(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】希土類永久磁石及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20250130BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20250130BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20250130BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20250130BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20250130BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
B22F3/24 K
B22F3/24 L
B22F3/00 F
C22C33/02 K
C22C38/00 303D
(21)【出願番号】P 2023110616
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】2022108003182
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522310502
【氏名又は名称】烟台正海磁性材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】于永江
(72)【発明者】
【氏名】王聰
(72)【発明者】
【氏名】李磊
(72)【発明者】
【氏名】紀芳
(72)【発明者】
【氏名】魏蕊
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-50427(JP,A)
【文献】特開2012-174920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
B22F 3/24
B22F 3/00
C22C 33/02
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類永久磁石であって、前記永久磁石は、R
2T
14B結晶粒の主相構造を含み、そのうち、
Rは
Ndから選択され、更に、Pr、Dy、Tb、Ho、Ce及びGdから選択される少なくとも1つを含むか又は含まず、
Tは、少なくともMn
及びFe
を含み、更に、Coを含む遷移金属を
含むか又は含まず、
Bはホウ素であり、
前記永久磁石は、粒界に拡散分布したMnと重希土類元素を更に含み、
前記重希土類元素は、Dy、Ho、Tbから選ばれる少なくとも1つであ
り、
前記永久磁石の表面の箇所におけるMn含有量はx1であり、表面の箇所における重希土類含有量はy1であり、表面から500 μm離れた箇所におけるMn含有量はx2であり、表面から500 μm離れた箇所における重希土類含有量はy2であり、そのうち、x1>x2且つy1>y2であり、
前記永久磁石の表面の箇所における保磁力はz1であり、前記永久磁石のコア部における保磁力はz2であり、z1>z2であり、
前記永久磁石の厚さはmであり、
前記永久磁石は、以下の式(1)及び(2)を満たす:
x1/x2≧y1/y2 (1)
[2*x1/x2 -(z1-z2)/2/m]≧0 (2)
ことを特徴とする希土類永久磁石。
【請求項2】
前記永久磁石はMを更に含み
、
Mは、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)
及びニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の希土類永久磁石。
【請求項3】
前記永久磁石の厚さは、m≦15 mmであり
、
前記希土類永久磁石の酸素含有量は2000 ppm以下である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の希土類永久磁石。
【請求項4】
請求項
1に記載の希土類永久磁石の製造方法であって、
(1)ネオジム鉄ボロン磁石の基体を製造するステップ
であって、前記基体の原料は、R、Fe及びBを含み、更に、Co、M又はその両方を含むか又は含まないステップと、
(2)少なくともMnと、重希土類元素を含有する物質とを含む拡散源を製造するステップと、
(3)ステップ(2)に記載の拡散源を前記基体の表面に配置し、拡散熱処理を行った後、前記希土類
永久磁石を得るステップと、を含
む、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記ネオジム鉄ボロン磁石の基体の酸素含有量が2000 ppm以下であり、
前記拡散源が、少なくともMn及び重希土類を含み、そのうち、Mnの含有量が20 %wt以下である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
Mnの含有量は0.1 wt%~20 wt%である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(1)において、前記ネオジム鉄ボロン磁石の基体の製造方法は、製錬、製粉、プレス加工、及び焼結を含み、
