(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 133/08 20060101AFI20250131BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20250131BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20250131BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20250131BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250131BHJP
【FI】
C09J133/08
C09J133/14
C09J11/08
C09J11/06
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2020183085
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】坂田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓実
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-051093(JP,A)
【文献】特開2002-371257(JP,A)
【文献】特開2019-085441(JP,A)
【文献】国際公開第2016/059979(WO,A1)
【文献】特開2007-262309(JP,A)
【文献】特開2008-257215(JP,A)
【文献】特開2014-117839(JP,A)
【文献】特開2018-21127(JP,A)
【文献】特開2018-159018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を有する重合体(A)および吸水性材料(B)を含有する粘着剤組成物であり、該重合体(A)におけるアクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位が60質量%以上であり、
該重合体(A)の全構造単位に占めるアルキル(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル系化合物由来の構造単位の割合が10質量%以下であり、該吸水性材料(B)がポリアクリル酸類、水溶性セルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキサイド類、デンプン類、アルギン酸類、キチン類、ポリスルホン酸類、ポリヒドロキシメタクリレート類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレンイミン類、ポリアリルアミン類、ポリビニルアミン類、無水マレイン酸類、またはこれらの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)は、さらに、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位、及び/又は、水酸基含有モノマー由来の構造単位を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
吸水性材料(B)が水溶性ポリマーである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
吸水性材料(B)がラクタム環構造を有する重合体である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記重合体(A)および吸水性材料(B)の総量に対する吸水性材料(B)の割合が0.5質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
粘着剤組成物中のアルコールの含有量が0.1質量%以上20質量%以下であり、アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記吸水性材料(B)の重量平均分子量が1万以上200万以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を塗布乾燥してなる粘着剤層。
【請求項9】
請求項8に記載の粘着剤層を有する粘着製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
道路をアスファルトで舗装する工事を行う際には、道路の縁石にアスファルトが付着して汚れる場合がある。これを防ぐ目的で、フィルムなどを基材とした養生シートを縁石に貼り付け保護することが知られている。
【0003】
特許文献1では、支持体の少なくとも一方の面にアクリル系粘着剤層が積層されている粘着テープであって、前記アクリル系粘着剤層が、分子内に極性基が局在化しているアクリル系ポリマー(A)を含むコンクリート養生用粘着テープを用いることより、コンクリートに貼付した際に保持性がよく、かつ貼付後一定期間経過した後、コンクリートから剥がす際には糊残りの少ないコンクリート養生用粘着テープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築物や土木構造物の工事中の一時保護のため、養生シートは屋外にて使用されることがあり、被着体は、雨天時、雨上がり時や漏水時または結露が発生して湿潤状態になりやすく、湿潤面への接着力を高めることが求められている。しかしながら上述の従来技術は、湿潤面への接着力、とりわけモルタル、コンクリートの打ちっぱなし面等のように被着面が平滑ではない粗面のものを被着体とすると、優れた粘着力は得られないという課題があった。
本発明の目的は新規な粘着剤組成物等を提供することにある。
本発明の他の目的は、湿潤面に対する、特に凹凸を有する湿潤面に対する粘着力と再剥離性を両立し得る粘着剤組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、上記のような問題点に鑑み検討を行い、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を有する重合体および吸水性材料を含有する組成物が湿潤面に対する粘着力と再剥離性の両立に有効であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記目的は、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を有する重合体および吸水性材料を含有する粘着剤組成物によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な粘着剤組成物等を提供することができる。
本発明の粘着剤組成物によれば、湿潤面に対する、特に凹凸を有する湿潤面に対する粘着力と再剥離性を両立することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を有する重合体(A)(以下重合体(A)ということがある)および吸水性材料(B)(以下吸水性材料ということがある)を含有する。
[アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を有する重合体]
本発明の重合体(A)はアクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を有する。
【0009】
アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位とは、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーの少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。なお、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位は、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーの少なくとも1つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーが重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。例えば、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーが、アクリル酸2-メトキシエチル、CH2=CH(COOCH2CH2OCH3)、である場合、アクリル酸2-メトキシエチル由来の構造単位は、-CH2-CH(COOCH2CH2OCH3)-、で表すことができる。
