(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ワーク搬送システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250131BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2021062565
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】猪股 徹也
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-84651(JP,A)
【文献】特開2011-119556(JP,A)
【文献】特開2019-84652(JP,A)
【文献】特開2015-053413(JP,A)
【文献】特開2003-280710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域と、前記作業領域に接して配置された複数のステージと、前記作業領域に設けられて前記複数のステージに対してワークをロード/アンロードして前記ワークを搬送するロボットと、を有するワーク搬送システムであって、
前記ステージごとに、待機位置と動作切替点とが定められ、
前記動作切替点は、前記ステージのステージ位置から前記作業領域に向けて引き戻した位置であって前記ロボットが前記動作切替点にあるときに前記ロボットの一部または前記ロボットに載置されているワークの一部が当該ステージの内部にある位置であり、
前記待機位置は、前記ロボットが前記作業領域の内壁に干渉することなく他のステージの待機位置に対して直接旋回することが可能である前記作業領域内の位置であって、前記待機位置に対応する前記ステージの前記動作切替点までポイント・ツー・ポイント動作で前記ロボットが移動しても、前記ロボット及び前記ロボットに載置されている前記ワークが前記作業領域の内壁及び当該ステージの内壁に干渉しない位置であり、
前記ステージごとに、当該ステージの前記待機位置と前記動作切替点との間で前記ロボットがポイント・ツー・ポイント動作で移動し、当該ステージの前記動作切替点と前記ステージ位置との間で前記ロボットが直線補間動作で移動する、ワーク搬送システム。
【請求項2】
前記待機位置の相互間で前記ロボットがポイント・ツー・ポイント動作で移動する、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項3】
前記ロボットは、
基台と、
前記基台に回転可能に接続する基台側リンクと、
前記基台側リンクに連結するアーム側リンクと、
前記アーム側リンクに回転自在に接続するアームと、
前記アームに回転自在に接続して前記ワークを保持するハンドと、
を備える水平多関節型ロボットであり、
前記基台側リンクと前記アーム側リンクとは、前記アーム側リンクと前記アームとの連結軸の中心点の移動軌跡が所定の直線となるように規制するリンク機構を構成する、請求項1または2に記載のワーク搬送システム。
【請求項4】
作業領域と、前記作業領域に接して配置された複数のステージと、前記作業領域に設けられて前記複数のステージに対してワークをロード/アンロードして前記ワークを搬送するロボットと、を有するワーク搬送システムにおける前記ロボットの制御方法であって、
前記ステージごとに、待機位置と動作切替点とを定め、
前記ステージごとに前記ロボットを前記待機位置と当該ステージのステージ位置との間で前記ロボットを移動させるときに、当該ステージの前記待機位置と前記動作切替点との間で前記ロボットをポイント・ツー・ポイント動作で移動させ、当該ステージの前記動作切替点と前記ステージ位置との間で前記ロボットを直線補間動作で移動させ、
前記動作切替点は、前記ステージの前記ステージ位置から前記作業領域に向けて引き戻した位置であって前記ロボットが前記動作切替点にあるときに前記ロボットの一部または前記ロボットに載置されている前記ワークの一部が当該ステージの内部にある位置であり、
前記待機位置は、前記ロボットが前記作業領域の内壁に干渉することなく他のステージの待機位置に対して直接旋回することが可能である前記作業領域内の位置であって、前記待機位置に対応するステージの前記動作切替点までポイント・ツー・ポイント動作で前記ロボットが移動しても、前記ロボット及び前記ロボットに載置されている前記ワークが前記作業領域の内壁及び当該ステージの内壁に干渉しない位置である、制御方法。
【請求項5】
前記待機位置の相互間で前記ロボットをポイント・ツー・ポイント動作で移動させる、請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記ロボットは、
