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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】鉄基結晶合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20250131BHJP
   C22C 38/10 20060101ALI20250131BHJP
   C22C 19/07 20060101ALI20250131BHJP
   B22D 11/06 20060101ALI20250131BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20250131BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20250131BHJP
   C22C 38/14 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
C22C38/00 303V
C22C38/10
C22C19/07 C
B22D11/06 360B
B22D11/06 380Z
H01F1/147
H01F27/25
C22C38/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024085418
(22)【出願日】2024-05-27
【審査請求日】2024-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523324292
【氏名又は名称】ネクストコアテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】金清 裕和
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-231462(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114974784(CN,A)
【文献】特許第7429078(JP,B1)
【文献】特開2004-218037(JP,A)
【文献】特表2022-523627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式(Fe1-mCom100-x-ySix(B1-nCn)yで表現され、組成比率x、y、mおよびnがそれぞれ、
1.0≦x≦3.0 原子%、
11.0≦y≦14.0 原子%、
0.05≦m≦0.5、
0.0≦n≦0.3
を満足し且つCuを含まない組成の合金溶湯を用意する工程と、
純銅、銅合金、MoおよびWのいずれかを主原料とする冷却ロール上で前記合金溶湯を急冷凝固する急冷凝固工程とを備え、
α-Fe相からなる金属組織を有し、非晶質相の比率が20体積%以下であり、飽和磁束密度が1.7T以上2.0T以下であり、磁束密度1.5Tおよび周波数1kHzでの鉄損が50W/kg以下であり、厚みが18μm以上40μm未満である鉄基軟磁性合金を製造する方法であって、
前記急冷凝固工程は、前記冷却ロールをロール表面速度15m/sec以上50m/sec以下で回転させながら、前記冷却ロールの表面に前記合金溶湯をノズルから噴射する工程を備えており、
前記ノズルは、シングルスリットノズルであり、スリットの長手方向が前記冷却ロールの回転方向と直交するように配置され、
前記ノズルの材質は、石英(SiO2)、窒化硼素(BN)、炭化珪素(SiC)およびアルミナ(Al2O3)のいずれかを主成分とし、
前記ノズルの開口幅は、0.2mm以上0.8mm以下であり、
前記冷却ロールの表面粗度は、算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以上0.6μm以下であり、
前記ノズルから前記冷却ロールまでの距離は、0.1mm以上2.0mm以下であり、
前記ノズルから5kPa以上50kPa以下の圧力で前記合金溶湯を出湯する鉄基軟磁性合金の製造方法。
【請求項2】
前記鉄基軟磁性合金の磁束密度1.5Tおよび周波数20kHzでの鉄損が1500W/kg以下である請求項1に記載の鉄基軟磁性合金の製造方法
【請求項3】
