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  • 特許-粒子分散長繊維交絡集合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】粒子分散長繊維交絡集合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20250131BHJP
   D01F 1/10 20060101ALI20250131BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
D04H3/16
D01F1/10
D01F6/46 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020163730
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055983
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】516342047
【氏名又は名称】関西電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正博
(72)【発明者】
【氏名】進士 国広
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-088609(JP,A)
【文献】特開2018-127735(JP,A)
【文献】特開2011-132628(JP,A)
【文献】特表2017-527711(JP,A)
【文献】特開2018-126907(JP,A)
【文献】国際公開第2020/145152(WO,A1)
【文献】特開平09-158026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
D01F1/00-6/96
D01F9/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトブロー法により延伸され無機酸化物粒子を分散させたポリオレフィン系樹脂長繊維の交絡集合体の製造方法であって、
押出機で溶融されたポリオレフィン系樹脂に前記無機酸化物粒子を分散させて樹脂吐出口から吐出し、前記樹脂吐出口の近傍に与えられたガス噴出口から高速ガス流を水平に噴出させて、前記樹脂吐出口から吐出された前記樹脂を前記高速ガス流で冷却しながら延伸しつつ空中に放出して、10μm以下の平均断面径dに延伸された前記樹脂長繊維からなる前記交絡集合体を与えるにあたって、
前記樹脂吐出口の径を500μm以上とするとともに前記無機酸化物粒子の平均粒径D50を1μm以上とすることで、前記樹脂吐出口から吐出された前記樹脂について前記無機酸化物粒子を起点に複数の前記樹脂長繊維に分裂させつつ延伸させることを特徴とする粒子分散長繊維交絡集合体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂長繊維の分裂した分枝部において前記無機酸化物粒子を前記樹脂長繊維の表面から露出させていることを特徴とする請求項記載の粒子分散長繊維交絡集合体の製造方法。
【請求項3】
前記無機酸化物粒子の平均粒径D50をd~d/10とするように延伸することを特徴とする請求項記載の粒子分散長繊維交絡集合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトブロー法により延伸され機能性粒子を分散させたポリオレフィン系樹脂長繊維の交絡集合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といったポリオレフィン系樹脂からなる不織布が広く用いられている。ここで、このような熱可塑性樹脂を溶融させて押出機から吐出させるとともに高速気流で延伸して不織布及び原反を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1)。かかるメルトブロー法による製造方法は、連続且つ高速で不織布等を製造でき、ミクロン径からサブミクロン以下のナノ径の細線まで線径を制御して得られることから、農業用、工業用及び医療用など、各種用途の製品製造への適用を期待されている。
【0003】
ところで、メルトブロー法により得られる樹脂繊維に機能性粒子を分散させ複合化させる方法として、機能性粒子を混練したペレットを押出機に投入し、メルトブロー(溶融、延伸)させる方法がある。かかる方法では、樹脂繊維を細線化するに伴って、押出機に取り付けられる樹脂吐出ノズルの径を細くするため、粒子粉体が詰まり易くなってしまう。また、粒子が細線を分断し、延伸を良好に行うことができないといった問題も生じる。
【0004】
