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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-30
(45)【発行日】2025-02-07
(54)【発明の名称】食品熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 11/00 20060101AFI20250131BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20250131BHJP
【FI】
A22C11/00
A23L13/60 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022524629
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 NL2020050711
(87)【国際公開番号】W WO2021096358
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】2024207
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】520513015
【氏名又は名称】マレル・ファーザー・プロセッシング・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Marel Further Processing B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】フークストラ-スールス,パトリシア
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/142167(WO,A1)
【文献】特表2016-531565(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0150799(US,A1)
【文献】特公昭48-010545(JP,B1)
【文献】特表2009-507488(JP,A)
【文献】特開2017-122574(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00720816(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/083292(WO,A1)
【文献】特開2001-275621(JP,A)
【文献】特開平07-039295(JP,A)
【文献】特開平10-057012(JP,A)
【文献】特開2012-176926(JP,A)
【文献】特開平09-294566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0042361(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 11/00
A23L 13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理装置においてタンパク質を含む外包またはタンパク質とポリマーを含むハイブリッド外包を有する食品を熱処理する方法であって、
前記方法が、
-前記食品を提供することと、
-前記食品を塩溶液にさらすことと、
-前記食品を前記熱処理装置に搬送することと、
-前記食品を熱処理ステップにかけることとを、含み、
前記熱処理ステップが少なくとも
a)前記食品を乾燥させることと、
b)続いて、前記食品をさらに熱処理することとを、含み、
前記方法がさらに
-前記食品を前記熱処理装置に搬送する前に、前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の変性温度を決定することと、
-前記熱処理装置の空気の露点が前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の前記決定された変性温度以下になるように、前記熱処理装置の雰囲気のパラメーターを設定することと、を含み、
前記外包の表面温度が前記熱処理装置の空気の露点に等しい場合に、ステップa)が終了する、方法。
【請求項2】
前記さらなる熱処理ステップb)が、1つまたは複数の後続の熱処理ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の後続の熱処理ステップが、前記食品を加熱すること、部分的に調理すること、調理すること、冷蔵すること、および冷却することから成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記さらなる熱処理ステップb)が、前記食品を部分的に調理することまたは完全に調理することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記さらなる熱処理ステップb)が、同じ熱処理装置または後続の熱処理装置において行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
-前記熱処理ステップの後、前記食品を後熱処理ステップにかけることをさらに含み、前記後熱処理ステップが、前記食品を冷蔵すること、表面処理すること、調理することおよびパックすることから成る群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記食品を表面処理する前記後熱処理ステップが、前記食品を蒸気にさらすことを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記食品を調理する前記後熱処理ステップが、前記食品をパックすることの後に前記食品を調理することを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
