(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】薬液を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/14 20060101AFI20250131BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250131BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20250131BHJP
B01J 39/09 20170101ALI20250131BHJP
B01J 39/18 20170101ALI20250131BHJP
B01J 39/20 20060101ALI20250131BHJP
B01J 39/22 20060101ALI20250131BHJP
B01J 47/12 20170101ALI20250131BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20250131BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20250131BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20250131BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B01D61/14 500
H01L21/304 648F
H01L21/304 647Z
B01J39/05
B01J39/09
B01J39/18
B01J39/20
B01J39/22
B01J47/12
B01J20/26 B
B01D69/00
B01D71/36
G03F7/32
G03F7/32 501
(21)【出願番号】P 2021509148
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 US2019047367
(87)【国際公開番号】W WO2020041388
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-19
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】コール-ヨーコム マルシア
(72)【発明者】
【氏名】ヒンジー ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】バーカー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツァー ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ホアン シェンピン
(72)【発明者】
【氏名】アーマディアンナミニ ペジマニ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユァン
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043697(WO,A1)
【文献】特開平11-253941(JP,A)
【文献】特開2001-353424(JP,A)
【文献】特開2002-361052(JP,A)
【文献】米国特許第05733441(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
H01L 21/304
B01J 39/05
B01J 39/09
B01J 39/18
B01J 39/20
B01J 39/22
B01J 47/12
B01J 20/26
G03F 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を処理するための方法であって、
フィルタ、イオン交換膜、イオン吸着膜から選択された、少なくとも1つの濾過媒体を含むシステムを提供することと、
鉄(Fe)とカルシウム(Ca)の濃度の合計が10ppb以下である処理液を用いて、
装置内に構成された前記システムで処理工程を実行することと、
前記処理液を前記少なくとも1つの濾過媒体を含む前記システムに通過させる前に、少なくとも12~18時間の浸漬期間、前記処理液と同一種類である処理液に前記少なくとも1つの濾過媒体を浸漬することを含み、最大で5つの浸漬期間が存在する浸漬工程を実行することと、
前記処理工程に続き、前記システムで薬液を処理することと
を含み、
前記システムが、前記処理工程が実行された後に、前記装置内に設置され、
前記システムには前記処理工程が実行される筐体が複数組み込まれており、各筐体で実行される処理工程は異なるものとする、
方法。
【請求項2】
前記処理工程が、前記少なくとも1つの濾過媒体を含む前記システムに前記処理液を通過させることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理液が、前記薬液に含まれた少なくとも1つの有機溶剤と同一である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理工程が1回以上実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理工程が、前記フィルタ、前記イオン交換膜、前記イオン吸着膜から選択された、少なくとも2つの濾過媒体を含む前記システムで実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理工程が、前記フィルタと前記イオン交換膜又は前記イオン吸着膜のうちの1つを含む前記システムで実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの濾過媒体が、細孔径50nm以下を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの濾過媒体が、細孔径10nm以下を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薬液の前記処理が、精製工程を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
薬液を精製するための方法であって、
第1のフィルタ、第1のイオン交換膜、第1のイオン吸着膜から選択された、少なくとも1つの第1の濾過媒体を含む第1の精製システムを提供することと、
製造装置内に構成された前記第1の精製システムで薬液に精製工程を実行することと、
前記精製工程を実行する前に、前記少なくとも1つの第1の濾過媒体に第1の処理液を適用するステップであって、前記第1の処理液中の鉄(Fe)原子とカルシウム(Ca)の濃度の合計が10ppb以下であることと、
前記第1の処理液を前記少なくとも1つの第1の濾過媒体を含む前記第1の精製システムに通過させる前に、少なくとも12~18時間の浸漬期間、前記第1の処理液と同一種類である処理液に前記少なくとも1つの第1の濾過媒体を浸漬することを含み、最大で5つの浸漬期間が存在する浸漬工程を実行することと、
第2のフィルタ、第2のイオン交換膜、第2のイオン吸着膜から選択された、少なくとも1つの第2の濾過媒体を含む第2の精製システムを提供することと、
前記精製工程を実行する前に、前記少なくとも1つの第2の濾過媒体に第2の処理液を適用するステップであって、前記第2の処理液中の鉄(Fe)とカルシウム(Ca)の濃度の合計が10ppb以下であることと、
を含み、
前記第1の精製システムと前記第2の精製システムが、前記第1の処理液と前記第2の処理液を適用する前記ステップの後に、前記製造装置内に設置され、
前記第1の精製システムと前記第2の精製システムには、前記第1の処理液と前記第2の処理液を適用する前記ステップが実行される筐体が複数組み込まれており、各筐体で実行される前記ステップは異なるものとする、
方法。
【請求項11】
前記第1の処理液を適用する前記ステップが、前記第1の精製システム内に前記第1の処理液をフラッシュすることを含む、
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の処理液を適用する前記ステップが、前記第2の精製システム内に前記第2の処理液をフラッシュすることを含む、
請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記精製工程が、前記製造装置内に設置された前記第2の精製システムで前記薬液に実行される、
請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の処理液を適用する前記ステップと、前記第2の処理液を適用する前記ステップが、それぞれ一度実行される、
