IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーシーエル ビジネス エルティーディーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】バルデー・ビードル症候群の遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20250131BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20250131BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250131BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20250131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/864 100Z
A61P27/02
A61K48/00
A61K38/17
A61P43/00 105
C12N15/12 ZNA
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022562945
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 GB2021050932
(87)【国際公開番号】W WO2021209772
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】2005641.2
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521047960
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】UCL Business Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ビールズ フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス ビクトル
(72)【発明者】
【氏名】スミス サンダー
(72)【発明者】
【氏名】アリ ロビン
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス フレイタス マルチンス モニカ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/203092(WO,A1)
【文献】特表2018-529336(JP,A)
【文献】国際公開第2012/099940(WO,A2)
【文献】特表2019-518458(JP,A)
【文献】KHABOU, H. et al.,Insight into the mechanisms of enhanced retinal transduction by the engineered AAV2 capsid variant-7m8,Biotechnology and Bioengineering,2016年,Vol. 113, No. 12,P. 2712-2724
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61P
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性の処置に使用するための、ベクターを含む薬学的組成物であって、
該薬学的組成物が、患者の眼への直接投与のためのものであり、
該ベクターが、BBS1遺伝子に機能的に連結されたプロモーターを含み、
該プロモーターが、CAGプロモーター、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、およびサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターから選択され、かつ
該ベクターが、AAV9ベクター、AAV2/8ベクター、およびAAV2/7m8ベクターから選択され
該BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする
前記薬学的組成物。
【請求項2】
プロモーターがCAGプロモーターである、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
CAGプロモーターが、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4から選択される配列を有する、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターである、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
プロモーターがヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターである、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターがSEQ ID NO:7の配列を有する、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターである、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項8】
サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターが、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6から選択される配列を有する、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ベクターがAAV9ベクターである、請求項1~8のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項10】
ベクターがAAV2/8ベクターである、請求項1~8のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項11】
ベクターがAAV2/7m8ベクターである、請求項1~8のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項12】
BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、請求項1~11のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項13】
BBS1遺伝子が、野生型ヒトBBS1タンパク質をコードする、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し、かつ機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、請求項1~13のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有する、請求項14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:8または9のヌクレオチド配列を有する、請求項1~14のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項17】
(1)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであるか;
(2)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであるか;または
(3)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターである、
請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項18】
(1)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであるか;
(2)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであるか;または
