(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】表示機、信号機
(51)【国際特許分類】
G08G 1/095 20060101AFI20250131BHJP
E01F 9/00 20160101ALI20250131BHJP
【FI】
G08G1/095 D
E01F9/00
(21)【出願番号】P 2023017680
(22)【出願日】2023-02-08
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】598090184
【氏名又は名称】常盤電業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599161616
【氏名又は名称】小林 保正
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小林 保正
【審査官】宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-026658(JP,A)
【文献】特開2016-173656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0242554(US,A1)
【文献】特開2012-084169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
E01F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が併設された光源配設部と、
複数の前記光源配設部を、所定の間隔をあけて連結する連結部と、
前記光源配設部を内部に収容する透明なカバー部材と、
少なくとも一部の前記カバー部材を、前記光源配設部の周囲で回転させることが可能な駆動部と、
を具備することを特徴とする表示機。
【請求項2】
前記光源配設部は、正面と、前記正面から所定の角度側方に向けて形成された傾斜面と、を有し、
前記正面と前記傾斜面のそれぞれに前記光源が併設されることを特徴とする請求項1記載の表示機。
【請求項3】
前記駆動部は、一部の前記光源配設部のみに対して、前記カバー部材を回転させることが可能であることを特徴とする請求項1記載の表示機。
【請求項4】
前記カバー部材の背面側において、前記カバー部材の表面に付着した付着物を除去するための除去部材が配置されることを特徴とする請求項1記載の表示機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの表示機を用いた信号機であって、
略矩形に配置された複数の前記光源配設部において、前記光源が、正面視で略円形となるように配置されていることを特徴とする信号機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に雪国において、着雪を防止することが可能な交通用信号機などの表示機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の変化に伴い、冬季における強風下の多量な降雪による被害が問題となっている。豪雪は、道路交通の障害物となるばかりではなく、暴風雪により交通信号機のランプなどに着雪することで、交通信号色の発光を遮り、交通信号機を視認することができない事態をまねく。このため、交通信号機などの表示機の着雪対策が望まれる。
【0003】
このような、着雪対策としては、信号機を覆うようなフードやカバーを設ける方法がある(例えば特許文献1、特許文献2)。
【0004】
また、発熱体を用いて、着雪を融解する方法がある(例えば特許文献3、特許文献4)。
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2のように、大掛かりなフード等を設ける方法は、着雪が起こりにくくなるとしても、一度着雪が起こると、着雪領域が拡大し、信号機の視認性を妨げることとなる。
【0006】
また、特許文献3のように、熱源として赤外線を用いる場合、電気エネルギーを光に変換するため、変換と吸収に係る効率が悪く、発光面の着雪を除去する十分な熱量を得るには、極めて多量の電気エネルギーを要する困難さがある。
【0007】
また、特許文献4は、カバーを設けて、熱源となる光を吸収して発熱させる暗色部を形成するものであるが、光をエネルギー伝達手段に用いる場合の効率の悪さ、およびこのような物を被せることにより通常時において信号機の視認性の妨げとなるという問題がある。
【0008】
これに対し、複数の光源配設部を、所定の間隔をあけて配置し、前方からの風雪が、隣り合う光源配設部の間の隙間から後方に抜けるようにした表示機が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-305025号公報