請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の処理液を適用する回数が、前記第2の処理液を適用する回数とは異なる、
請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.関連分野
【0002】
本発明は薬液を処理するための方法、より具体的には、半導体製造に用いられる薬液を精製するための方法に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
【0004】
大規模集積回路(以降「LSI」)等により代表される半導体デバイスのより高い統合性とより高いパフォーマンスの要求増加のため、新たな精度と更なる高分解能化処理技術が開発され、LSIの製造において適用されている。
【0005】
高分解能集積回路の製造の間、様々な処理液がベアウェハ又はフィルム被膜ウェハと接触する。例えば、微細金属配線構造の製造は、典型的に、レジスト膜を形成するために基材が複合液で被膜される前に、プリウエット液で基材を被膜し、パターン形状を有させるためにレジスト膜を露出し、現像液を用いることにより現像処理を実行し、リンス液を用いることによりパターン化レジスト膜を洗浄する処理が関係する。適切な成分と様々な添加剤を含むこれら処理液は、ICウェハの混入物源として知られる。
【0006】
最低1.0pptという非常に低レベルの金属不純物の存在が、半導体デバイスのパフォーマンスと安定性を低下させることが実証されている。そして、不純物の種類によって、酸化特性が劣化し、不正確なパターンが形成され、半導体回路の電気的性能が損なわれ、これは最終的に製造歩留まりに影響を与える。
【0007】
金属不純物、粗粒子、有機不純物、湿気等といったこれら混入物は、化学溶液の製造プロセスの様々な段階の間に、化学溶液に意図せず導入される可能性がある。例えば、適切に調製又は処理されていない、製造(処理)装置の一部と接触する薬液、及び異物が、製造装置の表面から溶出又は抽出され、薬液中の微量金属、粒子、及び/又は有機混入物の望まれない増加の結果となる。
【0008】
このため、薬液製造プロセスの標準及び品質と、超微細で且つ非常に精密な半導体電子回路の製造に欠かせない高純度薬液を形成するための工程に応用される製造装置を、大幅に改善し、厳密に管理することが不可欠である。
【発明の概要】
【0009】
従って、高精度集積回路を形成するため、超高純度薬液の需要及びこれら液の品質改善及び制御が非常に重要となっている。品質改善及び制御のための特定の重要パラメータには、微量金属の低減、液体粒子数の低減、オンウェハ欠陥の低減、有機混入物の低減等を含む。これら全ての重要パラメータが、製造プロセスの適切な設計と、製造装置の必要な準備とにより影響されることが示されている。
【0010】
上記を鑑み、本発明は、特に半導体製造に適合された薬液を処理するための方法を提供するものであり、高純度薬液が、所定の範囲内に管理された薬液中の望まれない粒子の数と金属不純物の量で製造される。このため、残留物及び/又はパーティクル欠陥の発生が抑制され、半導体ウェハの歩留まりが改善される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によると、薬液を処理するための方法は、フィルタ、イオン交換膜、イオン吸着膜から選択された少なくとも1つの濾過媒体を含むシステムを提供することと、約10ppb以下に制限された鉄(Fe)とカルシウム(Ca)の含有量を有する処理液を用いてシステム上で処理工程を実行することと、処理工程に続き、装置内に構成されたシステムで薬液を処理することとを含む。
【0012】
特定の例示的な実施形態によると、方法は、処理工程後に装置内のシステムを構成することを含む。
【0013】
特定の例示的な実施形態によると、方法は、処理工程が実行される前に装置内のシステムを構成することを含む。
【0014】
本発明の代替的な実施形態によると、薬液を処理するための方法は、第1のフィルタ、第1のイオン交換膜、第1のイオン吸着膜から選択された少なくとも1つの第1の濾過媒体を含む第1の精製システムを提供することと、製造装置内に構成された第1の精製システムで薬液に精製工程を実行することと、精製工程が実行される前に少なくとも1つの第1の濾過媒体に第1の処理液を適用することであって、第1の処理液中の鉄(Fe)とカルシウム(Ca)の含有量が約10ppb未満であることが好ましいこととを含む。
【0015】
特定の例示的な実施形態によると、方法は、第2のフィルタ、第2のイオン交換膜、第2のイオン吸着膜から選択された少なくとも1つの第2の濾過媒体を含む第2の精製システムを提供することと、精製工程が実行される前に少なくとも1つの第2の濾過媒体に第2の処理液を適用することであって、第2の処理液中の鉄(Fe)とカルシウム(Ca)の含有量が約10ppb未満であることが好ましいこととを含む。
【0016】
本発明によると、薬液を処理する方法は、製造工程の間の多様な有機及び無機混入物の導入を防ぎ、半導体製造に応用可能な高純度薬液を製造するため、効果的に設計され適切に準備される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の様態は、添付図面と共に読まれたとき、以下の詳細な説明から最も好ましく理解される。本業界の標準的な慣行に従い、様々な機能は縮尺通りに描かれていないことに注意されたい。実際、記述を明確化するため、様々な機能の寸法は任意に拡大又は縮小される。
【0018】
【
図1A】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態による薬液を処理するための1つの例示的な方法におけるステップのフロー図である。
【0019】
【
図1B】
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態による薬液を処理するための1つの例示的な方法におけるステップのフロー図である。
【0020】
【
図2】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による薬液を処理するための方法に適合された1つの例示的な薬液製造装置を表す概略図である。
【0021】
【
図3】
図3は、洗浄サイクルの機能としてのOWMC(オンウェハ金属数)の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の開示は、提供される主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態又は実施例を提供する。本開示を簡略化するため、構成要素及び配置の特定の実施例を以下に説明する。当然ながら、これらは単なる例であり、限定することを意図していない。例えば、用語「溶剤」が用いられるとき、特に述べられていない場合(特に明記しない限り)、それは単一の溶剤または2以上の溶剤の組合せを指す。加えて、本開示は、様々な実施例において参照符号及び/又は文字を繰り返す場合がある。この繰り返しは簡潔さと明確さを目的とするものであり、それ自体は、述べられる様々な実施形態及び/又は構成の間の関係を特定するものではない。
【0023】
更に、「下方」、「下」、「低い」、「上方」、「上」等といった空間的な相対的用語は、図面に表された1つの要素又は機能の別の要素又は機能に対する関係を説明するための記述を容易にするためここで用いられる。空間的な相対的用語は、図面に図示されている向きに加え、使用中又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図している。装置は、他の方法(90度回転又は他の向きに)で方向付けられてもよく、ここで用いられる空間的な相対的記述語はそれに応じて同様に解釈される。
【0024】
本発明において、用語「~」を用いて示す数値範囲は、用語「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0025】
本発明において、「ppm」は「parts-per-million(10
-6
)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10
-9
)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10
-12
)」を意味する。
【0026】
本発明において、1Å(オングストローム)は0.1nm(ナノメートル)に対応し、1μm(ミクロン)は1000nmに対応する。
【0027】
<薬液>
【0028】
本発明において、薬液は、プリウェット液、現像液、リンス液、洗浄液、剥離液等といったウェハ処理液、又はその製造のために用いられる原料溶剤を含む、
【0029】
