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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】根こぶ病抵抗性アブラナ属植物
(51)【国際特許分類】
   A01H 5/00 20180101AFI20250131BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20250131BHJP
   A01H 6/20 20180101ALI20250131BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20250131BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20250131BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20250131BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20250131BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20250131BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20250131BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALI20250131BHJP
【FI】
A01H5/00 A ZNA
A01H1/00 A
A01H6/20
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/52 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6895 Z
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021547165
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020018249
(87)【国際公開番号】W WO2020168166
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】19157382.3
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB 43341
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519099058
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ アグリカルチュラル ソリューションズ シード ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ティ ニン トゥアン
(72)【発明者】
【氏名】チョンゴ,ゴッドフリー
(72)【発明者】
【氏名】デブラミンク,ジャスパー
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ジェフリー
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0305774(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0204286(US,A1)
【文献】特開2012-065567(JP,A)
【文献】WERNER, S., et al.,Genetic mapping of clubroot resistance genes in oilseed rape.,Theoretical and Applied Genetics,2008年,Vol.116,pp.363-372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00-17/00
C12N 1/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子油中に2%未満のエルカ酸を含み、かつマーカーM4を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含み、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有する、アブラナ属植物。
【請求項2】
前記CrS根こぶ病抵抗性座位が、マーカーM4~M5のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にあり、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM5が配列番号9の5’フランキング配列と、配列番号10の3’フランキング配列を有する、請求項1に記載のアブラナ属植物。
【請求項3】
前記CrS根こぶ病抵抗性座位が、マーカーM4~M8のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にあり、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM8が配列番号15の5’フランキング配列と、配列番号16の3’フランキング配列を有する、請求項1または2に記載のアブラナ属植物。
【請求項4】
前記CrS根こぶ病抵抗性座位が、マーカーM4~M11のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にあり、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM11が配列番号21の5’フランキング配列と、配列番号22の3’フランキング配列を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項5】
前記植物がマーカーアレルM4/Rを含み、マーカーアレルM4/Rが配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAである、請求項1~4のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項6】
前記植物がマーカーアレルM4/RおよびM5/Rを含む、または前記植物がマーカーアレルM4/R、M5/R、M6/RおよびM7/Rを含み、マーカーアレルM4/Rが配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーアレルM5/Rが配列番号9の5’フランキング配列と、配列番号10の3’フランキング配列を有し、多型塩基がTであり、マーカーアレルM6/Rが配列番号11の5’フランキング配列と、配列番号12の3’フランキング配列を有し、多型塩基がGであり、マーカーアレルM7/Rが配列番号13の5’フランキング配列と、配列番号14の3’フランキング配列を有し、多型塩基がTである、請求項1~5のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項7】
前記植物がマーカーアレルM3/R、もしくはM2/R、もしくはM1/R、またはこれらの組合せを含まず、マーカーアレルM3/Rが配列番号5の5’フランキング配列と、配列番号6の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAであり、マーカーアレルM2/Rが配列番号3の5’フランキング配列と、配列番号4の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAであり、マーカーアレルM1/Rが配列番号1の5’フランキング配列と、配列番号2の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAである、請求項1~6のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項8】
セイヨウアブラナ(Brassica napus)またはブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)植物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項9】
セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物またはセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物である、請求項8に記載のアブラナ属植物。
【請求項10】
前記染色体セグメントがマーカーM4~M7のマーカー間隔を含み、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM7が配列番号13の5’フランキング配列と、配列番号14の3’フランキング配列を有する、セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物である、請求項9に記載のアブラナ属植物。
【請求項11】
前記染色体セグメントがマーカーM4~M5のマーカー間隔を含む、セイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物であり、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM5が配列番号9の5’フランキング配列と、配列番号10の3’フランキング配列を有する、請求項9に記載のアブラナ属植物。
【請求項12】
前記染色体セグメントがマーカーM4~M8のマーカー間隔を含む、セイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物であり、マーカーM4配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM8が配列番号15の5’フランキング配列と、配列番号16の3’フランキング配列を有する、請求項11に記載のアブラナ属植物。
【請求項13】
前記染色体セグメントが、受託番号NCIMB43341の下でNCIMBに寄託された参照種子から入手可能である、請求項12に記載のアブラナ属植物。
【請求項14】
根こぶ病菌(P. brassicae)病原型P2、P3、P5、P6もしくはP8または分離株CR11に対して抵抗性である、請求項1~13のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項15】
前記植物が前記根こぶ病抵抗性座位に関してヘテロ接合型である、請求項1~14のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項16】
前記植物が前記根こぶ病抵抗性座位に関してホモ接合型である、請求項1~14のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項17】
前記植物が、除草剤耐性を付与する遺伝子をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のアブラナ属植物。
【請求項18】
前記除草剤耐性を付与する遺伝子が、グルホシネートもしくはグルホシネートアンモニウムに対する抵抗性を付与する遺伝子、またはグリホサートに対する抵抗性を付与する遺伝子である、請求項17に記載のアブラナ属植物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のアブラナ属植物の種子。
【請求項20】
根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法であって、前記方法が、
(a)M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーを有するCrS根こぶ病抵抗性座位を含む少なくとも1つのアブラナ属植物を同定すること、および
(b)前記CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を選抜すること
を含み、
マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM5が配列番号9の5’フランキング配列と、配列番号10の3’フランキング配列を有する、方法。
【請求項21】
M4~M11のマーカー間隔内の少なくとも1つのマーカーを含み、かつマーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まない少なくとも1つのアブラナ属植物を同定することを含み、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM11が配列番号21の5’フランキング配列と、配列番号22の3’フランキング配列を有し、マーカーアレルM3/Rが配列番号5の5’フランキング配列と、配列番号6の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAであり、マーカーアレルM2/Rが配列番号3の5’フランキング配列と、配列番号4の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAであり、マーカーアレルM1/Rが配列番号1の5’フランキング配列と、配列番号2の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アブラナ属植物が、M4~M5のマーカー間隔内のマーカーを使用して同定され、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM5が配列番号9の5’フランキング配列と、配列番号10の3’フランキング配列を有する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法であって、前記方法が、
(a)CrS根こぶ病抵抗性座位を含む第1のアブラナ属植物を第2の植物と交雑させること;および
(b)M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーを含む子孫植物を同定すること
を含み、
マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM5が配列番号9の5’フランキング配列と、配列番号10の3’フランキング配列を含む、方法。
【請求項24】
M4~M11のマーカー間隔内の少なくとも1つのマーカーを含み、かつマーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まない子孫植物を同定することを含み、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM11が配列番号21の5’フランキング配列と、配列番号22の3’フランキング配列を有し、マーカーアレルM3/Rが配列番号5の5’フランキング配列と、配列番号6の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAであり、マーカーアレルM2/Rが配列番号3の5’フランキング配列と、配列番号4の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAであり、マーカーアレルM1/Rが配列番号1の5’フランキング配列と、配列番号2の3’フランキング配列を有し、多型塩基がAである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ゲノム編集を使用して、CrS根こぶ病抵抗性座位を含まない植物にCrS根こぶ病抵抗性座位を導入することを含み、マーカーM4を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含み、前記マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有する、根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法。
【請求項26】
CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するための、M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーの使用であって、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM5が配列番号9の5’フランキング配列と、配列番号10の3’フランキング配列を有する、使用
【請求項27】
CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するための、マーカーM4、M5、M6、M7、M8、M9、M10および/またはM11の使用であって、マーカーM4が配列番号7の5’フランキング配列と、配列番号8の3’フランキング配列を有し、マーカーM5が配列番号9の5’フランキング配列と、配列番号10の3’フランキング配列を有し、マーカーM6が配列番号11の5’フランキング配列と、配列番号12の3’フランキング配列を有し、マーカーM7が配列番号13の5’フランキング配列と、配列番号14の3’フランキング配列を有し、マーカーM8が配列番号15の5’フランキング配列と、配列番号16の3’フランキング配列を有し、マーカーM9が配列番号17の5’フランキング配列と、配列番号18の3’フランキング配列を有し、マーカーM10が配列番号19の5’フランキング配列と、配列番号12の3’フランキング配列を有し、マーカーM11が配列番号21の5’フランキング配列と、配列番号22の3’フランキング配列を含む、使用。
【請求項28】
1以上の除草剤有効成分を含む組成物の適用により雑草が防除される圃場における、請求項17または18に記載の栽培植物の群の保護方法。
【請求項29】
植物が請求項18に記載の植物であり、かつ除草剤がグルホシネートまたはグルホシネートアンモニウムまたはグリホサートである、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アブラナ属における病害防除の分野に関する。ゲノム中に根こぶ病抵抗性遺伝子を含むアブラナ属植物、特に、低レベルのエルカ酸を含むアブラナ属植物が提供される。また、このような植物を生産するためおよび根こぶ病抵抗性遺伝子を検出するための方法および手段も提供される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
