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特許7627943エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器及びその製造方法並びにそれを用いたエアゾール製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器及びその製造方法並びにそれを用いたエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/02 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
F17C5/02 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021053020
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150428
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000185363
【氏名又は名称】小池化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】金澤 康浩
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-206723(JP,A)
【文献】特開2010-007843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0272140(US,A1)
【文献】特開2001-141193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量が24L以上の高圧ガス容器であり、
前記高圧ガス容器が、噴射剤をエアゾール缶にワンステップで充填するためのエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器であり、炭酸ガスが液化ガスに溶解されてなる混合ガスである前記噴射剤が内部に封入されてなる、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器。
【請求項2】
前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器が、液化ガス導入口と、炭酸ガス導入口と、ガス取り出し口と、を含む、請求項1記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器。
【請求項3】
前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器が、前記炭酸ガス導入口から内部に伸びるサイホン管を備える、請求項2記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器。
【請求項4】
前記液化ガスが、液化石油ガス、ジメチルエーテル及び液化ハイドロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる一種以上である、請求項1~3いずれか1項記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器。
【請求項5】
前記混合ガスの25℃における前記液化ガスへの炭酸ガスの充填量が0.001質量%~23質量%である、請求項1~4いずれか1項記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器。
【請求項6】
容量が24L以上の高圧ガス容器に液化ガスを充填する液化ガス充填工程と、次いで炭酸ガスを前記高圧ガス容器に充填することで、炭酸ガスが液化ガスに溶解されてなる混合ガスとし、混合ガスである噴射剤が封入されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を製造する混合ガス生成工程と、を含む、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法。
【請求項7】
前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器が、液化ガス導入口と、炭酸ガス導入口と、ガス取り出し口と、を含む、請求項記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法。
【請求項8】
前記高圧ガス容器が、前記炭酸ガス導入口から内部に伸びるサイホン管を備え、前記炭酸ガスが前記サイホン管を通じてバブリングさせながら前記液化ガスに注入せしめられ、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器に充填されてなる、請求項記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法。
【請求項9】
前記混合ガス生成工程が、前記炭酸ガスを前記高圧ガス容器内の前記液化ガスに注入する工程と、前記炭酸ガスと前記液化ガスを攪拌させることで前記液化ガスへの前記炭酸ガスの溶解を促進させる溶解促進工程と、を含む、請求項いずれか1項記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法。