【0010】
アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位は、下記一般式(1)ので表される構造単位であることが好ましい。
【0011】
【化1】
(一般式(1)中、Xは炭素数2~4のアルキレン基であり、Yは炭素数1~10のアルキル基であり、nは1~10の整数である)
【0012】
前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位は、前記一般式(1)で表される構造を有していることが好ましく、例えば、下記一般式(2)
【0013】
【化2】
(一般式(2)中、X、Y、及び、nは一般式(1)と同様)
で表される、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーを重合させることにより、前記重合体(A)に導入することができる。
前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位は、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーを重合して形成される構造であることが好ましいが、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーが重合されて形成される構造と同一構造であれば、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーを重合する方法以外の方法で形成されてもよい。
【0014】
一般式(1)中、Xは、炭素数2~4のアルキレン基であればよく、直鎖状のアルキレン基であってもよいし、分枝状のアルキレン基であってもよい。Xとしては、例えば、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、及び、ブタン-1,3-ジイル基を挙げることができる。より好ましくは、Xは、エチレン基、プロピレン基(プロパン-1,2-ジイル基)、トリメチレン基(プロパン-1,3-ジイル基)及びブチレン基(ブタン-1,3-ジイル基)である。
一般式(1)中、Yは、炭素数1~10のアルキル基であれば特に限定されるものではなく、直鎖状のアルキル基であっても、分枝状のアルキル基であっても、環を含むアルキル基であってもよい。Yとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及び、デシル基を挙げることができる。より好ましくは、Yは、メチル基、エチル基、及びブチル基である。
一般式(1)中、nは1~10の整数であれば特に限定されるものではないが、より好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1~2の整数である。また、nが2以上の整数である場合、-(X-O-)n-に含まれる複数のXは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
一般式(2)で表されるアクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-プロポキシエチルアクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、3-メトキシプロピルアクリレート、3-エトキシプロピルアクリレート、4-メトキシブチルアクリレート、4-エトキシブチルアクリレート、2-メトキシトリエチレングリコールアクリレート等を挙げることができる。中でも、前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、得られる粘着層の凝集力・粘着力・タック等の観点から、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレートであることがより好ましい。
【0016】
本開示の重合体(A)の全構造単位に占める前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位の割合は、特に限定されるものではないが、凹凸を有する湿潤面に対する粘着性の観点より、下限割合として好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、上限割合として好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99.0質量%以下、さらに好ましくは98.5質量%以下、特に好ましくは98質量%以下である。
本開示の重合体(A)はアクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位以外の構造単位を有していてもよい。
【0017】
アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位以外の構造単位としては、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位、水酸基含有モノマー由来の構造単位を有していてもよい。
【0018】
本開示の重合体(A)は、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位は、例えば、カルボキシル基含有モノマーを重合させることにより、前記重合体(A)に導入することができる。
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、カルボキシル基と重合性二重結合とを含むモノマーを好適に用いることができる。かかるモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基を含有するモノマーは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
前記重合体(A)が、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、前記重合体(A)の全構造単位に占める前記カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の割合は、これに限定されるものではないが、下限割合として好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、上限割合として好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下であり、特に好ましくは6質量%以下である。前記重合体(A)の全構造単位に占める前記カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の割合が、0.1質量%以上であれば、粘着剤の凝集性が向上するため好ましい。また、前記割合が、10質量%以下であれば、被着体への濡れ性やタック性が向上するため好ましい。
【0020】
前記水酸基含有モノマー由来の構造単位は、例えば、水酸基含有モノマーを重合させる
ことにより、前記重合体(A)に導入することができる。
前記水酸基含有モノマーとしては、水酸基と重合性二重結合とを含むモノマーを好適に用いることができる。かかるモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等のアルコール性水酸基を含有する架橋性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;等が挙げられる。これらの水酸基を含有するモノマーは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
中でも前記水酸基含有モノマーは、架橋剤との反応性の観点から、ヒドロキシアルキルのアルキルの炭素数が2~8のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類であることがより好ましい。
【0021】