(3)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターである、
請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項19】
(1)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがCAGプロモーターであるか;
(2)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがCAGプロモーターであるか;または
(3)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがCAGプロモーターである、
請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項20】
(1)ベクターがAAV9ベクターであり、プロモーターがCAGプロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(2)ベクターがAAV2/8ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(3)ベクターがAAV2/8ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(4)ベクターがAAV2/8ベクターであり、プロモーターがCAGプロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(5)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(6)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(7)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがCAGプロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(8)ベクターがAAV9ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;または
(9)ベクターがAAV9ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、
請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項21】
(1)ベクターがAAV2/8ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;または
(2)ベクターがAAV9ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、
請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項22】
(1)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(2)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;または
(3)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがCAGプロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、
請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項23】
ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項24】
1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項25】
網膜下または硝子体内への投与のためのものである、請求項1~24のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項26】
網膜下注射による投与のためのものである、請求項1~25のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項27】
硝子体内注射による投与のためのものである、請求項1~25のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の領域
本発明は、バルデー・ビードル症候群の処置のための遺伝子治療ベクターに関する。具体的には、バルデー・ビードル症候群に関連する網膜変性の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
バルデー・ビードル症候群(BBS)は、常染色体劣性遺伝障害であり、早期発症失明、重度肥満、複合内分泌機能障害、認知障害、および腎不全と関連している。遺伝性バルデー・ビードル症候群を抱えて生まれた患者は、一連の衰弱性の医学的問題を経験し、そのうちの一部は致死性である。影響を受けた子供は、眼底(網膜)にある光感受性細胞の不全のため、最終的に失明するが、それは、一般的には、生後10年以内に始まる。生後1年以内に、体重が異常に増加し、それは、放置された場合、生命を脅かす肥満、糖尿病、および高血圧に進行する。多くの患者は、人生のいずれかの時点で(透析処置および/または腎臓移植を必要とし得る)腎不全も発症し、大部分が、何らかの形態の学習障害を有する。これらの問題は、総合的に、成人患者の自立生活能力に影響を与え、大部分が非雇用となる。早期診断された時でさえ、防止不可能な合併症、例えば、網膜変性および食事制限に不応性の肥満が、症状に基づく処置によって管理されるのみであろう。
【0003】
現在までに、22の遺伝子が、BBSの原因となることが見出されている。これらの遺伝子産物の多くは、マルチサブユニット複合体において相互作用する。例えば、多数のこれらのタンパク質は、BBSomeと呼ばれる複合体を形成する。BBSomeは、一次線毛へのタンパク質輸送を媒介すると考えられている。BBS患者において最も多く変異している遺伝子は、BBS1である。BBS1遺伝子変異は、BBSを有する患者の42%に存在する。BBS1遺伝子の30を超える変異が、BBSを有する人々において同定されている。ヒトBBS1遺伝子は、11番染色体長(q)腕13位に位置する。BBS1遺伝子の変異は、線毛の正常な形成および機能に影響を与える可能性が高い。これらの細胞構造の欠陥は、発達途中の重要な化学的シグナル伝達経路を妨害し、感覚認知の異常をもたらす。ヒトBBS1遺伝子は、17のエキソンを含有し、およそ23kbに及ぶ。大部分のBBS1遺伝子変異が、ミスセンス変異または終止変異であり、最も多い変異は、タンパク質の390位のアミノ酸メチオニンのアミノ酸アルギニンへの置換(Met390ArgまたはM390R)である。M390R変異は、全てのBBS1変異のうちのおよそ80%を占める。
【0004】
BBSの網膜変性は、急速進行性であり、視覚を破壊し、一般的には、20歳までに法的盲を引き起こす。BBSは、極めて幼い子供において夜盲および眼振としても現れ得る。
【0005】
現在までに、マウスモデルにおける眼の網膜症の処置が、遺伝子治療ベクターの網膜下注射を使用して試みられてきた。ニワトリβアクチンプロモーターの調節下にあるマウスBbs1遺伝子を送達するため、AAV2/5ベクターが使用される、そのようなアプローチは、Seo et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.54(9):6118-32(2013)(非特許文献1)に記載されている。しかしながら、この研究は、BBS1タンパク質の過剰発現がマウスの網膜に対して毒性であることを示した。これは、過剰なタンパク質が、正常なタンパク質複合体に取り込まれ得ず、細胞内に遊離し、他のタンパク質と相互作用し、正常な機能または正常な輸送を妨げるためであり得ることを、著者らは示した。1つのタンパク質成分の過剰は、正常なBBSomeの組み立てを妨害し得る。従って、この研究は、マウスにおける野生型(WT)BBS1タンパク質の発現が、必ずしも正常な機能を回復させないことを示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Seo et al.,Invest Ophthalmol Vis Sci.54(9):6118-32(2013)
