(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-29
(45)【発行日】2025-02-06
(54)【発明の名称】防舷構造物、水域構造物及び交換方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/26 20060101AFI20250130BHJP
B63B 59/02 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
E02B3/26 Z
B63B59/02 J
E02B3/26 J
E02B3/26 C
(21)【出願番号】P 2024070512
(22)【出願日】2024-04-24
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】入江 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 靖宗
(72)【発明者】
【氏名】清水 喜久司
(72)【発明者】
【氏名】細川 優
(72)【発明者】
【氏名】河津 政志
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-008805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0274268(US,A1)
【文献】特開2001-107337(JP,A)
【文献】中国実用新案第213008656(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00- 3/02
E02B 3/16- 3/28
F16F 7/00- 7/14
B63B 1/00-85/00
B63J 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶が接岸する防舷構造物であって、
ゴム製防舷材と、
前記ゴム製防舷材が連結された第1合金部と、
を有し、
前記第1合金部のうち、前記ゴム製防舷材と接触する部位は、Ni基合金製である、
ことを特徴とする防舷構造物。
【請求項2】
前記第1合金部は、前記部位を含む第1プレート、及び、第2プレートを含み、
前記第1プレート、前記第2プレート、及び、前記ゴム製防舷材は、前記ゴム製防舷材、前記第1プレート、前記第2プレートの順に配置され、
前記第1プレートは、前記第2プレートに重なり、
前記第1プレート及び前記第2プレートは、前記Ni基合金製である、
ことを特徴とする請求項1に記載の防舷構造物。
【請求項3】
前記第1プレートは、第1ボルトにより、前記第2プレートに取り付けられ、
前記第1ボルトは、前記Ni基合金製である、
ことを特徴とする請求項2に記載の防舷構造物。
【請求項4】
前記第2プレートの側であって、前記ゴム製防舷材と反対の側は、ステンレス鋼製の第3プレートの一端が溶着により接合され、
前記溶着に用いられる合金は、Ni基合金を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の防舷構造物。
【請求項5】
前記第3プレートの他端は、ステンレスクラッド鋼製の部材に接続される、
ことを特徴とする請求項4に記載の防舷構造物。
【請求項6】
前記ゴム製防舷材と前記部位とは、第2ボルトで連結され、
前記第2ボルトは、前記Ni基合金製である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の防舷構造物。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の防舷構造物を備える、
ことを特徴とする水域構造物。
【請求項8】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の防舷構造物が有する前記ゴム製防舷材の交換方法であって、
前記ゴム製防舷材が取り付けられた前記第1プレートを、前記第2プレートから、取り外す取り外しステップと、
前記取り外しステップにて取り外された前記第1プレートに取り付けられた前記ゴム製防舷材を新たな前記ゴム製防舷材に交換する交換ステップと、
前記交換ステップにて前記ゴム製防舷材が新たな前記ゴム製防舷材に交換された前記第1プレートを前記第2プレートに取り付ける取り付けステップと、
を有することを特徴とする交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防舷構造物、水域構造物及び交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水域構造物に防舷構造が設けられることがある。