前記鉄基軟磁性合金のα-Fe相の平均結晶粒径が5nm以上100nm未満である請求項1に記載の鉄基軟磁性合金の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄基結晶合金の製造方法に関し、より詳しくは、各種ブラシレス直流モータへ適用可能な鉄基結晶合金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品として使用されるインダクタやリアクトルといったパワーエレクトロニクス分野など向けの各種受動素子やトランス向けに、鉄損が低く飽和磁束密度が高い材料が市場から求められており、透磁率が高く、鉄損が低い軟磁性材料として鉄基アモルファス材料や、同じく鉄基のナノ結晶材料といった鉄(Fe)、珪素(Si)、硼素(B)を主原料とする溶湯急冷凝固により作製される厚み17μmから25μm程度のFe-Si-B系急冷凝固合金薄帯が、従来の珪素鋼板(Fe-Si)に代わる低鉄損軟磁性材料として、大型トランスやインダクタ向けへの需要が増えている。
【0003】
加えて上記Fe-Si-B系急冷凝固合金は、珪素鋼板に比べて低鉄損の特長を活かし、ブラシレス直流(BLDC)モータのステータコアに適用することで、ステータコアに発生する鉄損の低減によるブラシレス直流(BLDC)モータの高効率化が検討されている。特に1万rpmあるいは2万rpmを超えるような高速回転型のモータでは、軟磁性材料の動作域が1kHz以上の高周波帯域となるため、ステータコアに発生する鉄損が抑えられ従来にない高効率が得られることが確認されている。さらに、全世界の60%程度の電力がモータにて消費されている現状において、モータの高効率化はカーボンフリーを実現し得る直接的な手段として、電気自動車や、エアコンをはじめとする白物家電、およびFA向けモータへの展開が期待されている。
【0004】
しかしながら、上記のFe-Si-B系アモルファス合金は、飽和磁束密度が1.6T以下と既存のモータコア材である電磁鋼板の1.8Tにおよばないことから、1万rpm以上の高速回転モータでは必要なモータ出力を確保できるが、FAや空モビリティーといった低速回転域から高トルクが必要なモータには適用が難しい。このため、電磁鋼板並みの1.8T程度の高飽和磁束密度を確保しながら、Fe-Si-B系アモルファス合金並みの低鉄損性能との両立が可能な鉄基軟磁性材料が求められている。
【0005】
上記の市場要求から、最大でもBsが1.6T程度のFe-Si-B系アモルファス合金や、1.4T程度の鉄基ナノ結晶材料(例えば、FINEMETR)では、Bs:1.8Tの電磁鋼板を代替することが難しく、これまでFe-Si-B系急冷凝固合金を適用したBLDCモータをFAや空モビリティー向けモータとして市場に投入された例はない。
【0006】
上記のFAや空モビリティー向けのBLDCモータは、これまで電磁鋼板のコア材と優れた永久磁石特性を発現する異方性希土類鉄硼素系焼結磁石を組み合わせ、マグネットトルクの活用による高効率が進められてきたが、鉄損が大きい電磁鋼板では、投入電力がステータコアに発生する鉄損で失われ、FAや空モビリティー向けなどのBLDCモータに要求されるモータ効率を得られず、省エネ化に貢献可能な高出力・高効率BLDCモータの市場要求は種々の用途で極めて高い。
【0007】
また、Fe-Si-B系アモルファス合金は、電磁鋼板に対して鉄損を1/10以下まで大幅に低減可能であり、加えて透磁率も高いことから、電磁鋼板よりBsが低いと言う課題を克服できれば、具体的にはBs≧1.7Tを実現することでFAや空モビリティー向けのBLDCモータに必要なモータ出力を確保できる。このため、電磁鋼板からの代替が可能なBs≧1.7Tが得られる鉄基アモルファス合金並みの低鉄損を実現したコア材料へのモータ市場からの期待は世界的に極めて高い。
【0008】
なお、BLDCモータのロータコアおよびステータコアへ適用されている電磁鋼板は、積層コアとして用いられているが、既存のFe-Si-B系アモルファス合金は、合金の厚みが20μm程度と薄いことが原因で打抜き加工が困難であるのに加えて、合金厚みが薄いことに起因して、積層コア化した際の占積率が電磁鋼板の92%以上に対して90%未満の低い占積率に留まることから、電磁鋼板並みのモータトルクを得ることが難しい。
【0009】
非特許文献1ではFe-Si-B系のアモルファス合金は、従来、104~106 K/secといった非常に速い急冷凝固速度で厚み17μmから22μm程度の急冷凝固合金薄帯でなければアモルファス組織を得られなかったが、リン(P)を添加することで急冷凝固速度を低下させ厚み50μm以上の鉄基アモルファス合金薄帯が得られることが開示されているが、P添加は飽和磁束密度Bsの低下を招来するだけでなく、P添加系合金は合金溶解時にP成分が揮発し炉内汚染が著しいことから未だ産業分野での応用例は少ない。
【0010】
