独立してFまたはHのうちの1種である。
【0054】
いくつかの実施形態において、R1’、R2’はそれぞれ独立して、-C2F4H、-CF3、-C3F6H、-C2F3H2、-C3F4H3から選択される。
【0055】
いくつかの実施形態において、R1’、R2’はそれぞれ独立して、-CF2-CF2H、-CF3、-CF2-CFH-CF3、-CH2-CF3、-CH2-CF2-CHF2から選択される。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記フルオロエーテルは、以下の化学式で表されるものから選択される。
【化14】
【0057】
いくつかの実施形態において、R5、R6はそれぞれ独立して、-C2F3H、-CFH、-CH2から選択される。
【0058】
いくつかの実施形態において、R5、R6はそれぞれ独立して、-CH-CF3、-CHF、-CH2から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるものから選択される。
【化15】
【0060】
いくつかの実施形態において、R5、R6はそれぞれ独立して、-CH3、-C2F3H2、-CFH2、-C2FH4から選択される。
【0061】
いくつかの実施形態において、R5、R6はそれぞれ独立して、-CH3、-CH2-CF3、-CH2-F、-CH2-CH2-Fから選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記フッ素化カーボネートは、以下の化学式で表されるものから選択される。
【化16】
【0063】
いくつかの実施形態において、前記フッ素系溶剤はフルオロベンゼン(即ち、1-フルオロベンゼン)である。
【0064】
本出願に係る二次電池において、電解液には、電子を失いやすい添加剤がさらに含まれてもよい。電子を失いやすい添加剤が先に酸化して膜にすることができるため、安定なリチウム塩の分解を抑え、電解液の総消耗量を減少させることにより、サイクル中期の電池セルにおける電解液が十分あり、リチウムイオンの移動の動力学的性能が比較的によく、そして、界面のインピーダンスが比較的に小さく、サイクル中期の電池セルの電力性能が比較的によい。
【0065】
いくつかの実施形態において、電子を失いやすい添加剤が、亜リン酸エステル、ホウ酸エステルおよびリン酸エステルから選択された1種または複数種である。
【0066】
いくつかの実施形態において、電子を失いやすい添加剤は、前記電解液における含有量がm3%であり、m3とαとの比m3/αが、0.1~0.9であり、例えば、0.1~0.2、0.2~0.3、0.3~0.4、0.4~0.5、0.5~0.6、0.6~0.7、0.7~0.8または0.8~0.9である。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記亜リン酸エステルは、以下の化学式で表されるものであり、
【化17】
いくつかの実施形態において、前記リン酸エステルは、以下の化学式で表されるものであり、
【化18】
いくつかの実施形態において、前記ホウ酸エステルは、以下の化学式で表されるものであり
【化19】
R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21はそれぞれ独立して、アルキル基、フルオロアルキル基、シラン基、アルケニル基、フェニル基から選択される。
【0068】
いくつかの実施形態において、R13、R14、R15はそれぞれ独立して、C1-6アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、C1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH2-CF3)から選択される。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記亜リン酸エステルは、以下の化学式で表される添加剤1又は添加剤2から選択される。
【化20】
【0070】
いくつかの実施形態において、R16、R17、R18はそれぞれ独立して、C1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH2-CF3)、C1-6アルケニル基(例えばアリル基)から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記リン酸エステルは、以下の化学式で表される添加剤3又は添加剤4から選択される。
【化21】
【0072】
いくつかの実施形態において、R19、R20、R21はそれぞれ独立して、C1-6アルキル基(例えばメチル基、エチル基)、C1-6フルオロアルキル基(例えばフルオロメチル基、フルオロエチル基、例えば-CH2-CF3)から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記ホウ酸エステルは、以下の化学式で表される添加剤5又は添加剤6から選択される。
【化22】
【0074】
いくつかの実施形態において、本出願に係る二次電池の電解液において、熱安定性塩およびリチウム塩の分解を抑制する添加剤は、それぞれLiFSIおよびLiSO3Fである。いくつかの好ましい実施形態において、w、m1およびαが、1<m1w/α<14を満たす。いくつかのより好ましい実施形態において、αは2~9.5である。
【0075】
いくつかの実施形態において、本出願に係る二次電池において、電解液には、熱安定性塩LiFSIとリチウム塩の分解を抑制する添加剤LiSO3Fとが含まれており、フッ素系溶剤がさらに含まれており、前記フッ素系溶剤は、炭酸=メチル=2,2,2-トリフルオロエチル、フルオロベンゼン、trans-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、上記のフルオロエーテルの式1、炭酸=メチル=2,2,2-トリフルオロエチル/trans-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン/フルオロベンゼンの混合溶剤(例えば質量比が3/1/1の混合溶剤)から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、フッ素系溶剤の含有量はm2%であり、m2とαとの比m2/αが1~8である。
【0076】