前記重合体(A)が、水酸基含有モノマー由来の構造単位を含む場合、前記重合体(A)の全構造単位に占める前記水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合は、これに限定されるものではないが、下限割合として好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.07質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上であり、上限割合としてより好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以下であり、特に好ましくは2.0質量%以下である。前記重合体(A)の全構造単位に占める前記水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合が、0.01質量%以上であれば、架橋点として振る舞うため好ましい。また、前記割合が、5.0質量%以下であれば、架橋剤混合後のポットライフと物性のバランスがとりやすいため好ましい。
【0022】
或いは、前記重合体(A)は、前記重合体(A)の全構造単位に占める割合として、前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位の割合が50~99.5質量%であり、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の割合が0.1~10質量%であり、水酸基含有モノマー由来の構造単位の割合が0.01~0.5質量%である、重合体であり得る。
【0023】
本開示の重合体(A)はアクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位以外の構造単位として、前記その他のモノマーとしては、特に制限はなく、通常、(メタ)アクリル系粘着剤に使用されているモノマー、例えばアルキル(メタ)アクリル酸エステルを使用することができる。前記アルキル(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基としては、炭素数1~20個のアルキル基が好ましい。また、アルキル基は、直鎖、分岐鎖、及び脂環式アルキル基のいずれであってもよい。
アルキル(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリル酸エステルは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。前記重合体(A)の全構造単位に占めるアルキル(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位の割合は、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。
【0024】
また、前記その他のモノマーとしては、前記アルキル(メタ)アクリル酸エステル以外で、ビニル系化合物を使用することができる。前記ビニル系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族不飽和炭化水素化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の炭素数1~5のモノカルボン酸のビニルエステル;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのビニル系化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。前記重合体(A)の全構造単位に占める前記ビニル系化合物由来の構造単位の割合は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0025】
本開示の重合体(A)は、官能基(ヒドロキシル基、酸基等)を有していてもよい。官能基を有する態様としては特に限定されないが、例えば、官能基を有するモノマー由来の構造単位を有していてもよい。
すなわち、官能基(官能基αという)を有する単量体を含んでいてもよい。重合体(A)がこのような官能基αを有する単量体に由来の構造単位を有することで、後述の架橋剤の種類(架橋剤が有する官能基βとの組み合わせ)によっては、効率よく架橋構造を形成しやすい。
【0026】
官能基αとしては、後述の架橋剤との組み合わせや官能基βとの組み合わせ等により適宜選択でき、例えば、酸基(カルボキシル基等)、イソシアネート基、オキサゾリン基、オキサゾリジン基、ヒドラジノ基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基などが挙げられる。
官能基αを有する単量体は、これらの官能基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
これらの官能基の中でも、酸基、オキサゾリン基、ヒドラジノ基、ヒドロキシル基などが代表的である。特に、官能基αは、少なくとも架橋剤が有する官能基(官能基β)と反応(架橋反応)しうる官能基であってもよい。例えば、架橋剤がエポキシ基を有する場合、酸基、ヒドロキシル基等を有するモノマーを好適に使用してもよい。
具体的な官能基αを有する単量体(モノマー)としては、例えば、カルボニル基含有単量体、酸基含有モノマー(酸基を有するモノマー)、オキサゾリン基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体などが含まれる。
【0027】
本開示の重合体(A)の重量平均分子量の下限は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上、さらに好ましくは30万以上であり、重量平均分子量の上限は、好ましくは200万以下であり、より好ましくは150万以下であり、さらに好ましくは120万以下である。重量平均分子量が10万以上であれば、ポリマーの凝集性の観点から好ましい。重量平均分子量が200万以下であれば、ハンドリング性や被着体への濡れ性の観点から好ましい。ここで、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算の分子量である。重量平均分子量としては、より具体的には、測定装置として、東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPCを用い、分離カラムとして東ソー(株)製、品番:TSKgel Super HZM-Mを用い、標準ポリスチレン〔東ソー(株)製〕により換算した値とすることができる。
【0028】
本開示の重合体(A)において、重量平均分子量が1万以下の成分の含有割合は10面積%以下が好ましく、5面積%以下がより好ましく、2面積%以下がさらに好ましいく、0.1面積%以上が好ましく、0.3面積%以上がさらに好ましく、0.5面積%以上がより好ましい。重量平均分子量が1万以下の成分の含有割合は、例えばGPC溶出曲線から得られるエリア面積比率から求めることができ、具体的には、溶出曲線の開始点からその終了点までのエリア面積における、重量平均分子量1万となる溶出時間におけるベースライン上の点から溶出曲線の終了点までのエリア面積の割合を重量平均分子量が1万以下の成分の含有量(質量%)として求めることができる。重合体(A)における重量平均分子量が1万以下の成分の含有割合が上記範囲であることにより、凹凸を有する面に対する粘着力と再剥離性を両立することが可能となる。
上記の条件で測定することが妥当でない重合体(A)については、例えば、上記条件に、適宜、最小限の変更を加えて重量平均分子量を測定してもよい。
【0029】
本開示の重合体(A)のガラス転移温度は、粘着剤組成物及びコンクリート養生粘着テープ用粘着剤組成物の粘着性、タック性等の観点から、下限値として好ましくは-100℃以上、より好ましくは-90℃以上、さらに好ましくは-80℃以上であり、上限値として好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-30℃以下であってもよい。
重合体(A)のガラス転移温度は、当該重合体(A)を構成する単量体成分に使用されている単量体(各単量体)の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
(式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す)