根こぶ病は、多くの重要な野菜および広い田畑の作物を含む、アブラナ科ファミリーの植物に影響を及ぼす根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)により引き起こされる病害である。アブラナ科ファミリーの全メンバーは、根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)の潜在的な宿主であると考えられる(Dixon, 2009, J Plant Growth Regul 28: 194)。感受性の栽培作物としては、ブラッシカ・オレラセア(B. oleracea)の全品種、すなわち西洋ウアブラナ野菜(芽キャベツ、キャベツ、カラブリーゼ/グリーンブロッコリー、カリフラワー、調理用および飼料用ケール、コールラビ);カブ、ナノハナ(turnip rape)、サルソーンを含むブラッシカ・ラパ(B. rapa)(同義語ブラッシカ・カンペストリス(B. campestris))ならびにハクサイ(Brassica rapa var. pekinensis)およびチンゲンサイ(B. rapa var. chinensis)(中国野菜(Chinese cabbage))などの葉菜および根菜をもたらす広大な範囲の東洋変種;スウェーデンカブ(ルタバガ)、ナタネ(oilseed rape)、および飼料用ナタネを含むセイヨウアブラナ(B. napus);ならびにアビシニアガラシ(Brassica carinata)、クロガラシ(B. nigra)、およびカラシナ(B. juncea)に由来する種子、香辛料(マスタード)、および野菜作物が挙げられる。ダイコン(ダイコン属)、アブラナ科雑草、例えば、シロガラシ属、ならびにストック(アラセイトウ属種)およびウォールフラワー(ニオイアラセイトウ(Cheiranthus cheiri))を含む観賞用植物などの関連する属も感染し得る。科学モデル植物シロイヌナズナ属も、この病原体の宿主である(Dixon, 2009, 上記を参照のこと)。
【0003】
根こぶ病の病害症状の発生は、罹患植物の根における棍棒状のこぶの形成を特徴とする。結果として、感染根による栄養素および水分の取り込みが阻害される。地上の症状としては、萎凋、矮化、黄変および早期老化が挙げられる(Hwang et al, 2012, Mol Plant Pathol 13: 105)。
【0004】
根こぶ病の病害は、宿主植物が栽培される全区域のおよそ10%に存在すると推定される(Diederichsen et al, 2009, J Plant Growth Regul 28: 265)。根こぶ病は、大部分が前世紀における野菜作物の病害であった。しかしながら、2003年に、12の根こぶ病に感染した商業キャノーラ圃場が、アルバータ州の中心部で認められた。その後、根こぶ病感染が確認された圃場の数は絶えず増えてきており、2019年までには、アルバータ州の3,353超の圃場(35,000ha超)、サスカチュワン州の51の圃場、およびマニトバ州の35の圃場が、根こぶ病菌(P. brassicae)に感染していると同定された(Strelkov et al, 2019, Canadian Journal of Plant Pathology 41:sup1: 129)。ケベック州の根こぶ病に感染した圃場で生育されたキャノーラを用いた研究において、80%~91%の収量損失が報告された。種子の品質も大幅に低下し、油分は4.7%~6.1%、1,000粒重は13%~26%減少した(Hwang et al., 2012, 上記を参照のこと)。
【0005】
植物抵抗性は、根こぶ病の病害と戦うための強力なツールである。最近発売された抵抗性栽培品種は、3つのアブラナ属種:セイヨウアブラナ(B. napus)、ブラッシカ・オレラセア(B. oleracea)、およびブラッシカ・ラパ(B. rapa)に属する(Diederichsen et al., 2009, 上記を参照のこと)。
【0006】
ヨーロッパ飼料用カブ(ブラッシカ・ラパ種ラピフェラ(B. rapa ssp. rapifera))の抵抗性源が同定されており、例えば、「Gelria R」、「Siloga」、「Debra」および「Milan White」が挙げられ、これらは、根こぶ病抵抗性遺伝子を中国野菜(Chinese cabbage)に導入するために使用されている(Piao et al., 2009, J Plant Growth Regul 28: 252)。多くの品種特異的な単一の優性R遺伝子が、ブラッシカ・ラパ(B. rapa)において実際に存在する(Neik et al., 2017, Frontiers in Plant Science 8:1788においれレビュー)。Crr2、CRcおよびCrr4が、それぞれ染色体A01、A02およびA06にマッピングされている。いくつかの主要遺伝子が、染色体A03上で同定された:CRa、Crr3、CRb、CRbKatoおよびCRk。異なる主要遺伝子またはQTLが、染色体A08上にマッピングされている:ラピフェラ(rapifera)種ECD04由来のPbBa8.1(Chen et al 2013 PLoS ONE 8(12): e85307)、「Siloga」由来のQS_B8.1(Pang et al., (2014) Hort Environ Biotechnol 55:540-547)、「Pluto」由来のRcr9(Yu et al, 2017, Scientific Reports 7:4516)、Crr1aおよびCrr1b(Hatakeyama et al., 2013, PLOS one 8: e54745)。
【0007】
ブラッシカ・オレラセア(B. oleracea)においては、完全に抵抗性の系統はほとんど同定されていない。ブラッシカ・オレラセア(B. oleracea)における根こぶ病抵抗性の遺伝は、多遺伝子性であるようである(Piao et al., 2009, 上記を参照のこと)。少なくとも22個のQTLがブラッシカ・オレラセア(B. oleracea)において見出されており、ブラッシカ・オレラセア(B. oleracea)における根こぶ病抵抗性の複雑な遺伝的基盤が示されている。複数の異なるマッピング研究が、異なる根こぶ病抵抗性源および異なる根こぶ病菌(P. brassicae)分離株を使用したため、これらのQTLの比較は不可能である(Piao et al., 2009, 上記を参照のこと)。
【0008】
根こぶ病抵抗性は、いくつかのセイヨウアブラナ(B. napus)栽培品種においても認められている。根こぶ病抵抗性に関する少なくとも22個のQTLが、セイヨウアブラナ(B. napus)において同定されている。主要遺伝子Pb-Bn1が、連鎖群DY4上にマッピングされており、少なくとも2つのさらなるQTLが、それぞれ染色体DY4およびDY15上で同定されている。さらに、相加効果を有するまたは有さない9個の領域間のエピスタシス相互作用が位置している。ECD04に由来する主要遺伝子および2個の劣性遺伝子が、倍加半数体集団において同定されている。栽培品種Boehmerwaldkohl(ブラッシカ・オレラセア(B. oleracea))とECD-04(ブラッシカ・ラパ(B. rapa))とを交雑することにより構築された再合成セイヨウアブラナ(B. napus)において、7個の分離株に対する抵抗性を発現する19個のQTLが、8個の染色体上で検出され、そのうち4個は染色体N03上で互いに密接に連鎖しており、3個は染色体N08上で連鎖していた。遺伝子CRkおよびCrr3は、N03上のPbBn-k-2、PbBn-1-1、およびPbBn-01:60-1の類似領域に位置している。CRaおよびCRbは、それらから独立している。PbBn-01.07-2、PbBn-l-2、およびPbBn-a-1は、セイヨウアブラナ(B. napus)における染色体N08上のBRMS088と連鎖しており、BRMS088は、ブラッシカ・ラパ(B. rapa)におけるR8上のCrr1とも連鎖している。PbBn-k-1は、染色体N02上に位置している。N03およびN19上に位置するQTLは、強力な効果に寄与し、広域スペクトル抵抗性を付与する(Piao et al., 2009, 上記を参照のこと;およびWerner et al., 2008, Theor Appl Genet 116:363; Neik et al., 2017, Frontiers in Plant Science 8:1788)。
【0009】
現在までに、2個の根こぶ病抵抗性遺伝子:CRaおよびCrr1aがクローン化されている。ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)のCRa遺伝子はファインマッピングされており、TIR-NBS-LRR遺伝子は、CRa遺伝子として同定されている(Ueno et al., 2012, Plant Mol Biol 80: 621)。Crr1a遺伝子は、マッピングされており、ブラッシカ・ラパ(B.rapa)ヨーロッパ飼料用カブ「Siloga」から単離されている。Crr1aは、TIR-NB-LRR病害抵抗性タンパク質もコードする(Hatakeyama et al., 2013, 上記を参照のことおよびWO2012/039445)。
【0010】
ブラッシカ・ラパ(B. rapa)由来のCRb遺伝子は、140kbゲノム領域にファインマッピングされている。この領域において、14個の機能タンパク質が予測され、そのうち、Rhoファミリータンパク質および2個のTIR-NBS-LRRタンパク質が、CRbに関する候補遺伝子であり得る(Kato et al., 2013, Breeding Science 63: 116)。このファインマッピングされたCRb遺伝子は、ゲノム上のその位置が、先にマッピングされたCRb遺伝子と一致しないため、CRbKatoと新たに命名された(Zhang et al. 2014, Molecular Breeding 34: 1173)。
【0011】
栽培品種抵抗性の持続性を高めるために、単一系統への異なる根こぶ病抵抗性遺伝子の組合せが、生理学的品種のより広域なスペクトルに対する抵抗性を有する栽培品種を育種するための重要な手段となる。したがって、マーカー支援選抜およびトランスジェニックアプローチを使用して、リンケージドラッグを伴わずに遺伝子をスタックするために、根こぶ病抵抗性遺伝子に連鎖した分子マーカーを開発する必要性が残っている。本発明は、以下に異なる実施形態、実施例および請求項において記載される根こぶ病抵抗性座位を提供する。
【発明の概要】
【0012】
発明の好ましい実施形態の概要
本発明の第1の実施形態において、種子油中に2%未満のエルカ酸を含み、かつマーカーM4を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含むアブラナ属植物が提供される。別の実施形態において、前記CrS根こぶ病抵抗性座位は、マーカーM4~M5のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にある。別の実施形態において、前記CrS根こぶ病抵抗性座位は、マーカーM4~M8のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にあり、一方、さらなる実施形態において、前記CrS根こぶ病抵抗性座位は、マーカーM4~M11のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にある。さらに別の実施形態において、本発明に係る植物はマーカーアレルM4/Rを含み、一方、さらに別の実施形態において、本発明に係る植物は、マーカーアレルM4/RおよびM5/Rを含むか、またはマーカーアレルM4/R、M5/R、M6/RおよびM7/Rを含む。
【0013】
別の実施形態において、本発明に係るアブラナ属植物は、マーカーアレルM3/R、もしくはM2/R、もしくはM1/R、またはその組合せを含まない。
【0014】
さらに別の実施形態において、本発明に係るアブラナ属植物は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)またはブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)植物であり、一方、さらに別の実施形態において、本発明に係るアブラナ属植物は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物またはセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物である。
【0015】
別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、前記染色体セグメントがマーカーM4~M7のマーカー間隔を含む、セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物である。さらに別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、前記染色体セグメントがマーカーM4~M5のマーカー間隔を含むセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物、例えば、マーカーM4~M8のマーカー間隔を含むセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物、例えば、前記染色体セグメントが、受託番号NCIMB43341の下でNCIMBに寄託された参照種子から入手可能であるセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物である。
【0016】
別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、根こぶ病菌(P. brassicae)病原型P2、P3、P5、P6もしくはP8または分離株CR11に対して抵抗性である。
【0017】
さらに別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、前記根こぶ病抵抗性座位に関してヘテロ接合型であり、一方、別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、前記根こぶ病抵抗性座位に関してホモ接合型である。
【0018】
さらに別の実施形態は、除草剤耐性を付与する遺伝子をさらに含む本発明に係るアブラナ属植物を提供する。別の実施形態において、除草剤耐性を付与する遺伝子は、グルホシネートもしくはグルホシネートアンモニウムに対する抵抗性を付与する遺伝子、またはグリホサートに対する抵抗性を付与する遺伝子である。
【0019】
本発明に係る植物の種子も提供される。
【0020】
本発明の別の態様は、根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法であって、前記方法が、(a)M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーを有するCrS根こぶ病抵抗性座位を含む少なくとも1つのアブラナ属植物を同定すること、および(b)前記CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を選抜することを含む方法を提供する。さらなる実施形態において、前記方法は、M4~M11のマーカー間隔内の少なくとも1つのマーカーを含み、かつマーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まない少なくとも1つのアブラナ属植物を同定することを含み、一方、別の実施形態において、前記アブラナ属植物は、M4~M5のマーカー間隔内のマーカーを使用して同定される。
【0021】
本発明の別の実施形態は、根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法であって、前記方法が、(a)CrS根こぶ病抵抗性座位を含む第1のアブラナ属植物を第2の植物と交雑させること;および(b)M4~M5のマーカー間隔(インターバル)の10cM内の少なくとも1つのマーカーを含む子孫植物を同定することを含む方法を提供する。さらなる実施形態において、前記方法は、M4~M11のマーカー間隔内の少なくとも1つのマーカーを含み、かつマーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まない子孫植物を同定することを含む。
【0022】
別の実施形態において、ゲノム編集を使用して、CrS根こぶ病抵抗性座位を含まない植物にCrS根こぶ病抵抗性座位を導入することを含む、根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法が提供される。
【0023】
本発明の別の目的は、CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するための、M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーの使用を提供することである。本発明の別の目的は、CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するための、マーカーM4、M5、M6、M7、M8、M9、M10および/またはM11の使用を提供することである。
【0024】
さらに別の態様において、1以上の除草剤有効成分を含む組成物の塗布により雑草が防除される圃場における、本発明に係る栽培植物の群の保護の方法が提供される。さらなる態様において、前記植物は、グルホシネートもしくはグルホシネートアンモニウムに対する抵抗性を付与する遺伝子、またはグリホサートに対する抵抗性を付与する遺伝子を含み、除草剤は、グルホシネートまたはグルホシネートアンモニウムまたはグリホサートである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】CrS根こぶ病抵抗性座位のマッピングである。
図2】ピークマーカーの反復親アレルに関してホモ接合型(AA)、反復親およびドナーアレルに関してヘテロ接合型(AB)、およびドナーアレルに関してホモ接合型(BB)である系統に関する抵抗性評定である。
図3】感受性春ナタネ(spring oilseed rape)(SOSR)系統におけるCrS根こぶ病抵抗性を浸透性交雑するための戻し交雑スキームである。
図4】キャノーラ品質CrS根こぶ病抵抗性系統に関する選抜スキームである。感受性春ナタネ(spring oilseed rape)(SOSR)系統への浸透性交雑。
図5】CrS根こぶ病抵抗性のマーカー支援戻し交雑を示す。RP=反復親。MAS:マーカー支援選抜。
図6】感受性冬ナタネ(winter oilseed rape)(WOSR)へのCrS根こぶ病抵抗性の浸透性交雑スキームである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一般的定義
「根こぶ病抵抗性遺伝子」は、本明細書で使用する場合、その抵抗性遺伝子を欠くまたはその遺伝子の非機能(もしくは不活性化)型を有する植物と比較して、根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)に対する植物、例えば、アブラナ科植物、例えば、アブラナ属植物の増強した抵抗性を付与する、またはそれに関連するDNA配列を指す。