例えば、特許文献2では、メルトブロー法により、ナノ銀粒子を含む極細繊維からなる抗菌性不織布を得る方法を開示している。ここでは、無機又は有機銀化合物とPP樹脂とを押出機内で加熱溶融させ、その過程で平均粒子径10~100nmの範囲のナノ銀粒子をPP樹脂内に生成せしめたナノ銀マスターバッチを作成している。これに高流動性のニートPP樹脂をブレンド混合し、メルトブロー法により平均2~10μmの繊維径の不織布を得ている。樹脂中の銀粒子についてナノ化して分散させることで、繊維紡出時の樹脂吐出ノズル(直径0.3~1.0mmの円孔)の目詰まり、糸切れ、フライなどを防止できるとしている。
【0005】
一方、例えば、特許文献3では、メルトブロー法による不織布の製造方法において、押出機に取り付けられた樹脂吐出ノズル及びブローガスノズルの配置、及び樹脂吐出量やガス量などを制御することで、得られる繊維径に比べ、比較的大なる径の樹脂吐出ノズルを用い得ることを開示している。例えば、ナノ径のファイバをミリ径の樹脂吐出ノズルによって得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平01-139864号公報
【文献】特開2013-142215号公報
【文献】特許第6171072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メルトブロー法による不織布の製造方法において、得られる繊維径に比べ、比較的大なる径の樹脂吐出ノズルを用いることで、機能性粒子を混練したペレットを用いたとしても、樹脂吐出ノズルにおける粒子粉体の目詰まりを防止できる。これによれば、ポリオレフィン系樹脂単独では得られない機能を有する、ポリオレフィン系樹脂繊維に機能性粒子を複合化させた交絡集合体からなる機能性不織布を得ることができる。
【0008】
ここで、メルトブロー法により得られるポリオレフィン系樹脂繊維に機能性粒子を分散させ複合化させるにあたって、機能性粒子の機能を高めるように樹脂繊維に対する粒子粉体の割合を高めると、繊維に延伸できなくなり、又、仮に繊維に延伸できたとしてもゴワついて風合いを損ねてしまう。そこで、粒子粉体の割合を高めずとも、機能性粒子の機能を効率よく発揮させる方法が求められた。
【0009】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、メルトブロー法により延伸された長繊維に機能性粒子を分散させ、該機能性粒子による機能を良好に発現し得るポリオレフィン系樹脂長繊維の交絡集合体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、樹脂長繊維の芯部よりも表面に分散する機能性粒子の方がその機能を樹脂に阻害されることなく良好に発現できることに着目し、メルトブロー法により延伸され機能性粒子を分散させたポリオレフィン系樹脂長繊維の交絡集合体において、機能性粒子を長繊維の表面に集中させて分散させる方法を鋭意試みた。その結果、延伸される繊維の中心部にある粒子は延伸時には延伸方向にしか移動しないが、延伸される繊維を引き裂きつつ延伸すれば、粒子を引き裂いた繊維の表面に配置させてから延伸すれば粒子を表面に集中させることが出来ることに想到した。つまり、樹脂吐出口から吐出された樹脂を分裂させて延伸することでそれぞれの樹脂長繊維の表面に機能性粒子を分散できることを見いだしたものである。
【0011】
本発明による粒子分散長繊維交絡集合体は、メルトブロー法により延伸され機能性粒子を分散させたポリオレフィン系樹脂長繊維の交絡集合体であって、前記樹脂長繊維は10μm以下の平均断面径dに延伸されているとともに、前記機能性粒子を前記樹脂長繊維に沿って表面に分散させて含む分散部分とこれを含まない非分散部分とを有することを特徴とする。
【0012】
かかる特徴によれば、機能性粒子を樹脂長繊維の表面に分散させてその機能を量比に対して良好に発現させ得て、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布とできるのである。また、機能性粒子を含まない非分散部分を与えることで、長繊維交絡集合体の風合いを損なわないのである。
【0013】
上記した発明において、前記樹脂長繊維は分枝部を有し、前記分枝部には前記機能性粒子が内部に分散していることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、メルトブロー法により樹脂吐出口から吐出された樹脂を機能性粒子で複数の樹脂長繊維に分裂させる分枝部を起点に長繊維を延伸させて、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布とできるのである。
【0014】
上記した発明において、前記分散部分は前記機能性粒子を前記表面から露出させていることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、機能性粒子の機能を量比に対してより良好に発現させ得て、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布とできるのである。