精製工程を含むがこれに限定されない、本発明の処理を受ける前に、薬液は望まれない量の混入物及び不純物を含む可能性がある。薬液が本発明の薬液製造装置により処理された後、混入物と不純物の相当量が薬液から除去される。処理後の薬液は本発明において「処理済み薬液」と呼称される。「処理済み薬液」は、所定の範囲内に制御され制限された不純物を含んでよい。
【0030】
<有機溶剤>
【0031】
本発明において、薬液は有機溶剤を含む。有機溶剤の種類は特に限定されないが、周知の有機溶剤が該当する。薬液中の有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、有機溶剤は主成分として含まれる。具体的には、有機溶剤の含有量は、薬液の全質量に対し98質量%以上である。特定の実施形態において、有機溶剤の含有量は、薬液の全質量に対し99質量%以上である。他の実施形態において、有機溶剤の含有量は、薬液の全質量に対し99.5質量%以上である。更に他の実施形態において、有機溶剤の含有量は、薬液の全質量に対し99.8質量%以上である。その上限値は特に限定されないが、通常、その上限値は99.999質量%以下である。
【0032】
有機溶剤は、単独で用いられるか、又は2種以上を併用してよい。有機溶剤の2種以上を併用するとき、その合計含有量が上記の範囲内にあることが好ましい。
【0033】
薬液中の有機溶剤の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)デバイスを用いることにより測定できる。
【0034】
有機溶剤の沸点は特に限定されない。ただし、有機溶剤の沸点は、半導体チップの製造歩留まり改善の点から、200℃未満であることが好ましい。本発明において、沸点は1atmでの沸点を意味する。
【0035】
有機溶剤は特に限定されない。有機溶剤の例は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、n-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-3-ペンタノール、2,3-ジメチル-3-ペンタノール、2,4-ジメチル-3-ペンタノール、4,4-ジメチル-2-ペンタノール、3-エチル-3-ヘプタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-メチル-2-ヘキサノール、2-メチル-3-ヘキサノール、5-メチル-1-ヘキサノール、5-メチル-2-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、4-メチル-3-ヘプタノール、6-メチル-2-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、2-プロピル-1-ペンタノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、2-ノナノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、tert-ブチルエチルエーテル、tert-ブチルプロピルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、ブロモメチルメチルエーテル、α、α-ジクロロメチルメチルエーテル、クロロメチルエチルエーテル、2-クロロエチルメチルエーテル、2-ブロモエチルメチルエーテル、2,2-ジクロロエチルメチルエーテル、2-クロロエチルエチルエーテル、2-ブロモエチルエチルエーテル、(±)-1,2-ジクロロエチルエチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテル、ジアリルエーテル、2-メトキシプロペン、エチル-1-プロペニルエーテル、シス-1-ブロモ-2-エトキシエチレン、2-クロロエチルビニルエーテル、アリル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、メチルシクロヘキサン、デカリン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、クメン、sec-ブチルベンゼン、シメン、ジペンテン、ピルビン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メチルメトキシプロピオネート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン、酢酸イソアミル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,4-ジオキサン、ヘキシルアルコール、2-ヘプタノン、及びテトラヒドロフランを含む。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、薬液はプリウェット液である。プリウェット液の種類は特に限定されない。プリウェット液の特定の例としては、シクロペンタノン(CyPe)、シクロヘキサノン(CyH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGPE)、乳酸エチル(EL)のうちの少なくとも1つを含む。他の実施形態において、薬液は、ブチルアセテートといった現像液、又は4-メチル-2-ペンタノール(MIBC)といったリンス液であってよい。
【0037】
<不純物>
【0038】
処理対象及び/又は薬液に含まれる不純物は、金属不純物、粒子、及び有機不純物や湿気といったその他を含む。
【0039】
<金属不純物>
【0040】
最も一般的な金属不純物は、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)といった重金属、及びナトリウム(Na)とカルシウム(Ca)といったイオン性金属を含む。金属の種類によって、金属不純物は、酸化物の完全性を低下させ、MOSゲートスタックを劣化させ、デバイスの寿命等を短縮させる。本発明の処理方法により生成される薬液において、総微量金属含有量は、質量で0~150pptの所定の範囲内にあることが好ましい。
【0041】
本発明において、金属不純物は、固体の形態で提供される金属不純物を指す(金属単体、粒子状金属含有化合物等)。
【0042】
本発明において、薬液中の総微量金属は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)により測定される。OWMP(オンウェハ金属粒子)は、レーザ系検査システム及びEDX(エネルギー分散型X線)検査との組合せでウェハを検査することにより判定される。ICP-MSを用いた総微量金属の測定方法と、レーザとEDXを用いたオンウェハ金属粒子(OWMP)の測定方法は、以下の実施例において説明するようなものである。
【0043】
<粒子>
本発明において、0.03μm以上のサイズを有する計数対象を「粒子」と呼ぶ。液体媒体中の「粒子」の数は、光散乱式液中粒子計数器により計数され、LPC(液中粒子数)と呼ぶ。
【0044】
粒子の例は、ほこり、ごみ、有機固形物、無機固形物を含む。粒子はコロイド化した金属原子の不純物をも含んでよい。容易にコロイド化する金属原子の種類は特に限定されないが、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Zn、Pbからなる群から選択される少なくとも1つの金属原子を含んでよい。本発明の薬液製造装置により準備された薬液において、0.03μm以上のサイズを有する粒子の合計数は、薬液1ml毎に100以下の所定の範囲内にあることが好ましい。
【0045】
<有機不純物>
【0046】
有機不純物は、薬液に提供される主成分としての有機溶剤とは異なる化合物を意味し、薬液の全質量に対し5000質量ppm以下の含有量において含まれる有機物が有機不純物に対応し、有機溶剤には対応しないことを指す。
【0047】
揮発性有機化合物は、クリーンルーム内でさえ周囲空気中に存在する。有機不純物によっては、出荷及び保管装置に由来するものもあれば、最初から原材料に含まれるものもある。有機不純物の他の例には、有機溶剤が合成されるときに生成される副産物、及び/又は未反応の反応物を含む。
【0048】
薬液中の有機不純物の合計含有量は特に限定されない。半導体デバイスの製造歩留まりを改善する点から、有機不純物の合計含有量は、薬液の全質量に対し、0.001~5000質量ppmであることが好ましく、0.003~2000質量ppmであることがより好ましく、0.005~1000質量ppmであることが更に好ましく、0.008~500質量ppmであることが特に好ましく、0.01~100質量ppmであることが最も好ましい。
【0049】
薬液中の有機不純物の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)デバイスを用いることにより測定できる。