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の局面において、バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性を処置するためのベクターであって、ベクターが、BBS1遺伝子に機能的に連結されたプロモーターを含み、プロモーターが、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーター、およびCAGプロモーターから選択され、ベクターが、AAV2/8ベクター、AAV2/7m8ベクター、およびAAV9ベクターから選択される、ベクターが、提供される。
【0008】
ベクターは、バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性を処置するためのものである。具体的には、BBSは、BBS1遺伝子の変異に起因する。従って、ベクターの結果としてのBBS1遺伝子の発現は、BBSの処置を提供する。
【0009】
ベクターはBBS1遺伝子を含む。BBS1遺伝子は、機能性BBS1タンパク質をコードする。BBS1遺伝子は、好ましくは、ヒトタンパク質、例えば、野生型ヒトタンパク質をコードする。BBSを有する患者において、BBS1タンパク質が完全に機能性ではないのは、BBS1タンパク質の変異のためである。この変異型BBS1タンパク質は、BBSおよび関連する網膜変性の発症の原因となる。
【0010】
BBS1遺伝子によってコードされる機能性BBS1タンパク質は、好ましくは、野生型タンパク質に見出されない付加的なアミノ酸を含有しない。付加的なアミノ酸は、タンパク質の正常な機能に干渉する可能性がある。例えば、機能性タンパク質は、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)もしくはmCherry、またはタグ、例えば、FLAGタグもしくはポリヒスチジンタグを含まないことが好ましい。
【0011】
特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも72%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも74%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。他の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも76%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも78%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも82%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも84%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも86%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも88%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。他の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも92%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも94%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも96%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも97%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも98%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有する。
【0012】
前記の態様において、BBS1遺伝子のヌクレオチド配列は、タンパク質の発現を最大化するため、コドン最適化されていてよい。コドン最適化においては、機能性であり続けるよう、コードされたタンパク質のアミノ酸配列は、同じままである。修飾されるのは、ヌクレオチド配列のみである。SEQ ID NO:8および9は、BBS1をコードする、コドン最適化されたヌクレオチド配列である。これらの配列は、遺伝子発現の予想外に大きい増加を与えることが見出された。
【0013】
特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも72%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも74%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。他の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも76%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも78%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも82%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも84%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも86%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも88%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。他の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも92%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも94%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも96%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも97%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも98%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有する。
【0014】
特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも72%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも74%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。他の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも76%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも78%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも82%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも84%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも86%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも88%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。他の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも92%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも94%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。ある特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも96%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも97%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。多数の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも98%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ機能性BBS1タンパク質をコードする。特定の態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有する。