前記基体
にさらに黒化処理を行
い、前記黒化処理の条件は、大気雰囲気で、黒化温度は200℃~500℃で、黒化時間は3 min~60 minである、
ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)には、前記拡散源において、Mnの含有量
は15
wt%であり、
前記拡散源において、前記重希土類元素を含有する物質は、重希土類の純金属
、重希土類元素の化合物
またはその両方から選ばれ
、
前記重希土類の化合物は、重希土類のフッ化物、重希土類の酸化物、重希土類の水素化物
及び重希土類の酸フッ化物から選ばれる少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(3)において、前記配置の方法は、例えば、溶射、蒸着、コーティング、マグネトロンスパッタリング、埋め込み、
及び、印
刷の方法から選ばれる少なくとも1つによって、前記拡散源を前記基体の表面に配置することを含む、
ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、前記拡散熱処理は、真空又は不活性ガス雰囲気で行い、
前記拡散熱処理は、少なくとも2段の熱処理を含
む、
ことを特徴とする請求項
4に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップ(3)において、前記拡散熱処理は、最初に第1段熱処理を行うことと、その後に第2段熱処理を行うこととを含み、
更に、前記第1段熱処理の条件は、第1段熱処理の温度が800℃~1000℃であり、熱処理時間が少なくとも3 hであることを含み、
前記第2段熱処理の条件は、第2段熱処理の温度が400℃~650℃であり、熱処理時間が1 h~10 hであることを含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項
1に記載の希土類永久磁石
を含む、
ことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石の製造技術分野に関し、具体的には、希土類永久磁石及びその製造方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ネオジム鉄ボロン系焼結磁石は優れた磁気特性を有するため、広く使用されており、特に近年、重希土類拡散技術の普及により、ネオジム鉄ボロン磁石の総合的な磁気特性が更に向上し、磁気エネルギー積(MGOe)と保磁力(Hcj)の和は既に80を突破できるようになった。しかし、拡散技術に用いられる重希土類は、その材料のコストがより高いため、拡散した重希土類の量を低減させることは、磁石の製造コストを低減させることに対して極めて重要な意味を有する。現在、従来の粒界拡散に代えて拡散助剤を添加する(即ち複合拡散)方式によって磁石の性能を改善する研究は、既に業界内で広く研究されており、多くの研究者は添加する助剤の元素の種類に対して相応の分析を行い、現在、主に以下の2種類を含む:(i)Cu、Ga、Al、Ag等のような低融点(例えば1100℃未満)の元素を補助拡散源として添加し、このような元素は、しばしば従来のNdFeB焼結磁石内において粒界濡れ性を改善し、Hcjを向上させる効果があり、拡散源の補助元素として添加した後、拡散源の融点の低下を招き、この場合、従来の重希土類拡散温度で拡散を行うと、比較的低温で重希土類拡散源が速やかに溶融し、磁石表面の結晶粒と拡散源が遷移融合し、拡散源元素が磁石表面の結晶粒内部に過剰に浸透し、拡散源元素の消耗が増加し、拡散磁石表面と磁石コア部のHcj差が増大することを招く。また、拡散温度を下げる方式により、拡散源の消耗が低減するが、拡散温度が低下することにつれて、重希土類元素の粒界相での移動速度が低下し、拡散可能な深さが大幅に減少してしまい、厚さが比較的大きい拡散磁石を製造することは困難であるため、実際の応用においても実用的に有益な効果を得ることが困難である。(ii)Zr、Ti、Nb、W等のような高融点(例えば1600℃を超える)の元素を補助拡散源として添加し、このような元素を添加した後、拡散源の融点が上昇し、重希土類拡散源は更に磁石内部に速やかに浸透しにくくなり、また、拡散温度を上昇させると磁石の高温での液相割合が高くなり、拡散源と磁石表面の結晶粒の反応が激しくなることを招く。
【0003】
従って、適切な拡散源添加元素と拡散温度プロセスを選択することにより、拡散源と磁石表面の結晶粒との反応が減少し、且つ拡散源が更に多く磁石内部に浸透し、磁石表面とコア部のHcj差を低減させ、重希土類の利用率と拡散深さの向上を実現することは、早急に解決すべき技術問題となっている。
【発明の概要】
【0004】
前記問題を解決するために、本発明は以下の技術案を提供する:
希土類永久磁石であって、前記永久磁石は、R2T14B結晶粒の主相構造を含み、そのうち、
Rは希土類元素であり、
Tは、少なくともMn、Fe、及び任意選択的にCoを含む遷移金属であり、
Bはホウ素であり、
前記永久磁石は、粒界に拡散分布したMnと重希土類元素を更に含み、
前記重希土類元素は、Dy、Ho、Tbから選ばれる少なくとも1つである。
【0005】