【0027】
「根こぶ病」は、本明細書で使用する場合、病原体根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)により引き起こされる病害を指す。
【0028】
「根こぶ病抵抗性」は、本明細書で使用する場合、1以上の根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)分離株に対する抵抗性、例えば、限定されるものではないが、Williams (1966) Phytopathology, 56, 624-626により分類される根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)病原型P2、P3、P5、P6および/もしくはP8、ならびに/または分離株CR11、ならびに/またはStrelkov et al. 2018, Can J Plant Pathology pp 284のCanadian Clubroot Differentialセット(CCD)に基づく2B、3A、5X、および8Pを含む分離株に対する抵抗性を指す。前記抵抗性は、対照植物に対して生じた損傷と比較した、根こぶ病感染により生じた損傷の減少を指す。損傷は、例えば、根における棍棒状のこぶの形成、萎凋、矮化、黄変、早期老化などの発生として評価することができる。特に、損傷の減少は、対照植物と比較した、植物が圃場において病害圧力下で生育された場合の収量損失の減少において明らかとなる。このような収量損失の減少は、例えば、病原体の感染、繁殖、伝播または生存が、増強した抵抗性を有する植物において減少するまたは防止されることに起因し得る。前記抵抗性はまた、完全に抵抗性である植物、すなわち、病害症状がみられない植物も指し得る。
【0029】
根こぶ病抵抗性は、0~3の尺度を使用して評価することができる:0:棍棒状化なし、1:棍棒状化した根系が25%未満;2:棍棒状化した根系が25~50%;3:棍棒状化した根系が50%超(Humpherson-Jones, 1989, Tests Agro Cult 10:36)。病害指数(ID)は、以下の式を使用して計算することができる:
[(クラス0の植物の数×0)+([(クラス1の植物の数×1)+(クラス2の植物の数×2)+(クラス3の植物の数×3)]/植物の総数×3
(Strelkov et al., 2006, Can J Plant Pathol 28:467)。
【0030】
場所、気象条件および病害圧力等の環境条件、ならびに病害症状評価者の個人的な認識が、根こぶ病抵抗性のスコアリングに対する影響を及ぼし得ることが理解される。したがって、比較試験におけるこれらの因子の変動を最小限にするべきである。本発明の植物を対照植物と比較するために、当技術分野で公知の任意の他の抵抗性評定を、本発明に従って適用することができる。
【0031】
根こぶ病抵抗性である植物は、根こぶ病病原体の自然感染もしくは人工感染時に尺度0または1と評価された植物を指す。根こぶ病抵抗性集団は、30%未満の病害指数(ID)を有する集団である。増強した根こぶ病抵抗性を有する植物は、棍棒状化している根系のパーセンテージが、少なくとも5%、もしくは少なくとも10%、もしくは少なくとも15%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも95%、もしくは100%(すなわち、棍棒状化なし)減少している植物であるか、または病害指数が、少なくとも3%、もしくは少なくとも5%、もしくは少なくとも8%、もしくは少なくとも10%、もしくは少なくとも15%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも95%、もしくは100%(すなわち、集団の全植物がクラス0(棍棒状化なし)に分類される)減少している植物の集団を指す。
【0032】
「CrS根こぶ病抵抗性座位」、または「CrS抵抗性座位」、または「CrS座位」は、本明細書で使用する場合、Williams (1966) Phytopathology, 56, 624-626により分類される根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)病原型P2、P3、P5、P6および/もしくはP8、ならびに/または分離株CR11に対する抵抗性を付与する座位である。CrS根こぶ病抵抗性座位は、染色体上の位置を指す。この位置は、染色体の遺伝子地図上の位置により、または、例えば、ゲノム配列が入手可能な場合、染色体の物理的位置上の位置により同定することができる。
【0033】
「座位」(複数の座位)は、本明細書で使用する場合、遺伝子が染色体上で占める位置である。「根こぶ病抵抗性座位」は、根こぶ病抵抗性遺伝子が位置する染色体上の位置を指す。この位置は、染色体の遺伝子地図上の位置により同定することができる。この定義に含まれるものは、根こぶ病抵抗性座位が位置する染色体のゲノムDNAの断片(またはセグメント)である。前記根こぶ病抵抗性座位は、CrS根こぶ病抵抗性座位または別の根こぶ病抵抗性座位であり得る。抵抗性系統におけるCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の位置に対応する染色体上の位置にある、本発明に係るCrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含まない座位は、「CrS根こぶ病感受性座位」といわれ得る。QTL(量的形質座位)は、本明細書で使用する場合、測定可能な特徴、すなわち形質に対応するゲノム上の位置、例えば、本明細書に記載のCrS座位を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、遺伝子の「アレル」という用語は、特定の座位における遺伝子の1以上の代替形態のいずれかを意味する。生物体の二倍体細胞において、所与の遺伝子のアレルは、染色体上の特異的な位置または座位(複数の座位)に位置する。1つのアレルは、相同染色体の対の各染色体上または場合により同祖染色体上に存在する。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「相同染色体」は、同じ生物学的特徴に関する情報を含有し、かつ同じ座位における同じ遺伝子であるが、場合によりそれらの遺伝子の異なるアレルを含有する染色体を意味する。相同染色体は、減数分裂中に対合する染色体である。生物体の総ての生物学的特徴を示す「非相同染色体」は、組を形成し、細胞における組の数は、倍数性という。二倍体生物体は、2組の非相同染色体を含有し、各相同染色体は、異なる親から遺伝される。四倍体種において、2組の二倍体ゲノムが存在し、それにより、2つのゲノムの染色体は「同祖染色体」という(同様に、2つのゲノムの座位または遺伝子は、同祖座位または同祖遺伝子という)。同様に、四倍体種は、2組の二倍体ゲノムなどを有する。二倍体、四倍体または六倍体植物種は、特定の座位における多数の異なるアレルを含んでもよい。アブラナ属種の倍数性レベルは、二倍体(ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)、AA;クロガラシ(Brassica nigra)、BB;ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、CC)、および四倍体(カラシナ(Brassica juncea)、AABB;セイヨウアブラナ(Brassica napus)、AACC;アビシニアガラシ(Brassica carinata)、BBCC)である。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロ接合型」は、2つの異なるアレルが特異的な座位に存在するが、細胞における相同染色体の対応する対上に個々に位置する場合に、存在する遺伝的状態を意味する。逆に、本明細書で使用する場合、用語「ホモ接合型」は、2つの同一のアレルが特異的な座位に存在するが、細胞における相同染色体の対応する対上に個々に位置する場合に、存在する遺伝的状態を意味する。
【0037】
特定の遺伝子または座位のアレルは、特定の浸透度を有し得る、すなわち、優性、部分優性、共優性、部分劣性または劣性であり得る。優性アレルは、生物体におけるヘテロ接合型に存在する場合に、ホモ接合型に存在する場合と同じ表現型をもたらす特定の座位または遺伝子のバリアントである。他方、劣性アレルは、ヘテロ接合型のものが優性アレルにより支配され、そのため、優性アレルにより付与される表現型がもたらされ、一方、ホモ接合型のもののみが劣性表現型をもたらす、アレルのバリアントである。部分優性、共優性または部分劣性は、ヘテロ接合体が、特定の座位または遺伝子の一方のアレルに関してホモ接合型である生物体の表現型と、その座位または遺伝子の他方のアレルに関してホモ接合型である生物体の表現型との間の中間である表現型を示す状態を指す。この中間表現型は、部分的または不完全な優性または浸透度を示すものである。部分優性が生じると、広範な表現型が子孫において通常認められる。同じことが部分劣性アレルに当てはまる。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「染色体間隔」は、単一染色体上のゲノムDNAの隣接する直線状のスパンである。「染色体間隔」は、遺伝子地図により定義され得、マーカーの遺伝的位置に基づき決定され得る。「染色体間隔」はまた、染色体の物理的構造に基づいて、例えば、ゲノム配列により定義され得る。
【0039】
用語「マーカー間隔」は、マーカーにより定義される染色体間隔を指す。第1のマーカーから第2のマーカーのマーカー間隔は、前記マーカーを含む、前記第1のマーカーから前記第2のマーカーの染色体間隔である。第1のマーカーと第2のマーカーとの間のマーカー間隔は、前記第1のマーカーと前記第2のマーカーとの間の染色体間隔である。マーカー間隔は、遺伝子地図により定義され得、マーカーの遺伝的位置に基づいたものであり得る。マーカー間隔はまた、染色体の物理的構造に基づいて、例えば、ゲノム配列に基づいて定義され得る。
【0040】
同定された染色体セグメントの位置、およびそのマーカーの位置は、組換え頻度または地図単位として表される場合、本明細書において一般的情報の目的で提供される。本明細書に記載の実施形態は、特定のアブラナ属集団を使用して得られた。したがって、地図単位としての特定のセグメントおよびマーカーの位置は、使用された集団に関して表される。地図単位としての特定のセグメントおよびマーカーに対して与えられた数は、栽培品種によって変わり得、DNAセグメントおよびマーカーの必須の定義の一部ではなく、DNAセグメントおよびマーカーは、それ以外に、例えばヌクレオチド配列により記載されることが予想される。
【0041】
本明細書で使用する場合、「遺伝子地図」または「連鎖地図」は、組換え頻度の点でお互いに対するその遺伝子マーカーの位置を示す種または実験集団に関する表である。連鎖地図は、相同染色体の乗換え中のマーカー間の組換えの頻度に基づく地図である。
【0042】
ゲノムの「物理的地図」は、絶対距離(例えば、塩基対において測定された)、例えば、ゲノム配列に基づく距離を指す。物理的地図上のマーカーの位置は、例えば、ゲノム配列に対するマーカーの配列をブラストすることにより決定することができる。
【0043】
用語「遺伝的に連鎖した」、「連鎖した」、「に連鎖した」または「連鎖」は、本明細書で使用する場合、所与の染色体上に位置する遺伝子またはマーカーが、次世代の個体に一緒に受け継がれている測定可能な確率を指す。このため、用語「連鎖した」は、0.5超の確率で(これは、マーカー/遺伝子が異なる染色体上に位置する独立組合せから予想される)、遺伝子と一緒に受け継がれる1以上の遺伝子またはマーカーを指し得る。染色体上の2つの遺伝子またはマーカーの近接は、その遺伝子またはマーカーが次世代の個体に一緒に受け継がれる確率と直接関連するため、用語「遺伝的に連鎖した」は、本明細書において、同じ染色体上の互いの約50センチモルガン(cM)以下内に位置する1以上の遺伝子またはマーカーも指し得る。遺伝的連鎖は、通常、cMの単位で表される。センチモルガンは、100回の減数分裂のうち1個の産物が組換えである遺伝子またはマーカー間の距離と定義される、遺伝的連鎖を測定するための組換え頻度の単位であり、または言い換えれば、センチモルガンは、染色体上の1つの遺伝子座におけるマーカーが、単一世代での乗換えにより第2の座位におけるマーカーから分離される1%の確率に等しい。これは、染色体に沿った距離を推測するためにしばしば使用される。cMが対応する塩基対の数は、ゲノム(染色体の異なる領域は、乗換えに対する異なる傾向を有する)および種(すなわち、ゲノムの全サイズ)によって広く異なる。このため、この点において、用語「連鎖した」は、約50cM以下、例えば、約40cM、約30cM、約20cM、約10cM、約7.5cM、約6cM、約5cM、約4cM、約3cM、約2.5cM、約2cM以下の分離であり得る。CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖したマーカーの特定の例を、表8に明示する。
【0044】
ゲノム参照配列上の特定の位置の「上流」は、5’方向を指す。ゲノム参照配列に関して、上流方向は、前記位置のより低い数字を指す。ゲノム上の特定の位置の「上流」は、遺伝子地図上のより低い数字に向かう方向を意味する。
【0045】
ゲノム参照配列上の特定の位置の「下流」は、3’方向を指す。ゲノム参照配列に関して、上流方向は、前記位置のより高い数字を指す。ゲノム上の特定の位置の「下流」は、遺伝子地図上のより高い数字に向かう方向を意味する。
【0046】
遺伝子地図上の特定の位置の「左」または「左側に」は、遺伝的位置のより低い数字(単位cM)の方向を指す。例えば、「左フランキングマーカー」は、集団位置における最も低い数字を有するQTL間隔内のマーカーである。マーカーの「左側」は、より低い数字(単位cM)を有する遺伝子地図上の位置である。
【0047】
遺伝子地図上の特定の位置の「右」または「右側に」は、遺伝的位置のより高い数字(単位cM)の方向を指す。例えば、「右フランキングマーカー」は、集団位置における最も高い数字を有するQTL間隔内のマーカーである。マーカーの「右側」は、より高い数字(単位cM)を有する遺伝子地図上の位置である。
【0048】
「戻し交雑」は、(単一)形質、例えば、根こぶ病抵抗性を、1つの遺伝的背景(「ドナー」)から別の遺伝的背景(すなわち、「反復親」の背景)、例えば、このようなCrS遺伝子または座位を含まない植物に導入することができる育種方法を指す。交雑種の子孫(例えば、CrS含有植物をCrS欠如植物と交雑することにより得られたF1植物;またはF1の自殖により得られたF2植物もしくはF3植物など)は、親(「反復親」)に「戻し交雑」される。反復戻し交雑(BC1、BC2など)および場合により自殖(BC1F1、BC2F1など)の後、1つの遺伝的背景の形質が、他の遺伝的背景に組み込まれる。
【0049】
「マーカー支援選抜」または「MAS」は、特定の座位または特定の染色体領域(例えば、浸透性交雑断片)に遺伝的に連鎖している分子マーカーの存在を使用して、特異的な座位または領域(浸透性交雑断片)の存在に関して植物を選抜するプロセスである。例えば、CrS座位に遺伝的および/または物理的に連鎖した分子マーカーを使用して、CrS座位を含む植物を検出および/または選抜することができる。座位に対する分子マーカーの遺伝的連鎖が密接であるほど、減数分裂組換えを介してマーカーが座位から分離する可能性が低くなる。
【0050】
「LODスコア」(オッズの対数(底10))は、動物および植物の集団における連鎖解析に使用されることが多い統計的検定を指す。LODスコアは、2つの座位(分子マーカー座位および/または表現型形質座位)が実際に連鎖している場合の検定データを得る尤度を、純粋に偶然に同じデータを観測する尤度と比較する。正のLODスコアは、連鎖の存在を支持し、3.0超のLODスコアは、連鎖の証拠とみなされる。+3のLODスコアは、観測されている連鎖が偶然に生じなかった1000対1のオッズを示す。
【0051】
「分子マーカー」、または「マーカー」は、本明細書で使用する場合、多型座位、すなわち多型ヌクレオチド(いわゆる一塩基多型もしくはSNP;多型塩基ともいう)または多型DNA配列(特異的な座位における特異的なDNA配列、または多型DNA配列の欠失の挿入であり得る)を指す。マーカーは、メンデルの法則に従って正常に遺伝され、目的の形質のマッピングに使用することができる、ゲノム中の固定された位置の測定可能な遺伝的特徴を指す。このため、分子マーカーは、短いDNA配列、例えば、一塩基対変化、すなわち、一塩基多型もしくはSNPの周囲の配列、または長いDNA配列、例えば、マイクロサテライトもしくは単純配列反復(SSR)であってもよい。マーカーの性質は、使用される分子解析に依存し、DNA、RNAまたはタンパク質レベルで検出することができる。遺伝子マッピングは、分子マーカー、例えば、限定されるものではないが、RFLP(制限断片長多型; Botstein et al. (1980), Am J Hum Genet 32:314-331; Tanksley et al. (1989), Bio/Technology 7:257-263)、RAPD[ランダム増幅多型DNA; Williams et al. (1990), NAR 18:6531-6535]、AFLP[増幅断片長多型; Vos et al. (1995) NAR 23:4407-4414]、SSRまたはマイクロサテライト[Tautz et al. (1989), NAR 17:6463-6471]を使用して行うことができる。適切なプライマーまたはプローブは、使用されるマッピング方法により規定される。
【0052】
マーカーは、多型座位の5’フランキング配列、多型座位(SNP中の多型塩基であり得る)、および多型座位の3’フランキング領域の同一性により同定することができる。
【0053】
本明細書で使用する場合、「マーカーM1」、「マーカーM2」~「マーカーMx」、または「M1」、「M2」~「Mx」として示されるマーカーは、上記で本明細書に記載の多型座位(または多型塩基)を指す。
【0054】
用語「マーカーアレル」は、染色体の1つにおける特定の植物に存在するマーカーのバージョン(すなわち、多型座位のバージョン)を指す。通常、マーカーは、2つのマーカーアレルとして存在し得るか、またはそれらを有するもしくは含むといわれ得る。用語「ハプロタイプ」は、本明細書で使用する場合、特定の植物または(関連する)植物の群内に存在するマーカーアレルの特異的な組合せを指す。本明細書に記載のように、マーカーアレルは、抵抗性系統(CrS根こぶ病抵抗性マーカーアレル)に存在するマーカーのバージョンであり得る。感受性系統に存在する同じマーカーのバージョンは、CrS根こぶ病感受性マーカーアレルといわれ得る。
