(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】油中水型組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20250131BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20250131BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20250131BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20250131BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20250131BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20250131BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/891
A61K8/29
A61K8/27
A61K8/894
A61K8/34
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2021543740
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032659
(87)【国際公開番号】W WO2021044975
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019161685
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】110004484
【氏名又は名称】弁理士法人岩橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】氏本 慧
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-161650(JP,A)
【文献】特開2013-010935(JP,A)
【文献】特開2012-246446(JP,A)
【文献】特開2017-210492(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225768(WO,A1)
【文献】特開2015-091894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン油/油相の質量比が0.75以上である油相と、
前記油相中に分散され、シリコーン系表面処理剤により処理されたシリコーン処理
紫外線散乱粉体と、
前記シリコーン処理
紫外線散乱粉体を油相中に分散するポリグリセリン変性シリコーン分散剤と、
前記油相中に分散された水相と、
前記水相を油相中に分散する乳化剤と、
を含み、
前記シリコーン処理
紫外線散乱粉体の平均一次粒子径が1~100nmであり、
前記シリコーン系表面処理剤は、ジメチコン処理剤
及びハイドロゲンジメチコン処理剤のいずれかの処理剤であり、
前記シリコーン処理紫外線散乱粉体が、ハイドロゲンジメチコン/含水シリカで被覆した酸化チタン、ハイドロゲンジメチコン/水酸化Alで被覆した酸化チタン、ジメチコン/含水シリカで被覆した酸化亜鉛及びハイドロゲンジメチコンで被覆した酸化亜鉛から選択される少なくとも1種であり、
前記ポリグリセリン変性シリコーン分散剤が、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンから選択される少なくとも1種であり、
前記乳化剤がポリエーテル変性シリコーン乳化剤であり、かつ前記乳化剤の含有量が組成物中0.5質量%~7質量%であり、
シリコーン処理
紫外線散乱粉体/総
紫外線散乱粉体の質量比が0.7以上であることを特徴とする油中水型組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、
前記水相は、組成物中20~35質量%であり、
前記油相は、組成物中20~40質量%であり、
前記シリコーン処理紫外線散乱粉体は、組成物中10~35質量%であることを特徴とする油中水型組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物において、
前記水相の平均乳化粒子径は、10μm以下であることを特徴とする油中水型組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の組成物において、
さらに有機変性粘土鉱物を含むことを特徴とする油中水型組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の組成物において、
前記ポリグリセリン変性シリコーン分散剤以外の分散剤は組成物中0.5質量%未満であることを特徴とする油中水型組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の組成物において、
環状シロキサンが組成物中10質量%未満であることを特徴とする油中水型組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の組成物において、
前記ポリグリセリン変性シリコーン分散剤はビスブチルジメチコンポリグリセリル-3であることを特徴とする油中水型組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の組成物において、