本発明の実施形態によれば、前記Rは、Nd、及び任意選択的にPr、Dy、Tb、Ho、Ce、Gdを含むか又は含まないものから選ばれる少なくとも1つである。
【0006】
本発明の実施形態によれば、前記永久磁石は、Mを更に含む。
【0007】
好ましくは、Mは、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)から選ばれる少なくとも1つである。
【0008】
本発明の実施形態によれば、前記永久磁石において、R、T、B及びMの含有量は、特に限定されず、当分野で公知の含有量を選択することができる。例示的には、Mの重量百分率は、0≦M≦5%である。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記永久磁石の表面の箇所におけるMn含有量はx1であり、表面の箇所における重希土類含有量はy1であり、表面から500μm離れた箇所におけるMn含有量はx2であり、表面から500μm離れた箇所における重希土類含有量はy2であり、そのうち、x1>x2且つy1>y2である。本発明において、Mn含有量とは、主相構造及び粒界中のMnの総質量を指す。本発明において、前記永久磁石の表面の箇所におけるMnの含有量とは、永久磁石の表面に近いMnの含有量、例えば永久磁石の表面から10μm以内のMnの含有量を指す。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記永久磁石の表面の箇所における保磁力はz1であり、前記永久磁石のコア部における保磁力はz2であり、z1>z2である。本発明において、前記永久磁石の表面の箇所における保磁力とは、永久磁石の表面に近い保磁力、例えば永久磁石の表面から1 mm以内の保磁力を指す。本発明において、前記永久磁石のコア部とは、永久磁石の幾何学的中心部を指す。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記永久磁石の厚さはmである。本発明において、前記永久磁石の厚さとは、永久磁石の任意の拡散方向に沿った長さの値を指し、例えば、前記永久磁石の配向方向の長さの値、長さ方向の長さの値、又は幅方向の長さの値であってもよい。
【0012】
好ましくは、前記永久磁石の厚さは、m≦15 mmであり、例えば1 mm、2 mm、3 mm、4 mm、5 mm、6 mm、7 mm、8 mm、9 mm、10 mm、11 mm、12 mm、13 mm、14 mm、15 mmである。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記永久磁石は、以下の式(1)及び(2)を満たす:
x1/x2≧y1/y2 (1)
[2*x1/x2 -(z1-z2)/2/m]≧0 (2)
【0014】
本発明者らは、前記式(1)及び(2)を満たさない場合、永久磁石の表層とコア部のHcj差z1-z2が大きすぎることを見出した。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記希土類永久磁石の酸素含有量は2000 ppm以下である。本発明において、低酸素プロセスを用いて前記希土類永久磁石の酸素含有量を2000 ppm以下に制御することにより、粒界及び粒界三重点区域のRの酸化物(例えば、酸化ネオジム)の形成を効果的に低減させ、永久磁石の粒界の濡れ性を改善し、粒界の連続性を向上させ、ひいては永久磁石における重希土類元素の拡散深さを改善し、永久磁石の保磁力を向上させることができる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記永久磁石は、ネオジム鉄ボロン磁石の基体の表面に拡散源を配置した後、拡散熱処理を行うことによって得られる。
【0017】
好ましくは、前記ネオジム鉄ボロン磁石の基体の酸素含有量は2000 ppm以下である。発明者らは、ネオジム鉄ボロン磁石の基体の酸素含有量が高すぎると、拡散熱処理の効果が悪いことを見出した。
【0018】
好ましくは、前記拡散源は、少なくともMn及び重希土類を含み、そのうち、Mnの含有量は20 %wt以下であり、好ましくは0.1 wt%~20 wt%であり、例えば、0.1 wt%、0.5 wt%、1
wt%、5 wt%、10 wt%、15 wt%、20 wt%である。発明者らは、前記拡散源中のMnの含有量が20 %wtを超えると、過多なMnにより、拡散源中の重希土類の濃度が低下し、拡散効率に影響を与え、Mnが少なすぎると、ネオジム鉄ボロン磁石の基体の局所区域での重希土類含有量が高すぎ、重希土類と基体表面の結晶粒の反応が進行し、拡散有効深さが低下し、磁石内部と表面の保磁力の差が大きくなることを見出した。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記拡散熱処理は、少なくとも2段の熱処理を含む。
【0020】
好ましくは、前記熱処理は、最初に第1段熱処理を行うことと、その後に第2段熱処理を行うこととを含む。
【0021】
更に、前記第1段熱処理の条件は、第1段熱処理の温度が800℃~1000℃、例えば850℃~950℃であり、例示的には、900℃であり、熱処理の時間が少なくとも3 hで、例えば3 h~30 hであり、好ましくは3 h~35 hであることを含む。
【0022】