特許文献1は、船舶の接舷時の衝撃を和らげるための緩衝部と、この緩衝部を岸壁等に取り付けるための岸壁固定部とを備え、この岸壁固定部は、鉄材料よりも高い防錆性を有する固定部材を含む、防舷材を開示する。
特許文献2は、水域鋼構造物に連結された耐摩耗性鋼材と、この耐摩耗性鋼材に連結されたゴム製防舷材と、を有し、この耐摩耗性鋼材がステンレス鋼になっている防舷構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-20625号公報
【文献】特開2021-8780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2では、耐食性について改善の余地があった。
【0005】
本開示は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、耐食性に優れた防舷構造物、水域構造物及び防舷構造物に設けられた防舷材の交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る防舷構造物は、船舶が接岸する防舷構造物であって、ゴム製防舷材と、前記ゴム製防舷材が連結された第1合金部と、を有し、前記第1合金部のうち、前記ゴム製防舷材と接触する部位は、Ni基合金製である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、耐食性に優れた防舷構造物、水域構造物及び防舷構造物に設けられた防舷材の交換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態に係る取り外しステップを示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る交換ステップを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本開示の一実施形態に係る防舷構造物、及び、防舷構造物が有するゴム製防舷材の交換方法について説明する。
まず、本実施形態に係る防舷構造物について説明する。防舷構造物は、後述するように、水域構造物等に取り付けられる。このことで、船舶が水域構造物等に接岸する時、船舶は防舷構造物に接触する。このことで、防舷構造物は、船舶と、防舷構造物の取り付け対象である水域構造物等と、が直接に接触することを抑える。これにより、防舷構造物は、船舶、及び、防舷構造物の取り付け対象である水域構造物等が損傷することを抑える。
防舷構造物の取り付け対象は、例えば、岸壁である。あるいは、防舷構造物の取り付け対象は、桟橋等をはじめとする係留設備や、海底に打設されたモノパイル、海洋に設置されるジャケット構造体等であってもよい。以下、本実施形態において、上述のような防舷構造物の取り付け対象を、水域構造物という。
【0010】
(防舷構造物の概要)
図1は、実施形態に係る防舷構造物1の平面図である。
以下、本実施形態の説明において方向を示す際、
図1に示すように、後述する第1合金部20の板厚方向を第1方向D1、第1方向D1と直交する方向であって、
図1に示す第1合金部20の板幅方向を第2方向D2、第1方向D1及び第2方向D2の両方に直交する方向をD3という。
図1に示すように、防舷構造物1は、水域構造物2に取り付けられる。防舷構造物1は、ゴム製防舷材10と、第1合金部20と、第3プレート30と、締結部40と、を有する。
【0011】
(ゴム製防舷材について)
図1に示すゴム製防舷材10は、船舶が接触する部分である。ゴム製防舷材10は、船舶が防舷構造物1に接岸した際の衝撃を吸収することで、船舶を保護する。ゴム製防舷材10は、
図1に示すように、締結部40によって第1合金部20に取り付けられる。
ゴム製防舷材10は、
図1に示すように、取付部11と、緩衝部12と、を含む。本実施形態において、取付部11と緩衝部12とは、例えば、ゴムによって一体に形成される。
【0012】
(取付部について)
取付部11は、
図1に示すように、第1合金部20に取り付けられる部分である。換言すれば、取付部11は、ゴム製防舷材10のうち、第1合金部20に接触する部分である。
図1に示すように、取付部11は、ゴムによって板状に形成される。取付部11は、締結部40によって第1合金部20の第1プレート21(後述する)に取り付けられる。このため、取付部11は、
図1に示すように、締結部40が挿通される貫通孔11aを備える。貫通孔11aは、例えば、ゴム製防舷材10の長手方向(第3方向D3)に沿って、間隔をあけて複数設けられる。
【0013】
本実施形態において、取付部11の内部には、不図示の鋼板が埋設される。鋼板には、例えば、SS400をはじめとする圧延鋼板が用いられる。鋼板は、取付部11を補強することで、ゴム製防舷材10と第1合金部20とがより確実に取り付けられるようにする機能を有する。