いくつかの実施形態において、本出願に係る二次電池において、電解液には、熱安定性塩LiFSIとリチウム塩の分解を抑制する添加剤LiSO3Fとが含まれており、電子を失いやすい添加剤がさらに含まれており、電子を失いやすい添加剤が、上記の添加剤1、添加剤2、添加剤3、添加剤4、添加剤5から選択される。いくつかの好ましい実施形態において、電子を失いやすい添加剤は、前記電解液における含有量がm3%であり、m3とαとの比m3/αが0.1~0.9である。
【0077】
本出願に係る二次電池において、電解液には有機溶剤がさらに含まれており、前記有機溶剤の種類が特に限定されなく、実際の要求に応じて選択することができる。いくつかの実施形態において、前記有機溶剤は、鎖状炭酸エステル、環状炭酸エステル、カルボン酸エステルのうちの1種または複数種を含む。鎖状炭酸エステル、環状炭酸エステル、カルボン酸エステルが特に限定されなく、実際の要求に応じて選択することができる。任意で、前記有機溶剤は、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルホルメート、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、テトラヒドロフランのうちの1種または複数種を含む。
【0078】
本出願に係る二次電池において、電解液には、電池のガスの発生、貯蔵または電力性能を改善するための添加剤が含まれてもよい。いくつかの実施形態において、前記添加剤は、不飽和結合が含まれている環状炭酸エステル化合物、ハロゲン置換の環状炭酸エステル化合物、硫酸エステル化合物、亜硫酸エステル化合物、スルトン化合物、ジスルホン酸化合物、ニトリル化合物、芳香族化合物、イソシアネート化合物、ホスファゼン化合物、環状酸無水物化合物、亜リン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物から選択された1種または複数種であり、前記不飽和結合が含まれている環状炭酸エステル化合物およびハロゲン置換の環状炭酸エステル化合物が、上記の環状炭酸エステルと異なるものである。
【0079】
また、以下、図面を参照しながら本出願に係る二次電池、電池モジュール、電池パックおよび電気装置を説明する。
【0080】
本出願の一実施形態において、二次電池を提供する。
【0081】
一般的に、二次電池は、正極板と、負極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池の充放電過程において、活性イオンが正極板と負極板との間で挿入および脱離を繰り返す。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導するものである。セパレータは、正極板と負極板との間に配置され、主に正極と負極の短絡を防止するとともに、イオンを通すことができるものである。
【0082】
[正極板]
【0083】
本出願に係る二次電池において、正極板は、正極集電体と、正極集電体に設けられたとともに正極活性材料を含む正極材料層とを含み、前記正極材料層を、正極集電体の1つの表面に設けてもよく、正極集電体の2つの表面に設けてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体として、金属箔または複合集電体を使用する。例えば、金属箔として、アルミニウム箔を使用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属層とを含み得る。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成させてなしたものであり得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、正極活性材料は、当分野周知の電池用正極活性材料を使用することができる。例として、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物およびそれらの改質化合物のうちの少なくとも1つを含み得る。なお、本出願は、これらの材料に限定されず、電池の正極活性材料として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活性材料は、単独で使用されてもよく、2つ以上組み合わせて使用されてもよい。そのうち、リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(単にNCM333と称する場合がある)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(単にNCM523と称する場合がある)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(単にNCM211と称する場合がある)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(単にNCM622と称する場合がある)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(単にNCM811と称する場合がある))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)およびそれらの改質化合物などのうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(単にLFPと称する場合がある))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されない。
【0086】
いくつかの実施形態において、任意で、正極材料層には、接着剤がさらに含まれる。接着剤の種類および含有量は具体的に限定されなく、実際の要求に応じて選択できる。例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレンの三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロペン-テトラフルオロエチレンの三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロペンの共重合体およびフッ素含有アクリル樹脂のうちの少なくとも1種を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、任意で、正極材料層には、導電剤がさらに含まれる。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、下記のように正極板を調製することができる。上記の正極板の調製用の成分、例えば正極活性材料、導電剤、接着剤および任意の他の成分を溶剤(例えばN-メチルピロリドン)で分散させ、正極ペーストを得、正極ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、正極板を得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、正極材料層には、正極活性材料の大形単結晶ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM523)、導電剤のアセチレンブラックおよび接着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)が含まれる。