更に、前記第2段熱処理の条件は、第2段熱処理の温度が400℃~650℃、例えば450℃~600℃であり、例示的には、400℃、500℃、600℃であり、熱処理の時間が1 h~15 hで、例えば2 h~8 hであり、例示的には、3 h、5 h、7 hであることを含む。
【0023】
本発明の実施形態によれば、ネオジム鉄ボロン磁石の基体は、拡散源を配置する前に黒化処理を行ってもよい。更に、前記黒化処理の条件は、大気雰囲気で、磁石を黒化処理し、黒化温度は200℃~500℃で、黒化時間は3 min~60 minである。
【0024】
本発明の例示的な方案によれば、前記永久磁石は、前記ネオジム鉄ボロン磁石の基体を黒化処理した後、黒化処理した基体表面に拡散源を配置し、熱処理を行うことによって得られる。
【0025】
本発明は、前記希土類永久磁石の製造方法を更に提供し、前記製造方法は、
(1)ネオジム鉄ボロン磁石の基体を製造するステップと、
(2)少なくともMnと、重希土類元素を含有する物質とを含む拡散源を製造するステップと、
(3)ステップ(2)に記載の拡散源を前記基体の表面に配置し、拡散熱処理を行った後、前記希土類磁石を得るステップと、を含む。
【0026】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、前記ネオジム鉄ボロン拡散磁石の基体は、当分野で公知の基体、例えば、当分野の公知の原料から製造された基板から選ばれ得る。
【0027】
好ましくは、前記基体の原料は、R、Fe、Bを含み、及び任意選択的にCo及び/又はMを含むか又は含まず、前記R及びMは、前記に示すような意味を有する。例示的には、前記基体の原料は、PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Al%が0.4%、Zrが0.1%、Bが1%、残部がFeであることを含む。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記基体の酸素含有量は2000 ppm以下である。
【0029】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、前記ネオジム鉄ボロン磁石の基体の製造方法は、製錬、製粉、プレス加工、及び焼結を含む。本発明において、前記基体が得られば、前記製錬、製粉、プレス加工、焼結は何れも、当分野で公知の方法により行うことができる。
【0030】
例示的には、前記ネオジム鉄ボロン磁石の基体の製造方法は、ネオジム鉄ボロン磁石の原料を製錬し、メルトスピニングを使用した後に合金フレークを得ることと、前記合金フレークを水素吸蔵処理(水素吸蔵圧力は例えば、0.2 MPa)で、ジェットミリングして合金粉(例えば、SMD=2.8μm)を得ることと、前記合金粉を磁場中で配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御した後、170 MPaの静水圧プレスを経て圧粉体を得て、前記圧粉体を真空焼結処理(焼結温度は、例えば、1065℃)した後に前記基体を得ることと、を含む。
【0031】
本発明の実施形態によれば、ステップ(1)において、前記基体は黒化処理を更に行ってもよい。更に、前記黒化処理の条件は、大気雰囲気で、黒化温度は200℃~500℃で、黒化時間は3 min~60 minである。
【0032】
本発明の実施形態によれば、ステップ(2)には、前記拡散源において、Mnの含有量は0.01%~20%であり、好ましくは0.1%~20%、例えば5%、10%、15%である。
【0033】
本発明の実施形態によれば、ステップ(2)において、前記拡散源に、前記重希土類元素を含有する物質は、重希土類の純金属及び/又は重希土類元素の化合物から選ばれ、好ましくは重希土類の純金属である。
【0034】
好ましくは、前記重希土類の化合物は、重希土類のフッ化物、重希土類の酸化物、重希土類の水素化物、重希土類の酸フッ化物から選ばれる少なくとも1つである。
【0035】
本発明の実施形態によれば、本発明は、前記拡散源が得られば、ステップ(2)に記載の拡散源の製造方法を具体的に限定するものではない。例示的には、前記拡散源の製造方法は、Mnを含有する拡散源と重希土類元素を含有する拡散源とを別々に製造し、更に両者を均一に混合して前記拡散源を得ることを含む。例示的には、前記拡散源の製造方法は、Mnと重希土類元素を含有する合金を溶解、鋳塊して拡散源を得ることを含む。
【0036】
本発明の実施形態によれば、ステップ(3)において、前記配置は、本分野で公知の方法、例えば、溶射、蒸着、コーティング、マグネトロンスパッタリング、埋め込み、印刷等の方法から選ばれる少なくとも1つによって、前記拡散源を前記基体の表面に配置することができる。例示的には、前記配置の方法は、重希土類とMnを含有する粉末を塗布によって前記磁石の基体表面に配置することを含む。例示的には、前記配置の方法は、重希土類とMnを含有する合金をマグネトロンスパッタリングによって前記磁石の基体表面に配置することを含む。
【0037】
本発明の実施態様によれば、ステップ(3)において、前記拡散熱処理は、真空又は不活性ガス雰囲気で行う。
【0038】