基台と、
前記基台に回転可能に接続する基台側リンクと、
前記基台側リンクに連結するアーム側リンクと、
前記アーム側リンクに回転自在に接続するアームと、
前記アームに回転自在に接続して前記ワークを保持するハンドと、
を備える水平多関節型ロボットであり、
前記基台側リンクと前記アーム側リンクとは、前記アーム側リンクと前記アームとの連結軸の中心点の移動軌跡が所定の直線となるように規制するリンク機構を構成する、請求項4または5に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節型ロボットを備えて半導体ウエハなどのワークを搬送するワーク搬送システムと、その制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工程では、半導体ウエハなどのワークを、ワークを収納するカセットとワークに対して所定の処理を実行するワーク処理装置との間で搬送する必要がある。このとき複数のカセットあるいは複数のワーク処理装置に対してワークをロード(搬入)/アンロード(搬出)できることが必要とされている。またワークの搬送のために搬送装置が動作できる空間すなわち作業領域が限定されていることも多い。そのため、複数のアームを互いに回転可能に連結するとともにモータなどの回転力をアームに伝達して伸縮等の動作をさせるようにした多関節型ロボットを用いてワークを搬送することが多い。ロボットにおいて搬送時にワークが載置されることとなるハンドは、回転軸を介して先端のアームに取り付けられる。カセットは、例えば、ワークを棚状に積載載置するものであり、その正面に作業領域に向けた開口を備えている。開口を介してハンドをカセット内に挿し込むことによって、ワークのロード及びアンロードが可能になる。同様にワーク処理装置も作業領域に面した開口を備え、開口を介してワークをロード及びアンロードできるように構成されているる。ワークが収納されるカセットとワーク処理装置と多関節型ロボットとによって1つのワーク搬送システムが構成される。カセットもワーク処理装置のワークのロード/アンロードの対象であることには変わりはないので、これらはステージと総称される。半導体製造工程などでのスループットの向上のためには、ステージ間で高速でワークを搬送できるワーク搬送システムが必要となる。
【0003】
特許文献1は、水平多関節型ロボットを使用して、ハンド側から数えて3番目の回転軸がステージに対するアクセスの軸線上に位置するようにロボットを駆動したのち、ステージに対して直線状にハンドを出し入れすることにより、直動機構を用いることなく高速でワークのロード及びアンロードすることを開示している。ワーク搬送システムでは、ステージ間でロボットが移動するときに作業領域を区画する壁面にロボットのアームやハンドが衝突しないようにする必要があるが、本発明者による特許文献2は、ロボットの安全な経路を容易に生成できるようにするために、ロボットの姿勢に関しいくつかの指定経由点を予め定め、指定経由点を経由するようにロボットの移動経路を定めることを開示している。
【0004】
搬送時間を短縮するためには搬送用のロボットを高速で移動させることが必要であるが、ロボットの移動の高速化の技術として特許文献3は、ロボットを直線移動させるときに、その加速区間、等速区間及び減速区間をさらにセグメントに分割し、セグメントごとにPTP制御を行なうことを開示している。特許文献4は、ロボットアームの軌道を生成するときに、開始教示点と目標教示点との間に中間教示点群を設け、中間教示点群に基づき軌道を生成して評価することを中間教示点群を変位させながら繰り返し、評価結果の良好な中間教示点群を通るように軌道を生成することを開示している。
【0005】
ところで、ロボットの移動させるときの動作の形態としては、PTP(ポイント・ツー・ポイント;Point To Point)動作と直線補間動作とがある。ロボットのアームあるいはハンドに基準点があるとして、PTP動作は、基準点が描く軌道の始点と終点のみを指定してロボットを移動させる動作であって、目標の座標まで基準点を移動させるときに、ロボットの各軸を一斉に駆動させることで目標の座標に到達させる。この場合、ロボットの各軸のモータをその仕様上の最高速度で動作させることができるので、目標の座標まで短時間で到達することが可能であるが、基準点の動作軌跡は直線とはならず、また、軌跡の形状等も保証されない。壁などとの干渉を防ぐためには、教示点の数を増やして隣接する教示点間ごとにPTP動作を行わせる必要がある。これに対して直線補間動作は、目標の座標まで基準点を移動させるときに、基準点の動作軌跡が直線となるように軌跡補間を行ってロボットを移動させる動作である。直線補間動作では軌跡が直線であることは保証されるが、PTP動作に比べて目標の座標に達するまでに時間がかかる、というデメリットがある。
