(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】氷柱防止装置、氷柱防止構造
(51)【国際特許分類】
G08G 1/095 20060101AFI20250131BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20250131BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250131BHJP
【FI】
G08G1/095 D
F21S2/00 660
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2023017678
(22)【出願日】2023-02-08
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】598090184
【氏名又は名称】常盤電業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599161616
【氏名又は名称】小林 保正
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小林 保正
【審査官】宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-017908(JP,A)
【文献】特開2016-173656(JP,A)
【文献】特開2002-371727(JP,A)
【文献】特開2000-073320(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215024(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0242554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
F21S 2/00
F21Y 115/10
E01F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷柱の成長を抑制可能な氷柱防止装置であって、
回転軸と、
前記回転軸に対して略平行に配置され、前記回転軸とともに回転可能な掻き取り部と、
前記回転軸を回転させる駆動部と、
を具備し、
設置対象物の下方に配置して、前記駆動部によって前記掻き取り部を回転させることで、前記掻き取り部が回転する際に、設置対象物の下方に形成される氷柱又は水滴を除去することが可能であることを特徴とする氷柱防止装置。
【請求項2】
前記駆動部は、駆動力を伝達する駆動力伝達部を有し、前記回転軸は、前記駆動力伝達部からの駆動力を受ける駆動力受け部を有し、
前記駆動力伝達部の回転方向に前記駆動力受け部が接触している状態では、前記駆動力伝達部からの力を前記駆動力受け部へ伝達して、前記回転軸を前記駆動部によって回転することが可能であり、
前記駆動力伝達部の回転方向に前記駆動力受け部が非接触の状態では、前記回転軸は自由に回転可能となり、
前記回転軸には、回転に応じて伸縮する弾性部材が取り付けられ、前記弾性部材は、前記回転軸に対して、常に前記掻き取り部が下方に位置する状態となる方向に力を付与し、
前記掻き取り部が下方から上方に向かって移動する際には、前記回転軸は、前記弾性部材による力に対抗して、前記駆動部によって回転し、
前記掻き取り部が上方に達すると、前記回転軸は、前記弾性部材による力によって下方に回転することが可能であることを特徴とする請求項1記載の氷柱防止装置。
【請求項3】
前記駆動部による前記回転軸の回転速度に対して、前記弾性部材による前記回転軸の回転速度が十分に早く、前記弾性部材によって前記回転軸が回転した後、前記駆動力伝達部が前記駆動力受け部の位置まで移動するまでの間には、前記弾性部材の伸縮振動によって、前記回転軸に往復回転振動を付与することが可能であることを特徴とする請求項2記載の氷柱防止装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の氷柱防止装置を用いた氷柱防止構造であって、
前記氷柱防止装置が、設置対象物の下方に固定され、
前記回転軸が、前記設置対象物の前面よりも奥側に配置され、前記掻き取り部が上方から下方に移動する際に、前記掻き取り部の先端が前記設置対象物の前面側に突出することを特徴とする氷柱防止構造。
【請求項5】
前記設置対象物が表示装置であることを特徴とする請求項4記載の氷柱防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に雪国において、氷柱の発生又は成長を防止することが可能な氷柱防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雪国などにおいては、屋外の構造物の下方に氷柱が成長する場合がある。このような氷柱は、ある程度まで成長すると落下し、下方を通過する通行人や車両等に当たる恐れがある。このため、氷柱を成長させずに除去することが望ましい。