前記ポリグリセリン変性シリコーン分散剤の含有量が組成物中0.5質量%~1.5質量%であることを特徴とする油中水型組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の組成物において、
前記シリコーン処理
紫外線散乱粉体の含有量が組成物中15~30質量%であることを特徴とする油中水型組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年9月5日付け出願の日本国特許出願2019-161685号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は油中水型組成物、特にその疎水化粉体の分散性の改良に関する。
【背景技術】
【0003】
疎水化粉体は、その塗布面上で耐水性を発揮し、汗などによる脱落が生じにくくなるため、各種化粧料等に応用されている。例えば紫外線の皮膚に与える影響を軽減するため、日焼け止め化粧料が汎用されるが、これらは紫外線散乱粉体を紫外線遮蔽剤として用いるもの、及び有機紫外線吸収剤を紫外線遮蔽剤として用いるものに大別される。
有機紫外線吸収剤の多くはエステル油に分類され、油相に溶解が可能で、皮膚上に均一に塗布することが容易であるが、一方で皮膚に対して刺激性を有する場合もある。
これに対し、紫外線散乱粉体には、通常、微粒子酸化亜鉛、微粒子二酸化チタンが用いられ、粒子径の調整により、可視光の透過性を向上させるとともに、紫外線の散乱効果を得ている。そして、紫外線散乱粉体は耐水性を得るため、粉体表面が疎水化処理され、油相に配合される場合が多い。
しかしながら、疎水化処理された無機粉体は、油相中でも凝集・沈降を生じやすく、組成物の白濁・不均一化、肌適用時の白化の原因となることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4536538号公報
【文献】特開2006-213619号公報
【文献】特許第4881961号公報
【文献】特開2010-159229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は疎水化粉体が配合された油相にあって、粉体の凝集・沈降が生じにくい油中水型組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明にかかる油中水型組成物は、
シリコーン油/油相の質量比が0.75以上である油相と、
油相中に分散され、シリコーン系表面処理剤により処理されたシリコーン処理紫外線散乱粉体と、
シリコーン処理紫外線散乱粉体を油相中に分散するポリグリセリン変性シリコーン分散剤と、
油相中に分散された水相と、
水相を油相中に分散する乳化剤と、
を含み、
シリコーン処理紫外線散乱粉体の平均一次粒子径が1~100nmであり、
シリコーン系表面処理剤は、ジメチコン処理剤及びハイドロゲンジメチコン処理剤のいずれかの処理剤であり、
シリコーン処理紫外線散乱粉体が、ハイドロゲンジメチコン/含水シリカで被覆した酸化チタン、ハイドロゲンジメチコン/水酸化Alで被覆した酸化チタン、ジメチコン/含水シリカで被覆した酸化亜鉛及びハイドロゲンジメチコンで被覆した酸化亜鉛から選択される少なくとも1種であり、
ポリグリセリン変性シリコーン分散剤が、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコンから選択される少なくとも1種であり、
乳化剤がポリエーテル変性シリコーン乳化剤であり、かつ乳化剤の含有量が組成物中0.5質量%~7質量%であり、
シリコーン処理紫外線散乱粉体/総紫外線散乱粉体の質量比が0.7以上であることを特徴とする。
また、前記組成物において、
水相は、組成物中20~35質量%であり、
油相は、組成物中20~40質量%であり、
シリコーン処理紫外線散乱粉体は、組成物中10~35質量%であることが好適である。
また、前記組成物において、
水相の平均乳化粒子径は、10μm以下であることが好適である。
また、前記組成物において、
さらに有機変性粘土鉱物を含むことが好適である。
また、前記組成物において、
ポリグリセリン変性シリコーン分散剤以外の分散剤は、組成物中0.5質量%未満であることが好適である。
また、前記組成物において、
環状シロキサンが組成物中10質量%未満であることが好適である。
また、前記組成物において、
ポリグリセリン変性シリコーン分散剤はビスブチルジメチコンポリグリセリル-3であることが好適である。
また、前記組成物において、
ポリグリセリン変性シリコーン分散剤の含有量が組成物中0.5質量%~1.5質量%であることが好適である。
また、前記組成物において、
シリコーン処理紫外線散乱粉体の含有量が組成物中15~30質量%であることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる油中水型組成物は、シリコーン油を主とする油相中にシリコーン処理粉体を分散し、その分散剤としてポリグリセリン変性シリコーン分散剤を用いるとともに、水相を油相中に分散することにより、前記シリコーン処理粉体を組成物中で安定に維持し、凝集・沈降を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
本発明にかかる油中水型組成物は、油相中に水相、及びシリコーン処理粉体を別個に分散させたものである。
[油相]