雰囲気のパラメーターが、雰囲気の乾球温度、湿球温度、相対湿度、絶対湿度、および気流速度を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の変性温度が、示差走査熱量測定法(DSC)測定を行うことによって決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
雰囲気のパラメーターが、前記熱処理ステップ実行中の前記熱処理装置の変化する雰囲気条件に基づいて、および/または前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の変化する変性温度に基づいて調整される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理装置の前記雰囲気条件が、乾球温度センサー、湿球温度センサー、湿度センサー、および気流速度センサーから成る群から選択される1つまたは複数のセンサーを使用して測定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記食品を提供するステップが、
i)食品生地のストランドと前記食品生地のストランドを収納する外包を共押出食品の流れに共押出しすること、及び
ii)前記共押出食品の流れを、食品の流れを塩溶液にさらすことを含む食品強化ステップにかけること、
のステップを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記食品を提供するステップが、
前記共押出食品の流れをステップii)にかける前に、前記共押出食品の流れを個々の食品に分離すること、好ましくはステップi)で得られた前記共押出食品の流れを分離することを、さらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記食品を提供するステップが、
前記共押出食品の流れをステップii)にかけた後に、前記共押出食品の流れに燻液を塗布することをさらに含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の変性温度を決定するステップが、前記共押出食品の流れをステップii)にかけた後、好ましくは前記共押出食品の流れに燻液を塗布することの後に行われる、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記塩溶液が乳酸カリウムを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置において食品を熱処理する方法に関する。特に、本発明は、熱処理装置においてタンパク質を含む外包(casing)、またはタンパク質とポリマーを含むハイブリッド外包を有する食品を熱処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンなどのタンパク質を含む外包層を有する食品は、一般に知られており、とりわけ、特許文献1に記載されている。この文書は、食品生地と該食品生地を封入する外包の共押出しストランドを有する食品の共押出食品の流れへの共押出について説明している。押出しに続いて、被覆されたストランドは、通常強化目的のために凝固浴に導かれる。凝固溶液の影響を受けて、タンパク質は凝固および/または沈殿し、共押出食品の流れの外包層が強化される。このようにして、コラーゲンなどのタンパク質の強力な外包層で少なくとも部分的に被覆された食品生地のストランドが形成される。
【0003】
既知の方法の欠点は、外包材料の特性、従って食品の加工性、例えば個々のソーセージの流れを含む共押出食品の流れ、食品のストランドまたは互いに接続された(ヘッド-テール接続)ソーセージの流れが、食品の処理中に変化する可能性があることである。外包材料の特性の変化を予測することは困難である。さらに、外包材料の特性の変化は不可逆的である。従って、ひとたび外包材料の特性が変化してしまうと、食品を加工して最終的な食品、例えば許容可能な品質を有するソーセージを得ることができなくなる。
【0004】
細長い食品の共押出用の外包材料としてタンパク質または粘性ゲル化剤を含むタンパク質を使用する既知の方法の特定の欠点は、最終食品の制御されていない特性(特に表面状態)である。食品生地のストランドと外包材料の共押出後にプロセス設定を変更することにより、タンパク質外包材料の特性が不可逆的に変化し得ることが観察されている。この変化としては、食品の表面の滑らかさに関する外包材料の表面特性、例えば食品の「見て感じる」変化を挙げることができる。後続の加工ステップで共押出後にプロセス設定、例えば食品の塩容液付け(brining)、分離、圧着(crimping)、燻し、乾燥、包装、調理および/または冷蔵(chilling)などを変更することにより、得られる食品に、通常望まれる滑らかで見栄えが良く安定した表面とは異なり、好ましくない表面状態、例えば粘着性のある、一貫性のない、および/または汚れた表面などの制御されない変化をもたらす可能性がある。こうした表面特性の制御されていない不可逆的な変化は、食品の加工性を低下させ、その結果、食品(または食品の完全な流れ)を廃棄しなければならない場合さえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】オランダ特許第6909339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を考慮して、タンパク質を含む外包、またはタンパク質とポリマーのハイブリッド外包を有する食品の製造の制御を強化する必要がある。
【0007】
さらに、タンパク質を含む外包、またはタンパク質とポリマーのハイブリッド外包を有する食品の製造の制御を強化する必要があるにもかかわらず、天然の外包、例えば羊の外包などの自然のままの「噛み応え」に非常に似ている食品を製造することが望まれている。
【0008】