不図示の鋼板は、取付部11を形成するゴムによって全体を覆われる。鋼板は、ゴム製防舷材10が第1合金部20に取り付けられていない状態においても、外部から完全に目視不可となるように設けられる。具体的には、例えば、鋼板は、第1合金部20に接触する部分においてもゴムに覆われる。例えば、鋼板は、貫通孔11aに面する部分においてもゴムに覆われる。このことで、鋼板と、防舷構造物1を構成する他の部材と、の間で異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑える。ただし、鋼板はなくてもよい。
【0014】
(緩衝部について)
緩衝部12は、ゴム製防舷材10のうち、船舶が接触する部分である。緩衝部12は、例えば、
図1に示すように、平面視においてV字状に形成される。このことで、例えば、V字状の先端において、船舶が接触可能な面状の部位12aを形成する。あるいは、緩衝部12は、例えば、船舶が接触可能な面状の部位12aに相当する部位を形成できれば、その他任意の形状であってもよい。緩衝部12は、船舶が接触した際に変形可能である。このことで、緩衝部12は、船舶がゴム製防舷材10に接触した際の衝撃を吸収する。これにより、船舶が損傷することを抑えることができる。
【0015】
(第1合金部について)
第1合金部20は、
図1に示すように、ゴム製防舷材10が連結される部分である。第1合金部20とゴム製防舷材10とは、締結部40によって連結される。
本実施形態において、第1合金部20のうち、少なくともゴム製防舷材10と接触する部位20Aには、少なくともニッケルの含有率が50%以上である合金が用いられる。あるいは、部位20Aは、Ni基合金製であってもよい。Ni基合金は、例えば、ALLOY-C276である。Ni基合金は、ニッケルを主成分とする合金である。第1合金部20がNi基合金であるか否かは、例えば、ニッケルの含有率が50%以上であるか否かによって確認することができる。また、このような方法によらず、第1合金部20に使用されている鋼板が商品名などで特定されており、この鋼板のスペックにおいてニッケルの含有率が50%以上である場合、第1合金部20がNi基合金であるとしてもよい。ここで、Ni基合金は、ステンレス鋼等に対して比較的イオン化傾向が小さい。このため、第1合金部20にNi基合金を用いることで、第1合金部20とゴム製防舷材10との間で隙間腐食が発生することを抑えることができる。
【0016】
第1合金部20は、
図1に示すように、複数のプレートによって構成される。本実施形態において、第1合金部20は、2枚のプレートを含む。すなわち、第1合金部20は、
図1に示すように、第1プレート21と、第2プレート22と、を含む。
図1に示すように、第1プレート21、第2プレート22、及び、ゴム製防舷材10は、ゴム製防舷材10、第1プレート21、第2プレート22の順に配置される。したがって、第1プレート21は、
図1に示すように、ゴム製防舷材10と接触する部位20Aを含む。
本実施形態において、第1プレート21及び第2プレート22は、Ni基合金製である。このことで、第1プレート21と第2プレート22との間で異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑える。
【0017】
(第1プレートについて)
第1プレート21は、
図1に示すように、第1合金部20を構成する複数のプレートの1つである。上述のように、第1プレート21は、ゴム製防舷材10と接触する部位20Aを含む。換言すれば、第1プレート21は、ゴム製防舷材10が取り付けられるプレートである。防舷構造物1においてゴム製防舷材10を交換する際、第1プレート21は、ゴム製防舷材10とともに水域構造物2から取り外される(詳細は後述する)。
【0018】
(第2プレートについて)
第2プレート22は、
図1に示すように、第1合金部20を構成する複数のプレートの1つである。第2プレート22は、第1プレート21が取り付けられる。第2プレート22は、第3プレート30を介して水域構造物2に取り付けられる。第1プレート21は、第2プレート22から取り外されることで、ゴム製防舷材10とともに水域構造物2から取り外される。
本実施形態において、第1プレート21は、
図1に示すように、第2プレート22に重なる。すなわち、第1プレート21の、第2プレート22に面する面は、全て第2プレート22に接する。あるいは、第1プレート21の、第2プレート22に面する面の一部が、第2プレート22に接していても良い。このことで、防舷構造物1におけるゴム製防舷材10の交換を容易にすることができる。
【0019】
(第3プレートについて)
第3プレート30は、