本発明の実施形態によれば、ステップ(3)において、前記拡散熱処理は、本分野で公知の方法を用いて行うことができる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、ステップ(3)において、前記拡散熱処理は、少なくとも2段の熱処理を含む。
【0040】
好ましくは、前記拡散熱処理は、最初に第1段熱処理を行うことと、その後に第2段熱処理を行うこととを含む。
【0041】
更に、前記第1段熱処理の条件は、第1段熱処理の温度が800℃~1000℃、例えば850℃~950℃であり、例示的には、900℃であり、熱処理時間が少なくとも3 hで、例えば3 h~30
hであり、好ましくは3 h~35 hであることを含む。
【0042】
更に、前記第2段熱処理の条件は、第2段熱処理の温度が400℃~650℃、例えば450℃~600℃であり、例示的には、400℃、500℃、600℃であり、熱処理の時間が1 h~10 hで、例えば2 h~8 hであり、例示的には、3 h、5 h、7 hであることを含む。
【0043】
本発明の例示的な形態によれば、前記製造方法は、
(1’)ネオジム鉄ボロン磁石の基体を製造し、前記基体を黒化処理することと、
(2’)少なくともMnと重希土類元素を含有する物質とを含み、或いは任意選択的にMを含むか又は含まない拡散源を製造することと、
(3’)ステップ(2’)に記載の拡散源を、ステップ(1’)における黒化処理した基体の表面に配置し、拡散熱処理を行った後、前記希土類磁石を得ることと、を含む。
【0044】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、前記製造方法により希土類永久磁石を製造して得る時、特に永久ネオジム鉄ボロン磁石の基体に拡散源配置及び拡散熱処理を行った後、重希土類元素が永久ネオジム鉄ボロン磁石の基体表面から永久ネオジム鉄ボロン磁石の基体内部に拡散し、前記式(1)及び式(2)を満たす希土類永久磁石を得ることができ、その表面の重希土類の富化現象が大きく低減され、更に多くの重希土類が磁石内部に均一に拡散し、拡散磁石の保磁力の上昇幅が向上し、永久磁石体表面とコア部の保磁力の差が減少することを見出した。これは、拡散プロセスにおいて、拡散源とネオジム鉄ボロン磁石の基体表面の主相結晶粒との反応程度が低下し、即ち、同じ条件で、より多くの重希土類元素が基体表面の結晶粒自体と反応することなく粒界に沿って拡散してネオジム鉄ボロン磁石の基体内部に入り込むため、拡散プロセスでの重希土類利用率が顕著に向上し、拡散後に得られた永久磁石表面の箇所における重希土類富化状況が低下し、従って、本発明の希土類永久磁石の表面とコア部のHcj差が低下する。
【0045】
発明者らは、拡散熱処理時に拡散温度が低すぎると、ネオジム鉄ボロン磁石の基体内での前記拡散源の拡散速度が低下し、拡散効率に影響を与え、これに対して、拡散熱処理時に拡散温度が高すぎると、結晶粒が高温で過多な液相を形成し、この液相と拡散源との反応が進行し、重希土類拡散源が十分に拡散してネオジム鉄ボロン磁石の基体コア部に入り込むことができなくなり、永久磁石の内部と表面の保磁力の差が増大してしまい、永久磁石のモータへの使用に影響を与えることを見出した。
【0046】
当分野において、ネオジム鉄ボロン磁石の拡散プロセスは、拡散源の溶解、拡散源と磁石の結晶粒及び粒界の反応、拡散源が粒界に沿って拡散してネオジム鉄ボロン磁石の基体内部に入り込むことを含むことが知られている。一方、発明者らは実験により、重希土類拡散源にMnを添加し、Mnの融点は1244℃であり、重希土類の融点と比較的近く(例えばTbの融点は1172℃、Dyの融点は1412℃)、また、拡散源中のMnの含有量が0 wt%~20 wt%の場合、複合拡散源の融点は依然として元の重希土類に近く、この条件下で、複合拡散源の拡散温度は重希土類拡散源の拡散温度と近くすることができるため、拡散温度が高すぎることによる粒界相の遷移溶融や、拡散温度が低すぎることによる重希土類元素の拡散速度の低下の問題がないことを見出した。また、拡散プロセスにおいて、拡散源にMnを導入することにより、磁石拡散界面の重希土類含有量を相対的に減少させることができ、短時間内でネオジム鉄ボロン磁石の基体表面における過飽和拡散による重希土類が主相結晶粒と速やかに反応し、ひいては逆コアシェル構造を生成することを防止し、拡散源中の重希土類がネオジム鉄ボロン磁石の基体表面で大量に消費され、成功且つ有効に粒界に沿って拡散して磁石内部に入り込むことができなくなる。なお、拡散温度とは、拡散熱処理時の温度を指すことは、当分野には理解されるべきである。
【0047】
発明者らは、黒化処理により、ネオジム鉄ボロン磁石の基体表面の結晶粒と拡散源との反応が更に遅くなり、より多くの拡散源がネオジム鉄ボロン磁石の基体コア部に入り込むことができ、永久磁石表面とコア部の保磁力の差が小さくなることを更に見出した。発明者らは、黒化温度が高すぎる又は黒化時間が長すぎると、ネオジム鉄ボロン磁石の基体表面の結晶粒が過度に酸化され、ネオジム鉄ボロン磁石の基体の残留磁気が低下し、一方、黒化温度が低すぎる又は黒化時間が短すぎると、ネオジム鉄ボロン磁石の基体表面の結晶粒が十分に酸化されず、一部の結晶粒が拡散源と速やかに反応することを見出した。
【0048】
