(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ポリグリセリン脂肪酸エステル
(51)【国際特許分類】
C09K 23/42 20220101AFI20250130BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20250130BHJP
A61K 8/45 20060101ALI20250130BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20250130BHJP
【FI】
C09K23/42
A61Q1/00
A61K8/45
C09K23/52
(21)【出願番号】P 2023186991
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2023013486の分割
【原出願日】2023-01-31
【審査請求日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2022173544
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 善行
(72)【発明者】
【氏名】坂西 裕一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智則
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-280628(JP,A)
【文献】国際公開第2002/078650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K23/00-23/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される分岐グリセロール基の比率が14~36%であり平均重合度が5~22であるポリグリセリンと炭素数6~18の脂肪酸(但し、炭素数6~12の脂肪酸を除く)とのエステルであり、前記ポリグリセリン中のグリセリン及びジグリセリンの合計含有量が2~20質量%である、ポリグリセリン脂肪酸エステル
であって、HLBが8~13である、ポリグリセリン脂肪酸エステル。
【化1】
【請求項2】
前記ポリグリセリン1分子あたりの前記分岐グリセロール基の数が平均1~10個である、請求項1に記載のポリグリセリン脂肪酸エステル。
【請求項3】
前記脂肪酸がイソステアリン酸又はオレイン酸である、請求項1に記載のポリグリセリン脂肪酸エステル。
【請求項4】
請求項1~
3いずれかに記載のポリグリセリン脂肪酸エステルと油剤を含む、化粧料用組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載の化粧料用組成物を含む、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、該化合物を含有する組成物、並びにこれらを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品及び化粧品分野を中心に利用されている。化粧品分野での活用例として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを油剤へ溶解させた油性クレンジング化粧料が挙げられる。油性クレンジング化粧料へ配合する際、重要な要素として油剤への溶解性が挙げられる。油剤への溶解性が悪い場合、沈殿や濁りを生じてしまい、外観上の美しさが損なわれた化粧料となってしまう。
【0003】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの親水基に用いられるポリグリセリンは、一般的にグリセリンを脱水重合し、必要に応じて蒸留、脱色、脱臭、イオン交換樹脂処理などにより精製して得られる。このような方法で調製されたポリグリセリンは、ポリグリセリン脂肪酸エステルを合成して油剤に溶解させた際、濁りや沈殿が生じる。
【0004】
また、油剤への溶解性を高める方法の1つに、界面活性剤のHLBを下げる方法がある。HLBを下げることにより、一時的に透明な溶液をつくることができるが、長期の保存や低温域での保存で沈殿が生じてしまうため、課題を解決するまでには至っていない。
【0005】
このような課題を解決する技術として、例えば、特許文献1には、ポリグリセリン脂肪酸エステルの未反応のポリグリセリンを除去することで、油剤への溶解性を高める方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では未反応のポリグリセリンを除去する工程が必要であり、低温での安定性までは評価されていないため、更なる改善が求められる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、-5℃のような低温下でも油剤への溶解性に優れるポリグリセリン脂肪酸エステルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記[1]~[3]に関する。
[1]下記式(1)で表される分岐グリセロール基の比率が14~36%であり平均重合度が5~22であるポリグリセリンと炭素数6~22の脂肪酸からなり、前記ポリグリセリン中のグリセリン及びジグリセリンの合計含有量が2~20質量%である、ポリグリセリン脂肪酸エステル。
【化1】
[2][1]に記載のポリグリセリン脂肪酸エステルと油剤を含む、化粧料用組成物。