【0006】
上述した特許文献2に記載した方法では、作業領域内においてステージごとにそのステージ正面の手前側となる位置に待機/退避位置を設定し、ハンドを待機/退避位置に移動させたのちは、直線補間動作によりステージの内部に向けてハンドを真っ直ぐに移動させる。待機/退避位置と指定経由点(あるいは原点位置)との間で移動させるときは、PTP動作を使用する。特許文献1に記載の方法でも、ハンド側から数えて3番目の回転軸がステージに対するアクセスの軸線上にハンドが位置するようにロボットをまず駆動するが、この位置は特許文献2に記載の方法での待機/退避位置に相当するものであり、この位置からステージの内部へのハンドの移動は直線状である必要があるので、軌跡の形状が保証される直線補間動作が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-119556号公報
【文献】特開2019-84651号公報
【文献】特開2019-166623号公報
【文献】特開2019-135076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2などに示すようにワーク搬送システムにおいてステージに対するアクセスの軸線上であってステージ外となる位置に待機/退避位置を設定した場合、待機/退避位置と、ワークのロード及びアンロードのためのステージの内部の位置との関係が分かりやすく、ロボットのティーチングも容易に行うことができる。しかしながらこのように待機/退避位置を設定すると、直線補間動作によるロボットの移動量が大きいので、搬送時間の短縮には不利となる。また、あるステージの待機/退避位置と別のステージの待機/退避位置との間でロボットを移動させるときは、PTP動作を使用することが可能であるが、ロボットのアームが旋回するときにアームやハンド、さらには搬送中のワークが作業領域の内壁と干渉することを防ぐために、アームやハンドをある程度折り畳んだ姿勢(例えば特許文献2における指定経由点)を通過する必要があり、その分、ロボットの移動時間がかかるようになる。
【0009】
本発明の目的は、ステージに対するアクセスの軸線上であってステージ外となる位置に待機/退避位置を設定した場合に比べてワークの搬送に時間を短縮することができるワーク搬送システム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のワーク搬送システムは、作業領域と、作業領域に接して配置された複数のステージと、作業領域に設けられて複数のステージに対してワークをロード/アンロードしてワークを搬送するロボットと、を有するワーク搬送システムであって、ステージごとに、待機位置と動作切替点とが定められ、動作切替点は、ステージのステージ位置から作業領域に向けて引き戻した位置であってロボットが動作切替点にあるときにロボットの一部またはロボットに載置されているワークの一部がそのステージの内部にある位置であり、待機位置は、ロボットが作業領域の内壁に干渉することなく他のステージの待機位置に対して直接旋回することが可能である作業領域内の位置であって、待機位置に対応するステージの動作切替点までポイント・ツー・ポイント(PTP)動作でロボットが移動しても、ロボット及びロボットに載置されているワークが作業領域の内壁及びそのステージの内壁に干渉しない位置であり、ステージごとに、そのステージの待機位置と動作切替点との間でロボットがPTP動作で移動し、そのステージの動作切替点とステージ位置との間でロボットが直線補間動作で移動する。
【0011】
本発明のワーク搬送システムによれば、ロボットの一部あるいはワークの一部がステージ20の内部に入り込んでいる位置に動作切替点を定め、待機位置と動作切替点の間ではPTP動作でロボットを移動させ、動作切替点とステージ位置の間では直線補間動作でロボットを移動させるので、従来のワーク搬送システムに比べてロボットの直線補間動作での移動距離が短くなって、ワークの搬送に要する時間を短縮することができる。また、あるステージの待機位置と別のステージの待機位置との間で移動するときにロボットのアーム類を折り畳む必要がないので、それによっても搬送時間を短縮することができる。
【0012】
本発明のワーク搬送システムでは、待機位置の相互間でロボットがPTP動作で移動することが好ましい。待機位置の相互間でもロボットをPTP動作で移動させることにより、さらなる搬送時間の短縮が可能になる。
【0013】