さらに、食品の熱処理時間、特にタンパク質を含む外包、またはタンパク質とポリマーのハイブリッド外包を有する食品を乾燥させるために必要な乾燥時間を、食品の製造/加工中の食品の特性、および最終食品の特性、すなわち食品の製造方法の完了後に悪影響を与えることなく短縮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の特定されたニーズおよび要求の1つまたは複数を満たすために、本発明は、熱処理装置においてタンパク質を含む外包、またはタンパク質とポリマーを含むハイブリッド外包を有する食品を熱処理する方法であって、前記方法が、
-前記食品を提供することと、
-前記食品を塩溶液(brine solution)にさらすことと、
-前記食品を熱処理装置に搬送することと、
-前記食品を熱処理ステップにかけることとを、含む方法を提供する。
本発明の熱処理ステップは、複数の別個の熱処理ステップを含み得るが、本発明の方法については、前記熱処理ステップが少なくとも
a)前記食品を乾燥させることと、
b)続いて、さらに前記食品を熱処理することとを、含む。
本発明の方法はさらに
-前記食品を前記熱処理装置に搬送する前に、前記食品の前記外包に含まれるタンパク質の変性温度を決定することと、
-前記熱処理装置の空気の露点が、前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の前記決定された変性温度以下になるように、前記熱処理装置の雰囲気のパラメーターを設定することとを、含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の一般的な方法を示すフローチャートである。
図2図2は長時間塩容液付けステップにおいて乳酸カリウムを使用した変性温度を示すグラフである。
図3A図3Aは長時間塩容液付けステップにおいて硫酸マグネシウムを使用した変性温度を示すグラフである。
図3B図3Bは長時間塩容液付けステップにおいて塩化ナトリウムを使用した変性温度を示すグラフである。
図3C図3Cは長時間塩容液付けステップにおいてリン酸二カリウムを使用した変性温度を示すグラフである。
図4A図4Aは熱処理における温度と時間の関係を示す第一試験のグラフである。
図4B図4B図4Aのグラフで使用されたデータとパラメーターの表を提供する。
図4C図4Cは第一試験で使用されたデータとパラメーターから得られた食品の例示的な図である。
図5A図5Aは熱処理における温度と時間の関係を示す第二試験のグラフである。
図5B図5B図5Aのグラフで使用されたデータとパラメーターの表を提供する。
図5C図5Cは第二試験で使用されたデータとパラメーターから得られた食品の例示的な図である。
図6A図6Aは熱処理における温度と時間の関係を示す第三試験のグラフである。
図6B図6B図6Aのグラフで使用されたデータとパラメーターの表を提供する。
図6C図6Cは第三試験で使用されたデータとパラメーターから得られた食品の例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
食品の乾燥とそれに続く食品のさらなる熱処理は連続したステップであり、外包の表面温度が熱処理装置の空気の露点に等しい場合、食品を乾燥させるステップは終了する。少なくとも食品の乾燥ステップの間に、その表面温度および食品の外包に含まれるタンパク質の変性温度に基づく露点に基づいて乾燥ステップの終了をいっそうはっきりといっそう正確に定義することができるように、熱処理装置に入る前、好ましくは直前に決定された熱処理装置の雰囲気のパラメーターが選択される場合、上記で特定されたニーズおよび要望が満たされることが見出された。
【0012】
熱処理装置の空気の露点が、食品の外包に含まれるタンパク質の決定された変性温度以下になるように、熱処理装置の雰囲気のパラメーターを選択し、食品の表面温度が雰囲気の露点温度に等しくなる時までに、大幅な温度変化、すなわち熱処理装置の温度上昇が行われることによって、外包に含まれるタンパク質の物理的状態は、食品の製造中に外包の表面の滑らかさを制御できるように、持続可能で確実かつ安定的な方法で制御されることが見出された。特に、食品全体のさらなる熱処理中に、より厳しい熱処理条件に入る前に熱処理の乾燥段階を終了させる瞬間を制御することによって、食品を乾燥させるための合計時間、従って食品自体を熱処理するための合計時間は、当該技術分野で説明されている通常の乾燥方法と比較して大幅に短縮できることを見出した。さらに、食品自体を熱処理するための合計時間は、本発明の方法を使用することによって当該技術分野で説明されている通常の乾燥方法と比較して大幅に短縮できるが、最終食品の自然な「噛み応え」および製品の挙動は、天然外包、例えば羊の外包などを含む食品の「噛み応え」、「見た感じ」および製品挙動により類似していることがわかった。
【0013】
本発明の方法を考慮すると、表面温度が乾燥段階からさらなる熱処理段階(例えば、食品を部分的に加熱するまたは完全に加熱する)への転移点で露点温度に等しい(この露点温度は外包に含まれるタンパク質の変性温度に基づいている(すなわち、以下である))熱処理ステップを提供することによって、タンパク質の物理的状態が、より持続可能で確実な方法で制御され、すなわち、魅力ある特性、例えば、滑らかで、べたつかず、汚れのない表面を備え、優れた食感特性を有する乾燥食品を製造する。
【0014】
タンパク質の物理的状態に関して、そのような物理的状態には、3つのタイプの物理的状態、すなわち、結晶相、らせん相、およびランダムに巻かれた相を挙げることができることに留意されたい。らせんまたは結晶タンパク質がランダムに巻かれた形状を有するタンパク質に変質する場合、外包特性の不可逆的な変化が予想されることが見出された。らせんまたは結晶タンパク質を含む食品の外包を構成するタンパク質は、滑らかで魅力ある外観および/または安定した表面によって特徴付けられるのに対して、ランダムに巻かれた形状のタンパク質を含む食品の外包を構成するタンパク質は、より粘着性のある、一貫性のない、および/または汚れた表面を示す。結果として、本発明の方法の一実施形態では、タンパク質は、らせんおよび/または結晶形である。