図1に示すように、第1合金部20と水域構造物2とを接続する。具体的には、第3プレート30は、第1合金部20の第2プレート22と水域構造物2とを接続する。第1プレート21、第2プレート22が積層されているのに対して、第3プレート30は、第1プレート21、第2プレート22の積層方向(第1方向D1)に長い。
第3プレート30の一端は、第1合金部20における第2プレート22の側であって、ゴム製防舷材10と反対の側に接合される。第3プレート30の他端は、水域構造物2に接続される。本実施形態において、水域構造物2における第3プレート30の他端が接続される部分は、例えば、ステンレスクラッド鋼製である。すなわち、本実施形態において、第3プレート30の他端は、ステンレスクラッド鋼製の部材に接続される。
【0020】
本実施形態において、第3プレート30は、
図1に示すように、接続板31と、補強板32と、を含む。
接続板31は、両端が第1合金部20と水域構造物2とにそれぞれ接続される板状の部材である。より具体的には、接続板31は、
図1に示すように、一端が第2プレート22に接合され、他端が水域構造物2のステンレスクラッド鋼製の部材に接続される。本実施形態において、第3プレート30の一端及び他端とは、接続板31の一端及び他端である。
補強板32は、
図1に示すように、接続板31と第2プレート22との接続を補強する板状の部材である。
【0021】
本実施形態において、第3プレート30はステンレス鋼製である。すなわち、接続板31及び補強板32はステンレス鋼製である。このことで、防舷構造物1におけるNi基合金の使用量を抑え、防舷構造物1の費用削減に寄与する。
本実施形態において、第2プレート22には、第3プレート30の一端が溶着により接合される。この時、溶着に用いられる合金は、Ni基合金を含む。また、上述のように、第2プレート22は、Ni基合金製である。このことで、第2プレート22と第3プレート30との間で隙間腐食が発生することを抑える。
【0022】
(締結部について)
締結部40は、防舷構造物1が有する上述した各構成を互いに連結する。
図1に示すように、締結部40は、第1ボルト41と、第1ナット42と、第2ボルト43と、第2ナット44と、を含む。
【0023】
第1ボルト41は、
図1に示すように、第1プレート21と第2プレート22とを連結する。換言すれば、第1プレート21は、第1ボルト41により、第2プレート22に取り付けられる。第1ボルト41は、第1合金部20とは別部材で、第1合金部20に形成された貫通孔(不図示)に差し込まれる。
第1ナット42は、
図1に示すように、第1ボルト41に締結される。このことで、第1プレート21と第2プレート22とが連結される。
【0024】
第2ボルト43は、
図1に示すように、ゴム製防舷材10と第1プレート21とを連結する。換言すれば、ゴム製防舷材10の取付部11と、ゴム製防舷材10と接触する部位20Aを含む第1プレート21とは、第2ボルト43で連結される。
本実施形態において、第2ボルト43は、
図1に示すように、第1プレート21に取り付けられたスタッドボルトである。このことで、第2ボルト43が、第1プレート21における第2プレート22に面する面に露出しないようにする。これにより、第1プレート21と第2プレート22との間に隙間が生じないようにすることができる。
第2ナット44は、
図1に示すように、第2ボルト43に締結される。このことで、ゴム製防舷材10と第1プレート21とが連結される。
【0025】
本実施形態において、第1ボルト41、第1ナット42、第2ボルト43、第2ナット44、のそれぞれは、例えば、ステンレス製であってもよいし、Ni基合金製であってもよい。このことで、締結部40と、防舷構造物1の各構成と、の間で異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑える。
本実施形態において、第1ボルト41、第1ナット42、第2ボルト43、第2ナット44、のそれぞれには、市販のものが好適に用いられる。このことで、締結部40の費用を抑えることが好ましい。
図4は、締結部40がワッシャWを更に含む変形例である。
また、
図4に示すように、締結部40はワッシャWを更に備えてもよい。
図4に示すように、ワッシャWには、例えば、L字状のものが用いられる。すなわち、ワッシャWは、例えば、第1プレート21の板面や取付部11の板面に面する第1部W1と、第1部W1の第2方向D2の端部から折れ曲がるように突出する第2部W2と、を含む。このことで、第2部W2を、第1プレート21や取付部11の第2方向D2の端部に引っ掛けるようにすることで、締結部40の締結時にワッシャWの空転を抑えるようにしてもよい。なお、このようなワッシャWを用いる場合、第1ナット42又は第2ナット44がワッシャWに溶接されてもよい。このことで、ワッシャWを第1プレート21や取付部11に溶接等することなく、上述の効果を得られるようにしてもよい。