[3][2]に記載の化粧料用組成物を含む、化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、-5℃のような低温下でも油剤への溶解性に優れるポリグリセリン脂肪酸エステルを提供することができる。本発明における溶解性は、油剤としてエチルヘキサン酸セチルを用いてポリグリセリン脂肪酸エステルの濃度15質量%とした際の-5℃における溶解性で判断するが、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、これ以外の油剤、濃度、温度範囲で使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らが上記課題について鋭意検討したところ、ポリグリセリン脂肪酸エステルの親水基であるポリグリセリンに適度な分岐構造を持たせること、及びポリグリセリン中のグリセリン及びジグリセリンの合計含有量を特定範囲内とすることで、油剤への溶解性に優れることを見出し、本発明の完成に至った。かかるメカニズムとして、親水基であるポリグリセリンが適度な分岐構造をもつことにより、逆ミセル構造を作る際、親水基同士が相互作用しやすくなったと推察される。また、グリセリン及びジグリセリンのエステルが特定量あることにより逆ミセル構造を強固にし、より安定性が高まったと考えられる。
【0013】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、上記式(1)で表される分岐グリセロール基の比率が14~36%であり平均重合度が5~22であるポリグリセリンと炭素数6~22の脂肪酸とのエステルである。本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、洗い流す際のべたつきを抑制する観点から、好ましくは8~13、より好ましくは9~13である。
【0014】
本明細書におけるHLBは、以下のGriffinの算出法により測定された値を指す。けん化価及び中和価は公知の方法により測定する。
HLB=20(1-S/A)
S:ポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価
A:原料脂肪酸の中和価
【0015】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルに係るポリグリセリンは、油剤への溶解性の観点から、上記式(1)で表される分岐グリセロール基の比率が14~36%であり、平均重合度が5~22、好ましくは5~15である。また、ポリグリセリン1分子あたりの上記式(1)で表される分岐グリセロール基の数は、油剤への溶解性の観点から、好ましくは平均1~10個、より好ましくは平均1~4個である。ここで、上記分岐グリセロール基の比率や数はポリグリセリン製造時の原料比率により調整することができる。例えば、後述実施例においては、グリセリントリグリシジルエーテルの使用量を多くすることにより上記分岐グリセロール基の比率や数を増加させており、グリセリントリグリシジルエーテルの使用量を少なくすることにより上記分岐グリセロール基の比率や数を減少させている。なお、上記分岐グリセロール基の比率や数は、後述の実施例に記載の方法により測定する。
【0016】
本明細書におけるポリグリセリンの平均重合度とは、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度であり、(式1)及び(式2)から算出した平均重合度である。
(式1)平均重合度=(112.2×103-18×水酸基価)/(74×水酸基価-56.1×103)
(式2)水酸基価=(a-b)×28.05/試料の採取量(g)
a:空試験による0.5N水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:本試験による0.5N水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
上記(式1)中の水酸基価は社団法人日本油化学会編「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(I)1996年度版」に準じて(式2)で算出される。」
【0017】
また、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルに係るポリグリセリンは、油剤への溶解性、重合度の観点から、グリセリン及びジグリセリンの合計含有量が2~20質量%、好ましくは4~20質量%である。ポリグリセリン中のグリセリン及びジグリセリンの合計含有量は、カラムによる精製度の調整や、精製後に別途添加することなどにより調整することができる。また、ポリグリセリン中のグリセリン及びジグリセリンの合計含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定する。
【0018】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルに係る脂肪酸は、油剤中での結晶性の観点から、炭素数が6~22である。具体的には、カプリル酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