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度であってもよい。
【0030】
なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度を求めてもよい。
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、アクリル酸の単独重合体では106℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、ω-カルボキシポリカプロラクトンアクリレート(東亜合成(株)製、商品名:アロニックス(登録商標)M-5300)の単独重合体では-41℃、2-エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では-70℃、n-ブチルアクリレートの単独重合体では-56℃、メチルアクリレートの単独重合体では10℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、エチルアクリレートの単独重合体では-24℃、n-ブチルアクリレートの単独重合体では-54℃、n-ブチルメタクリレートの単独重合体では-20℃、n-オクチルアクリレートの単独重合体では-80℃、イソオクチルアクリレートの単独重合体では-58℃、シクロへキシルアクリレートの単独重合体では16℃、シクロへキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、イソボルニルメタクリレートの単独重合体では180℃、2-ヒドロキシエチルアクリレートの単独重合体では-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では85℃、4-ヒドロキシブチルアクリレートの単独重合体では-32℃である。
重合体(A)のガラス転移温度は、当該重合体(A)を調製する際に用いられる原料モノマーの種類及びその量を適宜調整することによって容易に調節することができる。
【0031】
[吸水性材料(B)]
本発明の吸水性材料(B)は、水を吸水できる材料を表す。
本開示の吸水性材料(B)は、1気圧、25℃の条件下において、吸水率が1.0%以上である材料であることをいう。好ましくは吸水率が3.0%以上であり、5.0%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。前記吸水率は、吸水性材料を200℃、湿度50%で30分乾燥させた後に測定するものである。
【0032】
吸水性材料(B)としては、吸水性ポリマー等の有機系の吸水性材料や、無機系の吸水性材料を用いることができる。なお、吸水性材料(B)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
有機系の吸水性材料(B)としては、ポリアクリル酸類、水溶性セルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキサイド類、デンプン類、アルギン酸類、キチン類、ポリスルホン酸類、ポリヒドロキシメタクリレート類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレンイミン類、ポリアリルアミン類、ポリビニルアミン類、無水マレイン酸類、これらの共重合体等が挙げられる。
有機系の吸水性材料(B)としては、ラクタム環構造を有する重合体であることが好ましい。
ラクタム環構造を有する重合体は、ラクタム環構造を有する単量体由来の構造単位を有する重合体であってもよい。
ラクタム環構造を有する単量体としては、例えば、N-ビニルラクタム(例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム)等のビニルラクタム系単量体が挙げられる。
【0034】
代表的なラクタム環構造を有する単量体は、N-ビニルピロリドンである。ラクタム環構造を有する単量体が、N-ビニルピロリドンを含む場合、ラクタム環構造を有する単量体におけるN-ビニルピロリドンの割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上程度であってもよく、70質量%以上[例えば、80質量%以上、90質量%以上、100質量%(実質的にN-ビニルピロリドンのみ)]であってもよい。
【0035】
ラクタム環構造を有する重合体におけるラクタム環構造を有するモノマー由来の構造単位の含有量は10質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上程度であってもよく、70質量%以上(例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%(実質的にラクタム環構造を有する単量体のみ)等)であってもよい。
【0036】
ラクタム環構造を有する重合体におけるラクタム環構造を有するモノマー由来の構造単位以外の構造単位を有していても良い。
ラクタム環構造を有する重合体におけるラクタム環構造を有するモノマー由来の構造単位以外の構造単位としては、(メタ)アクリル系単量体由来の構造単位、スチレン系単量体、ビニルエステル、ビニルエーテル、オレフィン系単量体、ハロゲン含有単量体、不飽和ニトリルなどが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル系単量体由来の構造単位は、(メタ)アクリル系単量体を重合させることにより、ラクタム環構造を有する重合体に導入することができる。
(メタ)アクリル系単量体としては、脂肪族(メタ)アクリル酸エステル、芳香族(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0038】
本開示のラクタム環構造を有する重合体は、官能基(官能基γという)を有する単量体由来の構造単位を含んでいても良い。ラクタム環構造を有する重合体が、このような官能基γを有する単量体に由来する構造単位を有することで、後述の架橋剤の種類(架橋剤が有する官能基βとの組み合わせ)や重合体(A)が有する官能基αの種類等によっては、効率よく架橋構造を形成しやすい。
有機系の吸水性材料としては、架橋重合体であってもよいし、架橋重合体でなくても良い。
【0039】
本開示の吸水性材料は水溶性ポリマーであってもよい。
水溶性ポリマーは、1気圧、25℃の条件下において、水100gに対する溶解度が1.0g以上である材料であることをいう。好ましくは溶解度が3.0g以上であり、5.0g以上がより好ましく、10g以上がさらに好ましい。
【0040】
本開示の吸水性材料は、重量平均分子量が300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、1万以上であることがさらに好ましく、上限値としては200万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましく、100万以下、50万以下、30万以下、10万以下の順で特に好ましい。ここで、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスルホン換算の分子量である。重量平均分子量としては、より具体的には、測定装置として、東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPCを用い、分離カラムとして東ソー(株)製、品番:TSKgel Super HZM-Mを用い、標準ポリスルホン〔東ソー(株)製〕により換算した値とすることができる。
【0041】
本開示の吸水性材料において、重量平均分子量が20万以下の成分の含有割合は50面積%以上が好ましく、70面積%以上がより好ましく、90面積%以上がさらに好ましい。重量平均分子量が20万以下の成分の含有割合は、例えばGPC溶出曲線から得られるエリア面積比率から求めることができ、具体的には、溶出曲線の開始点からその終了点までのエリア面積における、重量平均分子量20万となる溶出時間におけるベースライン上の点から溶出曲線の終了点までのエリア面積の割合を重量平均分子量が20万以下の成分の含有量(質量%)として求めることができる。吸水性材料における重量平均分子量が20万以下の成分の含有割合が上記範囲であることにより、凹凸を有する面に対する粘着力の向上が期待できる。
【0042】