【0015】
本発明の一実施形態において、本発明の方法の実行中、タンパク質の物理的状態は、熱処理ステップ中、好ましくは少なくとも熱処理ステップの乾燥段階中に、らせんおよび結晶形との間で変化し得る。タンパク質のらせんまたは結晶の物理的状態は、食品の外包特性にプラスの影響を与えるため、タンパク質の実際の状態は、その2つの状態の間で変化し得る。しかしながら、タンパク質の物理的状態は、食品の形成(例えば、共押出)後に変化しないことが特に好ましい。得られた食品の同じ製品特性、例えば表面の滑らかさ、表面の色、調理特性などを維持するために、食品の共押出および任意のさらなる加工ステップ中にタンパク質の同じ物理的状態を維持することは特に有利である。さらに、本発明の方法全体を通して結晶タンパク質を用いて、特に良好な結果が得られる。結晶タンパク質を含む外包を提供することによって、食品の外包は最適な熱安定性を有する。つまり、例えば、乾燥段階中の外包の「融解」などの望ましくない表面特性を有さずに加工できる製品を提供する。
【0016】
外包に含まれるタンパク質の物理的状態は、pH、温度、使用される塩の種類、および塩溶液(例えば、塩溶液および/または燻液)の塩濃度などの共押出食品の加工中のさまざまなパラメーターを用いて制御できる。外包に含まれるタンパク質の物理的状態を制御するためのパラメーターを考えると、パラメーター温度は大抵既定の、制御しにくく、徐々に変化するパラメーターであることに留意されたい。また、共押出食品の加工中に塩溶液で使用される塩の種類と塩濃度は、大抵既定のパラメーターであり、プロセスの過程で徐々に変化できるだけである。塩の種類または塩濃度を大幅に変更することは、大抵共押出食品の連続生産が中断され、オペレーターが共押出食品を加工するための後続の連続手順のパラメーターを設定できるメンテナンス手順中にのみ可能である。
【0017】
共押出食品を加工する方法の各段階(または少なくとも臨界段階)の間にpHを制御することにより、外包に含まれるタンパク質の物理的状態を持続可能かつ包括的な方法で制御できることが見出された。重要なステップとしては、食品が事前に強化されている(短時間塩容液付け)、強化されている(長時間塩容液付け)、および/または着色されている(外包に燻液を塗布する)プロセスステップを挙げることができる。さらに、別の重要なステップとしては、外包自体の押出、すなわち、外包として食品生地のストリングに適用して本発明の共押出食品を形成する前、適用中、または適用直後にコラーゲンなどのタンパク質を含む粘性ゲル化剤のpHを制御することを挙げることができる。
【0018】
さらに、本発明の食品を製造する方法全体を通して外包のpHを制御することにより、他のパラメーターはあまり気に掛けなくてもよく、より広い範囲内で変化し得ることが見出された。従って、本発明は、熱処理装置の雰囲気の開始条件が、本発明の熱処理ステップを開始する前にさらに大幅な調整を必要としない、すなわち、費用のかかる雰囲気制御手順、例えば食品の熱処理を開始する前に熱処理装置の雰囲気の湿度低減などを行う必要がない方法を提供する。熱処理装置の雰囲気の湿度および温度に関係なく、本発明の方法は、最適な加工性と安定性を備えた食品を実現するために、熱処理装置の雰囲気の、例えば、空気の速度を調整することによって、パラメーターを調整するための確実で安定的な方法を提供することが見出された。また、外部の影響に起因しておよび/または食品の濃縮および乾燥中に熱処理装置の雰囲気に影響を与える食品に起因して、熱処理装置の雰囲気条件を(継続的に)変更することによって、本発明の熱処理ステップの実行中に熱処理装置の雰囲気条件を制御および維持する必要もなく同じ食品特性を熱処理装置の雰囲気のパラメーターを(継続的に)調整することによって得ることができる。
【0019】
オペレーターは、外包に含まれるタンパク質の決定された変性温度以下の露点温度を有する雰囲気になるように熱処理装置の雰囲気を調整するためのいくつかのパラメーターを有するが、当業者である操作者は、タンパク質を含む外包、またはタンパク質とポリマーのハイブリッド外包を有する、良好な製品特性と継続的な加工性を備えた食品を提供するために、既定の雰囲気条件に基づいて雰囲気のパラメーターを計算および調整できる。さらに、露点温度がタンパク質の決定された変性温度を超えないように、オペレーターが雰囲気のパラメーターを選択しなければならないことが分かったことに留意されたい。露点温度が外包に含まれるタンパク質の決定された変性温度を超えた状況では、外包内のタンパク質のゲル化(「融解」とも呼ばれる)の発生が大幅に増加し、制御されていない、費用効率が悪く、時間効率の悪い熱処理方法になる。
【0020】
本発明のタンパク質は、共押出後にゲル化(凝固および/または沈殿;凝固剤の存在下であるかどうかにかかわらず)によって外包を形成できる食用タンパク質から成る群から選択され得る。特に好ましいタンパク質はコラーゲンを含む。本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、単一のタイプのタンパク質を意味する場合があるが、異なるタイプのタンパク質を含む場合もあることにさらに留意されたい。その結果として、タンパク質が複数のタイプのタンパク質を含む外包の場合、本明細書で使用される変性温度は、外包が単一のタイプのタンパク質を含む場合に測定される可能性が高い変性温度点ではなく、変性温度範囲を意味する場合がある。
【0021】
本発明のハイブリッド外包に含まれるポリマーは、ハイブリッド外包に存在するタンパク質と組み合わせて外包を形成できる食用ポリマーから成る群から選択され得る。好ましくは、ポリマーは、多糖類から成る群から選択される。好ましいポリマーは、アルギン酸塩および/またはセルロースを含み得る。
【0022】
