(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ペダル回転力強化装置
(51)【国際特許分類】
B62M 3/08 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
B62M3/08 A
B62M3/08 Z
(21)【出願番号】P 2023138437
(22)【出願日】2023-08-10
【審査請求日】2024-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302057166
【氏名又は名称】株式会社ジオ設計
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】津久井 隆夫
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2022-0103017(KR,A)
【文献】特開平11-34963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 3/00 - 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚力を動力として使うペダルにおいて、ペダル軸にピニオンギアを取付け、
前記ペダル
の前端に
第1の軸を設けて後方が開くように付勢した可動踏板を軸着させ、
前記可動踏板の下部前方に
第2の軸を介して
前記ピニオンギアと噛み合うように付勢したラックギアを吊設しておくことにより、ペダリング時の
前記可動踏板の開閉動作が
、前記ラックギアと
前記ピニオンギア間で
構成されるラチェット機構
によるラチェット作用を生み出し、
前記ラックギアと前記ピニオンギアの噛合中は
、前方向の
前記ペダルの軸回転がロックされて
前記ペダルの力点が軸心から前端に移動することで、回転力を強化できるようにしたことを特徴とするペダル回転力強化装置。
【請求項2】
脚力を動力として使うペダルにおいて、ペダル軸にピニオンギアを取付け、前記ペダルの後端に第1の軸を設けて前方が開くように付勢した可動踏板を軸着させ、前記可動踏板の下部前方に第2の軸を介して前記ピニオンギアと噛み合うように付勢したラックギアを吊設しておくことにより、ペダリング時の前記可動踏板の開閉動作が、前記ラックギアと前記ピニオンギア間で構成されるラチェット機構によるラチェット作用を生み出し、前記ラックギアと前記ピニオンギアの噛合中は、前方向の前記ペダルの軸回転がロックされて前記ペダルの力点が軸心から前端に移動することで、回転力を強化できるようにしたことを特徴とするペダル回転力強化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚力を動力源とする物のペダルに関し、特に自転車においてペダルの回転力を強化させる装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
脚力でペダルを踏み、車輪を回して走る手軽な移動手段として自転車があり、あらゆる面で環境に最も優しい乗り物と言えるが、体力を使うため、走行時の登り坂や向い風などの影響を受けやすいこともあり、更に効率良く走行できる技術が所望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従前より、自転車に内装や外装のギアを装備し、筋力に合わせてギアを調整して快適に走行する方法があるが、登り坂や向い風などではギア比を落とすことで脚への負担を軽減できる反面、速度を維持しようとするとペダルの回転を速めなければならず、結局のところ、一定の運動量で走るには速度をかなり犠牲にしなければならなかった。
【0004】
また、チェーンリングをオーバル形状にして、踏み込む力を効率よくチェーンに伝達させようとする方法もあるが、定速走行では、ペダルを踏み込む位置により角速度が変わることによる違和感や、クランク側の変速がしづらいなどの欠点がある。
【0005】