【0015】
様々な態様において、BBS1遺伝子は、SEQ ID NO:2のタンパク質配列を有するか、またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質配列を有する機能性BBS1タンパク質をコードする。いくつかの態様において、機能性BBS1タンパク質は、SEQ ID NO:2のタンパク質配列を有するか、またはそれと少なくとも85%の配列同一性を有するタンパク質配列を有する。他の態様において、機能性BBS1タンパク質は、SEQ ID NO:2のタンパク質配列を有するか、またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質配列を有する。多数の態様において、機能性BBS1タンパク質は、SEQ ID NO:2のタンパク質配列を有するか、またはそれと少なくとも95%の配列同一性を有するタンパク質配列を有する。特定の態様において、機能性BBS1タンパク質は、SEQ ID NO:2のタンパク質配列を有する。
【0016】
前記の説明において、「同一性」という用語は、2つの配列の類似性をさすために使用される。本発明の目的のため、2つの配列の同一性パーセントを決定するため、配列が、最適な比較のために整列化され(例えば、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適な整列化のため、第1の配列の配列にギャップが導入され得る)ことが、本明細書において定義される。次いで、各位置にあるヌクレオチド/アミノ酸残基が比較される。第1の配列のある位置が、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチド残基によって占有されている時、それらの分子は、その位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、それらの配列が共有している同一の位置の数の関数である(即ち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数(即ち、重複する位置)×100)。一般に、2つの配列は同じ長さである。配列比較は、典型的には、比較される2つの配列の全長で実施される。
【0017】
いくつかの異なるコンピュータプログラムが、2つの配列の間の同一性を決定するために利用可能であるという事実は、当業者に公知であろう。例えば、2つの配列の間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい態様において、2つの核酸配列の間の同一性パーセントは、グローバルDNAアラインメント;パラメータ:両方の鎖;スコア行列:直鎖(ミスマッチ 2、OpenGap 4、ExtGap 1)を使用して、配列アラインメントソフトウェアClone Manager 9(Sci-Ed Software - www.scied.com)を使用して決定される。
【0018】
あるいは、2つのアミノ酸配列または核酸配列の間の同一性パーセントは、Blosum 62行列またはPAM250行列のいずれか、16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイト、および1、2、3、4、5、または6のレングスウェイトを使用して、(http://www.accelrys.com/products/gcg/において入手可能な)Accelrys GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれたNeedleman and Wunsch(1970)のアルゴリズムを使用して決定され得る。2つのアミノ酸配列または核酸配列の間の同一性パーセントを査定するためのさらなる方法は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイト(www.blast.ncbi.nlm.nih.gov)において入手可能なBLAST配列比較ツールを使用すること、例えば、デフォルトのパラメータを使用して、ヌクレオチド配列については、BLASTn、またはアミノ酸配列については、BLASTpを使用することであり得る。
【0019】
BBS1遺伝子は、「機能性」タンパク質をコードする。これは、タンパク質が、発現された時に、野生型ヒトタンパク質と同じ機能および活性を有することを意味する。これは、当業者によって容易に決定され得る。BBS1遺伝子によってコードされるタンパク質は、野生型ヒトタンパク質であり得る。BBS1タンパク質の野生型ヒト配列は、当業者に周知である。例えば、それは、National Center for Biotechnology Informationの公にアクセス可能なデータベースに見出され得る。さらに、このタンパク質をコードする(ベクターに含有されるであろう)ヌクレオチド配列は、例えば、特定のヌクレオチドコドンを特定のアミノ酸と相関させる遺伝暗号を使用して、当業者によって容易に見出されるか、または決定され得る。
【0020】
プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーター、およびCAGプロモーターから選択される。これらのプロモーターは、当業者に周知である。これらのプロモーターは、眼の細胞においてBBS1遺伝子を発現させるために使用された時に、有利な結果を提供することが見出されている。
【0021】
これらのプロモーターの配列の例は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、およびSEQ ID NO:7として与えられる。従って、いくつかの態様において、プロモーターは、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、およびSEQ ID NO:7から選択される配列を有する。
【0022】
いくつかの態様において、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターである。好ましくは、それは、任意で、SEQ ID NO:7のヌクレオチド配列を有し得る、ヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターである。例えば、ベクターは、SEQ ID NO:16の配列を含み得る。
【0023】
いくつかの態様において、プロモーターは、任意で、SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:4のヌクレオチド配列を有し得る、CAGプロモーターである。例えば、ベクターは、SEQ ID NO:13、14、および15のうちの1つの配列を含み得る。
【0024】
様々な態様において、プロモーターは、任意で、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:6のヌクレオチド配列を有し得る、CMVプロモーターである。例えば、ベクターは、SEQ ID NO:10、11、および12のうちの1つの配列を含み得る。
【0025】
前記のベクターは、バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性を処置するためのものである。これを達成するためには、眼の細胞、例えば、網膜光受容体および/または網膜色素上皮細胞を、ベクターによって形質導入することができる。具体的には、網膜下送達される時、ベクターは、網膜光受容体(外顆粒層、内節および外節)ならびに網膜色素上皮細胞を形質導入することができる。あるいは、ベクターは、硝子体内送達され得る。これは、網膜内層を標的とするために使用され得る。
