IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-インクジェットプリンタ 図1
  • 特許-インクジェットプリンタ 図2
  • 特許-インクジェットプリンタ 図3
  • 特許-インクジェットプリンタ 図4
  • 特許-インクジェットプリンタ 図5
  • 特許-インクジェットプリンタ 図6
  • 特許-インクジェットプリンタ 図7
  • 特許-インクジェットプリンタ 図8
  • 特許-インクジェットプリンタ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
B41J2/01 127
B41J2/01 301
B41J2/01 305
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021011692
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115192
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】324012246
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】石原 正教
(72)【発明者】
【氏名】半場 栄治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広信
(72)【発明者】
【氏名】山本 明広
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-000755(JP,A)
【文献】特開2016-215522(JP,A)
【文献】特開2019-136979(JP,A)
【文献】特開2019-001136(JP,A)
【文献】特開2007-144759(JP,A)
【文献】特開2020-157591(JP,A)
【文献】特開2007-090747(JP,A)
【文献】特開2005-088530(JP,A)
【文献】特開2020-196133(JP,A)
【文献】特開2017-081008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台を収容する内部空間を有し、開口が形成されたケースと、
前記ケースに設けられ、かつ、前記開口を開閉自在に構成されたフロントカバーと、
前記載置台に載置された前記記録媒体に光硬化性インクを吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記内部空間に設けられたインクヘッドと、
前記内部空間に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記光硬化性インクに向けて光を照射可能な光照射装置と、
前記載置台よりも上方に位置するように前記内部空間に設けられ、前記載置台に向けて前記光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射可能な光源と
前記光源を制御する制御装置と、を備え、
前記フロントカバーは、透明な窓部を有し、
前記載置台に載置された前記記録媒体は、前記窓部を介して視認可能であり、
前記インクヘッドは、主走査方向に移動可能に設けられ、
前記載置台は、前記主走査方向と直交する方向である副走査方向に移動可能に設けられ、
前記光源は、前記副走査方向の一方側に設けられた第1光源と、前記副走査方向の他方側に設けられた第2光源と、を含み、
前記制御装置は、前記記録媒体に複数の前記ノズルの吐出状態を確認可能なテストパターンが透明なインクによって印刷されたとき、または、前記記録媒体に前記テストパターンが前記記録媒体と同色のインクによって印刷されたとき、前記第1光源および前記第2光源のうち、前記副走査方向に関して前記テストパターンからより離れた光源から光を照射させる光源制御部を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第1光源の少なくとも一部は、平面視で、前記インクヘッドの移動軌跡と重なる、請求項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記光源制御部は、前記記録媒体に複数の前記ノズルの吐出状態を確認可能なテストパターンが印刷されたとき、前記光源から照射される光の色を前記テストパターンの色の補色とする、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台を収容する内部空間を有し、開口が形成されたケースと、
前記ケースに設けられ、かつ、前記開口を開閉自在に構成されたフロントカバーと、
前記載置台に載置された前記記録媒体に光硬化性インクを吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記内部空間に設けられたインクヘッドと、
前記内部空間に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記光硬化性インクに向けて光を照射可能な光照射装置と、
前記載置台よりも上方に位置するように前記内部空間に設けられ、前記載置台に向けて前記光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射可能な光源と、
前記インクヘッドに着脱可能に形成され、前記インクヘッドに取り付けられたときに前記ノズル面を覆いかつ前記ノズル面との間に密閉空間を形成するキャップと、
前記光源を制御する制御装置と、を備え、
前記フロントカバーは、透明な窓部を有し、
前記載置台に載置された前記記録媒体は、前記窓部を介して視認可能であり、