非特許文献2ではFe-Si-B‐P‐Cu系の鉄基ナノ結晶合金「NANOMETR」は、高い飽和磁束密度Bs:1.85Tと鉄基アモルファス合金並みの低鉄損性能を有する軟磁性材料であることが開示されているが、当該鉄基ナノ結晶合金は、非常に脆く打抜きプレス加工法による積層コア化が困難であることから、量産レベルでBLDCモータのロータコア及びステータコアへ適用が難しく、試作レベルを除き、モータ向けコア材としてとして実用化された例はこれまでない。
【0011】
特許文献1、特許文献2および特許文献3は50μm以上といった厚みの急冷合金薄帯の作製方法が記載されているが、何れもEV駆動用BLDCモータ向け積層コアへの適用を想定したBs≧1.7Tを有するFe-Si-B系のアモルファス合金は実現されておらず、珪素鋼板に代わる軟磁性材料として鉄基のアモルファス合金が産業利用されている例は未だない。
【0012】
特許文献4では、移動する冷却基板上(回転する冷却ロール)に、その移動方向に対しほぼ直角に配列され、かつそれぞれが前記移動方向に対して10~80°の角度をもつ複数の開口部(多孔ノズル)から溶融金属を噴出させ、急冷凝固させることを特徴とする金属薄帯の製造方法を開示しているが、特許文献4は、幅の広い急冷薄帯を作製する際、幅方向における金属薄帯の厚みばらつきの低減を目的になされた発明である。また、10~80°の角度を持つ複数の細長い平行四辺形、台形または楕円形状の開口部を加工することは難しく、ノズル加工費が高騰するという問題もあり工業的に量産レベルでの利用は難しい。
【0013】
特許文献5では、厚み40μm以上のFe-Si-B系アモルファス合金の製造方法を開示しているがBs≧1.7Tを確保でき得る合金組成を開示しておらず、EV駆動用BLDCモータ向け軟磁性材料の提供を発明の目的としていない。
【0014】
特許文献6では、飽和磁束密度Bs≧1.7T、保磁力Hc≦200A/m である厚みが40μm 以上70μm 以下のFe-Si-B 系急冷凝固合金およびその製造方法が記載されているが、急冷凝固過程において表層に0.1体積%以上10 体積%以下のα-Fe相が析出し、残部がアモルファス組織からなる急冷凝固合金となることに起因して、コア形状によっては打抜きプレス加工が困難になるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開平5-329587
【文献】特開平7-113151
【文献】特開平8-124731
【文献】特開昭63-220950
【文献】特開2018-153828
【文献】特開2021-193199
【非特許文献】
【0016】
【文献】高飽和磁束密度を有する新規バルク金属ガラス/アモルファス厚板の創製(東北大学・金属ガラス総合研究センター)牧野彰宏、久保田健、常春涛
【文献】超低磁心損失・高鉄濃度軟磁性合金「NANOMET」の最新研究開発動向、金属学会誌まてりあ第55巻 第3号(2016年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
トランスや各種モータ等向けに広く利用されている電磁鋼板と同等レベルの飽和磁束密度を確保しながら、大幅なモータ効率の向上が得られるFe-Si-B 系アモルファス合金並みの低鉄損性能を有し、同時に電磁鋼板と同様にプレスにより打抜き加工が可能であり、90%以上のコア占積率を確保でき、モータ向け積層コアとして応用することが可能なFe-Si-B 系急冷凝固合金が期待されているが、Fe-Si-B 系アモルファス合金では、電磁鋼板と同等レベルの飽和磁束密度を確保することが困難である。一方、アモルファス組織とα‐Feからなる結晶相が混在する特許文献6に記載のFe-Si-B 系急冷凝固合金は、飽和磁束密度Bs≧1.7Tを確保できるものの、電磁鋼板と同等レベルのプレス速度による打抜き加工が困難である。このため、従来においては、FAや空モビリティーなど向けのBLDCモータ用コアとしての活用が困難であった。
【0018】
そこで、本発明は、Bs≧1.7Tでかつ低鉄損性能を有し、積層コア化が可能な鉄基軟磁性合金の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る鉄基軟磁性合金の製造方法は、組成式(Fe1-mCom100-x-ySix(B1-nCn)yで表現され、組成比率x、y、mおよびnがそれぞれ、1.0≦x≦3.0 原子%、11.0≦y≦14.0 