【0050】
以下において、本発明の実施形態は、薬液を処理するための例示的な方法を説明する。薬液を処理するための方法は、少なくとも、薬液と接触する薬液製造装置の一部において処理工程を実行することを含み、製造装置の該一部から薬液に抽出又は溶出される可能性のある望まれない異物が軽減または排除される。処理工程は、本発明の薬液製造装置により実施される薬液の処理の前に行われる。これにより、処理済み薬液は、所望の範囲内で効果的に管理された処理済み薬液中の粒子状物質の数と金属不純物の量で、超高純度標準を満たすか超えるよう厳密に制御される。最終的に、残留物及び/又はパーティクル欠陥の発生が抑制され、半導体ウェハの歩留まりが改善される。
【0051】
<薬液を処理する方法>
【0052】
薬液を処理するための方法のステップが一連の行為又はイベントとして表され説明されるが、そのような行為又はイベントの図示された順序は、限定的な意味で解釈されるべきではないことが理解される。加えて、本発明の1以上の実施形態を実施するために、全ての図示された工程又はステップが必要とされるわけではない。
【0053】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態による薬液を処理するための1つの例示的な方法におけるステップのフロー図である。
図2は、いくつかの実施形態による薬液を処理するための方法に適合された1つの例示的な薬液製造装置を表す概略図である。
【0054】
図1Aと2を参照し、本発明のいくつかの実施形態による薬液を処理するための方法は、ステップ10において、処理済み薬液を製造するための
薬液製造装置210を提供することを含む。本発明の例示的な実施形態によると、処理済み薬液中の望まれない粒子状物質(粒子)の数と金属不純物の量が、所定の範囲内に制限される。いくつかの例示的な実施形態において、
薬液製造装置210は、少なくとも1つの第1の精製システム110を含む。特定の例示的な実施形態において、
薬液製造装置210は、少なくとも1つの第1の精製システム110に加え又はその代わりに、第2の精製システム120を含む。
【0055】
やはり
図1Aと2を参照し、第1の精製システム110は、それぞれが特定の精製機能(濾過ユニットの様式又は媒体)を有し、特定の処理を提供する、1つ又は複数の濾過媒体114(精製手段)を含む。例えば、精製システム110は、粒子除去フィルタ、イオン交換膜、イオン吸着膜から選択された少なくとも1つの濾過媒体114(114a、114b、又は1114c)を含んでよい。更に、1つ又は複数の濾過媒体114は、供給業者から市販されている高品質級の製品である。
【0056】
特定の例示的な実施形態において、1つ又は複数の濾過媒体114は、それぞれ区画化され、1つ又は複数の筐体112に収容される。例えば、第1の精製システム110は、第1の筐体112a、第2の筐体112b、第3の筐体112cから選択された少なくとも1つの筐体112を含んでよく、少なくとも1つの筐体112は、その内に濾過媒体114の1以上のユニットを含み収容する。或いは、上記例において、第1の精製システム110は、1つの筐体112のみ(第1の筐体112a、第2の筐体112b、又は第3の筐体112cのいずれか)、又は2つの筐体112(第1の筐体112a、第2の筐体112b、第3の筐体112cののうちの任意の2つの組合せ)、又は3つの筐体112(第1の筐体112a、第2の筐体112b、第3の筐体112c)を含んでよい。上記例は例示目的のみであり、筐体の数は示された例に限定されないことに注意されたい。他の例示的な実施形態において、第1の精製システム110は、上記の第1、第2、第3の筐体(112a、112b、112c)に加え、例えば、1、2、3、6、又は10以上の、より多くの筐体を含んでよい。代替的な例示的な実施形態において、分離された筐体112がなくてよく、1つ又は複数の濾過媒体114は第1の精製システム110において区画化されないよう構成される。更に他の例示的な実施形態において、第1の精製システム110は、1つ又は複数の濾過媒体114に加え、他の精製モジュール(図示せず)も含んでよい。
【0057】
図2に示されるように、第1の筐体112aは第1の濾過媒体114aの1以上のユニットを含んでよく、第2の筐体112bは第2の濾過媒体114bの1以上のユニットを含んでよく、第3の筐体112cは第3の濾過媒体114cの1以上のユニットを含んでよく、第1、第2、第3の濾過媒体114a、114b、114cは機能又は性能が異なってよく、それぞれ、各選択された筐体(112a、112b、112c)に収容された濾過媒体114(114a、114b、114c)の1以上のユニットが同一又は類似の精製機能、物理化学的特性、細孔径及び/又は構成材料等を有する。例として、第1の精製システム110は、それぞれ、第1の筐体112a、第2の筐体112b、第3の筐体112cに収容された、1以上の粒子除去フィルタ、1以上のイオン交換膜、1以上のイオン吸着膜を含んでよい。もう1つの例において、第1の精製システム110は、それぞれ、第1の筐体112aと第2の筐体112bに収容された、1以上の粒子除去フィルタと1以上のイオン交換膜を含んでよい。もう1つの例において、第1の精製システム110は、それぞれ、第1の筐体112aと第2の筐体112bに収容された、1以上の粒子除去フィルタと1以上のイオン吸着膜を含んでよい。上記例は例示目的のみであり、限定することを意図していないことに注意されたい。
【0058】
各選択された筐体112(112a、112b、112c)にそれぞれ収容された濾過媒体114(114a、114b、114c)のユニット数は限定されない。いくつかの実施形態において、各選択された筐体112に収容された濾過媒体114のユニット数は、例えば、1、2、10、15、20、30、又は前記ユニット数の任意の2つの間の任意の数という、包括的に1~30までの範囲であってよい。代替的な実施形態において、濾過媒体114のユニット数は30より多くてよい。各選択された筐体112に収容された濾過媒体114のユニット数は、示された例に限定されないことに注意されたい。
【0059】
再び
図1Aと2を参照し、薬液を処理するための方法は、ステップ20aにおいて、
薬液製造装置210の第1の精製システム110により処理される
薬液220を第1の精製システム110へ運ぶ前に、1以上の濾過媒体114を有する第1の精製システム110において処理液で処理工程を実行することを含む。いくつかの例示的な実施形態において、処理工程は洗浄プロセスを含み、濾過媒体114に埋まっている、もともと有している不純物を除去することができる。より具体的には、各選択された筐体112(112a、112b、112c)に収容された濾過媒体114(114a、114b、114c)の1以上のユニットが、
洗浄液230で洗浄される。第1の精製システム110の処理工程はこれに限定されないことに注意されたい。
【0060】
本発明のいくつかの例示的な実施形態によると、ステップ20aにおける処理工程は、所定の時間、濾過媒体114(114a、114b、114c)を処理液に浸漬することにより行われてよい。更に他の例示的な実施形態において、処理工程は濾過媒体114内の濡粒の量を減少させるため、そして処理効率を向上させるため、洗浄と浸漬の組合せが関わってよい。
【0061】
本発明によると、洗浄工程で用いられる洗浄液は特に限定されず、周知の洗浄液を用いることができる。例えば、粒子状物質(粒子)、金属不純物、有機不純物が十分に低減された水と有機溶剤が用いられてよい。特定の実施形態において、薬液自体、又は薬液を希釈して得られた液を、洗浄液として用いることができる。いくつかの例示的な実施形態において、洗浄液は、処理される薬液に含まれる有機溶剤の少なくとも1つと同一であるが、その有機溶剤の少なくとも1つがほんの少量の不純物を含む高純度製品であるという条件を伴う。本発明の洗浄液(30、40)の基準として、洗浄工程に適用される洗浄液中の鉄(Fe)とカルシウム(Ca)の含有量は約10ppb以下に制限される。
【0062】
本発明の洗浄液として用いられる有機溶剤の例は、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸、アルキルエステル、アルキルアルコール、アルキルアルコキシプロピオネート、環状ラクトン(炭素原子4~10が好ましい)、環を有し得るモノケトン化合物(炭素原子4~10が好ましい)、アルキレンカーボネート、アルコキシアルキルアセテート、アルキルピルベートを含むが、これに限定されない。
【0063】