前記制御装置は、前記キャップが前記インクヘッドに取り付けられていないときには、前記光源から前記光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射する光源制御部を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記光源制御部は、前記キャップが前記インクヘッドに取り付けられていないときには、前記光源から第1の波長の光を照射させ、前記キャップが前記インクヘッドに取り付けられているときには、前記光源から第2の波長の光を照射させる、請求項に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、従来から光硬化性インクを使用したインクジェットプリンタ(以下、単に「光硬化型のプリンタ」ということがある。)が知られている。光硬化型のプリンタは、載置台に載置された記録媒体にインクヘッドから光硬化性インク(例えば紫外線硬化インク)を吐出し、吐出した光硬化性インクに光照射装置から光(例えば紫外線)を照射する。これにより、記録媒体上で素早く光硬化性インクが硬化されてインク層が形成され、所望の画像を印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-142374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光硬化型のプリンタでは、載置台に載置された記録媒体に外部からの光(例えば紫外線)が到達しないように、外部から閉鎖された内部空間を有する。特許文献1に示すプリンタでは、フロントカバーに透明のアクリル板によって形成された窓部が設けられており、窓部を介して内部空間を認識することができる。しかしながら、窓部には紫外線と可視光の一部が透過しないような処理が施されており(例えば紫外線カットフィルムが貼り付けられている)、内部空間を明確に視認することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プリンタの内部空間をより鮮明に視認することができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、プリンタの内部空間に載置台に向けて光を照射可能な光源を設けることを検討した。しかしながら、単に光源を設けただけでは照射される光によってはインクヘッドから吐出される光硬化性インクが硬化してしまい、画質の形成に影響がでたり、インクヘッドのノズル面に反射した光が到達してノズルに目詰まりが発生したりしてしまう虞があるという知見を得た。そこで、内部空間に設ける光源として、光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射可能な光源を設けることによって、光硬化性インクの硬化を生じさせることなく内部空間を明確に視認できることに至った。
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体が載置される載置台と、前記載置台を収容する内部空間を有し、開口が形成されたケースと、前記ケースに設けられ、かつ、前記開口を開閉自在に構成されたフロントカバーと、前記載置台に載置された前記記録媒体に光硬化性インクを吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記内部空間に設けられたインクヘッドと、前記内部空間に設けられ、前記記録媒体に吐出された前記光硬化性インクに向けて光を照射可能な光照射装置と、前記載置台よりも上方に位置するように前記内部空間に設けられ、前記載置台に向けて前記光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射可能な光源と、を備えている。前記フロントカバーは、透明な窓部を有している。前記載置台に載置された前記記録媒体は、前記窓部を介して視認可能である。
【0008】
本発明のインクジェットプリンタによると、フロントカバーは透明な窓部を有し、窓部を介して載置台に載置された記録媒体を視認することができる。さらに、内部空間には載置台よりも上方に光源が配置されており、光源は載置台に向けて光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射可能に構成されている。このため、光源から光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射することによって、吐出された光硬化性インクの硬化が進行することなく、内部空間をより鮮明に視認することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリンタの内部空間をより鮮明に視認することができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】一実施形態に係るフロントカバーが開いた状態のプリンタの正面図である。
図3】一実施形態に係るフロントカバーおよびケースを取り外した状態のプリンタの平面図である。
図4】一実施形態に係るキャリッジの記録媒体と対向する側の面の構成を示す模式図である。
図5】一実施形態に係るプリンタの断面図である。
図6】一実施形態に係るキャッピング装置の周辺の構成を示す図であり、インクヘッドにキャップが取り付けられた状態を示す正面図である。
図7】一実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図8】光源から照射する光を設定する手順を示すフローチャートである。