原子%、0.05≦m≦0.5、0.0≦n≦0.3を満足し且つCuを含まない組成の合金溶湯を用意する工程と、純銅、銅合金、MoおよびWのいずれかを主原料とする冷却ロール上で前記合金溶湯を急冷凝固する急冷凝固工程とを備え、α-Fe相からなる金属組織を有し、非晶質相の比率が20体積%以下であり、飽和磁束密度が1.7T以上2.0T以下であり、磁束密度1.5Tおよび周波数1kHzでの鉄損が50W/kg以下であり、厚みが18μm以上40μm未満である鉄基軟磁性合金を製造する方法であって、前記急冷凝固工程は、前記冷却ロールをロール表面速度15m/sec以上50m/sec以下で回転させながら、前記冷却ロールの表面に前記合金溶湯をノズルから噴射する工程を備えており、前記ノズルは、シングルスリットノズルであり、スリットの長手方向が前記冷却ロールの回転方向と直交するように配置され、前記ノズルの材質は、石英(SiO2)、窒化硼素(BN)、炭化珪素(SiC)およびアルミナ(Al2O3)のいずれかを主成分とし、前記ノズルの開口幅は、0.2mm以上0.8mm以下であり、前記冷却ロールの表面粗度は、算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以上0.6μm以下であり、前記ノズルから前記冷却ロールまでの距離は、0.1mm以上2.0mm以下であり、前記ノズルから5kPa以上50kPa以下の圧力で前記合金溶湯を出湯することを特徴とする。
【0020】
この鉄基軟磁性合金は、磁束密度1.5Tおよび周波数20kHzでの鉄損が1500W/kg以下であることが好ましい。
【0021】
また、この鉄基軟磁性合金は、α-Fe相の平均結晶粒径が5nm以上100nm未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、Bs≧1.7Tでかつ低鉄損性能を有し、積層コア化が可能な鉄基軟磁性合金の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る鉄基軟磁性合金の製造装置の概略構成図であり、(b)はその要部拡大図であり、(c)はノズル底面の拡大図である。
図2】実施例2で得られた鉄基軟磁性合金の粉末X線回折プロファイルである。
図3】実施例7で得られた鉄基軟磁性合金の粉末X線回折プロファイルである。
図4】比較例12で得られたFe-Si-B系急冷凝固合金の自由面(冷却ロールの接触面と反対側)および冷却ロール面のX線回折プロファイルである。
図5】比較例13で得られたFe-Si-B系急冷凝固合金の自由面(冷却ロールの接触面と反対側)および冷却ロール面のX線回折プロファイルである。
図6】実施例2で得られた鉄基軟磁性合金における磁束密度と鉄損の関係を動作周波数毎にプロットしたものである。
図7】比較例12で得られたFe-Si-B系急冷凝固合金における磁束密度と鉄損の関係を動作周波数毎にプロットしたものである。
図8】実施例2、比較例12および市販の電磁鋼板(JFE社製35A360)について磁束密度1.5Tにおける動作周波数と鉄損の関係を示したものである。
図9】実施例2の鉄基軟磁性合金のSEM観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の鉄基軟磁性合金は、電磁鋼板に対して鉄損が1/10以下という、Fe-Si-B系アモルファス合金と比較しても同等以上の低鉄損性能を有しながら、製造時の急冷凝固工程においてα‐Feからなる微細結晶を等方的に均一に析出させることで、FAおよび空モビリティーなど向けのBLDCモータに適用可能な飽和磁束密度Bs≧1.7Tを確保しながらも、電磁鋼板と同等レベルのプレス打抜き効率にて積層コアを量産レベルで製造可能である平均厚みが18μm 以上40μm 未満の鉄基軟磁性合金である。
【0030】
本発明者は、上記のとおり、必須元素であるFe+Co、Si、Bの疑似三元組成域にて各元素の配合比率を、Siが1.0原子%以上3.0原子%以下、Bが11原子%以上14原子%以下、残部Feの内、Feの5%以上50%以下をCoで置換した配合組成とし、Bの一部をCで30%を上限に置換した合金組成域にて、Fe-Si-B系アモルファス合金に対して同等以上の低鉄損性能を有し、且つ、FAおよび空モビリティーなど向けBLDCモータに適用可能な飽和磁束密度Bs≧1.7Tを確保しながらも、電磁鋼板と同等レベルのプレス打抜き効率にて積層コアを量産レベル製造可能である鉄基軟磁性合金が得られることを見出して、本願発明を想到するに至った。
【0031】
[合金組成]
