(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】検体採取ロボットシステム、ロボットシステムおよび検体採取ロボットシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20250131BHJP
B25J 3/00 20060101ALI20250131BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20250131BHJP
A61B 34/37 20160101ALI20250131BHJP
【FI】
G01N1/10 V
B25J3/00 Z
B25J19/06
A61B34/37
(21)【出願番号】P 2021074346
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】国師 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】笠 秀行
【審査官】寺田 祥子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0038367(US,A1)
【文献】特開2011-206180(JP,A)
【文献】特開平07-299063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
B25J 3/00
B25J 19/00
A61B 34/00-34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体採取部材によって被検者から検体を採取するスレーブロボットと、
前記スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、
前記被検者の近傍に配置され、前記被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備え、
前記手検知部により前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、前記スレーブロボットの動作が停止され
、
前記手検知部は、前記被検者の両手に対応するように、一対設けられており、
前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことを、前記一対の手検知部のうちのいずれかが検知したことに基づいて、前記スレーブロボットの動作が停止される、検体採取ロボットシステム。
【請求項2】
前記一対の手検知部は、前記被検者の手によって押下される一対のスイッチ部を含み、
前記一対のスイッチ部のうちの少なくとも一方に対する押下が解除されることに基づいて、前記スレーブロボットの動作が停止される、請求項
1に記載の検体採取ロボットシステム。
【請求項3】
前記スレーブロボットと前記被検者とを遮蔽する遮蔽板をさらに備え、
前記一対のスイッチ部は、前記遮蔽板に対して前記被検者側に配置されている、請求項
2に記載の検体採取ロボットシステム。
【請求項4】
前記遮蔽板には、前記スレーブロボットに把持された前記検体採取部材が挿入される開口部が設けられており、
前記一対のスイッチ部は、前記開口部よりも低い位置に配置されている、請求項
3に記載の検体採取ロボットシステム。
【請求項5】
検体採取部材によって被検者から検体を採取するスレーブロボットと、
前記スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、
前記被検者の近傍に配置され、前記被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備え、
前記手検知部により前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、前記スレーブロボットの動作が停止され、
前記スレーブロボットに把持された前記検体採取部材が挿入される開口部が設けられ、前記スレーブロボットと前記被検者とを遮蔽する遮蔽板と、
前記開口部を介して前記遮蔽板の前記スレーブロボット側に侵入する物体を検知する侵入検知部と、をさらに備え、
前記侵入検知部が前記開口部を介して前記遮蔽板の前記スレーブロボット側に侵入する前記物体を検知することに基づいて、前記スレーブロボットの動作が停止される
、検体採取ロボットシステム。
【請求項6】
前記侵入検知部は、前記遮蔽板に対して前記スレーブロボット側に配置され、前記遮蔽板の前記開口部に沿うように光を出射する光出射部と、前記光出射部が出射した光を受光する受光部とを有する光検知部を含む、請求項
5に記載の検体採取ロボットシステム。
【請求項7】
前記光出射部は、前記開口部の上方側から下方側に亘って、水平方向に複数の光を出射し、
前記受光部は、前記光出射部から水平方向に出射される複数の光を受光する、請求項
6に記載の検体採取ロボットシステム。
【請求項8】
前記侵入検知部は、前記スレーブロボットが前記被検者から検体を採取する最中には前記物体の検知を行わずに、前記被検者から検体を採取すること以外の期間に前記物体の検知を行う、請求項
5~
7のいずれか1項に記載の検体採取ロボットシステム。
【請求項9】
検体採取部材によって被検者から検体を採取するスレーブロボットと、
前記スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、
前記被検者の近傍に配置され、前記被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備え、
前記手検知部により前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、前記スレーブロボットの動作が停止され、