図9】第1光源および第2光源からインクに向けて光を照射する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。プリンタ10は、記録媒体5(図2参照)に印刷を行う。以下の説明では、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。また、後は副走査方向Xの上流側に相当し、前は副走査方向Xの下流側に相当する。符号Zは上下方向を示している。上下方向Zは、正面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
本実施形態において用いられる記録媒体5は、例えば、記録紙や転写紙などの平面シートであってもよいし、携帯電話ケースなどの各種ケース、小型電子機器、キーホルダやフォトフレームやペンなどの部品小物、日用品、アクセサリなどの立体物であってもよい。記録媒体5を形成する材料は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類はもちろんのこと、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体などの樹脂類、アルミニウムやステンレス鋼などの金属類、カーボン、陶器、セラミック、ガラス、ゴム、皮革、木材などであってもよい。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成された筐体12を備えている。筐体12は、ベース部材13と、ケース15と、フロントカバー23と、操作パネル25とを含む。図2に示すように、ベース部材13は、底壁13Aと、左側壁13Lと、右側壁13Rと、支持壁13Tとを備えている。底壁13Aは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びる。左側壁13Lは、上下方向Zおよび副走査方向Xに延びる。右側壁13Rは、上下方向Zおよび副走査方向Xに延びる。右側壁13Rは、左側壁13Lより右方に配置されている。左側壁13Lおよび右側壁13Rは、底壁13Aに設けられている。支持壁13Tは、主走査方向Yに延びる。支持壁13Tは、左側壁13Lおよび右側壁13Rに支持されている。ケース15は、ベース部材13に取り付けられている。ケース15は、内部空間15Sを有する。ケース15には、開口28が形成されている。より詳細には、開口28はケース15の前部に形成されている。
【0015】
図2に示すように、フロントカバー23は、ケース15の開口28を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー23は、後端を軸に回転可能なように、ケース15に設けられている。フロントカバー23を上方に回転させることによって、ケース15の内部空間15Sと外部空間とが連通される。内部空間15Sは、後述するインクヘッド30によって記録媒体5に印刷が行われる空間である。フロントカバー23は、透明な窓部23Aと、窓部23Aを支持する枠部23Bとを備えている。窓部23Aは、フロントカバー23の前部および上部に設けられている。窓部23Aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。窓部23Aには、外部空間の光(例えば紫外線)が内部空間15Sに到達しないように処理が施されている。プリンタ10の使用時(例えば印刷時等)は、フロントカバー23が閉じているため、外部空間の塵および埃が内部空間15Sに入り込み難く、かつ、外部空間の光が内部空間15Sに到達することが抑制されている。ユーザは、窓部23Aから筐体12の内部(即ち内部空間15S)を視認することが可能である。即ち、ユーザは、窓部23Aを介して後述するテーブル35に載置された記録媒体5を視認することができる。
【0016】
図1に示すように、操作パネル25は、ケース15に設けられている。操作パネル25は、ケース15の上面右側に設けられている。操作パネル25は、ユーザが画像の印刷に関する操作を行うパネルである。操作パネル25には、光沢感の有無などの印刷の種類、解像度、印刷の状況などの印刷に関する情報が表示される表示画面25A、および、印刷や記録媒体5に関する情報を設定するための入力ボタン25Bなどが備えられている。
【0017】
次に、プリンタ10の内部の構成について説明する。図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド30と、光照射装置41(図3参照)と、光照射装置42と、ポインタ45と、光源50と、制御装置70とを備えている。ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド30と、光照射装置41、42と、ポインタ45と、光源50とは、内部空間15Sに設けられている。ガイドレール18は、ケース15内に配置されている。ガイドレール18は、ベース部材13の支持壁13Tに固定され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール18には、キャリッジ20が摺動自在に設けられている。キャリッジ20は、キャリッジ移動機構21(図7参照)により、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構21は、制御装置70によって制御される。キャリッジ20が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ20に搭載されたインクヘッド30、光照射装置41、42およびポインタ45は主走査方向Yに移動する。
【0018】
図2に示すように、キャリッジ20には、複数のインクヘッド30が搭載されている。インクヘッド30は、後述するテーブル35より上方に配置されている。インクヘッド30は、テーブル35に載置された記録媒体5に光硬化性を有するインク(光硬化性インク)を吐出する。インクヘッド30は、それぞれ、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)によって、ケース15内に収容されたインクカートリッジ34と連通されている。インクカートリッジ34には、それぞれ、光硬化性インクが貯留されている。