本発明は、これらの問題に対し視点を変えて、脚力を最初に伝達するペダルに着目し、ペダルの交換だけで回転力を増強できるようにしたものであり、単純な機構でありながら効率的で耐久性のあるペダル回転力強化装置を、安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明はその一態様として、脚力を動力として使うペダルにおいて、ペダル軸(2)にピニオンギア(3)を取付け、ペダルの前端に第1の軸(5)を設けて後方が開くように付勢した可動踏板(4)を軸着させ、可動踏板(4)の下部前方に第2の軸(9)を介してピニオンギア(3)と噛み合うように付勢したラックギア(7)を吊設しておくことにより、ペダリング時の可動踏板(4)の開閉動作が、ラックギア(7)とピニオンギア(3)間で構成されるラチェット機構によるラチェット作用を生み出し、ラックギア(7)とピニオンギア(3)の噛合中は前方向のペダルの軸回転がロックされてペダルの力点が軸心から前端に移動することで、回転力を強化できるようにした。
【0007】
これは、ラチェット機構に回転追従機能を合わせたものであり、通常のラチェット機構だけでは、クランクの周回運動に伴い、ペダルの軸も転位しながら回転してしまうため、無理に足首を使ってその回転に追着かせない限り、一瞬で歯車から歯止めが外れて機能を失ってしまうが、本発明では、ペダリングで可動踏板が開放状態から閉じ切るまでの間、連動するラックギアがピニオンギアに対し、回転を追いかけて後押しする形で噛合状態を維持させることにより、踏力が働く約半周分のクランクの回転範囲において、ラチェット機構を追従させて機能させることができる。
【0008】
また、本発明の他の態様として、脚力を動力として使うペダルにおいて、ペダル軸(2)にピニオンギア(3)を取付け、ペダルの後端に第1の軸(5)を設けて前方が開くように付勢した可動踏板(4)を軸着させ、可動踏板(4)の下部前方に第2の軸(9)を介してピニオンギア(3)と噛み合うように付勢したラックギア(8)を吊設しておくことにより、ペダリング時の可動踏板(4)の開閉動作が、ラックギア(8)とピニオンギア(3)間で構成されるラチェット機構によるラチェット作用を生み出し、ラックギア(8)とピニオンギア(3)の噛合中は、前方向のペダルの軸回転がロックされてペダルの力点が軸心から前端に移動することで、回転力を強化できるようにした。
【0009】
これは、前記ペダルとは前後逆向きのペダル踏み動作となるが、同様にラチェット機構が働き、ほぼ同様の効果が得られる。また、この場合は可動踏板の前端が解放されているため、この部分を延長すれば容易に回転力を増強することも可能である。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、クランクの軸力、トルク=ペダル踏力×クランクの長さ、に着目して効率的なペダリングを追求したものであり、仮に踏み込む力を200Nとして、クランクの長さを0.17mとし、ペダル軸から可動踏板軸間の距離を0.04mとした場合、通常のトルクは200N×0.17m=34N・mとなるのに対し、本発明のトルクは200N×(0.17m+0.04m)=42N・mとなるため、計算上では約24%のトルク強化に相当する。
【0011】
これは、上死点から前方に90度踏み込んだ所における最も踏力を伝えやすい位置での計算であり、これだけでは効果の程は判断できないが、ラチェット機構をペダル軸の回転に追従させたことにより、この作用が約半周に渡って継続し、このトルク強化の継続こそがペダル回転の軽減作用の源となっている。このため、従来の低速ギアでは普段の走行に比べクランクの一回転で自転車等が進む距離が短くなるが、本装置ではクランクの一回転で自転車等が進む距離を変えずに軽減効果が得られるので、ケイデンスを一定に保ちながら身体的疲労を抑えた走行ができる。
【0012】
また、脚力を使うあらゆる物に対し、ペダルの交換だけでその効果を簡単に得られることがもう一つの長所であり目的でもあり、これを自転車に使えば軽快で力強い走りとなることはもちろんのこと、ギア付自転車に使えばギアチェンジの頻度が下がり、電動自転車に使えばアシスト比の調整次第で一充電当たりの走行距離を延すことができ、人力飛行機に使えば飛行距離を延せる可能性さえある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明第1の実施形態でペダルの軸部分を示す分解斜視図。
【
図3】本発明第1の実施形態で可動踏板部分を示す分解斜視図。
【
図4】本発明第1の実施形態でペダルの本体部分を示す分解斜視図。
【