前記検体採取部材は、前記被検者の鼻腔から検体を採取する検体採取部材を含み、
前記手検知部により前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、前記被検者の前記鼻腔から検体を採取する前記スレーブロボットの動作が停止される
、検体採取ロボットシステム。
【請求項10】
医療用の検査器具を把持して、被検者に対して処置を行うスレーブロボットと、
前記スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、
前記被検者の近傍に配置され、前記被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備え、
前記手検知部により前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、前記スレーブロボットの動作が停止され
、
前記手検知部は、前記被検者の両手に対応するように、一対設けられており、
前記一対の手検知部のうちの少なくとも一方により、前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、前記スレーブロボットの動作が停止される、ロボットシステム。
【請求項11】
被検者の鼻腔から検体を採取する検体採取部材によって前記被検者から検体を採取するスレーブロボットと、前記スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、前記被検者の近傍に配置され、前記被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備える検体採取ロボットシステムの制御方法であって、
前記手検知部により前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことを検知することと、
前記手検知部により前記被検者の手が前記所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、前記被検者の前記鼻腔から検体を採取する前記スレーブロボットの動作を停止することと、を備える、検体採取ロボットシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検体採取ロボットシステム、ロボットシステムおよび検体採取ロボットシステムの制御方法に関し、特に、被検者から検体を採取するなどの処置を行う検体採取ロボットシステム、ロボットシステムおよび検体採取ロボットシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者から検体を採取するための検体採取用ボックスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、検体採取用本体ボックスと、検体採取用本体ボックスに設けられた保護グローブと、を備える検体採取用ボックスが開示されている。この検体採取用ボックスでは、検体を採取する処置者が検体採取用本体ボックス内に入った状態で、保護グローブを介して、被検者から検体を採取する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、検体を採取する処置者が検体採取用本体ボックス内に入った状態で保護グローブを介して被検者から検体を採取するため、処置者は被検者に対して近接して位置する必要がある。また、処置者が検体採取用本体ボックスの中に入るため、検体採取用本体ボックス内に空気を取り込む必要がある。したがって、被検者から検体を採取する際に、処置者が感染するリスクが高いという問題点がある。
【0005】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この開示の1つの目的は、被検者から処置者への感染リスクを低減しながら検体を採取するなどの処置を行うことが可能な検体採取ロボットシステム、ロボットシステムおよび検体採取ロボットシステムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この開示の第1の局面による検体採取ロボットシステムは、検体採取部材によって被検者から検体を採取するスレーブロボットと、スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、被検者の近傍に配置され、被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備え、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボットの動作が停止され、手検知部は、被検者の両手に対応するように、一対設けられており、被検者の手が所定の位置から離間したことを、一対の手検知部のうちのいずれかが検知したことに基づいて、スレーブロボットの動作が停止される。
【0007】
この開示の第1の局面による検体採取ロボットシステムは、上記のように、検体採取部材によって被検者から検体を採取するスレーブロボットと、スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、を備える。これにより、処置者がマスタロボットによりスレーブロボットを遠隔操作することにより被検者から検体を採取することができるので、被検者から処置者への感染リスクを低減することができる。また、検体の採取時に、被検者が手で動作中のスレーブロボットなどを触ろうとする場合(動作中のスレーブロボットの近くに手を移動させようとする場合)がある。この場合、被検者の手とスレーブロボットとが接触(干渉)する恐れがある。そこで、上記のように、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボットの動作が停止されることによって、被検者の手と動作中のスレーブロボットとが接触するのを抑制することができる。