なお、本実施形態において、ワッシャWは、Ni基合金製であることが好ましい。また、上述したワッシャWによらず、通常の形状のワッシャが用いられてもよい。また、第1ボルト41、第1ナット42、及び第2ナット44は、例えば、ワッシャ付きのものが用いられてもよい。
【0026】
(ゴム製防舷材の交換方法)
次に、本実施形態に係る防舷構造物1が有するゴム製防舷材10の交換方法について説明する。ゴム製防舷材10は、例えば、経年劣化した場合や、船舶の接触等によって損傷した場合等に、以下に述べる方法によって交換される。
本実施形態に係る交換方法は、取り外しステップと、交換ステップと、取り付けステップと、を有する。
【0027】
(取り外しステップについて)
図2は、実施形態に係る取り外しステップを示す模式図である。
取り外しステップは、
図2に示すように、ゴム製防舷材10が取り付けられた第1プレート21を、第2プレート22から取り外す工程である。
取り外しステップにおいては、まず、
図2に示すように、第1ナット42を第1ボルト41から取り外す。その後、第1プレート21を第2プレート22から取り外す。このことで、第1プレート21とともに、ゴム製防舷材10が水域構造物2から取り外される。この時、第2プレート22は、
図2に示すように、第1プレート21がゴム製防舷材10とともに水域構造物2から取り外された後においても、水域構造物2に取り付けられた状態のままとされる。これにより、新たなゴム製防舷材10が取り付けられた第1プレート21を第2プレート22に取り付けることで、容易にゴム製防舷材10の交換を行うことができる。
本実施形態において、取り外しステップは、例えば、海中又は海上において作業者によって行われる。
【0028】
(交換ステップについて)
図3は、実施形態に係る交換ステップを示す模式図である。
交換ステップは、
図3に示すように、取り外しステップにて取り外された第1プレート21に取り付けられたゴム製防舷材10を新たなゴム製防舷材10に交換する工程である。新たなゴム製防舷材10とは、交換前のゴム製防舷材10と同じ形状のものであってもよいし、異なる形状のものであってもよい。
交換ステップにおいては、まず、
図3に示すように、第2ナット44を第2ボルト43から取り外す。次に、ゴム製防舷材10を第1プレート21から取り外す。その後、第1プレート21と新たなゴム製防舷材10とを位置合わせする。そして、第1プレート21と新たなゴム製防舷材10とを、第2ボルト43と第2ナット44とによって固定する。
本実施形態において、交換ステップは、例えば、作業船の上や地上において行われる。このように、交換ステップが海中で行われないことで、交換ステップの作業性及び安全性を向上させることができる。
【0029】
(取り付けステップについて)
取り付けステップは、交換ステップにてゴム製防舷材10が新たなゴム製防舷材10に交換された第1プレート21を、第2プレート22に取り付ける工程である。
取り付けステップにおいては、まず、第1プレート21と第2プレート22とを位置合わせする。その後、第1プレート21と第2プレート22とを、第1ボルト41と第1ナット42とによって固定する。このことで、防舷構造物1が、再び
図1に示すような状態とされる。
本実施形態において、取り付けステップは、例えば、海中又は海上において作業者によって行われる。
以上の各工程によって、ゴム製防舷材10の交換が行われる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る防舷構造物1によれば、ゴム製防舷材10が連結された第1合金部20のうち、ゴム製防舷材10と接触する部位20Aは、Ni基合金製である。これにより、例えば、第1合金部20のうちゴム製防舷材10と接触する部位20Aがステンレス鋼製である場合等と比較して、第1合金部20とゴム製防舷材10との間で隙間腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物1とすることができる。
【0031】
また、第1合金部20は、ゴム製防舷材10と接触する部位20Aを含む第1プレート21、及び、第2プレート22を含む。第1プレート21、第2プレート22、及び、ゴム製防舷材10は、ゴム製防舷材10、第1プレート21、第2プレート22の順に配置される。第1プレート21は、第2プレート22に重なる。これにより、例えば、防舷構造物1の設置場所である水域構造物2からゴム製防舷材10を取り外す作業を、ゴム製防舷材10に接続された第1プレート21を第2プレート22から取り外すことで行うことができる。また、ゴム製防舷材10を新しいものに交換する作業を、新たなゴム製防舷材10に接続された第1プレート21を第2プレート22に取り付けることで行うことができる。よって、防舷構造物1の設置場所である水域構造物2での作業を簡単にすることができる。