また、本発明は、ネオジム鉄ボロン磁石の基体表面に拡散源を配置すること及び拡散熱処理を行うことにより、永久磁石の重希土類分布、Hcj分布を改善すると共に、永久磁石の耐食性、力学的特性に対して一定の効果を有する。これは主に、本発明の拡散源を用いて拡散する時、重希土類が磁石内、特に磁石の表面と磁石コア部の区域内において更に均一に分布できるため、拡散方向に沿って磁石の組成や組織の一致性がすべて向上するためである。
【0049】
本発明は、前記製造方法により製造された希土類永久磁石を更に提供する。
【0050】
本発明は、前記希土類永久磁石の応用を更に提供し、好ましくはモータに適用する。
【発明の効果】
【0051】
本発明の製造方法により製造された希土類永久磁石は、より多くの重希土類元素を粒界に沿って拡散して磁石コア部に入り込ませることができ、永久磁石のHcj分布を改善すると共に、永久磁石の耐食性、力学的特性も改善する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。本発明の前記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0053】
特に説明のない限り、下記の実施例で使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0054】
以下の実施例では、拡散処理後の磁石の異なる位置の磁石を被験試料とし、以下のような試験を行った:
【0055】
1、磁気特性試験:拡散後の磁石の表層及び幾何学的中心位置に1 mm-1 mm-1 mmの標準サンプルをそれぞれ加工し、パルス磁場磁力計(PFM)で磁気特性を測定した。
【0056】
2、組成試験:拡散後の磁石について、拡散方向において均等に2部に分け、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて永久磁石の表面と中心におけるMnと重希土類の含有量を測定し、そのうち、前記永久磁石の表面の箇所のMn含有量をx1、重希土類含有量をy1、永久磁石の表面から磁石内部500 μmまでのMn含有量をx2、重希土類含有量をy2と記した。
【0057】
3、衝撃吸収エネルギー試験:拡散後のサンプル(サイズは約55 mm-10 mm-6 mm)は衝撃試験機で衝撃吸収エネルギーを5回測定し、平均値を求めた。
【0058】
実施例1
希土類永久磁石の製造方法は、以下の通りである:
【0059】
(1)ネオジム鉄ボロン系焼結磁石の基体を製造した:
重量百分率でのネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料は、PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%、Zrが0.1%、Bが1%であり、残部がFeであることを含む。前記原材料は、メルトスピニング法を用いて合金フレークを製造した。
【0060】
得られた急速凝固フレークに対して水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵圧が0.2 MPaであり、その後にジェットミリングを行い、SMD=2.8μmの粉末を得、原材料の総量0.05 wt%を占める酸化防止剤脂肪酸エステルを添加して均一に混合して合金微粉末を得た。前記合金微粉末を磁場中で配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御し、そして170 MPaの静水圧プレスを経て圧粉体を得た。前記圧粉体を真空で熱処理して焼結し、焼結温度を1065℃に制御した。
【0061】
焼結後の圧粉体は、機械加工により寸法が55 mm*10 mm*6 mmの基体に加工し、そのうち、配向方向の寸法は6 mmで、基体の酸素含有量は2000 ppm以下であった。
【0062】
(2)拡散源を製造した:
Tb粉末とMn粉末を重量百分率95%:5%の割合で混合した後、1%の4-ヘキシルレゾルシノール酸化防止剤と5%のエタノールを添加してスラリーとして混合した。
【0063】
(3)拡散源の配置と拡散熱処理:
ステップ(1)の基体を空気中で黒化処理し、処理温度が300℃、処理時間が40 minであり、
ステップ(2)のスラリーを基体の表面にコーティングし、拡散熱処理を行い、拡散熱処理のプロセスは、拡散温度が940℃、熱処理時間が30 hの1段熱処理と、その後に行う、500℃、熱処理時間が10 hの2段熱処理とを含み、これにより、本実施例の希土類永久磁石を得た。
【0064】
前記に記載した試験方法を用いて、本実施例の希土類磁石の磁気特性と力学的特性を測定した。
【0065】
実施例2
希土類永久磁石の製造方法は、以下の通りである:
【0066】
(1)ネオジム鉄ボロン系焼結磁石基体を製造した:
重量百分率でのネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料は、PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%、Zrが0.1%、Bが1%であり、残部がFeであることを含む。前記原材料は、メルトスピニング法を用いて合金フレークを製造した。
【0067】