Feを必須元素として上述の元素の含有残余を占め、Feの一部をFeと同じく強磁性元素であるCoで置換することでBs≧1.7Tを確保し得る。ただし、Feに対するCoの置換率mが5%未満の場合、Bs≧1.7Tを確保できない。また、Feに対するCoの置換率mが50%を超えるとBsが低下傾向に転ずる。このため、Feに対するCoの置換率mは5%以上50%以下に限定される。置換率mは、10%以上40%以下であることが好ましく、費用対効果の観点から15%以上35%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本願発明において、Siは微細組織を得るための必須元素であるだけでなく、透磁率等の軟磁気特性を発現するためにも重要な働きをする。Siの組成比率xが1.0原子%未満となると、印加磁界10A/m時の透磁率が2000以下まで悪化するだけでなく、1kHz、1.5T時の鉄損(コアロス)が100W/kg以上となるため、電磁鋼板と比較して高透磁率、低鉄損であるという本願発明の鉄基軟磁性合金の特徴が減じられる。また、Siの組成比率x が3.0原子%を超えると、磁化を担うFeの存在比率が低下しBs≧1.7Tを得ることができない。このため、Siの組成比率xは、1.0原子%以上3.0原子%以下とする。Siの組成比率xは、好ましくは、1.2原子%以上2.5原子%以下であり、さらに好ましくは、1.3原子%以上2.2原子%以下である。
【0033】
B+Cの組成比率yが11.0原子%未満になると、急冷凝固にて得られる鉄基軟磁性合金の金属組織が粗大化するため、磁束密度1.5Tで周波数1kHz時の鉄損が50W/kg 以下という低鉄損性能を確保できないだけでなく、プレスによる打抜き工程において、鉄基軟磁性合金に割れが生じ易くなり積層コア化が難しい。また、B+Cの組成比率yが14.0原子%を超えると、磁化を担うFeの存在比率が低下しBs≧1.7Tを得ることができない。このため、B+Cの組成比率yは、11.0原子%以上14.0原子%以下である。B+Cの組成比率yは、11.5原子%以上13.5原子%以下であることが好ましく、12.0原子%以上13.5原子%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
Bの一部をCで置換することにより合金溶湯の融点が低下し、急冷凝固条件が緩和され本願発明の鉄基軟磁性合金が作り易くなるが、Bに対するCの置換率nが30%を超えるとBs≧1.7Tを確保できないため好ましくない。このため、置換率nは30%以下に限定する。高Bs特性と低透磁率の両立させる観点から、置換率nは、20%以下が好ましく、15%以下が更に好ましい。
【0035】
本発明の鉄基軟磁性合金において、Al、V、Ti、Mn、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、AuおよびPbからなる群から選択された1種以上添加元素を加えることも可能であるが、添加濃度が2.0原子%を超えるとBs≧1.7Tが得られないため好ましくなく、不純物としての混在も含め2.0原子%以内であれば許容される。
【0036】
[金属組織]
本発明の鉄基軟磁性合金は、特定の方向に配向することなく等方的に析出するα‐Fe相からからなることを特徴とする。鉄基軟磁性合金全体に等方的に析出する微細なα‐Fe結晶相は、平均結晶粒径が5nm以上100nm未満の微細な結晶組織である。α‐Fe相の平均結晶粒径は、後述する粉末X線回折(XRD)によるX線回折ビークの半値幅より求めることができる。
【0037】
但し、合金溶湯を回転する冷却ロール上で急冷凝固する際、得られた鉄基軟磁性合金の金属組織内に非晶質相が混在する場合であっても、軟磁気特性に悪影響を与えない量であれば許容される。鉄基軟磁性合金の金属組織内の非晶質相が、金属組織全体に対して20体積%を超えると、Bs≧1.7Tを得ることが困難になるため、非晶質相の含有比率は、20体積%以下である。非晶質相の含有比率は、10体積%以下が好ましく、5.0体積%以下がさらに好ましい。
【0038】
本発明の鉄基軟磁性合金を積層コアに量産適用する場合には、ロータコアやステータコア等の形状に合わせて鉄基軟磁性合金をプレスにて連続的に打抜き加工する必要があるが、鉄基軟磁性合金の製造時における急冷凝固工程において、急冷ロール面もしくは自由面の表面近傍に急冷凝固時の不均一核生成にて析出した(200)方向に配向(面内配向)した平均結晶粒径が100nm以上の粗大なα‐Fe結晶相の存在が打抜き時に割れの起点となり、打抜き加工が困難になるおそれがある。前述の理由により(200)方向に配向した粗大なα‐Fe結晶相が金属組織全体の10.0体積%を超えると、打抜き加工時に鉄基軟磁性合金に割れや欠けが発生するおそれがあるため、鉄基軟磁性合金の表層に析出するα-Fe結晶相は、10体積%以下が良く、安定した打抜き加工性の観点から、5.0体積%以下が好ましく、2.0体積%以下がさらに好ましい。本発明における表層とは、鉄基軟磁性合金の表面からの深さが、鉄基軟磁性合金の厚みの10%の範囲をいう。
【0039】
[磁気特性]