【0015】
上記した発明において、前記機能性粒子は平均粒径D50をd~d/10とすることを特徴してもよい。かかる特徴によれば、機能性粒子の機能を量比に対してより良好に発現させ得て、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布とできるのである。
【0016】
上記した発明において、前記機能性粒子は、無機酸化物からなることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、溶融樹脂及び使用環境に対して安定した無機酸化物により、機能性粒子の機能を長期間に亘り維持する機能性不織布とできるのである。
【0017】
また、本発明によるメルトブロー法により延伸され機能性粒子を分散させたポリオレフィン系樹脂長繊維の交絡集合体の製造方法であって、押出機で溶融されたポリオレフィン系樹脂に前記機能性粒子を分散させて樹脂吐出口から吐出し、前記樹脂吐出口の近傍に与えられたガス噴出口から高速ガス流を水平に噴出させて、前記樹脂吐出口から吐出された前記樹脂を前記高速ガス流で冷却しながら延伸しつつ空中に放出して、10μm以下の平均断面径dに延伸された前記樹脂長繊維からなる前記交絡集合体を与えるにあたって、前記樹脂吐出口の径を500μm以上とするとともに前記機能性粒子の平均粒径D50を1μm以上とすることで、前記機能性粒子を前記樹脂長繊維に沿って表面に分散させて含む分散部分とこれを含まない非分散部分とを有する前記樹脂長繊維からなる前記交絡集合体を与えることを特徴とする。
【0018】
かかる特徴によれば、比較的大なる径の樹脂吐出口でポリオレフィン系樹脂の表面張力を低下させて、樹脂長繊維を分枝させ易くし、延伸時の繊維切れを生じさせることなく、機能性粒子を樹脂長繊維の表面に分散させてその機能を量比に対して良好に発現させ得て、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布を得られるのである。また、機能性粒子を含まない非分散部分を与えることで、延伸の破断を防止できるとともに、長繊維交絡集合体の風合いを損なわないのである。
【0019】
上記した発明において、前記樹脂吐出口から吐出された前記樹脂を前記機能性粒子で複数の前記樹脂長繊維に分裂させて延伸させることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、機能性粒子を樹脂長繊維の表面に分散させてその機能を量比に対して良好に発現させ得て、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布を得られるのである。
【0020】
上記した発明において、前記樹脂長繊維は分枝部を有し、前記分枝部には前記機能性粒子が内部に分散していることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、メルトブロー法により樹脂吐出口から吐出された樹脂を機能性粒子で複数の樹脂長繊維に分裂させる分枝部を起点に長繊維を延伸させ得て、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布を得られるのである。
【0021】
上記した発明において、前記分散部分は前記機能性粒子を前記表面から露出させていることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、機能性粒子の機能を量比に対してより良好に発現させ得て、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布を得られるのである。
【0022】
上記した発明において、前記機能性粒子の平均粒径D50をd~d/10とするように延伸することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、機能性粒子の機能を量比に対してより良好に発現させ得て、長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布を得られるのである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による1実施例における樹脂長繊維の交絡集合体の(a)外観写真及び(b)拡大写真である。
図2】樹脂長繊維の模式図である。
図3】交絡集合体の製造装置の側断面図である。
図4】製造装置のノズルヘッドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の代表的な一例としてのポリオレフィン系樹脂長繊維の交絡集合体について、図1及び図2を用いて説明する。