図9】本発明第1の実施形態でペダルの軌跡を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、左右対称であり、左右で一組となるペダルであるため、以下、右のペダルについての実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明第1の実施形態を示す斜視図であり、本装置は概ねペダル本体1とステップ状の可動踏板4から成る。ペダル本体1には、ペダル軸2の中央にピニオンギア3を取付け、その後ろには重り12が取付けてある。一方、可動踏板4には、下部前方にラック軸9を介してラックバネ10で後方に付勢したラックギア7が吊設してある。そして、これらの前端部同士を踏板軸
(第1の軸)5と踏板バネ6で開放側に付勢して軸着させることにより、ギア同士が噛合しながら、可動踏板4が点線矢印方向に開閉可能となっている。
【0016】
なお、この付勢手段は踏力を抜いた時にギアをリセットさせるためのものであり、可動踏板4とペダル本体1が交わる狭角空間に、ゴム等の弾性体や板バネを介在させる方法としてもよい。さらに、ビンディングペダルのように靴底と可動踏板4が着脱できるようにしたり、可動踏板4に磁石を取付けて鉄片を取付けた靴底を磁力で吸着する方法に代えたりして、引き足でギアをリセットさせる方法としてもよい。
【0017】
本装置の要は、ペダル軸の回転にラチェット機構を追従させたことであり、踏力を受けて周回するクランク16の回転に可動踏板4の開閉動作が連動し、本ペダルが上死点から下死点に至る間は、ラックギア7が押下げられ、ピニオンギア3の転位による回転を追いかけて後押しする形となり、通常のペダリングおける足首角度のまま前方向のペダルの軸回転がロックされた状態になる。続けて下死点から上死点に至る間は、踏力を失ったラックギア7がピニオンギア3の回転に弾かれて空転しながら引上げられ、元の状態に戻る。この一連の動作の繰返しで軽減効果が継続して得られることになる。
【0018】
そして、この効果を継続させるための方法としては、リセット状態から可動踏板4が閉じ切るまでの間を、踏力が有効に働く範囲と一致させれば良いことから、その範囲は最大でもクランク16の約半回転分とすることができるため、ラックギア7の歯数をピニオンギア3の歯数の半分以下として任意に設定することが可能である。
【0019】
また、ラックギア7は、踏力を受けてピニオンギア3に噛み合い始めると自ら食込み、逆に踏力を失うと瞬時に外れる機構となっているが、この仕組みは可動踏板4に吊設されたラックギア7の支点を、歯列側からずらしたことにより成立する。そのため、ラックギア7はアーム部7aが付いたL形にしている。ところで、ずらさず直線状とした場合は、噛合部が外れないようにラックバネ10を強化する必要があるが、逆にリセット時に外れづらくなる欠点がある。なお、ラックギア7の歯列については、直線状でも緩い曲がりの円弧状としても良い。
【0020】
図2は、本発明第1の実施形態でペダルの軸部分を示す分解斜視図であり、ペダル軸2は、強度及び組立上ペダル取付けネジ部2a側より端部へ段階的に細くしてある。そして組立手順は、ペダル本体1側に配設してあり点線で示す、軸受大1bと軸受小1c間への挿入過程において、一旦、噛合開口部1hの所で軸中央のスプライン凸部2bにピニオンギア3のスプライン凹部3aを嵌入し、止め輪溝2cに止め輪3bを嵌めて固定した後、軸固定ネジ部2dを軸受小1cに通してから軸固定ナット2eを2個使い軸着させる。
【0021】
なお、ペダル軸2やピニオンギア3の材質は、クロムモリブデン鋼やステンレス鋼など強度と耐食性を有する合金鋼材が適する。また、仮にピニオンギア3の外径を軸受大1bの内径以下として、ペダル軸2自体にピニオンギア3を形設した一体加工などとすれば、軸の装着は片側から簡単に済み、噛合開口部1hは小さくなって本体強度が上がり、ラックギア7も小形になって可動踏板4の開き角度が小さくなり、これらのバランスが改善されて重り12も含め軽量コンパクトにできる。
【0022】