本発明の鉄基軟磁性合金の飽和磁束密度Bsは、急冷凝固直後の状態(as-spun)、あるいは、as-spunの状態から歪除去を目的とした180℃以上450℃未満の温度にて熱処理を施した後において、1.7T以上2.0T以下である。Bsが2.0Tを超えると磁束密度1.5Tで周波数1kHz時の鉄損が50W/kgを超えるため、FAおよび空モビリティーなど向けBLDCモータ用のコアに適用した際、電磁鋼板製コアに対して明確なモータ効率の向上が得られない。低速回転域にて必要十分のモータトルクと高効率を両立できる観点から、Bsは1.7T以上2.0T以下であり、1.73T以上1.97Tが好ましく、1.75以上1.95T以下がさらに好ましい。
【0040】
なお、既存の電磁鋼板、鉄基アモルファス合金および鉄基ナノ結晶合金においては、各動作周波数の鉄損値が磁束密度の上昇に伴い増加する傾向を示すのに対して、本発明の鉄基軟磁性合金は、各動作周波数の鉄損値が磁束密度の上昇に伴い明らかな飽和傾向を示すという極めて特異な磁気的性質を示す。特に高周波域である周波数20kHzにおける磁束密度1.5T時の鉄損値が1500W/kg以下であり、5万rpm以上の超高速回転モータや昇電圧ユニットのトランスなどにて問題となる鉄損を大幅に低減できる可能性がある。周波数20kHzにおける磁束密度1.5T時の鉄損値が高すぎると(例えば2000W/kg以上)、鉄基アモルファス合金および鉄基ナノ結晶合金と鉄損が同等レベルになるため、周波数20kHzにおける磁束密度1.5T時の鉄損値は1500W/kg以下であることが好ましく、1300 W/kg以下がより好ましく、1000 W/kg以下がさらに好ましい。
【0041】
[鉄基結晶合金の製造方法]
本発明の鉄基軟磁性合金は、上記の組成を有する合金溶湯を用意する工程と、用意した合金溶湯を急冷凝固する急冷凝固工程を備える鉄基結晶合金の製造方法により製造される。
【0042】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る鉄基軟磁性合金の製造方法に用いる単ロール溶湯急冷装置の概略構成図であり、図1(b)はノズルの拡大図であり、図1(c)はノズル底面の拡大図である。図1に示す単ロール溶湯急冷装置1は、溶解炉2と、貯湯容器5と、冷却ロール8とを備えている。
【0043】
溶解炉2は、高周波誘導加熱により原料を溶解した合金溶湯3を、傾動軸4の回動により貯湯容器5に供給する。貯湯容器5は、底部にノズル6を備えており、加熱コイル(図示せず)により合金溶湯3を更に加熱して、ノズル6の下端に形成されたスリット7から冷却ロール8の表面(外周面)に合金溶湯3を噴出する。冷却ロール8は、内部に冷却水が供給されることにより、表面に接触する合金溶湯を急冷し、薄帯状の急冷凝固合金9を形成する。ノズル6の材質は、例えば、石英(SiO2)、窒化硼素(BN)、炭化珪素素(SiC)およびアルミナ(Al2O3)のいずれかを主成分とするものから適宜選択可能である。
【0044】
ノズル6は、単一のスリット7が形成されたシングルスリットノズルであり、スリット7の長手方向が、冷却ロール8の回転方向と直交するように(すなわち、冷却ロール8の回転軸と平行になるように)配置されている。スリット7の幅W1は、冷却ロール8に供給される合金溶湯3の出湯レートを調整する役割を果たす。スリット幅W1が小さ過ぎると、スリット加工が困難になり易く、更には溶湯によるスリット7の閉塞が生じ易い一方、スリット幅W1が大き過ぎると、出湯レートが高くなり過ぎて冷却ロール8での抜熱が間に合わず、冷却ロール8に急冷凝固合金が張り付いて安定した溶湯急冷凝固を継続し難いことから、スリット幅W1は、0.2mm以上0.8mm以下である。スリット幅W1は、0.3mm以上0.7mm以下が好ましく、0.3mm以上0.6mm以下がさらに好ましい。
【0045】
冷却ロール8の表面に供給された溶湯は、冷却ロール8の回転により薄帯状の急冷凝固合金9となって、冷却ロール8から剥離される。冷却ロール8の表面速度が15m/sec未満の場合、40μm以上の過大な厚みの急冷凝固合金となることで、鉄基軟磁性合金薄帯の急冷ロール面もしくは自由面の表面近傍に、急冷凝固時の不均一核生成にて析出した(200)方向に配向した平均結晶粒径が100nm以上のα‐Fe結晶相が10.0体積%を超えるおそれがあり、打抜き加工時に鉄基軟磁性合金に割れや欠けが発生し易くなる。一方、冷却ロール8の表面速度が50m/secを超えると、鉄基軟磁性合金薄帯の厚みが18μm以下となることで、積層コアにした際に90%以上のコア占積率の確保が困難になる。このため、冷却ロール8の表面速度は、15m/sec以上50m/sec以下であり、好ましくは、20m/sec以上45m/sec以下であり、さらに好ましくは、25m/sec以上40m/sec以下である。
【0046】