この開示の第2の局面による検体採取ロボットシステムは、検体採取部材によって被検者から検体を採取するスレーブロボットと、スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、被検者の近傍に配置され、被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備え、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボットの動作が停止され、スレーブロボットに把持された検体採取部材が挿入される開口部が設けられ、スレーブロボットと被検者とを遮蔽する遮蔽板と、開口部を介して遮蔽板のスレーブロボット側に侵入する物体を検知する侵入検知部と、をさらに備え、侵入検知部が開口部を介して遮蔽板のスレーブロボット側に侵入する物体を検知することに基づいて、スレーブロボットの動作が停止される。
この開示の第3の局面による検体採取ロボットシステムは、検体採取部材によって被検者から検体を採取するスレーブロボットと、スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、被検者の近傍に配置され、被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備え、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボットの動作が停止され、検体採取部材は、被検者の鼻腔から検体を採取する検体採取部材を含み、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、被検者の鼻腔から検体を採取するスレーブロボットの動作が停止される。
【0008】
この開示の第4の局面によるロボットシステムは、医療用の検査器具を把持して、被検者に対して処置を行うスレーブロボットと、スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、被検者の近傍に配置され、被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備え、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボットの動作が停止され、手検知部は、被検者の両手に対応するように、一対設けられており、一対の手検知部のうちの少なくとも一方により、被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボットの動作が停止される。
【0009】
この開示の第4の局面によるロボットシステムでは、上記のように、医療用の検査器具を把持して、被検者に対して処置を行うスレーブロボットと、スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、を備える。これにより、処置者がマスタロボットによりスレーブロボットを遠隔操作することにより被検者に対する医療行為(検体を採取するなど)を行うことができるので、被検者から処置者への感染リスクを低減することができる。また、検体の採取時に、被検者が手で動作中のスレーブロボットを触ろうとする場合(動作中のスレーブロボットの近くに手を移動させようとする場合)がある。この場合、被検者の手とスレーブロボットとが接触(干渉)する恐れがある。そこで、上記のように、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボットの動作が停止されることによって、被検者の手と動作中のスレーブロボットとが接触するのを抑制することが可能なロボットシステムを提供することができる。
この開示の第5の局面による検体採取ロボットシステムの制御方法は、被検者の鼻腔から検体を採取する検体採取部材によって被検者から検体を採取するスレーブロボットと、スレーブロボットを遠隔操作するマスタロボットと、被検者の近傍に配置され、被検者の手が所定の位置から離間したか否かを検知する手検知部と、を備える検体採取ロボットシステムの制御方法であって、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことを検知することと、手検知部により被検者の手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、被検者の鼻腔から検体を採取するスレーブロボットの動作を停止することと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、上記のように、被検者から処置者への感染リスクを低減しながら検体を採取するなどの処置を行うことができる。また、上記のように、被検者の手とスレーブロボットとの接触を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態による検体採取ロボットシステムを示す図である。
【
図2】一実施形態による検体採取ロボットシステムのブロック図である。
【
図3】一実施形態によるスレーブロボットの操作による検体の採取を示す図である。
【
図4】一実施形態によるスレーブロボットと遮蔽版と被検者とを示す図(スレーブロボット側から見た図)である。
【
図5】一実施形態によるマスタロボットを示す斜視図である。
【
図6】一実施形態によるスレーブロボットと遮蔽版と被検者とを示す図(被検者側から見た図)である。
【