【0025】
図1(a)に示すように、樹脂長繊維の交絡集合体10は、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の樹脂をメルトブロー法によって延伸し、機能性粒子(ここでは、観察のため、黒色セラミックス粒子を用いている。)を分散させた粒子分散長繊維交絡集合体である。また、樹脂長繊維は平均断面径dを10μm以下とされている。
【0026】
図1(b)に示すように、交絡集合体10は、機能性粒子の分散に偏りを生じており、樹脂長繊維1に沿って表面に機能性粒子を分散させて含む分散部分2と、機能性粒子を表面に分散させていない非分散部分3とを有する。分散部分2においては、機能性粒子を表面に集中して分散させており、これによってその機能を発現しやすくさせ得る。また、分散部分2において、機能性粒子は樹脂長繊維1の表面から露出するようにされていることも好ましく、これによって所望の機能をより発現しやすくされ得る。また、樹脂長繊維は、繊維を複数に分岐させる分枝部4を有していてもよく、分枝部4の内部には機能性粒子を分散させている。
【0027】
このような交絡集合体10は、メルトブローによる製造中に以下のようなメカニズムによって形成されるものと考えられる。
【0028】
まず、図2(a)に示すように、メルトブローにおいて、樹脂吐出口から吐出された樹脂9の中に機能性粒子5を分散させている。そして、メルトブローによる延伸によって機能性粒子5と樹脂9との界面の近傍を起点として樹脂9は裂けやすくなる。これは、延伸される樹脂9に対して、機能性粒子5は変形せず延伸されないためである。このような機能性粒子5の複数との界面の近傍を選択的に通る裂け目4aを形成する。このような裂け目4aにおいて、機能性粒子5のそれぞれは避けた一方と他方との内のどちらかにあることになる。つまり、裂け目4aにおいて裂けた一方と他方とで機能性粒子5の分布は局所的には偏りを生じる。
【0029】
そして、図2(b)に示すように、樹脂9は、裂け目4aから分岐して分枝部4を生成したり、複数の樹脂繊維に分裂したりする。このとき、樹脂9が延伸されるが、上記した局所的な偏りがあるため、機能性粒子5の分布密度の低い箇所が優先的に延伸される。これは、機能性粒子5はメルトブローの状況下でも変形しないために樹脂9の延伸を妨げるからである。このため、分枝部4として延伸されずに残存する部分には機能性粒子5が分散している。また、このような分枝部4も、さらに延伸されることで機能性粒子5を比較的多く分散させた繊維となる。そして、機能性粒子5の分布密度の高いところは延伸されづらく分布密度の低下は小さく、他方、機能性粒子5の分布密度の低いところは延伸されやすく分布密度がさらに低下する。その結果、機能性粒子5の分布密度の偏りが助長される。
【0030】
ところで、裂け目4aの起点に多く存在する機能性粒子5は、樹脂9との界面近傍に裂け目4aを形成されるために、裂けた樹脂9の表面近傍に位置することになる。つまり、機能性粒子5は、分布密度の比較的高い状態で延伸される場合、樹脂9の表面に集中して分布しやすくなるとともに、延伸方向に整列されやすくなる。一方で、上記したように、機能性粒子5の分布密度が低く、より延伸された部分では、長く延伸された結果として細い繊維を形成しやすい。つまり、上記したように、機能性粒子5を表面に分散させて含む分散部分2と、これを含まない非分散部分3とを形成する。また、裂け目4aの形成などによって樹脂9の表面近傍に分散された機能性粒子5は、樹脂9の延伸に伴う縮径により、相対的に表面側に移動して表面から露出されやすくなる。
【0031】
これに対し、裂け目4aの形成されなかった部分などにおいて、樹脂9の芯部にある機能性粒子5aは、延伸によっても樹脂9の内部にとどまりやすい。上記した表面側への移動などの相対的な移動を除き、機能性粒子5の移動は樹脂9の移動のみによって生じ、延伸されても樹脂9の芯部では延伸方向の移動のみが生じ得るためである。つまり、上記したようにメルトブローによる延伸中に機能性粒子5を表面に位置させるよう、機能性粒子5の近傍で裂け目4aを生じさせることは、得られる交絡集合体10に機能性粒子5の機能を良好に発現させやすくさせるために重要となる。また、内部に機能性粒子5の分散した分枝部4が形成されていることで、機能性粒子5と樹脂9との界面近傍において選択的に裂け目4aを生じたと推定することができる。
【0032】
以上のように機能性粒子5を樹脂長繊維1に分散させるメカニズムが推定されるが、上記したように交絡集合体10は、分散部分2及び非分散部分3を含むことで機能性粒子5の機能を量比に対して良好に発現させ得るとともに長繊維交絡集合体の風合いを損なわない機能性不織布となる。
【0033】
このような樹脂長繊維1からなる交絡集合体10を得るために、機能性粒子5の平均粒径を比較的大きくすることも有用である。例えば、延伸された樹脂長繊維1の平均断面径dに対して、機能性粒子の平均粒径D50をd~d/10範囲内とすることも好ましい。