【0055】
本明細書で使用する場合、「マーカーM1/R」、「マーカーM2/R」~「マーカーMx/R」、または「M1/R」、「M2/R」~「Mx/R」として示されるマーカーは、抵抗性源(または抵抗性ドナー系統)に存在するマーカーアレル(または多型座位のバージョン)を指す。抵抗性源の多型塩基を含有する抵抗性源に関するマーカーアレルの例を、表9に示す。
【0056】
本明細書で使用する場合、「マーカーM1/S」、「マーカーM2/S」~「マーカーMx/S」、または「M1/R」、「M2/S」~「Mx/S」として示されるマーカーは、感受性系統(または感受性親)に存在するマーカーアレルを指す。感受性系統の多型塩基を含有する感受性源に関するマーカーアレルの例を、表9に示す。
【0057】
本発明に係る特異的なゲノム配列における特定のSNP遺伝型またはSNPアレル(またはマーカー遺伝型もしくはマーカーアレル)を本明細書において参照する場合、これは、ゲノム配列のバリアントにおけるSNP遺伝型またはアレル、すなわち、例えば、本発明に係るマーカーの配列などの参照される配列に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%以上の(実質的な)配列同一性を含む、相同であるゲノム配列におけるSNP遺伝型またはアレルも包含することが明らかであろう。このため、1つの態様における配列番号1~22のいずれか1つに対する本明細書におけるいずれの参照も、配列番号1~22のいずれか1つのバリアント(相同配列)も包含し、前記バリアントは、(例えば、プログラム「Needle」を使用し)前記配列に対して少なくとも85%、90%、95%、98%、99%以上の配列同一性を含むが、前記SNP(マーカー)遺伝型またはアレルを含む。
【0058】
用語「AFLP(登録商標)」(AFLP(登録商標)は、KeyGene N.V.、ヴァーヘニンゲン、オランダの登録商標である)、「AFLP解析」および「AFLPマーカー」は、標準的な用語法に従って使用される[Vos et al. (1995), NAR 23:4407-4414; EP0534858; http://www.keygene.com/keygene/techs-apps/]。簡単に述べれば、AFLP解析は、PCR増幅により複数のDNA制限断片を検出するDNAフィンガープリンティング法である。AFLP技術は通常、以下の工程を含む:(i)2つの制限酵素、好ましくは、ヘキサカッター(hexa-cutter)およびテトラカッター(tetra-cutter)、例えば、EcoRI、PstIおよびMseIによるDNAの制限;(ii)EcoRI、PstIおよびMseIアダプターなどの制限断片の末端への二本鎖アダプターのライゲーション;(iii)アダプターおよび制限部位配列に相補的であり、かつ1~3個の「選択的」ヌクレオチドによりそれらの3’末端において伸長した2つのプライマーを使用した、制限断片のサブセットの増幅、すなわち、選択的増幅は、制限断片に伸長するプライマーの使用により達成され、プライマー伸長が制限部位に隣接するヌクレオチドに一致するそれらの断片のみが増幅される。このため、AFLPプライマーは特異的配列を有し、各AFLPプライマーは特異的コードを有する(プライマーコードおよびそれらの配列は、Keygene社のウェブサイト:http://www.keygene.com/keygene/pdf/PRIMERCO.pdfにて確認でき、引用することにより本明細書に取り込まれる);(iv)変性スラブゲルまたはキャピラリー上での増幅された制限断片のゲル電気泳動;(v)オートラジオグラフィー、蛍光体イメージング、または他の方法によるDNAフィンガープリントの可視化。この方法を使用すれば、ヌクレオチド配列の知識がなくとも、制限断片のセットをPCRにより可視化することができる。AFLPマーカーは、本明細書で使用する場合、AFLP解析を行うことによりゲル上にバンドとして生成および可視化される、特異的なサイズのDNA断片である。各AFLPマーカーは、それを増幅するために使用されたプライマーの組合せに次いで、増幅されたDNA断片のおよそのサイズ(塩基対の単位で)により指定される。これらの断片のサイズは、実験室条件および使用された機器に応じて、わずかに変動し得ることが理解される。プライマーの組合せおよび断片の特異的なサイズを参照することにより、AFLPマーカーを本明細書において参照するときは毎回、このようなサイズはおよそのものであり、異なる実験室で観察されるわずかな変動を含む、またはそれを含むことを意図すると理解されるべきである。各AFLPマーカーは、ゲノムにおける特定の座位を表す。
【0059】
用語「SSR」は、単純配列反復またはマイクロサテライトを指す[Tautz et al. (1989), NAR 17:6463-6471]。短鎖単純配列ストレッチ(Short Simple Sequence stretch)が、全真核生物ゲノムにおける高度反復エレメントとして生じる。単純配列座位は、通常、広範な長さの多型を示す。これらの単純配列長多型(SSLP)は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)解析により検出することができ、同一性試験、集団研究、連鎖解析およびゲノムマッピングに使用することができる。
【0060】
分子マーカーは、他の種類の分子マーカーに変換され得ることが理解される。本発明において特異的分子マーカーを参照する場合、定義は、特異的分子マーカーにより最初に同定された遺伝的バリエーションを検出するために使用される他の種類の分子マーカーを包含することが理解される。例えば、AFLPマーカーが、公知の方法を使用して別の分子マーカーに変換される場合、この他のマーカーは定義に含まれる。例えば、AFLPマーカーは、Meksem et al. [(2001), Mol Gen Genomics 265(2):207-214]、Negi et al. [(2000), TAG 101:146-152]、Barret et al. (1989), TAG 97:828-833]、Xu et al. [(2001), Genome 44(1):63-70]、Dussel et al. [(2002), TAG 105:1190-1195]またはGuo et al. [(2003), TAG 103:1011-1017]に記載の標準的な技術を使用して、配列特異的マーカー、例えば、限定されるものではないが、STS(配列タグ部位)またはSCAR(配列特性化増幅領域)マーカーに変換することができる。例えば、Dussel et al. [(2002), TAG 105:1190-1195]は、抵抗性に連鎖したAFLPマーカーを、PCRベースの配列タグ部位マーカー、例えば、インデル(挿入/欠失)マーカーおよびCAPS(切断増幅多型配列)マーカーに変換した。
【0061】
好適な分子マーカーは、例えば、SNPマーカー(一塩基多型)、AFLPマーカー、マイクロサテライト、ミニサテライト、ランダム増幅多型DNA(RAPD)マーカー、RFLPマーカー、配列特性化増幅領域(SCAR)マーカー、およびその他、例えば、Hu et al. 2007, Genet Resour Crop Evol 54: 1667-1674に記載されたTRAPマーカーである。
【0062】
マーカー検出のため、またはマーカーの存在に関するゲノムDNAを解析するための方法およびアッセイは、当技術分野で広く知られている。マーカーの存在は、例えば、ハイブリダイゼーションベースの方法(例えば、アレル特異的ハイブリダイゼーション)において、Taqman、Invader、PCRベースの方法、オリゴヌクレオチドライゲーションベースの方法、またはシークエンシングベースの方法を使用して、検出することができる。
【0063】
SNPマーカーの検出のための有用なアッセイは、例えば、競合的アレル特異的PCR(Kompetitive Allele‐Specific PCR)である。KASPアッセイを構築するために、SNPの上流の70以上の塩基対および下流の70以上の塩基対が選択され、2つのアレル特異的フォワードプライマーおよび1つのアレル特異的リバースプライマーが設計される。例えば、Allen et al. 2011, Plant Biotechnology J. 9, 1086-1099、特にKASPアッセイ方法に関するp1097-1098を参照のこと(引用することにより本明細書に取り込まれる)。
【0064】
SNPおよびインデルを検出するための他の方法としては、プローブ-核酸ハイブリッドの単一塩基の伸長に基づく方法が挙げられる。これらのSNP検出方法は、多型に隣接し、かつ両アレルに関して同一であるプローブのハイブリダイゼーション、およびプライマーの伸長時に検出可能なヌクレオチド残基を組み込むためのヌクレオチドの伸長に基づく。付加されたヌクレオチドからの検出可能なシグナルを使用して、付加されたヌクレオチドの同一性が決定され、そこから、関連するアレルの同一性が決定される。例えば、Gunderson et all., 2006, Methods Enzymol 410:359を参照のこと(引用することにより本明細書に取り込まれる)。
【0065】
「CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖した分子マーカー」、または「CrS根こぶ病抵抗性座位の存在に連鎖した分子マーカー」は、本明細書で使用する場合、少なくとも50%の例において単一の遺伝単位としてCrS根こぶ病抵抗性座位を受け継ぐゲノム内の領域における分子マーカーを指す。このため、この点において、用語「連鎖した」は、約50cM以下、例えば、約40cM、約30cM、約20cM、約10cM、約7.5cM、約6cM、約5cM、約4cM、約3cM、約2.5cM、約2cM以下の分離であり得る。CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖したマーカーの典型例を、表8に明示する。このため、前記「CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖した分子マーカー」は、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子に連鎖しているマーカーである。
【0066】
「CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖した分子マーカー」、または「CrS根こぶ病抵抗性座位の存在に連鎖した分子マーカー」は、マーカーM4~M5の間およびそれらを含む、またはマーカーM4~M5の間およびそれらを含む、またはマーカーM4~M7の間およびそれらを含む、またはマーカーM4~M11の間およびそれらを含むマーカー間隔の10cM内、7.5cM内、6cM内、5cM内、4cM内、3cM内、2.5cM内、2cM内、または1cM内、または0.5cM内のマーカーでもあり得る。このような分子マーカーは、マーカーM4~M5の間およびそれらを含む、またはマーカーM4~M7の間およびそれらを含む、またはマーカーM4~M11の間およびそれらを含むマーカー間隔に位置するマーカーであり得る。このため、このようなマーカーは、マーカーM4およびM11を含む、M4~M11のマーカー間隔の10cM内の染色体上の位置における任意のマーカーであり得る。マーカーM4~M11の間およびそれらを含むマーカー間隔に位置するマーカーの例は、表8に明示されるマーカーである。
【0067】
「アブラナ科」または「アブラナ科植物」は、本明細書で使用する場合、十字花科ファミリーともいわれるアブラナ科植物のファミリーに属する植物を指す。アブラナ科の例としては、限定されるものではないが、アブラナ属種、例えば、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)、アビシニアガラシ(Brassica carinata)、クロガラシ(Brassica nigra)、およびカラシナ(Brassica juncea);ダイコン属種、例えば、ラットテールラディッシュ(Raphanus caudatus)、セイヨウノダイコン(Raphanus raphanistrum)、およびダイコン(Raphanus sativus);アラセイトウ属種;ニオイアラセイトウ属種;アマナズナ属種、例えば、カメリナ・サティバ(Camelina sativa);クランベ属種、例えば、クランベ・アビシニカ(Crambe abyssinica)およびクランベ・ヒスパニカ(Crambe hispanica);エルーカ属種、例えば、ルッコラ(Eruca vesicaria);シロガラシ属種、例えば、シロガラシ(Sinapis alba);エダウチナズナ属種;マメグンバイナズナ属種;オランダガラシ属種;ショカツサイ属種;セイヨウワサビ属種、ワサビ属種;マメグンバイナズナ属種;ならびにシロイヌナズナ属種が挙げられる。
【0068】
「アブラナ属植物」は、異質四倍体または複二倍体のセイヨウアブラナ(Brassica napus)(AACC、2n=38)、カラシナ(Brassica juncea)(AABB、2n=36)、アビシニアガラシ(Brassica carinata)(BBCC、2n=34)、または二倍体のブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)(同義語ブラッシカ・カンペストリス(B. campestris))(AA、2n=20)、ブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea)(CC、2n=18)もしくはクロガラシ(Brassica nigra)(BB、2n=16)を指す。
【0069】
「ナタネ(oilseed rape)」または「アブラナ属脂肪種子」または「脂肪種子作物」は、作物として栽培されたナタネ(oilseed rape)、例えば、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)、カラシナ(Brassica juncea)、またはアビシニアガラシ(Brassica carinata)を指す。
【0070】
「冬ナタネ(winter oilseed rape)」または「WOSR」は、晩夏~初秋に作付けされ、越冬し、翌夏に収穫されるアブラナ属脂肪種子である。WOSRは一般に、開花のために春化を必要とする。
【0071】
「春ナタネ(spring oilseed rape)」または「SOSR」は、早春に作付けされ、晩夏に収穫されるアブラナ属脂肪種子である。SOSRは、開花のために春化を必要としない。
【0072】
「エルカ酸」は、本明細書で使用する場合、22:1ω9、または22:1と表される一不飽和オメガ-9脂肪酸である。
【0073】
「低エルカ酸(low erucic)」または「低エルカ酸(low erucic acid)」は、種子油中のエルカ酸含有量が2%未満であることを示す。
【0074】
「キャノーラ品質」または「キャノーラ品質油」は、2%未満のエルカ酸、および風乾オイルフリーミール1グラムあたり30マイクロモル未満のグルコシノレートを含有する油である。
【0075】
「生物学的サンプル」は、植物または植物の部分、例えば、植物組織もしくは植物細胞であり得る。
【0076】
「ゲノムDNAを提供すること」は、本明細書で使用する場合、植物由来のゲノムDNAを含むサンプルを提供することを指す。サンプルは、例えば、前記植物由来のゲノムDNAを含む葉サンプルなどの、前記植物から得られた組織サンプルを指し得る。サンプルは、葉サンプルなどの組織から得られたゲノムDNAなど、組織サンプルから得られるゲノムDNAをさらに指し得る。ゲノムDNAを提供することは、組織サンプル由来のゲノムDNAの精製を含み得るが、これを含む必要はない。このため、ゲノムDNAを提供することは、植物または組織のより大きな小片から組織材料を得ること、およびそこから粗抽出物または溶解物を調製することも含む。
【0077】
「キット」は、本明細書で使用する場合、本発明の方法を実施する目的での、より詳しくは、生物学的サンプル中のCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の同定、またはCrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含む植物材料の接合状態の決定のための一組の試薬を指す。より詳しくは、本発明のキットの好ましい実施形態は、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子の同定のための少なくとも2つの特異的プライマー、または接合状態の決定のための少なくとも2つもしくは3つの特異的プライマーを含む。場合により、キットは、任意の他の試薬をさらに含み得る。あるいは、本発明の別の実施形態によれば、キットは、生物学的サンプルの核酸と特異的にハイブリダイズして、その中のCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の存在を同定する少なくとも1つの特異的プローブ、または接合状態の決定のための少なくとも2つもしくは3つの特異的プローブを含み得る。場合により、キットは、特異的プローブを使用した、生物学的サンプル中のCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の同定のための任意の他の試薬(例えば、限定されるものではないが、ハイブリダイゼーションバッファー、標識)をさらに含み得る。
【0078】
用語「プライマー」は、本明細書で使用する場合、PCRなどの鋳型依存的プロセスにおける新生核酸の合成をプライミングすることができる任意の核酸を包含する。通常は、プライマーは10~30ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであるが、より長い配列を用いることができる。プライマーは、二本鎖形態で提供されてもよいが、一本鎖形態が好ましい。プローブは、プライマーとして使用することができるが、標的DNAまたはRNAに結合するように設計され、増幅プロセスにおいて使用する必要はない。
【0079】
用語「認識すること」は、特異的プライマーを参照する際に本明細書で使用する場合、特異的プライマーが、方法において示された条件(例えば、PCR同定プロトコールの条件)下で特異的な核酸配列に対して特異的にハイブリダイズし、それにより、陽性対照および陰性対照を使用して特異性が決定されることを指す。
【0080】