すでに上記で示したように、本発明の方法の熱処理ステップは、複数の別個の処理ステップを含み得る。上記で特定された乾燥ステップに加えて、さらなる熱処理ステップは、1つまたは複数の後続の熱処理ステップを含み得る。例えば、1つまたは複数の後続の熱処理ステップは、食品を加熱すること、部分調理すること、調理すること、冷蔵すること(chilling)、および冷却すること(cooling)から成る群から選択できる。さらなる熱処理ステップは、同じ熱処理装置で実行でき、この熱処理装置は、乾燥ステップも実行できる。しかしながら、異なる熱処理ステップ間で温度が著しく変化する可能性があることを考えると、さらなる熱処理ステップは、後続の熱処理装置で、または少なくとも本発明の方法で定義される同じ熱処理装置の別個の区画で実行できる。
【0023】
本発明の特に好ましい実施形態では、さらなる熱処理ステップは、食品の調理を含み得る。本発明の乾燥プロセスを提供し、食品の外包に含まれるタンパク質の変性温度に基づいて乾燥プロセスの終点を定義することによって、乾燥段階から調理段階への転移が明確な転換点として特定できることがわかった。この転換点では、熱条件が厳密に変更される。それは、食品の外包の製品特性に影響を与えることなく乾燥段階から厳しい加熱特性を有する調理段階までである。
【0024】
本明細書で使用される時、用語「加熱する(heating)」は、食品生地は調理されていないが、外包が凝固するプロセスステップを意味する。
【0025】
本明細書で使用される時、用語「部分的に調理する(partially cooking)」は食品生地が部分的にのみ調理される、すなわち、まだすぐには食べられない食品をもたらし、例えば、さらなる多段階後処理ステップで、または食品を食べるための準備中にエンドユーザーによって、さらに調理する必要があるプロセスステップを意味する。
【0026】
本明細書で使用される時、用語「調理する(cooking)」は、食品生地が調理され食用の食品になるプロセスステップを意味する。調理ステップを経た食品の別の用語は「完全調理(fully cooked)」食品である。国ごとに異なる法律に応じて、用語「完全調理された」は異なる解釈の対象となる。この点で、「完全調理された」食品とは、食品生地のコアの温度が、食品が製造されている国の立法者によって定義される温度に達した食品であることを留意されたい。例えば、オランダでは「完全調理された」食品は、少なくとも72℃の食品生地のコアの温度によって定義される。
【0027】
本明細書で使用される時、用語「冷却する」は、食品の温度を通常約10℃~15℃の温度を有する水道水または冷気などの冷却媒体を使用して低下させるプロセスステップを意味する。
【0028】
本明細書で使用される時、用語「冷蔵する」は、食品が、意図的に冷却された媒体(例えば、水)である冷蔵媒体にさらされるプロセスステップを意味する。
【0029】
本発明の方法は、
-熱処理ステップの後、食品を後熱処理ステップにかけるステップをさらに含み得る。
【0030】
こうした後熱処理ステップは、食品を冷蔵すること、表面処理すること、調理することおよびパックすることから成る群から選択できる。別の後熱処理は、食品を調理するステップ、特に食品をパックした後に食品を調理するステップを含み得る。こうしたいわゆる「クック・イン・パック」方法は、食品パッキングと完全調理を組み合わせることで特に有益であることがわかっている。後熱処理ステップとしては、食品を蒸気にさらすことによって食品の表面処理すること、すなわち食品の流れの表面の抗菌処理を挙げることができる。
【0031】
熱処理装置の雰囲気のパラメーターは、本発明の熱処理ステップ中に食品に乾燥段階を適用するのに適している多種多様な可能性のある関連パラメーターから選択できる。しかしながら、選択すべき最も適しているパラメーターとしては、乾球温度、湿球温度、相対湿度、絶対湿度、および雰囲気の気流速度を挙げることができる。
【0032】
食品の外包に含まれるタンパク質の変性温度は、好ましくは示差走査熱量測定法(DSC)測定を実行することによって決定することができる。さらに、外包に含まれるタンパク質の物理的状態は、外包の等電点電流を測定することによって監視できる。別法として、外包に含まれるタンパク質の物理的状態は、適当なpH指示薬を使用して外包のpHを測定することによって監視できる。例えば、適当なpH指示薬は、メチルレッドブロモクレゾールグリーン指示薬であってよい。
【0033】
雰囲気のパラメーターは、熱処理ステップを実行する前に、熱処理装置の雰囲気条件に基づいて事前に決定できる。加えて、または代わりに、雰囲気のパラメーターは、熱処理ステップの実行中、好ましくは食品の濃縮中に、熱処理装置の雰囲気条件の変化に基づいて調整できる。さらに、雰囲気のパラメーターは、本方法の実行中に食品の外包に含まれるタンパク質の変化する変性温度に基づいて調整できる。こうした変化は、熱処理用に提供される食品を調製する際の任意の前熱加工ステップの変化する条件によって引き起こされ得る。
【0034】
熱処理装置の雰囲気条件は、好ましくは、雰囲気の関連するパラメーター、すなわち乾球温度、湿球温度、相対湿度、絶対湿度、および気流速度を測定するのに適した1つまたは複数のセンサーを使用することによって測定される。こうした乾球温度センサー、湿球温度センサー、湿度センサー、および気流速度センサーは、パラメーターを(任意選択で自動的に)調整するために使用できる。
【0035】
本発明の方法で提供される食品は、食品生地、およびタンパク質を含む外包を有する外包、またはタンパク質とポリマーとのハイブリッド外包外包から選択される外包材料の共押出によって製造される食品であり得る。本発明の好ましい一実施形態では、食品を提供するステップは、
i)食品生地のストランド、および該食品生地のストランドを包む外包を共押出食品の流れに共押出し、
ii)前記共押出食品の流れを食品強化ステップにかけるステップであって、該食品強化ステップは、食品の流れを塩溶液にさらすステップを含む。
【0036】
加えて、食品を提供するステップはさらに、
-共押出食品の流れをステップii)にかける前に、共押出食品の流れを個々の食品に分離する、好ましくはステップi)で得られた共押出食品の流れを分離するステップを含み得る。さらに、食品を提供するステップは、