【0034】
機能性粒子5としては、公知の多種の材料を用い得るが、上記したような裂け目4aの形成のため、メルトブロー中の溶融樹脂の中でも形状やその他性質の安定した材料であることが好ましい。また、長期間の使用を可能とするために、交絡集合体10の使用環境に対しても安定な材料であることが好ましい。例えば、無機酸化物などの硬質な材料を機能性材料として好ましく使用し得る。無機酸化物として、焼成したアパタイトを破砕して得た粉体を機能性粒子5として用いれば、ポリオレフィン系の樹脂を用いた交絡集合体10に生体親和性を付与し得る。また、その他、公知のセラミックスを用いて、遠赤外線を発生する機能、親水性を高める機能などを付与し得る。
【0035】
続いて、交絡集合体10の製造方法について図3及び図4を用いて説明する。
【0036】
図3に示すように、交絡集合体10の製造には製造装置20を用い得る。製造装置20は、メルトブローによって樹脂ファイバを製造する公知の装置であり、簡単に説明する。
【0037】
製造装置20は、溶融樹脂をノズル22aから押し出す押出機21と、ノズル22aの先端に取り付けられたノズルヘッド30とを含む。押出機21は、さらにノズルヘッド30へ加熱ガスを供給するためのガス供給部26及びガス加熱部27を備える。これにより、製造装置20は、押出機21においてホッパ24から投入されたペレットをヒータ25で加熱し溶融させてバレル22内のスクリュー23で混錬しつつ搬送し溶融樹脂をノズルヘッド30へ供給し、さらに高速ガス流として噴出するための加熱ガスをノズルヘッド30へ併せて供給することができる。なお、ペレットは上記したポリオレフィン系の樹脂9及び機能性粒子5を配合して得られたものであり、押出機21内で溶融した樹脂9には機能性粒子5が分散される。
【0038】
図4に示すように、ノズルヘッド30は、樹脂を吐出する吐出口32及び高速ガス流を噴出するガス噴出口33を備え、ガス噴出口33から水平に高速ガス流を噴出できるように押出機21の先端に取り付けられている。例えば、ノズルヘッド30は、吐出口32及びガス噴出口33を互いの近傍に1つずつ配置させて対をなすように備える。本実施例では、吐出口32及びガス噴出口33の対を複数備えており、交絡集合体10の単位時間当たりの生産量を向上させ得て好ましい。ここで、吐出口32の出口部分の内径は500μm以上とされる。詳細については後述する。
【0039】
なお、製造装置20のその他詳細については公知であるので説明を省略するが、吐出口と噴出口との数の異なる組み合わせなど、他の形式のノズルヘッドであってもよい。また、製造装置20は、放出される樹脂ファイバを捕集する捕集部を適宜備え、捕集することで樹脂ファイバを交絡集合体10とする。
【0040】
さて、上記した製造装置20を用いて交絡集合体10を製造するのであるが、その製造方法は以下の通りとなる。すなわち、押出機21で溶融されて機能性粒子5を分散させたポリオレフィン系の樹脂9を、吐出口32から吐出させ、吐出口32の近傍に配置されたガス噴出口33から高速ガス流を水平に噴出させる。すると、吐出口32から吐出された樹脂9は高速ガス流で延伸されつつ空中に放出されるとともに冷却される。ここで、樹脂9から得られる樹脂長繊維の平均断面径dを10μm以下とするように製造条件が調整される。
【0041】
特に、吐出口32の出口部分の内径を500μm以上とし、機能性粒子5の平均粒径D50を1μm以上とする。このように機能性粒子5の平均粒径Dを比較的大きくしつつ、吐出口32も大きくすることで、上記したような交絡集合体10を得られる。すなわち、吐出口32の出口の内径を大きくすることで、溶融した樹脂9の表面張力を低下させて上記したような裂け目4aを形成させて分枝・分裂させ易くし、機能性粒子5を表面に集中して分散させやすくし得る。また、かかる分枝のしやすさには上記したように機能性粒子5の大きさも関わるが、吐出口32の内径を大きくしたことでこのような比較的大きな機能性粒子5を用いても目詰まりを生じにくい。
【0042】
以上のような製造方法によれば、上記したような交絡集合体10を得ることができる。つまり、分散部分2によって機能性粒子5の量比に対して機能を良好に発現させ得るとともに非分散部分3によってメルトブローによる製造中に延伸の破断を抑制でき、得られた長繊維の交絡集合体10として風合いを損なわずに機能性不織布を得られる。
【0043】
ここまで本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。また、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0044】
1 樹脂長繊維
2 分散部分
3 非分散部分
4 分枝部
5 機能性粒子
10 交絡集合体


図1
図2
図3
図4