より具体的には、洗浄液の例は、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGPE)、乳酸エチル(EL)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン(NMP)、ジエチレングリコール(DEG)、エチレングリコール(EG)、ジプロピレングリコール(DPG)、プロピレングリコール、プロピレンエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、スルホラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン(CyH)、シクロヘプタノン(CyHe)、シクロペンタノン(CyPe)、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトンを含むが、これに限定されない。更に、これら有機溶剤の2以上の異なる種類が混合され洗浄液として用いられるか、混合せずに用いられてよい。
【0064】
やはり
図1Aと2を参照し、洗浄の方法は特に限定されない。いくつかの例示的な実施形態において、洗浄工程は多量の液体でフラッシュ又はリンスすることを含む。より具体的には、各選択された筐体112(112a、112b、112c)に収容された濾過媒体114(114a、114b、114c)の以上のユニットが
洗浄液230でフラッシュされる。
【0065】
洗浄工程がフラッシングを含むという内容において、所定量の洗浄液230が、共に連結された選択された筐体112(112a、112b、112c)の第1の筐体内に分注され、洗浄液230は各選択された筐体112(112a、112b、112c)内の濾過媒体114を通り流されるか通過させられ、これにより濾過媒体114の各ユニットは洗浄液と完全に接触し、濾過媒体内に詰まった又は埋まった、もともと有している不純物が洗浄液230により運ばれる。洗浄液230は、次いで、選択された筐体112の最後の筐体(例えば第3の筐体112c)を離れ、排出タンク130内に収集される。上記の例示的な実施形態において、洗浄液230は、処理のため薬液製造装置210へ薬液220を送るための導管から分離された導管を介して第1の精製システム110内の第1の筐体へ運ばれる。ただし、上記例は例示目的のみであり、限定することを意図していないことに注意されたい。代替的な実施形態において、洗浄液230と薬液220は、同一の導管を介し、薬液製造装置210の第1の精製システム110へ送られてよい。
【0066】
洗浄又はフラッシング工程で用いられる洗浄液の量は特に限定されない。本発明のいくつかの実施形態における洗浄又はフラッシング工程に適合された洗浄液の実用的な量は、1洗浄サイクル(洗浄1回)毎に各筐体112毎に包括的に5~500ガロンの範囲であってよい。例えば、洗浄液の量は、洗浄サイクル毎に筐体112毎に約5、10、20、50、100、200、300、400、500ガロンであってよく、前記量のうちの任意の2つの間の任意の範囲を含む。
【0067】
例として、約10ガロンの洗浄液が濾過媒体114の各筐体112を洗浄又はフラッシュするために適用されるとき、及び、
図2に例示されるように、濾過媒体114(114a、114b、114c)の3つの筐体(112a、112b、112c)を有する精製システム110が洗浄又はフラッシュされるシナリオにおいて、合計30ガロンの
洗浄液230が1洗浄サイクル毎に第1の精製システム110内に分注される。より具体的には、約30ガロンの
洗浄液230が第1の筐体112a内に分注される。
洗浄液230は、次いで、第1の筐体112aから第2の筐体112bへ順方向に移動し、最終的に第3の筐体112cから排出タンク130へ排出され、これにより各筐体(112a、112b、112c)内の濾過媒体(114a、114b、114c)の各ユニットが
洗浄液230でフラッシュされ洗浄される。
【0068】
上記例は例示目的のみであり、処理又は洗浄される濾過媒体114の筐体112の数は示された例に限定されないことに注意されたい。他の例示的な実施形態において、処理又は洗浄される濾過媒体114の筐体112の数は、例えば、1、2、5、又は10であってよく、用いられる洗浄液の量は、対応して1洗浄サイクル毎に10、20、50、又は100ガロンであってよい。更に、上記の洗浄サイクル毎の筐体毎の洗浄液の例示的な量10ガロンは例示目的であり、限定することを意図していない。洗浄サイクル毎の筐体毎の洗浄液の量は、濾過媒体114(114a、114b、114c)の供給源、種類、初期条件により変化してよく、例えば、30ガロン、55ガロン、150ガロン、又は400ガロンの洗浄液が洗浄サイクル毎の筐体毎に適合されてよい。濾過媒体114の初期条件は、例えば、供給業者から、濾過媒体114が取得される条件である。
【0069】
実行される洗浄又はフラッシングのサイクル(回)数は特に限定されず、濾過媒体114(114a、114b、114c)の供給源、種類、初期条件により変化してよい。本発明の特定の実施形態において、濾過媒体114の洗浄又はフラッシングは単一工程(1X)であり、薬液220は、単一の洗浄又はフラッシング工程が完了した後に、処理される第1の精製システム110へ送られる。いくつかの代替的な実施形態において、洗浄又はフラッシングは複数サイクル(回)、例えば、2(2X)、3(3X)、4(4X)、6(6X)、又は8(8X)サイクル実行されてよく、各サイクルのため洗浄液の新たなバッチが用いられる。本発明において、「洗浄液の新たなバッチ」は、洗浄又はフラッシング工程で以前に使用されていない洗浄液を意味し、洗浄液中の鉄(Fe)とカルシウム(Ca)の含有量は約10ppb以下である。
【0070】
例として、上記で表された、3つの筐体(112a、112b、112c)の各筐体112内の濾過媒体114(114a、114b、114c)を洗浄又はフラッシュするため10ガロンの洗浄液を適用する例によると、合計60ガロン(30+30)の洗浄液が2サイクル(2X)の洗浄又はフラッシング工程において消費される。この内容において、30ガロンの洗浄液の新たなバッチが洗浄又はフラッシングの第1サイクル(回)の間に用いられ、30ガロンの洗浄液のもう1つの新たなバッチが洗浄又はフラッシングの第2サイクル(回)の間に用いられる。上記例は例示目的のみであり、筐体の数、サイクル毎に筐体毎に適用される洗浄液の量、洗浄サイクルの数は、示された例に限定されないことに注意されたい。
【0071】
他の実施形態において、複数サイクルの洗浄又はフラッシングの効果を達成するため、合わされた全ての洗浄サイクルのため意図された洗浄液の合計が、筐体112内の濾過媒体114を洗浄又は洗い流すため集合的に適用される。例えば、上記に例示された2サイクルの洗浄又はフラッシング工程は、3つの筐体(112a、112b、112c)の各筐体112内の濾過媒体114(114a、114b、114c)を洗浄又はフラッシュするため、全体として合計60ガロンの洗浄液230を適用することにより達成される。
【0072】
図2を参照し、
薬液製造装置210は、第1の精製システム110と直接的又は間接的に連通する第2の精製システム120を更に含んでよく、第2の精製システム120は1以上の濾過媒体124を含む。
図2に示されるような例示的な実施形態において、第2の精製システム120は、第1の精製システム110の下流に構成される。ただし、第1の精製システム110と第2の精製システム120との相対的構成は上記に示された例に限定されないことに注意されたい。
【0073】
第1の精製システム110に類似し、第2の精製システム120内の1以上の濾過媒体124は、それぞれ、区画化され1以上の筐体122に収容されてよい。例えば、第2の精製システム120は、第4の筐体122a、第5の筐体122b、第6の筐体122cから選択された少なくとも1つの筐体122を含んでよく、少なくとも1つの筐体122は、その内に濾過媒体124の1以上のユニットを含み収容する。或いは、上記例によると、第2の精製システム120は、1、2、又は3つの筐体122を含んでよい。他の例示的な実施形態において、第2の精製システム120は、第4の筐体122a、第5の筐体122b、第6の筐体122cに加え、例えば、1、2、5、又は10以上のより多くの筐体122を含んでよい。更に、分離された筐体122がなくてよく、1以上の濾過媒体124は第2の精製システム120において区画化されないよう構成される。更に他の例示的な実施形態において、第2の精製システム120は、1以上の濾過媒体124に加え、他の図示されていない物質処理モジュールを含んでもよい。
【0074】