【0026】
ベクターは、AAV2/8ベクター、AAV2/7m8ベクター、およびAAV9ベクターから選択される。AAV2/8ベクターは、AAV8由来のカプシドタンパク質によってシュードタイピングされたAAV2ベクターである。そのようなベクターは、WO 2005/033321に記載されている。AAV2/7m8ベクターは、AAV血清型7m8由来のカプシドタンパク質によってシュードタイピングされたAAV2ベクターである。AAV 7m8ベクターは、Biotechnol Bioeng.2016 Dec;113(12):2712-2724.doi:10.1002/bit.26031.Mol Ther.2018 May 2;26(5):1343-1353.doi:10.1016/j.ymthe.2018.02.027.J Struct Biol.2020 Feb 1;209(2):107433.doi:10.1016/j.jsb.2019.107433に記載されている。いくつかの態様において、ベクターは、AAV2/8ベクターである。他の態様において、ベクターは、AAV2/7m8ベクターである。AAV2/7m8ベクターは、硝子体内投与に特に適している。様々な態様において、ベクターは、AAV9ベクターである。
【0027】
いくつかの態様において、ベクターは、AAV2/8ベクターであり、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0028】
様々な態様において、ベクターは、AAV2/8ベクターであり、プロモーターは、サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0029】
ある特定の態様において、ベクターは、AAV2/8ベクターであり、プロモーターは、CAGプロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0030】
いくつかの態様において、ベクターは、AAV2/7m8ベクターであり、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0031】
様々な態様において、ベクターは、AAV2/7m8ベクターであり、プロモーターは、サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0032】
ある特定の態様において、ベクターは、AAV2/7m8ベクターであり、プロモーターは、CAGプロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0033】
特定の態様において、ベクターは、AAV9ベクターであり、プロモーターは、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0034】
多数の態様において、ベクターは、AAV9ベクターであり、プロモーターは、サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0035】
いくつかの態様において、ベクターは、AAV9ベクターであり、プロモーターは、CAGプロモーターであり、BBS1遺伝子は、機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする。
【0036】
アデノ随伴ウイルスベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであり得る。AAVは、Kenneth I.Berns,"Parvoviridae:The Virus and Their Replication,"Chapter 69 in Fields Virology(3d Ed.1996)に記載されているパルボウイルス科のメンバーである。
【0037】
公知のAAV血清型のゲノム組織は、全て、極めて類似している。AAVのゲノムは、約5,000ヌクレオチド(nt)長未満の直鎖状の一本鎖DNA分子である。末端逆位配列(ITR)が、非構造複製(Rep)タンパク質および構造(VP)タンパク質をコードする独特のヌクレオチド配列に隣接している。VPタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)は、カプシドを形成する。末端145ntは自己相補的であり、T字型ヘアピンを形成するエネルギー的に安定した分子内二重鎖が形成され得るように組織化されている。これらのヘアピン構造は、ウイルスDNA複製の開始点として機能し、細胞DNAポリメラーゼ複合体のためのプライマーとして働く。哺乳動物細胞における野生型(wt)AAV感染の後、(即ち、Rep78タンパク質およびRep52タンパク質をコードする)Rep遺伝子が、それぞれ、P5プロモーターおよびP19プロモーターから発現され、両方のRepタンパク質が、ウイルスゲノムの複製において機能を有する。Rep ORFにおけるスプライシング事象は、実際には、4つのRepタンパク質(即ち、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40)の発現をもたらす。しかしながら、哺乳動物細胞において、Rep78タンパク質およびRep52タンパク質をコードする、スプライシングを受けていないmRNAが、AAVベクターの産生のために十分であることが示されている。昆虫細胞においても、Rep78タンパク質およびRep52タンパク質が、AAVベクターの産生のために十分である。
【0038】
遺伝子治療ベクターとして使用するために適当なAAVにおいて、ベクターゲノムは、典型的には、標的細胞への送達のためにパッケージングされる核酸(例えば、BBS1遺伝子)を含む。この特定の態様によると、異種ヌクレオチド配列は、ベクターゲノムの両端にあるウイルスITRの間に位置する。さらなる好ましい態様において、パルボウイルス(例えば、AAV)cap遺伝子およびパルボウイルス(例えば、AAV)rep遺伝子は、鋳型ゲノムから(従って、それから産生されるビリオンDNAから)欠失させられる。この配置は、パルボウイルスカプシドが保持し得る核酸配列のサイズを最大化する。
【0039】
この特定の態様によると、核酸は、基質の両端にあるウイルスITRの間に位置している。パルボウイルスゲノムは、1つのITRのみで機能することが可能である。従って、パルボウイルスベースの遺伝子治療ベクターにおいて、ベクターゲノムには、少なくとも1つのITRが隣接しているが、より典型的には、2つのAAV ITR(一般に、ベクターゲノムの両側に1つずつ、即ち、5'末端に1つ、3'末端に1つ)が隣接している。ベクターゲノム内の核酸と、ITRのうちの1つまたは複数との間に、介在配列が存在してもよい。
【0040】
一般に、BBS1遺伝子は、2つの通常のITRの間に位置するか、または2つのD領域によって改変されたITRのいずれかの側に位置するよう、パルボウイルスゲノムに組み込まれる。
【0041】
1つの局面において、本発明は、前記のベクターと1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。1つまたは複数の賦形剤には、担体、希釈剤、および/またはその他の薬用薬剤、薬学的薬剤、もしくは佐剤等が含まれる。
【0042】
本発明は、治療的に有効な量の前記のベクターをBBSに罹患している患者に投与する工程を含む、バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性を処置する方法も提供する。好ましくは、患者はヒトである。患者は、BBS1タンパク質が完全に機能性ではなくなる変異を有する。これは、両アレル変異であり得る。
【0043】
前記の方法において、網膜変性が「処置」される時、それは、BBSに関連する網膜変性が遅くなり、従って、患者の視力の悪化の速度が処置前ほど速くなくなることを意味する。いくつかの態様において、ベクターは、患者の視力のさらなる悪化がなくなるよう、さらなる網膜変性を止めることができる。好ましくは、患者の視力は、ベクターによる処置の後に改善されるが、これは、全ての症例において起こるわけではない。
【0044】
「治療的に有効な量」とは、所望の治療結果、例えば、(BBSに関連する病理を寛解させるのに十分なレベルをもたらすための)対象における機能性タンパク質のレベルの上昇を達成するため、必要な投薬量および期間で、有効な量をさす。