本発明のワーク搬送システムでは、ロボットは、例えば、基台と、基台に回転可能に接続する基台側リンクと、基台側リンクに連結するアーム側リンクと、アーム側リンクに回転自在に接続するアームと、アームに回転自在に接続してワークを保持するハンドと、を備える水平多関節型ロボットである。この水平多関節型ロボットでは、基台側リンクとアーム側リンクとは、アーム側リンクとアームとの連結軸の中心点の移動軌跡が所定の直線となるように規制するリンク機構を構成している。垂直方向での動きよりも水平方向での動きが大きい水平多関節型ロボットを備えるワーク搬送システムにおいて本発明を適用することにより、ロボット旋回時の搬送時間をより短縮することが可能となって、全体としての搬送時間の大幅な短縮が可能になる。
【0014】
本発明の制御方法は、作業領域と、作業領域に接して配置された複数のステージと、作業領域に設けられて複数のステージに対してワークをロード/アンロードしてワークを搬送するロボットと、を有するワーク搬送システムにおけるロボットの制御方法であって、ステージごとに、待機位置と動作切替点とを定め、ステージごとにロボットを待機位置とそのステージのステージ位置との間でロボットを移動させるときに、当該ステージの待機位置と動作切替点との間でロボットをPTP動作で移動させ、そのステージの動作切替点とステージ位置との間でロボットを直線補間動作で移動させ、動作切替点は、ステージのステージ位置から作業領域に向けて引き戻した位置であってロボットが動作切替点にあるときにロボットの一部またはロボットに載置されているワークの一部がそのステージの内部にある位置であり、待機位置は、ロボットが作業領域の内壁に干渉することなく他のステージの待機位置に対して直接旋回することが可能である作業領域内の位置であって、待機位置に対応するステージの動作切替点までPTP動作でロボットが移動しても、ロボット及びロボットに載置されているワークが作業領域の内壁及びそのステージの内壁に干渉しない位置である。
【0015】
本発明の制御方法によれば、ロボットの一部あるいはワークの一部がステージの内部に入り込んでいる位置に動作切替点を定め、待機位置と動作切替点の間ではPTP動作でロボットを移動させ、動作切替点とステージ位置の間では直線補間動作でロボットを移動させるので、従来の制御方法に比べて直線補間動作での移動距離が短くなって、ワークの搬送に要する時間を短縮することができる。また、あるステージの待機位置と別のステージの待機位置との間で移動するときにロボットのアーム類を折り畳む必要がないので、それによっても搬送時間を短縮することができる。
【0016】
本発明の制御方法では、待機位置の相互間でもロボットをPTP動作で移動させることが好ましい。このようにPTP動作で移動させることにより、さらなる搬送時間の短縮が可能になる。
【0017】
本発明の制御方法では、ロボットは、例えば、基台と、基台に回転可能に接続する基台側リンクと、基台側リンクに連結するアーム側リンクと、アーム側リンクに回転自在に接続するアームと、アームに回転自在に接続してワークを保持するハンドと、を備える水平多関節型ロボットである。この水平多関節型ロボットにおいて、基台側リンクとアーム側リンクとは、アーム側リンクとアームとの連結軸の中心点の移動軌跡が所定の直線となるように規制するリンク機構を構成している。垂直方向での動きよりも水平方向での動きが大きい水平多関節型ロボットを備えるワーク搬送システムにおいて本発明を適用して水平多関節型ロボットを制御することにより、ロボット旋回時の搬送時間をより短縮することが可能となって、全体としての搬送時間の大幅な短縮が可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ステージに対するアクセスの軸線上であってステージ外となる位置に待機/退避位置を設定した場合に比べてワークの搬送に時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の一形態のワーク搬送システムを示す概略平面図である。
【
図3】本発明におけるロボットの制御方法を説明する図である。
【
図4】従来の制御方法によるワークを搬送を段階的に示す図である。
【
図5】本発明に基づく制御方法によるワークの搬送を段階的に示す図である。
【
図6】従来の制御方法及び本発明に基づく制御方法を実施した場合を対比させて、ワークとハンドの位置の時間経過を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の一形態のワーク搬送システムを示している。このワーク搬送システムは、作業領域40内に配置された多関節型ロボットであるロボット1と、作業領域40に接して配置されてワーク21のロード及びアンロードの対象となる複数のステージ20とから構成されている。ワーク21は例えば半導体ウエハである。ここでは5個のステージ20が設けられているが、設けられるステージ20の数はこれに限定されるものではない。図示右上のステージ20には、既にワーク21が収納されている。作業領域40は、ロボット1が他の物体と干渉することなくハンドやアームなどを動かすことができる空間である。図示したものでは作業領域