第4の筐体122aは第4の濾過媒体124aの1以上のユニットを含んでよく、第5の筐体122bは第5の濾過媒体124bの1以上のユニットを含んでよく、第6の筐体122cは第6の濾過媒体124cの1以上のユニットを含んでよく、第4の濾過媒体124a、第5の濾過媒体124b、第6の濾過媒体124cは機能又は性能が異なり、異なる精製処理を提供してよく、それぞれ、各選択された筐体122(122a、122b、122c)に収容された濾過媒体124(124a、124b、124c)の1以上のユニットが同一又は類似の精製機能、物理化学的特性、細孔径及び/又は構成材料等を有する。いくつかの例示的な実施形態において、第2の精製システム120は、粒子除去フィルタ、イオン交換膜、イオン吸着膜から選択された少なくとも1つの濾過媒体124(124a、124b、124c)を含んでよい。例として、第2の精製システム120は、第4の筐体122aに収容された3つの粒子除去フィルタと、第5の筐体122bに収容された3つのイオン交換膜又は3つのイオン吸着膜とを含んでよい。もう1つの例において、第2の精製システム120は、第4の筐体122aに収容された2、3、又は4つの粒子除去フィルタと、第5の筐体122bに収容された別の2、3、又は4つの粒子除去フィルタとを含んでよく、2つの筐体122a、122b内の粒子除去フィルタは、細孔径及び/又は構成材料において異なる。更に、1以上の濾過媒体124は、供給業者から市販されている高品質級の製品である。
【0075】
各選択された筐体122(122a、122b、122c)に収容された濾過媒体124(124a、124b、124c)のユニット数は限定されない。いくつかの実施形態において、各選択された筐体122に収容された濾過媒体124のユニット数は、例えば、1、2、10、15、20、30、又は前記ユニット数の任意の2つの間の任意の数の、包括的に1~30の範囲であってよい。代替的な実施形態において、濾過媒体124のユニット数は30より多くてよい。各選択された筐体122に収容された濾過媒体124のユニット数は示された例に限定されないことに注意されたい。
【0076】
再び
図1Aを参照し、薬液を処理するための方法は、ステップ20bにおいて、本発明の
薬液製造装置210での薬液の処理の前に、1以上の濾過媒体124を有する第2の精製システム120を処理液で処理工程を実行することも含む。
【0077】
第2の精製システム120に適用される処理工程の原理は、段落[0055]~[0072]に例示した第1の精製システム110に適用されるものと類似である。例えば、第2の精製システム120で実行される処理工程は、洗浄工程を含んでよい。より具体的には、ステップ20bにおいて、第2の精製システム120の各選択された筐体122(122a、122b、122c)に収容された濾過媒体124(124a、124b、124c)の1以上のユニットが、洗浄液40で洗浄される。
【0078】
更に、洗浄工程がフラッシングを含むという内容において、所定量の洗浄液40が、第2の精製システム120内の互いに連結された各選択された筐体122(122a、122b、122c)に収容された濾過媒体124(124a、124b、124c)の1以上のユニットを洗浄又はフラッシュするため、第2の精製システム120内の選択された筐体122の第1の筐体内に分注される。洗浄液40は各選択された筐体122内の濾過媒体124を通り流されるか通過させられ、これにより濾過媒体124の各ユニットは洗浄液と完全に接触し、濾過媒体124に詰まった又は埋まった、もともと有している不純物が洗浄液40により洗い流される。洗浄液40は、次いで、選択された筐体122の最後の筐体(例えば第6の筐体122c)を離れ、排出タンク150内に収集される。第2の精製システム120に適用される上記の例示的な処理工程は例示目的であり、限定することを意図していないことに注意されたい。
【0079】
やはり
図1Aを参照し、ステップ20aにおける第1の精製システム110の処理工程が完了した後、及び/又は、ステップ20bにおける第2の精製システム120の処理工程が完了した後、
薬液220の処理は、ステップ30において本発明の
薬液製造装置210を適合することにより実施される。ステップ30における薬液の処理は、例えば、
薬液製造装置210に設置された処理後の第1の精製システム110及び/又は処理後の第2の精製システム120を用いて
薬液220に精製工程を実行することを含む。
【0080】
いくつかの実施形態によると、第1の精製システム110の処理と第2の精製システム120の処理は独立して別々に実行されるが、同時に又は順次に実施されてよい。より具体的には、第1の精製システム110の濾過媒体114の処理に適用される、処理液の種類、処理条件、使用される処理液の量、処理サイクル数、処理方法(フラッシング、浸漬、又は両方)等と、第2の精製システム120の濾過媒体124に適用されるこれらは、濾過媒体114と124の供給源、種類、条件と、それぞれの精製システム110、120内で処理される選択された筐体112と122の数によって、互いに同一、類似、又は変化してよい。
【0081】
例として、シクロヘキサノンが、第1の精製システム110の濾過媒体114を処理するための処理液30として、そして第2の精製システム120の濾過媒体124を処理するための処理液40として用いられてよい。ただし、濾過媒体114を処理するため指定された処理条件と処理サイクル数は、濾過媒体124を処理するため指定された処理条件と処理サイクル数とは異なってよい。更に、第1の精製システム110の処理は、第2の精製システム120の処理の前、後、又は同時に実行されてよい。更に、シクロヘキサノンの新たなバッチが、それぞれ第1の精製システム110と第2の精製システム120に適用され、シクロヘキサノンの新たなバッチは精製システム110と120それぞれの処理のための各処理サイクルに適用されると理解される。上記例は例示目的であり、限定することを意図していないことに注意されたい。
【0082】
処理工程に適用される濾過媒体114と124と処理液の大部分について、処理工程は周囲条件(室温と気圧)において実行される。ただし、いくつかの例示的な実施形態において、処理条件は濾過媒体(114、124)及び/又はその処理に用いられる処理液の機能である。特定の例示的な実施において、処理条件は周囲条件より下又は上に制御される。例えば、特定のイオン交換膜又はイオン吸着膜の洗浄又はフラッシングは、特定の環状脂肪族ケトン有機溶剤が洗浄液として用いられるとき、80°F未満又は77°F未満といった室温未満で実行される。例として、イオン交換膜の洗浄又はフラッシングは、シクロヘキサノン(CyH)が洗浄液として適用されるとき、70°F未満で実行される。
【0083】
濾過媒体114、124が洗浄又はフラッシング工程を受けるとき、濾過媒体114、124を流れる又は通過する洗浄液の流速は、薬液220が処理されるとき、典型的に、通常動作流速の約10~12ガロン/分よりも遅く制御される。例えば、洗浄又はフラッシング工程の間の洗浄液の流速は、例えば、約1、2、5、又は8ガロン/分といった、最低約1ガロン/分から最高約10ガロン/分までの範囲であってよい。当然、これらは単なる例であり、限定することを意図していない。他の実施形態において、流速は、例えば、18~20ガロン/分のように、10ガロン/分を超えてよい。
【0084】
更に、
図1Aに示されるような本発明のいくつかの実施形態によると、処理工程は、
薬液製造装置210に既に設置された精製システム(110、120)内に構成された各選択された筐体(112、122)内の濾過媒体(114、124)の1以上のユニットに対し、in-situで実行される。代替的な実施形態において、オフライン処理工程が行われてよい。
図1Bに示されるようなオフライン処理工程は、実質的に上述したin-situ処理工程と同等であり、主要な差異は、選択された筐体(112、122)がそれぞれ精製システム(
110、
120)に構成され、
薬液製造装置210に設置される前に、上記の段落[0060]~[0072]と[0077]~[0079]に例示されるように、そこに収容された濾過媒体(114、124)の1以上のユニットを有する各選択された筐体(112、122)が処理工程を受けることである。より具体的には、
図1Bに示されるように、処理工程は、ステップ10aにおいて濾過媒体114の1以上のユニットを有する各選択された筐体(112)で実行され、処理工程は各選択された筐体(112)に対し同一又は異なってよい。同様に、処理工程は、ステップ10bにおいて濾過媒体124の1以上のユニットを有する各選択された筐体(122)で実行され、処理工程は各選択された筐体(122)に対し同一又は異なってよい。ステップ10a、ステップ10bにおける処理工程が完了した後、選択された筐体112は処理後の第1の精製システム110として共に構成され、選択された筐体122は処理後の第2の精製システム120として共に構成され、これらはステップ20において
薬液製造装置210に設置される。その後、
薬液220の処理が、本発明の
薬液製造装置210内に構成された処理後の第1の精製システム110と処理後の第2の精製システム120を適合することにより、ステップ30において実施される。
