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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】可動架台
(51)【国際特許分類】
   B25H 5/00 20060101AFI20250131BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20250131BHJP
   E04G 21/16 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
B25H5/00 Z
B62B3/02 H
E04G21/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021051416
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149324
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】奥 昌晃
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-251575(JP,A)
【文献】特開2003-312620(JP,A)
【文献】特開平11-222872(JP,A)
【文献】特開平10-100080(JP,A)
【文献】米国特許第05472219(US,A)
【文献】特開2021-30938(JP,A)
【文献】特開2015-85893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 5/00
B62B 3/02
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置対象物が載置される載置台部と、上部側で上記載置台部を支持し、下端部が地面側に接地する脚部と、上記脚部の下部側に配置された複数の車輪と、上記車輪を上記脚部の上記下端部よりも下方に突出移動させて可動とする状態と上記車輪を上記脚部の上記下端部よりも上方側に収納移動させて非可動とする状態とを切り替える切替装置と、を備えており、
上記切替装置は、傾倒操作で上記車輪が移動される操作レバーを備えており、
上記操作レバーの持ち手部となる上部が上記脚部の上部側よりも上側に位置し、上記脚部の上部側に上記操作レバーによる上記車輪の突出の状態を保持するレバー係止部が設けられていることを特徴とする可動架台。
【請求項2】
請求項1に記載の可動架台において、上記操作レバーは、上記脚部の外面側で当該外面に沿って傾倒することを特徴とする可動架台。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の可動架台において、各脚部に上記切替装置が備えられており、各切替装置によって複数の車輪が移動されることを特徴とする可動架台。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の可動架台において、上記操作レバーによる上記車輪の突出移動の操作を助力する助力装置を備えることを特徴とする可動架台。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の可動架台において、上記載置台部と上記脚部とが分離可能に接続されていることを特徴とする可動架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柱状構造物等の重量物を載置対象物とする架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場において鋼製の柱状構造物等を製作する場合に、この柱状構造物を門型の馬架台に載せ置くことが行われている。上記柱状構造物は重量物であるため、これを支える馬架台は頑丈に設計され、この馬架台自体も重量物となる。なお、特許文献1には、作業用可動架台が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-117830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、馬架台が重量物になると、これを工場内のクレーンを用いて移動させることが必要になり、この場合、クレーンが他の作業で使用中のために使えないと、複数名の作業員による人手で馬架台を引きずって動かすことになり、作業員に重筋作業の負担が生じていた。また、馬架台を引きずって動かすと、馬架台が転倒するおそれがあり、転倒すれば馬架台の補修作業が必要になってくる。