図1(a)において、ノズル6の先端から冷却ロール8の表面までの距離dは、小さ過ぎると、急冷合金が冷却ロール8に張り付いて、合金溶湯3の安定した急冷凝固を継続できないおそれがある一方、大き過ぎると、冷却ロール8の表面上に湯だまり(パドル)が形成されずに、合金溶湯3の急冷凝固を実施できないおそれがある。このため、上記の距離dは、0.1mm以上2.0mm以下であり、好ましくは、0.1mm以上1.5mm以下であり、より好ましくは、0.15mm以上1.0mm以下である。
【0047】
薄帯状の急冷凝固合金9の作製においては、冷却ロール8の外表面に対する合金溶湯3の密着性が重要になるが、この溶湯密着性は、冷却ロール8の表面粗度に大きく依存する。冷却ロール8の表面粗度が小さ過ぎると、冷却ロール8の表面で合金溶湯3が滑ることで十分な冷却が困難になる一方、冷却ロール8の表面粗度が大き過ぎると、急冷合金が冷却ロール8に張り付くおそれがある。このため、冷却ロール8の表面における算術平均粗さ(Ra)は、0.01μm以上0.6μm以下であり、0.05μm以上0.55μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がさらに好ましい。
【0048】
冷却ロール8は、純銅、銅合金、モリブテン(Mo)およびタングステン(W)のいずれかを主原料とする材料により形成することで、熱伝導性や耐久性に優れることが好ましい。主原料とは、重量比において50%以上を占めることをいう。冷却ロール8の表面には、クロム、ニッケル、またはこれらの合金からなるめっきを施してもよく、これによって、冷却ロール8表面の耐熱性および硬度を増し、急冷凝固時におけるロール表面の溶融や劣化を抑制することができる。
【0049】
冷却ロール8の直径は、例えば、200~20000mmである。冷却ロール8は、連続した急冷凝固時間が10sec以下の短時間であれば、水冷は必ずしも必要ではないが、連続した急冷凝固時間が10sec以上におよぶ場合は、冷却ロール8の内部に冷却水を流すことで、冷却ロール8の表面の温度上昇を抑制することが好ましい。冷却ロール8の水冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯レートに応じて、適宜調整することが好ましい。
【0050】
[熱処理]
好ましい実施形態では、急冷凝固後、あるいは打抜きプレス後の鉄基軟磁性合金を180℃以上450℃以下の一定温度にて熱処理することにより、鉄基軟磁性合金中の歪除去が可能となり、さらに透磁率の向上を実現できる。熱処理温度が180℃未満では歪除去の効果が少なくなる一方、450℃を超えると鉄基軟磁性合金を構成するα‐Feの結晶粒成長により鉄損が上昇する傾向にある。上記の熱処理温度は、200℃以上400℃以下が好ましく、200℃以上350℃以下がより好ましい。なお、上記熱処理は、真空もしくは不活性ガスの雰囲気で行われることが好ましいが、大気中での熱処理も350℃以下であれば許容される。
【0051】
なお、上記の熱処理時において、複数の鉄基軟磁性合金薄帯を重ね合わせて密着させた状態で熱処理を行ってもよい。重ね合わせる複数の鉄基軟磁性合金薄帯の密着面には接着樹脂を塗布してもよく、上記の熱処理温度範囲内にて熱圧着処理を施すことにより、熱処理と同時に重層接着された鉄基軟磁性合金としてもよい。
【0052】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
下記表1の実施例1-11および比較例12-15に示す合金組成となるように、純度99.5%以上のB、C、CoおよびFeの各元素を配合した素原料100kgをアルミナ製坩堝(溶解炉)に収容し、高周波誘導加熱により溶解して合金溶湯を形成した。この合金溶湯50kgを、BN製のシングルスリットノズルを底部に備える内径200mm×高さ400mmのアルミナ製の貯湯容器に注いだ。ノズルのスリット幅およびスリット長さは、表1に示すとおりである。
【0054】
その後、貯湯容器の周囲に設置された高周波加熱用コイルへ通電することで、前記合金溶湯50kgをさらに加熱し、溶湯温度が配合組成合金の融点よりおよそ100℃以上の溶湯温度に到達した後、ノズル上部に配したアルミナ製溶湯ストッパーを引き抜き、ノズルから直下の冷却ロール表面に合金溶湯を噴出した。冷却ロールは、クロムジルコン銅製であり、外径600mm、幅200mmである。また、ノズルと冷却ロール表面とのギャップは、表1に示すとおりである。また、ノズルからの合金溶湯の噴射圧、冷却ロールのロール表面速度、および、冷却ロールのロール表面の算術平均粗さ(Ra)は、表2に示すとおりである。
【0055】