【請求項10】
前記液化ガスが、液化石油ガス、ジメチルエーテル及び液化ハイドロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる一種以上である、請求項いずれか1項記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法。
【請求項11】
前記混合ガスの25℃における前記液化ガスへの炭酸ガスの充填量が0.001質量%~23質量%である、請求項10いずれか1項記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法。
【請求項12】
請求項1~5いずれか1項記載のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を使用したエアゾール製品の製造方法であり、エアゾール缶に原液を充填する工程と、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を使い、前記混合ガスである噴射剤を充填する工程と、を含むエアゾール製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射剤をエアゾール缶にワンステップで充填するためのエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器及びその製造方法並びにそれを用いたエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール噴射剤として液化ガスと炭酸ガスを充てんするにあたっては、例えば特許文献1に示される如く、噴射剤として液化ガスと炭酸ガスを充填する必要があるが、エアゾール缶への液化ガスの充填と炭酸ガスの充填は別々に充填が行われていた。従来のエアゾール缶への噴射剤のガス充填の仕方を図5に示す。
【0003】
図5において、エアゾール缶101には、液化ガス充填機102によって、液化ガスが充填された後、炭酸ガス充填機103によって炭酸ガスが充填される。図5において、液化ガス用高圧ガス容器109は、内部に液化ガス108が封入されており、内部の液化ガス108に到達するように伸びるサイホン管110を備えており、液化ガス用高圧ガス容器バルブ111を介して、液化ガス108がエアゾール缶101に充填される。
【0004】
図5において、液体二酸化炭素用高圧ガス容器107は、内部に液体の二酸化炭素106が封入されており、液体二酸化炭素用高圧ガス容器バルブ105を介して、ベーパーライザー104で気化されたのち、気化された二酸化炭素(炭酸ガス)が炭酸ガス充填機103を使い、エアゾール缶101に充填される。このようにしてエアゾール缶への噴射剤のガス充填が行われていた。
【0005】
エアゾール製品の需要は多く、また、エアゾール製品における炭酸ガスの需要も多様化している。このような中、エアゾール缶に噴射剤の炭酸ガスを充填するにあたっては、専用の炭酸ガス充填機が無いと充填することが出来ないため、炭酸ガス充填用の設備及び充填場所の確保が必要であり、そのための設備投資をする必要があった。
【0006】
一方、特許文献2には、2種以上の液化ガスを混合する方法が記載されている。しかしながら、特許文献2記載の方法は気体状態ではなく、液状の液化ガス同士を混合する方法な為、液化ガスと液体二酸化炭素を混合するには、液体二酸化炭素用の特殊容器、配管及びポンプの設置が必要であり、また二酸化炭素の歩留まりが悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-206723号公報
【文献】特開2001-141193公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑みなされたもので、専用の炭酸ガス充填機が無くともエアゾール缶に噴射剤を充填することができ、エアゾール噴射剤をエアゾール缶にワンステップで充填することができるようにした、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器及びその製造方法並びにそれを用いたエアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器は、噴射剤をエアゾール缶にワンステップで充填するためのエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器であり、炭酸ガスが液化ガスに溶解されてなる混合ガスである前記噴射剤が内部に封入されてなる、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器である。
【0010】
前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器が、液化ガス導入口と、炭酸ガス導入口と、ガス取り出し口と、を含むのが好適である。
【0011】
前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器が、前記炭酸ガス導入口から内部に伸びるサイホン管を備えるのがさらに好適である。
【0012】
前記液化ガスが、液化石油ガス、ジメチルエーテル及び液化ハイドロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる一種以上であるのが好適である。