さらに、上記柱状構造物に溶接された細かな部材が上記馬架台に接触するのを回避し、また、上記柱状構造物を、その重量バランスをとりながら上記馬架台に置く必要のために、当該馬架台の位置の微調整が必要になるが、上記引きずりでは、このような微調整は容易でない。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、移動に際して人手で引きずる作業が不要になり、架台移動のためのクレーンの使用量を低減することができ、また、位置の微調整も容易になる可動架台を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の可動架台は、載置対象物が載置される載置台部と、上部側で上記載置台部を支持し、下端部が地面側に接地する脚部と、上記脚部の下部側に配置された複数の車輪と、上記車輪を上記脚部の上記下端部よりも下方に突出移動させて可動とする状態と上記車輪を上記脚部の上記下端部よりも上方側に収納移動させて非可動とする状態とを切り替える切替装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、可動架台を移動する際には、上記車輪を上記脚部の上記下端部よりも下方に突出移動させればよいので、引きずって移動する重筋作業が不要になり、架台移動のためのクレーンの使用量を低減することができ、また、可動架台の位置の微調整も容易になる。一方、可動架台に載置対象物を載置する際には、上記車輪を上記脚部の上記下端部よりも上方側に収納移動させればよいので、可動架台で載置対象物を安定的に支持することができる。
【0008】
各脚部に上記切替装置が備えられており、各切替装置によって複数の車輪が移動されてもよい。これによれば、車輪数よりも少ない数の切替装置で車輪の移動操作が行える。
【0009】
上記切替装置は、上記脚部の外面側で当該外面に沿って傾倒する操作レバーを備えており、上記操作レバーの傾倒操作で上記車輪が移動されてもよい。これによれば、上記操作レバーの傾倒操作で当該操作レバーが上記脚部の外側に大きくはみ出すことがなく、可動架台の近傍の設備等によって傾倒操作が妨げられる事態を少なくできる。
【0010】
上記操作レバーによる上記車輪の突出移動の操作を助力する助力装置を備えてもよい。これによれば、上記車輪を突出移動させる際の上記操作レバーの傾倒操作、すなわち、当該可動架台の車輪上部分を上昇させる操作が容易になる。また、上記車輪を収納移動させる際の上記操作レバーの傾倒操作において、上記助力装置によって、当該可動架台の車輪上部分の急激な降下を抑制することもできる。
【0011】
上記操作レバーの持ち手部となる上部が上記脚部の上部側よりも上側に位置し、上記脚部の上部側に上記操作レバーによる上記車輪の突出の状態を保持するレバー係止部が設けられていてもよい。これによれば、上記操作レバーの持ち手部となる上部が上記脚部の上部側よりも上側に位置するので、上記操作レバーの操作がし易く、且つ、上記脚部の上部側に上記レバー係止部が設けられているので、上記レバー係止部を確認しながら、上記操作レバーを上記レバー係止部に保持させることが容易に行える。
【0012】
上記載置台部と上記脚部とが分離可能に接続されていてもよい。これによれば、載置対象物のサイズが変更されるのに合わせて、上記載置台部を別サイズのものに交換することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、可動架台を引きずる重筋作業が不要であり、架台移動のためのクレーンの使用量も低減でき、可動架台の位置の微調整も容易になり、また、可動架台に柱状構造物等を載置する際には、車輪を脚部の下端部よりも上方側に収納させればよいので、可動架台で載置対象物を安定的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の可動架台を示した斜視図である。
図2図1に示した可動架台の正面図である。
図3図1に示した可動架台の概略の底面から見た説明図である。
図4図1に示した可動架台の車輪収納状態の側面図である。
図5図1に示した可動架台の車輪突出状態の側面図である。
図6図1に示した可動架台の車輪収納状態の側面図である。
図7図1に示した可動架台で載置対象物を支持する態様を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1図2および図3に示すように、この実施形態の可動架台1は、1つの載置台部2と、2個の脚部3と、4個の車輪4と、各脚部3に設けられた2個の切替装置5と、を備える。
【0016】