40は長方形となっているが、作業領域
40の形状は長方形に限られるものではなく、より頂点の数が多い多角形であってもよく、凹多角形であってもよく、さらには多角形の辺の一部が曲線となっているものであってもよい。各ステージ20は、作業領域40に面した開口を備えており、ロボット1のハンドは、この開口を介してステージ20の内部に入り込み、そのステージ20に対してワーク21のロード及びアンロードを行うことができ、多関節型ロボット1は、そのリンクやアーム、ハンドを動かすことによって、ステージ20の相互間でワーク21を搬送することができる。
【0021】
ロボット1は、特許文献2に説明されているものと同様の3リンク型の水平多関節型ロボットであり、ワーク21を保持する2本のハンド7a,7bと、ハンド7a,7bを回転可能に保持するアーム6と、アーム6の基端側におけるアーム関節部J1を回転可能に保持するとともに、アーム関節部J1の移動軌跡がステージ20の並び方向とほぼ平行の直線となるように動作するリンク機構3と、リンク機構3の基端側が回転可能に支持された基台2と、を有している。リンク機構3は、基台2側に位置し、基台2に回転可能に保持された基台側リンク4と、アーム6側に位置するアーム部側リンク5とを備え、両方のリンク4,5はリンク関節部J2によって互いに回転可能に連結されている。
【0022】
図2は、水平多関節型ロボットであるロボット1をさらに詳しく示す図であり、リンク4,5やアーム6、ハンド7a,7bを延ばした状態での垂直断面図と描かれている。基台2は、昇降モータ(図示せず)によって駆動されて上下方向に昇降する昇降筒8を備えている。基台側リンク4は、昇降筒8に連結され、昇降筒8に内蔵されたリンク機構モータ8aによって回転可能に保持されており、昇降筒8の昇降に伴って基台2に対して昇降可能となっている。基台側リンク4には、基台側プーリ4a、アーム側プーリ4b及びベルト4cが内蔵されており、ベルト4cは基台側プーリ4aとアーム側プーリ4bの間で架けわたされている。基台側プーリ4aとアーム側プーリ4bとの径の比は2:1となっている。アーム側プーリ4bはアーム側リンク5に連結されており、基台側リンク4が基台側プーリ4aの回転中心を中心として回転したとき、基台側プーリ4aとアーム側プーリ4bとの回転角度比、すなわち基台側リンク4とアーム側リンク5との回転角度比は1:2となる。さらに、基台側リンク4とアーム側リンク5の長さは等しい。その結果、リンク機構3は、アーム側リンク5とアーム6とを回転可能に連結する連結軸の中心点(アーム関節部J1)の移動軌跡が、所定の直線上に規制されることになる。
【0023】
アーム6は、アーム側リンク5の先端に連結されており、アーム側リンク5に内蔵されたアーム駆動モータ51によって回転可能に保持されている。なお、
図2では、説明の便宜上、アーム駆動モータ51をアーム側リンク5に内蔵させているが、アーム駆動モータ51の設置場所はこれに限られず、例えば、アーム6にアーム駆動モータ51を内蔵してもよい。ハンド7a,7bは、アーム6の先端に連結され、アーム6に内蔵されたフレームモータ6a,6bによってそれぞれ回転可能に保持されている。ハンド7a,7bのアーム6に対する連結中心は同一の軸であり、この軸をハンド7a,7bの回転中心J3とする。ハンド7aは、ハンド7bよりも上側に配置されている。ロボット1には、ロボット1を駆動してその動作を制御するためにロボットコントローラ10が設けられており、ロボットコントローラ10にはケーブル16を介してティーチングペンダント15が接続している。ティーチングペンダント15は、ロボット1のティーチングに際して作業者によって使用されるものである。
【0024】
ロボット1ではその姿勢に関して原点位置も定められている。本実施形態のロボット1では、基台側リンク4、アーム側リング5、アーム6及びハンド7a,7bが相互に重なり合うように折り畳んだ状態であって、ハンド7a,7bの先端が、
図1において上向きとなる状態を原点位置とする。
【0025】