本開示の吸水性材料が架橋体である場合には、200℃、30分の条件で乾燥後の平均粒径が0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることがさらに好ましく、一方、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
無機系の吸水性材料としては、例えば、シリカゲルや、クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA等の無機高分子などが挙げられる。
【0043】
[粘着剤組成物]
本開示の粘着剤組成物に含まれる前記重合体(A)の含有量は、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全量を100質量%として、下限値として好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、上限値として好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下である。
粘着剤組成物における前記重合体(A)の含有量が60質量%以上であれば、湿潤面に対する、特に凹凸を有する湿潤面に対する粘着力と再剥離性を両立し得る粘着剤組成物を実現することが期待できる。
【0044】
本開示の粘着剤組成物における、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位の含有量は粘着剤組成物の溶媒を除く成分全量を100質量%として、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
本開示の粘着剤組成物中における吸水性材料(B)の含有量は特に限定されるものではないが、被着体の水分の吸水除去性の観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、すなわち粘着剤組成物の溶媒を除く成分全量を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。
本開示の粘着剤組成物における、アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位を有する重合体(A)および吸水性材料(B)総量に対する吸水性材料(B)の割合が0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0046】
本開示の粘着剤組成物におけるアクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位とラクタム環構造を有する単量体由来の構造単位のモル比は、好ましくは99.5/0.5~85/15、より好ましくは99/1~88/12さらに好ましくは98.5/1.5~90/10であってよい。アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマー由来の構造単位とラクタム環構造を有する単量体由来の構造単位のモル比が前記範囲であることにより、湿潤面に対する、特に凹凸を有する湿潤面に対する粘着力と再剥離性を両立しうる粘着剤組成物を得ることが期待できる。
【0047】
本開示の粘着剤組成物は、架橋剤を含有していても良い。このような架橋剤は、重合体(A)(さらには吸水性材料(B))を架橋可能であってもよい。
このような観点から、架橋剤は、官能基(官能基β)を有してもいてもよく、特に、このような官能基は、官能基α(さらには官能基γ)と反応(架橋反応)しうる官能基(官能基β)であってもよい。
このような官能基βとしては、官能基α(及び官能基γ)の項で例示した官能基が挙げられ、例えば、酸基(カルボキシル基等)、ヒドラジノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基などが挙げられる。
【0048】
なお、官能基α(さらには官能基γ)と官能基βとの組み合わせとしては、特に限定されず、例えば、エポキシ基とヒドロキシル基(水酸基)、エポキシ基と酸基(カルボキシル基等)、エポキシ基とアミノ基、カーボネート基と酸基(カルボキシル基等)、水酸基とアルコキシカルボニル基、水酸基とイソシアネート基、水酸基とカルボン酸無水物基、アセトアセトキシ基とイソシアネート基、オキサゾリン基とカルボキシル基、水酸基とカルボン酸無水基、オキサゾリジン基とイソシアネート基又はカルボン酸無水物基、ヒドラジノ基とカルボニル基などが挙げられる。これらは1又は2以上組み合わせてもよい。
架橋剤において、このような官能基(官能基β)の数は、1個であってもよいが、特に、2以上(複数)であってもよい。代表的には、架橋剤は、多官能性化合物(官能基βを2以上する化合物)を含有してもよい。このような架橋剤(多官能性化合物)において、官能基(官能基β)の数は、2以上であればよく、例えば、低分子型(非ポリマー型又は非樹脂型)の多官能性化合物などの場合では、2~10、好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4(例えば、2)であってもよい。
【0049】
代表的な架橋剤としては、ヒドラジン系架橋剤(ヒドラジノ基を複数有する化合物)、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが挙げられる。
架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
架橋剤を使用する場合、架橋剤の使用割合は、架橋剤の種類やその官能基の種類、組成
物における所望の粘度等に応じて適宜選択できるが、例えば、重合体(A)(さらには吸水性材料(B))100質量部に対して、0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上等であってもよい。
なお、架橋剤の使用割合の上限値は、特に限定されず、その種類等に応じて選択でき、重合体(A)(さらには吸水性材料(B))100質量部に対して、例えば、10質量部、5質量部、3質量部、2質量部、1質量部、0.5質量部、0.3質量部、0.2質量部、0.1質量部等であってもよい。
【0050】
本開示の粘着剤組成物は、必要に応じて本発明の効果を害しない範囲で、粘度調整剤、可塑剤、充填剤、軟化剤、界面活性剤(乳化剤)、老化防止剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、剥離調整剤、重合禁止剤、粘着付与剤等を含んでいても良い。
他の成分の使用割合は、その成分の種類・用途等に応じて、適宜選択できる。
なお、本開示の粘着剤組成物は、湿気硬化性成分(イソシアネート化合物、アルコキシシリル基含有重合体、シアノアクリレート化合物、ウレタン系化合物等)を含んでいてもよいが、実質的に含んでいなくてもよい。本開示の粘着剤組成物は、このような成分を含んでいなくても、十分な粘着性(湿潤面に対する粘着性)を発現又は発揮しうる。
【0051】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶媒を含んでいても良く、溶剤系組成物(非水溶剤系組成物)であってもよい。
本開示の有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなど)、脂肪族又は脂環族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素など)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの脂肪族エステル類など)、エーテル類[例えば、鎖状エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなど)、環状エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)など]、窒素含有溶媒{例えば、鎖状アミド[例えば、N-置換鎖状アミド(N,N-ジメチルホルムアミドなどのN-アルキル置換アルカンアミド)等]、環状アミド(又はラクタム、例えば、2-ピロリドンなど)]等のアミド類等}、アルコール類{例えば、モノオール[例えば、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1-6アルカノール、好ましくはC1-4アルカノール)等]、ポリオール[例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のC2-6アルカンジオール、好ましくはC2-4アルカンジオール)、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール(例えば、グリセリンなど)等]等}、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルカンジオール又はポリアルカンジオールのモノアルキルエーテル)など]等が挙げられる。