【0003】
このような、氷柱対策としては、例えば、信号灯の内部の電球の熱を灯箱の外部に発散させ、電球から出る熱によって氷柱を発生しないようにする方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は信号灯の熱を利用するものであるが、十分な発熱量が無いと効果は小さい。特に、近年は、信号灯にLEDが使用されており、発熱量自体が少ないため、十分な効果を得ることが困難である。
【0006】
また、信号灯のように、わずかでも発熱を伴う電球等が配置される部位はよいが、氷柱の発生を抑制しようとする場所の全てに熱源があるわけはないため、あらゆる場所に適用可能であり、効率よく氷柱の発生を抑制することが可能な方法が望まれている。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、効率よく氷柱の成長を抑制することが可能な氷柱防止装置及びこれを用いた氷柱防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達するために第1の発明は、氷柱の成長を抑制可能な氷柱防止装置であって、回転軸と、前記回転軸に対して略平行に配置され、前記回転軸とともに回転可能な掻き取り部と、前記回転軸を回転させる駆動部と、を具備し、設置対象物の下方に配置して、前記駆動部によって前記掻き取り部を回転させることで、前記掻き取り部が回転する際に、設置対象物の下方に形成される氷柱又は水滴を除去することが可能であることを特徴とする氷柱防止装置である。
【0009】
前記駆動部は、駆動力を伝達する駆動力伝達部を有し、前記回転軸は、前記駆動力伝達部からの駆動力を受ける駆動力受け部を有し、前記駆動力伝達部の回転方向に前記駆動力受け部が接触している状態では、前記駆動力伝達部からの力を前記駆動力受け部へ伝達して、前記回転軸を前記駆動部によって回転することが可能であり、前記駆動力伝達部の回転方向に前記駆動力受け部が非接触の状態では、前記回転軸は自由に回転可能となり、前記回転軸には、回転に応じて伸縮する弾性部材が取り付けられ、前記弾性部材は、前記回転軸に対して、常に前記掻き取り部が下方に位置する状態となる方向に力を付与し、前記掻き取り部が下方から上方に向かって移動する際には、前記回転軸は、前記弾性部材による力に対抗して、前記駆動部によって回転し、前記掻き取り部が上方に達すると、前記回転軸は、前記弾性部材による力によって下方に回転することが可能であることが望ましい。
【0010】
前記駆動部による前記回転軸の回転速度に対して、前記弾性部材による前記回転軸の回転速度が十分に早く、前記弾性部材によって前記回転軸が回転した後、前記駆動力伝達部が前記駆動力受け部の位置まで移動するまでの間には、前記弾性部材の伸縮振動によって、前記回転軸に往復回転振動を付与することが可能であることが望ましい。
【0011】
第1の発明によれば、設置対象物の下方において、水滴や氷柱を除去する掻き取り部を回転させることで、効率よく氷柱等を除去し、氷柱の成長を防止することが可能である。
【0012】
また、掻き取り部の回転動作を、上方に向かう際には駆動部で動作させ、上方から下方に向かう回転時には弾性部材を用いることで、上方から下方に向けて勢いよく回転させることができる。このため、打撃によって効率よく氷柱等を除去することができる。
【0013】
また、弾性部材によって掻き取り部を回転させた後に、掻き取り部を所定の期間フリーな状態とすることで、回転後にしばらくは往復回転振動を付与することができる。このため、振動によって掻き取り部に付着した水滴等をより確実に除去することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明にかかる氷柱防止装置を用いた氷柱防止構造であって、前記氷柱防止装置が、設置対象物の下方に固定され、前記回転軸が、前記設置対象物の前面よりも奥側に配置され、前記掻き取り部が上方から下方に移動する際に、前記掻き取り部の先端が前記設置対象物の前面側に突出することを特徴とする氷柱防止構造である。
【0015】
前記設置対象物が表示装置であってもよい。
【0016】
第2の発明によれば、設置対象物の下部に配置して、掻き取り部を回転させることで設置対象物の下方に形成される水滴や氷柱を除去することができる。
【0017】