【0090】
[負極板]
【0091】
本出願に係る二次電池において、負極板は、負極集電体と、負極集電体に設けられたとともに負極活性材料を含む負極材料層とを含み、前記負極材料層を、負極集電体の1つの表面に設けてもよく、負極集電体の2つの表面に設けてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体として、金属箔または複合集電体を使用する。例えば、金属箔として、銅箔を使用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基材の少なくとも1つの表面に形成された金属層とを含み得る。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成させてなしたものであり得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、負極活性材料は、当分野周知の電池用負極活性材料を使用することができる。例として、負極活性材料は、黒鉛(例えば、人造黒鉛、天然黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、カーボンナノチューブ、シリコン系材料、スズ系材料およびチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも1種を含む。前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体およびシリコン合金から選択された少なくとも1種である。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物およびスズ合金から選択された少なくとも1種である。本出願は、これらの材料に限定されず、電池の負極活性材料として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活性材料は、単独で使用されてもよく、2つ以上組み合わせて使用されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、任意で、負極膜層には、接着剤がさらに含まれる。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)およびカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択された少なくとも1種である。
【0095】
いくつかの実施形態において、任意で、負極膜層には、導電剤がさらに含まれる。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーから選択された少なくとも1種である。
【0096】
いくつかの実施形態において、負極材料層には、負極活性材料の人造黒鉛、導電剤のアセチレンブラックおよび接着剤のスチレンブタジエンゴム(SBR)が含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態において、任意で、負極材料層には、例えば増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤を含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、下記のように負極板を調製することができる。上記の負極板の調製用の成分、例えば負極活性材料、導電剤、接着剤および任意の他の成分を溶剤(例えば脱イオン水)で分散させ、負極ペーストを得、負極ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、負極板を得る。
【0099】
[セパレータ]
【0100】
本出願に係る二次電池において、セパレータは、正極板と負極板との間に配置された、正極板と負極板とを隔てるものである。前記セパレータの種類は具体的に限定されず、任意の周知の良好な化学的安定性および機械的安定性を有する多孔質構造のセパレータを使用することができる。いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリフッ化ビニリデンから選択された少なくとも1種である。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、ここで特に限定しない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよく、ここで特に限定しない。
【0101】
本出願に係る二次電池は、リチウムイオン電池であり得る。
【0102】
従来の方法で本出願に係る二次電池を作製することができる。いくつかの実施形態において、正極板、負極板およびセパレータは捲回プロセスまたは積層プロセスにより電極アッセンブリーとして作製される。例示的に、作製方法は下記のステップを含む。
ステップ1:セパレータが正極板と負極板との間に位置するように、正極板、セパレータ、負極板を順に積層し、そして捲回して電極アッセンブリーを得る。
ステップ2:電極アッセンブリーを二次電池のハウジングに配置し、乾燥したあと電解液を注入し、フォーメーション、静置の工程を経て二次電池を得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、本出願に係る二次電池はパッケージを含む。該パッケージは、上記の電極アッセンブリーおよび電解質を封入することに用いられる。
【0104】