【文献】実開2009-190554号公報
【文献】実用新案登録第3161877号公報
【文献】特開2012-108861号公報
【文献】特開2021-26658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献5によれば、前方からの風雪が隣り合う光源配設部の間の隙間から後方に通り抜けるため、光源配設部の隙間を適切に設定することで、光源配設部の前面への着雪を抑制することができる。しかし、風の強さや向き、雪片の大きさや水分量など様々な要因で着雪形態は変化する。このため、光源配設部の前面への着雪を完全に防ぐことは困難である。このため、光源配設部の前面に着雪等が生じても、容易に除去することが可能な方法が望まれている。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、より効率よく着雪の成長を抑制することが可能な表示機及び信号機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するために第1の発明は、光源が併設された光源配設部と、複数の前記光源配設部を、所定の間隔をあけて連結する連結部と、前記光源配設部を内部に収容する透明なカバー部材と、少なくとも一部の前記カバー部材を、前記光源配設部の周囲で回転させることが可能な駆動部と、を具備することを特徴とする表示機である。
【0013】
前記光源配設部は、正面と、前記正面から所定の角度側方に向けて形成された傾斜面と、を有し、
前記正面と前記傾斜面のそれぞれに前記光源が併設されることが望ましい。
【0014】
前記駆動部は、一部の前記光源配設部のみに対して、前記カバー部材を回転させることが可能であってもよい。
【0015】
前記カバー部材の背面側において、前記カバー部材の表面に付着した付着物を除去するための除去部材が配置されてもよい。
【0016】
第1の発明によれば、隣り合う複数のカバー部材の間に隙間が形成され、この隙間を風が通過可能であるため、カバー部材の前方での風の流れのよどみが抑制され、カバー部材の前面への着雪等を抑制することができる。この際、何らかの原因でカバー部材の前面に着雪等が生じた場合でも、カバー部材が回転しているため、着雪を隙間側に移動させることができ、隙間を通り抜ける風によって着雪を除去することができる。
【0017】
また、光源配設部に複数方向に向けて光源を配置することで、多少の着雪が生じても視認性の低下を抑制することができる。
【0018】
また、全ての光源配設部のカバー部材を回転させるのではなく、その一部のみを回転させてもよい。例えば、一つおきにカバー部材を回転させても、少なくとも回転させたカバー部材における着雪を抑制することができるため、同様の効果を得ることができる。なお、この場合において、特に光源配設部に複数方向に向けて光源を配置することで、非回転部に着雪が生じたとしても、その方向に隣の光源配設部からの光を出射することができるため、視認性の低下を最小限とすることができる。
【0019】
また、カバー部材の後方で、付着物を除去する除去部を配置することで、カバー部材に付着した付着物をより確実に除去することができる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明にかかる表示機を用いた信号機であって、略矩形に配置された複数の前記光源配設部において、前記光源が、正面視で略円形となるように配置されていることを特徴とする信号機である。
【0021】
第2の発明によれば、視認性に優れた信号機を得ることができる。この際、信号機のライトとなる円形部以外を遮光するパネル等を用いずに、光源の配置によって信号機の発光部を略円形とすることで、風の流れを妨げることがない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、効率よく着雪の成長を抑制することが可能な表示機及び信号機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)は、表示機1を示す正面図、(b)は、表示機1を示す断面図であって、(a)のB-B線断面図。
【
図3】(a)は、カバー部材9の回転構造を示す図、(b)は(a)のC-C線断面図。
【
図4】(a)~(c)は、カバー部材9の回転動作を示す図。
【
図5】光源配設部3からの光の照射方向を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1(a)は、表示機1を示す正面図、
図1(b)は、表示機1を示す断面図であって、
図1(a)のB-B線断面図である。なお、図示した例では、後方の遮光部材等の図示を省略する。また、以下の説明では、表示機1が横に3つ連なった交通用の信号機である例を説明するが、本発明の表示機1は、縦に連結されてもよく、又は2連の信号機としてもよい。また、表示機1は、信号機以外にも、交通情報や警報、標識、その他情報などを表示する表示機として利用可能である。