【0085】
[粒子除去フィルタ]
【0086】
粒子除去工程は、粒子除去フィルタを用いることにより、薬液といった処理対象中の粒子及び/又は金属不純物(固体の金属不純物)を除去する工程である。粒子除去フィルタは特に限定されず、周知の粒子除去フィルタを用いることができる。
【0087】
フィルタの平均細孔径(細孔径)は特に限定されないが、約0.001~1.0μm(1nm~1000nm)が適し、約0.003~0.5μm(3nm~500nm)が好ましく、約0.005~0.1μm(5nm~100nm)が最も好ましい。この範囲内で、フィルタの目詰まりを抑制しつつ、精製品に含まれる不純物又は凝集物といった異物を確実に除去することができる。本発明の特定の実施形態において、第1の精製システム110は、最小2nmの平均細孔径を有し、0.002μm(2nm)以上約1.0μm(1000nm)以下の範囲であってよい粒子除去フィルタ(例えば、2nm以上の細孔径を有する精密濾過膜)を含んでよい。鉄又はアルミニウムといった金属原子を含むコロイド化した不純物に加えて微粒子が処理対象に含まれる場合、処理対象は、比較的微細な粒子を除去するため最小20nm又は15nmの平均細孔径を有するフィルタを用いることにより濾過を実行する前に、粒子を除去するため最小50nmの平均細孔径を有するフィルタを用いることにより濾過される。このため、濾過効率が向上し、粒子除去のパフォーマンスがより向上する。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態において、第2の精製システム120は最小0.001μm(1nm)で、約0.001μm(1nm)以上約0.015μm(15nm)以下の範囲であってよい細孔径を有する粒子除去フィルタを含んでよい。特定の実施形態において、第2の精製システム120は最小1nmの細孔径を有するUPEフィルタを含んでよい。更に他の実施形態において、第2の精製システム120は、約5nmの細孔径を有するナイロン又はMPTFEフィルタを含んでよい。ここで、平均細孔径はフィルタ製造業者の公称値を参照できる。
【0089】
粒子除去に用いられるフィルタの材料の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)といったフルオロ樹脂、ナイロン等といったポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン(PP)等といったポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子を含む)、パーフルオロアルコキシ(PFA)樹脂等、又は変性ポリテトラフルオロエチレン(MPTFE)を含む。薬液に含まれる不純物及び/又は凝集物といった微細異物を効率的に除去することを考慮し、本発明の粒子除去に用いられるフィルタは、ナイロン、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリイミド、ポリアミドイミドからなる群から選択された少なくとも1つで製造される。上記材料で製造されたフィルタにより、残留物欠陥及び/又はパーティクル欠陥を引き起こしやすい高極性を有する異物を効果的に除去することができ、薬液中の金属成分の含有量を効率的に低減することができる。
【0090】
ポリイミド及び/又はポリアミドイミドは、カルボキシル基、塩型カルボキシル基、-NH-結合からなる群から選択された少なくとも1つを有してよい。耐溶剤性については、フルオロ樹脂、ポリイミド、及び/又はポリアミドイミドが優れる。
【0091】
商用フィルタとしては、提供される様々なフィルタから、例えば、ポール・コーポレーション、ADVANTEC東洋濾紙株式会社、インテグリス・ジャパン株式会社(前日本マイクロリス社)、株式会社キッツマイクロフィルターにより製造されたフィルタを選択することができる。加えて、ポリイミド製の「P-ナイロンフィルタ(細孔径0.02μmで臨界表面張力77mN/m)」(ポール・コーポレーション製)、高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(細孔径0.02μm)」(ポール・コーポレーション製)、高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(細孔径0.01μm)」(ポール・コーポレーション製)、超高分子量ポリエチレン膜製の「UPE(細孔径3nm)」(インテグリス社製)を用いることができる。
【0092】
[イオン交換樹脂膜(イオン交換膜)]
【0093】
本実施形態において用いられるイオン交換樹脂膜は特に限定されず、樹脂膜に固定化された適切なイオン交換基を含むイオン交換樹脂を含むフィルタが用いられてよい。そのようなイオン交換樹脂膜の例は、樹脂膜上に化学修飾されたスルホン酸基といったカチオン交換基を有する強酸性カチオン交換樹脂を含み、その例としては、セルロース、珪藻土、ナイロン(アミド基を有する樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、イミド基を有する樹脂、アミド基とイミド基を有する樹脂、フルオロ樹脂、又は粒子除去膜とイオン交換樹脂膜との一体構造を有する膜であるイオン交換樹脂膜及び粒子除去膜を有する高密度ポリエチレン膜を含む。イオン交換基が化学修飾されたポリアルキレン膜が好ましい。ポリアルキレンは、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンを含み、ポリプロピレンが好ましい。イオン交換基としてカチオン交換基が好ましい。本実施形態で使用されるイオン交換樹脂膜は、金属イオン除去機能を備えた市販のフィルタであってよい。これらのフィルタは、イオン交換効率に基づき選択され、最小約0.2μm(200nm)のフィルタの推定細孔径を有する。
【0094】
[イオン吸着膜]
【0095】
イオン吸着膜は、多孔質膜材料を有し、イオン交換機能を有する。そのようなイオン吸着膜は、100μm以下の細孔径を有しイオン交換機能がある限り、特に限定されない。その材料、種類等は特に限定されない。イオン吸着膜を構成する基材の材料の例には、セルロース、珪藻土、ナイロン(アミド基を有する樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンといった精密濾過膜のフィルム材料、イミド基を有する樹脂、アミド基とイミド基を有する樹脂、フルオロ樹脂、又は高密度ポリエチレン樹脂、イオン交換能官能基が導入された膜材料等を含むが、これに限定されない。膜材料の形状の例としては、プリーツ型、平膜型、中空糸型、特開2003-112060に記載の多孔質体等を含む。膜材料に導入されるイオン交換基として、除去すべき成分の溶出と選択性を最適化するため、カチオン交換基、キレート交換基、アニオン交換基のうちの少なくとも2つの組合せを用いることが好ましい。イオン吸着膜は多孔性であるため、微粒子の一部を除去することも可能である。 本発明の特定の実施形態において、イオン吸着膜は、例えば、最小0.02μm(20nm)の細孔径を有するナイロン膜である。
【0096】
[実施例]
【0097】
以下の実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。以下の実施例で説明される、材料、使用量、割合、処理の詳細、処理手順等は本発明の要旨から逸脱することなく、ある範囲に適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下の実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0098】
第1の精製システム110内の濾過媒体114の選択、洗浄サイクルの回数、選択された濾過媒体を処理するために適用される洗浄液の量は、各洗浄サイクルの最後に各サンプル内に組成物を有する、処理後の洗浄液を得るため調整された。以下の実験で使用された濾過媒体は、供給業者から新品で得た高品質級製品である。いくつかの実験において、フィルタの複数ユニットを一度フラッシュしているが、以下に示されたデータは単一ユニットに数学的に正規化している。
【0099】
<OWPC、OWMC、SP5>
【0100】
各処理後の洗浄液サンプルを収集し、次いでウェハ被膜ツールに挿入した。ベアウェハがサンプルで被覆された後、ウェハをレーザー式検査システムに移して検査した。レーザー光を用いることにより、レーザー式検査システムが19nmの検出限界でウェハ上の各粒子の位置とサイズを検知、計数、記録した。より具体的には、計数対象には19nm以上のサイズを有する粒子を含んだ。データは、ウェハマップを作成し、1000nm以下のサイズを有する全ての粒子を含む合計オンウェハ粒子数(OWPC)を提供するために用いた。SP5は、約19nm~約23nmのサイズを有する粒子を含むOWPCのサブセットである。