上記載置台部2は、載置対象物(鉄骨柱等)が載置される部位であり、例えばH形鋼がそのフランジを上下に向けて水平に配置されてなる荷重受け部21を備えている。荷重受け部21の中央側と両端側には、補強板21aが上記のフランジおよびウェブに溶接固定されている。また、荷重受け部21の両端側上面には、載置対象物のずれ落ち防止のための受け柱22が溶接等によって固定されている。そして、荷重受け部21の上面上であって上記受け柱22間には、上記荷重受け部21の上記H形鋼よりも小サイズのH形鋼からなる接触部材23がフランジを上下に向けて水平に設けられており、この接触部材23上に載置対象物が載置される。
【0017】
上記受け柱22の上端には、荷重受け部21に向かって下り傾斜する傾斜面部22aが形成されており、クレーンで吊られた載置対象物を上から降ろして接触部材23上に置く際に、載置対象物を接触部材23側に導き易くなっている。
【0018】
また、各受け柱22の外側面(接触部材23側と反対側の面)には、取手部24が固定されている。この取手部24は、可動架台1を移動させる際に、作業者が把持できる部位である。
【0019】
上記脚部3は、上部31側で上記載置台部2を支持し、下端部32が地面側に接地する部材である。また、脚部3は、例えば、フランジを上下に向けて水平に配置されたH形鋼からなり、そのウェブ延設方向(長手方向)を、荷重受け部21のウェブ延設方向(長手方向)に直交させている。この脚部3の上部31は上フランジからなり、下端部32は下フランジからなる。また、各脚部3の中央側と両端側には、補強板33が上記のフランジおよびウェブに溶接固定されている。中央側の補強板33の位置は、荷重受け部21のウェブ位置に一致している。
【0020】
上記脚部3の上部31には、上記荷重受け部21の両端の下面部25が、ボルト・ナット11によって分離可能に固定されている。そして、上記車輪4は、各脚部3の下部側であって、ウェブで仕切られる2領域のうちの内側領域に、ウェブ延設方向に離間して2個配置されている。車輪4における走行方向は、脚部3のウェブ延設方向(長手方向)に一致する。
【0021】
各切替装置5は、各脚部3の上記2個の車輪4を当該脚部3の下端部32よりも下方に突出移動させて当該可動架台1を可動とする状態と上記2個の車輪4を脚部3の下端部32よりも上方側に収納移動させて当該可動架台1を非可動とする状態とを切り替えるものであり、各車輪4を揺動支持する揺動部材51、脚部3のウェブに直交して回動可能に支持されるとともに一端側にそれぞれ上記揺動部材51が固定された支持軸52A,52B、上記2個の揺動部材51を連結するリンク部材53等を備える。
【0022】
各車輪4は、斜め配置された上記揺動部材51の一端側に回転自在に取り付けられている。この揺動部材51の他端側は、上記一端側よりも上側に位置している。揺動部材51の斜め姿勢は、車輪4を収納移動させる状態のときよりも、車輪4を突出移動させた状態のほうが鉛直に近くなる。すなわち、上記揺動部材51の姿勢を鉛直に近づけることで、各車輪4の接地面を脚部3の下端部32よりも下方に位置させることができる。なお、上記下端部32には、移動する車輪4を通すための開口32aが形成されている。
【0023】
また、上記2個の揺動部材51は、その中央部に上記支持軸52A,52Bと同方向に突出する突出部を有しており、両突出部が上記リンク部材53によって相互に連結されている。このリンク部材53により、上記2個の揺動部材51は、一方が揺動すれば、他方も同時に揺動する。
【0024】
上記支持軸52Aの他端側(揺動部材51が固定された側と反対の側)は、脚部3のウェブを貫通し、このウェブで仕切られる2領域のうちの外側領域に突出している。そして、この支持軸52Aの上記他端側には、操作レバー54の下端部が固定されている。なお、脚部3のウェブに形成した貫通孔に金属製のパイプを通して当該パイプを上記ウェブに溶接し、上記パイプで支持軸52A,52Bを回転支持することができる。
【0025】
図4および図5に示すように、操作レバー54が支持軸52Aを中心に傾倒操作されると、一方の揺動部材51が揺動し、この揺動がリンク部材53によって他方の揺動部材51に伝達され、他方の揺動部材51も揺動する。操作レバー54は、脚部3の外面側に位置しており、当該外面に沿って傾倒し、この傾倒で上記2個の車輪4を移動させる。
【0026】