図3は、本発明第1の実施形態で可動踏板部分を示す分解斜視図であり、可動踏板4の下部前方には、補強板軸孔部4aや補強板ラック軸孔部4bの列と一対の踏板バネ6が並び、これらをペダル本体1の前方に設けた踏板摺接溝1gの列に遊嵌し、点線で示す踏板軸5を貫通させて止め輪溝5aに止め輪5bを嵌めて軸着させることで、開閉するように組み立てられる。また、ラックギア7はペダルの逆回転時に空転できるように先端に傾斜が付いていて、組付けは、一対の補強板ラック軸孔部4b間で、ラックバネ10をセットしたアーム軸孔部7bにラック軸
(第2の軸)9を貫通させ、止め輪溝9aに止め輪9bを嵌めて軸着することで後方に付勢した状態で吊設することができる。また、図では各小径軸孔の軸受を省略しているが、必要に応じて滑り軸受などを取付けても良い。
【0023】
なお、可動踏板4の材料は、アルミ合金や繊維強化樹脂など軽量で剛性の高い物が適するが、形状のスリム化次第では鉄やステンレスなどとすることも可能だ。また、ラックギア7及びラック軸9や踏板軸5は、クロムモリブデン鋼やステンレス鋼など強度と耐食性を有する合金鋼材が適し、また、踏板バネ6やラックバネ10のねじりコイルバネはステンレスバネや防錆処理をしたバネ材などが適する。なお、ストッパー11はラックギア7の上方に固設するラック止め兼ダンパーであり、硬質ゴムやゴムを挟んだ金属などの弾性体が適するがバネや樹脂などとしても良い。
【0024】
図4は、本発明第1の実施形態でペダルの本体部分を示す分解斜視図であり、ペダル本体1の前端には、踏板軸孔1dに絡めて補強板軸孔部4aなどの列に合わせた踏板摺接溝1gを形設し、可動踏板4の横ねじれ座屈に対抗させている。また、ペダル軸挿通孔1aの両端には、ベアリングや滑り軸受などによる軸受大1bと軸受小1cが配設してあり、その手前に設けた調整ネジ孔1fには調整ネジ6aが取付けられ、ネジ先端の穴と凹みに踏板バネ6を掛けることでネジが緩まない仕組みになっている。そして、中央の噛合開口部1hの後ろには反射器位置15が付き、その端部には重り12が取付く。なお、ペダル本体1の材料は、アルミ合金や繊維強化樹脂など軽量で剛性のある物が適する。
【0025】
重り12は、ペダリングの開始時に足を乗せ易くして安全に踏み込めるようにするための装備であり、可動踏板4の水平を保つバランサーとして機能する。さらに、重り12には放射状の小突起を周設した固定ネジ穴13が偏心させて設けてあり、重り固定孔1eに固定ネジ14を通して取付ける際に、少し回して重心位置を変えることでバランスの調整ができるようにしてある。
【0026】
図では、独立した円柱状としているが、重量のバランスが取れれば形状は自由である。なお、材料はステンレスや鉄や銅などの一般的な金属で良いが、鉛のように重くて軟らかい金属の場合は円筒カバーなどで保護する必要がある。ちなみに、この装備は走り出す時に必要なだけで、ペダリング中は無くても軽減作用に影響は無く、慣れてしまえば不要な場合もある。
【0027】
図5は、本発明第1の実施形態を示す正面図であり、リセットが完了して可動踏板4が全開し、水平バランスが保たれたフリー状態の図である。最後端の重り12の取付け部が斜めに絞ってあるのは自転車を傾けた時のペダルの接地における安全対策である。
【0028】
図6は、本発明第1の実施形態を示す左側面図であり、
図5同様に、リセット完了後のフリー状態の図である。この状態から踏力を加えると矢印方向に走行し、可動踏板4の動きに連動してラックギア7が下がり、点線矢印方向に回転するピニオンギア3を後押しする状態となり、ラチェット機構が働く。そして、可動踏板4が閉じ切るまで、足首に負担を掛けることなく自然な動作で、ペダルの回転力が強化されたことによる軽減効果を継続して得られることになる。
【0029】
通常本装置は、踏板バネ6の反発力で可動踏板4が常時開く側に付勢されていて、常にペダルの回転力を強化させた走りができるようにしてあるが、一方で、踏板バネ6の交換や調整ネジ6aによる反発力の調整により、サドルに座った時の片脚の重さとバネの反発力を釣り合わせることにより、普通の走行では脚の荷重で可動踏板4が閉じた従来のペダル状態となり、負荷がかかる登り坂や向い風の時だけ、必要に応じてこの機能を使えるように設定することもできる。
【0030】
これは、ペダリング中に踏足に負荷を感じると、反射的に引き足が上がるからであり、この反射運動で、下死点から上死点に戻る間に可動踏板4の荷重が消えてバネの反発力が勝りリセットされることにより、必要な時にだけ回転力を強化した走り方ができる。これは自動車に例えると、ギア付自転車がマニュアル車なら、本装置付自転車はオートマチック車に相当し、ギアチェンジなしに軽快で力強い走りができる。