-共押出食品の流れをステップii)にかけた後、共押出食品の流れに燻液を塗布するステップを含み得る。
【0037】
本発明の一実施形態では、食品の外包に含まれるタンパク質の変性温度を決定するステップは、共押出食品の流れをステップii)にかけた後、好ましくは共押出食品の流れに燻液を塗布するステップの後に行うことができる。
【実施例
【0038】
食品は、図1に記載されている概略プロセスによって調製した。図1で提供された概略プロセスでは、肉1とコラーゲンゲル4をそれぞれ肉スタッファー2とコラーゲンスタッファー3に提供した。続いて、コラーゲン外包によって包まれた肉生地の食品ストリングを押出すために、肉1およびコラーゲンゲル4を、肉スタッファー2およびコラーゲンスタッファー3によって押出機5に提供する。押出された食品ストリングを圧着機7に提供する前に、食品ストリングの表面に塩(すなわち、飽和塩化ナトリウム溶液を含む塩水)6を噴霧し、圧着することによって食品ストランドを個々のリンクに変形する前に、外包を初期硬化させた。食品ストリングを個々の食品(ソーセージ)に圧着した後、外包のpHを、pH5を上回り(コラーゲンの等電点を上回り)かつpH約7.5でのコラーゲンの挙動における第2の臨界点未満に上げるために、食品を短時間塩容液付けステップ8(飽和塩化ナトリウム溶液を使用して2秒)および長時間塩容液付けステップ9(52%乳酸カリウム溶液を使用して30~60秒)にかけ、それにより外包のコラーゲン構造を望ましい物理的状態にした。長時間塩容液付けステップ9の後に、食品の外包に燻液を塗布するステップ10が続く。図1では視覚化されていないが、任意選択で、ステップ10を実行する前に、食品の外包から過剰の塩水を除去するために食品を水で(短く2秒間)すすいでもよい。代わりに、または加えて、こうしたすすぎステップは、燻液ステップ10を行った後に行うことができる。続いて、ステップ11において、食品をアルカーバッチハウス(Alkar Batch house)12に配置するための回転バスケットを有するカートに搬送した。ステップ12で本発明の方法を実行した後、食品を4℃の冷蔵庫内のトレイ上で冷却し(ステップ13)、続いてパックした14。
【0039】
ステップ12で最適な雰囲気条件、つまり食品の乾燥と任意選択の調理を適用するために、示差走査熱量測定法(DSC)を使用して食品のコラーゲン外包の変性温度を測定した(ステップ9の塩容液付け後)。このようなDSC測定の例を図2に示す。図2に提供された結果を考慮して、熱処理装置の空気の露点温度(つまり、ステップ12の雰囲気)を47.9℃に設定した。
【0040】
以下の3つの例示的な試験で考察するように、熱処理は、別法では雰囲気ステップにおける熱処理の露点温度対湿度の時間ステップの増加を含み得る。初期および段階的露点温度の上昇、並びに食品が時間ステップで露点温度にさらされる時間に応じて異なる結果が生じることがわかり、それによって、雰囲気ステップにおいて、熱処理装置の空気の露点が食品の外包に含まれるタンパク質の決定された変性温度以下であることを確実にする。
【0041】
図2で提供される変性温度(長時間塩容液付けステップ9として乳酸カリウムを使用)を考えると、食品の最適な熱処理ステップ(すなわち乾燥すること)を提供するために、塩容液付けステップ9で異なる塩を使用すると、異なる変性温度、従って異なる露点温度が生じることがさらにわかった。さまざまな変性温度の例を図3に示しており、DSCダイアグラムは、次の塩溶液を含むさまざまな長時間塩容液付けステップ9について提供している:
- 硫酸マグネシウム(図3A):40.2℃
- 塩化ナトリウム(図3B):42.1℃
- リン酸二カリウム(図3C):41.5℃
【0042】
食品を乳酸カリウム塩溶液にさらすことで、少なくとも一つにはコラーゲンの変性温度が他の塩容液付け溶液の例よりも高いことに起因して、上記の他の塩溶液よりも有利にコラーゲンを調製することがわかった。具体的には、コラーゲンを乳酸カリウム塩溶液にさらすことで、雰囲気ステップ12の前にコラーゲン外包を乾燥させ始める。乳酸カリウム塩溶液は、コラーゲン外包から水を抽出する浸透プロセスを開始し、コラーゲン外包のpHレベルをコラーゲン外包の適当な等電点に管理することによってコラーゲン外包を事前調整し、雰囲気ステップ12時に水を適切に放出する。こうした利点は、乾燥プロセス中にコラーゲン外包が食品によりよく付着していることに起因し得、乾燥中のコラーゲン外包のふくれのリスクを低減し得る。
【0043】
図2によって証明されるように、少なくとも一部は雰囲気処理の前にコラーゲン外包を乳酸カリウム塩溶液にさらすことによって提供された、他の塩溶液に関連する3A-3Cと比較するとより高い変性温度に起因して、露点、湿度、および時間ステップと組み合わせて優れた外包を実現できることがわかった。
【0044】
試験1
図4Aは、空気の露点の熱処理装置における雰囲気のパラメーターと食品生地の温度との関係を示す第一試験を示しており、より具体的には、食品の表面温度と食品の外包に含まれるタンパク質の変性温度に対する露点温度とに基づいて定義される。乾球温度は時間の経過とともにわずかに調整されるため、食品は指定されたコア温度(この例では74℃)で完全に調理される。全調理期間中、気流速度を一定に維持する。露点温度が上昇するにつれて熱処理の湿度(X)が上昇し、それによって熱処理における湿度を上昇させる。
【0045】
図4Aのグラフは、タンパク質の開始または変性温度を示している。乾球温度、雰囲気湿度および露点温度、並びに気流速度のパラメーターを設定する目的は、熱処理装置の空気の露点が食品の外包に含まれるタンパク質の決定された変性温度以下であるように、少なくとも雰囲気湿度と露点温度をゆっくりと上昇させることである。
【0046】