得られた急速凝固フレークに対して水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵圧が0.2 MPaであり、その後にジェットミリングを行い、SMD=2.8μmの粉末を得、原料総量の0.05 wt%を占める酸化防止剤脂肪酸エステルを添加して均一に混合して合金微粉末を得た。前記合金微粉末を磁場中で配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御し、そして170 MPaの静水圧プレスを経て圧粉体を得た。前記圧粉体を真空で熱処理して焼結し、焼結温度を1065℃に制御した。
【0068】
焼結後の圧粉体は、機械加工により寸法が55 mm*10 mm*6 mmの基体に加工し、そのうち、配向方向の寸法は6 mmであった。
【0069】
(2)拡散源を製造した:
Tb粉末とMn粉末を重量百分率85%:15%の割合で混合した後、1%の4-ヘキシルレゾルシノール酸化防止剤と5%のエタノールを添加してスラリーとして混合した。
【0070】
(3)拡散源の配置と拡散熱処理:
ステップ(1)の基体を空気中で黒化処理し、大気雰囲気で、処理温度が300℃、処理時間が40 minであった。
ステップ(2)のスラリーを基体の表面にコーティングし、拡散熱処理を行い、拡散熱処理のプロセスは、拡散温度が940℃、熱処理時間が30 hの1段熱処理と、その後の500℃、熱処理時間が10 hの2段熱処理とを含み、これにより、本実施例の希土類永久磁石を得た。
【0071】
前記に記載した試験方法を用いて、本実施例の永久磁石の磁気特性と力学的特性を測定した。
【0072】
実施例3
希土類永久磁石の製造方法は、以下の通りである:
【0073】
(1)ネオジム鉄ボロン系焼結磁石基体を製造した:
重量百分率でのネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料は、PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%、Zrが0.1%、Bが1%であり、残部がFeであることを含む。前記原材料は、メルトスピニング法を用いて合金フレークを製造した。
【0074】
得られた急速凝固フレークに対して水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵圧が0.2 MPaで、その後にジェットミリングを行い、SMD=2.8μmの粉末を得、原材料総量0.05 wt%を占める酸化防止剤脂肪酸エステルを添加して均一に混合して合金微粉末を得た。前記合金微粉末を磁場中で配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御し、そして170 MPaの静水圧プレスを経て圧粉体を得た。前記圧粉体を真空で熱処理して焼結し、焼結温度を1065℃に制御した。
【0075】
焼結後の圧粉体は、機械加工により寸法が55 mm*10 mm*6 mmの基体に加工し、そのうち、配向方向の寸法は6 mmであった。
【0076】
(2)拡散源を製造した:TbとMnを重量百分率85%:15%の割合で配置して溶解した後、拡散源粉末を製造し、1%の4-ヘキシルレゾルシノール酸化防止剤と5%のエタノールを添加してスラリーとして混合した。
【0077】
(3)拡散源の配置と拡散熱処理:
ステップ(1)の基体を空気中で黒化処理し、処理温度が300℃、処理時間が40 minであった。
ステップ(2)のスラリーを基体の表面にコーティングし、拡散熱処理を行い、拡散熱処理のプロセスは、拡散温度が940℃、熱処理時間が30 hの1段熱処理と、その後に行う、500℃、熱処理時間が10 hの2段熱処理とを含み、これにより、本実施例の希土類永久磁石を得た。
【0078】
前記に記載した試験方法を用いて、本実施例の永久磁石の磁気特性と力学的特性を測定した。
【0079】
実施例4
希土類永久磁石の製造方法は、以下の通りである:
【0080】
(1)ネオジム鉄ボロン系焼結磁石基体を製造した:
重量百分率でのネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料は、PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%、Zrが0.1%、Bが1%であり、残部がFeであることを含む。前記原材料は、メルトスピニング法を用いて合金フレークを製造した。
【0081】
得られた急速凝固フレークに対して水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵圧が0.2 MPaで、その後にジェットミリングを行い、SMD=2.8μmの粉末を得、原材料総量0.05 wt%を占める酸化防止剤脂肪酸エステルを添加して均一に混合して合金微粉末を得た。前記合金微粉末を磁場中で配向プレスし、配向磁場強度を2 Tに制御し、そして170 MPaの静水圧プレスを経て圧粉体を得た。前記圧粉体を真空で熱処理して焼結し、焼結温度を1065℃に制御した。
【0082】
焼結後の圧粉体は、機械加工により寸法が55 mm*10 mm*6 mmの基体に加工し、そのうち、配向方向の寸法は6 mmであった。
【0083】
(2)拡散源を製造した:
フッ化テルビウムとMnを重量百分率95%:5%の割合で配置して溶解した後、拡散源粉末を製造し、1%の4-ヘキシルレゾルシノール酸化防止剤と5%のエタノールを添加してスラリーとして混合した。