図7】一実施形態による遮蔽版とスイッチ部とを示す図である。
【
図8】変形例による遮蔽版とスイッチ部とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、検体採取ロボットシステム100は、スレーブロボット10と、マスタロボット20と、表示装置30と、を備えている。スレーブロボット10は、マスタロボット20および表示装置30が配置される空間1とは異なる空間2に配置されている。なお、検体採取ロボットシステム100は、特許請求の範囲の「ロボットシステム」の一例である。
【0013】
また、
図2に示すように、マスタロボット20は、制御部20aと、駆動部20b(サーボモータ)と、エンコーダ20cとを備えている。また、スレーブロボット10は、制御部10aと、駆動部10b(サーボモータ)と、エンコーダ10cとを備えている。また、検体採取ロボットシステム100は、制御装置40を備えている。そして、処置者(以下では、操作者Oという)がマスタロボット20の操作部21(
図1参照)を操作することにより、制御装置40の制御ソフト41により操作指令が計算され、計算された操作指令がスレーブロボット10の制御部10aに入力される。これにより、スレーブロボット10の駆動部10bが駆動することにより、スレーブロボット10が駆動する。以下、検体採取ロボットシステム100の具体的な構成について説明する。
【0014】
図1および
図3に示すように、スレーブロボット10は、検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する。検体採取部材101は、たとえば、滅菌綿棒(スワブ)である。滅菌綿棒は、棒形状を有している。スレーブロボット10は、たとえば、被検者Sの鼻腔Sa内に検体採取部材101を挿入し、挿入した検体採取部材101によって被検者Sの鼻咽頭から検体(鼻咽頭ぬぐい液)を採取する(
図3の点線の検体採取部材101参照)。なお、スレーブロボット10は、被検者Sの口腔内に検体採取部材101を挿入して検体を採取してもよい。採取された検体に対しては、たとえば、PCR(Polymerase Chain Reaction)検査などのウイルス検査が行われる。なお、検体採取部材101は、特許請求の範囲の「検査器具」の一例である。
【0015】
図1および
図3に示すように、スレーブロボット10は、垂直多関節ロボットである。スレーブロボット10は、アーム11と、アーム11の先端に取り付けられたハンド12と、を含んでいる。アーム11は、複数の関節を有している。アーム11の複数の関節の各々には、駆動部10bと、エンコーダ10cとが設けられている。ハンド12は、検体採取部材101を保持する。ハンド12は、たとえば、チャック12a(一対の把持部材)を有し、チャック12aによって検体採取部材101を把持して保持する。また、チャック12aは、たとえば、空気により動作されるエアチャックである。
【0016】
また、スレーブロボット10は、システム筐体102の内部に収容されている。また、スレーブロボット10と被検者Sとの間には、遮蔽板103が配置されている。遮蔽板103は、システム筐体102に設置されている。また、遮蔽板103は、ガラス板等の透明な部材であり、開口部103aが設けられている。なお、開口部103aは、被検者Sの鼻腔Saに対応する位置に設けられ、開口部103aの大きさは、被検者Sの鼻および口を含む大きさである。
【0017】
また、
図4に示すように、遮蔽板103と被検者Sとの間には、位置決め部110が設置されている。位置決め部110は、本体111と、被当接部112と、顎乗せ台113と、を備えている。本体111は、被検者Sが把持可能である。また、顎乗せ台113は、上下に移動する。なお、
図1および
図6では、位置決め部110は、省略されている。
【0018】
被検者Sが、被当接部112に額を当接させて、顎乗せ台113に顎を乗せることにより、被検者Sの鼻腔Saが、開口部103a内に位置する。これにより、被検者Sの鼻腔Saが位置決めされる。
【0019】
図1および
図5に示すように、マスタロボット20は、スレーブロボット10を遠隔操作する。具体的には、マスタロボット20は、処置者(医師)などの操作者Oによって操作されることによって、スレーブロボット10を遠隔操作する。マスタロボット20は、操作者Oの操作に基づいた操作指令を出力する。スレーブロボット10は、マスタロボット20の操作指令に基づいて、操作者Oの操作に対応する動作を行う。スレーブロボット10とマスタロボット20とは、有線または無線によって互いに通信可能に接続されている。
【0020】
また、
図1および
図5に示すように、マスタロボット20は、操作部21およびアーム部22を含んでいる。操作部21は、検体採取部材101を保持するスレーブロボット10のハンド12を遠隔操作するために設けられている。具体的には、操作部21は、棒形状を有するグリップハンドルである。操作部21は、操作者Oが片手で把持して動かすことによって、操作者Oによるスレーブロボット10の操作を受け付ける。操作部21は、たとえば、操作者Oの右手によって操作される。アーム部22は、複数の関節を有しており、上下方向(Z方向)、左右方向(Y方向)および前後方向(X方向)に、操作部21を移動可能に支持する。
【0021】