「単離DNA」は、本明細書で使用する場合、その長さおよび配列を問わず、その天然ゲノムの文脈において生じないDNAを指す。単離DNAは、例えば、ゲノムDNAの断片など、ゲノムの文脈から物理的に分離されるDNAを指し得る。単離DNAは、人工的に作製されたDNA、例えば、化学的に合成されたDNA、または、当技術分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅反応により作製されたDNAでもあり得る。単離DNAは、それが天然に生じないDNAの文脈において存在するDNAをさらに指し得る。例えば、単離DNAは、プラスミドに存在するDNAの小片を指し得る。さらに、単離DNAは、それが天然に生じる文脈ではない別の染色体の文脈において、例えば、それが天然に生じる種ではない別の種のゲノムにおける、または人工染色体における、天然の位置ではないゲノム中の別の位置において存在するDNAの小片を指し得る。
【0081】
本発明に係る「植物」または「複数の植物」を参照する場合は常に、特に断りのない限り、植物の部分(細胞、組織または器官、莢、種子、根などの切断部、葉、花、花粉など)、親の際立った特徴(特に、果実裂開特性)を保持する植物の子孫、例えば、自殖または交雑により得られた種子、例えば、ハイブリッド種子(2つの近交親系統を交雑することにより得られた)、ハイブリッド植物およびそれに由来する植物の部分も包含されることが理解される。
【0082】
「繁殖材料を作製すること」は、本明細書で使用する場合、さらなる植物、植物の部分または種子を生産するための当技術分野で公知の任意の手段に関し、とりわけ、栄養生殖法(例えば、高取り法または盛り土法(ground layering)、株分け、(芽)接ぎ、マイクロプロパゲーション、ストロン(stolon)またはランナー(runner)、貯蔵器官、例えば、鱗茎、球茎、塊茎および根茎、根付けまたは挿し木、ツインスケーリング)、無性生殖(別の植物との交雑)ならびに有性生殖(例えば、アポミクシス(apomixis)、体細胞ハイブリダイゼーション)が挙げられる。
【0083】
本発明の目的のために、パーセンテージとして表されるアミノ酸配列の2つの関連するヌクレオチドの「配列同一性」は、比較する位置の数で割った、同一の残基を有する2つの最適に整列された配列における位置の数(×100)を指す。ギャップ、すなわち、残基がある配列に存在するが、他の配列には存在しないアラインメントにおける位置は、同一でない残基を有する位置とみなされる。2つの配列の「最適なアラインメント」は、デフォルトの設定(ギャップ開始ペナルティ=10(ヌクレオチドに対して)/10(タンパク質に対して)およびギャップ伸長ペナルティ=0.5(ヌクレオチドに対して)/0.5(タンパク質に対して))を使用して、European Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS、Rice et al., 2000, Trends in Genetics 16(6): 276-277;例えば、http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.htmlを参照のこと)におけるNeedlemanおよびWunschのグローバルアラインメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J Mol Biol 48(3):443-53)に従って、全長にわたる2つの配列を整列させることにより、見出される。ヌクレオチドに関しては、使用されるデフォルトのスコア行列はEDNAFULLであり、タンパク質に関しては、デフォルトのスコア行列はEBLOSUM62である。RNA分子のヌクレオチド配列が、対応するDNA分子のヌクレオチド配列を参照することにより定義される場合は常に、ヌクレオチド配列中のチミン(T)がウラシル(U)に置き換わるはずであることは明らかであろう。RNA分子またはDNA分子を参照するかどうかは、適用の文脈から明らかであろう。
【0084】
本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」は、参照される言及された特徴、整数、工程または成分の存在を明示するものと解釈されるべきであるが、1以上の特徴、整数、工程もしくは成分、またはそれらの群の存在または追加を排除しない。このため、例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列を含む核酸またはタンパク質は、実際に言及されたものより多くのヌクレオチドまたはアミノ酸を含んでもよい、すなわち、より大きな核酸またはタンパク質に組み込まれてもよい。機能的または構造的に定義されている核酸を含むキメラ遺伝子は、さらなるDNA領域などを含んでもよい。
【0085】
詳細な説明
本発明は、アブラナ属におけるCrS根こぶ病抵抗性座位の同定に基づく。意外にも、CrS根こぶ病抵抗性座位は、エリートアブラナ属変種において浸透性交雑されることができ、低エルカ酸含量の系統を得ることができたことが見出された。
【0086】
本発明の第1の実施形態において、種子油中のエルカ酸含量が2%未満であり、かつマーカーM4を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含むアブラナ属植物が提供される。別の実施形態において、前記CrS根こぶ病抵抗性座位は、マーカーM4~M5のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にある。別の実施形態において、前記CrS根こぶ病抵抗性座位は、マーカーM4~M8のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にあり、一方、さらなる実施形態において、前記CrS根こぶ病抵抗性座位は、マーカーM4~M11のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にある。さらに別の実施形態において、本発明に係る植物はマーカーアレルM4/Rを含み、一方、さらに別の実施形態において、本発明に係る植物は、マーカーアレルM4/RおよびM5/Rを含むか、またはマーカーアレルM4/R、M5/R、M6/RおよびM7/Rを含む。
【0087】
本発明に係る植物は、2%未満のエルカ酸、または1.5%未満のエルカ酸、または1%未満のエルカ酸、または0%のエルカ酸を含有してもよい。
【0088】
マーカー間隔は、実施例において本明細書に示される遺伝子地図上の55.49~57.50cM、または55.49~55.67cM、または55.49~58.77cM、または55.49~59.14cM、または55.49~59.32cM、または55.49~66.98cMの遺伝子地図上のCrSドナーにおいて存在する領域であり得る。マーカーM4はマーカーアレルM4/Rであり得、またはここで、マーカーM4に関するマーカーアレルは「A」であること、マーカーM5はマーカーアレルM5/Rであり得、またはここで、マーカーM5に関するマーカーアレルは「T」であること、マーカーM6はマーカーアレルM6/Rであり得、またはここで、マーカーM6に関するマーカーアレルはGであること、マーカーM7はマーカーアレルM7/Rであり得、またはここで、マーカーM7に関するマーカーアレルはTであることが理解される。さらに、マーカーM8はマーカーアレルM8/Rであり得、またはここで、マーカーM8に関するマーカーアレルはCであってもよく、マーカーM9はマーカーアレルM9/Rであり得、またはここで、マーカーM9に関するマーカーアレルはTであってもよく、マーカーM10はマーカーアレルM10/Rであり得、またはここで、マーカーM10に関するマーカーアレルはAであってもよく、マーカーM11はマーカーアレルM11/Rであり得、またはここで、マーカーM11に関するマーカーアレルは「A」であってもよいことが理解される。
【0089】
マーカー間隔は、Bayer et al., 2017, Plant Biotech J. 15, p. 1602に記載されるDarmor-bzh(バージョン8.1)ゲノム配列上の位置10,369,430bp~位置10,375,744、または位置10,369,430~位置9,699,466bp、または位置10,369,430bp~位置933,572bpの領域に対応するCrSドナーにおいて存在する領域であり得、ここで、位置10,369,430bpにおける塩基はAであり;位置10,3757,44bpにおける塩基はTであり、場合により、位置9,801,311における塩基はGであり、場合により、位置9,699,466bpにおける塩基はTであり、場合により、位置933,572bpにおける塩基はAである。
【0090】
本発明に係るアブラナ属植物は、M5および/またはM6など、マーカー間隔内に任意のさらなるマーカーを含んでもよい。
【0091】
CrS根こぶ病抵抗性座位は、マーカーM4~M5のマーカー間隔内、またはM4~M6のマーカー間隔内、またはM4~M7のマーカー間隔内、またはマーカーM4~M8のマーカー間隔内、またはマーカーM4~M9のマーカー間隔内、またはマーカーM4~M10のマーカー間隔内、またはマーカーM4~M11のマーカー間隔内に含まれ得る。
【0092】
CrS根こぶ病抵抗性遺伝子、またはCrS抵抗性遺伝子、またはCrS遺伝子は、CrS根こぶ病抵抗性座位に位置する。言い換えれば、CrS根こぶ病抵抗性座位は、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含む遺伝子座を指す。
【0093】
CrS根こぶ病抵抗性座位を含むアブラナ属種子は、受託番号NCIMB43341の下で、2019年1月21日にNCIMB(NCIMB Ltd、Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen AB21 9YA、スコットランド、英国)に寄託された。
【0094】
本明細書に記載のマーカーに隣接する(挟まれた)染色体間隔は、例えば、具体的に言及されたマーカー間の以下の表3および8に記載のマーカー、または明示的に示されてはいないが、これも言及されたマーカー対に隣接する他のマーカーである。当業者は、上記のマーカー対に隣接しているゲノム領域における新規のマーカーを容易に同定することができる。このようなマーカーは、SNPマーカーである必要はないが、そのゲノムまたはサブゲノム領域にマッピングされた遺伝子型または表現型マーカーの任意の種類であり得る。好ましくは、このようなマーカーは、本発明に係る本明細書に記載のCrS座位に遺伝的および物理的に連鎖している。マーカーは、好ましくは、非源特異的な様式でCrS座位の存在を示すものである。
【0095】
別の実施形態において、本発明に係るアブラナ属植物は、マーカーアレルM3/R、もしくはM2/R、もしくはM1/R、またはその組合せを含まない。
【0096】
マーカーM4の左側の染色体間隔が感受性反復親に由来する植物は、抵抗性ドナー親由来の高エルカ酸表現型を含有しないことが理解される。
【0097】
本発明に係るアブラナ属植物は、マーカーアレルM3/Rを含まない、マーカーアレルM2/Rを含まない、マーカーアレルM1/Rを含まない、マーカーアレルM3/RおよびM1/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/RおよびマーカーアレルM1/Rを含まない植物であってもよい。本発明に係るアブラナ属植物は、マーカーM3の左側またはマーカーM2の左側において、CrSドナー親由来の染色体セグメントを含まなくてもよい。本発明に係るアブラナ属植物は、Bayerら(上記を参照のこと)に記載されたDarmor-bzh(バージョン8.1)ゲノム配列の位置11,256,444bpに対応する位置の下流のおよびそれを含むCrSドナー親由来の染色体セグメントを含まなくてもよい。本発明に係るアブラナ属植物は、実施例において本明細書に記載の遺伝子地図に関して53.14cMの遺伝的位置に対応する遺伝的位置の左側において、CrSドナー親由来の染色体セグメントを含まなくてもよい。このため、植物は、マーカーM3のマーカーアレル「A」を含まなくてもよい、かつ/またはマーカーM2のマーカーアレル「A」を含まなくてもよい、かつ/またはマーカーM1のマーカーアレル「T」を含まなくてもよい。
【0098】
本明細書に定義される「M1/R」は、多型塩基が「T」であるマーカーM1のマーカーアレルである。
【0099】
本明細書に定義される「M1/S」は、多型塩基が「C」であるマーカーM1のマーカーアレルである。
【0100】
本明細書に定義される「M2/R」は、多型塩基が「A」であるマーカーM2のマーカーアレルである。
【0101】
本明細書に定義される「M2/S」は、多型塩基が「G」であるマーカーM2のマーカーアレルである。
【0102】
本明細書に定義される「M3/R」は、多型塩基が「A」であるマーカーM3のマーカーアレルである。
【0103】
本明細書に定義される「M3/S」は、多型塩基が「G」であるマーカーM3のマーカーアレルである。
【0104】
本明細書に定義される「M4/R」は、多型塩基が「A」であるマーカーM4のマーカーアレルである。
【0105】
本明細書に定義される「M4/S」は、多型塩基が「C」であるマーカーM4のマーカーアレルである。
【0106】
本明細書に定義される「M5/R」は、多型塩基が「T」であるマーカーM5のマーカーアレルである。
【0107】
本明細書に定義される「M5/S」は、多型塩基が「C」であるマーカーM5のマーカーアレルである。
【0108】
本明細書に定義される「M6/R」は、多型塩基が「G」であるマーカーM6のマーカーアレルである。
【0109】
本明細書に定義される「M6/S」は、多型塩基が「A」であるマーカーM6のマーカーアレルである。
【0110】
本明細書に定義される「M7/R」は、多型塩基が「T」であるマーカーM7のマーカーアレルである。
【0111】
本明細書に定義される「M7/S」は、多型塩基が「C」であるマーカーM7のマーカーアレルである。
【0112】
本明細書に定義される「M8/R」は、多型塩基が「C」であるマーカーM8のマーカーアレルである。
【0113】
本明細書に定義される「M8/S」は、多型塩基が「T」であるマーカーM8のマーカーアレルである。
【0114】
本明細書に定義される「M9/R」は、多型塩基が「T」であるマーカーM9のマーカーアレルである。
【0115】
本明細書に定義される「M9/S」は、多型塩基が「C」であるマーカーM9のマーカーアレルである。
【0116】
本明細書に定義される「M10/R」は、多型塩基が「A」であるマーカーM10のマーカーアレルである。
【0117】
本明細書に定義される「M10/S」は、多型塩基が「G」であるマーカーM10のマーカーアレルである。
【0118】
本明細書に定義される「M11/R」は、多型塩基が「A」であるマーカーM11のマーカーアレルである。
【0119】
本明細書に定義される「M11/S」は、多型塩基が「G」であるマーカーM11のマーカーアレルである。
【0120】
さらに別の実施形態において、本発明に係るアブラナ属植物は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)またはブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)植物であり、一方、さらに別の実施形態において、本発明に係るアブラナ属植物は、セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物またはセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物である。
【0121】
別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、前記染色体セグメントがマーカーM4~M7のマーカー間隔を含む、セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物である。さらに別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、前記染色体セグメントがマーカーM4~M5のマーカー間隔を含むセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物、例えば、マーカーM4~M8のマーカー間隔を含むセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物、例えば、前記染色体セグメントが、受託番号NCIMB43341の下でNCIMBに寄託された参照種子から入手可能であるセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物である。
【0122】
セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物は、マーカーM4~M9、またはマーカーM4~M10、またはマーカーM4~M11のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含んでもよい。セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物は、マーカーアレルM2/Rを含まなくてもよいし、またはマーカーアレルM2/RおよびM1/Rを含まなくてもよい。前記セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物は、マーカーM3の左側において、またはマーカーM2の左側において、またはBayerら(上記を参照のこと)に記載されたDarmor-bzh(バージョン8.1)ゲノム配列の位置11,256,444bpに対応する位置の下流において、またはBayerら(上記を参照のこと)に記載されたDarmor-bzh(バージョン8.1)ゲノム配列の位置12,499,060bpの下流において、または実施例において本明細書に記載の遺伝子地図に関して53.14cMの遺伝的位置に対応する遺伝的位置の左側において、または実施例において本明細書に記載の遺伝子地図に関して位置51.99cMに対応する遺伝的位置の左側において、CrSドナー親由来の染色体セグメントを含まなくてもよい。
【0123】
セイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物は、マーカーM4~M5、またはマーカーM4~M6、またはマーカーM4~M7、またはマーカーM4~M8、またはマーカーM4~M9、またはマーカーM4~M10、またはマーカーM4~M11のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含んでもよい。セイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物は、マーカーアレルM3/Rを含まなくてもよいし、またはマーカーアレルM3/RおよびM1/Rを含まなくてもよい。前記セイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物は、マーカーM3の左側において、またはBayerら(上記を参照のこと)に記載のDarmor-bzh(バージョン8.1)ゲノム配列の位置11,256,444に対応する位置の下流において、または実施例において本明細書に記載の遺伝子地図に関して53.14cMの遺伝的位置に対応する遺伝的位置の左側において、CrSドナー親に由来する染色体セグメントを含まなくてもよい。