【0084】
(3)拡散源の配置と拡散熱処理:
ステップ(1)の基体を空気中で黒化処理し、処理温度が300℃、処理時間が40 minであった。
ステップ(2)のスラリーを基体の表面にコーティングし、拡散熱処理を行い、拡散熱処理のプロセスは、拡散温度が940℃、熱処理時間が30 hの1段熱処理と、その後に行う、500℃、熱処理時間が10 hの2段熱処理とを含み、これにより、本実施例の希土類永久磁石を得た。
【0085】
前記に記載した試験方法を用いて、本実施例の磁石の磁気特性と力学的特性を測定した。
【0086】
実施例5
本実施例の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、拡散源を配置する前に黒化処理を行わず、酸洗い処理を採用する点が異なった。
【0087】
比較例1
本比較例の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、ステップ(2)において拡散源は100%Tbである点が異なった。
【0088】
比較例2
本比較例の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、ステップ(2)において拡散源は95%Tbと5%Alである点が異なった。
【0089】
比較例3
本比較例の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、ステップ(2)において拡散源は95%Tbと5%Tiである点が異なった。
【0090】
比較例4
本比較例の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、ステップ(2)において拡散源は75%Tbと25%Mnである点が異なった。
【0091】
比較例5
本比較例の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、ステップ(2)において拡散源は95%フッ化テルビウムと5%Alである点が異なった。
【0092】
比較例6
本比較例の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、ステップ(2)において拡散源は90%フッ化テルビウムと5%Mn及び5%Alである点が異なった。
【0093】
比較例7
本比較例の製造方法は、実施例1と基本的に同じであり、ステップ(1)においてネオジム鉄ボロン系焼結永久磁石の原材料は、PrNdが27%、Dyが4%、Coが2%、Cuが0.1%、Gaが0.1%、Alが0.4%、Zrが0.1%、Bが1%、Mnが0.2%で、残部がFeであることを含む点が異なった。
【0094】
表1は、前記実施例と比較例の永久磁石の異なる位置におけるMn、Tb元素の分布をまとめた表であり、表面及び表面から500μm離れた箇所におけるMn、Tbの含有量が式(1)を満たすか否かを含む。
【0095】
【0096】
表2は、前記実施例と比較例の永久磁石の表面の保磁力、コア部の保磁力、表面とコア部の磁気特性をまとめた表であり、保磁力の差、磁石の衝撃吸収エネルギー等の特性を含む。
【0097】
【0098】
以上により、表1及び表2から、実施例1~5は、拡散源に適量のMnを導入することにより、本発明で製造された希土類永久磁石内の重希土類濃度の差y1/y2が更に小さくなり、磁石の磁気特性の均一性が向上し、磁石表面とコア部の保磁力の差z1-z2が更に小さくなり、磁石の衝撃靭性(衝撃吸収エネルギー)も向上することが判明される。
【0099】
実施例1と5を比較して分かるように、拡散源を配置する前に黒化処理を行わないため、基体表面の結晶粒、粒界と拡散源の反応が比較的速く、これにより基体内部に入り込む拡散源が相対的に減少するため、永久磁石の均一性が実施例1に比べて若干低下する。
【0100】
実施例1と4を比較して分かるように、フッ化テルビウムを拡散源として用いる時、永久磁石の均一性が若干低下する。
【0101】
比較例1及び比較例4から分かるように、拡散源中にMnを含まない時、又はMn含有量が20%を超える時、永久磁石表層とコア部の保磁力の差が大きくなり、永久磁石の均一性が悪くなる。
【0102】
比較例2、5及び6から分かるように、拡散源には融点のより低いAl元素が含まれているため、磁石表層の結晶粒が拡散源と過剰に反応し、逆コアシェル構造を形成し、磁石表面の保磁力が低下することになる。
【0103】
比較例3から分かるように、拡散源には高融点のTi元素が含まれていると、重希土類が効果的に拡散して磁石内部に入り込みにくくなるため、磁石のコア部保磁力が低下し、内外の差が大きくなる。
【0104】
比較例7については、拡散基材にMnを添加し、Mnが永久磁石内に均一に分布し、永久磁石内部にMnの濃度勾配が存在しないため、拡散処理を行っているものの、その拡散効果は実施例1より劣る。
【0105】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。しかし、本願の請求範囲は、前記の実施形態に限定されるものではない。本発明の精神及び原則を逸脱しない範囲で行われたあらゆる修正、同等置換、改良等は、何れも本発明の請求範囲内に含まれるべきである。