いくつかの実施形態において、二次電池のパッケージは、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどの硬質ケースであってもよく、例えば袋状ソフトパックのようなソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートおよびポリブチレンサクシネートなどのプラスチックであり得る。
【0105】
本出願では、二次電池の形状は特に限定されなく、円柱状、四角形または他の任意の形状であってもよい。例えば、
図5には、一例としての四角形構造の二次電池5が示されている。
【0106】
いくつかの実施形態において、
図6に示すように、パッケージは、ハウジング51とカバープレート53とを含む。ハウジング51は、底板と底板に接続された側板とを含み、底板と側板とにより収容室を囲むように構成される。ハウジング51は、収容室と連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口を閉蓋するように設けられて前記収容室を密封することができる。正極板、負極板およびセパレータは、捲回プロセスまたは積層プロセスにより電極アッセンブリー52として形成される。電極アッセンブリー52が前記収容室内に密封される。電解液が電極アッセンブリー52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アッセンブリー52の数は、1つであってもよく複数であってもよく、当業者が実際の要求に応じて選択することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、二次電池を組み立てて電池モジュールにすることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数が、1つであってもよく複数であってもよく、具体的な数について、当業者が電池モジュールの応用および容量に応じて選択することができる。
【0108】
図3は、一例としての電池モジュール4を示している。
図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5が電池モジュール4の長さ方向において順に配列して設置される。無論、他の任意の方式で配置してもよい。さらに、固定部材により該複数の二次電池5を固定する。
【0109】
任意で、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有する筐体を有してもよい。
【0110】
いくつかの実施形態において、上記の電池モジュールを組み立てて電池パックにすることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数が、1つであってもよく複数であってもよく、具体的な数について、当業者が電池パックの応用および容量に応じて選択することができる。
【0111】
図4および
図5は、一例としての電池パック1を示している。
図4および
図5に示すように、電池パック1は、電池ケースと、電池ケースに配置された複数の電池モジュール4とを含む。電池ケースは、上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2が下ケース3を覆うように設けられ、これによって電池モジュール4を収容するための密閉空間が形成される。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ケースに配置されることができる。
【0112】
また、本出願は、本出願に係る二次電池、電池モジュールまたは電池パックを備える電気装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュールまたは電池パックは、前記電気装置の電源として使用してもよく、前記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用してもよい。前記電気装置は、移動設備(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、完全電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システムなどが挙げられるが、これらに限定されない。前記電気装置に対して、その使用要求に応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択することができる。
【0113】
図6は、一例としての電気装置を示している。該電気装置は、完全電気自動車、ハイブリッド電気自動車またはプラグインハイブリッド電気自動車などであり得る。該電気装置の二次電池に対する高レートおよび高エネルギー密度の要求を満たすため、電池パックまたは電池モジュールを使用することができる。
【0114】
他の例として、装置は携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであり得る。該装置は、一般的に軽量および薄いことが要求されるため、電源として二次電池を使用することができる。
【0115】
実施例
以下、本出願の実施例を説明する。下記に説明する実施例は、例示的なものであり、本出願を説明するものに過ぎず、本出願を限定するものではない。実施例では明記されていない具体的な技術または条件について、当分野の文献に記載の技術または条件を使用し、或いは製品説明書に従って行う。使用される試薬または設備にメーカーが明記されていないものは、いずれも市販で入手できる従来品である。
【0116】
実施例および比較例によるリチウムイオン電池は、いずれも下記の方法で調製されたものである。
【0117】
(1)正極板の調製
正極活性材料のNCM523、導電剤のアセチレンブラック、接着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比96.5:1.5:2で溶剤のN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、十分撹拌して均一に混合させたあと正極ペーストを得た。そして正極ペーストを正極集電体に均一に塗布し、塗布の重量が18.18mg/cm2であり、そのあと、乾燥、冷間プレス、切断を経て、正極板を得た。
(2)負極板の調製
活性物質の人造黒鉛、導電剤のアセチレンブラック、接着剤のスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を重量比95:2:2:1で溶剤の脱イオン水に溶解させて溶剤の脱イオン水と均一に混合させたあと負極ペーストを得た。そして負極ペーストを負極集電体の銅箔に均一に塗布し、塗布重量が10.58mg/cm2であり、乾燥したあと負極シートを得、そして冷間プレス、切断を経て負極板を得た。