特許文献2に記載された方法では、作業領域40においてステージ20の正面となる位置にそのステージ20のための待機/退避位置を設定し、その待機/退避位置からステージ20の内部へハンドを動かすときは直線補間動作を実行していた。待機/退避位置は、ステージ20の外部であって、かつステージ20に対するアクセスの軸線上にある。ステージ20の内部から待機/退避位置にハンドを戻すときも同様に直線補間動作を実行していた。これに対し本実施形態のワーク搬送システムでは、作業領域40内には位置するが、必ずしもそのステージ20に対するアクセスの軸線上には存在しなくてもよい位置を待機位置とする。ステージ20に対するアクセスの軸線上に待機/退避位置を配置しない代わりに、その軸線上の位置であって、ステージ20からハンドをある距離だけ作業領域40に向かって引き戻した点を動作切替点として設定する。動作切替点は、特許文献2での待機位置よりも一般にステージ20側に位置する。したがって一般的には、動作切替点にハンドがあるときにハンドあるいはワークの一部がステージ20の内部にある。
【0026】
本実施形態において「待機位置」は、ワークの取得もしくは収納が完了してアームを引き戻した姿勢位置、またはステージ20の前位置まで動作させるコマンドにより到達する位置であって以下の2条件を満たす位置である。
条件1:待機位置からそのステージ20の動作切替点までロボット1をPTP動作で進ませても、作業領域の内壁やステージの内壁と干渉しない。
条件2:他のステージ20の待機位置に対して直接旋回しても、ハンドやハンドに搭載されているワークが作業領域40の内壁などと干渉しない。
【0027】
本発明における以上の条件を満たす待機位置は、例えば、特許文献2において説明した指定経由点と同様に定めることができる。ハンドやアーム折り畳んだ姿勢がロボット1の原点位置である場合には、ロボット1は、原点位置と待機位置との間もPTP動作で移動することができる。また本実施形態では、ステージ20においてワーク21の定位置が定められているとして、ロボット1のハンドのワーク搭載部がステージ20におけるワーク21の定位置と合致する位置を「ステージ位置」と呼ぶ。したがって「ステージ位置のティーチング」とは、ステージ20上に置かれているワーク21の中心位置にハンドのワーク搭載部の中心が一致する姿勢を座標として登録することを意味する。ワーク21のロード及びアンロードは、ステージ位置において実行される。ワーク21の搬送においてはワーク21をすくい上げるなどの高さ方向の動きも必要となるが、本発明は水平方向での搬送時間の短縮を目的としているため、以下では、ロボット1の高さ方向への動きについての説明は割愛する。
【0028】
次に、本実施形態のワーク搬送システムにおける制御方法を説明する。本実施形態では、あるステージ20の待機位置と別のステージ20の待機位置との間では、PTP動作で直接移動できる。このとき、ロボット1のリンク機構やアームを折り畳む必要がないので、搬送時間を短縮できる。また本実施形態では、待機位置とステージ位置との間でのワークの搬送時間を大きく短縮することにより、全体としての搬送時間のさらに短縮している。
図3は、本実施形態での制御方法を説明する図である。
図3及びそれに引き続く図において、実線による矢印はPTP動作による移動を示し、破線による矢印は直線補間動作による移動を示している。本実施形態では、待機位置と動作切替点の間では、最速での移動を可能にするPTP動作でハンドを移動させ、動作切替点とステージ位置の間では直線補間動作によりハンドを移動させる。動作切替点は、ハンドが経由する位置であって、ハンドやワークがステージ20の内壁などに干渉しないという条件の下で、直線補間動作での動作量すなわち距離ができるだけ短くなるように設定される。このような動作切替点は、特許文献2に示す方法での待機/退避位置よりはステージ位置に近い位置に設定されるから、本実施形態によれば、直線補間動作による移動距離が短くなり、全体としてハンドの移動時間すなわち搬送時間が短縮される。以下、従来の制御方法による動作と本実施形態による動作とを具体的に対比させながら説明する。
【0029】
図1に示すワーク搬送システムにおいて、ロボット1の上側のハンド7aを用いて、右上のステージ20に収納されているワーク21を左下のステージ20に搬送する場合を考える。
図4は、従来の制御方法でのロボット1とワーク21の動きを段階的に示している。(a)は、原点位置にあるロボット1を示している。ロボット1は、(b)に示すように、原点位置からPTP動作により右上のステージ20の待機/退避位置に移動する。この待機/退避位置は、ステージ20に対するアクセスの軸線上にある。続いて、(c)に示すように、直線補間動作によりハンド7aをステージ位置に移動させ、ワーク21を取得する。ワーク21の取得後、(d)に示すようにハンド7aは直線補間動作によって待機/退避位置まで引き戻され、そののちロボット1は、アーム旋回時にハンド7aやワーク21が作業領域40の内壁に干渉しないように、(e)に示すように、ハンド7aをある程度畳んだ姿勢位置である、旋回前の中間位置にPTP動作で移動する。そしてロボット1は、PTP動作で旋回しつつ、(f)に示すように、ハンド7aをある程度畳んだ姿勢位置である、旋回後の中間位置に移動する。(e),(f)に示す中間位置は、例えば、特許文献2に示す制御方法における指定経由点である。(f)示す中間位置からロボット1は、PTP動作によって、(g)に示すように、左下のステージ20の待機/退避位置に移動する。最後にロボット1のハンド7aが、直線補間動作によって左下のステージ20のステージ位置に移動して、そのステージ20にワーク21を収納する。