ひとたび開始または変性温度に達すると、食品生地の温度が適切な調理済みコア温度に上昇するときに、外包にふくれを生じることなくコラーゲン外包の食品生地への良好な付着を維持し確かなものにすることによって、食品生地の調理プロセスが進行できる。コラーゲンにおいては開始温度または変性温度に達しているので、コラーゲン外包は十分に乾燥しており、食品をより高い温度にさらしても外包の付着性および外観を損なうことなく、食品生地をさらに調理できる。しかしながら、上記で定義したようにパラメーターが満たされない場合、外包に欠陥のリスクがあり、適当な仕様に調理するための食品生地のより積極的な熱処理に耐えることができない。
【0047】
従って、特に、パラメーターが開始温度未満の初期段階では、露点温度と湿度を十分に低く保ち、コラーゲンが食品生地に付着し、開始温度まで十分に乾燥できるようにすることが不可欠であり、実際、熱処理装置の空気の露点は食品の外包に含まれるタンパク質の決定された変性温度以下である。
【0048】
図4Aは、食品が1キログラムの空気に対して5グラムの水(5g/kg)の初期乾燥雰囲気湿度にさらされるシナリオを示している。露点温度は3.9℃とかなり低く、湿度と露点温度の両方が比較的長期間持続される。このシナリオでは、露点温度は食品の表面温度より低く維持されるが、湿度と露点温度をかなり持続的長時間(すなわち40分)低い点で維持する必要があるため、時間と費用のかかるプロセスである。
【0049】
図4Aおよび4Bは、3つの時間ステップにわたる乾球温度、および露点温度に対する食品生地の温度の関係を記載しており、これは各時間ステップで調整される。長時間にわたって低露点温度で開始し、露点温度を表面温度以下で維持することによって、この例では、40分から成る第1ステップによって、外包に含まれるタンパク質の物理的状態が魅力ある特性を備えた乾燥食品を提供する。第1試験には、各ステップで乾球温度をわずかに調整する2つの後続のステップがあるが、露点温度は第2ステップで大幅に上昇し、第3ステップではそれほど上昇せず、第2および第3の時間増分は第1ステップの継続時間より短い。第1試験は、食品が完全に調理された状態に達するまでに約68分の処理時間がかかり、21.5%の歩留まり損失が含まれる。
【0050】
食品が描かれた図4Cで観察されるように、タンパク質を含む外包またはタンパク質とポリマーのハイブリッド外包を有する食品では、タンパク質の物理的状態を第一試験のパラメーターに従ってより持続可能で確実な方法で制御できることを予想外に見つけ出し、当該食品は、食品生地を完全に調理している上述の魅力ある特性を有している。具体的には、露点温度を外包に含まれるタンパク質の変性温度以下に維持するという第一試験における重要なパラメーターによって、こうした魅力ある特性を有する食品が可能になる。
【0051】
試験2
図5Aは、空気の露点の熱処理装置における雰囲気のパラメーターと食品生地の温度との関係を示す第二試験を示しており、より具体的には、食品の表面温度と、熱処理装置に入る前、好ましくは直前に決定される食品の外包に含まれるタンパク質の変性温度とに基づいて定義される。第一試験と同様に、乾球温度を時間の経過とともに上昇するように、通常は食品がコア温度(この例では74℃)に近いまたはそれを上回る温度で完全に調理されるように調整する。全調理時間中、気流速度を一定に保つ。
【0052】
図5Aおよび5Bは、露点温度を食品の表面温度未満に維持しながら、乾球温度を第一試験よりも頻繁に調整することが有利であることを例示している。この例では、上記第一試験で考察した露点と表面温度との間の重要な関係を維持しながら、より頻繁な時間ステップを有し、それに応じて露点温度の段階的な上昇との関連で乾球温度を調整することによって、完全に調理された状態に到達するための全体のプロセス時間が68分と比較して40分に有利に短縮され、歩留まり損失が18.2%に減少する。
【0053】
露点温度と湿度は、開始温度または変性温度より低いしきい値未満を維持しながら、5分ステップまたは増分で上昇することが図5Aおよび図5Bで観察される。もちろん、この方法は5分ステップに限定されないが、露点温度および湿度の上昇と組み合わせた頻繁な時間ステップを有利に含むことで、プロセスを第一試験パラメーターよりも短縮できる。時間ステップとそれに対応する露点温度と湿度の調整はより頻繁になされるが、こうした調整は上記指定されたしきい値未満であり、少なくとも開始温度を損ねることなくコラーゲン中の水の蒸発を促進するのに十分乾燥した雰囲気になる。ひとたび開始温度に達すると、より多くのエネルギーを導入して、食品生地を仕様に合わせてさらに調理できる。
【0054】
食品が描かれている図5Cで観察されるように、全体の調理時間と歩留まり損失が減少した一方で、タンパク質を含む外包またはタンパク質とポリマーのハイブリッド外包を有する食品では、タンパク質の物理的状態を第一試験のパラメーターに従って、より持続的にかつ確実に制御できることを予想外に見つけ出し、当該食品は、食品生地を完全に調理している上述の魅力的な特性を備えている。具体的には、湿度と露点温度を、外包に含まれるタンパク質の変性温度以下により頻繁な時間増分で維持するという第2試験の重要なパラメーターによって、プロセスをより速くより経済的に実現可能にしながら、食品はこうした魅力的な特性を有する。
【0055】
試験3
6A~6Cは、露点温度を上昇させて食品の表面温度を上回ったときに発生するリスクを例示している。示されるように、5分増分の最初の4つの時間ステップで、露点温度が食品の表面温度をはるかに超えて上昇し、それによって食品の表面温度の所定の有利で予想外のしきい値を行き過ぎる。
【0056】
第1ステップは、比較的乾燥した、乾球温度が77℃とはるかに高いのに比較して、露点温度25℃、湿度20g/kgで開始したが、食品の表面温度の開始温度は約8℃である。これにより、露点と湿度の上昇が速すぎる環境が作成され、外包が食品生地に付着しないリスクがある。時間の経過とともに、食品が開始温度と上昇した表面温度に達する前に、すぐにより厳しい雰囲気条件の軌跡にさらされると、コラーゲンが湿りすぎて食品生地を流す可能性がある。従って、図6Aから、露点と湿度の軌跡が水分に対して攻撃的すぎて、軟化するコラーゲン外包が作成され、べたつく物質になり、それによって乾燥できない。第4ステップで、露点温度を65℃で残りの調理時間(約23分間)維持するが、この段階ではコラーゲン外包は十分に乾燥しておらず、図6Cに示すように製品の品質が低下する。