【0045】
処置の方法は、対象における機能性タンパク質のレベルの増加を引き起こす。いくつかの態様において、処置の方法は、正常レベル(即ち、正常な健常対象において見出されるレベル)付近への機能性タンパク質のレベルの増加を引き起こす。1つの態様において、処置の方法は、最大で正常レベルへの機能性タンパク質のレベルの増加を引き起こす。
【0046】
ベクターは、眼の細胞におけるBBS1遺伝子の発現を可能にするため、任意の適当な方式で投与され得る。特定の態様において、ベクターの単回投与が、BBSに関連する病理を寛解させるための遺伝子発現を提供するため、使用され得る。ベクターは、眼に直接投与されるべきである。例えば、これは、例えば、網膜下注射または硝子体内注射による網膜下投与または硝子体内投与であり得る。網膜下投与/注射において、ベクターは、網膜色素上皮(RPE)細胞と光受容体との間の網膜下腔に送達される。網膜下腔において、投与された材料は、光受容体の原形質膜、ならびにRPE細胞および網膜下ブレブと直接接触する。このため、それは、BBSに関連する網膜変性を有する患者における薬物送達のための優れた部位である。
【0047】
ベクターは、単一の時点で投与され得る。例えば、単回注射が与えられてよい。いくつかの態様において、ベクターの1回または複数回のさらなる投与が与えられてもよい。
【0048】
さらに、本発明は、治療において、例えば、バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性の処置において、使用するための、前記のベクターを提供する。
【0049】
さらに、本発明は、バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性を処置するための医薬の製造における、前記のベクターの使用を提供する。
【0050】
本明細書において引用された全ての特許および参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
[本発明1001]
バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性を処置するためのベクターであって、該ベクターが、BBS1遺伝子に機能的に連結されたプロモーターを含み、該プロモーターが、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター、サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーター、およびCAGプロモーターから選択され、かつ該ベクターが、AAV2/8ベクター、AAV2/7m8ベクター、およびAAV9ベクターから選択される、前記ベクター。
[本発明1002]
プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターである、本発明1001のベクター。
[本発明1003]
プロモーターがヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターである、本発明1002のベクター。
[本発明1004]
ロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターがSEQ ID NO:7の配列を有する、本発明1003のベクター。
[本発明1005]
プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターである、本発明1001のベクター。
[本発明1006]
サイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターが、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6から選択される配列を有する、本発明1005のベクター。
[本発明1007]
プロモーターがCAGプロモーターである、本発明1001のベクター。
[本発明1008]
CAGプロモーターが、SEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4から選択される配列を有する、本発明1007のベクター。
[本発明1009]
AAV2/8ベクターである、前記本発明のいずれかのベクター。
[本発明1010]
AAV2/7m8ベクターである、前記本発明のいずれかのベクター。
[本発明1011]
AAV9ベクターである、前記本発明のいずれかのベクター。
[本発明1012]
BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:2のタンパク質配列を有する機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか、またはそれと80%の配列同一性を有する、前記本発明のいずれかのベクター。
[本発明1013]
BBS1遺伝子が、野生型ヒトBBS1タンパク質をコードする、前記本発明のいずれかのベクター。
[本発明1014]
BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有するか、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有し、かつ機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、前記本発明のいずれかのベクター。
[本発明1015]
BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有する、本発明1014のベクター。
[本発明1016]
BBS1遺伝子が、SEQ ID NO:8または9のヌクレオチド配列を有する、本発明1001~1014のいずれかのベクター。
[本発明1017]
(1)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであるか;
(2)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであるか;または
(3)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターである、
本発明1001のベクター。
[本発明1018]
(1)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであるか;
(2)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであるか;または
(3)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターである、
本発明1001のベクター。
[本発明1019]
(1)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがCAGプロモーターであるか;
(2)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:8のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがCAGプロモーターであるか;または
(3)BBS1遺伝子がSEQ ID NO:9のヌクレオチド配列を有し、かつプロモーターがCAGプロモーターである、
本発明1001のベクター。
[本発明1020]
(1)ベクターがAAV2/8ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(2)ベクターがAAV2/8ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(3)ベクターがAAV2/8ベクターであり、プロモーターがCAGプロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(4)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(5)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(6)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがCAGプロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(7)ベクターがAAV9ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(8)ベクターがAAV9ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;または