本発明において、分散媒は油相であり、特に本発明においてはシリコーン油を主体とし、他の油性成分を含む場合には、シリコーン油/油相の質量比は0.65以上、好ましくは0.75以上であることが好適である。
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が例示される。
なお、環状シロキサンを含む場合には、その配合量は組成物中10質量%以下であることが好ましい。
他の油性成分としては、各種液体油脂、エステル油、炭化水素油、固体油脂などが挙げられる。
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が例示される。
【0009】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が例示される。
【0010】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス等が例示される。
[シリコーン処理粉体]
本発明において、シリコーン処理粉体としては、特にシリコーン表面処理をさせた無機粉体が挙げられる。
好ましくは、シリコーン処理を施した、二酸化チタンおよび/または酸化亜鉛が挙げられる。
【0011】
これらのシリコーン処理粉体を紫外線散乱剤として用いる場合には、紫外線散乱効果の点から、二酸化チタン、酸化亜鉛は、微粒子状に調製されたものが好ましい。微粒子二酸化チタンとしては、好ましくは平均一次粒子径が1~100nm、また微粒子酸化亜鉛としては平均一次粒子径が1~100nm、のものを挙げることができる。ただしこれらに限定されるものでない。
【0012】
シリコーン化処理の方法は、特に制限されるものでなく、公知の方法にて処理することができる。例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類を用いた処理;オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等のシラン化合物を用いた処理が挙げられる。
【0013】
特に好ましいシリコーン化処理としては、ジメチコン処理、ハイドロゲンジメチコン処理、オクチルエトキシシラン処理が挙げられる。
【0014】
シリコーン処理粉体の配合量は、本発明にかかる組成物に対し10~35質量%であり、好ましくは15~30質量%である。配合量が10質量%未満では、耐水性等のシリコーン処理粉体としての効果が十分に得られず、一方、35質量%超では、経時での変臭ときしみに代表される使用性の悪化が懸念される。
前記シリコーン化処理剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものが用いられる。なかでもシリコーン化合物が好ましく、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の各種のシリコーンオイルや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等の各種のアルキルシランや、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等の各種のフルオロアルキルシラン等が好ましい。これらを単独で、または二種以上を混合して用いることができる。
【0015】
[ポリグリセリン変性シリコーン分散剤]
本発明において、シリコーン処理粉体の分散剤としては、ポリグリセリン変性シリコーン分散剤を用いることが必要である。
このポリグリセリン変性シリコーン分散剤としては、主骨格にポリグリセリン骨格を有し、その両末端にシリコーン鎖を有するものが好ましい。この両末端シリコーンポリグリセリンは油中水型組成物を形成する、いわゆる乳化剤としての能力はほとんどないが、本発明において油相中にシリコーン処理粉体を分散させるには優れた能力を発揮する。
より具体的には、次の構造を有するものが好適に用いられる。
m=30~100、好ましくは50~70(試験例で用いたものは平均60)
n=1~5、好ましくは2~3(試験例で用いたものは、平均3)
本発明においてポリグリセリン変性シリコーン分散剤は、シリコーン処理粉体の配合量にもよるが、組成物中0.5~5質量%、好ましくは1~3質量%であることが好ましい。
なお、ポリグリセリン変性シリコーン分散剤以外の分散剤が配合される場合には、組成物中0.5質量%未満であることが好ましい。
【0016】
[水相]
本発明において、外相の油相中に、内相を構成する水相が分散されており、内水相の存在によりシリコーン処理粉体の沈降が抑制される。
水相に含まれる成分としては、水、アルコール類、水溶性高分子などが例示される。
アルコール類としては、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール等の高級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどの多価アルコール等が例示される。
【0017】
水溶性高分子としては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(以下、「AMPS」と略記する)のホモポリマー、あるいはコポリマーが挙げられる。コポリマーは、ビニルピロリドン、アクリル酸アミド、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸ヒドロキシエチル等のコモノマーとからなるコポリマーである。すなわち、AMPSホモポリマー、ビニルピロリドン/AMPS共重合体、ジメチルアクリルアミド/AMPS共重合体、アクリル酸アミド/AMPS共重合体、アクリル酸ナトリウム/AMPS共重合体等が例示される。