【0019】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般的な合成法により、ポリグリセリンと脂肪酸とをエステル化反応させることで調製することができる。本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、油剤への溶解性に優れることから、ポリグリセリン脂肪酸エステルと油剤を含む、化粧料用組成物として好適に使用することができる。また、各種飲食品等に使用するなど、ポリグリセリン脂肪酸エステルの用途として公知の用途に使用することができる。以下、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた化粧料用組成物の好適な態様について説明する。
【0020】
本態様の化粧料用組成物は、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルと油剤を含む。
【0021】
本態様の化粧料用組成物におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%、更に好ましくは10~15質量%である。ここで、使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、少なくとも本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを含むが、それ以外のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することもできる。ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルの割合は好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは90~100質量%である。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルを2種以上使用した場合における含有量は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの合計量を指す。
【0022】
本態様の化粧料用組成物における油剤としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素油、エステル油、アシルグリセロール、エーテル油、動植物油、シリコーン油などが挙げられ、好ましくは炭化水素油、エステル油、エーテル油、植物油、より好ましくはエステル油である。
【0023】
炭化水素油としては、特に限定されないが、例えば、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ウンデカン、トリデカン、イソドデカンなどが挙げられる。
【0024】
エステル油としては、特に限定されないが、例えば、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソステアリル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、カプリル酸プロピルヘプチル、カプリル酸カプリリル、カプリン酸カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、炭酸ジカプリリルなどが挙げられる。
【0025】
アシルグリセロールとしては、特に限定されないが、例えば、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0026】
エーテル油としては、特に限定されないが、例えば、ジカプリリルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
動植物油としては、特に限定されないが、例えば、ミツロウ、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、ラノリンなどが挙げられ、好ましくは、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油などが挙げられる。
【0028】
シリコーン油としては、特に限定されないが、例えば、ジメチコン、フェニルトリメチコン、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンなどが挙げられる。
【0029】
本態様の化粧料用組成物における油剤の含有量は、好ましくは70~97質量%、より好ましくは80~95質量%、更に好ましくは85~90質量%である。なお、油剤を2種以上使用した場合における油剤の含有量は、油剤の合計量を指す。
【0030】
本態様の化粧料用組成物においては、上記成分以外に通常化粧料に用いられる成分を適宜、その用途、目的に応じて配合することができる。このような任意成分としては、例えば、水、界面活性剤、多価アルコール、水性ゲル化剤、油性ゲル化剤、紫外線吸収剤、粉体、抗酸化剤、防腐剤、香料、着色剤、キレート剤、清涼剤、増粘剤、植物抽出液、ビタミン類、中和剤、保湿剤、抗炎症剤、pH調整剤、アミノ酸等が挙げられる。
【0031】
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油などが挙げられる。
【0032】
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、ジグリセリン、エチルヘキシルグリセリン、1,3-ブチレングリコール(BG)、プロピレングリコール(PG)、プロパンジオール、ジプロピレングリコール(DPG)、ペンチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコール、1,10-デカンジオール、イソペンチルジオール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトールなどが挙げられる。