【0013】
前記混合ガスの25℃における前記液化ガスへの炭酸ガスの充填量が0.001質量%~23質量%であるのが好適である。
【0014】
本発明のエアゾール製品は、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器から前記混合ガスの噴射剤が充填されてなる、エアゾール製品である。
【0015】
本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法は、高圧ガス容器に液化ガスを充填する液化ガス充填工程と、次いで炭酸ガスを前記高圧ガス容器に充填することで、炭酸ガスが液化ガスに溶解されてなる混合ガスとし、混合ガスである噴射剤が封入されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を製造する混合ガス生成工程と、を含む、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法である。
【0016】
前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器が、液化ガス導入口と、炭酸ガス導入口と、ガス取り出し口と、を含むのが好適である。
【0017】
前記高圧ガス容器が、前記炭酸ガス導入口から内部に伸びるサイホン管を備え、前記炭酸ガスが前記サイホン管を通じてバブリングさせながら前記液化ガスに注入せしめられ、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器に充填されてなるのが好適である。
【0018】
前記混合ガス生成工程が、前記炭酸ガスを前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器内の前記液化ガスに注入する工程と、前記炭酸ガスと前記液化ガスを攪拌させることで前記液化ガスへの前記炭酸ガスの溶解を促進させる溶解促進工程と、を含むのが好適である。
【0019】
前記液化ガスが、液化石油ガス、ジメチルエーテル及び液化ハイドロフルオロオレフィンからなる群から選ばれる一種以上であるのが好適である。
【0020】
前記混合ガスの25℃における前記液化ガスへの炭酸ガスの充填量が0.001質量%~23質量%であるのが好適である。
【0021】
本発明のエアゾール製品の製造方法は、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を使用したエアゾール製品の製造方法であり、エアゾール缶に原液を充填する工程と、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を使い、前記混合ガスである噴射剤を充填する工程と、を含むエアゾール製品の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、専用の炭酸ガス充填機が無くともエアゾール缶に噴射剤を充填することができ、エアゾール噴射剤をエアゾール缶にワンステップで充填することができるようにした、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器及びその製造方法並びにそれを用いたエアゾール製品を提供することができるという著大な効果を奏する。
【0023】
本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器は、炭酸ガス充填機が無くても炭酸ガスを充填することができ、別途の炭酸ガスを充填する工程が不要であり、設備及び現場の場所も削減し、製造コストを削減することができ、炭酸ガス用の設備投資が不要で、炭酸ガスが充填されたエアゾール製品を生産することができる。炭酸ガスを液化ガスへ溶解させる為、液体二酸化炭素用の特殊容器、配管及びポンプの設置が不要であり、炭酸ガスの歩留まりもよい。
【0024】
さらに、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器内は、液相及び気相部分に分けられるが、本発明によれば、液相部分に所望の溶解量の炭酸ガスが溶解されており、一定の炭酸ガスが安定的に液相部分に残存しており、少量の減少傾向はあるがエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の使用開始時から最終まで、経時的に安定して所望量の炭酸ガスが含まれる混合ガスを供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を使用したエアゾール製品の製造方法の一つの実施の形態を示す概略模式図である。
図2】本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法の一つの実施の形態を示す概略模式図である。
図3】本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(容器容量:1175L)の一例を示す概略模式図である。
図4図3のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(容器容量:1175L)における液化ガスと炭酸ガスの攪拌を示す概略模式図である。
図5】従来のエアゾール缶への噴射剤のガス充填の仕方を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0027】