また、第1プレート21及び第2プレート22は、Ni基合金製である。これにより、例えば、第1プレート21及び第2プレート22がステンレス鋼製である場合等と比較して、第1プレート21と第2プレート22との間で異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物1とすることができる。
【0032】
また、第1プレート21は、第1ボルト41により、第2プレート22に取り付けられる。これにより、第1プレート21の第2プレート22への着脱を容易にすることができる。また、第1ボルト41は、Ni基合金製である。これにより、例えば、第1ボルト41がステンレス鋼製である場合等と比較して、第1ボルト41と、第1プレート21及び第2プレート22と、の間で、異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物1とすることができる。例えば、第1ボルト41に市販のものを用いた場合には、第1ボルト41の調達を容易としつつ、第1ボルト41の費用を抑えることができる。
【0033】
また、第1合金部20における第2プレート22の側であって、ゴム製防舷材10と反対の側は、ステンレス鋼製の第3プレート30の一端が溶着により接合される。すなわち、第3プレート30はステンレス鋼製である。これにより、第3プレート30がNi基合金製である場合等と比較して、第3プレート30の費用を抑えることができる。また、第2プレート22と第3プレート30との溶着に用いられる合金は、Ni基合金を含む。すなわち、ステンレス鋼製の第3プレート30は、Ni基合金を含む溶着合金を用いて、Ni基合金製の第2プレート22に溶着される。これにより、第2プレート22と第3プレート30との間で異種金属接触腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物1とすることができる。
【0034】
また、第3プレート30の他端は、ステンレスクラッド鋼製の部材に接続される。これにより、ステンレス鋼製の第3プレート30とステンレスクラッド鋼製の部材との間で異種金属接触腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物1とすることができる。
【0035】
また、ゴム製防舷材10と、ゴム製防舷材10と接触する部位20Aとは、第2ボルト43で連結される。第2ボルト43は、Ni基合金製である。これにより、例えば、第2ボルト43がステンレス鋼製である場合等と比較して、ゴム製防舷材10と、ゴム製防舷材10と接触する部位20Aと、の間で、異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物1とすることができる。例えば、第2ボルト43に市販のものを用いた場合には、第2ボルト43の調達を容易としつつ、第2ボルト43の費用を抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る水域構造物2によれば、本開示に係る防舷構造物1を備える。これにより、水域構造物2において、上述の効果を享受することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る防舷構造物1が有するゴム製防舷材10の交換方法によれば、まず、取り外しステップにおいて、ゴム製防舷材10が取り付けられた第1プレート21を、第2プレート22から取り外す。次に、取り外しステップにて取り外された第1プレート21に取り付けられたゴム製防舷材10を、交換ステップにおいて新たなゴム製防舷材10に交換する。そして、交換ステップにてゴム製防舷材10が新たなゴム製防舷材10に交換された第1プレート21を、取り付けステップにおいて第2プレート22に取り付ける。取り外しステップにおいて、ゴム製防舷材10が取り付けられた第1プレート21を第2プレート22から取り外すようにすることで、交換ステップにおけるゴム製防舷材10の交換を、任意の場所で行うことができる。したがって、例えば、交換ステップにおけるゴム製防舷材10の交換を、海中をはじめとする作業が困難である場所において行うことを避けることができる。よって、よりゴム製防舷材10の交換作業の作業性及び安全性を向上させることができる。
【0038】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1プレート21は、ゴム製防舷材10と接触する部位20AのみNi基合金によって構成されてもよい。
また、第1プレート21及び第2プレート22には、ステンレス鋼板をNi基合金によって被覆したものが用いられてもよい。具体的には、第1プレート21及び第2プレート22には、例えば、ステンレス鋼の表面にNi基合金がライニングあるいは肉盛溶接されたものが用いられてもよい。この場合、Ni基合金が被覆されるステンレス鋼の表面には、防錆処理がされていることが好ましい。