【0030】
図5は、
図4に示したワーク21の搬送を、本実施形態の制御方法で実施したときのロボット1とワーク21の動きを示している。本実施形態の制御方法でも、ロボット1は、(a)に示す原点位置から、(b)に示すように、右上のステージ20に対する待機位置にPTP動作で移動する。ここでの待機位置は、ステージ20の前面にあるわけでなく、また、ハンド7aも
図5に示した場合よりも折り畳まれた状態にある。そして、(c)に示すように、PTP動作によってハンド7aは動作切替点に移動し、引き続いて(d)に示すように直線補間動作によってステージ位置に移動してワーク21を取得する。ワーク21の取得後、(e)に示すようにハンド7aは直線補間動作によって動作切替点に引き戻り、続いてPTP動作によって(f)に示す待機位置に戻る。次に、ロボット1は、PTP動作によって、(g)に示すように左下のステージ20の待機位置に旋回する。左下のステージ20の待機位置も、そのステージ20の前面にはなく、ハンド7aも折り畳まれた状態にある。(g)に示す待機位置から、ハンド7aは、(h)に示すようにPTP動作によって動作切替点に移動し、引き続いて(i)に示すように直線補間動作によりステージ位置に移動してワーク21をステージ20に収納する。その後、ハンド7aは、(j)に示すように直線補間動作によって動作切替点に移動し、次の搬送のために、(k)に示すようにPTP動作で待機位置に戻る。
【0031】
図6は、ワーク21を載置して原点位置にあるロボット1がステージ20にワーク21を収納するときのハンド7aとワーク21との動きを、従来の方法による場合(破線の左側)と本実施形態の方法による場合(破線の右側)とを比べて示している。図ではワーク21を大きな円で、ハンド7aのアーム6に対する連結中心である回転軸J3を小円で示している。ハンド7a自体はその中心線を線分で示すことにより表現している。原点位置を示す(a)から(i)まで順番に時間が経過している。いずれの制御方法においても原点位置からはハンド7aはPTP動作で移動する。本実施形態の制御方法では(c)において既に待機位置を通過し、(e)では既にワーク21の一部がステージ20の中に進入している。(f)の時点において、従来の制御方法ではようやく待機/退避位置に到達しているのに対し、本実施形態の方法では動作切替点に到達している。その後、どちらの制御方法においても直線補間動作によってハンド7aがステージ位置に向かって移動するが、本実施形態の場合、(h)においてステージ位置に到達しているのに対し、従来の制御方法では、(i)の時点でハンド1がステージ位置に到達している。このように本実施形態の制御方法によれば、ステージ位置に早期に到達でき、搬送時間を短縮することができる。
【0032】
本実施形態のワーク搬送システムにおいて、ステージ20ごとの待機位置、動作経由点及びステージ位置は、例えば、ティーチングペンダント15を用いたティーチングによってロボットコントローラ10に登録されてもよいし、作業領域40の形状、作業領域40に対する各ステージ20の位置関係、及びロボット1におけるリンク機構3やアーム6、ハンド7a,7bの寸法などから計算によって算出されてロボットコントローラ40に登録されてもよい。
【0033】
以上説明した本実施形態のワーク搬送システムによれば、ハンドの一部あるいはワークの一部がステージ20の内部に入り込んでいる位置に動作経由点を定め、待機位置と動作切替点の間ではPTP動作でロボットを移動させ、動作経由点とステージ位置の間では直線補間動作でロボットを移動させるので、従来の制御方法によりロボットを動作させる場合に比べて直線補間動作での移動距離が短くなって、ワークの搬送に要する時間を短縮することができる。また、あるステージの待機位置と別のステージの待機位置との間でPTP動作により直接移動させることができ、ロボット1においてリンク機構やアームを折り畳む必要がないので、それによっても搬送時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…多関節型ロボット;2…基台;3…リンク機構;4…基台側リンク;5…アーム部側リンク;6…アーム;7a,7b…ハンド;8…昇降筒;10…ロボットコントローラ;15…ティーチングペンダント;20…ステージ:21…ワーク;40…作業領域。