図1に、本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を使用したエアゾール製品の製造方法の一つの実施の形態を示す。
図1において、符号10は、本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器である。本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10は、噴射剤をエアゾール缶12にワンステップで充填するためのエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器であり、炭酸ガスが液化ガスに溶解されてなる混合ガス14である前記噴射剤が内部に封入されてなるものである。なお、本発明において、気体の二酸化炭素を炭酸ガスと称し、液体の二酸化炭素を液体二酸化炭素と称する。図1において、符号16は液化ガス充填機であり、符号18は高圧ガス容器バルブであり、符号20はサイホン管である。
【0028】
図1に示す如く、本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10によれば、従来とは異なり、専用の炭酸ガス充填機が不要であり、液化ガス充填機16を用いて、炭酸ガスを含む混合ガス14をワンステップでエアゾール缶12に充填することができる。炭酸ガスを溶解させた液化ガスを充填することにより、炭酸ガスも一緒に充填される為、従来のような、別途の炭酸ガスを充填する工程が不要となる。
【0029】
本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10に用いられる高圧ガス容器22の構造は特に制限はなく、公知の液化ガス用高圧ガス容器に準じた構造を好適に用いることができる。前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10が、液化ガス導入口と、炭酸ガス導入口と、ガス取り出し口と、を含むことが好ましい。なお、液化ガス導入口と、炭酸ガス導入口と、ガス取り出し口は、同一の出入口を用いてもよく、それぞれ設けてもよい。
【0030】
さらに、図1に示した如く、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10が、炭酸ガス導入口から内部に伸びるサイホン管20を備えることが好適である。前記サイホン管20を設けることにより、高圧ガス容器22内で、液化ガス中にバブリングしながら炭酸ガスを充填することができ、炭酸ガスの充填率を高めることができる。また、炭酸ガスの液化ガスへの溶解率も向上させることができる。前記サイホン管20としては、例えば、1175L容器であればサイホン管は容器の底まであるものが好適である。サイホン管20の形状は特に制限はなく、高圧ガス容器のサイズに応じて適宜選択すればよいが、例えば、1175L容器の場合は、太さ:25A、肉厚:sch40のサイホン管が好適に用いられる。
【0031】
前記液化ガスとしては、常温で気体である、炭酸ガス以外の公知の液化ガスを用いることができる。前記液化ガスは、必要に応じて、エアゾール用の噴射剤として用いられている公知の液化ガスから適宜選択すればよいか、例えば、ブタンやプロパン等の液化石油ガス,ジメチルエーテル、HFO1234zeやHFO1234yf等の液化ハイドロフルオロオレフィン等がより好ましい。これら液化ガスは単独で用いても良く、2種以上組み合わせて用いても良い。また、前記液化ガスに、イソペンタンやノルマルペンタン等の液体を添加してもよい。
【0032】
前記炭酸ガスとしては、気体状の二酸化炭素が用いられる。
【0033】
前記混合ガス中の液化ガスと炭酸ガスの配合比は特に制限はなく、液化ガスの種類や用途等の必要に応じて、適宜選択すればよいが、液化ガス:炭酸ガスは、エアゾール缶の耐圧を考慮し、質量比で99.999:0.001~77:23が好ましく、99.99:0.01~90:10がより好ましく、99.99:0.01~95:5がさらに好ましい。
【0034】
前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器中の混合ガスの25℃における液化ガス(液相部分)への炭酸ガスの溶解度が質量比で0.1%~100%であることが好ましく、50%~100%がより好ましく、50%~90%がより好ましい。具体的には、ジメチルエーテルは75%~95%、より好ましくは75%~90%、LPG20℃0.29等の液化石油ガスは50%~85%、より好ましくは50%~70%、HFO1234ze等の液化ハイドロフルオロオレフィンは70%~97%、より好ましくは70%~90%であることが好適である。本発明において、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器内からエアゾール缶に充填した炭酸ガスの、液化ガスの液相部分に存在している割合を溶解度と称する。なお、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器中の混合ガスの残量に応じて高圧ガス容器内の圧力が変わる為、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の使用開始時から終了時までの間にエアゾール缶への炭酸ガスの充填量も変わり、炭酸ガスの溶解度も変化するが、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の使用開始時から終了時までの炭酸ガスの溶解度の中間が上記範囲となることが好適である。