また、締結部40を構成する各ボルト及びナットは、Ni基合金製でなくてもよい。
また、第3プレート30を第1合金部20に溶着する際に用いられる合金は、Ni基合金を含まなくてもよい。あるいは、第3プレート30と第1合金部20とは、溶着以外の方法により接合されてもよい。
また、第1合金部20は2枚のプレートを含むと説明したが、3枚以上のプレートを含んでもよい。
また、第3プレート30の他端が接続される防舷構造物1の部材は、ステンレスクラッド鋼製でなくてもよい。あるいは、第3プレート30は設けられなくてもよい。
【0039】
その他、本開示の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0040】
(付記)
前記実施形態に係る防舷構造物は、例えば以下のように把握される。
【0041】
<1>本開示の一態様に係る防舷構造物は、船舶が接岸する防舷構造物であって、ゴム製防舷材と、前記ゴム製防舷材が連結された第1合金部と、を有し、前記第1合金部のうち、前記ゴム製防舷材と接触する部位は、Ni基合金製である、ことを特徴とする。
【0042】
上記の防舷構造物によれば、ゴム製防舷材が連結された第1合金部のうち、ゴム製防舷材と接触する部位は、Ni基合金製である。これにより、例えば、第1合金部のうちゴム製防舷材と接触する部位がステンレス鋼製である場合等と比較して、第1合金部とゴム製防舷材との間で隙間腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物とすることができる。
【0043】
<2>上記<1>に係る防舷構造物では、前記第1合金部は、前記部位を含む第1プレート、及び、第2プレートを含み、前記第1プレート、前記第2プレート、及び、前記ゴム製防舷材は、前記ゴム製防舷材、前記第1プレート、前記第2プレートの順に配置され、前記第1プレートは、前記第2プレートに重なり、前記第1プレート及び前記第2プレートは、前記Ni基合金製である、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0044】
また、第1合金部は、ゴム製防舷材と接触する部位を含む第1プレート、及び、第2プレートを含む。第1プレート、第2プレート、及び、ゴム製防舷材は、ゴム製防舷材、第1プレート、第2プレートの順に配置される。第1プレートは、第2プレートに重なる。これにより、例えば、防舷構造物の設置場所からゴム製防舷材を取り外す作業を、ゴム製防舷材に接続された第1プレートを第2プレートから取り外すことで行うことができる。また、ゴム製防舷材を新しいものに交換する作業を、新たなゴム製防舷材に接続された第1プレートを第2プレートに取り付けることで行うことができる。よって、防舷構造物の設置場所での作業を簡単にすることができる。
また、第1プレート及び第2プレートは、Ni基合金製である。これにより、例えば、第1プレート及び第2プレートがステンレス鋼製である場合等と比較して、第1プレートと第2プレートとの間で異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物とすることができる。
【0045】
<3>上記<2>に係る防舷構造物では、前記第1プレートは、第1ボルトにより、前記第2プレートに取り付けられ、前記第1ボルトは、前記Ni基合金製である、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0046】
また、第1プレートは、第1ボルトにより、第2プレートに取り付けられる。これにより、第1プレートの第2プレートへの着脱を容易にすることができる。また、第1ボルトは、Ni基合金製である。これにより、例えば、第1ボルトがステンレス鋼製である場合等と比較して、第1ボルトと、第1プレート及び第2プレートと、の間で、異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物とすることができる。例えば、第1ボルトに市販のものを用いた場合には、第1ボルトの調達を容易としつつ、第1ボルトの費用を抑えることができる。
【0047】
<4>上記<2>又は<3>に係る防舷構造物では、前記第2プレートの側であって、前記ゴム製防舷材と反対の側は、ステンレス鋼製の第3プレートの一端が溶着により接合され、前記溶着に用いられる合金は、Ni基合金を含む、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0048】