【0025】
表示機1は、主に、光源配設部3、光源5、枠部7、カバー部材9等から構成される。光源配設部3には、複数の光源5が長手方向に併設される。光源5は、例えばLED光源である。
【0026】
複数の光源配設部3は、所定の間隔をあけて互いに略平行に配置される。図示した例では、複数の光源配設部3は、鉛直方向に向けて縦格子状に配置される。枠部7は、少なくとも光源配設部3の上部と下部とで、複数の光源配設部3を支持する連結部となる。
【0027】
光源配設部3は、略円断面形状の透明なカバー部材9の内部に収容される。隣り合うカバー部材9の間には隙間19が形成される。このように、隣り合う複数のカバー部材9の間に隙間19が形成されることで、前方からの風が、隣り合うカバー部材9の間の隙間から後方へ通り抜けることが可能である。なお、隣り合うカバー部材9の間に隙間が形成されるとは、隣り合うカバー部材9の間に風が通過可能な意図的な空間を有することを意味する。
【0028】
それぞれの光源配設部3には、複数の光源5が配設される。なお、略同一の長さの光源配設部3が所定の間隔で配置されるため、光源5を設置可能となる発光領域は略矩形となる。このように略矩形に配置された複数の光源配設部3において、光源5は、正面視で略円形となるように配置される(図中A)。このようにすることで、略円形に発光させて、円形の光として認識することができる。
【0029】
なお、円形の発光部以外を遮蔽板などで覆う方法もあるが、このようにすると、遮蔽板によって隣り合う光源配設部3の隙間を埋めることとなる。このため、遮蔽板によって、隣り合う光源配設部3の間の流体(風)の流れが妨げられる。このため、光源配設部3の一部を塞ぐのではなく、光源配設部3における光源5の配置によって略円形の発光領域を形成することが望ましい。
【0030】
図2は、一つの光源配設部3等の断面拡大図である。光源配設部3は、正面3aと、正面3aの両側に、正面3aから所定の角度側方に向けて形成された傾斜面3bとを有する。光源5は、正面3aと傾斜面3bのそれぞれに併設される。すなわち、光源5は、少なくとも長手方向に3列に配置される。なお、図示した例では、正面3aと傾斜面3bのそれぞれに光源5が一列配置する例を示すが、それぞれの面に複数列の光源5を配置してもよい。
【0031】
光源配設部3は、固定支柱15に固定部材11によって固定される。固定支柱15の上下端部は枠部7に対して固定される。すなわち、光源配設部3は、枠部7に対して固定される。一方、カバー部材9は、光源配設部3に対して回転可能である。カバー部材9の回転動作については詳細を後述する。
【0032】
図1(b)に示すように、表示機1(光源配設部3)の背面側において、カバー部材9の表面に着雪した付着物を除去するための除去部材17が配置される。除去部材17は、カバー部材9と接触していてもよく、わずかに隙間をあけて配置されてもよい。除去部材17は、硬質な部材であってもよく、弾性変形可能な部材であってもよい。例えば、除去部材17は、スクレパーのような部材であってもよく、ブラシ状であってもよい。
【0033】
次に、カバー部材9の回転動作について説明する。
図3(a)は、カバー部材9の回転構造を示す図であり、
図3(b)は
図3(a)のC-C線断面図である。枠部7には、駆動部21が固定される。駆動部21の回転軸には駆動ローラ25が固定される。また、カバー部材9の上方にはローラ27が固定される。また、ローラ27の上方には軸受け31が配置され、軸受け31によって固定支柱15が支持される。
【0034】
前述したように、固定支柱15は枠部7に対して固定されるため回転しない。すなわち、光源配設部3は回転動作しない。一方、ローラ27は軸受け31とともに固定支柱15に対して回転可能である。すなわち、カバー部材9は、光源配設部3に対して回転動作可能である。
【0035】
駆動ローラ25とローラ27及びローラ27同士は、連結部材23によって連結される。すなわち、駆動ローラ25の回転が連結部材23で連結された他のローラ27に伝達される。なお、図示した例では、ローラ27が一つおきにカバー部材9に固定される。したがって、駆動部21を駆動させると、一つおきにカバー部材9が固定支柱15を中心として光源配設部3の周囲で回転する。
【0036】
なお、本実施形態では、光源配設部3に対して、一つおきにカバー部材9を回転させたが、全てのカバー部材9を回転させてもよい。また、一つおきではなく、一部の光源配設部3に対してのみカバー部材9を回転させてもよい。また、駆動部21の回転力の伝達方法はローラと連結部材23による方法には限られず、ギア等による方法でもよい。また、回転方向は一定の方向のみではなく、逆回転させてもよい。
【0037】