【0035】
前記液相部分の液化ガス中の炭酸ガスの溶解度の測定方法としては、試料を気化させガスクロマトグラフィーを用いて分析する方法を用いることができ、具体的には、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器からエアゾール缶に混合ガスの噴射剤を充填した後、エアゾール缶内の液相から試料を取り、該試料を気化させガスクロマトグラフィーを用いて試料中の炭酸ガスの濃度を分析し、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器に充填された混合ガス中の炭酸ガスの濃度と比較し、溶解度を算出する方法を用いることができる。
【0036】
前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10を製造する方法は特に制限はなく、例えば、高圧ガス容器22に液化ガスと炭酸ガスを充填し、混合して液化ガスに炭酸ガスを溶解させ、混合ガスとすることにより製造することができるが、高圧ガス容器22に液化ガスを充填し、次いで炭酸ガスを充填することが好適である。
特に、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10は、本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法を用いて製造することが好適である。
【0037】
図2は、本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法の一つの実施の形態を示す概略模式図である。
本発明のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器の製造方法は、高圧ガス容器22に液化ガス24を充填する液化ガス充填工程と、次いで二酸化炭素26を気体の状態で前記高圧ガス容器22に充填することで、炭酸ガスが液化ガスに溶解されてなる混合ガス14とし、混合ガスである噴射剤が封入されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10を製造する混合ガス生成工程と、を含むものである。
【0038】
前記液化ガス充填工程は、特に制限はないが、図2に示した如く、貯槽28中の液化ガス24を、貯槽バルブ30、液相ポンプ32、液化ガス充填ホース42、及び高圧ガス容器バルブ18を介して、高圧ガス容器22に充填することが好適である。
【0039】
前記混合ガス生成工程は、特に制限はないが、図2に示した如く、液体二酸化炭素用高圧ガス容器38中の液体の二酸化炭素26を、液体二酸化炭素用高圧ガス容器バルブ36、ベーパーライザー34、炭酸ガス充填ホース40、及び高圧ガス容器バルブ18を介して、気体状で高圧ガス容器22に充填することが好適である。
【0040】
また、前記混合ガス生成工程が、炭酸ガスを高圧ガス容器22内の液化ガスに注入する工程と、炭酸ガスと液化ガスを攪拌させることで液化ガスへの炭酸ガスの溶解を促進安定させる溶解促進工程と、を含むことが好ましい。
【0041】
前記溶解促進工程において、炭酸ガスと液化ガスを攪拌させる方法は特に制限はないが、炭酸ガスをバブリングしながら入れ、攪拌することにより、炭酸ガスと液化ガスが均一溶解された状態となることが好ましい。前記溶解促進工程としては、例えば、高圧ガス容器22が、炭酸ガス導入口から内部に伸びるサイホン管20を備え、炭酸ガスがサイホン管20を通じてバブリングさせながら液化ガスに注入せしめられ、炭酸ガスと液化ガスが攪拌され、均一溶解された状態となることが好適である。
【0042】
また、高圧ガス容器22が大型(例えば、容量1175L以上)の場合は、図3及び図4に示した如く、高圧ガス容器22の内部に羽根44を設け、高圧ガス容器22を回転させることにより、炭酸ガスと液化ガスを攪拌させ、液化ガスへの炭酸ガスの溶解を促進させることが好ましい。図3及び図4は、容量1175Lの高圧ガス容器を用いた例を示した。前記羽根44としては、例えば、1175L容器であれば、容器内部の胴部にV字型の仕切り板を設けて、容器を回転させることにより波を発生させ撹拌させる構造が好適である。
【0043】
本発明のエアゾール製品は、前記エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10から炭酸ガスを含む混合ガス14の噴射剤が充填されてなる、エアゾール製品である。
前記エアゾール製品が原液を含む場合は、エアゾール缶12に原液を充填した後に、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器10を使い、噴射剤として混合ガス14(液化ガス+炭酸ガス)を充填し、炭酸ガスが充填されたエアゾール製品を製造することが好適である。
【0044】
前記エアゾール製品に用いられる原液としては、特に制限はなく、エアゾール製品に適用される原液を広く使用することができる。さらに、必要に応じて、他の添加成分を配合してもよい。
【実施例
【0045】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0046】
[検査方法]