【0019】
図4に示すように、インクヘッド30は、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。インクヘッド30は、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。インクヘッド30は、副走査方向Xに並ぶ複数の第1ノズル31と、副走査方向Xに並ぶ複数の第2ノズル32と、第1ノズル31および第2ノズル32が形成されたノズル面33とを備えている。第1ノズル31および第2ノズル32は、ノズルの一例である。第1ノズル31内および第2ノズル32内は、負圧(大気圧より低い圧力)に設定されている。なお、第1ノズル31および第2ノズル32は微小であるため、図4では複数の第1ノズル31および複数の第2ノズル32を直線で表している。インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32は、記録媒体5に光硬化性インクを吐出する。本実施形態では、プリンタ10は3つのインクヘッド30を備えているが、インクヘッド30の数は3つに限定されない。また、インクヘッド30は、第1ノズル31および第2ノズル32の2種類のノズルを備えているが、1種類のノズルまたは3種類以上のノズルを備えていてもよい。
【0020】
光硬化性インクは、光(例えば紫外線)が照射されると硬化する性質を有する。光硬化性インク(例えば紫外線硬化インク)は、顔料等の着色剤と光重合性モノマーと光重合開始剤系とを含み、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、捕捉剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、溶剤等を含み得る。光硬化性インクは、例えば、プロセスカラーインクやホワイトインクやグロスインクやメタリックインクである。プロセスカラーインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク等が挙げられる。グロスインクは、透明なインクの一例である。
【0021】
光照射装置41、42は、光硬化性インクが硬化する波長の光を照射する。光照射装置41、42は、記録媒体5に吐出された光硬化性インク(例えば紫外線硬化インク)に向けて光(例えば紫外線)を照射可能に構成されている。光硬化性インクに光が照射されることによって光硬化性インクが硬化して、記録媒体5上にインク層が形成される。図2に示すように、光照射装置41、42は、キャリッジ20に搭載されている。光照射装置41、42は、後述するテーブル35より上方に配置されている。図4に示すように、光照射装置41は、インクヘッド30より左方に配置されている。光照射装置42は、インクヘッド30より右方に配置されている。なお、図5に示す例では、光照射装置42の図示を省略している。
【0022】
ポインタ45は、テーブル35に向けてスポット光を照射する。ポインタ45は、テーブル35に載置された記録媒体5に印刷を開始する前に、印刷原点を設定するために用いられる。ポインタ45は、例えば、赤色の光を照射可能なLED素子を備えている。図4に示すように、ポインタ45は、キャリッジ20に搭載されている。ポインタ45は、インクヘッド30より左方に設けられている。ポインタ45は、光照射装置41の前方に設けられている。
【0023】
図2に示すように、プリンタ10は、所謂、フラットベッドタイプのプリンタである。プリンタ10は、キャリッジ20より下方に配置されたテーブル35と、第1テーブル移動機構37と、第2テーブル移動機構38とを備えている。テーブル35、第1テーブル移動機構37および第2テーブル移動機構38は、内部空間15Sに収容されている。テーブル35は、載置台の一例である。テーブル35には、記録媒体5が載置される。テーブル35は、第1テーブル移動機構37によって、上下方向Zに移動可能に構成されている。テーブル35は、第2テーブル移動機構38によって、副走査方向Xに移動可能に構成されている。テーブル35は、インクヘッド30より下方に配置される。テーブル35は、左側壁13Lより右方かつ右側壁13Rより左方に配置される。
【0024】
図2に示すように、第1テーブル移動機構37は、高さ調整部材37aと、第1モータ39A(図7参照)とを備えている。高さ調整部材37aは、テーブル35の下面に設けられている。高さ調整部材37aは、第1モータ39Aに接続されている。第1モータ39Aは、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70によって制御される。第1モータ39Aが駆動すると、高さ調整部材37aの高さが変化して、テーブル35の高さが調整される。即ち、第1テーブル移動機構37は、テーブル35を上下方向Zに移動させる。
【0025】
図3に示すように、第2テーブル移動機構38は、スライドレール38a、38bと、搬送部材38cと、第2モータ39B(図7参照)とを備えている。スライドレール38a、38bは、副走査方向Xに延びている。搬送部材38cは、スライドレール38a、38bに対して摺動自在に設けられている。搬送部材38cの上方には、高さ調整部材37a(図2参照)を介してテーブル35が支持されている。第2モータ39Bは、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70によって制御される。第2モータ39Bが駆動すると、スライドレール38a、38bに沿って搬送部材38cが移動する。これにより、テーブル35が、副走査方向Xに移動する。即ち、第2テーブル移動機構38は、テーブル35を副走査方向Xに移動させる。