特許文献5と同様に、本実施形態では、発光面に対して、複数のカバー部材9が設置され、隣り合うカバー部材9の間に隙間19が形成される。このため、個々のカバー部材9の幅は、発光面全体に対して小さく、着雪範囲が狭い。また、カバー部材9の前方をなだらかな凸形状とすることで、風はなだらかに(大きな乱流を形成せずに)カバー部材9の後方へ流れる。このため、よどみ点領域を小さくすることができる。
【0038】
一方、よどみ点領域が小さくても、そのわずかなよどみ点領域に着雪が生じる恐れがある。しかし、カバー部材9を回転させることで、着雪部がよどみ点領域から外れるため、より確実に、隣り合うカバー部材9の間を流れる風とともに付着物を後方に排除することができる。
【0039】
次に、除去部材17の効果について説明する。
図4(a)は、雪片等の付着物29がカバー部材9の前面に付着した状態を示す図である。この状態から一部のカバー部材9を回転させると、前述したように、隣り合うカバー部材9の隙間19を流れる風等によって付着物29が除去される。しかし、付着物29が強固に付着している場合には、カバー部材9の隙間19を流れる風によっても付着物が除去されない場合がある(
図4(b))。
【0040】
この場合でも、カバー部材9の後方に除去部材17が配置されているため、カバー部材9の後方において、付着物29が除去部材17によって掻きとられて除去される。このため、カバー部材9の表面は常にきれいな状態が維持され、光源5による光を視認することができる。
【0041】
なお、駆動部21は、常時回転させてもよいが、間欠的に動作させてもよい。例えば、タイマーによって夜間や昼間の所定の時間のみ動作させてもよく、気温や天候をセンサ等で検知して、所定条件において動作させてもよい。また、カバー部材9の表面に付着物があることをセンサで検知してもよい。また、例えば高速道路等の料金所の信号などのように、管理者がいる場合には、手動で駆動部21の動作を行ってもよい。
【0042】
なお、前述したように、全てのカバー部材9を回転させてもよいが、一部の(例えば一つおきに)カバー部材9を回転させてもよい。この場合、回転していないカバー部材9の前面には付着物29が残るおそれがある。このため、当該カバー部材9の内部に収容された光源配設部3からの光を視認することが困難となる恐れがある。
【0043】
図5は、一部のカバー部材9(非回転のカバー部材9)の前面に付着物29が付着した状態を示す図である。前述したように、一つの光源配設部3には、異なる方向に向けて複数の光源5が配置される。このため、光源配設部3からは、光源配設部3の正面3aから正面方向にむけた光(図中E)と、傾斜面3bから斜め方向に向けた光(図中F)が出射される。
【0044】
このように、斜め方向に向けても光源配設部3から光が出射されるため、仮に一つおきに光源配設部3からの光が妨げられても、隣の光源配設部3から当該方向へも光が出射されるため、視認性の低下を最小限とすることができる。また、斜めに出射した光の一部は、カバー部材9によって前方に向けて反射する(図中G)。このため、全てのカバー部材9を回転させなくても、視認性の低下を抑制することができる。
【0045】
以上、本実施の形態によれば、光源5が収容される隣り合うカバー部材9の間を、風雪が吹き通り抜ける構造としたため、カバー部材9の前方に吹付けられる風から受ける動圧を大幅に減らすことができる。このため、カバー部材9の発光面への着雪を大幅に減少することができる。また、仮にカバー部材9の前面に着雪等が生じても、カバー部材9を回転動作させることで、付着物29を容易に除去することができる。
【0046】
特に、カバー部材9の背面側に除去部材17を配置することで、カバー部材9の背面側で、確実に付着物29を除去し、カバー部材9を常にきれいな状態で維持することができる。この際、除去部材17は、カバー部材9の背面側に配置されるため、表示機1の視認性の妨げとなることが無い。
【0047】
また、光源配設部3の正面3aのみではなく傾斜面3bにも光源5を配置することで、仮に一部のカバー部材9の前面に付着物29が付着していたとしても、視認性の低下を抑制することができる。このため、全てのカバー部材9を回転させる必要が無いため、駆動部21を小型化することができる。
【0048】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、光源配設部3(カバー部材9)は、縦格子状に配置したが、横格子状であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1………表示機
3………光源配設部
3a………正面
3b………傾斜面
5………光源
7………枠部
9………カバー部材
11………固定部材
15………固定支柱
17………除去部材
19………隙間
21………駆動部
23………連結部材
25………駆動ローラ
27………ローラ
29………付着物
31………軸受け