【0052】
本開示の有機溶媒の沸点(常圧ないし大気圧における沸点)は、特に限定されないが、粘着剤層を形成するという観点からは、比較的低沸点、例えば、180℃以下、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは130℃以下であってもよい。
溶媒は、少なくとも吸水性材料(B)(特にラクタム環構造を有する重合体)を溶解可能な有機溶媒(有機溶媒B1ということがある)を含んでいてもよい。
本開示の有機溶媒は、吸水性材料の種類等にもよるが、親水性又は水溶性の溶媒であってもよい。このような溶媒の水に対する溶解度(20℃)は、例えば、10g/100g以上、好ましくは20g/100g以上、さらに好ましくは50g/100g以上であってもよく、水と混和(任意に混和)する溶媒(水に対する良溶媒)であってもよい。
【0053】
本開示の有機溶媒は、重合体(A)を溶解可能な有機溶媒(有機溶媒A1ということがある)を含んでいてもよい。このような有機溶媒A1は、重合体(A)の種類にもよるが、疎水性の溶媒であってもよい。このようなこのような溶媒の水に対する溶解度(20℃)は、例えば、10g/100g以下(例えば、10g/100g未満)であってもよく、水に対して実質的に溶解しない溶媒(水に対する貧溶媒)であってもよい。
【0054】
有機溶媒A1は、有機溶媒B1と共通する溶媒、すなわち、吸水性材料(B)(特にラクタム環構造を有する重合体)及び重合体(A)の双方を溶解可能な有機溶媒であってもよいが、通常、吸水性材料(B)(特にラクタム環構造を有する重合体)を溶解しない(又は溶解しがたい)溶媒であってもよい。
有機溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0055】
具体的な有機溶媒B1としては、吸水性材料(B)の種類等にもよるが、上記例示の溶媒のうち、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリンなど)、ハロゲン系溶媒(例えば、クロロホルムなど)、アミド類[例えば、鎖状アミド(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、環状アミド(又はラクタム、例えば、2-ピロリドンなど)]等が挙げられる。
また、具体的な有機溶媒A1としては、例えば、重合体(A)の種類等にもよるが、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなど)、脂肪族エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)等が挙げられる。吸水性材料(B)、特にラクタム環構造を有する重合体の溶解性の観点より、アルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールがより好ましく、メタノール、イソプロパノールがさらに好ましい。
有機溶媒B1や有機溶媒A1は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶媒の種類(さらにはその組み合わせや、組成物における各成分の存在形態)を選択することにより、効率よく湿潤面に対する粘着性と再剥離性のバランスをとることができる。
本開示に粘着剤組成物は、溶媒を含んでいることが好ましく、溶媒は、少なくとも有機溶媒を含んでいる場合が多い。このような有機溶媒を含む溶媒において、溶媒全体に対する有機溶媒の割合は、例えば、10質量%以上から選択でき、通常、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であってもよく、80質量%以上[例えば、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%(実質的に有機溶媒のみ)等]であってもよい。
【0057】
本開示に粘着剤組成物は、本発明の目的を阻害しない限り、水を含有していてもよいが、特に、含む場合でも比較的少ないのが好ましい。溶媒全体に対する水の割合は、90質量%以下等の範囲から選択でき、通常、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下であってもよく、20質量%以下[例えば、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、0質量%(実質的に水を含有しない)等]であってもよい。
【0058】
溶媒が有機溶媒B1を含む場合、溶媒全体に対する有機溶媒B1の割合は、例えば、0.5質量%以上(例えば、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上)、好ましくは3質量%以上(例えば、3.5質量%以上、4質量%以上)、さらに好ましくは5質量%以上(例えば、5.5質量%以上、6質量%以上、6.5質量%以上、7質量%以上)であってもよく、8質量%以上(例えば、8.5質量%以上、9質量%以上、9.5質量%以上)、10質量%以上等であってもよい。
溶媒が有機溶媒A1を含む場合、溶媒全体に対する有機溶媒A1の割合は、例えば、99.5質量%以下(例えば、99質量%以下、98.5質量%以下、98質量%以下、97.5質量%以下)、好ましくは97質量%以下(例えば、96.5質量%以下、96質量%以下、95.5質量%以下)、さらに好ましくは95質量%以下(例えば、94.5質量%以下、94質量%以下、93.5質量%以下、93質量%以下、92.5質量%以下)、さらに好ましくは92質量%以下(例えば、91.5質量%以下、91質量%以下、90.5質量%以下)であってもよく、90質量%以下等であってもよい。
溶媒が、有機溶媒A1と有機溶媒B1とを含む場合、これらの割合は、有機溶媒A1/有機溶媒B1(質量比)=99.9/0.1~1/99(例えば、99.5/0.5~5/95)、好ましくは99/1~10/90(例えば、98.5/1.5~15/85)、さらに好ましくは98/2~20/80(例えば、97.5/2.5~25/75)、特に97/3~30/70(例えば、96.5/3.5~40/60)程度であってもよく、99/1~50/50、99/1~55/45、98/2~60/40、97/3~65/35、96/4~70/30(例えば、95/5~80/20)等であってもよい。
【0059】
本開示の粘着剤組成物は、重合体(A)及び吸水性材料(B)が、溶媒中に溶解又は分散した形態であってもよく、少なくとも吸水性材料(B)(特にラクタム環構造を有する重合体)が、溶媒に溶解しているのが好ましい。
このような溶解状態でラクタム環構造を有する重合体(さらには重合体(A))を存在させることで、湿潤面に対する、特に凹凸を有する湿潤面に対する粘着力と再剥離性を両立しやすい。
なお、このような溶解状態は、ラクタム環構造を有する重合体、(さらには重合体(A))が実質的に溶解状態にあればよく、完全に溶解していてもよく、一部において溶け残りがあってもよい。
【0060】
このような組成物(溶け残りがある組成物)において、溶解していない固形分(例えば、吸水性材料(B)及び/又は重合体(A))の割合は、固形分(吸水性材料(B)及び重合体(A))の総量に対して、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下などであってもよい。
なお、本開示の粘着剤組成物において、固形分(又は不揮発分、例えば、重合体(A)及び吸水性材料(B)の総量)の割合は、組成物全体に対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であってもよく、80質量%以下(例えば、70質量%以下、60質量%以下)であってもよい。
本開示の粘着剤組成物の粘度は、例えば、300mPa・s以上、好ましくは500mPa・s以上、さらに好ましくは1000mPa・s以上であってもよく、20000mPa・s以下(例えば、15000mPa・s以下、10000mPa・s以下)であってもよい。