【0101】
次いでウェハをEDX(エネルギー分散型X線)により検査するために移した。レーザー式検査システムにより報告された各粒子は、元素情報を提供するためEDX(エネルギー分散型X線)により検査された。何らかの金属信号を発する粒子を金属粒子として計数した。金属識別特性を有する粒子の合計数を、OWMP(オンウェハ金属粒子)又はOWMC(オンウェハ金属数)として記すため合計した。
【0102】
<評価結果>
【0103】
表1に、本発明によるフラッシング工程を、細孔径3nmを有する超高MWポリエチレン粒子(UPE)除去フィルタを含む第1の精製システムで実行した。使用された洗浄液は、フラッシュ毎につき約10~50ガロンの量のシクロヘキサノンであり、洗浄液を、周囲温度及び最大50psig(ポンド/平方インチ)までの入口圧において、UPEフィルタをフラッシュ又は通過させた。サンプルを4サイクルのフラッシング(第1フラッシュ、第2フラッシュ、第3フラッシュ、第4フラッシュ)の各終了時に収集した。OWPC、OWMC(又はOWMP)及び各サンプルにおける選択された金属元素の数を測定し、正規化したデータを表1にまとめた。
図3もOWMC結果をグラフで表している。
【0104】
<表1>
洗浄液:シクロヘキサノン
各フラッシュの洗浄液量:10ガロン
フィルタの種類:UPE(超高MCポリエチレン)
細孔径:3nm
【0105】
表1と
図3に表されるように、本願の処理工程は、OMWC及びUPEフィルタの選択された金属元素の数を大幅に低減させるという所望の利点を達成したことが示されている。データは、処理工程の効果が第3フラッシュの後に更に顕著であったことも示している。第4フラッシュの終了時で、OWMCは第1フラッシュ後のOWMCと比較し、4分の1に低した。更に、Al、Fe、Mg等といった様々な選択された金属元素も第4フラッシュの終了までに大幅に低減した。
【0106】
<表2>
洗浄液:シクロヘキサノン
各フラッシュの洗浄液量:50~400ガロン
フィルタの種類:PTFE
細孔径:7nm
【0107】
表2において、細孔径7nmを有する高密度ポリエチレン粒子除去フィルタを含む第1の精製システムで本発明による類似のフラッシング工程を実行した。この処理工程で使用した洗浄液はシクロヘキサノンであり、量はフラッシュ毎につき50~400ガロンであった。洗浄液を、周囲温度及び最大50psigまでの入口圧において、HDPEフィルタをフラッシュ又は通過させた。2つの別々だが同一のテストを各フラッシュサイクルで実施し、サンプルを各2つのテストから4つのフラッシュサイクル(第1フラッシュ、第2フラッシュ、第3フラッシュ、第4フラッシュ)の各1つの終了時に収集した。OWPC、OWMC、各サンプルにおける選択された金属元素の数を測定し、正規化したデータを表2にまとめた。
図3も2つのテストからのOWMC結果の平均をグラフで表している。
【0108】
表2にまとめられ
図3に表されたデータは、本願の処理工程がPTFEフィルタのテストされた属性の向上に効果的であったことを表している。表2に示されるように、OWPCはフラッシュ回数が増加するにつれ減少し続けた。データは、OWPC、OWMC、選択された金属元素の数が第3フラッシュ後に望ましく改善したことも反映している。
【0109】
<表3>
洗浄液:シクロヘキサノン
フィルタの種類:HDPE(高密度ポリエチレン)
細孔径:2nm
【0110】
表3において、本発明のフラッシング工程を、周囲温度及び最大50psigまでの入口圧において、細孔径2nmを有するHDPE(高密度ポリエチレン)粒子除去フィルタを含む精製システムで実行した。このフラッシング工程で用いた洗浄液はシクロヘキサノンである。2つの別々のテストを実行し、第2テストの間、使用した洗浄液の量は第1テストで用いた量の4倍である。サンプルを各第1と第2のテストのフラッシングの終了時に収集した。OWPC、SP5、OWMC、各サンプル中の選択された金属元素の数を測定し、正規化したデータを表3にまとめた。
【0111】
表3に示された結果は、本願の処理工程がOWPC、SP5、OWMC、HDPEフィルタの全ての選択された金属元素の数を減少する望ましい利点を達成したことを確証している。減少は、約30ガロンから約125ガロンへのフラッシュ量(又はフラッシュサイクル)の増加(又は単一フラッシュサイクルから4つのフラッシュサイクルへの増加)の後に、より顕著であった。第2テストからのサンプルは、洗浄液の量(洗浄サイクルの回数)が4倍に増加したとき、OWPCとSP5カウントの両方において5分の1の減少、OWMCにおいて18分の1の減少を有することを示している。典型的に、予め処理されたHDPEフィルタからの約19~23nmのサイズを有する粒子の数は10000より多い。
【0112】
<表4>
洗浄液:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
フィルタの種類:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
細孔径:10nm
【0113】
表4において、細孔径10nmを有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子フィルタをフラッシュするためPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を用いたこと以外、類似のフラッシング工程を実行した。2つの別々のテストを実行し、第2テストにおいて、用いた洗浄液の量は第1テストで用いた量の8倍である。サンプルを各第1と第2のテストのフラッシングの終了時に収集した。OWPC、SP5、OWMC、各サンプル中の選択された金属元素の数を測定し、正規化したデータを表4にまとめた。
【0114】
表4に示されたデータは、本発明の処理工程がPTFEフィルタで実行された後、OWPCとOWMCの大幅な減少の顕著な効果を更に確証している。より具体的には、洗浄液の量を約50ガロンから400ガロンに増加した(又は単一フラッシュサイクルから8フラッシュサイクルへ増加)後、OWPCは500,000超から1000の僅かに上へと大幅に減少した。データは、洗浄液を8倍に増加した後、OWMCとFe数がウェハ上に飽和している状態から一桁(それぞれ、6と4)に劇的に減少したことも示している。
【0115】
【0116】
表5において得られたデータは、処理液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を用いて得られた。この表におけるデータは、濾過媒体を約16時間以上の期間、処理液に浸漬し、続いて50kgの処理液でフラッシュした効果を表している。より具体的には、濾過媒体を周囲環境で一晩、処理液に沈めた。その後、濾過媒体をフィルタ筐体内に置き、新たな処理液でフラッシュした。即座に分かるように、濾過媒体のフラッシング前の浸漬は、OWPC<31(<31.nmビンサイズ粒子)とOWMCにおいて著しい向上を提供する。
【0117】
いくつかの実施形態において、浸漬工程は1つの期間以上、例えば、2、3、4、又は5つの期間、実行されてよく、各期間は約12~18時間であってよい。より具体的には、濾過媒体は容器内に置かれ、後続の処理工程に用いられるものと同一種類の処理液に沈められる。各浸漬工程の終了時に、処理液は排出され、新たな処理液が次の浸漬工程のために提供される。浸漬工程が完了した後、濾過媒体をフラッシュするため処理工程が進められる。
【0118】
表1~5にまとめられた集合的な結果は、本願の処理工程が、薬液の処理に適用される前に様々な種類の濾過媒体におけるOWPCとOWMCを大幅に低減する望ましい利点を達成したことを確証している。これらデータは、本発明の処理工程が、効果的に設計されておらず不適切に準備された処理の方法に起因する、望まれない混入物の導入を妨げることを実証している。従って、本発明の薬液を処理する方法は、超高純度薬液を製造し、回路パターンや半導体デバイスの欠陥の発生を回避し、メンテナンスと修理のコストを削減するという競争上の優位性を提供する。
【0119】
上記は、当業者が本開示の態様をよりよく理解できるように、いくつかの実施形態の特徴を概説している。当業者は、ここで紹介され実施形態と同じ目的を実行するため、及び/又は同じ利点を達成するための他の工程及び構造を設計又は改変するための基礎として、本開示を容易に用いることができることを理解すべきである。当業者はまた、そのような同等の構造が本開示の精神及び範囲から逸脱せず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な改変、置き換え、代替を行うことができることを理解すべきである。