【0026】
図2に示すように、プリンタ10は、キャッピング装置90を備えている。キャッピング装置90は、筐体12内に設けられている。キャッピング装置90は、テーブル35より右方に配置されている。図6に示すように、キャッピング装置90は、3個のキャップ91と、キャップ移動機構92と、吸引ポンプ94とを備えている。キャップ91およびキャップ移動機構92は、ガイドレール18(図2参照)の右端部に位置するホームポジションHP(図2参照)に配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、印刷待機時、すなわち、印刷が行われていないときに、インクヘッド30が待機する位置である。ただし、ホームポジションHPの位置は特に限定されず、ガイドレール18の左端部であってもよい。
【0027】
キャップ91は、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32やノズル面33に付着したインクが硬化してノズルが目詰まりすることを抑制する部材である。キャップ91は、主走査方向Yに並んでいる。図6に示すように、キャップ91は、インクヘッド30がホームポジションHPに位置するとき(例えば印刷待機時)にはインクヘッド30に装着され、ノズル面33を覆う。キャップ91がインクヘッド30に取り付けられたときに、キャップ91とノズル面33との間に密閉空間93が形成される。
【0028】
キャップ移動機構92は、キャップ91を支持している。キャップ移動機構92は、キャップ91をインクヘッド30に対してそれぞれ着脱可能なように移動させる機構である。本実施形態では、キャップ移動機構92は、キャップ91を上下方向に移動させるものである。キャップ移動機構92の構成は特に限定されないが、例えば、駆動モータ92Aを備えている。駆動モータ92Aを駆動させることによって、キャップ移動機構92は、キャップ91を上下方向に移動させる。キャップ移動機構92は、インクヘッド30がホームポジションHPに移動すると、キャップ91を上方に移動させることによって、インクヘッド30にキャップ91を取り付ける。また、キャップ移動機構92は、例えば印刷を開始するときに、キャップ91を下方に移動させることによって、インクヘッド30からキャップ91を取り外す。
【0029】
図6に示すように、吸引ポンプ94は、インクヘッド30にキャップ91が装着されている状態において、密閉空間93内の流体(例えばインク)を吸引して第1ノズル31および第2ノズル32からインクを吐出させるクリーニング動作を行う。吸引ポンプ94の吸引口は、可撓性を有するチューブ95を介してキャップ91に接続されている。吸引ポンプ94の排出口は、廃液タンク99に接続されている。吸引ポンプ94に吸引された密閉空間93内の流体は、廃液タンク99に貯留される。上記クリーニング動作は、ノズルの吐出不良を解消させる作業であり、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32の詰まりを予防するための作業である。吸引ポンプ94は、制御装置70(図2参照)に制御される。
【0030】
光源50は、テーブル35に向けて光硬化性インクが硬化しない波長の光(例えば波長が450nm以上の光。なお、光硬化性インクが硬化しない波長は光硬化性インクの組成によって異なり得る。)を照射可能に構成されている。なお、光源50は、光硬化性インクが硬化する波長の光(例えば波長が450nm未満の光)を照射することも可能である。図5に示すように、光源50はケース15の内部空間15Sに設けられている。ここでは、光源50はケース15の内壁に設けられている。光源50は、テーブル35より上方に配置されている。光源50は、インクヘッド30より上方に配置されている。光源50は、第1光源51と第2光源52とを含む。第1光源51および第2光源52は、副走査方向Xに並ぶ。第1光源51は、第2光源52よりも後方に位置する。図3に示すように、第1光源51および第2光源52は、主走査方向Yに延びる。本実施形態では、第1光源51および第2光源52の主走査方向Yの長さは、テーブル35の主走査方向Yの長さよりも長いが、同じでもよいし短くてもよい。第1光源51の少なくとも一部は、平面視で、インクヘッド30の移動軌跡と重なる。第1光源51は、キャリッジ20の前端20Fより後方に位置する。第2光源52は、キャリッジ20の前端20Fより前方に位置する。第1光源51は、例えば、記録媒体5にインクが吐出された直後のインクの状態を確認するために点灯される。第2光源52は、硬化後(印刷後)のインクの状態を確認するために点灯される。第1光源51および第2光源52は、例えば、複数のフルカラーLEDをユニット化(モジュール化)した部材である。第1光源51および第2光源52は、種々の色(例えば、黄、白、赤、緑、青、シアン等)の光を照射することができる。第1光源51および第2光源52は、制御装置70に制御される。
【0031】
図7に示すように、制御装置70は、記録媒体5への印刷を制御する装置である。制御装置70の構成は特に限定されない。制御装置70は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMと、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。図2に示すように、制御装置70は、ケース15の内部に設けられている。ただし、制御装置70はケース15の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置70は、ケース15の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置70は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0032】