【0057】
第二試験と同様に、食品生地を完全に調理するまで48分のプロセス時間が達成されるが、図6Cは、外包のふくれを招く食品を例示している。第1および第2試験で設定された本発明の重要なパラメーターによれば、熱処理の雰囲気が、調理プロセスを通してずっと露点対表面温度の独創的な関係を満たさない場合、こうしたふくれは食品を使用不可能にし、第一および第二試験から得られる利点を無効にする。
【0058】
第1ステップで露点温度と乾球温度に大きな差があっても、食品の表面温度はかなり低く、約8℃であった。第1および第2試験と比較した第3試験における開始温度のこの観察から、本発明の有利な方法は、露点を食品の表面温度よりも低い温度に常に維持するという自明でないステップを例示する。さらに、第4ステップのように露点温度を長時間保持しているにもかかわらず、露点が食品の表面温度を超えると、劣った、欠陥のある可能性のある食品が得られる場合がある。
【0059】
本発明は、以下の態様を提供する。
[1]熱処理装置においてタンパク質を含む外包またはタンパク質とポリマーを含むハイブリッド外包を有する食品を熱処理する方法であって、
前記方法が、
-前記食品を提供することと、
-前記食品を塩溶液にさらすことと、
-前記食品を前記熱処理装置に搬送することと、
-前記食品を熱処理ステップにかけることとを、含み、
前記熱処理ステップが少なくとも
a)前記食品を乾燥させることと、
b)続いて、前記食品をさらに熱処理することとを、含み、
前記方法がさらに
-前記食品を前記熱処理装置に搬送する前に、前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の変性温度を決定することと、
-前記熱処理装置の空気の露点が前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の前記決定された変性温度以下になるように、前記熱処理装置の雰囲気のパラメーターを設定することと、を含み、
前記外包の表面温度が前記熱処理装置の空気の露点に等しい場合に、ステップa)が終了する、方法。
【0060】
[2]前記さらなる熱処理ステップb)が、1つまたは複数の後続の熱処理ステップを含む、[1]の方法。
【0061】
[3]前記1つまたは複数の後続の熱処理ステップが、前記食品を加熱すること、部分的に調理すること、調理すること、冷蔵すること、および冷却することから成る群から選択される、[2]の方法。
【0062】
[4]前記さらなる熱処理ステップb)が、前記食品を部分的に調理することまたは完全に調理することを含む、[1]~[3]のいずれかの方法。
【0063】
[5]前記さらなる熱処理ステップb)が、同じ熱処理装置または後続の熱処理装置において行われる、[1]~[4]のいずれかの方法。
【0064】
[6]前記方法が、
-前記熱処理ステップの後、前記食品を後熱処理ステップにかけることをさらに含み、前記後熱処理ステップが、前記食品を冷蔵すること、表面処理すること、調理することおよびパックすることから成る群から選択される、[1]~[5]のいずれかの方法。
【0065】
[7]前記食品を表面処理する前記後熱処理ステップが、前記食品を蒸気にさらすことを含む、[6]の方法。
【0066】
[8]前記食品を調理する前記後熱処理ステップが、前記食品をパックすることの後に前記食品を調理することを含む、[6]または[7]の方法。
【0067】
[9]雰囲気のパラメーターが、雰囲気の乾球温度、湿球温度、相対湿度、絶対湿度、および気流速度を含む、[1]~[8]のいずれかの方法。
【0068】
[10]前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の変性温度が、示差走査熱量測定法(DSC)測定を行うことによって決定される、[1]~[9]のいずれかの方法。
【0069】
[11]雰囲気のパラメーターが、前記熱処理ステップ実行中の前記熱処理装置の変化する雰囲気条件に基づいて、および/または前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の変化する変性温度に基づいて調整される、[1]~[10]のいずれかの方法。
【0070】
[12]前記熱処理装置の前記雰囲気条件が、乾球温度センサー、湿球温度センサー、湿度センサー、および気流速度センサーから成る群から選択される1つまたは複数のセンサーを使用して測定される、[10]または[11]の方法。
【0071】
[13]前記食品を提供するステップが、
i)食品生地のストランドと前記食品生地のストランドを収納する外包を共押出食品の流れに共押出しすること、及び
ii)前記共押出食品の流れを、食品の流れを塩溶液にさらすことを含む食品強化ステップにかけること、
のステップを含む、[1]~[12]のいずれかの方法。
【0072】
[14]前記食品を提供するステップが、
前記共押出食品の流れをステップii)にかける前に、前記共押出食品の流れを個々の食品に分離すること、好ましくはステップi)で得られた前記共押出食品の流れを分離することを、さらに含む、[13]の方法。
【0073】
[15]前記食品を提供するステップが、
前記共押出食品の流れをステップii)にかけた後に、前記共押出食品の流れに燻液を塗布することをさらに含む、[13]または[14]の方法。
【0074】
[16]前記食品の前記外包に含まれる前記タンパク質の変性温度を決定するステップが、前記共押出食品の流れをステップii)にかけた後、好ましくは前記共押出食品の流れに燻液を塗布することの後に行われる、[13]~[15]のいずれかの方法。
【0075】
[17]前記塩溶液が乳酸カリウムを含む、[1]~[16]のいずれかの方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C