(3)電解液の調製
アルゴンガス雰囲気下でグローブボックスで(H2O<0.1ppm、O2<0.1ppm)、有機溶剤EC/EMCを質量比3/7で均一に混合し、表1-4に示した塩と添加剤を加え、均一に撹拌して、相応の電解液を得た。
(4)セパレータの調製:セパレータとしてポリプロピレン膜を使用した。
(5)タブの横断面積Sの測定方法
電池セルを分解し、マイクロメータを用いて正極タブの厚さh(μm)を測定し、普通の定規でタブの平均幅L(mm)を測定し、1つの電池セルにおける正極タブの総個数をnとした場合、相応の電池セルの正極タブの平均横断面積は、S=n×L×h/1000(mm2)である。
(6)リチウムイオン電池の調製
セパレータが正極板と負極板との間に位置して正極板と負極板とを隔てるように、正極板、セパレータ、負極板を順に積層し、そして捲回して電極アッセンブリーを得、電極アッセンブリーを電池ハウジング内に配置し、乾燥したあと電解液を注入し、そしてフォーメーション、静置の工程を経てリチウムイオン電池を得た。電解液の質量n4(g)は、n4=2.8g/Ah×Cであり、ただし、2.8g/Ahが液注入係数であり、Cが電池セルの容量(単位:Ah)である。
【0118】
リチウムイオン電池のテスト過程は下記のとおりである。
1.電池セルの容量のテスト
25℃下で、リチウムイオン電池に対して1Cの定電流で4.35Vまで充電し、その後、4.35Vで電流が0.05C未満になるまで定電圧充電し、そして、0.33Cで2.8Vまで放電して、放電容量C(単位:Ah)を得た。
2.リチウムイオン電池の45℃下でのサイクル性能テスト
45℃下で、リチウムイオン電池に対して1.5Cの定電流で4.35Vまで充電し、その後、4.35Vで電流が0.05C未満になるまで定電圧充電し、そして、リチウムイオン電池に対して1.5Cの定電流で2.8Vまで放電し、これが1つの充放電過程であった。このように充電および放電を、500サイクル繰り返した。
3.電池セルの内部抵抗
500サイクルを経た電池セルの電力を50%SOCに調整し、そして交流抵抗計で電池の内部抵抗を測定し、摂動電圧を5mVにし、周波数を1000Hzにした。
4.電解液テスト
天秤で上記の500サイクルを経た電池セルの重量を測り、n1(g)として記録し、上記の500サイクルを経た電池セルに対して0.1Cの定電流で2.8Vまで放電し、そして遠心(5000rpm×30min)を行い、電解液を取ってイオンクロマトグラフ分析を行って、対応のリチウム塩含有量w2を得た。イオンクロマトグラフ分析過程として、サンプルを測り取って、脱イオン水で定容に希釈し、処理したサンプルに対してDIONEX ICS-900システムを利用して陰イオン含有量測定を行った。
電池セルの極板およびセパレータをDMCに3回浸し、極板およびセパレータの内部の残留電解液を十分除去し、そして、電池セルのパッケージ、極板、セパレータを60℃下で24h真空乾燥し、重量を測って、n2(g)として記録し、したがって、対応の電池セルの残留電解液の質量がn3(g)=n1-n2であり、対応の残留電解液の質量分率がn3/n4である。
残留電解液におけるリチウム塩の質量がw2×n3であり、最初に電池セルに注入した電解液におけるリチウム塩の質量がw2×n4である。残留電解液におけるリチウム塩の質量分率は、残留電解液におけるリチウム塩の質量/最初に電池セルに注入した電解液におけるリチウム塩の質量×100%であり、即ち(w2×n3)/(w2×n4)である。
【0119】
テストの結果は表1-4に示されている。
【0120】
【0121】
表1から分かるように、比較例1による電解液に熱安定性塩LiFSIおよびリチウム塩の分解を抑制する添加剤LiSO3Fを添加しなく、比較例2ではLiSO3Fを添加しなく、比較例3ではLiFSIを添加しなく、500サイクルを経たあと電解液が多く分解し、電解液に残ったリチウム塩の含有量が比較的に低く、電池セルの内部抵抗が比較的に高かった。比較例4では、m1w/αが0.5よりも小さく、比較例5では、m1w/αが20よりも大きく、実施例1-4に対して、比較例4および比較例5では、500サイクルを経たあと電解液が多く分解し、電解液に残ったリチウム塩の含有量が比較的に低く、電池セルの内部抵抗が比較的に高かった。
【0122】
【0123】
表2から分かるように、比較例7では、m1w/αが0.5よりも小さく、比較例6では、温度上昇係数が2よりも小さく、実施例5および実施例6に対して、比較例6および比較例7では、500サイクルを経たあと電解液が多く分解し、電解液に残ったリチウム塩の含有量が比較的に低く、電池セルの内部抵抗が比較的に高かった。
【0124】
【0125】
表3から分かるように、比較例9では、m2/αが1よりも小さく、比較例10では、m2/αが10よりも大きく、実施例7および実施例8では、m2/αが1%~8%(四捨五入後)であった。実施例7および実施例8に対して、比較例9および比較例10では、500サイクルを経た後、電池セルの内部抵抗が比較的に高かった。
【0126】
【0127】
表4から分かるように、比較例11による電解液に電子を失いやすい添加剤を添加しなく、比較例12および実施例13-19に対して、比較例11では、500サイクルを経たあと電解液が多く分解し、電解液に残ったリチウム塩の含有量が比較的に低く、電池セルの内部抵抗がより高かった。比較例12では、m3/αが0.1%よりも小さく、実施例13に対して、比較例12では、500サイクルを経たあと電池セルの内部抵抗がより高かった。
【0128】
なお、本出願は、上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態が例示的なものにすぎず、本出願の技術案の範囲内において、技術思想と実質的に同様な構成を有し、同様な効果を奏することができる実施形態も本出願の技術範囲に該当する。また、本出願の主旨を逸脱しない範囲内に実施形態に対して行った当業者が想到できる各種の変形や、実施形態の一部の構成要素を組み合わせてなした他の方式も本出願の範囲に該当する。
【符号の説明】
【0129】
1 電池パック
2 上ケース
3 下ケース
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アッセンブリー
53 カバープレート