スレーブロボット10は、操作者Oが操作部21を動かした方向に対応する方向に動作される。たとえば、操作者Oが操作部21を上下方向(Z方向)に動かした場合、スレーブロボット10のハンド12(およびハンド12が保持する検体採取部材101)が上下方向に移動される。また、たとえば、操作者Oが操作部21を左右方向(Y方向)に動かした場合、スレーブロボット10のハンド12(およびハンド12が保持する検体採取部材101)が左右方向に移動される。また、たとえば、操作者Oが操作部21を前後方向(X方向)に動かした場合、スレーブロボット10のハンド12(およびハンド12が保持する検体採取部材101)が前後方向に移動される。なお、検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取する際には、操作者Oが操作部21を前方向(X1方向)に動かしてスレーブロボット10のハンド12(およびハンド12が保持する検体採取部材101)を前方向(挿入方向)に移動させることによって、被検者Sの鼻腔内に検体採取部材101が挿入される。
【0022】
ここで、本実施形態では、
図6および
図7に示すように、被検者Sの近傍には、被検者Sの手が所定の位置から離間したか否かを検知するスイッチ部120(
図7参照)が配置されている。そして、スイッチ部120により被検者Sの手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止される。具体的には、スイッチ部120からの検知信号が、制御装置40(
図2参照)に入力される。そして、制御装置40は、スイッチ部120からの検知信号に基づいて、スレーブロボット10の動作を停止させるように、スレーブロボット10の制御部10aに対して指令を出力する。なお、スイッチ部120は、特許請求の範囲の「手検知部」の一例である。また、
図1では、スイッチ部120は、省略されている。
【0023】
また、本実施形態では、スイッチ部120により被検者Sの手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、被検者Sの鼻腔Saから検体を採取するスレーブロボット10の動作が停止される。たとえば、検体採取部材101が被検者Sの鼻腔Saに近づけられているときや、検体採取部材101が被検者Sの鼻腔Sa内に挿入されている時に、スイッチ部120により被検者Sの手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボット10の動作(検体採取部材101の移動)が停止される。
【0024】
また、本実施形態では、スイッチ部120は、被検者Sの両手に対応するように、一対設けられている。そして、一対のスイッチ部120のうちの少なくとも一方に対する押下が解除されることに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止される。つまり、制御装置40は、一対のスイッチ部120のうちのいずれかのスイッチ部120から、被検者Sの手による押下が解除されたこと(スイッチ部120がオン状態からオフ状態にされたこと)を示す検知信号が入力された場合、スレーブロボット10の制御部10aに対してスレーブロボット10の動作を停止させる指令を出力する。
【0025】
また、本実施形態では、一対のスイッチ部120は、遮蔽板103に対して被検者S側に配置されている。具体的には、遮蔽板103から被検者S側に延びるように一対の棒部材121が設けられている。一対のスイッチ部120は、一対の棒部材121の各々に設けられている。これにより、被検者Sが一対の棒部材121の間に位置している状態で、被検者Sの両手の各々によってスイッチ部120を押下することが可能になる。
【0026】
また、本実施形態では、一対のスイッチ部120は、スレーブロボット10に把持された検体採取部材101が挿入される遮蔽板103の開口部103aよりも低い位置に配置されている。すなわち、開口部103aの高さ位置は、被検者Sが遮蔽板103の前に位置している(座っている)状態で、被検者Sの鼻腔Saに対応するように設定される。また、一対のスイッチ部120の高さ位置は、被検者Sが遮蔽板103の前に位置している(座っている)状態で、被検者Sの手により押下可能なように設定される。
【0027】
また、本実施形態では、
図4、
図6および
図7に示すように、開口部103aを介して遮蔽板103のスレーブロボット10側に侵入する物体を検知する光検知部130が設けられている。そして、光検知部130が開口部103aを介して遮蔽板103のスレーブロボット10側に侵入する物体を検知することに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止される。具体的には、光検知部130からの検知信号が、制御装置40に入力される。そして、制御装置40は、光検知部130からの検知信号に基づいて、スレーブロボット10の動作を停止させるように、スレーブロボット10の制御部10aに対して指令を出力する。なお、光検知部130は、特許請求の範囲の「侵入検知部」の一例である。
【0028】
また、本実施形態では、
図4および
図7に示すように、光検知部130は、遮蔽板103に対してスレーブロボット10側に配置されている。そして、光検知部130は、光出射部131と受光部132とを有する。光出射部131は、遮蔽板103の開口部103aに沿うように光(
図7の点線の矢印)を出射する。受光部132は、光出射部131が出射した光を受光する。また、光出射部131は、開口部103aの上方側から下方側に亘って、水平方向に複数の光(帯状の光)を出射する。受光部132は、光出射部131から水平方向に出射される複数の光を受光する。すなわち、光検知部130は、ライトカーテンからなる。
【0029】
また、光検知部130は、遮蔽板103の開口部103aに対応する高さ位置に配置されている。水平方向において、光出射部131は開口部103aの一方側に配置されている。水平方向において、受光部132は開口部103aの他方側に配置されている。光出射部131および受光部132は、遮蔽板103の表面近傍に配置されている。
【0030】