(9)ベクターがAAV9ベクターであり、プロモーターがCAGプロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、
本発明1001のベクター。
[本発明1021]
(1)ベクターがAAV2/8ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;または
(2)ベクターがAAV9ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、
本発明1001のベクター。
[本発明1022]
(1)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;
(2)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードするか;または
(3)ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがCAGプロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、
本発明1001のベクター。
[本発明1023]
ベクターがAAV2/7m8ベクターであり、プロモーターがサイトメガロウイルス前初期(CMV)プロモーターであり、かつBBS1遺伝子が機能性ヒトBBS1タンパク質をコードする、本発明1001のベクター。
[本発明1024]
本発明1001~1023のいずれかのベクターと1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
[本発明1025]
治療的に有効な量の本発明1001~1023のいずれかのベクターをバルデー・ビードル症候群(BBS)に罹患している患者に投与する工程
を含む、BBSに関連する網膜変性を処置する方法であって、該ベクターが患者の眼に直接投与される、前記方法。
[本発明1026]
ベクターが、網膜下または硝子体内に投与される、本発明1025の方法。
[本発明1027]
ベクターが、網膜下注射によって投与される、本発明1025または1026の方法。
[本発明1028]
ベクターが、硝子体内注射によって投与される、本発明1025または1026の方法。
[本発明1029]
治療において使用するための、本発明1001~1023のいずれかのベクター。
[本発明1030]
バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性の処置において使用するための、本発明1001~1023のいずれかのベクターであって、眼への直接投与のためのものである、前記ベクター。
[本発明1031]
バルデー・ビードル症候群(BBS)に関連する網膜変性を処置するための医薬の製造における、本発明1001~1023のいずれかのベクターの使用であって、該ベクターが眼への直接投与のためのものである、前記使用。
[本発明1032]
ベクターが、網膜下または硝子体内への投与のためのものである、本発明1030または1031の使用。
[本発明1033]
ベクターが、網膜下注射による投与のためのものである、本発明1032の使用。
[本発明1034]
ベクターが、硝子体内注射による投与のためのものである、本発明1032の使用。
【図面の簡単な説明】
【0051】
添付の図面を参照しながら、例示としてのみ、本発明を以下に詳細に説明する。
図1】Bbs1M390R/M390Rマウスにおいて、BBS1変異は光受容体層の変性をもたらす。組織学的分析は、生後6ヶ月における外顆粒層および光受容体数の変性を示す。この変性は、6ヶ月齢における、野生型同腹仔と比較された、Bbs1M390R/M390Rマウスの明順応および暗順応の両方の振幅の低下によっても観察される。
図2A】Bbs1M390R/M390Rマウスにおいて、光受容体のみにおける、AAV2/8.RK.hBBS1によるBBS1の補足は、長期の効率的な治療戦略ではない。AAV2/8.RK.hBBS1ベクターの送達は、反対側の対照眼と比較された時、送達の3ヶ月後に、ERG反応の小さい短期の回復を達成するが、処置の11ヶ月後に見られるように、回復を長期に持続することはできない。青色の点は、AAV2/8.RK.hBBS1を注射された眼の反応を示し、赤色の点は、対照の反対側の眼からの反応を示す。エラーバーは標準偏差(SD)である。
図2B図2Aの説明を参照のこと。
図2C図2Aの説明を参照のこと。
図3A】Bbs1M390R/M390Rマウスにおいて、AAV2/8.CMV.hBBS1の網膜下送達は、網膜変性をレスキューするための効率の可変性をもたらす。本発明者らは、AAV2/8.CMV.hBBS1ベクターを注射された動物のERG反応に、高度の可変性が存在することを見出した。統計分析は、注射の6ヶ月後までの、P7-9およびP30において注射を受けた網膜についての、暗順応および明順応のb波についての、異なる光刺激でのレスキューを示す。青色の点は、AAV2/8.CMV.hBBS1を注射された眼の反応を示し、赤色の点は、対照の反対側の眼からの反応を示す。エラーバーは標準偏差(SD)である。
図3B図3Aの説明を参照のこと。
図3C図3Aの説明を参照のこと。
図4A】AAV2/8.CMV.hBBS1の網膜下送達は、一部の処置された動物において、Bbs1M390R/M390Rの網膜変性を1年間完全に停止させる。P7-9において処置された網膜の半分が、試験された全ての光強度について、注射の11ヶ月後まで、a波およびb波の暗順応反応について、処置の11ヶ月後まで、b波の明順応反応について、完全な網膜変性レスキューを達成する。青色の点は、AAV2/8.RK.hBBS1を注射された眼の反応を示し、赤色の点は、対照の反対側の眼からの反応を示す。エラーバーは標準偏差(SD)である。処置された網膜の組織学的分析は、層内の核の維持を伴う外顆粒層の完全な回復を示す。反対側の対照の未処置の眼は、全ての光受容体および細胞核の完全な喪失を示す。
図4B図4Aの説明を参照のこと。
図5】BBS1の過剰発現は、野生型(WT)またはBbs1M390R/M390Rマウスにおいて毒性ではない。本発明者らは、低用量および高用量のAAV2/8.RK-hBBS1による野生型P30動物の光受容体におけるBBS1トランスジーンの過剰発現を試験し、明順応および暗順応のERG反応を測定した。注射を受けた眼におけるアポトーシスの増加を調査するため、TUNEL染色を実施した。3つの対照および3つの注射を受けた網膜に由来する試験された切片のいずれにおいても、TUNEL染色は見られず、アポトーシスは起こっていないことが示唆された。全網膜タンパク質抽出物を使用してウェスタンブロットを実施した。上パネルは、(矢印によって示される)活性型カスパーゼ3に特異的な抗体によって探索されたブロットを示す。2番目のパネルは、βアクチン負荷対照を示す。注射された力価:A;1×1O11vg/ml、B;8×1011vg/ml、C;4×1012vg/ml。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明の詳細な説明
本発明者らは、BBS1欠損に関連する網膜変性表現型を停止させ、さらに防止するための眼遺伝子治療を開発した。Bbs1M390R/M390Rマウスは、患者に見られる外顆粒層の光受容体変性を主に呈するが、光受容体細胞のみにおけるヒトBBS1の補足は、網膜変性を防止するために必ずしも効率的または十分ではないことを、本発明者らは見出した。次いで、本発明者らは、高度に線毛性であり、光受容体の生存に不可欠である網膜色素上皮(RPE)細胞も標的とするBBS1の送達の治療効果を探求した。光受容体およびRPEの両方におけるBBS1トランスジーンの発現は、光受容体層の変性を完全に防止することができた。異なる処置された個体の間に、処置効果の可変性が認められた。マルチコンプレックス(multi-complex)単位の一部としてのBBS1遺伝子の機能の複雑さが、観察された処置効果の可変性を説明し得る。
【0053】