混合ガスである噴射剤が充填されたエアゾール缶の圧力及びエアゾール缶内の混合ガス中の炭酸ガスの溶解度を下記方法で測定した。
圧力は、恒温水槽にてエアゾール缶を浸漬し、所定温度(10℃、25℃又は40℃)にした後、エアゾール缶の噴射ボタンを外して、ステムを圧力計の挿入口に気密に差し込み、圧力を測定した。
炭酸ガスの溶解度は、試料を気化させガスクロマトグラフィーで分析した。容器から実際の入れ目の量とガスクロマトグラフィーの液相結果で算出した。
【0047】
<実施例1及び比較例1>従来品と本発明品との圧力と組成比較
(比較例1)
従来と同様に、図5記載の方法により液化ガス充填機及び炭酸ガス充填機を準備し、ツーステップ(2段)で直接エアゾール缶(AE420)にそれぞれ別々に液化ガス充填機で各液化ガス(ジメチルエーテル、LPG20℃0.29又はHFO1234ze)を充填し、炭酸ガス充填機にて炭酸ガス(3質量%及び5質量%)を60容量%充填した。
なお、前記炭酸ガスの充填量(3質量%及び5質量%)は、充填する液化ガスと炭酸ガスの総量に対する炭酸ガスの質量比率を算出したものである。以下、炭酸ガスの濃度の単位について質量%を%と称することもある。
前記充填されたエアゾール缶について、前記方法により圧力(25℃)及び混合ガス中の炭酸ガスの溶解度を測定した。結果を表1~3に示す。
【0048】
(実施例1)
[高圧ガス容器への混合ガスの充填方法]
図2記載の方法により、24Lの高圧ガス容器(サイホン管有り)に、各液化ガス(ジメチルエーテル 10.0kg、LPG20℃0.29 8.0kg、HFO1234ze 17.0kg)を充填し、所定の充填量の炭酸ガスをそれぞれ充填し、炭酸ガスが液化ガスに溶解されてなる混合ガスである噴射剤が内部に封入されてなる、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を得た。
前記炭酸ガスの充填量は、予め、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(中間)の炭酸ガスの溶解度を測定し、その溶解率から、エアゾール缶内の液相部分の炭酸ガス濃度が比較例1と同様となるように炭酸ガスの充填量を算出したものである。下記表1~12中の炭酸ガス(3%)では、各液化ガスにおける炭酸ガスの充填量は、ジメチルエーテル:3.3%、LPG20℃0.29:4.0%、HFO1234ze:3.5%であり、表1~12中の炭酸ガス(5%)では、各液化ガスにおける炭酸ガスの充填量は、ジメチルエーテル:5.4%、LPG20℃0.29:6.7%、HFO1234ze:5.7%である。
該エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(中間)の炭酸ガスの溶解度の測定は、前記方法により各液化ガスと炭酸ガスの混合ガスが充填されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を用いて、下記方法により内容物(混合ガス)を約半量出した後の、内容物が半量充填されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器からエアゾール缶に混合ガスである噴射剤を60容量%充填し、該エアゾール缶内の液相部分の炭酸ガスの溶解度を測定した。
【0049】
[エアゾール缶への噴射剤の充填方法]
前記充填されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(24L)から、内容物(混合ガス)を約半量出した後の、内容物が半量充填されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(中間)を準備した。前記高圧ガス容器内は液相及び気相部分に分けられるが、炭酸ガスの残量は気相部分に残存しているものと考えられる。そして、かかる半量充填された前記高圧ガス容器(中間)からワンステップ(1段)でエアゾール缶(AE420)に混合ガスである噴射剤を60容量%充填した。
前記充填されたエアゾール缶の圧力(25℃)及びエアゾール缶内の混合ガス中の炭酸ガスの溶解度を測定した。結果を表1~3に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表1~3に示した如く、実施例1(1段充填)と比較例1(従来の2段充填)とでは、液相部分の炭酸ガス組成に違いは見られず、炭酸ガス充填機を使用していないワンステップ充填の実施例1でも十分に液化ガス中に炭酸ガスが溶解していることがわかる。
【0054】
(実施例2)
<エアゾール用噴射剤高圧ガス容器(24L)充填残量での圧力及び溶解率>
[充填方法]
実施例1と同様の方法により、各液化ガス(ジメチルエーテル、LPG20℃0.29又はHFO1234ze)及び炭酸ガスをそれぞれ実施例1と同様の充填量で充填したエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(24L)を得た。
得られたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(24L)に対し、高圧ガス容器内の混合ガスの残量が最初、中間、最後のものでサンプリングし、各エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(24L)から、エアゾール缶(AE420)に60容量%充填した。前記高圧ガス容器内の混合ガスの最初、中間、最後の残量をそれぞれ下記表に示す。