このような設置対象物としては、信号機等の表示装置に適用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、効率よく氷柱の成長を抑制することが可能な氷柱防止装置及びこれを用いた氷柱防止構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】(a)は、
図1のA部拡大図、(b)は、
図1のB部拡大図。
【
図3】(a)~(f)は、駆動力伝達部13と駆動力受け部15の動作を示す図。
【
図4】(a)~(c)は、弾性部材11の動作を示す図
【
図5】(a)~(e)は、掻き取り部7の動作を示す図。
【
図7】(a)、(b)は、ばね27を用いた構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、氷柱防止装置1を用いた氷柱防止構造10を示す図である。なお、以下の説明では、氷柱防止装置1が取り付けられる設置対象物3が、信号機等の表示装置である例を説明するが、設置対象物3は、表示装置に限られず、家屋の一部や、標識、その他トンネル等の構造物などの屋外における構造体であればいずれに対しても適用可能である。
【0021】
氷柱防止装置1は、設置対象物3の下方における氷柱発生部の近傍に固定される。氷柱防止装置1は、設置対象物3の下方における氷柱の成長を抑制可能な装置である。氷柱防止装置1は、主に回転軸5、掻き取り部7、駆動部9、弾性部材11等から構成される。
【0022】
回転軸5には掻き取り部7が固定される。掻き取り部7は、回転軸5から所定の距離をあけて配置される。例えば、掻き取り部7の両端は屈曲して回転軸5に固定され、掻き取り部7と回転軸5とが略平行に配置される。このため、掻き取り部7は、回転軸5が回転すると、回転軸5を軸として回転する。
【0023】
図2(a)は、
図1のA部拡大図である。回転軸5の両端部近傍は、支持部25によって設置対象物3に回転可能に支持される。すなわち、支持部25は、軸受け部となる。設置対象物3には、駆動部9が固定される。駆動部9の回転軸には駆動力伝達部13が固定される。すなわち、駆動部9は、駆動力伝達部13を回転させることが可能である。
【0024】
また、回転軸5の駆動部9側の端部には、駆動力受け部15が固定される。駆動力伝達部13と駆動力受け部15の対向面には、それぞれ互いに噛みあうことが可能な突起13aと突起15aが形成される。突起13aと突起15aは、周方向の一部にのみ形成されており、互いに噛みあった状態では、駆動力受け部15は、駆動力伝達部13からの駆動力を受けて、共に回転する。すなわち、駆動力伝達部13の突起13aの回転方向に、駆動力受け部15の突起15aが接触して噛みあっている状態では、駆動力伝達部13からの力が駆動力受け部15へ伝達して、回転軸5を駆動部9によって回転させることが可能である。
【0025】
図2(b)は、
図1のB部拡大図である。回転軸5の、駆動部9とは逆側の端部近傍には、弾性部材11等が配置される。前述したように回転軸5は、支持部25で支持され、回転軸5の端部近傍にはクランク17が固定される。クランク17は回転軸5と共に回転可能である。クランク17の端部近傍には固定部21が固定される。
【0026】
また、クランク17の上方において、設置対象物3には固定部19が固定される。弾性部材11は、固定部19と固定部21とに両端が接続される。すなわち、弾性部材11によって、固定部19と固定部21が連結する。
【0027】
ここで、掻き取り部7が下方に位置した状態では、クランク17の端部(固定部21)は上方に位置する。すなわち、掻き取り部7が下方に位置した状態では、クランク17に固定された固定部21と、上方に配置された固定部19との距離が最短となる。この状態を通常状態とする。すなわち、通常状態では、弾性部材11(ばね)に蓄えられる弾性エネルギーが最小となる。
【0028】
次に、回転軸5の回転動作について詳細に説明する
図3(a)~
図3(f)は、回転軸5の回転動作を示す図である。なお、各図は回転軸5の軸方向から見た図であり、一部の構成の透視図とする。前述したように、回転軸5は、駆動部9からの駆動力が、駆動力伝達部13と駆動力受け部15の噛みあいによって伝達することで回転する。
【0029】
図3(a)に示す状態は、駆動力伝達部13の突起13aが上方に位置し、駆動力受け部15の突起15a(点線で示す)が下方に位置した状態を示す。また、
図4(a)は、この状態における弾性部材11等の状態を示す。なお、掻き取り部7(図示省略)は、突起15aと同様の周方向の配置となる。すなわち、
図3(a)、
図4(a)では、掻き取り部7は下方に位置し、クランク17に固定された固定部21は上方に位置した状態である。
【0030】
駆動部9が回転すると、
図3(a)~