【0061】
本開示の粘着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、各成分(重合体(A)、吸水性材料(B)、溶媒等)を混合することで得ることができる。
特に、本発明では、吸水性材料(B)及び有機溶媒B1(吸水性材料(B)を溶解
可能な有機溶媒B1)を含有する組成物(組成物Bということがある)と、重合体(A)とを混合することで、組成物を得てもよい。
重合体(A)と吸水性材料(B)とは、通常、容易に混合(相溶)しないが、このような特定の工程(予め組成物Bを調製する工程)を経ることで、これらを比較的均一に混合(相溶)させることができる。
【0062】
そのため、本発明は、このような組成物Bを包含する。このような組成物Bは、重合体(A)、吸水性材料(B)及び溶媒を含む組成物(粘着剤組成物)を得るための組成物ということができる。
そして、このような組成物Bにおいて、有機溶媒B1(有機溶媒B1を含む溶媒)は、重合体(A)と吸水性材料(B)とを均一に混合(又は相溶)するために有用な成分ということができる。そのため、本発明には、重合体(A)に対する吸水性材料(B)の相溶性を改善又は向上するための剤であって、有機溶媒B1を含む剤も含まれる。
【0063】
なお、このような有機溶媒B1は、前記例示の溶媒(有機溶媒B1)のいずれであってもよいが、特に、粘着剤層における相溶性の観点から、特に、アルカノール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級又はC1-4アルカノール;エチレングリコール等のC2-4アルカンジオール;グリセリン等)、環状アミド(2-ピロリドンなど)等を好適に使用してもよい。
【0064】
組成物Bにおいて、吸水性材料(B)は、通常、溶媒(有機溶媒B1を含む溶媒)に溶解している(溶解状態にある)が、このような溶解状態は、完全溶解であってもよく、一部に溶け残りがあってもよい。このような溶け残りがある場合の溶解していない吸水性材料(B)の割合は、吸水性材料(B)の総量に対して、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下などであってもよい。
組成物Bにおいて、吸水性材料(B)の割合は、特に限定されないが、例えば、1質量%以上(例えば、3質量%以上)、好ましくは5質量%以上(例えば、7質量%以上)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、12質量%以上、15質量%以上等)であってもよく、90質量%以下(例えば、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下等)であってもよい。
【0065】
重合体(A)は、組成物Bに直接混合してもよく、重合体(A)及び溶媒A1(重合体(A)を溶解可能な有機溶媒A1)を含有する組成物(組成物Aということがある)として混合してもよい。
すなわち、組成物Bと、予め調製した組成物Aとを混合することで、粘着剤組成物を調
製してもよい。
【0066】
このような組成物Aにおいて、有機溶媒A1は、前記例示の溶媒(有機溶媒A1)等と同様の溶媒を選択できる。特に、有機溶媒A1と有機溶媒B1とは互いに混和可能(有機溶媒A1は有機溶媒B1に対する良溶媒)であってもよい。
組成物Aにおいて、重合体(A)は、通常、溶媒(有機溶媒A1を含む溶媒)に溶解している(溶解状態にある)が、このような溶解状態は、完全溶解であってもよく、一部に溶け残りがあってもよい。このような溶け残りがある場合の溶解していない重合体(A)の割合は、重合体(A)の総量に対して、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下などであってもよい。
組成物Aにおいて、重合体(A)の割合は、特に限定されないが、例えば、1質量%以上(例えば、3質量%以上)、好ましくは5質量%以上(例えば、7質量%以上)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、12質量%以上、15質量%以上等)であってもよく、90質量%以下(例えば、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下等)であってもよい。
【0067】
なお、組成物が、他の成分(架橋剤等)を含む場合、混合の態様やタイミングは特に限定されず、例えば、組成物B及び重合体(A)(又は組成物A)の少なくともいずれか一方に含有させてもよく、組成物B及び重合体(A)(又は組成物A)に対して、別途混合してもよい。
【0068】
[粘着剤層]
本開示の粘着剤組成物は、粘着剤(粘着剤層)を形成するのに好適である。
粘着剤(粘着剤層)の形成方法は、特に限定されないが、例えば、基材上に粘着性組成物を塗布することにより形成してもよく、基材を用いることなく形成してもよい。
【0069】
基材としては、特に限定されず、例えば、上質紙、クラフト紙、クレープ紙、グラシン紙等の従来公知の紙類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、セロファン等のプラスチック;織布、不織布等の繊維製品等を利用できる。基材としては接着層の接着力を保持する観点より、湿潤面へ接着した後の吸液した水を貯えることが可能な吸水性材料や不織布を用いることが好ましい。
粗面への追従性を高める観点から、柔軟性の高い基材が好ましく、具体的にはポリ塩化ビニル、織布、不織布系の基材、また、ポリウレタン、ポリオレフィン、オレフィン系エラストマーからなる樹脂を主成分とする伸縮性基材やポリエチレン系発泡体が好ましい。
基材の形状は、例えば、フィルム状、シート状、テープ状、板状、発泡体等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
なお、基材は、所定の機能(例えば、断熱、遮熱、紫外線遮蔽等)を備えたものであってもよい。
【0070】
粘着剤層は、基材の少なくとも一方の面(面側)に形成してもよく、両面に形成してもよい。両面に形成する場合、両面テープ等とすることができる。
なお、粘着剤層に対して基材と反対側の面(背面)には、離型紙(離型剤層)等を施しても(貼付又は貼着させても又は設けても)よい。離型紙としては、例えば、紙、合成紙、プラスチックフィルム等の表面に離型剤(離型剤層)が塗布(又は形成)されたシート(フィルム)状物等が挙げられる。離型剤層を形成することで、粘着剤表面を有効に保護又は保存できる。
【0071】
粘着剤組成物を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、ロールコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング法等の公知の方法を採用することができる。この場合、粘着剤組成物を基材や被着体に直接塗布する方法、離型紙等に粘着剤組成物を塗布する方法、離型紙等に粘着剤組成物を塗布した後、基材や被着体上に貼り合わせたり、転写する方法等のいずれも採用可能である。
【0072】
粘着剤組成物を塗布した後の乾燥温度は、特に限定されるものではないが、組成物中の溶媒が十分揮発する温度であることが好ましい。
【0073】
粘着製品は、粘着剤(粘着剤層)を備えている。このような粘着製品は、粘着剤層の形成方法等に応じて、例えば、粘着シート(粘着シート)、粘着ラベル、粘着テープ、両面テープ等が挙げられる。
このような粘着製品は、例えば、被着体に粘着剤層を接触(圧着)させて使用できる。なお、剥離紙を有する場合、剥がして用いることができる。
粘着剤(粘着剤層)の厚みは、用途等に応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、5μm以上、好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上等であってもよく、5mm以下、3mm以下、2mm以下等であっても良い。粘着層の厚みが前記範囲であると、粗面への追従性が上がり、湿潤状態の粗面であっても高い粘着力が得られ、さらに被着体への糊残り性が少なくなることが期待される。
【0074】
粘着剤層は、不透明であってもよく、透明であってもよい。