また、第1合金部における第2プレートの側であって、ゴム製防舷材と反対の側は、ステンレス鋼製の第3プレートの一端が溶着により接合される。すなわち、第3プレートはステンレス鋼製である。これにより、第3プレートがNi基合金製である場合等と比較して、第3プレートの費用を抑えることができる。また、第2プレートと第3プレートとの溶着に用いられる合金は、Ni基合金を含む。すなわち、ステンレス鋼製の第3プレートは、Ni基合金を含む溶着合金を用いて、Ni基合金製の第2プレートに溶着される。これにより、第2プレートと第3プレートとの間で異種金属接触腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物とすることができる。
【0049】
<5>上記<4>に係る防舷構造物では、前記第3プレートの他端は、ステンレスクラッド鋼製の部材に接続される、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0050】
また、第3プレートの他端は、ステンレスクラッド鋼製の部材に接続される。これにより、ステンレス鋼製の第3プレートとステンレスクラッド鋼製の部材との間で異種金属接触腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物とすることができる。
【0051】
<6>上記<1>から<5>のいずれか一態様に係る防舷構造物では、前記ゴム製防舷材と前記部位とは、第2ボルトで連結され、前記第2ボルトは、前記Ni基合金製である、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0052】
また、ゴム製防舷材と、ゴム製防舷材と接触する部位とは、第2ボルトで連結される。第2ボルトは、Ni基合金製である。これにより、例えば、第2ボルトがステンレス鋼製である場合等と比較して、ゴム製防舷材と、ゴム製防舷材と接触する部位と、の間で、異種金属接触腐食や隙間腐食が発生することを抑えることができる。よって、より耐食性に優れた防舷構造物とすることができる。例えば、第2ボルトに市販のものを用いた場合には、第2ボルトの調達を容易としつつ、第2ボルトの費用を抑えることができる。
【0053】
<7>本開示に一態様に係る水域構造物は、上記<1>から<6>のいずれか一態様に係る防舷構造物を備えることを特徴とする。
【0054】
上記の水域構造物によれば、本開示に係る防舷構造物を備える。これにより、水域構造物において、上述の効果を享受することができる。
【0055】
<8>本開示の一態様に係る交換方法は、上記<2>から<5>のいずれか一態様に係る防舷構造物が有する前記ゴム製防舷材の交換方法であって、前記ゴム製防舷材が取り付けられた前記第1プレートを、前記第2プレートから、取り外す取り外しステップと、前記取り外しステップにて取り外された前記第1プレートに取り付けられた前記ゴム製防舷材を新たな前記ゴム製防舷材に交換する交換ステップと、前記交換ステップにて前記ゴム製防舷材が新たな前記ゴム製防舷材に交換された前記第1プレートを前記第2プレートに取り付ける取り付けステップと、を有することを特徴とする。
【0056】
上記の交換方法によれば、まず、取り外しステップにおいて、ゴム製防舷材が取り付けられた第1プレートを、第2プレートから取り外す。次に、取り外しステップにて取り外された第1プレートに取り付けられたゴム製防舷材を、交換ステップにおいて新たなゴム製防舷材に交換する。そして、交換ステップにてゴム製防舷材が新たなゴム製防舷材に交換された第1プレートを、取り付けステップにおいて第2プレートに取り付ける。取り外しステップにおいて、ゴム製防舷材が取り付けられた第1プレートを第2プレートから取り外すようにすることで、交換ステップにおけるゴム製防舷材の交換を、任意の場所で行うことができる。したがって、例えば、交換ステップにおけるゴム製防舷材の交換を、海中をはじめとする作業が困難である場所において行うことを避けることができる。よって、よりゴム製防舷材の交換作業の作業性及び安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 防舷構造物
2 水域構造物
10 ゴム製防舷材
11 取付部
12 緩衝部
20 第1合金部
20A 部位
21 第1プレート
22 第2プレート
30 第3プレート
31 接続板
32 補強板
40 締結部
41 第1ボルト
42 第1ナット
43 第2ボルト
44 第2ナット
【要約】
【課題】耐食性に優れた防舷構造物、水域構造物及び防舷構造物に設けられた防舷材の交換方法を提供することを目的とする。
【解決手段】船舶が接岸する防舷構造物1であって、ゴム製防舷材10と、ゴム製防舷材10が連結された第1合金部20と、を有し、第1合金部20のうち、ゴム製防舷材10と接触する部位は、Ni基合金製である、ことを特徴とする。
【選択図】
図1