図3(c)に示すように、駆動力伝達部13は回転する(図中矢印C)。この際、突起13aと突起15aとは周方向に離れているため、駆動力伝達部13からの駆動力は、駆動力受け部15には伝達されない。すなわち、駆動力伝達部13の回転方向に駆動力受け部15が非接触の状態では、回転軸5は駆動力伝達部13から力を受けずに自由に回転可能な状態となり、駆動力受け部15及び回転軸5は回転せずにその状態が維持される。
【0031】
図3(c)~
図3(d)に示すように、突起13aと突起15aとが接触すると、駆動力伝達部13の突起13aの回転方向に、駆動力受け部15の突起15aが接触し、駆動力受け部15は、駆動力伝達部13によって回転する(図中矢印D)。このように、回転軸5が駆動部9によって回転すると、回転軸5とともにクランク17が回転する。
【0032】
図4(b)は、この状態における弾性部材11を示す図である。回転軸5が回転すると、回転軸5に固定されたクランク17が回転するため、固定部21と固定部19との距離が離れ、弾性部材11が伸ばされる。このように、回転軸5に取り付けられた弾性部材11は、回転によって伸縮する。なお、この状態では、掻き取り部7は、下方から上方に向けて移動する。すなわち、弾性部材11は、回転軸5に対して、常に掻き取り部7(突起15a)が下方に位置する状態となる方向に力を付与する。
【0033】
図3(e)は、さらに回転軸5が回転した状態を示す図であり、突起15aが最上部に位置する直前の状態を示す図である。また、
図4(c)は、この状態における弾性部材11を示す図である。このように、掻き取り部7が下方から上方に向かって移動する際(
図3(c)~
図3(e))には、回転軸5は、弾性部材11による力に対抗して、駆動部9によって回転する。すなわち、突起15aが、突起13aに押し付けられた状態で回転軸5が回転する。
【0034】
図3(f)は、この状態からさらに回転軸5が回転し、突起15a(掻き取り部7)が上方に達した直後の状態を示す図である。突起15a(掻き取り部7)が最上部に達すると、回転軸5は、駆動力伝達部13と同一の回転方向に対して、弾性部材11に蓄えられた力によって下方に一気に回転する。この際、駆動部9による回転軸5の回転速度に対して、弾性部材11による回転軸5の回転速度が十分に早い。このため、掻き取り部7を高速で回転させることができる。
【0035】
なお、回転軸5(掻き取り部7)が弾性部材11によって回転した後、駆動力伝達部13が駆動力受け部15の位置まで移動するまでの間は、回転軸5は駆動部9からの力を受けずにフリーの状態となる(
図3(a)~
図3(c))。この際、弾性部材11が伸びた状態から急激に縮むため、その後、所定の期間、弾性部材11は減衰しながら伸縮の振動を繰り返す。このため、弾性部材11の伸縮振動によって、回転軸5には、多少の往復回転振動を付与することが可能である。以上が、回転軸5の1回転単位の動作となる。
【0036】
次に、上記の動作に伴う、掻き取り部7の回転動作について詳細に説明する。
図5(a)~
図5(e)は、掻き取り部7の動作を示す図である。前述したように、氷柱防止装置1は、設置対象物3の下方に設置される。この際、設置対象物3の前面(図中左側)に対して、回転軸5は、設置対象物3の前面よりも奥側(図中右側)に配置される。通常、設置対象物3の前面を伝って流下した水滴及び、これにより生じた氷柱23は、設置対象物3の前面下部に形成される。このため、回転軸5は前面下部に形成される氷柱23よりも奥側に配置される。
【0037】
まず、
図5(a)に示す状態は、掻き取り部7が下方に位置した状態(
図3(a)~
図3(c)及び
図4(a))である。前述したように、この状態では、駆動部9を動作させても、回転軸5は即座に回転しない。
【0038】
駆動部9がさらに回転すると、
図5(b)に示すように、駆動力伝達部13と駆動力受け部15とが噛みあい、回転軸5が回転を開始する(図中矢印F)。すなわち、掻き取り部7が上方に回転する(
図3(d)及び
図4(b))。なお、掻き取り部7の回転方向としては、設置対象物3の前面側に対して奥側(図中右側)で掻き取り部7が上昇するように設定される。
【0039】
さらに回転軸5(掻き取り部7)が上昇し、
図5(c)に示すように、掻き取り部7が上方まで回転すると(
図3(e)及び
図4(c))、弾性部材11が最も伸ばされた状態となる。
図5(d)に示すように、掻き取り部7が最上部を通過すると、直後に弾性部材11によって一気に掻き取り部7が下方まで回転する(
図5(e))。
【0040】
ここで、設置対象物3の前面から、奥側の回転軸5までの距離(図中左右方向の距離)よりも、回転軸5の中心から掻き取り部7までの距離が長い。このため、掻き取り部7が、上方から下方に回転移動する途中において、掻き取り部7の先端が設置対象物3の前面側に突出する。
【0041】