図7に示すように、制御装置70は、操作パネル25と、キャリッジ移動機構21と、インクヘッド30と、光照射装置41、42と、第1テーブル移動機構37(図2参照)の第1モータ39Aと、第2テーブル移動機構38(図2参照)の第2モータ39Bと、第1光源51と、第2光源52と、キャップ移動機構92の駆動モータ92Aと、吸引ポンプ94通信可能に接続している。制御装置70は、キャリッジ移動機構21、インクヘッド30、光照射装置41、42、第1モータ39A、第2モータ39B、第1光源51、および第2光源52、駆動モータ92Aおよび吸引ポンプ94を制御する。
【0033】
制御装置70は、インクヘッド30が光硬化性インクを吐出するタイミングや光硬化性インクの吐出量等を制御する。制御装置70は、光照射装置41、42から紫外線を照射するタイミング等を制御する。制御装置70は、第1光源51および第2光源52から光を照射するタイミングや光の色等を制御する。制御装置70は、キャリッジ20の主走査方向Yの移動を制御する。制御装置70は、テーブル35の上下方向Zの移動および副走査方向Xの移動を制御する。
【0034】
図7に示すように、制御装置70は、記憶部71と、判定部72と、モード確認部73と、光源制御部74とを備えている。制御装置70の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置70の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
【0035】
記憶部71は、プリンタ10の動作モードと光源50から照射する光との関係を記憶する。動作モードとしては、例えば、印刷中、クリーニング中、メディアセット、印刷完了、待機中、印刷原点の設定中、テストパターンの確認中等が挙げられる。ここで、テストパターンは、記録媒体5に印刷され、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32の吐出状態を確認するために用いられる。例えば、印刷中およびクリーニング中のときには、インクヘッド30のノズル面33が露出しているので光硬化性インクを硬化させないために、光硬化性インクが硬化しない波長の光を光源50から照射する。例えば、メディアセット、印刷完了、待機中、印刷原点の設定中およびテストパターンの確認中のときには、内部空間15Sの視認性を高めるために、光硬化性インクが硬化する波長を含む光を光源50から照射してもよい。なお、印刷中およびクリーニング中以外のときであっても、光硬化性インクが硬化しない波長の光を光源50から照射してもよい。印刷中およびクリーニング中には、例えば、黄色の光を光源50から照射する。メディアセット、印刷完了および待機中には、例えば、白色の光を光源50から照射する。印刷原点の設定中には、例えば、ポインタ45から照射される光が赤色の場合にはシアン色の光を光源50から照射する。テストパターンの確認中には、テストパターンと補色の色を光源50から照射する。なお、テストパターンが透明なインクによって印刷されている場合や記録媒体5と同色のインクによって印刷されている場合には、光源50から照射される光の色は特に限定されない。
【0036】
次に、光源50から照射される光を設定する手順について説明する。図8は、光源50から照射される光を設定する手順を示したフローチャートである。
【0037】
まず、ステップS10において、ユーザは、例えば、操作パネル25を操作してプリンタ10の光源50の点灯指示を出す。点灯指示は、制御装置70に受信される。
【0038】
ステップS20において、判定部72は、インクヘッド30がホームポジションHPに位置するかを判定する。即ち、判定部72は、キャップ91がインクヘッド30に取り付けられているかを判定する。ここでは、インクヘッド30のノズル面33が外部に露出しているかが判定される。インクヘッド30がホームポジションHPに位置する場合にはステップS30に進む。一方、インクヘッド30がホームポジションHPに位置しない場合にはステップS50に進む。
【0039】
ステップS30において、モード確認部73は、プリンタ10の動作モードを確認する。
【0040】
ステップS40において、光源制御部74は、動作モードに応じた光を光源50から照射させる。光源制御部74は、キャップ91がインクヘッド30に取り付けられているときには、光源50から第2の波長(例えば、白、シアン、赤、緑、青)の光を照射させる。光源制御部74は、動作モードがテストパターンの確認中の場合には、光源50から照射される光の色をテストパターンの色の補色としてもよい。なお、テストパターンに複数の色が印刷されている場合には、各色の補色を順番に点灯するようにしてもよいし、ユーザが手動で色を選択的に変更できるようにしてもよい。また、光源制御部74は、動作モードがテストパターンの確認中の場合であり、かつ、テストパターンが透明なインクによって印刷されている場合には、第1光源51および第2光源52のうち、副走査方向Xに関してテストパターンからより離れた光源から光を照射させてもよい。また、光源制御部74は、動作モードがテストパターンの確認中の場合であり、かつ、テストパターンが記録媒体5と同色のインクによって印刷されている場合には、第1光源51および第2光源52のうち、副走査方向Xに関してテストパターンからより離れた光源から光を照射させてもよい。例えば、図9に示すように、記録媒体5に印刷されたテストパターンのインク8に対して、第1光源51から照射される光E1は、第2光源52から照射される光E2よりも角度があるため、インク8により大きな影が生じる。この場合には、光源制御部74は、第1光源51から光を照射させる。透明なインクや記録媒体5と同色のインクは目視で確認するのが困難であるが、影を確認することによって適切に吐出されているかを確認することができる。