冷却ロールの表面へ噴出された合金溶湯は、冷却ロール表面上に湯だまり(パドル)を形成し、パドルと冷却ロールの界面にて急冷凝固されることで、表3に示す平均厚みおよび平均幅を持つ薄帯状の急冷凝固合金(実施例においては、鉄基軟磁性合金)を得た。得られた急冷凝固合金を、直径1mmのパンチを用いて10回抜き試験を実施し、その際に鉄基軟磁性合金に割れが生じたか否かを確認した結果を表3に示す。
【0056】
得られた急冷凝固合金に対して粉末X線回折(XRD)による組織評価を行ったところ、実施例1-11の鉄基軟磁性合金は、いずれもα‐Fe相が特定の方向に配向せず等方的に析出する金属組織であることがわかった。粉末X線回折結果より計算した非晶質相の体積比率は、表3に示すとおりである。
【0057】
代表例として、実施例2および実施例7について、鉄基軟磁性合金薄帯の自由面側から評価したX線回折プロファイルを、それぞれ図2および図3に示す。図2および図3のいずれも、α-Feのメインピークである(110)と第2ピークである(200)の回折ピークが確認され、何れも半値幅の広い回折ピークであることから等方的に析出したα-Fe結晶相からなる微細金属組織であることが確認された。
【0058】
実施例1-11の鉄基軟磁性合金のうち、実施例10以外は急冷凝固直後に、実施例10については熱処理後に、飽和磁束密度Bs、1kHzにおける磁束密度1.5T時の鉄損(コアロス)および透磁率(μ)、ならびに20kHzにおける磁束密度1.5T時の鉄損を測定した結果を、表4に示す。Bsの測定は、東映工業製の振動式試料磁力計により行い、μおよび鉄損の測定は、岩崎通信機製BHアナライザ―にSSTユニット(単板磁気特性試験機)を取り付けて行った。磁束密度と鉄損の関係を示す実施例の代表例として、実施例2の鉄基軟磁性合金について動作周波数毎にプロットしたものを、図6に示す。
【0059】
一方、比較例12-15のFe-Si-B系急冷凝固合金は、粉末X線回折(XRD)による評価により、非晶質相が支配的であることがわかった。代表例として、比較例12および比較例13について、急冷凝固合金薄帯の自由面側から評価したX線回折プロファイルを、それぞれ図4および図5に示す。図4に示すように、比較例12は、アモルファス単相組織であった。また、図5に示すように、比較例13は、主相であるアモルファス相と、表層に不均一核生成により面内配向したα‐Fe相とが混在する組織であることがわかった。粉末X線回折結果より計算した非晶質相の体積比率は、表3に示すとおりである。
【0060】
実施例1-11と同様に、比較例12-15について、飽和磁束密度Bs、1kHzにおける磁束密度1.5T時の鉄損(コアロス)および透磁率(μ)、ならびに20kHzにおける磁束密度1.5T時の鉄損を測定した結果を、表4に示す。また、磁束密度と鉄損の関係を示す比較例の代表例として、比較例12の鉄基軟磁性合金について動作周波数毎にプロットしたものを、図7に示す。
【0061】
比較例16の急冷合金は、Siレス組成であることに加えてロール表面速度10m/secと遅いために急冷凝固合金組織の平均結晶粒径が100nm以上の粗大な金属組織となり、打抜きができなかった。また、比較例17ではスリット幅が0.9mmと広いためにシングルスリットから急冷ロールの表面へ提供される溶湯の出湯レートが増すことで、表3に示すように急冷凝固合金の平均厚みが40μm以上となり、打ち抜き試験の結果が不可となった。
【0062】
実施例2、比較例12および市販の電磁鋼板(JFE社製35A360)のそれぞれについて、磁束密度1.5Tにおける動作周波数と鉄損の関係を、図8に示す。また、実施例2の鉄基軟磁性合金のSEM観察写真を、図9に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【符号の説明】
【0067】
l 単ロール溶湯急冷装置
2 溶解炉
3 合金溶湯
4 傾動軸
5 貯湯容器
6 出湯ノズル
7 スリット
8 冷却ロール
9 急冷凝固合金
【要約】

【課題】 Bs≧1.7Tでかつ低鉄損性能を有し、積層コア化が可能な鉄基軟磁性合金を提供する。
【解決手段】 鉄基軟磁性合金において、組成式(Fe1-mCom100-x-ySix(B1-nCn)yで表現され、組成比率x、y、mおよびnがそれぞれ、1.0≦x≦3.0 原子%、11.0≦y≦14.0 原子%、0.05≦m≦0.5、0.0≦n≦0.3を満足する組成を有し、α-Fe相からなる金属組織を有し、非晶質相の比率が20体積%以下であり、飽和磁束密度が1.7T以上2.0T以下であり、磁束密度1.5Tおよび周波数1kHzでの鉄損が50W/kg以下であり、前記鉄基軟磁性合金の厚みが18μm以上40μm未満である。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9