【0124】
CrS根こぶ病抵抗性座位を含む本発明に係る植物は、明示されたマーカー間隔内に抵抗性源由来(CrSドナー親由来)のマーカーアレルを含有してもよいことは明らかであろう。例えば、マーカーM4~M7のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物は、マーカーアレルM4/RおよびM7/Rを含有してもよいし、またはマーカーアレルM4/R、M5/R、M6/RおよびM7/Rを含有してもよい。前記植物は、マーカーアレルM8/R、および場合により、マーカーアレルM9/R、および場合により、マーカーアレルM10/R、および場合により、マーカーアレルM11/Rをさらに含んでもよい。
【0125】
別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、根こぶ病菌(P. brassicae)病原型P2、P3、P5、P6もしくはP8または分離株CR11に対して抵抗性である。アブラナ属植物は、Strelkov et al. 2018, Can J Plant Pathology pp 284のCanadian Clubroot Differentialセット(CCD)に基づく2B、3A、5X、および8Pを含む最近同定された病原型のいくつかに対しても抵抗性であり得る。
【0126】
さらに別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、前記根こぶ病抵抗性座位に関してヘテロ接合型であり、一方、別の態様において、本発明に係るアブラナ属植物は、前記根こぶ病抵抗性座位に関してホモ接合型である。
【0127】
さらに別の実施形態は、除草剤耐性を付与する遺伝子をさらに含む本発明に係るアブラナ属植物を提供する。別の実施形態において、除草剤耐性を付与する遺伝子は、グルホシネートもしくはグルホシネートアンモニウムに対する抵抗性を付与する遺伝子、またはグリホサートに対する抵抗性を付与する遺伝子である。
【0128】
除草剤抵抗性を付与する遺伝子は、グルホシネートアンモニウム(Liberty(登録商標)、Basta(登録商標)もしくはIgnite(登録商標))に対する抵抗性を付与するbarもしくはpat遺伝子[EP0242236およびEP0242246、引用することにより本明細書に取り込まれる];または任意の改変EPSPS遺伝子、例えば、トウモロコシ由来の2mEPSPS遺伝子[EP0508909およびEP0507698、引用することにより本明細書に取り込まれる]、もしくはグリホサート(RoundupReady(登録商標))に対する抵抗性を付与するグリホサートアセチルトランスフェラーゼもしくはグリホサートオキシドレダクターゼ、もしくはブロモキシニトリル(bromoxynitril)耐性を付与するためのブロモキシニトリル(bromoxynitril)ニトリラーゼ、またはスルホニル尿素、イミダゾリノン、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、トリアゾロピリミジンもしくはピリミジル(オキシ/チオ)安息香酸塩に対する耐性を付与する任意の改変AHAS遺伝子、例えば、Clearfield(登録商標)キャノーラとして現在市販されている、ナタネ(oilseed rape)イミダゾリノン耐性変異体PM1およびPM2であってもよい。さらに、本発明に係る植物は、油分の増加または油組成物の改善を付与する内因性遺伝子または導入遺伝子、例えば、受粉制御を付与する高ラウリン酸塩(lareate)を得るための12:0 ACPチオエステラーゼ(thioesteraseincrease)、例えば、雄性不稔性を得るための葯特異的プロモーターの制御下のバルナーゼ、または雄性不稔性もしくは、例えば、オグラ型細胞質雄性不稔性の回復および核の稔性回復遺伝子を付与するための葯特異的プロモーターの制御下のバルスターをさらに含有してもよい。
【0129】
グルホシネートアンモニウム(Liberty(登録商標)、Basta(登録商標)またはIgnite(登録商標))に対する抵抗性を付与する遺伝子をさらに含有する本発明に係る植物は、ホスフィノスリシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(PAT)酵素をコードする遺伝子、例えば、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のビアラホス抵抗性遺伝子(bar)のコード配列を含有してもよい。このような植物は、例えば、WO01/41558に記載のエリートイベントMS-BN1および/もしくはRF-BN1、またはWO01/31042もしくはWO2014/170387に記載のエリートイベントMS-B2および/もしくはRF-BN1、またはこれらのイベントの任意の組合せを含んでもよい。
【0130】
グリホサート(RoundupReady(登録商標))に対する抵抗性を付与する遺伝子を含む本発明に係る植物は、グリホサート抵抗性EPSPS、例えば、CP4 EPSPS、またはN-アセチルトランスフェラーゼ(gat)遺伝子を含有してもよい。このような植物は、例えば、WO02/36831に記載のエリートイベントRT73、またはWO11/153186に記載のエリートイベントMON88302、またはWO2012/071040に記載のイベントDP-073496-4を含んでもよい。
【0131】
本発明に係る植物は、さらにキャノーラ品質植物であってもよい。
【0132】
本発明に係る植物の種子も提供される。
【0133】
本発明の別の態様は、根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法であって、前記方法が、(a)M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーを有するCrS根こぶ病抵抗性座位を含む少なくとも1つのアブラナ属植物を同定すること、および(b)前記CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を選抜することを含む方法を提供する。さらなる実施形態において、前記方法は、M4~M11のマーカー間隔内の少なくとも1つのマーカーを含み、かつマーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まない少なくとも1つのアブラナ属植物を同定することを含み、一方、別の実施形態において、前記アブラナ属植物は、M4~M5のマーカー間隔内のマーカーを使用して同定される。
【0134】
本発明の別の実施形態は、根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法であって、前記方法が、(a)CrS根こぶ病抵抗性座位を含む第1のアブラナ属植物を第2の植物と交雑させること;および(b)M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーを含む子孫植物を同定することを含む方法を提供する。さらなる実施形態において、前記方法は、M4~M11のマーカー間隔内の少なくとも1つのマーカーを含み、かつマーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まない子孫植物を同定することを含む。
【0135】
CrS根こぶ病抵抗性座位の存在は、分子マーカーを使用して同定することができる。
【0136】
M4~M5のマーカー間隔の10cM内のマーカーは、M4~M5の間隔の10cM、もしくは8cM、もしくは5cM、もしくは3cM、もしくは2cM、もしくは1cM、もしくは0.5cM内のマーカーであり得、またはM4~M11の間隔内のマーカーであり得、またはM4~M10の間隔内のマーカーであり得、またはM4~M9の間隔内のマーカーであり得、またはM4~M8の間隔内のマーカーであり得、またはM4~M7の間隔内のマーカーであり得、またはM4~M6の間隔内のマーカーであり得、またはM4~M5の間隔内のマーカーであり得る。M4~M5のマーカー間隔の10cM内のマーカーは、マーカーM4、M5、M6、M7、M8、M9、M10およびM11のいずれか1つを含み得る。
【0137】
CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖している適切なマーカーは、当技術分野で公知の方法を使用して構築することができる。本発明に適切な新規のマーカーは、CrS座位の遺伝情報に基づき構築することができる。このようなマーカーは、抵抗性アブラナ属系統由来のCrS根こぶ病抵抗性座位の配列を、感受性アブラナ属系統における同じ座位の配列と比較すること;感受性アブラナ属系統の対応する座位において生じないCrS根こぶ病抵抗性座位における特異的配列領域を同定することにより構築することができると理解される。このため、CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖した分子マーカーは、CrS根こぶ病抵抗性座位の存在を検出するマーカーである。CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖した分子マーカーは、CrS根こぶ病抵抗性座位を含む系統とそれを欠く系統との間の多型であるが、少なくとも50%の例において単一の遺伝単位としてCrS根こぶ病抵抗性座位を受け継ぐ、CrS根こぶ病抵抗性座位に隣接する配列におけるマーカーでもあり得る。CrS根こぶ病抵抗性座位の存在を検出するための適切なマーカーは、マーカーM4、M5、M6、M7、M8、M9、M10、およびM11のいずれか1つである。
【0138】
CrS根こぶ病抵抗性座位の存在を決定するのに適切なマーカーは、CrS根こぶ病抵抗性座位に連鎖しているマーカー、例えば、表8のマーカー、特に、抵抗性ドナー親と感受性反復親との間の多型であるCrS根こぶ病抵抗性マーカーアレルであり得る。
【0139】
CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物は、マーカーアレルM4/R、M5/R、M6/R、M7/R、M8/R、M9/R、M10/R、およびM11/Rの存在の同定により実施され得ることが理解される。
【0140】
CrS根こぶ病抵抗性座位の不存在は、CrS根こぶ病抵抗性座位の存在に連鎖しているマーカーアレル(CrS根こぶ病抵抗性マーカーアレル)の不存在、例えば、抵抗性系統において検出された多型塩基を含有する表8のCrS根こぶ病抵抗性マーカーアレルの不存在により決定することができる。さらに、CrS根こぶ病抵抗性座位の不存在を決定するのに好適なマーカーは、CrS根こぶ病感受性座位に連鎖しているマーカーアレル(CrS根こぶ病感受性マーカーアレル;すなわち、感受性反復親におけるアレル)であり得る。CrS根こぶ病感受性座位に連鎖しているCrS根こぶ病感受性マーカーアレルの例は、反復親において検出された多型塩基を含有する表8のマーカーアレルである。
【0141】
マーカーアレルの不存在は、抵抗性源由来の明示されたマーカーアレルの不存在を決定することにより、決定することができる。抵抗性源由来のマーカーアレルの不存在は、感受性系統由来の対応するマーカーアレルの存在を決定することにより、決定することができるが、必ずしも決定しなくてもよい。例えば、マーカーアレルM3/R、またはM2/R、またはM1/Rの不存在は、M3/S、またはM2/S、またはM1/Sの存在を決定することにより、決定することができる。
【0142】
本発明に係るマーカーの存在に関する解析は、本発明に係るCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の15~30ヌクレオチド、または15~25ヌクレオチド、または18~22ヌクレオチドの配列からなる第1のプライマー、本発明に係るCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の15~30ヌクレオチド、または15~25ヌクレオチド、または18~22ヌクレオチドの配列に相補的である第2のプライマー(ここで、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子上の前記第1のプライマーと前記第2のプライマーとの間の距離は、1~400塩基、または1~150塩基であり、ここで、第1のプライマーは、CrSコード配列に関して、前記第2のプライマーの上流に位置する)、および前記第1のプライマーと前記第2のプライマーとの間のCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の配列の少なくとも15ヌクレオチド、または少なくとも18ヌクレオチド、しかし25ヌクレオチド以下、または22ヌクレオチド以下と同一であるプローブ(ただし、第1のプライマーの配列、または第2のプライマーの配列、または前記プローブの配列のいずれかは、感受性アブラナ属植物における対応する座位に存在しない)からなる群から選択される第1のプライマーおよび第2のプライマー、および場合により、プローブを用いて行うことができる。前記プローブは、例えば、米国特許第5,538,848号に記載のように標識してもよい。
【0143】
本発明に係るマーカーの存在に関する解析は、CrS配列および感受性アブラナ属系統における対応する座位の両方を認識する上記の第1および第2のプライマー、上記のCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の配列を認識するが、感受性アブラナ属系統における前記第1のプライマーと前記第2のプライマーとの間の配列を認識しない第1のプローブ、ならびに感受性アブラナ属系統における前記第1のプライマーと前記第2のプライマーとの間の配列を認識するが、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子の配列を認識しない第2のプローブ(ここで、第1のプローブの前記標識は、第2のプローブのものと異なる)を用いて行うことができる。
【0144】
本発明に係るマーカーの存在の解析のためのさらに適切なプライマーは、CrS配列および感受性アブラナ属系統における対応する座位の両方を認識する上記の第1のプライマー、CrS配列を認識するが、感受性アブラナ属系統における対応する座位を認識しない第2のプライマー、ならびに感受性アブラナ属系統における対応する座位を認識するが、CrS配列を認識しない第3のプライマーである。前記第2および第3のプライマーは、上記で示したように標識されてもよく、前記第2のプライマーは、前記第3のプライマーと異なる標識を含有してもよい。
【0145】
CrS根こぶ病抵抗性遺伝子に対しておよび感受性アブラナ属系統における対応する座位に対して特異的なPCR産物の同定は、例えば、ゲル電気泳動もしくはキャピラリー電気泳動(例えば、CrS根こぶ病抵抗性座位に対して、およびCrS根こぶ病抵抗性座位から増幅された断片間のサイズ差をもたらす多数の挿入されたもしくは欠失したヌクレオチドを含む感受性アブラナ属系統における対応する座位に対して、および感受性アブラナ属における対応する座位に対して(前記断片がゲル上で視認可能に分離され得るように))の後のサイズ推定により;ゲル電気泳動もしくはキャピラリー電気泳動後の2つの異なる断片の存在もしくは不存在を評価することにより(それにより、CrS根こぶ病抵抗性座位の診断的PCR増幅を、場合により、感受性系統における対応する座位の診断的PCR増幅と別々に行うことができる);増幅された断片の直接シークエンシングにより;または蛍光ベースの検出方法によりなし得る。
【0146】
本発明に係るマーカーの存在に関する解析は、マーカーのすぐ上流の塩基にハイブリダイズするプローブを用いて、次いで、マーカーに相補的である塩基を付加することにより、DNAポリメラーゼがハイブリダイズされたプライマーを伸長させるプライマー伸長を用いて、行うことができる。組み込まれた塩基は標識され、組み込まれた塩基に特異的な標識の検出により、マーカーアレルが決定される。
【0147】
上記の方法または使用のいずれかにおいて、マーカーおよびマーカーアレルは、同じ染色体間隔に局在することができ、他の複数の実施形態および態様に関する上記と同じ群から選択することができる。
【0148】
本明細書に記載のように、染色体A08上に位置する機能CrS遺伝子に連鎖したアレルを含むマーカーのいずれかも提供される。
【0149】
本明細書を通じて記載されるように、CrS抵抗性遺伝子を含む染色体断片も、本明細書において提供される。1つの態様において、染色体断片は、その自然環境から単離される。別の態様において、それは、植物細胞、特にアブラナ属細胞中にある。染色体A08上に位置するCrS抵抗性遺伝子を含む染色体断片の単離された部分も、本明細書において提供される。このような染色体断片は、例えば、コンティグまたはスキャフォールドであり得る。
【0150】
マーカーM4~M5のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含む染色体断片も記載され、前記染色体断片は、マーカーアレルM3/S、もしくはM2/S、もしくはM1/S、またはその組合せをさらに含む。
【0151】
別の実施形態において、ゲノム編集を使用して、CrS根こぶ病抵抗性座位を含まない植物にCrS根こぶ病抵抗性座位を導入することを含む、根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法が提供される。
【0152】
CrS根こぶ病抵抗性座位は、CrS根こぶ病抵抗性座位を含む染色体セグメント、例えば、マーカーM4~M5のマーカー間隔を含む染色体セグメントを、CrS抵抗性座位を含まないアブラナ属植物における対応するゲノムセグメントと交換することにより、導入することができる。あるいは、方法は、CrS抵抗性座位、例えば、マーカーM4~M5のマーカー間隔を含む染色体セグメントの配列を決定すること、CrS抵抗性座位を含まないアブラナ属植物の対応する染色体セグメントの配列を決定すること、およびCrS抵抗性座位を含まない前記アブラナ属植物の前記染色体セグメントの配列を、遺伝子編集を使用して、前記CrS抵抗性座位の前記染色体セグメントの配列と置き換えることを含み得る。配列の置き換えは、染色体断片を交換すること、または配列中に個々の変化を起こさせることによりなし得る。
【0153】
したがって、これらの技術を使用して、CrS座位に対応する既存の座位に対して所望の変化を起こさせることにより、CrS遺伝子を欠く植物をCrS根こぶ病抵抗性植物に変換することができ、あるいは、対応する特異的なゲノム位置において、例えば、本明細書に記載のような、CrS遺伝子の1以上の完全な配列を導入することができる。
【0154】