【0033】
本態様の化粧料用組成物は、常法により上記成分を混合して調製することができる。
【0034】
本態様の化粧料用組成物は、各種化粧料に好適に使用することができる。即ち、本発明は、本態様の化粧料用組成物を含む化粧料についても提供するものである。ここで、本態様の化粧料用組成物をそのまま化粧料として使用してもよいし、上記のような任意成分を更に含有させたものを化粧料とすることもできる。
【0035】
化粧料としては、油性化粧料、乳化型化粧料、両連続型化粧料などが挙げられ、油性化粧料が好ましい。例えば、クレンジングオイル、クレンジングバーム、ホットクレンジングバーム、クレンジングジェル、ホットクレンジングジェル、クレンジングジェルパックなどのクレンジング用化粧料、マッサージオイル、マッサージオイルジェル、マッサージスクラブジェル、ホットマッサージジェルなどのマッサージ用化粧料、入浴剤などが挙げられる。
【0036】
化粧料の製造方法としては、上記各成分を含有させる工程を含む製造方法が挙げられる。ここで、「上記各成分を含有させる工程」とは、予め調製された化粧料用組成物を添加する態様の他、上記各成分を個別に配合して調製する態様も含まれる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
ポリグリセリン製造例1
ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、グリセリン100gとアルカリ触媒を加え、120℃に昇温した。グリセリントリグリシジルエーテル28.26gを10g/hrの速度で滴下し、滴下完了後さらに1時間反応させた。その後、イオン交換樹脂カラムに通液し、未反応のグリセリンを除去した。得られた画分を濃縮してポリグリセリン1とした。
【0039】
ポリグリセリン製造例2
ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、グリセリン100gとアルカリ触媒を加え、120℃に昇温した。グリセリントリグリシジルエーテル47.1gを10g/hrの速度で滴下し、滴下完了後さらに1時間反応させた。その後、イオン交換樹脂カラムに通液し、未反応のグリセリンを除去した。得られた画分を濃縮してポリグリセリン2とした。
【0040】
ポリグリセリン製造例3
ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、ジグリセリン100gとアルカリ触媒を加え、140℃に昇温した。グリセリントリグリシジルエーテル19.56gを10g/hrの速度で滴下し、滴下完了さらに1時間反応させた。その後、イオン交換樹脂カラムに通液し、未反応のジグリセリンを除去した。得られた画分を濃縮してポリグリセリン3とした。
【0041】
ポリグリセリン製造例4
ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、ジグリセリン100gとアルカリ触媒を加え、140℃に昇温した。グリセリントリグリシジルエーテル39.13gを10g/hrの速度で滴下し、滴下完了さらに1時間反応させた。その後、イオン交換樹脂カラムに通液し、未反応のジグリセリンを除去した。得られた画分を濃縮してポリグリセリン4とした。
【0042】
ポリグリセリン製造例5
ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、ジグリセリン100gとアルカリ触媒を加え、140℃に昇温した。グリセリントリグリシジルエーテル78.26gを10g/hrの速度で滴下し、滴下完了さらに1時間反応させた。その後、イオン交換樹脂カラムに通液し、未反応のジグリセリンを除去した。得られた画分を濃縮してポリグリセリン5とした。
【0043】
ポリグリセリン製造例6
ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、グリセリン100gとアルカリ触媒を加え、140℃に昇温した。グリセリントリグリシジルエーテル141.3gを10g/hrの速度で滴下し、滴下完了さらに1時間反応させた。その後、イオン交換樹脂カラムに通液し、未反応のグリセリンを除去した。得られた画分を濃縮してポリグリセリン6とした。
【0044】
ポリグリセリン7、8
その他、ポリグリセリン7として阪本薬品工業社製の「ポリグリセリン#750」、ポリグリセリン8として阪本薬品工業社製の「ポリグリセリン#500」を用いた。
【0045】
ポリグリセリン製造例9
ジムロートおよび攪拌装置を付けた3つ口フラスコに、グリセリン100gとアルカリ触媒を加え、120℃に昇温した。グリセリントリグリシジルエーテル28.26gを10g/hrの速度で滴下し、滴下完了後さらに1時間反応させた。その後、イオン交換樹脂カラムに2度通液し、未反応のグリセリンを可能な限り除去した。得られた画分を濃縮してポリグリセリン9とした。
【0046】
ポリグリセリン製造例10~13
ポリグリセリン9にグリセリン又はジグリセリンを加え、表1に記載した含有量になるよう調製した。
【0047】
<分岐グリセロール比率及び1分子あたりの分岐グリセロールの数の測定>