また、本実施形態では、光検知部130は、スレーブロボット10が被検者Sから検体を採取する最中には物体の検知を行わずに、被検者Sから検体を採取すること以外の期間に物体の検知を行う。すなわち、光検知部130は、操作者Oによりマスタロボット20が操作されることによって、スレーブロボット10が遠隔操作されている最中には、物体の検知を行わない。また、光検知部130が物体の検知を行うか否かの切り替えは、制御装置40により自動で行われてもよいし、操作者Oの操作によって行われてもよい。なお、スレーブロボット10が被検者Sから検体を採取する最中は、被検者Sによってスイッチ部120が押下されている。このため、検体を採取する最中に光検知部130の検知が行われなくても、被検者Sがスイッチ部120から手を離した場合には、スレーブロボット10の動作が停止されるので、被検者Sと動作中のスレーブロボット10との接触を抑制可能である。
【0031】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0032】
本実施形態は、上記のように、検体採取部材101によって被検者Sから検体を採取するスレーブロボット10と、スレーブロボット10を遠隔操作するマスタロボット20と、を設ける。これにより、処置者(操作者O)がマスタロボット20によりスレーブロボット10を遠隔操作することにより被検者Sから検体を採取することができるので、被検者Sから処置者への感染リスクを低減することができる。また、検体の採取時に、被検者Sが手で動作中のスレーブロボット10を触ろうとする場合(動作中のスレーブロボット10の近くに手を移動させようとする場合)がある。この場合、被検者Sの手とスレーブロボット10とが接触(干渉)する恐れがある。そこで、上記のように、スイッチ部120により被検者Sの手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止されることによって、被検者Sの手と動作中のスレーブロボット10との接触を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態は、上記のように、スイッチ部120は、被検者Sの両手に対応するように、一対設けられており、被検者Sの手が所定の位置から離間したことを、一対のスイッチ部120のうちのいずれかが検知したことに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止される。これにより、被検者Sの両手が所定の位置から離間したことに基づいてスレーブロボット10の動作が停止される場合と比べて、迅速に、スレーブロボット10の動作を停止させることができる。
【0034】
また、本実施形態は、上記のように、一対のスイッチ部120のうちの少なくとも一方の被検者Sの手による押下が解除されることに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止される。これにより、被検者Sがスイッチ部120を押していた手を、スイッチ部120を押圧しない方向に移動させた場合に、容易に、被検者Sの手がスイッチ部120から離間したことを検知することができる。
【0035】
また、本実施形態は、上記のように、一対のスイッチ部120は、遮蔽板103に対して被検者S側に配置されている。これにより、一対のスイッチ部120が遮蔽板103に対してスレーブロボット10側に配置されている場合と異なり、被検者Sは、一対のスイッチ部120を容易に押下することができる。
【0036】
また、本実施形態は、上記のように、遮蔽板103には、スレーブロボット10に把持された検体採取部材101が挿入される開口部103aが設けられており、一対のスイッチ部120は、開口部103aよりも低い位置に配置されている。これにより、被検者Sは、開口部103aの高さ位置に顔(鼻腔Sa、口腔など)を配置した状態で、両手により、一対のスイッチ部120を容易に押下することができる。
【0037】
また、本実施形態は、上記のように、光検知部130が開口部103aを介して遮蔽板103のスレーブロボット10側に侵入する物体を検知することに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止される。これにより、被検者Sの手などが開口部103aを介してスレーブロボット10に近づいた場合、光検知部130が被検者Sの体の一部などを検知してスレーブロボット10の動作が停止されるので、被検者Sとスレーブロボット10との接触を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態は、上記のように、光検知部130は、遮蔽板103に対してスレーブロボット10側に配置され、遮蔽板103の開口部103aに沿うように光を出射する光出射部131と、光出射部131が出射した光を受光する受光部132とを有する。これにより、被検者Sの手などが開口部103aを介してスレーブロボット10に近づいた場合、手などにより光出射部131から出射された光が遮られるので、手などが開口部103aを介してスレーブロボット10に近づいたことを容易に光検知部130により検知することができる。
【0039】
また、本実施形態は、上記のように、光出射部131は、開口部103aの上方側から下方側に亘って、水平方向に複数の光を出射し、受光部132は、光出射部131から水平方向に出射される複数の光を受光する。これにより、光出射部131から開口部103aに沿って比較的広い範囲に光が出射されるので、開口部103aの比較的広い範囲に亘って物体の侵入を検知することができる。
【0040】