ゲノム工学である遺伝子編集ともいわれるゲノム編集は、本明細書で使用する場合、DNAが、ゲノム中で挿入、欠失、改変または置換され得るゲノムDNAの標的改変を指す。ゲノム編集は、DNAにおいて所望の変化を導入するために、配列特異的酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ、ニッカーゼ、塩基変換酵素)および/またはドナー核酸(例えば、dsDNA、オリゴ核酸(oligo’s))を使用し得る。特異的なDNA配列を認識するようにプログラムされ得る配列特異的ヌクレアーゼとしては、メガヌクレアーゼ(MGN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびRNA誘導型またはDNA誘導型ヌクレアーゼ、例えば、Cas9、Cpf1、CasX、CasY、C2c1、C2c3、特定のアルゴノートベースの系が挙げられる(例えば、Osakabe and Osakabe, Plant Cell Physiol. 2015 Mar;56(3):389-400; Ma et al., Mol Plant. 2016 Jul 6;9(7):961-74; Bortesie et al., Plant Biotech J, 2016, 14; Murovec et al., Plant Biotechnol J. 15:917-926, 2017; Nakade et al., Bioengineered Vol 8, No.3:265-273, 2017; Burstein et al., Nature 542, 37-241; Komor et al., Nature 533, 420-424, 2016を参照のこと;総て引用することにより本明細書に取り込まれる)。ドナー核酸は、配列特異的ヌクレアーゼにより誘導されたDNA切断の修復のための鋳型として使用することができる。ドナー核酸は、ゲノムDNAへの所望の変化を導入するために、DNA切断の誘導なしでのゲノム編集用のそのようなものとして使用することもできる。
【0155】
本発明の別の目的は、CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するための、M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーの使用を提供することである。本発明の別の目的は、CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するための、マーカーM4、M5、M6、M7、M8、M9、M10および/またはM11の使用を提供することである。
【0156】
CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するために使用することができるマーカーは、マーカーM4、M5、M6、M7、M8、M9、M10もしくはM11またはその任意の組合せであり得る。好ましい実施形態において、CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するために使用することができるマーカーは、マーカーM4、M5、M6および/またはM7であり得る。別の好ましい実施形態において、マーカーM4は、CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するために使用することができる。
【0157】
さらに、左側においてCrS根こぶ病抵抗性座位に隣接するマーカーは、CrS根こぶ病抵抗性座位および低エルカ酸含量の植物を同定するために使用することができる。CrS根こぶ病抵抗性座位および低エルカ酸含量の植物を同定するために使用することができるマーカーは、ドナーアレルを含まないM3;ドナーアレルを含まないM2;またはドナーアレルを含まないマーカーM1であり得る。
【0158】
さらに別の態様において、1以上の除草剤有効成分を含む組成物の塗布により雑草が防除される圃場における、本発明に係る栽培植物の群の保護の方法が提供される。さらなる態様において、前記植物は、グルホシネートもしくはグルホシネートアンモニウムに対する抵抗性を付与する遺伝子、またはグリホサートに対する抵抗性を付与する遺伝子を含み、除草剤は、グルホシネートまたはグルホシネートアンモニウムまたはグリホサートである。
【0159】
本発明に係る植物のハイブリッド種子は、近交親系統の1つが本発明に係るCrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含む、2つの近交親系統を交雑することにより作製してもよい。近交系統は、ホモ接合型のCrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含んでもよい。ハイブリッドは、ヘテロ接合型のCrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含有してもよい。純粋なハイブリッド種子を生産するために、親系統のうちの1つは、雄性不稔であり、かつ他の系統の花粉と受粉する。列で親系統を生育し、雄性不稔親のF1種子の収穫のみを行うことにより、純粋なハイブリッド種子が生産される。雄性不稔親系統を作製するために、EP0,344,029またはUS6,509,516に記載の系を使用してもよく、ここで、植物毒性タンパク質(バルナーゼ)をコードする遺伝子が、タペータム細胞の選択的破壊を保証するタペータム特異的プロモーター、例えば、TA29の制御下で発現する。キメラ遺伝子pTA29:バルナーゼによる植物の形質転換は、花粉形成が完全に防止される植物をもたらす[Mariani et al. (1990), Nature 347: 737-741]。キメラpTA29-バルナーゼ遺伝子を含むセイヨウアブラナ(Brassica napus)植物の葯発達の細胞化学的および組織化学的解析が、De Block and De Brouwer [(1993), Planta 189:218-225]に記載されている。雄性不稔植物の子孫における稔性を回復させるために、雄性不稔植物(MS親)は、発現した場合に雄性不稔性遺伝子の活性を阻害または防止することができる稔性回復遺伝子を有するトランスジェニック植物(RF親)と交雑される[米国特許第5,689,041号;同5,792,929号;De Block and De Brouwer、上記を参照のこと]。良好な農学的性能を有する形質転換体の頻度を高めるための、雄性不稔植物の生産における同時制御遺伝子の使用が、WO96/26283に記載されている。通常、不稔性DNAがバルナーゼをコードしている場合、同時制御DNAはバルスターをコードすることになり、好ましくは、公開PCT特許出願WO98/10081に記載のように、最適化されたバルスター遺伝子が使用される。植物を雄性不稔にするために、異なるプロモーターを使用して、バルナーゼ発現を駆動してもよいことが理解される。同様に、バルスターは、異なるプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sに動作可能に連結されてもよい。
【0160】
雄性不稔植物は、他の技術、例えば、細胞質雄性不稔性/回復遺伝子系を使用して、作製することもできる[例えば、オグラ系、公開米国特許出願第20020032916号、US6,229,072、WO97/02737、US5,789,566、またはUS6,365,798、WO98/54340のポリマ系、またはWO95/09910、US5,644,066のコセナ系]。
【0161】
雄性不稔(MS)親もしくは稔性回復遺伝子(RF)親のいずれか、またはその両方は、本発明に係るCrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含んでもよい。これは、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子をエリートセイヨウアブラナ(B. napus)系統に導入すること、および次いで、雄性不稔性または稔性回復遺伝子を導入することのいずれかにより、達成され得る。あるいは、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子は、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含む植物をMS親またはRF親と交雑することにより、MSまたはRF親系統に直接導入することができる。
【0162】
MS親とRF親との間の交雑から作製されたF1ハイブリッド種子は、次に、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含有することになる。
【0163】
CrS根こぶ病抵抗性座位を含む単離核酸分子が本発明に適切であり、ここで、前記CrS根こぶ病抵抗性座位は、M4~M5の間隔内に局在する。本明細書に記載の単離核酸分子は、マーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まないという特徴をさらに有する。
【0164】
特に、本発明に係る方法およびキットは、CrS根こぶ病抵抗性座位の存在を決定するのに好適である。CrS根こぶ病抵抗性座位の存在は、少なくとも1つの分子マーカーを使用して決定することができ、ここで、前記1つの分子マーカーは、本明細書に定義されるCrS根こぶ病抵抗性座位の存在に連鎖している。
【0165】
本発明に係るマーカーアレルを検出するように特異的に設計されたプライマーおよび/またはプローブを含有するキットが、提供され得る。キットの成分は、品質管理(例えば、種子ロットの純度)、植物材料または限定されるものではないが、食品もしくは飼料製品などの植物材料を含むもしくはそれに由来する材料におけるCrS根こぶ病抵抗性遺伝子の存在または不存在の検出の目的で、特異的に調整することができる。CrS根こぶ病抵抗性遺伝子の接合状態は、CrS座位および感受性アブラナ属系統における対応する座位に特異的であるプライマーおよび/またはプローブの代替セットを使用することにより、決定することができる。
【0166】
CrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含む本発明に係るアブラナ属植物由来の種子を蒔く工程、圃場において植物を生育する工程、場合により、植物に殺真菌剤を噴霧する工程、および収穫する工程を含む、根こぶ病ではないアブラナ属植物を生産するための方法が、本発明に適切である。
【0167】
本発明に係るCrS根こぶ病抵抗性座位は、CrS根こぶ病抵抗性座位における配列を特異的に認識するプライマーを構築することにより、分子マーカーを構築するために使用することができる。
【0168】
本発明に係る植物またはその部分を得ること;および植物またはその部分から食品、飼料、または工業製品を製造することを含む、食品、飼料または工業製品を生産する方法も提供される。さらなる目的において、前記食品または飼料は、油、ミール、穀物、デンプン、小麦粉もしくはタンパク質であり;または前記工業製品は、バイオ燃料、繊維、工業化学物質、医薬品もしくは栄養補助食品である。
【0169】
いくつかの実施形態において、本発明の植物細胞、すなわち、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子を含む植物細胞および本発明の方法に従って作製された植物細胞は、非繁殖細胞であってもよい。
【0170】
本発明に係る得られた植物は、同じ特徴を有するより多くの植物を生産するため、または、同じもしくは関連する植物種の他の変種において、もしくはハイブリッド植物において本発明に係るCrS遺伝子の存在の特徴を導入するために、従来の育種スキームにおいて使用することができる。得られた植物は、繁殖材料を作製するためにさらに使用することができる。本発明に係る植物は、配偶子、種子(破砕種子および種子ケーキを含む)、種子油、胚(接合胚または体細胞胚のいずれか)、本発明の方法により得られた植物の子孫またはハイブリッドを生産するために、さらに使用することができる。本発明に係る植物から得られた種子も、本発明に包含される。
【0171】
本明細書において参照または引用される総ての特許、特許出願、および刊行物または公開開示(インターネット上の刊行物を含む)は、引用することによりその全内容が本明細書に取り込まれる。
【0172】
配列番号1~配列番号22のxx配列を含む、5キロバイト(Microsoft Windows(登録商標)において測定されたサイズ)である「190202_ST25.txt」という名前のファイルに含まれる配列表は、電子提出により本明細書とともに提出され、引用することにより本明細書に取り込まれる。
【0173】
明細書および実施例において、以下の配列が参照される:
配列番号1: マーカー1の5’フランキング配列
配列番号2: マーカー1の3’フランキング配列
配列番号3: マーカー2の5’フランキング配列
配列番号4: マーカー2の3’フランキング配列
配列番号5: マーカー3の5’フランキング配列
配列番号6: マーカー3の3’フランキング配列
配列番号7: マーカー4の5’フランキング配列
配列番号8: マーカー4の3’フランキング配列
配列番号9: マーカー5の5’フランキング配列
配列番号10: マーカー5の3’フランキング配列
配列番号11: マーカー6の5’フランキング配列
配列番号12: マーカー6の3’フランキング配列
配列番号13: マーカー7の5’フランキング配列
配列番号14: マーカー7の3’フランキング配列
配列番号15: マーカー8の5’フランキング配列
配列番号16: マーカー8の3’フランキング配列
配列番号17: マーカー9の5’フランキング配列
配列番号18: マーカー9の3’フランキング配列
配列番号19: マーカー10の5’フランキング配列
配列番号20: マーカー10の3’フランキング配列
配列番号21: マーカー11の5’フランキング配列
配列番号22: マーカー11の3’フランキング配列
【0174】
実施例において特に断りのない限り、総ての組換え技術は、「Sambrook J and Russell DW (編) (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York」および「Ausubel FA, Brent R, Kingston RE, Moore DD, Seidman JG, Smith JA and Struhl K (編) (2006) Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley & Sons, New York」に記載の標準的なプロトコールに従って行われる。
【0175】
標準的な材料および参照は、「Croy RDD (編) (1993) Plant Molecular Biology LabFax, BIOS Scientific Publishers Ltd., Oxford and Blackwell Scientific Publications, Oxford」および「Brown TA, (1998) Molecular Biology LabFax, 2nd Edition, Academic Press, San Diego」に記載されている。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に関する標準的な材料および方法は、「McPherson MJ and Moller SG (2000) PCR (The Basics), BIOS Scientific Publishers Ltd., Oxford」および「PCR Applications Manual, 3rd Edition (2006), Roche Diagnostics GmbH, Mannheimまたはwww.roche-applied-science.com」において見出され得る。
【0176】
以下の実施例におけるPCRプロトコールなどの任意の実験室プロトコールにおける多数のパラメーターは、特異的な実験室条件に調整される必要があり得、類似の結果を得るためにわずかに変更され得ることが理解されるべきである。例えば、DNAの調製のための異なる方法の使用、またはPCR法における他のプライマーの選択は、PCRプロトコールに関する他の最適な条件を規定し得る。しかしながら、これらの調整は、当業者に明らかであり、現行のPCRアプリケーションマニュアルにおいてさらに詳述されている。
【実施例
【0177】
1.根こぶ病抵抗性ドナーの構築
分離合成セイヨウアブラナ(Brassica napus)材料から、根こぶ病抵抗性に関するスクリーニングを、接種材料として根こぶ病圃場混合物(field mix)を使用して、グロースチャンバー内で行った。これにより、抵抗性植物を選抜すること、ならびにDHアプローチによりそこから確立系統が構築されたCrSとして存在する単一優性抵抗性遺伝子を特徴付けし、命名することが可能となった。
【0178】
胞子懸濁液による実生の接種
植物を、1セルあたり1植物で、36セル使い捨てプラスチックトレーに播種し、漏れを防止し、かつ汚染流のリスクを低減するために下に穴がないプラスチック容器に入れた。各トレーにおける空のセルは、植物が根から水を吸い上げられるように、水をトレーに入れるために開けたままにした。植物に対し、播種後5~7日において、実生の根元の実生茎に対して胞子懸濁液を慎重に滴下することにより、胞子懸濁液を接種した。植物を、20℃/16℃(日/夜)の温度および16時間の光周期で、グロースチャンバー内で生育させた。
【0179】
病害評定
根こぶ病の重症度を評価するために、接種後4~6週において、植物を土壌から慎重に除去し、0~3の尺度(Kuginuki et al., 1999; Xue et al., 2008)(0=こぶ化なし、1=数個の小さなこぶ(根の1/3未満での小さなこぶ)、2=中等度のこぶ化(根の1/3~2/3での小~中サイズのこぶ)、および3=重度のこぶ化(根の2/3超での中~大サイズのこぶ))で病害重症度に関して評価した。次いで、Strelkov et al. (2006)により改変されたHoriuchi and Hori (1980)の式に従って、病害指数(ID)を計算した:
【数1】
式中、nは、クラスにおける植物の数であり;Nは、実験単位における植物の総数であり;0、1、2および3は、症状重症度クラスである。評点0および1は抵抗性とみなし、2および3は感受性表現型とみなした。
【0180】
9個の抵抗性植物を選抜し、CrS根こぶ病抵抗性遺伝子に関するDHドナーとして使用した(表1)。
【0181】
【表1】
【0182】
合成セイヨウアブラナ(napus)ドナーは、キャノーラ品質標準(2%未満のエルカ酸(C22:1)、および風乾オイルフリーミール1グラムあたり30マイクロモル未満の総グルコシノレート)を満たさない高エルカ酸および高グルコシノレート含量を有し、これにより、商業的育種にとって直接的に源として使用することが困難となっている。
【0183】
9個の抵抗性CrSドナーに由来する小DH集団を、圃場混合物(field mixture)を含有するグロースチャンバー内で根こぶ病抵抗性に関してスクリーニングし、1個の抵抗性DH植物を抵抗性ドナーとして選抜した。この植物から収穫された種子は、抵抗性ドナー系統を形成した。品質データをこの種子ロットから取った。