本発明者らは、Bbs1M390R/M390R動物において、光受容体およびRPEにおけるBBS1の補足が、網膜変性の機能的および細胞的なレスキューをもたらすことを証明した。
【実施例
【0054】
材料および方法
ヒトロドプシンキナーゼ(RK)プロモーターの調節下にあるヒトBBS1 cDNA(SEQ ID NO:1 - NM_024649.4)がAAV2ウイルスプラスミドにクローニングされた構築物を作製した。ウイルス産生のため、AAV2/8ウイルスを産生するための一般的な方法を使用した。4000cm2のHEK293T細胞単層細胞を、RK-BBS1-AAV-ITR含有プラスミド、AAV2 Rep-Capプラスミド、およびヘルパープラスミドによってトランスフェクトした。細胞傷害効果を示した時、細胞を採集し、ウイルスを放出させるため、溶解した。アデノ随伴ウイルスを、Sephacryl S300カラムによって精製し、続いて、POROS 50 HQカラムを使用した陰イオン交換クロマトグラフィを行った。AAV特異的プローブおよび標準としてのSV-40プローブを使用した定量的リアルタイムPCRによって、最終生成物を滴定した。
【0055】
ウイルスの投与および力価
Bbs1M390R/+雄とBbs1M390R/+雌との間の自然交配を準備した。仔マウスをBbs1遺伝子型について遺伝子型決定した。P7-9およびP30において、アデノ随伴ウイルスベクターを、1×1012vg/ml(ベクターゲノム/ml)で、片側網膜下注射を介して与えた。発明者らは、Bbs1M390R/M390R動物、野生型という2つの異なる動物群に注射を行った。各群について、反対側の眼を対照として用いた。合計n=10匹/群を使用した。処置を受けた動物は、注射の12ヶ月後に身体的または行動的な苦痛を示さない。
【0056】
結果
図1:BBS1変異は、Bbs1M390R/M390Rマウスにおける光受容体層の変性をもたらす。組織学的分析は、生後6ヶ月における外顆粒層および光受容体数の変性を示す。この変性は、6ヶ月齢における、野生型同腹仔と比較された、Bbs1M390R/M390Rマウスの明順応および暗順応の両方の振幅の低下によっても観察される。
【0057】
図2:Bbs1M390R/M390Rマウスにおいて、光受容体のみにおける、AAV2/8.RK.hBBS1によるBBS1の補足は、長期の効率的な治療戦略ではない。AAV2/8.RK.hBBS1ベクターの送達は、反対側の対照眼と比較された時、送達の3ヶ月後に、ERG反応の小さい短期の回復を達成するが、処置の11ヶ月後に見られるように、回復を長期に持続することはできない。青色の点は、AAV2/8.RK.hBBS1を注射された眼の反応を示し、赤色の点は、対照の反対側の眼からの反応を示す。エラーバーは標準偏差(SD)である。
【0058】
図3:AAV2/8.CMV.hBBS1の網膜下送達は、Bbs1M390R/M390Rマウスにおける網膜変性をレスキューするための効率の可変性をもたらす。本発明者らは、AAV2/8.CMV.hBBS1ベクターを注射された動物のERG反応に、高度の可変性が存在することを見出した。統計分析は、注射の6ヶ月後までの、P7-9およびP30において注射を受けた網膜についての、暗順応および明順応のb波についての、異なる光刺激でのレスキューを示す。青色の点は、AAV2/8.CMV.hBBS1を注射された眼の反応を示し、赤色の点は、対照の反対側の眼からの反応を示す。エラーバーは標準偏差(SD)である。
【0059】
図4:AAV2/8.CMV.hBBS1の網膜下送達は、一部の処置された動物において、Bbs1M390R/M390Rの網膜変性を1年間完全に停止させる。P7-9において処置された網膜の半分が、試験された全ての光強度について、注射の11ヶ月後まで、a波およびb波の暗順応反応について、処置の11ヶ月後まで、b波の明順応反応について、完全な網膜変性レスキューを達成する。青色の点は、AAV2/8.RK.hBBS1を注射された眼の反応を示し、赤色の点は、対照の反対側の眼からの反応を示す。エラーバーは標準偏差(SD)である。処置された網膜の組織学的分析は、層内の核の維持を伴う外顆粒層の完全な回復を示す。反対側の対照の未処置の眼は、全ての光受容体および細胞核の完全な喪失を示す。
【0060】
図5:BBS1の過剰発現は、野生型(WT)またはBbs1M390R/M390Rマウスにおいて毒性ではない。本発明者らは、低用量および高用量のAAV2/8.RK-hBBS1による野生型P30動物の光受容体におけるBBS1トランスジーンの過剰発現を試験し、明順応および暗順応のERG反応を測定した。注射を受けた眼におけるアポトーシスの増加を調査するため、TUNEL染色を実施した。3つの対照および3つの注射を受けた網膜に由来する試験された切片のいずれにおいても、TUNEL染色は見られず、アポトーシスは起こっていないことが示唆された。全網膜タンパク質抽出物を使用してウェスタンブロットを実施した。上パネルは、(矢印によって示される)活性型カスパーゼ3に特異的な抗体によって探索されたブロットを示す。2番目のパネルは、βアクチン負荷対照を示す。注射された力価:A;1×1O11vg/ml、B;8×1011vg/ml、C;4×1012vg/ml。
【0061】
これらの結果は、このベクターが、BBS1タンパク質の過剰発現がマウスの網膜に対して毒性であることが示された、Seo et al.(Invest Ophthalmol Vis Sci.54(9):6118-32(2013))において使用されたベクターと比較して、有利な特性を有することを証明する。
【0062】
配列
SEQ ID NO:1 - ヒトバルデー・ビードル症候群1(BBS1)のヌクレオチド配列(WT)、cDNA(NM_024649.4)
SEQ ID NO:2 - ヒトBBS1完全タンパク質配列(Q8NFJ9)
SEQ ID NO:3 - CAGプロモーター配列
SEQ ID NO:4 - 代替CAGプロモーター配列
SEQ ID NO:5 - サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター配列
SEQ ID NO:6 - 代替CMVプロモーター配列
SEQ ID NO:7 - ロドプシンキナーゼプロモーター配列
SEQ ID NO:8 - (COSEQ1-BBS1と呼ばれる)ヒトBBS1タンパク質をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:9 - (COSEQ2-BBS1と呼ばれる)ヒトBBS1タンパク質をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列
SEQ ID NO:10 - CMVプロモーター(nt 52-256)および野生型BBS1ヌクレオチド配列(nt 324-2108)を含む構築物
SEQ ID NO:11 - CMVプロモーター(nt 367-570)およびCOSEQ1-BBS1ヌクレオチド配列(nt 630-2411)を含む構築物
SEQ ID NO:12 - CMVプロモーター(nt 367-570)およびCOSEQ2-BBS1ヌクレオチド配列(nt 630-2411)を含む構築物
SEQ ID NO:13 - CAGプロモーター(nt 35-562)および野生型BBS1ヌクレオチド配列(nt 712-2493)を含む構築物
SEQ ID NO:14 - CAGプロモーター(nt 35-562)およびCOSEQ1-BBS1ヌクレオチド配列(nt 716-2497)を含む構築物
SEQ ID NO:15 - CAGプロモーター(nt 35-562)およびCOSEQ2-BBS1ヌクレオチド配列(nt 716-2497)を含む構築物
SEQ ID NO:16 - RKプロモーター(nt 16-255)および野生型ヒトBBS1ヌクレオチド配列(nt 546-2330)を含む構築物
SEQ ID NO:17 - RKプロモーター(nt 16-255)および野生型ヒトBBS1ヌクレオチド配列(nt 546-2330)を含むAAV2/8構築物
SEQ ID NO:18 - CMVプロモーター(nt 52-256)および野生型ヒトBBS1ヌクレオチド配列(nt 324-2108)を含むAAV2/8構築物
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
【配列表】
0007627961000001.app