操作レバー54の持ち手部となる部位を含む上部54aは、脚部3の上部31よりも上側に位置する。また、操作レバー54の上部54aは、車輪4を収納移動させた状態のときに、載置台部2の近くに位置し、車輪4を突出移動させるときに載置台部2から遠ざかる。また、脚部3の上部31(上フランジ)の外側縁には、操作レバー54による車輪4の突出移動の状態を保持するレバー係止部35が設けられている。すなわち、操作レバー54は、車輪4を突出移動させる傾倒操作において、図6に示すように、上部54aの一部がレバー係止部35に係止される。また、レバー係止部35は、載置台部2から遠ざかるほど脚部3の外側への突出量が漸増するテーパ部を有するとともに、載置台部2から最も遠ざかる位置に係合凹部35aを有している。
【0027】
また、操作レバー54による車輪4の突出移動の操作を助力する例えば高圧ガス式のダンパー装置(助力装置)56が、脚部3のウェブで仕切られる2領域のうちの外側領域に配置されている。このダンパー装置56の後端部は、上記ウェブに固定された支持部材56aによって揺動可能に支持されている。また、ダンパー装置56は、上記ウェブの中央側に位置する補強板33の形成された開口33aを通って略水平に位置する。上記一方の揺動部材51が一端側に固定された支持軸52Aには、連結突起部521が固定されており、この連結突起部521にダンパー装置56のシャフトの先端部が連結されている。
【0028】
上記の構成であれば、可動架台1を移動する際には、車輪4を脚部3の下端部32よりも下方に突出移動させて(当該可動架台1の車輪上部分を持ち上げて)、当該可動架台1を可動とすることができるので、可動架台1を引きずって移動する重筋作業を不要にでき、架台移動のためのクレーンの使用量を低減することができ、また、可動架台1の位置の微調整も容易になる。なお、可動架台1の移動は、上記取手部24の他、操作レバー54の上部54aを持って行うこともできる。一方、可動架台1に載置対象物を載置する際には、車輪4を脚部3の下端部32よりも上方側に収納移動させて(当該可動架台1の車輪上部分を降下させて)、当該可動架台1を非可動とすることができるので、安定的に載置対象物(鉄骨柱等)を載置できる。図7には、2台の可動架台1上に鉄骨柱Pを載置した状態を例示している。
【0029】
各脚部3に設けられた切替装置5によって複数の車輪4が移動されると、車輪数よりも少ない数の切替装置5で車輪4の移動操作が行えることになる。
【0030】
切替装置5が脚部3の外面側で当該外面に沿って傾倒する操作レバー54を備えると、この操作レバー54の傾倒操作で当該操作レバー54が脚部3の外側に大きくはみ出すことがなく、可動架台1の近傍の設備で傾倒操作が妨げられる事態を少なくできる。
【0031】
操作レバー54による車輪4を突出移動させる操作を助力するダンパー装置56を備えると、上記操作レバー54の傾倒操作(当該可動架台1の車輪上部分を突出移動させる操作)が容易になる。また、車輪4を収納移動させる際の上記操作レバー54の傾倒操作において、ダンパー装置56により、当該可動架台1の車輪上部分の急激な降下を抑制することもできる。
【0032】
操作レバー54の持ち手部となる上部54aが脚部3の上部31よりも上側に位置すると、操作レバー54の操作がし易くなる。また、脚部3の上部31にレバー係止部35が設けられていると、上記レバー係止部35を確認しながら、操作レバー54をレバー係止部35に保持させることが容易に行える。また、レバー係止部35が上記テーパ部を有すると、図6に示したように、操作レバー54は上記テーパ部に沿いながら係合凹部35aへと移動するので、操作レバー54のレバー係止部35への係止操作が円滑に行える。
【0033】
載置台部2と脚部3とがボルト・ナット11等によって分離可能に接続されていると、載置対象物のサイズが変更されるのに合わせて、載置台部2を別サイズのものに交換することが可能になる。
【0034】
なお、以上の例では、車輪4を操作レバー54で移動させることとしたが、これに限らない。切替装置5は、液体圧で動作するシリンダーやジャッキで車輪4を移動させるように構成されていてもよい。
【0035】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 :可動架台
2 :載置台部
3 :脚部
4 :車輪
5 :切替装置
11 :ボルト・ナット
21 :荷重受け部
21a :補強板
22 :受け柱
22a :傾斜面部
23 :接触部材
24 :取手部
25 :下面部
31 :上部
32 :下端部
32a :開口
33 :補強板
33a :開口
35 :レバー係止部
35a :係合凹部
51 :揺動部材
52A :支持軸
52B :支持軸
53 :リンク部材
54 :操作レバー
54a :上部
56 :ダンパー装置
521 :連結突起部
P :鉄骨柱(載置対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7