【0031】
図7は、本発明第1の実施形態を示す下面図であり、可動踏板4を閉じ切るまで踏込んだ状態を示す。可動踏板4の天板には靴底との摩擦や軽量化を考慮して滑り止め穴4cを開けているが、他の滑り止め加工や摩擦シートを貼るなどの対策を取っても良い。
【0032】
図8は、本発明第1の実施形態を示すA-A断面図であり、
図7同様に、可動踏板4を閉じ切るまで踏込んだ時の下死点付近における状態を示す。この時のストッパー11は、L形のラックギア7のアーム部7aを強制的に押し下げて、ラックギア7の歯列を全て使いきり、ピニオンギア3から外れやすい位置まで移動させる働きをする。
【0033】
これにより、噛合部の経年劣化で多少歯当たりが悪くなっても、ラチェット機構を追従させて作用させる範囲を最大限利用できるので、その分、軽減効果を継続して得られることになる。なお、図中のラックギア7はリセット直前の様子であるが、次の瞬間には点線矢印方向に回転を続けるピニオンギア3により、点線で示すラックギア7の位置まで弾かれ、次の上死点までにリセットが完了する。
【0034】
図9は、本発明第1の実施形態でペダルの軌跡を示す左側面図であり、矢印方向に走行するペダリングにおける、クランク16の回転角度ごとの本装置の状態を示す。ペダル軸の軌跡17は、クランク16の長さが半径となり、従来のペダルの力点の軌跡に相当するが、本ペダルの力点の軌跡18は、ラチェット機構が作用する範囲内における踏板軸5の通過点を実線で示しており、上死点から下死点にかけてクランクが延長したことに相当する軌跡となっている。ちなみに、従来のペダルでほぼ同様の効果を得るためにクランクを長くした場合は、回転域が大きくなり過ぎて脚力に負担がかかることや、自転車を傾けた時のペダルの接地などに問題がある。
【実施例2】
【0035】
図10は本発明第2の実施形態を示す左側面図であり、矢印方向に走行するペダリングにおいて、上死点から前方に90度ほど踏み込んだ位置の図である。これは、実施例1の逆向きタイプであり、ペダル本体1のペダル軸2にピニオンギア3を取付け、その後端に踏板軸5を設けて踏板バネ6で前方に開くように付勢した可動踏板4を軸着させ、その下部前方にラック軸9を介してピニオンギア3と噛み合うようにラックバネ10で付勢した弧状ラックギア8を吊設しておくことにより、実施例1と同様にラチェット機構がペダル軸2の回転に追従して作用し、ほぼ同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0036】
1 ペダル本体
1a ペダル軸挿通孔
1b 軸受大
1c 軸受小
1d 踏板軸孔
1e 重り固定孔
1f 調整ネジ孔
1g 踏板摺接溝
1h 噛合開口部
1i 軸キャップ
2 ペダル軸
2a ペダル取付けネジ部
2b スプライン凸部
2c 止め輪溝
2d 軸固定ネジ部
2e 軸固定ナット
3 ピニオンギア
3a スプライン凹部
3b 止め輪
4 可動踏板
4a 補強板軸孔部
4b 補強板ラック軸孔部
4c 滑り止め穴
5 踏板軸(第1の軸)
5a 止め輪溝
5b 止め輪
6 踏板バネ
6a 調整ネジ
7 ラックギア
7a アーム部
7b アーム軸孔部
8 弧状ラックギア
9 ラック軸(第2の軸)
9a 止め輪溝
9b 止め輪
10 ラックバネ
11 ストッパー
12 重り
13 固定ネジ穴
14 固定ネジ
15 反射器位置
16 クランク
17 ペダル軸の軌跡
18 本ペダルの力点の軌跡
【要約】
【課題】 脚力を効率的に伝達するためのペダル回転力強化装置を安価に提供する。
【解決手段】 ペダル軸にピニオンギアを取付け、ペダル前端に
第1の軸を設けて後方が開くように付勢した可動踏板を軸着させ、
当該可動踏板の下部前方に
第2の軸を介してピニオンギアと噛み合うように付勢したラックギアを吊設しておくことにより、ペダリング時の可動踏板の開閉動作が
、ラックギアとピニオンギア間で
構成されるラチェット機構
によるラチェット作用を生み出し、
ラックギアとピニオンギアの噛合中は前方向のペダルの軸回転がロックされてペダルの力点が軸心から前端に移動することで、回転力を強化できるようにした。これを自転車に使えば、ペダルの交換だけで軽快で力強い走りができる。
【選択図】
図1