グルコシノレート: 90.41μmol/g
C22:1: 11.5%
【0184】
選抜された抵抗性DH植物を、SOSR交雑種に関するドナーとして使用した。WOSRに関しては、ドナーは、同じ最初の分離合成セイヨウアブラナ(Brassica napus)材料に由来する。
【0185】
1.1.根こぶ病(根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae))の異なる病原型に対するドナーの抵抗性スペクトル
ドナー系統の抵抗性は、カナダ(第1項に記載の選抜された抵抗性DH系統を使用)およびヨーロッパ(ドイツ、フランス、オランダおよび英国、グロースチャンバー内の最初の分離合成セイヨウアブラナ(Brassica napus)材料に由来する植物を使用)からの異なる病原型および圃場分離株を特徴とする(表2)。
【0186】
【表2】
【0187】
2.選抜されたドナー系統における抵抗性座位のマッピング集団の構築および分子地図
1に記載の最初の合成セイヨウアブラナ(Brassica napus)分離材料から、抵抗性植物を感受性WOSR系統と交雑させ、F2マッピング集団を作製した。F2集団を使用して、CrSに関する抵抗性座位をマッピングした。279個のF2個体を、グロースチャンバー接種法を使用して分離株CR11に対する抵抗性に関して表現型決定し、遺伝型決定した。
【0188】
単一のQTLが、染色体A08(N08)上で同定された(図1および表3)。
【0189】
【表3】
【0190】
QTLピークマーカーにおいて、3つのジェノタイピングクラスにおけるF2植物の表現型分布を解析した(反復親(AA)またはドナーアレル(BB)のいずれかを有するホモ接合型、およびヘテロ接合型(AB))(図2)。QTLピークマーカーにおいて、ヘテロ接合型植物は、ドナー親アレルに関してホモ接合型植物と類似したレベルの抵抗性を有し、抵抗性が優性であることが示される。
【0191】
3.キャノーラ品質および根こぶ病抵抗性SOSRの構築
図3に示すように、戻し交雑スキームに従って、ならびに等しい割り当てのP3、P5、P6およびP8の混合物に対する抵抗性に関する表現型選抜と組み合わせて、CrS根こぶ病抵抗性を、第1項に記載のDHドナー植物を使用してSOSRに浸透性交雑した。
【0192】
異なる根こぶ病病原型の広域スペクトルに対する抵抗性を有するBC3F3系統が達成された。しかしながら、この系統は、高エルカ酸を有し(表4)、高エルカ酸がCrS根こぶ病抵抗性に連鎖していることが示される。グルコシノレートのレベルは22.4μmol/gであった。
【0193】
【表4】
【0194】
【表5】
【0195】
【表6】
【0196】
ホモ接合型状態のCrS根こぶ病抵抗性を有するBC3F3育種系統を、自然に根こぶ病に感染(病原型組成不明)した圃場において生育させ、抵抗性に関してスクリーニングした。結果を表5および6に示す。
【0197】
エルカ酸に関するフェノタイピングを使用して高エルカ酸リンケージドラッグを除去することにより、ならびに図4におけるスキームに従って、マーカー支援戻し交雑アプローチおよびCrSに関するQTL領域マーカーを使用して、CrSの存在に関して選抜することにより、ならびにP2、P3、P5、P6およびP8を含む単一胞子病原型の混合物を用いた抵抗性スクリーニングにより、さらなる戻し交雑種(BC5F2における)を用いて、キャノーラ品質系統を選抜した。
【0198】
品質パラメーターを決定するために、選抜されたBC5F2植物から次世代BC5F3系統を作製した。BC5F3系統において、グルコシノレートのレベルは12μmol/gであり、エルカ酸のレベルは0.8%であった。このため、高エルカ酸リンケージドラッグは、BC5世代において除去された。
【0199】
新規に作製された根こぶ病抵抗性およびキャノーラ品質SOSR BC5F2は、次に、マーカー支援戻し交雑アプローチ(異なる反復親を使用した)を用いた根こぶ病抵抗性に関する形質浸透性交雑プログラムにおけるドナーとして使用して、図5におけるスキームに従って、より短い浸透性交雑断片を内部に有する抵抗性系統を選抜した。P2、P3、P5、P6およびP8を含む単一胞子病原型の混合物を、戻し交雑世代をフェノタイピングするために使用した。
【0200】
異なる反復親(IL2~IL7)を使用して、6個のBC3F3浸透性交雑系統を構築した。反復親、ドナー系統(抵抗性BC5F2植物に由来するBC5F3)および浸透性交雑系統に関して、抵抗性スペクトルを決定した。表7は、ドナー系統が広域抵抗性を示すこと、および総ての浸透性交雑系統が、ドナー系統と同じ抵抗性のスペクトルを示すことを示している。さらに、浸透性交雑系統IL4から1個のBC3F2植物を選抜した(IL4 BC3F2)。この系統は、IL4 BC3F3植物と異なる個体に由来するものであった。IL4 BC3F2植物は、IL4 BC3F3植物と同じ抵抗性スペクトルを有する。
【0201】
マーカーを使用して、CrS根こぶ病抵抗性に必要な染色体領域を同定した。IL4 BC3F3は、左側におけるCrS根こぶ病抵抗性に必要な染色体領域の境界を定める、最小数のCrSマーカーを左側に含有していた。IL4 BC3F2は、右側におけるCrsS根こぶ病抵抗性に必要な染色体領域の境界を定める、最小数のCrSマーカーを右側に含有していた。BC5F2ドナー植物(表8においてIL1として示される)および浸透性交雑系統に関するマーカーデータを表8に示す。
【0202】
【表7】
【0203】
4.キャノーラ品質および根こぶ病抵抗性WOSRの構築
CrS抵抗性座位を、図6に示されるスキームを用いて、WOSRエリート育種系統にも浸透性交雑した。上記のように、ドナー植物は、SOSR交雑スキームにおいて使用されたドナーと同じ最初の分離セイヨウアブラナ(Brassica napus)材料に由来している。マーカー-ドナーアレル選抜と組み合わせて、根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)分離株CR11を使用して表現型選抜を行った。
【0204】
BC1F1世代において、低レベルのエルカ酸を含有する系統が得られた。
【0205】
BC1F1浸透性交雑系統(根こぶ病抵抗性、低エルカ酸含量)およびBC2F1浸透性交雑系統(根こぶ病抵抗性、低エルカ酸含量)に関するマーカーデータを表8に示す。
【0206】
5.染色体A08上の低エルカ酸含量のCrS抵抗性座位の位置
WOSRおよびSOSRにおける根こぶ病抵抗性座位の浸透性交雑に使用したマーカーを表8に示す。各マーカーに関して、Darmor-bzh(バージョン8.1、Bayer et al., 2017, Plant Biotech J. 15, p. 1602)の公開ゲノム参照の位置およびF2 WOSR遺伝子地図(第2段落に記載)上の遺伝的位置が提供される。F2遺伝子地図上のそれらの遺伝的位置に基づいたマーカー順序を考慮し、表8は、抵抗性座位の左側において、マーカーM1~M3は抵抗性に必要ではないこと(最も近いマーカーM3に関してはIL4を参照のこと)、および右側において、マーカーM6~M11は抵抗性に必要でないこと(最も近いマーカーM6に関してはIL4 BC3F2を参照のこと)を示す。このことは、マーカーM3~マーカーM6のマーカー間隔(または、マーカーM4~マーカーM5のマーカー間隔)は、F2遺伝子地図に基づくと、CrS根こぶ病抵抗性に十分である。
【0207】
F2 WOSR遺伝子地図からのマーカー順序を、Darmor-bzh(v8.1)のゲノム参照上の順序と比較すると、マーカーM9に関して矛盾が存在するようである。表8においてWOSRおよびSOSRにおける異なる戻し交雑種からの全ジェノタイピング情報を提示するために、本発明者らは、F2 WOSR遺伝子地図(WOSR BC1F1およびBC2F1と同じ最初の親を使用して作成された)上の遺伝的位置に従ったマーカー順序を提示した。
【0208】
さらに、表8は、F2遺伝子地図に基づいたマーカーM4~マーカーM11由来の断片と同じ長さの断片が、高エルカ酸を導入せずに根こぶ病抵抗性を得るために使用できることを示す。
【0209】
マーカーM4の左側のRPに変換された(F2集団におけるマーカーの遺伝的位置を使用して)植物は、種子中でのエルカ酸含量が低かった。右側において、マーカーM11は染色体の末端に位置しており、このため、高エルカ酸を付与する領域は、M11の右側に位置することができない。このことは、高エルカ酸を付与するドナーにおける領域は、マーカーM4の左側に位置することを示すものである。低エルカ酸含量の植物を得るためには、マーカーM4の左側の領域は、RPに由来しなければならない。FAE1は、ナタネ(oilseed rape)におけるエルカ酸の生合成における鍵遺伝子であるため、ブラストクエリとしてAccessio No.EU543282を使用して、また、遺伝子位置を同定するためのゲノムの公開構造アノテーション(Bayer et al、上記を参照のこと)を使用して、Darmor-bzhのゲノム上のその位置を確認した。遺伝子の1個のコピーは、染色体A08(BnaA08g11590D2 - Darmor-bzhのゲノム上の位置11,261,862bp~11,263,382bpに対応し得る)上に位置する。
【0210】
CrS根こぶ病抵抗性座位および低レベルのエルカ酸を含むアブラナ属種子は、受託番号NCIMB43341の下で、2019年1月21日にNCIMB(NCIMB Ltd、Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen AB21 9YA、スコットランド、英国)に寄託された。
【0211】
【表8】
【0212】
【表9】
【0213】
6.トランスジェニックアプローチにおけるCRR1a根こぶ病抵抗性遺伝子の検証
Darmor-bzh(バージョン8.1)の公開ゲノム上のCRR1a根こぶ病抵抗性遺伝子(Hatakeyama et al (2013) PLos One 8(1) e54745に記載;Accessio No.AB605024)の位置を同定するために、ブラスト解析を行った。ゲノムの公開構造アノテーション(Bayer et al.、上記を参照のこと)を使用した結果、遺伝子は、染色体A08上の10,531,290~10,532,568bpに局在するBnaA08g10690D2遺伝子に対応し得る。これは、Darmor-bzhゲノム上のこれら2つのマーカーの位置を考慮すると、マーカーM3~マーカーM4のマーカー間隔に対応する(表8を参照のこと)。
【0214】
CRR1a遺伝子(Hatakeyama et al (2013) PLos One 8(1) e54745に記載;Accessio No.AB605024)を、構成的35Sプロモーターの制御下でクローン化し、感受性セイヨウアブラナ(Brassica napus)植物に形質転換した。これらの植物を、温室条件下で根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)分離株CR6に対して曝露(チャレンジ)した。計4つのトランスジェニック系統およびそれらのそれぞれの分離系統を、根こぶ病抵抗性に関して評価した。
【0215】
接種材料は、-20℃で保存された以前の実験からの症候性植物の棍棒状化した根を使用して調製した。40mlの蒸留水中のポリトロンを使用して、症候性根をホモジナイズした。得られたホモジネートをミラクロスに通し、その後、遠心分離して(2,000gで10分間)、できる限り多くの植物デブリを除去した。得られた上清を新しい50mlチューブに移し、静止構造を顕微鏡下で確認した。小さな球状の胞子が観察され、接種材料中の根こぶ病菌(P. brassicae)の存在が確認された。得られた胞子懸濁液または蒸留水(偽接種)を使用した浸根法により、10日齢のトランスジェニック植物の接種を行った。浸根の10分後に、植物を土壌に移し、分離トレー中で維持した。接種60日(dpi)後に、植物症状を評価した。2つの抵抗性育種系統を対照として含めた。偽接種植物のいずれも、60dpi後に根症状を示さなかった。予想されたように、2つの対照育種系統に関しては、症状および棍棒状化した根は得られなかった。
【0216】
CRR1a遺伝子を有するトランスジェニック系統は、症候性の棍棒状化した根を示した。
【0217】
これらのデータは、CRR1a遺伝子は、分離株CR6に対する根こぶ病抵抗性に十分ではないことを示している。
本願は、以下の実施形態を包含する。
[1]種子油中に2%未満のエルカ酸を含み、かつマーカーM4を含む染色体セグメント内にCrS根こぶ病抵抗性座位を含む、アブラナ属植物。
[2]前記CrS根こぶ病抵抗性座位が、マーカーM4~M5のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にある、[1]に記載のアブラナ属植物。
[3]前記CrS根こぶ病抵抗性座位が、マーカーM4~M8のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にある、[1]または[2]に記載のアブラナ属植物。
[4]前記CrS根こぶ病抵抗性座位が、マーカーM4~M11のマーカー間隔を含む染色体セグメント内にある、[1]~[3]のいずれかに記載のアブラナ属植物。
[5]前記植物がマーカーアレルM4/Rを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のアブラナ属植物。
[6]前記植物がマーカーアレルM4/RおよびM5/Rを含む、または前記植物がマーカーアレルM4/R、M5/R、M6/RおよびM7/Rを含む、[1]~[5]のいずれかに記載のアブラナ属記載のアブラナ属植物。
[7]前記植物がマーカーアレルM3/R、もしくはM2/R、もしくはM1/R、またはこれらの組合せを含まない、[1]~[6]のいずれかに記載のアブラナ属植物。
[8]セイヨウアブラナ(Brassica napus)またはブラッシカ・ラパ(Brassica rapa)植物である、[1]~[7]のいずれかに記載のアブラナ属植物。
[9]セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物またはセイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物である、[8]に記載のアブラナ属植物。
[10]前記染色体セグメントがマーカーM4~M7のマーカー間隔を含む、セイヨウアブラナ(Brassica napus)WOSR植物である、[9]に記載のアブラナ属植物。
[11]前記染色体セグメントがマーカーM4~M5のマーカー間隔を含む、セイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物である、[9]に記載のアブラナ属植物。
[12]前記染色体セグメントがマーカーM4~M8のマーカー間隔を含む、セイヨウアブラナ(Brassica napus)SOSR植物である、[11]に記載のアブラナ属植物。
[13]前記染色体セグメントが、受託番号NCIMB43341の下でNCIMBに寄託された参照種子から入手可能である、[12]に記載のアブラナ属植物。
[14]根こぶ病菌(P. brassicae)病原型P2、P3、P5、P6もしくはP8または分離株CR11に対して抵抗性である、[1]~[13]のいずれかに記載のアブラナ属植物。
[15]前記植物が前記根こぶ病抵抗性座位に関してヘテロ接合型である、[1]~[14]のいずれかに記載のアブラナ属植物。
[16]前記植物が前記根こぶ病抵抗性座位に関してホモ接合型である、[1]~[14]のいずれかに記載のアブラナ属植物。
[17]前記植物が、除草剤耐性を付与する遺伝子をさらに含む、[1]~[16]のいずれかに記載のアブラナ属植物。
[18]前記除草剤耐性を付与する遺伝子が、グルホシネートもしくはグルホシネートアンモニウムに対する抵抗性を付与する遺伝子、またはグリホサートに対する抵抗性を付与する遺伝子である、[17]に記載のアブラナ属植物。
[19][1]~[18]のいずれかに記載のアブラナ属植物の種子。
[20]根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法であって、前記方法が、
(a)M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーを有するCrS根こぶ病抵抗性座位を含む少なくとも1つのアブラナ属植物を同定すること、および (b)前記CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を選抜すること
を含む、方法。
[21]M4~M11のマーカー間隔内の少なくとも1つのマーカーを含み、かつマーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まない少なくとも1つのアブラナ属植物を同定することを含む、[20]に記載の方法。
[22]前記アブラナ属植物が、M4~M5のマーカー間隔内のマーカーを使用して同定される、[20]または[21]に記載の方法。
[23]根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法であって、前記方法が、
(a)CrS根こぶ病抵抗性座位を含む第1のアブラナ属植物を第2の植物と交雑させること;および
(b)M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーを含む子孫植物を同定すること
を含む、方法。
[24]M4~M11のマーカー間隔内の少なくとも1つのマーカーを含み、かつマーカーアレルM3/Rを含まない、またはマーカーアレルM2/Rを含まない、またはマーカーアレルM1/Rを含まない子孫植物を同定することを含む、[23]に記載の方法。
[25]ゲノム編集を使用して、CrS根こぶ病抵抗性座位を含まない植物にCrS根こぶ病抵抗性座位を導入することを含む、根こぶ病抵抗性アブラナ属植物を生産する方法。
[26]CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するための、M4~M5のマーカー間隔の10cM内の少なくとも1つのマーカーの使用。
[27]CrS根こぶ病抵抗性座位を含む植物を同定するための、マーカーM4、M5、M6、M7、M8、M9、M10および/またはM11の使用。
[28]1以上の除草剤有効成分を含む組成物の適用により雑草が防除される圃場における、[17]または[18]に記載の栽培植物の群の保護方法。
[29]植物が[18]に記載の植物であり、かつ除草剤がグルホシネートまたはグルホシネートアンモニウムまたはグリホサートである、[28]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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