【0018】
さらには、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム/アクリル酸アルキル/メタクリル酸ナトリウム/メタクリル酸アルキル共重合体、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天等が例示される。
本発明において、水相は前記シリコーン化粉体が組成物中で凝集・沈降するのを抑止する効果を有しており、その配合量は組成物中10~35質量%、好ましくは20~30質量%である。
【0019】
[乳化剤]
本発明において、水相を油相中に分散させる油中水型乳化剤としては、低HLBの乳化剤が挙げられるが、特に好適には、シリコーン骨格に対しポリエチレンオキサイド基をペンダント状に結合したポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましい。
p=30~50
q=1~3
r=2~4
a=3~12
b=7~13
【0020】
なお、本発明において油中水型乳化剤の配合量は、組成物中0.5~7質量%、好ましくは2~5質量%であることが好ましい。
本発明の油中水型組成物には、上記必須成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、その他の紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合して常法により製造することができる。
【0021】
本発明の油中水型組成物は、油中水型乳化組成物の製造に用いられる通常の方法で調製することができる。例えば、油相部を適宜加熱して均一に溶解させ、油相部にシリコーン処理粉体をホモミキサーで分散させた後、当該油相部に別途調製した水相部を徐々に添加しながら、ホモミキサーを用いて乳化させる方法などが挙げられる。
【0022】
以下、具体的な実施形態の説明に先立ち、製造方法、評価方法について説明する。
[製造方法]
ホモミキサーを用いて混合した油性成分に粉末を分散させた後、よく混合した水性成分を添加して組成物を得た。
[評価方法]
疑似皮膚PMMAプレート(SPFMASTER-PA01)に2mg/cm2の量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥させて塗膜を形成した。未塗布のプレートをコントロールとして、前記塗膜の吸光度(400~280nm)を株式会社日立製作所社製U-3500型自記録分光光度計にて測定し、得られた測定データから吸光度積算値、300nmの吸光度を求めた。また、厚さ10um-50umの任意の均一な膜を作製し、同一膜厚のサンプルの透明度を目視で確認した。
また、透明度は以下の基準で評価した。
A:極めて透明
B:透明
C:透明だが少し白さがある
D:透明感が少なく白さがある
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。
まず、本発明者らは、油中水型組成物中に疎水化処理粉体を配合するにあたって、その分散性を検討した。
結果を表1に示す。
【0024】
【0025】
【0026】
前記表1の試験例1-1~1-3を対比すると、シリコーン処理(ハイドロゲンジメチコン被覆処理)を行った試験例1-1,1-2は凝集体の形成がほとんど認められず、組成物の透明度が高かったが、ステアリン酸処理を行った試験例1-3は透明度が低下し、粉体の凝集が認められた。同様に、試験例1-4~1-6を対比すると、やはりハイドロゲンジメチコン被覆(試験例1-4)で凝集体の形成が認められず、トリエトキシカプリリルシラン被覆(試験例1-5)とパルミチン酸デキストリン被覆(試験例1-6)では凝集体の形成が認められ、透明度が低下した。
以上のことから、本発明においては、疎水化処理はシリコーン処理であることが必要である。
次に本発明者らはシリコーン処理粉体/総粉体の質量比について検討を行った。
表1(B)の試験例1-7~1-9に示すように、シリコーン処理粉体/総粉体が0.7未満であると透明性の低下が認められる。このことから、シリコーン処理粉体/総粉体は0.7以上であることが好ましい。
【0027】
また、本発明者らは油相中のシリコーン油の質量比について検討を行った。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
表2より、基本的に本発明の油相はシリコーン油であることが好ましいが、他の油分(セバシン酸ジイソプロピル)を含む場合には、シリコーン油の質量比が0.65以上、好ましくは0.75以上であることが好ましい。
【0029】
さらに本発明者らは、シリコーン処理粉体を油相中に分散させる分散剤の検討を行った。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
前記表3より、ポリグリセリン変性シリコーン分散剤が特に好適に用いられ、イソステアリン酸などの一般的な分散剤では十分な分散効果が得られなかった。
【0031】
本発明者らは、油中水型組成物中の水相比について検討を行った。結果を表4に示す
【表4】
なお、粉末の再分散性については、以下のように評価した。
C:数回振っても再分散しない
B:数回振ると再分散する
A:1,2回振ると再分散する
表4より明らかなように、組成物中の水相が20質量%未満となると粉末のケーキングが生じるようになる。このため、本発明にかかる油中水型組成物の水相は、20質量%以上であることが好ましい。