粘着剤層は、粘着剤組成物に対応する成分(重合体(A)、吸水性材料(B)、架橋剤等)を含んでいる。これらの成分の粘着剤層における含有形態は、特に限定されないが、特に、重合体(A)と吸水性材料(B)とが比較的均一に混合した(相溶した)形態であってもよい。湿潤時における粘着性や透明性は、このような形態で含有していることで、より一層効率よく発揮ないし発現しうるものと考えられる。
なお、粘着剤層の透明性は、粘着剤組成物における各成分の存在形態とは必ずしも対応しないが、粘着剤組成物において吸水性材料(B)(さらには重合体(A))が比較的均一に混合(溶解、相溶)している場合に、粘着剤層における透明性を効率よく発現できる場合が多い。
【0075】
[粘着製品]
本開示の粘着剤組成物は各種粘着製品に用いることができる。
本開示の粘着製品として、例えば、粘着シート、粘着ラベル、粘着テープ、両面テープ等が挙げられる。このような粘着製品は、基材レスで、又は基材に粘着剤の層を形成することにより製造される。より具体的には、例えば、コンクリート表面に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及び不織布等の養生シートを固定化するためのコンクリート養生用粘着テープ、又は、コンクリートを保護するマスキングテープ(コンクリート用養生テープ)等が粘着製品として挙げられ、湿潤面、特に凹凸を有する湿潤面の養生テープとして使用することが有効である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」は「重量部」を意味する。
【0077】
<測定方法>
<重量平均分子量>
重合体の重量平均分子量の測定は、下記の条件にて行った。
装置:東ソー社製GPCシステム HLC-8320GPC ECOSEC
カラム:東ソー社製、TSKgel Guardcolumn Super HZ-Hを1本接続し、次いでTSKgel Super HZM-Hを直列で3本接続
展開溶媒:テトラヒドロフラン
展開溶媒の流量:0.35ml/分
検出器:RI
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS-オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.2%
サンプル打ち込み量:10μL
【0078】
<実施例1>
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗及び撹拌機を備えた反応容器内に酢酸エチル150部(重量部、以下同じ)、アクリル酸-2-メトキシエチル(AME)95.5部、アクリル酸(AA)2.0部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)2.0部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.5部を仕込んだ(表1の組成1)。その後、この反応容器内にアゾ系重合開始剤(日本ファインケム社製、商品名:ABN-E)0.1部を添加し、窒素ガス雰囲気中にて80℃で6時間反応させることにより、重量平均分子量が60万、固形分40%のアクリル系ポリマーを得た。その後得られたアクリル系ポリマーを含む反応混合物を室温まで冷却し、粘着剤組成物Aを得た。粘着剤組成物A 100部に対して、ポリビニルピロリドン(PVP, K-30 日本触媒社製)のメタノール溶液を20部(PVPとして4部、PVPとしてアクリル系ポリマー固形分に対して10質量%)、テトラッドC(三菱ガス化学株式会社製)0.021部(アクリル系ポリマー固形分に対して0.0525質量%)を添加することにより、本開示の粘着剤組成物(B-1)を得た。アプリケーターを用いて前記粘着剤組成物Bを剥離紙(サンエー化研株式会社製、商品名:K-80HS)に塗布し、次いで80℃の温度で3分間乾燥させた。これにより、剥離紙上に厚さが50μmである粘着剤層を形成させた。この粘着剤層上にPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム基材(厚さ:25μm)を貼り合わせた。その後、40℃で120時間エージングを行い、片面が接着面である本開示の粘着テープを得た。
【0079】
<実施例2~4>
架橋剤の種類及び量を表2に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様の反応および操作を行い、アクリル系ポリマー、本開示の粘着剤組成物及び粘着テープを得た。
<比較例1>
モノマー組成を表1に示す組成3に変更した以外は、実施例1と同様の反応および操作を行い、アクリル系ポリマー、比較粘着剤組成物および粘着テープを得た。
【0080】
【表1】
表1中の略称はそれぞれ以下の化合物を示す。
BA:ブチルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
AME:2-メトキシエチルアクリレート
NVP:N-ビニル-2-ピロリドン
AA:アクリル酸
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
【0081】
実施例1~4及び比較例1~3で得られた粘着テープの、湿潤滑面コンクリート表面、及び湿潤粗面コンクリート表面に対する粘着性は以下の方法によって評価した。
【0082】
<コンクリート表面の粗さ>
滑面コンクリート表面
JIS規格K5600対応のモルタル板を粒度150のサンドペーパーで表面を研磨したものを用意し、このモルタル板の表面を、レーザー顕微鏡(VK-9710、キーエンス社製)にて表面粗さを測定した。
算術表面粗さSa:4.635μm
二乗平均平方根高さSq:8.702μm
最大山高さSp:128.474μm
最大谷深さSv:160.405μm
粗面コンクリート表面
JIS規格K5600対応のモルタル板の裏面を粒度150のサンドペーパーで表面を研磨したものを用意し、このモルタル板の表面を、(VK-9710、キーエンス社製)にて表面粗さを測定した。
算術表面粗さSa:20.747μm
二乗平均平方根高さSq:26.399μm
最大山高さSp:162.57μm
最大谷深さSv:203.024μm
【0083】
(1)湿潤滑面コンクリート表面に対する粘着性の評価方法
粘着テープを長さ50mm、幅25mmの長方形に裁断することにより、粘着テープを作製した。被着体としては、JIS規格K5600対応のモルタル板を用意した。モルタル板としては粒度150のサンドペーパーで表面を研磨したものを用いた。研磨したモルタル板を水中に24時間浸漬したあとに取り出し、モルタル板の表面の水を布で軽く1往復ふき取り、湿潤状態の被着体とした。温度が23℃、相対湿度が50%の雰囲気中にて前記粘着テープの剥離紙を剥離して、モルタル面上に、粘着面がモルタル面と接するように粘着テープを置き、質量が2kgのロールを、モルタル面上の粘着テープの上で往復させることにより、モルタル面上に貼り付けた。25分間静置した後、剥離角度180°、剥離速度300mm/minで剥離したときの剥離力(粘着力)を測定し、湿潤コンクリート表面に対する粘着性を評価した。
【0084】
(2)湿潤粗面コンクリート表面に対する粘着性の評価方法
上記(1)と同様の手法で、被着体として粗面コンクリートを用い評価した。
【0085】
(3)湿潤粗面コンクリート表面に対する再剥離性の評価
前記(1)及び(2)において、それぞれ、乾燥コンクリート表面及び湿潤コンクリート表面に対する剥離力の測定の後、目視により剥離後のモルタル表面の糊残りの状態を観察し、以下に示す基準により評価した。
○: 糊残り無し
×: 貼り跡の一部もしくは全面に糊残り有り
【0086】
(4)保持力の評価方法
被着体として表面が研磨されたステンレス鋼板を用い、試験片を温度が23℃、相対湿度が50%の雰囲気中にて上記ステンレス鋼板上に載せ、当該試験片上から質量が2kgであるゴムローラーで1往復させることによって試験片を圧着させた。圧着させた試験片を温度が80℃の雰囲気中に20分間放置した後、1kgの錘を粘着シートの端部に取り付けて吊り下げて、当該雰囲気中で粘着シートが剥がれ落ちるのに要する時間を計測した。
【0087】
【表2】
表2中の略称はそれぞれ以下の化合物を示す。
PVP:ポリビニルピロリドン
MeOH:メタノール
実施例1~4より、本開示の粘着剤組成物から得られる本開示の粘着テープは、湿潤状態のコンクリート粗面表面に対する粘着性に優れることがわかる。