【0055】
[検査方法]
前記充填された各エアゾール缶の10℃、20℃又は40℃における圧力及びエアゾール缶内の混合ガス中の炭酸ガスの溶解度を測定した。20℃における圧力の結果を表4~6に示し、炭酸ガスの溶解度の結果を10~12に示す。各温度条件でのエアゾール缶(最初、中間、最後)の3缶の圧力の測定値の最小値及び最大値の結果を表7~9に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
【表10】
【0063】
【表11】
【0064】
【表12】
【0065】
(実施例3及び4)
<サイホン管の有無によるエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(24L)内への炭酸ガスの充填量の比較>
[充填方法]
実施例3では、炭酸ガス導入口から内部に伸びるサイホン管を備えた高圧ガス容器(24L)を用い、該高圧ガス容器に、液化ガス(ジメチルエーテル)10kgを充填後、炭酸ガスを同条件(容器内温度25℃、炭酸ガス調整器0.98MPa)で液化ガス中にバブリングさせながら炭酸ガスを高圧ガス容器に充填し、エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を得た。
実施例4では、サイホン管が備わっていない高圧ガス容器(24L)を用い、該高圧ガス容器に、液化ガス(ジメチルエーテル)10kgを充填後、炭酸ガスを同条件(容器内温度25℃、炭酸ガス調整器0.98MPa)で充填した。
【0066】
[検査方法]
前記得られた実施例3及び4のエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(24L)の炭酸ガス量を測定した。結果を以下に示す。
【0067】
【表13】
【0068】
一定圧力にて炭酸ガスを充填すると、サイホン管を設けた高圧ガス容器に充填した実施例3の方がサイホン管無しの高圧ガス容器を用いた実施例4に比べて炭酸ガスの充填率が高かった。また、前記高圧ガス容器が大型の容器の場合には、図3に示すような羽根が前記高圧ガス容器内にあると、炭酸ガスと液化ガスとがより攪拌されてミックスされるため、前記高圧ガス容器内で炭酸ガスがより溶解されやすくなると考えられる。
【0069】
(実施例5)
<エアゾール缶に内容物を充填してエアゾール製品を製造したものの比較>
実施例1と同様の方法により、実施例1と同様の充填量の混合ガス(ジメチルエーテル+炭酸ガス(5.4%))が充填されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器を得た。前記充填されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(24L)から、内容物(混合ガス)を約半量出した後の、内容物が半量充填されたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(中間)を準備した。
エアゾール缶(AE420)に原液(アルコール+水)を約158g入れた後、前記得られたエアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器(中間)を用いて、図1記載の方法により、混合ガスである噴射剤を該エアゾール缶に約106g充填した。
【0070】
[試験方法]
前記充填されたエアゾール缶内の液相(原液+混合ガス)から試料を取り、試料を気化させ、北川式検知管を用いて、気化した試料(ジメチルエーテル+炭酸ガス)中の炭酸ガス濃度を測定した。結果を表14に示す。
【0071】
(比較例2)
従来と同様にして、エアゾール缶(AE420)に原液(アルコール+水)を約158g入れた後、図5記載の方法により、液化ガス(ジメチルエーテル)を約101g充填し、炭酸ガスを約5g(5%)充填した。
前記充填されたエアゾール缶を用いて、実施例5と同様の方法により液相試料の混合ガス中の炭酸ガス濃度を測定した。結果を表14に示す。
【0072】
【表14】
【0073】
実施例5(1段で噴射剤を充填したエアゾール製品)と比較例2(従来の2段で噴射剤を充填したエアゾール製品)とでは、液相部分の混合ガス中の炭酸ガス組成に違いは見られず、炭酸ガス充填機を使用していないワンステップで噴射剤を充填した実施例5でも十分に液化ガス中に炭酸ガスが溶解していることがわかる。
【符号の説明】
【0074】
10:エアゾール噴射剤充填用高圧ガス容器、12:エアゾール缶、14:混合ガス、16:液化ガス充填機、18:高圧ガス容器バルブ、20:サイホン管、22:高圧ガス容器、24:液化ガス、26:二酸化炭素、28:貯槽、30:貯槽バルブ、32:液相ポンプ、34:ベーパーライザー、36:液体二酸化炭素用高圧ガス容器バルブ、38:液体二酸化炭素用高圧ガス容器、40:炭酸ガス充填ホース、42:液化ガス充填ホース、44:羽根、101:エアゾール缶、102:液化ガス充填機、103:炭酸ガス充填機、104:ベーパーライザー、105:液体二酸化炭素高圧ガス容器バルブ、106:二酸化炭素、107:液体二酸化炭素用高圧ガス容器、108:液化ガス、109:液化ガス用高圧ガス容器、110:サイホン管、111:液化ガス用高圧ガス容器バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5