また、前述したように、弾性部材11により作られる回転速度は駆動部9による回転と比較して十分に速い。このため、掻き取り部7は、氷柱23に対して上方から下方に向けて(奥側から前面側に向けて)、強い打撃を氷柱23に与えることができる。このため、設置対象物3の前面の下部に形成した氷柱23を効率よく除去することができる。
【0042】
このように、氷柱防止装置1を設置対象物3の下方に配置して、駆動部9によって掻き取り部7を回転させることで、掻き取り部7が回転軸5の上方から下方に向かって回転する際に、設置対象物3の下方に形成される氷柱23又は水滴を除去することが可能である。なお、前述したように、弾性部材11によって高速で下方に回転した掻き取り部7は、その勢いによってしばらく往復振動動作する(図中H)。このため、掻き取り部7に付着した水滴等を振り落とすことができる。
【0043】
なお、駆動部9は、常時回転軸5を回転させてもよいが、間欠的に動作させてもよい。例えば、タイマーによって夜間や昼間の所定の時間のみ動作させてもよく、気温や天候をセンサ等で検知して、所定条件において動作させてもよい。また、氷柱23があることをセンサで検知してもよい。また、駆動部9は、所定の時間、回転動作を継続してもよいが、間欠的に回転軸5を1回転単位で動作させてもよい。
【0044】
なお、回転軸5の回転位置を検知可能な位置センサを設けておき、駆動部9が停止する際には、常に一定の位置で回転軸を停止することが望ましい。例えば、
図3(a)に示すように、駆動部9は、掻き取り部7が下方に位置し、突起13a、15aが離れた状態で停止させる。このようにすることで、停止時に弾性部材11に負荷がかかることを抑制するとともに、突起13aと突起15aとが氷等によって固着することを抑制することができる。
【0045】
また、
図6に示すように、設置対象物3の前面を傾斜させてもよい。図示した例では、設置対象物3の上方が前方に向けて傾くように配置される。このようにすることで、設置対象物の前面下端に水を集中させることができる。
【0046】
また、支持部25は、設置対象物3の下面に対して垂直に配置するのではなく、角度を設けてもよい。例えば、氷柱23に対して、有効に打撃を加えることが可能な角度に調整可能であることが望ましい。
【0047】
また、
図7(a)、
図7(b)は、
図2(a)、
図2(b)に対応する他の実施形態を示す図である。
図7に示す例では、回転軸5と掻き取り部7との間に、ばね27が配置される。ばね27は、回転軸5と掻き取り部7とを剛結するのではなく、掻き取り部7の移動に対して自由度を付与するものである。
【0048】
このようにすることで、氷柱23に対して掻き取り部7が打撃を加えた際に、一度で氷柱23を除去できない場合であっても、掻き取り部7の回転が停止することを抑制することができる。このため、複数回の打撃を加えて氷柱23を除去することができる。また、駆動部9の焼き付きや破損を抑制することができる。
【0049】
なお、ばね27は、氷柱27に対して打撃力を加える程度のばね力が必要である。例えば、掻き取り部7が上方に回転させた際にも、ばね27が自立して掻き取り部7を回転軸5の上方で支持することが可能な程度のばね力があればよい。硬度の高い氷柱に対して、駆動の回転速度を高めること、掻き取り部7に鋭角なエッジを持たせること、回転軸5と掻き取り部7との結合にチェーンなどの屈伸運動を有する部材導入などが有効である。
【0050】
以上、本実施の形態によれば、設置対象物3の下方で掻き取り部7を回転させることで、設置対象物3の下部に形成された氷柱23等を容易に除去することができる。特に、掻き取り部7を上方から下方に回転させる際に、弾性部材11の弾性力を利用することで、掻き取り部7から氷柱23へ打撃力を与えることが可能となり、効率よく氷柱23を除去することができる。
【0051】
また、掻き取り部7を弾性部材11によって回転させた後は、弾性部材11の伸縮振動によって、掻き取り部7を往復振動させることができる。このため、掻き取り部7に付着した水滴等を振り落とすことができる。
【0052】
また、氷柱防止装置1を設置対象物3の前面から少し奥まった位置に配置することで、水滴等が氷柱防止装置1側に伝わることを抑制することができる。この場合でも掻き取り部7が上方から下方に回転する際に、設置対象物3の前面側にはみ出すように配置することで、確実に掻き取り部7で氷柱23等を除去することができる。
【0053】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0054】
1………氷柱防止装置
3………設置対象物
5………回転軸
7………掻き取り部
9………駆動部
10………氷柱防止構造
11………弾性部材
13………駆動力伝達部
13a………突起
15………駆動力受け部
15a………突起
17………クランク
19………固定部
21………固定部
23………氷柱
25………支持部
27………ばね