【0041】
ステップS50において、光源制御部74は、光硬化性インクが硬化しない波長の光を光源50から照射させる。即ち、光源制御部74は、キャップ91がインクヘッド30に取り付けられていないときには、光源50から光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射する。光源制御部74は、キャップ91がインクヘッド30に取り付けられていないときには、光源50から第1の波長(例えば黄色)の光を照射させる。
【0042】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、フロントカバー23は透明な窓部23Aを有し、窓部23Aを介してテーブル35に載置された記録媒体5を視認することができる。さらに、内部空間15Sにはテーブル35よりも上方に光源50が配置されており、光源50はテーブル35に向けて光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射可能に構成されている。このため、光源50から光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射することによって、吐出された光硬化性インクの硬化が進行することなく、内部空間15Sをより鮮明(明確)に視認することができる。
【0043】
本実施形態のプリンタ10では、光源50は、副走査方向Xの一方側(ここでは後方)に設けられた第1光源51と、副走査方向Xの他方側(ここでは前方)に設けられた第2光源52と、を含む。これにより、内部空間15Sのより広範囲に光を照射することができ、内部空間15Sをより鮮明に視認することができる。
【0044】
本実施形態のプリンタ10では、第1光源51の少なくとも一部は、平面視で、インクヘッド30の移動軌跡と重なる。これにより、記録媒体5に吐出された直後の光硬化性インクの状態をより鮮明に確認することができ、例えば、記録媒体5に印刷中の画像の進捗状況を容易に確認することができる。
【0045】
本実施形態のプリンタ10では、制御装置70の光源制御部74は、記録媒体5に複数の第1ノズル31および第2ノズル32の吐出状態を確認可能なテストパターンが透明なインクによって印刷されたとき、または、記録媒体5にテストパターンが記録媒体5と同色のインクによって印刷されたとき、第1光源51および第2光源52のうち、副走査方向Xに関してテストパターンからより離れた光源(図9に示す例では第1光源51)から光を照射させる。このように、テストパターンに照射する光の角度を大きくすることによって、テストパターンの光硬化性インクの影がより大きくなる。このため、通常は視認が困難である透明インクや記録媒体5と同色のインクであっても、影を確認することによって、テストパターンを明確に視認することができる。
【0046】
本実施形態のプリンタ10では、光源制御部74は、キャップ91がインクヘッド30に取り付けられていないときには、光源50から光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射する。インクヘッド30にキャップ91が取り付けられていないときにはノズル面33が露出しているため、ノズル面33に光硬化性インクが硬化する波長の光が到達すると、第1ノズル31および第2ノズル32の目詰まり等が発生してしまう。このため、キャップ91がインクヘッド30に取り付けられていないときには、光源50から光硬化性インクが硬化しない波長の光を照射することによって、上述の問題の発生を抑制することができる。
【0047】
本実施形態のプリンタ10では、光源制御部74は、キャップ91がインクヘッド30に取り付けられていないときには、光源50から第1の波長の光を照射させ、キャップ91がインクヘッド30に取り付けられているときには、光源50から第2の波長の光を照射させる。キャップ91がインクヘッド30に取り付けられているときにはノズル面33が露出しないため、光源50から例えば紫外線を含む第2の波長の光を照射させても、第1ノズル31および第2ノズル32の目詰まり等は発生しない。このため、内部空間15Sをより鮮明に視認可能な色を選択することができる。
【0048】
本実施形態のプリンタ10では、光源制御部74は、記録媒体5に複数の第1ノズル31および第2ノズルの吐出状態を確認可能なテストパターンが印刷されたとき、光源50から照射される光の色をテストパターンの色の補色とする。これにより、テストパターンをより鮮明に視認することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0050】
上述した実施形態では、光源50はケース15の内壁に設けられていたが、フロントカバー23の内壁に設けてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、光源50は、第1光源51および第2光源52を含んでいたが、光源は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
15 ケース
15S 内部空間
23 フロントカバー
23A 窓部
28 開口
30 インクヘッド
35 テーブル(載置台)
41、42 光照射装置
50 光源
51 第1光源
52 第2光源
70 制御装置
74 光源制御部
91 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9