分岐グリセロールの比率及び1分子あたりの分岐グリセロールの数は、13C-NMRにより以下のように算出した。結果を表1に示す。また、13C-NMRスペクトルの代表例としてポリグリセリン1の13C-NMRスペクトルを
図1に示す。
前処理:ポリグリセリン200mgを重水0.6mLに溶解
使用装置:800MHz13C-NMR 日本電子株式会社製、「JNM-ECZ800R」
積算回数:256回
測定条件:温度30℃、測定シーケンス シングルパルス 1Hデカップリング、パルス繰り返し時間7秒、アセトンを標準ピーク(δ:30.89ppm)として測定
積分に用いている各ピーク範囲:
Total Integrals(TI):60.0-83.0ppm
Dendritic(D):76.5-80.0ppm
【0048】
分岐グリセロールの比率の計算方法
TIはポリグリセリンに関わる全炭素原子の積分値、Dは分岐グリセロールに関わる2級炭素原子の積分値を示す。分岐グリセロールの比率(%)は、上記各ピークの積分値から、下記式によって算出される
分岐グリセロールの比率(%)=(D×3/TI)×100
【0049】
1分子あたりの分岐グリセロールの数の計算方法
ポリグリセリン1分子あたりの分岐グリセロールの数は、下記式によって算出される
1分子あたりの分岐グリセロールの数 =(D×3/TI)× 平均重合度
【0050】
<グリセリン及びジグリセリンの含有量の測定>
ポリグリセリン中のグリセリン及びジグリセリンの含有量の測定は、ポリグリセリンをトリメチルシリル化により誘導体とし、該ポリグリセリン誘導体をGC法(ガスクロマトグラフ法)にて分離定量を行った。結果を表1に示す。
使用装置:GC-14B(株式会社島津製作所)
カラム:OL-17(50%フェニルメチルシリコン、ジーエルサイエンス株式会社)
カラムサイズ:0.5m×3mm
測定温度:100→300℃
昇温速度:10℃/分
【0051】
【0052】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製
実施例1~14、16~17、比較例1~11、13~15
表2~4に示すように各実施例、比較例のポリグリセリン脂肪酸エステルを調製した。代表例として実施例1の調製方法をより具体的に説明する。攪拌装置を付けた4つ口フラスコに、ポリグリセリン製造例1で得られたポリグリセリン1を20.3g、オレイン酸19.7g、及びアルカリ触媒を加え、260℃においてエステル化反応を行った。反応物の酸価が0.5以下になるまで反応し、実施例1のポリグリセリン脂肪酸エステルとした。他の実施例、比較例についても、同様の方法により調製した。実施例10~14、比較例8~11では、240℃においてエステル化反応を行った。
【0053】
<試験例1:温度安定性>
実施例1~14、16~17及び比較例1~11、13~15のポリグリセリン脂肪酸エステルについて、表2~4に記載した濃度(5質量%、15質量%)になるよう表2~4に記載した油剤に70℃で加温溶解した。溶解した組成物をバイアル瓶(容量20ml、内径2.5cm)に10g入れ、-5℃、25℃、50℃で1カ月保管した後の外観性状について、以下の評価基準に従って目視で観察した。結果を表2~4に示す。
(評価基準)
〇:濁りや沈殿が見られない
△:わずかな濁りが見られる
×:沈殿している
【0054】
表2~4に記載した成分の詳細を以下に示す。
エチルヘキサン酸セチル:エキセパールHO/花王株式会社
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:サンオイルMCT-7/太陽化学株式会社
ミネラルオイル:モレスコホワイトP-70/株式会社MORESCO
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
実施例15、比較例12
表5に示す割合で組成物を調製し、実施例15、比較例12とした。それぞれ温度安定性、洗い流し時の粒子径、眼刺激性の評価を実施した。温度安定性については、試験例1と同様の方法で実施した。結果を表5に示す。
【0059】
<試験例2:洗い流し時の乳化粒子径>
実施例15及び比較例12について、濃度が15質量%になるようエチルヘキサン酸セチルに70℃で加温溶解した。常温に冷却後、バイアル瓶(容量100ml、内径3.2cm)に1g入れた。水を99g添加し混合した後、粒度分布計(BECKMAN COULTER LS 13 320)により粒度分布を測定した。求められる平均径を洗い流し時の乳化粒子径とした。結果を表5に示す。
【0060】
<試験例3:眼刺激性>
実施例15及び比較例12について、濃度が15質量%になるようエチルヘキサン酸セチルに70℃で加温溶解した。常温に冷却後、適量眼元に馴染ませた時の眼刺激性を下記評価基準で評価した。評価は5名の専門パネラーで行い、平均値を算出した。結果を表5に示す。
(評価基準)
1:眼が痛くない
2:わずかに眼が痛い
3:眼が痛い
【0061】
【0062】
表2~5に示すように、本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた実施例1~17ではいずれも、-5℃のような低温を含む幅広い温度帯において温度安定性に優れるものであった。また、表5に示すように、洗い流し時の乳化粒子径が小さく、眼刺激性も少ないことから、各種化粧料用途に好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、幅広い温度域で油剤への溶解性に優れるポリグリセリン脂肪酸エステルを提供することができ、化粧料等の用途に好適に使用することができる。