また、本実施形態は、上記のように、光検知部130は、スレーブロボット10が被検者Sから検体を採取する最中には物体の検知を行わずに、被検者Sから検体を採取すること以外の期間に物体の検知を行う。これにより、スレーブロボット10が被検者Sから検体を採取する最中に、光検知部130がスレーブロボット10を検知することにより、スレーブロボット10が停止されることを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態は、上記のように、スイッチ部120により被検者Sの手が所定の位置から離間したことが検知されたことに基づいて、被検者Sの鼻腔Saから検体を採取するスレーブロボット10の動作が停止される。これにより、被検者Sの鼻腔Saから検体を採取する際に、被検者Sの手とスレーブロボット10との接触を抑制することができる。
【0042】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0043】
たとえば、上記実施形態では、スレーブロボット10が垂直多関節ロボットである例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、スレーブロボットが、水平多関節ロボットなどの垂直多関節ロボット以外のロボットでもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、スイッチ部120が一対設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、スイッチ部120が1つのみ設けられていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、本開示の「手検知部」として被検者Sの手によって押下されるスイッチ部120が適用される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、
図8に示すように、本開示の「手検知部」として反射型の光検知部140を適用してもよい。すなわち、被検者Sの手が光検知部140から出射される光(
図8の点線の矢印)を遮っている際には、スレーブロボット10の動作が継続される。一方、被検者Sの手が光検知部140から出射される光を遮らなくなると、スレーブロボット10の動作が停止される。なお、光検知部140は、特許請求の範囲の「手検知部」の一例である。
【0046】
また、被検者Sの手を撮影装置によって監視してもよい。この場合、被検者Sの手が所定の位置から離間したことが撮影装置によって撮影された画像の画像解析によって検知されたことに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止される。
【0047】
また、上記実施形態では、一対のスイッチ部120が、遮蔽板103に対して被検者S側に配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、上記の被検者Sの手を撮影する撮影装置を遮蔽板103に対してスレーブロボット10側に配置してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、一対のスイッチ部120は、遮蔽板103の開口部103aよりも低い位置に配置されている例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、一対のスイッチ部120が遮蔽板103の開口部103aと同じ高さまたは開口部103aよりも高い位置に配置されてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、本開示の「侵入検知部」として光検知部130が適用される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、遮蔽板103のスレーブロボット10側に侵入する物体を撮影装置によって監視してもよい。この場合、遮蔽板103のスレーブロボット10側に物体が侵入したことが撮影装置によって撮影された画像の画像解析によって検知されたことに基づいて、スレーブロボット10の動作が停止される。
【0050】
また、上記実施形態では、光出射部131が開口部103aの上方側から下方側に亘って、水平方向に複数の光を出射し、受光部132が光出射部131から水平方向に出射される複数の光を受光する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、光出射部131が1つの光を水平方向に出射し、受光部132が光出射部131から水平方向に出射される1つの光を受光してもよい。また、光出射部131が1つまたは複数の光を垂直方向に出射し、受光部132が光出射部131から垂直方向に出射される1つまたは複数の光を受光してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、検体採取部材101が棒形状を有する例を示したが、本開示はこれに限られない。検体採取部材101が棒形状以外の形状を有していてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、スレーブロボット10が検体採取部材101を把持する例を示したが、本開示はこれに限られない。スレーブロボット10が、検体採取部材101以外の検査器具や診察器具を把持してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 スレーブロボット
20 マスタロボット
100 検体採取ロボットシステム(ロボットシステム)
101 検体採取部材(検査器具)
103 遮蔽板
103a 開口部
120 スイッチ部(手検知部)
130 光検知部(侵入検知部)
131 光出射部
132 受光部
140 光検知部(手検知部)
S 被検者
Sa 鼻腔